説明

β2アドレナリン受容体のアゴニストとしての、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのメシル酸塩

本発明は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのメシル酸塩、ならびにその薬学的に許容される溶媒和物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの新規水溶性メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、そのエナンチオマーおよび溶媒和物に関する。本発明はまた、該塩を含む医薬組成物、β2アドレナリン受容体活性により改善される可能性のある呼吸器疾患の処置のためのそれらの使用方法、ならびにかかる塩類の製造に有用な方法および中間体にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
β2アドレナリン受容体アゴニストは、有利には、肺疾患または呼吸器障害の処置のために用いたとき、吸入により気道内に直接投与される。乾燥粉末吸入器(DPI)、定量吸入器(MDI)および噴霧吸入器を含むいくつかのタイプの薬学的吸入デバイスが吸入による治療剤の投与のために開発されている。
【0003】
液体製剤、特に、水性製剤は、マウスピースまたはフェイスマスクを介して正常な呼吸中に吸入されるために投与が容易である。それらは、特に、ほとんどの場合、かかる処置を必要とする患者および他のデバイスを用いることが困難である、若年者および高齢者に好適である。
【0004】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンが、公開された特許出願WO2006/122788A1において特許請求され、記載されている。
【0005】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンは、適切な薬理学的挙動が示されているが、水溶性である塩の形態でそれを得ることは難しく、とりわけ水溶液中にあるとき、非常に安定であることが証明されている。
【0006】
これまでのところ、所望の特性を有する5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシ−エチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの水溶性塩は、報告されていない。
【0007】
従って、水溶液製剤に用いられ得て、特に、小児および高齢の患者のような任意の患者に好適である、本発明の化合物の水溶性かつ安定な塩が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明において、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのメタンスルホン酸塩が、非常に溶解性であり、水溶液および製剤中で非常に高い安定性を有し、そのため、貯蔵および商品流通に適する適当な貯蔵安定性を供する、粉末形態で得られ得ることを発見した。
【0009】
本発明は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのメシル酸塩、およびその薬学的に許容される溶媒和物を提供する。
【0010】
本発明はまた、本発明の塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本発明はさらに、本発明の塩および1種以上の他の治療剤を含む組合せ剤、ならびにかかる組合せ剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、哺乳動物における喘息または慢性閉塞性肺疾患のようなβ2アドレナリン受容体活性により改善される可能性のある肺疾患または状態の処置方法であって、該哺乳動物に、治療的有効量の本発明の塩を投与することを含む方法を提供する。本発明はさらに、治療的有効量の、本発明の塩と1種以上の他の治療剤との組合せ剤を投与することを含む処置方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、本発明の塩の製造に有用である、本明細書に記載の合成方法および中間体を提供する。
【0013】
本発明はまた、哺乳動物における喘息または慢性閉塞性肺疾患のようなβ2アドレナリン受容体活性により改善される可能性のある肺疾患または状態の処置において用いるための本明細書に記載の本発明の塩を提供する。本発明はまた、これらの疾患の処置方法、ならびにこれらの疾患の処置のための製剤または医薬の製造における本発明の塩の使用、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、5−(−2−(6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシルアミノ)−1(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩のDSCパターンを示す。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の塩、組成物および方法を記載するとき、以下の用語は、他に特記しない限り以下の意味を有する。
【0016】
用語“治療的有効量”は、処置の必要な患者に投与したとき、有効な処置に十分な量を意味する。
【0017】
本明細書で用いる用語“処置”は、以下:
(a)疾患または医学的状態を未然に防ぐこと、すなわち、患者の予防的処置;
(b)疾患または医学的状態を改善すること、すなわち、患者における疾患または医学的状態の緩解をもたらすこと;
(c)疾患または医学的状態を抑制すること、すなわち、患者における疾患または医学的状態の進行を遅延すること;または、
(d)患者における疾患または医学的状態の症状を緩和すること
を含む、ヒト患者における疾患または医学的状態の処置を意味する。
【0018】
用語“β2アドレナリン受容体活性と関係する肺疾患または状態”には、現在公知であるか、または将来見出される、β2アドレナリン受容体活性と関係する全ての肺疾患および/または状態が含まれる。かかる疾患には、喘息および慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎および気腫を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
用語“溶媒和物”は、1個以上の溶質分子、すなわち本発明の塩またはその薬学的に許容される塩、ならびに1個以上の溶媒分子により形成される複合体または凝集体を意味する。かかる溶媒和物は、典型的に、実質的に一定の溶質と溶媒のモル比を有する結晶固体である。代表的溶媒には、例えば、水、エタノール、イソプロパノールなどが含まれる。該溶媒が水であるとき、形成する溶媒和物は水和物である。
【0020】
