説明

β型サイアロン及び発光装置

【課題】高発光効率を実現できるEu付活β型サイアロンと発光装置を提供する
【解決手段】一般式:Si6−zAl8−zで示され、Euを含有するβ型サイアロンであり、a軸格子定数とCIE色度の色度xとの関係が、次の式1で表される。
a軸格子定数(Å)≦0.1075×色度x+7.5742 (式1)
さらに、β型サイアロンは、次の式2及び式3で計算される平均粒径D50(μm)/BET径(μm)が1.9より小さいことが好ましい。
BET径(μm)=6÷(3.22×BET値(m/g)) (式2)
D50(μm)/BET径(μm)<1.9 (式3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青や紫外の発光ダイオードチップを用いた白色発光ダイオード等の発光装置に利用可能なβ型サイアロン及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
β型サイアロンに関して、特許文献1乃至4が開示されている。特許文献1には、第一の加熱工程で生成したβ型サイアロンが記載され、第二の加熱工程を経て酸処理することにより、結晶性を向上させて高輝度の蛍光体を得る技術が記載されている。特許文献2乃至4には、LED、蛍光体ランプなどのβ型サイアロンを用いた発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/062781号パンフレット
【特許文献2】特開平5−152609号公報
【特許文献3】特開平7−99345号公報
【特許文献4】特許第2927279号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】大久保和明、他著、「NBS標準蛍光体の量子効率の測定」、照明学会誌、第83巻、第2号、pp87−93、平成11年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のβ型サイアロンを用いた蛍光体は、短波長化や狭帯域化を行った場合、発光効率が著しく低くなり、発光特性の再現性が乏しかった。このため、従来のβ型サイアロンを用いた白色LED等の発光装置は十分な輝度を安定して得ることができなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、高発光効率を実現できるβ型サイアロン及びβ型サイアロンを用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式:Si6−zAl8−zで示され、Euを含有するβ型サイアロンであって、a軸格子定数とCIE色度の色度xとの関係が、次の式1を満たす。
a軸格子定数(Å)≦0.1075×色度x+7.5742 (式1)
【0008】
a軸格子定数は、β型サイアロンを銅のKα線を用いた粉末X線回折測定(以下、XRD測定という。)で測定されるものである。
【0009】
β型サイアロンは、β型サイアロンのBET値から次の式2で計算されるBET径とβ型サイアロンをレーザー回折散乱法にて測定した平均粒子径D50との関係が、次の式3で表される範囲のものが好ましい。
BET径(μm)=6÷(3.22×BET値(m/g)) (式2)
平均粒子径D50(μm)/BET径(μm)<1.9 (式3)
【0010】
本発明に係る発光装置は、前記β型サイアロンと発光光源とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のβ型サイアロンは、紫外線から可視光の幅広い波長域で励起され、高効率で520nm以上550nm以下の範囲内を主波長として緑色発光するため、緑色の蛍光体として優れている。
【0012】
本発明の発光装置は、前記β型サイアロンを蛍光体として用いるため、発光装置の高輝度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のβ型サイアロンの製造方法を説明するフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るβ型サイアロンを用いた発光装置の構造を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
(β型サイアロン)
本発明の実施形態に係るβ型サイアロンは、一般式:Si6−ZAl8−Zで示されるβ型サイアロンをホスト結晶に、発光中心としてEu2+が固溶されたものである。β型サイアロンは、一般式:Si6−zAl8−z:Eu(0<z≦4.2)とも表記される。
【0015】