用語“またはその溶媒和物もしくは立体異性体”は、式(I)の塩の立体異性体の溶媒和物のような、溶媒和物および立体異性体の全ての置換体を含むことを意図することが、理解され得る。
【0021】
本発明の塩には、キラル中心が含まれる。従って、本発明は、ラセミ混合物、エナンチオマー、およびエナンチオマーのうち1個に富む混合物を含む。記載され、かつ特許請求される本発明の範囲には、該塩のラセミ形態、ならびに個々のエナンチオマー形態、および1個のエナンチオマーに富む混合物が含まれる。
【0022】
特に興味があるのは、以下の塩:
(R,S)5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩、
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩、
および、それらの薬学的に許容される溶媒和物である。
【0023】
最も好ましくは、該塩は、式(I)
【化1】


で示される、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1(R)−ヒドロキシ−エチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩、およびその薬学的に許容される溶媒和物である。
【0024】
本発明はまた、治療的有効量の上記の塩および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を包含する。
【0025】
本発明の態様において、該医薬組成物は、治療的有効量の1種以上の他の治療剤をさらに含む。
【0026】
該医薬組成物が、経口または静脈内投与のために製剤されることもまた、本発明の一態様である。
【0027】
本発明の上記の塩はまた、1種以上の他の治療剤、特にコルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤からなる群から選択される1種以上の薬剤と組み合わせられ得る。本発明はまた、本発明の塩を、1種以上の他の治療剤、特にコルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤からなる群から選択される1種以上の薬剤と共に含む組合せ剤に関する。
【0028】
本発明はまた、喘息または慢性閉塞性肺疾患のようなβ2アドレナリン受容体により改善される可能性のある肺疾患の処置における使用のための式(I)の塩に関する。
【0029】
本発明はまた、β2アドレナリン受容体活性により改善される可能性のある哺乳動物における疾患または状態の処置方法であって、治療的有効量の本発明のβ2アドレナリン受容体アゴニストを含む医薬組成物を、該哺乳動物に投与することを含む方法に関する。特に、肺疾患、好ましくは喘息または慢性閉塞性肺疾患である疾患または状態の処置に用いられる方法に関する。
【0030】
本発明はまた、哺乳動物における肺疾患または状態の処置のための医薬の製造における、式(I)の塩の使用に関する。哺乳動物は、好ましくはヒトである。特に関連のある肺疾患または状態は、喘息または慢性閉塞性肺疾患である。
【0031】
一般的合成法
本発明の塩は、本明細書に記載の方法および手法、または同様の方法および手法を用いて製造され得る。典型的または好ましい方法条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられるとき、他の方法条件も、他に特記しない限り用いられ得ることは、理解され得る。最適な反応条件は、用いる特定の反応物質または溶媒によって変わり得るが、かかる条件は、常套の最適化方法により当業者により決定され得る。
【0032】
本発明の塩を製造するための方法は、本発明のさらなる態様として提供され、以下の方法により説明される。
【0033】
本発明の塩は、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン、および例えばAldrichから市販されているメタンスルホン酸から合成され得る。
【0034】
この反応に適当な不活性希釈剤には、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノールなど、およびそれらの混合物、所望により水が含まれるが、それらに限定されない。例えば、遊離塩基は、メタンスルホン酸と接触され、2−ブタノール中に溶解され得る。
【0035】
上記の反応の何れかの完了後に、該塩は、沈殿、濃縮、遠心などのような何れかの常套手段により、反応混合物から単離され得る。
【0036】
特定の方法条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられるとき、他の方法条件も、他に特記しない限り用いられ得ることは、理解され得る。
【0037】
本発明の水溶性メシル酸塩は、典型的に、1モル当量の遊離塩基あたり、約0.85ないし1.15モル当量のメタンスルホン酸、より典型的には、1モル当量の遊離塩基あたり、約1モル当量のメタンスルホン酸を含む。
【0038】
本発明の方法にて記載されるモル比は、当業者に利用可能な種々の方法により容易に決定され得る。例えば、かかるモル比は、1H NMRにより容易に決定され得る。あるいは、元素分析およびHPLC法を、該モル比の決定に用い得る。
【0039】
本発明のメシル酸塩の製造のために、該遊離塩基は、典型的に、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノールおよびそれらの混合物のような溶媒中に、特に2−ブタノール中に溶解され、0.20−0.25M溶液を形成し、次いでそれをおよそ60−70℃まで加熱する。次いで、適当な溶媒中、0.45−0.50Mのメタンスルホン酸の溶液を、該加熱した溶液に添加する。次いで、該混合物を70−75℃で60分間撹拌し、次いで、20/25℃まで冷却し、そして一晩ゆっくり撹拌する。形成した沈殿を濾過により単離し、適当な溶媒で洗浄し、例えば真空下で50℃にて乾燥させる。
【実施例】
【0040】
実施例
一般法。反応材、出発物質および溶媒を、供給業者から購入し、そのまま用いた。
【0041】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]−アミノ}−1(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩の製造に用いた特に良い溶媒は、2−ブタノールであった。反応は、104mlの2−ブタノール中に11.4g(24.8mmol)の遊離塩基を溶解して、0.24M溶液を形成し、それをおよそ75℃まで加熱することを含んだ。次いで、52mlの2−ブタノール中、2.37g(24.6mmol)のメチルスルホン酸の溶液を、該加熱した溶液に30分かけて滴下した。添加の終了後、混合物を70−75℃で1時間撹拌し、次いで、室温まで冷却し、この温度で一晩ゆっくり撹拌した。形成した沈殿を濾過により単離し、2−ブタノール(15ml)で洗浄し、そして真空下で50℃にて乾燥させた。その後、10.93g(収率:79%)の白色固体が、HPLCにより97.5%の純度で得られた。
【0042】
示差走査熱量測定(DSC)分析を、DSC−821 Mettler−Toledo、シリアル番号5117423874を用いて得た。サンプルを、アルミニウムパン中に量り取り、アルミニウム蓋をサンプルの上に置き、そして真ちゅう製の棒で圧縮した。サンプルを、30℃で平衡化し、10℃/分で300℃まで加熱した。機器を、インジウムおよび亜鉛基準を用いて較正した。
【0043】
図1は、5−(−2−(6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル−アミノ)−1(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩のDSCパターンを示す。サンプルは、塩の融解および分解に対応して、62℃付近で始まる広範かつ弱い吸熱反応を示し、そして183.04℃で始まる特徴的な強い吸熱反応を示す。このことは、該サンプルが、何れか他の多形体に変換せず、分解を受けないことを示し、故にその高い安定性が確認される。
【0044】
水溶性試験
水中、5−(−2−(6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル−アミノ)−1(R)−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンの異なる塩の溶解性を、室温で、ギ酸フォルモテロールおよびキシナホ酸サルメテロールの溶解性と共に決定した。結果を以下の表に示す。
【表1】

【0045】
表から分かる通り、本発明のメシル酸塩は、対応する硫酸水素塩またはナパジシル酸塩よりも高い溶解性を示す。さらに、本発明のメシル酸塩は、ギ酸フォルモテロールおよびキシナホ酸サルメテロール(これらは市販の長時間作用性β2アゴニストである。)と比較したとき、より高い溶解性を示す。
【0046】
溶解性試験:
本発明のメシル酸塩の溶解性を、促進条件下で評価した。約5mgの本発明のメシル酸塩を、10mlの琥珀色ガラスバイアルに個々に入れた。これらのバイアルを40℃で30日間、80℃で15ないし30日間それぞれ貯蔵した。強制的ストレス条件下後、サンプルを5mlの適当な溶媒中に溶解した。不純物の増加が、HPLC分析を用いて、比較領域を計算して決定された。結果を表2に記載する。
【表2】

【0047】
80℃で15日間の安定性は、30℃で1年以上と同程度を示す。80℃で30日間の安定性は、40℃で1年以上と同程度を示す。全ての強制的条件下で観察される不純物の割合は、5%未満であって、故に、塩の顕著な分解はないことが示される。
【0048】
医薬組成物
本発明の医薬組成物には、治療的有効量の、5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのメシル酸塩、またはそのエナンチオマーもしくは薬学的に許容される溶媒和物、および薬学的に許容される担体が含まれる。
【0049】
該医薬製剤は、単位投与形態で提供されるのが好都合であり、そして、医薬分野で周知の何れかの方法によって製造できる。全ての方法は、活性成分(複数可)を担体と関連づける工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉化固体担体または両者と均一かつ均質に混合すること、次いで、必要ならば、製品を望ましい製剤に形成することにより製造される。
【0050】
吸入による肺への局所送達用の乾燥粉末組成物は、例えば、吸入器または吹き入れ器(insufflator)での使用のために、例えばラミネート加工したアルミ箔の、例えばゼラチンまたはブリスターのカプセルおよびカートリッジ中に存在していてよい。一般的に、製剤は、本発明の塩の吸入のための粉末混合物、およびラクトースまたはデンプンのような適当な粉末ベース(担体物質)を含む。ラクトースの使用が好ましい。粉末ベースには、防腐剤、安定剤、吸収促進剤または空力学的修飾剤(aerodynamic modifier)のようなさらなる成分が含まれ得る。
【0051】
それぞれのカプセルまたはカートリッジは、一般的に、0.1μgないし150μgのそれぞれの治療的活性成分を含み得る。あるいは、活性成分(複数可)を、賦形剤を使用せずに提供することができる。
【0052】
製剤の包装は、単位用量または複数回用量の送達のために適当であり得る。複数回用量の送達のとき、製剤を予め計量するか、または使用時に計量することができる。故に、乾燥粉末吸入器は、3つの群:(a)単回用量デバイス、(b)複数の単位用量デバイス、および(c)複数回用量デバイスに分類される。
【0053】
第一のタイプの吸入器については、単回用量は、大抵は硬ゼラチンカプセルである小さい容器中に製造業者により計り入れられている。カプセルは、分離している箱もしくは容器から取り出され、吸入器の受容部位(receptacle area)に挿入されなければならない。次に、カプセルを開封するか、ピンまたは切刃で孔を開けて、吸入の際の遠心力を用いてこれらの孔を通してカプセルから粉剤を飛散させるか、または排出させるために、吸気流がカプセルを通ることを可能にしなければならない。吸入後に、空のカプセルは吸入器から再び除去されなければならない。大抵は、カプセルを挿入しかつ除去するために吸入器の分解が必要であり、このことは、ある種の患者にとって困難であり、かつ負担となり得る操作である。
【0054】
吸入粉末用の硬ゼラチンカプセルの使用に関する他の欠点は、(a)周囲空気からの湿気の取り込みに対する予防が不十分であること、(b)カプセルが以前に極度の相対湿度に暴露されていた後での開封もしくは穿孔に関する問題(破裂もしくは切込み(indenture)を引き起こす)、および(c)カプセル破片の吸入の可能性、である。さらに、多くのカプセル吸入器について、不十分な放出が報告されている(例えば、Nielsen et al, 1997)。
【0055】
カプセル吸入器の中には、WO92/03175に記載の通り、それから個々のカプセルを受入チャンバー(receiving chamber)(その中で穿孔および排出が起こる)へ移動することができる貯蔵庫を有しているものもある。他のカプセル吸入器は、用量放出のための空気路と直線上に並び得るカプセルチャンバーを有する回転式貯蔵庫を有する(例えば、WO91/02558およびGB2242134)。それらには、ディスクまたはストリップ上に供される限定された数の単位用量を有するブリスター吸入器と共に複数回単位用量型の吸入器が含まれる。
【0056】
ブリスター吸入器は、カプセル吸入器と比較して、優れた薬剤の湿気防止を提供する。粉剤の利用は、カバーならびにブリスター箔を穿孔すること、またはカバー箔を剥離することにより可能である。ブリスター細片(blister strip)をディスクの代わりに用いるとき、用量の数を増すことができるが、空の細片を除去することは患者にとって不便である。故に、そのような装置はしばしば、細片の輸送およびブリスターポケットの開口に用いる技術を含む組み込み用量システムと共に、廃棄可能である。
【0057】