本発明者等は、β型サイアロンにおける結晶構造及び粉体物性と発光効率の関係を調べた結果、次の式1乃至式3の関係を満たすβ型サイアロンが高い発光効率を示すことを見出した。
a軸格子定数(Å)≦0.1075×色度x+7.5742 (式1)
BET径(μm)=6÷(3.22×BET値(m/g)) (式2)
D50(μm)/BET径(μm)<1.9 (式3)
ここで、a軸格子定数は、β型サイアロンのa軸の格子定数である。BET値は、比表面積測定法の一つであるBET法で求められるβ型サイアロンの比表面積である。D50は、体積基準の積算分率における50%粒径であり、本明細書では、平均粒子径D50ともいう。
【0016】
式1の関係を満たすβ型サイアロンは、電子トラップが減少又は消失して励起電子のエネルギーが有効的に緑色発光に変換され、その結果、発光効率が向上する。
【0017】
式2及び式3の関係を満たさずβ型サイアロンの平均粒子径D50/BET径が1.9よりも大きい場合、粒子表面が平滑ではなく励起光がβ型サイアロン蛍光体粒子表面で散乱され、効果的に蛍光を発しないため発光効率が低いことが判明した。
【0018】
β型サイアロンにおけるEu含有量は、0.1質量%以上3質量%以下が好ましい。この範囲外では発光強度が低くなる傾向がある。
【0019】
(β型サイアロンの製造方法)
Euを含有するβ型サイアロンの製造方法を、図1のフロー図を用いて説明する。
図1に示すように、β型サイアロンの製造方法は、原料粉末を混合して原料混合粉末にする混合工程と、混合工程後の原料混合粉末を焼成してEuを固溶したβ型サイアロンを生成する焼成工程と、焼成工程後のβ型サイアロンにアニール処理を行うアニール工程と、アニール工程後のβ型サイアロンに酸処理を行う酸処理工程と、から構成されている。
【0020】
原料粉末の配合組成に関しては、Al/Oモル比が1.3以下であれば加熱中の粒成長が進行し易く好ましい。Al/Oモル比が1.1以下であるとBET径に平均粒子径D50が近づくので好ましい。
【0021】
図1には記載しなかったが、BET値及び平均粒子径D50の制御のために、酸処理工程の後に、分級処理を実施するのが好ましい。
【0022】
アニール工程における加熱温度、処理時間、窒素分圧を調整することで、β型サイアロンの分解を押さえ、Siが発生することなく、前記式1乃至式3の関係を成り立たせる。
【0023】
平均粒子径D50は、5μm以上30μm以下が好ましく、さらに好ましくは10μm以上20μm以下である。平均粒子径D50があまりに小さいと発光効率が低くなり、あまりに大きいと発光装置に用いた場合に分散状態が悪くなる傾向にある。
【0024】
(発光装置)
本発明のβ型サイアロンを用いた発光装置について、図2を参照しつつ説明する。
発光装置は、発光光源と上述のβ型サイアロンを用いたものであり、図2は発光装置の断面を模式的に示したものである。
図2に示すように、本発明の発光装置10は、発光光源12としてのLEDチップと、発光光源12を搭載する第1のリードフレーム13と、第2のリードフレーム14と、発光光源12と第1のリードフレーム13とを被覆する波長変換部材15と、発光光源12と第2のリードフレーム14を電気的につなぐボンディングワイヤ16と、これらを覆う合成樹脂製のキャップ19で形成されている。波長変換部材15は、β型サイアロン18と、β型サイアロン18を分散しつつ配合した封止樹脂17とからなる。第1のリードフレーム13の上部13aにはLEDチップ搭載用の凹部13bが設けられている。凹部13bは、その底面から上方に向かって孔径が徐々に拡大する略漏斗形状を有していると共に、凹部13bの内面が反射面となっている。この反射面の底面にLEDチップ12の下面側の電極がダイボンディングされている。LEDチップ12の上面に形成されている他方の電極は、ボンディングワイヤ16を介して第2のリードフレーム14の表面と接続されている。
【0025】
発光光源12としては、各種LEDチップを用いることができ、特に好ましくは、近紫外から青色光の波長として350nm〜500nmの光を発生するLEDチップである。これらの発光光源12としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する発光光源12となる。
【0026】
発光装置10の波長変換部材5に用いるβ型サイアロンには、他の色を発光する蛍光体を混在させることもできる。他の色を発光する蛍光体としては、α型サイアロン、CaAlSiN、YAGがあり、これらに固溶される元素としては、ユーロピウム、セリウム、ストロンチウム、カルシウムがある。
【0027】
本発明に係る発光装置10は、発光光源12とβ型サイアロン18、その他の蛍光体とを組み合わせることによって、様々の波長の光、すなわち様々な色を発光させることができる。520nm以上550nm以下の範囲の波長にピークを持つ緑色を発光させる場合には、β型サイアロン18単体と発光光源12として350nm以上500nm以下の波長を有する近紫外光や可視光を照射すれば良い。さらに波長600nm以上700nm以下の赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、黄色発光蛍光体又は橙発光蛍光体の単体又は混合体とを組み合わせることによって、白色光やいわゆる電球色などを、適宜発光させることができる。
【0028】
本発明の発光装置10は、β型サイアロン18の発光強度が高いため、高い発光強度を有する。さらに、β型サイアロン18の有する熱的にも化学的にも安定である特徴を反映して、本発明の発光装置10は、高温で使用しても輝度低下が小さく、長寿命である。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明する。
<混合工程>
原料粉末として、α型窒化ケイ素粉末(宇部興産社製SN−E10グレード、酸素含有量1.17質量%、β相含有量4.5質量%)、窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製Fグレード、酸素含有量0.84質量%)、酸化アルミニウム粉末(大明化学社製TM−DARグレード)、酸化ユーロピウム粉末(信越化学工業社製RUグレード)を用いた。原料粉末中のAl量から計算したz値が0.25、酸化ユーロピウム粉末以外の酸素量から計算したz値が0.25、酸化ユーロピウム粉末を0.29モル%となるように配合し、1kgの原料混合物粉末を得た。この時Al/Oモル比は1.0であった。
次に、上記原料粉末をロッキングミキサー(愛知電機社製、RM−10)を用いて60分乾式で混合し、更に目開き150μmのステンレス製篩を全通させ、蛍光体焼成用の原料混合粉末を得た。
【0030】
<焼成工程>
原料混合粉末を、容積0.7リットルの窒化ホウ素製容器(電気化学工業社製N−1グレード)に充填し、カーボンヒーターの電気炉にて、0.9MPaの加圧窒素雰囲気中、2000℃で15時間の焼成を行った。得られた合成物は、緩く凝集した塊状であるので軽度の解砕を行った後、目開き150μmの篩を通して粉末状のβ型サイアロンを得た。
【0031】
<分級工程>
得られたβ型サイアロンを音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製PJM−80SP)で粒度の調整を行い、さらに水中分級処理によって5μm以下の微粉を除去した後、乾燥を行った。
【0032】
<アニール工程>
分級工程を経たβ型サイアロンを円筒型窒化ホウ素製容器(電気化学工業社製N−1グレード)に充填し、カーボンヒーターの電気炉で大気圧のアルゴン雰囲気中、1450℃で8時間の加熱処理を行った。得られた粉末は、焼結に伴う収縮はなく、加熱前とほとんど同じ性状であり、目開き45μmの篩を全て通過した。篩を通過したβ型サイアロンに対し、XRD測定によって結晶相の同定を行った。XRD測定の結果、実施例1のβ型サイアロンは単相からなるという結果を得たが、微量のSiが検出された。
【0033】
<酸処理工程>
アニール工程を経たβ型サイアロンを、50%フッ化水素酸と70%硝酸の1:1混酸中に浸した後、水洗及び乾燥して実施例1のβ型サイアロンを得た。
【0034】
<評価>
実施例1のβ型サイアロンの評価について表1を参照しつつ詳細に説明する。
【表1】

【0035】
実施例1のβ型サイアロンは、XRD測定の結果、a軸格子定数は7.6103Å、c軸格子定数は2.9121Åであり、β型サイアロン以外の結晶からのピークは検出されなかった。
【0036】
実施例1のβ型サイアロンの蛍光スペクトルを、分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F4500)を用いて測定した。455nmの青色光を励起光として蛍光スペクトルのピーク波長の高さを測定した。同一条件で測定した化成オプト社製YAG:Ce蛍光体(P46−Y3)のピーク波長の高さに対する相対値を発光ピーク強度として求めた。励起光には、分光したキセノンランプ光源を使用した。実施例1のβ型サイアロンの発光ピーク強度は201%であった。
【0037】
実施例1のβ型サイアロンのCIE色度は、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製MCPD−7000)にて積分球を用い、455nmの励起に対する蛍光を集光した全光束の蛍光スペクトル測定を行って求めた。測定方法は、非特許文献1に準じて行った。実施例1のβ型サイアロンのCIE色度は、色度x=0.353、色度y=0.625であった。