複数回用量吸入器は、予め測定された量の粉末製剤を含有していない。それらは、比較的大きい容器および患者によって用いられるべき用量測定方式(principle)で構成される。該容器は、容量置換(volumetric displacement)により大量の粉末から個別に単離される複数回用量を含有する。回転膜(例えば、EP0069715)もしくはディスク(例えば、GB2041763;EP0424790;DE4239402およびEP0674533)、回転可能シリンダー(例えば、EP0166294;GB2165159およびWO92/09322)および回転可能錐台(例えば、WO92/00771)を含む様々な用量測定方式が存在し、それらは全て、容器からの粉末で充填されるべき空洞を有している。他の複数回用量デバイスは、一定量の粉末を容器から送達チャンバーもしくは空気路(air conduit)に移動させるための局所または周辺のくぼみを持つ測定用プランジャー(例えば、EP0505321、WO92/04068およびWO92/04928)、または以下の特許出願:WO97/000703、WO03/000325およびWO03/061742に記載の、Genuair(登録商標)デバイス(以前はNovolizer SD2FLとして公知)のような測定用スライドを有している。
【0058】
本発明の好ましい態様は、噴霧器または加圧型定量吸入器(MDI)のような、エアロゾル投与に適するデバイスまたはシステムでの本発明の塩を含む液体製剤の使用である。エアロゾルは、噴射ガスを介して、電動式インペラーまたはいわゆるアトマイザーにより生成され、それを介して薬理学的に活性な物質を、吸入可能な粒子の霧が生じるように、高圧下で噴霧することができる。適当なアトマイザーは、例えば、Respimat(登録商標)であって、W091/14468およびWO97/12687に記載されている。噴霧器の場合、例えば、WO94/07607に記載のような特定のノズルが、溶液の噴霧化に用いられ得る。噴霧器は典型的に、圧縮空気、超音波または振動メッシュを用いて液滴の霧を製造し、霧からのより大きな液滴を固着(impaction)により除去するバッフルを有していてもよい。超音波噴霧器、ジェット噴霧器および呼吸作動型(breath−actuated)噴霧器のような種々の噴霧器が、この目的のために用いられ得る。
【0059】
本発明の組成物は、所望により、PDE4阻害剤、コルチコステロイドおよび/または抗コリン剤のような呼吸器障害の処置に有用であることが知られている1個以上のさらなる治療剤の治療的有効量を含んでいてよい。
【0060】
治療効果を達成するために必要であるそれぞれの活性剤の量は、もちろん、特定の活性剤、投与経路、処置される対象、および処置されている特定の障害もしくは疾患によって変わり得る。
【0061】
活性成分は、望ましい活性を示すのに十分な、1日1〜6回投与することができる。好ましくは、活性成分を1日1回もしくは2回投与し、最も好ましくは1日1回投与する。
【0062】
β2−アゴニストと組み合わされ得る好適なPDE4阻害剤の例は、二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン(cipamfylline)、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト(filaminast)、チペルカスト、トフィミラスト(tofimilast)、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム(mesopram)、塩酸ドロタベリン、リリミラスト(Lirimilast)、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト(apremilast)、テトミラスト、フィラミナスト(filaminast)、(R)−(+)−4−[2−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−2−フェニルエチル]ピリジン(CDP−840)、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−5−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミド(GSK−842470)、9−(2−フルオロベンジル)−N6−メチル−2−(トリフルオロメチル)アデニン(NCS−613)、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−8−メトキシキノリン−5−カルボキサミド(D−4418)、塩酸3−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジル]−6−(エチルアミノ)−8−イソプロピル−3H−プリン(V−11294A)、塩酸6−[3−(N,N−ジメチルカルバモイル)フェニルスルホニル]−4−(3−メトキシフェニルアミノ)−8−メチルキノリン−3−カルボキサミド(GSK−256066)、4−[6,7−ジエトキシ−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン−1−イル]−1−(2−メトキシエチル)ピリジン−2(1H)−オン(T−440)、(−)−トランス−2−[3’−[3−(N−シクロプロピルカルバモイル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−1,8−ナフチリジン−1−イル]−3−フルオロビフェニル−4−イル]シクロプロパンカルボン酸(MK−0873)、CDC−801、UK−500001、BLX−914、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサn1−オン、シス[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサn−1−オール、CDC−801、5(S)−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]−3(S)−(3−メチルベンジル)ピペリジン−2−オン(IPL−455903)、ONO−6126(Eur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst 2557)ならびにPCT特許出願番号WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692に記載の塩である。
【0063】
β2アゴニストと組合せ得る適当なコルチコステロイドおよびグルココルチコイドの例は、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、デキサメタゾンシペシル酸エステル、ナフロコート、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタゾン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RPR−106541、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17−吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21−クロロ−11ベータ−ヒドロキシ−17アルファ−[2−(メチルスルファニル)アセトキシ]−4−プレグネン−3,20−ジオン、脱イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、NS−126、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ヒドロコルチゾンプロブテート、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、ならびにプロピオン酸クロベタゾールである。
【0064】
β2アゴニストと組合せ得る適当なM3アンタゴニスト(抗コリン剤)の例は、チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、NPC−14695、BEA−2108、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩(特に、アクリジニウム塩、より好ましくは、臭化アクリジニウム)、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−3−カルボン酸 エンド−8−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル エステル塩(DAU−5884)、3−(4−ベンジルピペラジン−1−イル)−1−シクロブチル−1−ヒドロキシ−1−フェニルプロパン−2−オン(NPC−14695)、N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−2(R)−[3,3−ジフルオロ−1(R)−シクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド(J−104135)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−N−[1−[4(S)−メチルヘキシル]ピペリジン−4−イル]−2−フェニルアセトアミド(J−106366)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−N−[1−(4−メチル−3−ペンテニル)−4−ピペリジニル]−2−フェニルアセトアミド(J−104129)、1−[4−(2−アミノエチル)ピペリジン−1−イル]−2(R)−[3,3−ジフルオロシクロペント−1(R)−イル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン−1−オン(万有−280634)、N−[N−[2−[N−[1−(シクロヘキシルメチル)ピペリジン−3(R)−イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]−3,3,3−トリフェニルプロピオンアミド(万有 CPTP)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニル酢酸 4−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル)−2−ブチニル エステル(Ranbaxy 364057)、3(R)−[4,4−ビス(4−フルオロフェニル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]−1−メチル−1−[2−オキソ−2−(3−チエニル)エチル]ピロリジニウムアイオダイド、N−[1−(3−ヒドロキシベンジル)−1−メチルピペリジニウム−3(S)−イル]−N−[N−[4−(イソプロポキシカルボニル)フェニル]カルバモイル]−L−チロシンアミドトリフルオロアセテート、UCB−101333、OrM3(Merck)、7−エンド−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルアセトキシ)−9,9−ジメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]ノナン塩、7−(2,2−ジフェニルプロピオニルオキシ)−7,9,9−トリメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン塩、3(R)−[4,4−ビス(4−フルオロフェニル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]−1−メチル−1−(2−フェニルエチル)ピロリジニウムアイオダイド、トランス−4−[2−[ヒドロキシ−2,2−(ジチエン−2−イル)アセトキシ]−1−メチル−1−(2−フェノキシエチル)ピペリジニウムブロマイド(Novartis (412682))、7−ヒドロキシ−7,9,9−トリメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン 9−メチル−9H−フルオレン−9−カルボン酸エステル塩であり、それらの全ては、所望によりそれらのラセミ体形態、そのエナンチオマー形態、そのジアステレオマー形態およびそれらの混合物、ならびに所望によりそれらの薬理学的に適合性の酸付加塩形態である。該塩のうち、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびメタンスルホン酸塩が好ましい。
【0065】
特に好ましい本発明の医薬組成物は、式(I)の塩、ならびにフロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩(特に、アクリジニウム塩、好ましくは臭化アクリジニウム)、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラスト、およびPCT特許出願番号WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692において特許請求される化合物からなる群から選択される1個以上の治療剤の治療的有効量を含む。
【0066】
さらに特に好ましい本発明の医薬組成物は、式(I)の塩、ならびにフロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩(特に、アクリジニウム塩、好ましくは臭化アクリジニウム)、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラストおよびシロミラストからなる群から選択される1種以上の治療剤の治療的有効量を含む。
【0067】
故に、本発明の一局面において、該組成物は、式(I)の塩およびコルチコステロイドを含む。特に好ましいコルチコステロイドは、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるものである。