【0038】
色度x=0.353から、式1式の右辺は7.6121であった。実施例1のβ型サイアロンのa軸格子定数は、7.6103であり、次に示すように、式1の関係を満たしていた。
a軸格子定数(Å)≦ 0.1075×0.353+7.5742 (式1)
7.6103≦7.6121
【0039】
レーザー散乱法による粒度分布測定から得られたβ型サイアロンの平均粒径D50は8.5μmであり、D10は4.8μm、D90は13.4μmであった。D10、D90は、体積基準の積算分率での10%粒径、90粒径である。
【0040】
実施例1のβ型サイアロンのBETをガス吸着法により測定し、BET多点解析により求めたBET値は、0.25m/gであった。このBET値から前記式2でBET径を計算すると7.5μmであり、式3でのD50(μm)/BET径(μm)は、1.14であった。
【実施例2】
【0041】
実施例2のβ型サイアロンは、実施例1での分級工程中の水中分級処理を、10μm以下の微粉を除去する水中分級処理とした以外は、実施例1と同様に製造したものである。
XRD測定の結果、実施例2のβ型サイアロンのa軸格子定数は7.61208Å、c軸格子定数は2.91273Åであり、β型サイアロン以外の回折ピークは検出されず、発光ピーク強度は228%であり、CIE色度は、色度x=0.363、色度y=0.618であった。
【0042】
色度x=0.363から、式1の右辺は7.6132であり、実施例2のβ型サイアロンのa軸格子定数の値は7.61208であり、次に示すように式1の関係を満たしていた。
a軸格子定数(Å)≦0.1075×0.363+7.5742
7.61208≦7.6132
【0043】
実施例2のβ型サイアロンの平均粒径D50は14.7μmであり、D10は7.98μm、D90は14.7μmであり、BET値は0.193m/g、BET径は9.7μm、D50(μm)/BET径(μm)は1.52であった。
【実施例3】
【0044】
実施例3のβ型サイアロンは、実施例1の分級工程中の水中分級処理を、15μm以下の微粉を除去する水中分級処理にした以外は、実施例1と同様に製造したものである。
XRD測定の結果、実施例3のβ型サイアロンのa軸格子定数は7.6119Å、c軸格子定数は2.9135Åであり、β型サイアロン以外の回折ピークは検出されなかった。発光ピーク強度は233%であり、CIE色度は、色度x=0.365、色度y=0.615であった。
【0045】
色度x=0.365から、式1の右辺は7.6134であり、実施例3のβ型サイアロンのa軸格子定数の値は7.6119であり、次に示すように式1の関係を満たしていた。
a軸格子定数(Å)≦0.1075×0.365+7.5742
7.6119≦7.6134
【0046】
実施例3のβ型サイアロンの平均粒径D50は14.8μmであり、D10は8.4μm、D90は25.5μmであり、BET値は0.235m/g、BET径は7.9μm、D50(μm)/BET径(μm)は、1.87であった。
【0047】
(比較例1)
比較例1は、アニール工程を経ずに製造したものである。それ以外は実施例1と同様に製造した。
比較例1のβ型サイアロンでは、XRD測定の結果、β型サイアロンと第二相としての2θ=33〜38°付近に複数の微小な回折線が観察された。その中で最も高い回折線強度はβ型サイアロンの(101)面の回折線強度に対して1%以下であった。a軸格子定数は7.6120Å、c軸格子定数は2.9135Åであった。
比較例1では発光ピーク強度は123%であり、CIE色度は、色度x=0.338、色度y=0.637であり、色度x=0.338から式1の右辺を計算すると、7.6105であり、a軸格子定数の値(7.612Å)より小さかった。他の値は、表1に示すとおりである。
【0048】
(比較例2)
比較例2は、原料粉中のAl量から計算したz値が0.25、酸化ユーロピウム粉末以外の酸素量から計算したz値が0.22、酸化ユーロピウム粉末を0.29モル%となるように配合し、実施例1の水中分級処理を、20μm以下の微粉を除去する水中分級処理とした以外は、実施例1と同様のものである。
比較例2のβ型サイアロンでは、XRD測定の結果、サイアロン以外のピークは検出されなかった。a軸格子定数は7.6105Å、c軸格子定数は2.9122Åであった。発光ピーク強度は199%であり、CIE色度は、色度x=0.36、色度y=0.618であり、他の値は、表1に示すとおりであった。色度x=0.36から、式1の右辺を計算すると、7.6103となり、式1の関係を満たしていなかった。
【0049】