【0068】
本発明の別の局面において、該組成物は、式(I)の塩および抗コリン剤を含む。特に好ましい抗コリン剤は、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩および1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩からなる群から選択されるものである。該組成物は、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるコルチコステロイドをさらに含み得る。
【0069】
本発明のさらに他の局面において、該組成物は、式(I)の塩およびPDE4阻害剤を含む。特に好ましいPDE4阻害剤は、ロリプラム、ロフルミラスト、シロミラスト、ならびにPCT特許出願番号WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692に特許請求される化合物からなる群から選択されるものである。該組成物は、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、フロ酸フルチカゾンおよびプロピオン酸フルチカゾンからなる群から選択されるコルチコステロイドをさらに含み得る。本発明の塩およびPDE4阻害剤に加えて、該組成物は、チオトロピウム塩、グリコピロニウム塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩および1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩からなる群から選択される抗コリン剤をさらに含み得る。
【0070】
本発明の特に好ましい態様において、該組成物は、式(I)の塩、ならびに治療的有効量の、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩を含む。要すれば、該組成物は、コルチコステロイドおよび/またはPDE4阻害剤をさらに含む。
【0071】
本発明の別の特に好ましい態様において、該組成物は、式(I)の塩および治療的有効量のフロ酸モメタゾンを含む。要すれば、該組成物は、抗コリン剤および/またはPDE4阻害剤をさらに含む。
【0072】
本発明のさらに別の態様において、該組成物は、式(I)の塩、コルチコステロイド、抗コリン剤およびPDE4阻害剤を含む。
【0073】
式(I)の塩類および本発明の組合せ剤は、呼吸器疾患の処置に使用することができ、その際、気管支拡張剤の使用は、例えば、喘息、急性もしくは慢性気管支炎、気腫、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対して有益な効果を有すると期待されている。
【0074】
組合せ剤中の活性化合物および塩類、即ち、本発明のβ2アゴニストならびにPDE4阻害剤、コルチコステロイドまたはグルココルチコイドおよび/または抗コリン剤は、同一のもしくは異なる経路により、同一の医薬組成物で、または個別、同時、併用もしくは逐次投与を意図した異なる組成物で、共に投与することができる。
【0075】
全ての活性物質は同時にもしくは非常に近い時間に投与されることが意図されている。あるいは、1個もしくは2個の活性物質を朝に、そして他のもの(複数を含む)を同日のその後に投与することができる。または、別の計画では、1個もしくは2個の活性物質を1日2回、そして他のもの(複数を含む)を1日2回行われる投与のうちの投与の1回と同時に、または別個に、1日1回投与することができる。好ましくは、少なくとも2個の、より好ましくは全ての活性物質が、同時に一緒に投与され得る。好ましくは、少なくとも2個の、より好ましくは全ての活性物質を、混合剤として投与し得る。
【0076】
本発明の活性物質組成物は、好ましくは、吸入器、とりわけ噴霧器および定量吸入器を用いて送達される吸入用組成物の形態で投与されるが、しかしながら、局所、非経腸または経口適用の何れか他の形態が可能である。ここで、吸入組成物の適用は、特に閉塞性肺疾患の治療もしくは喘息の処置のために、好ましい適用形態を具体化している。
【0077】
活性化合物(複数可)製剤は、一般的に、MDI投与のための噴射剤または噴霧器を介する投与のための水の何れかであり得る適当な担体を含む。該製剤は、防腐剤(例えば、塩かベンザルコニウム、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール);pH安定化剤(例えば、酸性薬剤、アルカリ性薬剤、緩衝系);等張安定化剤(例えば、塩化ナトリウム);界面活性剤および湿潤剤(例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステル);および/または、吸収促進剤(例えば、キトサン、ヒアルロン酸、界面活性剤)のようなさらなる成分を含み得る。該製剤はまた、本発明の塩と混合したとき、他の活性化合物の溶解性を改善する添加剤を含み得る。溶解促進剤は、シクロデキストリン、リポソーム、またはエタノール、グリセロールおよびプロピレングリコールのような共溶媒のような成分を含み得る。
【0078】
本発明の活性塩の製剤用のさらなる適当な担体は、「レミントン:薬局の科学および実践、第20版」(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition)、Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa., 2000の中に見出すことができる。以下の非限定的実施例は、本発明の代表的な医薬組成物を例示する。
【0079】
本発明は、哺乳動物における、β2アドレナリン受容体活性と関係する、喘息または慢性閉塞性肺疾患のような肺疾患または状態の処置方法であって、該哺乳動物に、治療的有効量の上記の医薬組成物を投与することを含む方法をさらに包含する。該哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0080】
特に、肺疾患または状態の処置方法は、該哺乳動物、好ましくはヒトに、治療的有効量の式(I)の化合物のメシル酸塩および治療的有効量の、コルチコステロイド、抗コリン剤、またはPDE4阻害剤のような1種以上の他の治療剤を投与することを含む。
【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシエチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オンのメシル酸塩またはその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項2】
(R,S)5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1−ヒドロキシ−エチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩
5−(2−{[6−(2,2−ジフルオロ−2−フェニルエトキシ)ヘキシル]アミノ}−1(R)−ヒドロキシ−エチル)−8−ヒドロキシキノリン−2(1H)−オン メシル酸塩
からなる群から選択される請求項1記載の塩、またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項3】
治療的有効量の請求項1または2記載の塩および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
該組成物が、吸入による投与のために製剤される、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
該組成物が、治療的有効量の1種以上の他の治療剤をさらに含む、請求項3または4記載の医薬組成物。
【請求項6】
該他の治療剤が、コルチコステロイド、抗コリン剤、および/またはPDE4阻害剤である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
該他の治療剤が、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、デキサメタゾンシペシル酸エステル、ナフロコート(naflocort)、デフラザコート、酢酸ハロプレドン、ブデソニド、ベクロメタゾンジプロピオネート、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ピバル酸クロコルトロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、パルミチン酸デキサメタゾン、チプレダン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、プレドニカルベート、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、ハロメタソン、スレプタン酸メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、リメキソロン、ファルネシル酸プレドニゾロン、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコート、RPR−106541、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、エタボン酸ロテプレドノール、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、フルニソリド、プレドニゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、トリアムシノロン、17−吉草酸ベタメタゾン、ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、21−クロロ−11 ベータ−ヒドロキシ−17アルファ−[2−(メチルスルファニル)アセトキシ]−4−プレグネン−3,20−ジオン、脱イソブチリルシクレソニド、脱イソブチリルシクレソニド、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、NS−126、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、メタスルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウムおよびプロピオン酸クロベタゾールからなる群から選択されるコルチコステロイドである、請求項5または6記載の医薬組成物。
【請求項8】
該他の治療剤が、チオトロピウム塩、オキシトロピウム塩、フルトロピウム塩、イプラトロピウム塩、グリコピロニウム塩、トロスピウム塩、ザミフェナシン、レバトロパート、エスパトロパート、NPC−14695、BEA−2108、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキナゾリン−3−カルボン酸 エンド−8−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル エステル塩(DAU−5884)、3−(4−ベンジルピペラジン−1−イル)−1−シクロブチル−1−ヒドロキシ−1−フェニルプロパン−2−オン(NPC−14695)、N−[1−(6−アミノピリジン−2−イルメチル)ピペリジン−4−イル]−2(R)−[3,3−ジフルオロ−1(R)−シクロペンチル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセトアミド(J−104135)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−N−[1−[4(S)−メチルヘキシル]ピペリジン−4−イル]−2−フェニルアセトアミド(J−106366)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−N−[1−(4−メチル−3−ペンテニル)−4−ピペリジニル]−2−フェニルアセトアミド(J−104129)、1−[4−(2−アミノエチル)ピペリジン−1−イル]−2(R)−[3,3−ジフルオロシクロペント−1(R)−イル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン−1−オン(万有−280634)、N−[N−[2−[N−[1−(シクロヘキシルメチル)ピペリジン−3(R)−イルメチル]カルバモイル]エチル]カルバモイルメチル]−3,3,3−トリフェニルプロピオンアミド(万有 CPTP)、2(R)−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニル酢酸 4−(3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル)−2−ブチニル エステル(Ranbaxy 364057)、3(R)−[4,4−ビス(4−フルオロフェニル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]−1−メチル−1−[2−オキソ−2−(3−チエニル)エチル]ピロリジニウムアイオダイド、N−[1−(3−ヒドロキシベンジル)−1−メチルピペリジニウム−3(S)−イル]−N−[N−[4−(イソプロポキシカルボニル)フェニル]カルバモイル]−L−チロシンアミド トリフルオロアセテート、UCB−101333、OrM3(Merck)、7−エンド−(2−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルアセトキシ)−9,9−ジメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0(2,4)]ノナン塩、3(R)−[4,4−ビス(4−フルオロフェニル)−2−オキソイミダゾリジン−1−イル]−1−メチル−1−(2−フェニルエチル)ピロリジニウム アイオダイド、トランス−4−[2−[ヒドロキシ−2,2−(ジチエン−2−イル)アセトキシ]−1−メチル−1−(2−フェノキシエチル)ピペリジニウム ブロマイド(Novartis (412682))、7−(2,2−ジフェニルプロピオニルオキシ)−7,9,9−トリメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0*2,4*]ノナン塩、7−ヒドロキシ−7,9,9−トリメチル−3−オキサ−9−アゾニアトリシクロ[3.3.1.0*2,4*]ノナン 9−メチル−9H−フルオレン−9−カルボン酸エステル塩(それらの全ては、所望によりそれらのラセミ体形態、エナンチオマー形態、ジアステレオマー形態およびそれらの混合物、ならびに所望によりそれらの薬理学的に適合性の酸付加塩形態である)からなる群から選択される抗コリン剤である、請求項5または6記載の医薬組成物。
【請求項9】
該他の治療剤が、二マレイン酸ベナフェントリン、エタゾレート、デンブフィリン、ロリプラム、シパムフィリン、ザルダベリン、アロフィリン、フィラミナスト、チペルカスト、トフィミラスト、ピクラミラスト、トラフェントリン、メソプラム、塩酸ドロタベリン、リリミラスト、ロフルミラスト、シロミラスト、オグレミラスト、アプレミラスト、テトミラスト、フィラミナスト、(R)−(+)−4−[2−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)−2−フェニルエチル]ピリジン(CDP−840)、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−2−[1−(4−フルオロベンジル)−5−ヒドロキシ−1H−インドール−3−イル]−2−オキソアセトアミド(GSK−842470)、9−(2−フルオロベンジル)−N6−メチル−2−(トリフルオロメチル)アデニン(NCS−613)、N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジニル)−8−メトキシキノリン−5−カルボキサミド(D−4418)、N−[9−メチル−4−オキソ−1−フェニル−3,4,6,7−テトラヒドロピロロ[3,2,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン−3(R)−イル]ピリジン−4−カルボキサミド、塩酸3−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシベンジル]−6−(エチルアミノ)−8−イソプロピル−3H−プリン(V−11294A)、塩酸6−[3−(N,N−ジメチルカルバモイル)フェニルスルホニル]−4−(3−メトキシフェニルアミノ)−8−メチルキノリン−3−カルボキサミド(GSK−256066)、4−[6,7−ジエトキシ−2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン−1−イル]−1−(2−メトキシエチル)ピリジン−2(1H)−オン(T−440)、(−)−トランス−2−[3’−[3−(N−シクロプロピルカルバモイル)−4−オキソ−1,4−ジヒドロ−1,8−ナフチリジン−1−イル]−3−フルオロビフェニル−4−イル]シクロプロパンカルボン酸(MK−0873)、CDC−801、UK−500001、BLX−914、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン、シス[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オール、CDC−801、5(S)−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]−3(S)−(3−メチルベンジル)ピペリジン−2−オン(IPL−455903)、ONO−6126(Eur Respir J 2003, 22(Suppl. 45): Abst 2557)、ならびにPCT特許出願番号WO03/097613、WO2004/058729、WO2005/049581、WO2005/123693およびWO2005/123692にて特許請求される化合物類からなる群から選択されるPDE4阻害剤である、請求項5または6記載の医薬組成物。
【請求項10】
該他の治療剤が、フロ酸モメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、チオトロピウム塩、グリコプロリウム(glycopirrolium)塩、3−[2−ヒドロキシ−2,2−ビス(2−チエニル)アセトキシ]−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、1−(2−フェニルエチル)−3−(9H−キサンテン−9−イルカルボニルオキシ)−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン塩、ロリプラム、ロフルミラストおよびシロミラストからなる群から選択される、請求項5ないし9のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1または2記載の塩、および請求項5ないし10のいずれか一項記載の1種以上の他の治療剤を含む、組合せ剤。
【請求項12】
β2アドレナリン受容体活性と関係する病状または疾患の処置における使用のための、請求項1または2記載の塩、請求項3ないし10のいずれか一項記載の医薬組成物、または請求項11記載の組合せ剤。
【請求項13】
該病状または疾患が、喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項12記載の塩。
【請求項14】
請求項12または13記載の病状または疾患の処置のための医薬の製造における、請求項1または2記載の塩、請求項3ないし10のいずれか一項記載の医薬組成物、または請求項11記載の組合せ剤の使用。
【請求項15】
請求項12または13記載の病状または疾患に罹患する対象の処置方法であって、有効量の、請求項1または2記載の塩、請求項3ないし10のいずれか一項記載の医薬組成物、または請求項11記載の組合せ剤を、該対象に投与することを含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−513424(P2012−513424A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542704(P2011−542704)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008970
【国際公開番号】WO2010/072354
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(598032139)アルミラル・ソシエダッド・アノニマ (69)
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
【Fターム(参考)】