表1に示すように、実施例1〜3のβ型サイアロンは、何れも式1、式2及び式3の関係を満たし、比較例1及び2のβ型サイアロンに比べて高い発光ピーク強度を示した。
【実施例4】
【0050】
実施例4は、実施例1のβ型サイアロンを用いた発光装置である。以下、図2を参照して詳細に説明する。
発光装置10は、発光光源12としてのLEDチップと、この発光光源12に導通された第1のリードフレーム13と、第1のリードフレーム13の近傍に取り付けられた第2のリードフレーム14と、発光光源12と第2のリードフレーム14とを導通させるボンディングワイヤ16とを有し、発光光源12は、第1のリードフレーム13の凹部13bの中に配置され、この凹部13b内に充填された波長変換部材15に覆われている。波長変換部材15は、β型サイアロン18を配合した封止樹脂17を有し、発光装置10の上面は、合成樹脂製のキャップ19に覆われている。図2の符号13aは、第1のリードフレーム13の上部である。
【0051】
波長変換部材15は、予め個別にシランカップリング剤(信越シリコーン社製KBE402)でシランカップリング処理したβ型サイアロン18を、封止樹脂17としてのエポキシ樹脂(サンユレック社製NLD−SL−2101)に混練して作製した。発光光源12は、発光波長450nmの青色LEDチップを用いた。β型サイアロン18は、実施例1のβ型サイアロンと、Ca0.66Eu0.04Si9.9Al2.10.715.3の組成を持つCa−α型サイアロン:Eu蛍光体との混合体である。Ca−α型サイアロン:Euの発光ピーク波長は585nmである。
【実施例5】
【0052】
実施例5は、実施例4の「実施例1のβ型サイアロン」を「実施例3のβ型サイアロン」に変更した以外は、実施例4と同様のものである。
【0053】
(比較例3)
比較例3の発光装置は、実施例4の「実施例1のβ型サイアロン」を「比較例1のβ型サイアロン」に変更した以外は、実施例4と同様のものである。
【0054】
(比較例4)
比較例4の発光装置は、実施例4の「実施例1のβ型サイアロン」を「比較例2のβ型サイアロン」に変更した以外は、実施例4と同様のものである。
【0055】
実施例4、5及び比較例3、4の発光装置10を同一通電条件で発光させ、輝度計により同一条件下での中心照度及びCIE色度(CIE1931)を測定した。色度座標(x、y)が(0.31、0.32)の白色発光装置で中心照度を比較した。実施例4、5、比較例1、2の発光装置10の明るさは、比較例3の発光装置の明るさを基準にすると、それぞれ、実施例4では125%、実施例5では136%、比較例3では100%、比較例4では117%であった。
【0056】
本発明の実施例のβ型サイアロンは、350〜500nmの波長の光を発する紫外LEDチップまたは青色LEDチップを励起光として、強度の高い緑色を発光させることができる。このため、上記実施例のβ型サイアロンに加えて他色発光する別の蛍光体を組み合わせて用いることで、発光特性の良好な白色LEDを実現できる。
【符号の説明】
【0057】
10:発光装置
12:発光光源
13:第1のリードフレーム
13a:第1のリードフレームの上部
13b:第1のリードフレームの凹部
14:第2のリードフレーム
15:波長変換部材
16:ボンディングワイヤ
17:封止樹脂
18:β型サイアロン
19:キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:Si6−zAl8−zで示されEuを固溶したβ型サイアロンであって、
a軸格子定数とCIE色度の色度xとの関係が、次の式1で表されるβ型サイアロン。
a軸格子定数(Å)≦0.1075×色度x+7.5742 (式1)
【請求項2】
前記β型サイアロンのBET値から次の式2で計算されるBET径と、前記β型サイアロンをレーザー回折散乱法にて測定した平均粒子径D50との関係が、次の式3で表される請求項1記載のβ型サイアロン。
BET径(μm)=6÷(3.22×BET値(m/g)) (式2)
D50(μm)/BET径(μm)<1.9 (式3)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のβ型サイアロンと、発光光源とを備える発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−56804(P2012−56804A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202513(P2010−202513)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】