説明

π共役有機化合物及びその製造方法、並びに該π共役有機化合物の(共)重合体

【課題】高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高い化合物を合成する。
【解決手段】チアゾール縮環ビ(ヘテロアリール)構造を有する化合物を、オルト位にアリールカルボニル基を有するジチアゾリルアセチレンの分子内二重5−exo環化反応により合成する。当該チアゾール縮環ビ(ヘテロアリール)構造を有する化合物は、高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役有機化合物及びその製造方法、並びに該π共役有機化合物の(共)重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特徴的な電子構造や構造特性を有するπ共役骨格の開発は,有機EL、有機薄膜トランジスタ、太陽電池等に代表される有機エレクトロニクス材料への応用の可能性から、益々その重要性が高まっている。そのため、優れた機能を有する、新たなπ共役骨格の開発が活発におこなわれている。
【0003】
これらのなかでも、オリゴアレーン等の鎖状π共役系の母骨格に対して縮環部位を導入する手法は、母骨格の電子構造、構造特性等に大きな変化をもたらすことが期待される。
【0004】
その例として注目を集めている化合物の一つに,ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン等に代表されるベンゾヘテロール誘導体が挙げられる。例えば、ポリ(ベンゾ[c]チオフェン)のバンドギャップは、対応するポリチオフェンの2.0eVと比較して、1.0eVと狭いバンドギャップを有している(非特許文献1)。
【0005】
このため、これらのベンゾヘテロール誘導体は、高平面性の分子骨格と狭いバンドギャップを有することから、有機半導体の基本骨格として注目を集めている。しかしながら、縮環キノイド構造のために安定性に乏しく、これまで実用化には至っていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Christopher, L. J.; Higgins, S. J.; Christensen, P. A. J. Mater. Chem.2002, 12, 758.
【非特許文献2】Pomerantz, M.; Gu, X. Synth. Met. 1997, 84, 243.
【非特許文献3】Pomerantz, M.; Gu, X.; Zhang, S. X. Macromolecules. 2001, 34, 1817.
【非特許文献4】Stangeland, E.; Sammakia, T. J. Org. Chem. 2004, 69, 2381.
【非特許文献5】Sung, A.; Ling, M. H.; Tang, M. L.; Bao, Z.; Locklin, J. Chem. Mater. 2007, 19, 2342.
【非特許文献6】電気化学測定マニュアル 基礎編,電気化学会編,丸善,2002, 122.
【非特許文献7】Macromolecules 2005, 37, 8978.
【非特許文献8】T. Yamamoto, K. Osakada, T. Wakabayashi, A. Yamamoto, Makromol. Chem. Rapid Commun. 1985, 6, 671.
【非特許文献9】T. Yamamoto, H. Suganuma, T. Maruyama, K. Kubota, J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1995, 1613.
【非特許文献10】T. Yamamoto, H. Suganuma, T. Maruyama, T. Inoue, Y. Muramatsu, M. Arai, D. Komarudin, N. Ooba, S. Tomaru, S. Sasaki, K. Kubota, Chem. Mater. 1997, 9, 1217.
【非特許文献11】T. Yamamoto, Bull. Chem. Soc. Jpn. 2010, 83, 431. (総説)
【非特許文献12】I. Osaka, T. Abe, S. Shinamura, K. Takimiya, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 6852.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ベンゾヘテロール誘導体は、化学的安定性に欠けるものであるが、縮環部位を、チエノチオフェン(非特許文献2〜3)等のように、ベンゼンより芳香属性の低いヘテロ芳香環に置き換えれば、縮環キノイド構造の寄与が減少するものと考えられ、ベンゾヘテロールと比較して、より化学的安定性の向上が期待される。
【0008】
この観点から、本発明は、高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高い化合物を合成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、チアゾール縮環ビ(ヘテロアリール)構造を有する化合物が、オルト位にアリールカルボニル基を有するジチアゾリルアセチレンの分子内二重5−exo環化反応により合成できることを見出した。また、当該チアゾール縮環ビ(ヘテロアリール)構造を有する化合物は、高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高いことを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、完成されたものである。すなわち、本発明は、以下の項1〜10に係る発明を包含する。
【0010】
項1.一般式(A):
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RA1〜RA4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子、又はボリル基である。]
で示されるπ共役有機化合物。
【0013】
項2.一般式(A1):
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、2個のE及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される、項1に記載のπ共役有機化合物。
【0016】
項3.2個のEが同じか又は異なり、それぞれS又はO;RA1及びRA2が同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基;RA3及びRA4が同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基である、項1又は2に記載のπ共役有機化合物。
【0017】
項4.一般式(A):
【0018】
【化3】

【0019】
[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RA1〜RA4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示されるπ共役有機化合物の製造方法であって、
(I)一般式(B):
【0020】
【化4】

【0021】
[式中、W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RB1〜RB4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示される化合物を用いて分子内二重5−exo環化反応を施す工程
を備える、製造方法。
【0022】
項5.前記工程(I)が、一般式(B1):
【0023】
【化5】

【0024】
[式中、RB1〜RB4は前記に同じである。]
で示される化合物を用いて、分子内二重5−exo環化反応を施すことにより、一般式(A1):
【0025】
【化6】

【0026】
[式中、2個のE及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される化合物を製造する工程である、項4に記載の製造方法。
【0027】
項6.前記一般式(B)において、RB1及びRB2が同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基;RB3及びRB4が同じか又は異なり、それぞれ−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、且つ、
前記一般式(A)において、2個のEが同じか又は異なり、S又はO;RA1及びRA2が同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基;RA3及びRA4が同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基である、項4又は5に記載の製造方法。
【0028】
項7.前記工程(I)が、一般式(B)で示される化合物と、一般式(D):
【0029】
【化7】

【0030】
[式中、2個のRは同じか又は異なり、それぞれアルキルチオ基、アリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリール基である。]
で示される化合物を用いて分子内二重5−exo環化反応を施す工程である、項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0031】
項8.前記工程(I)が、光照射して分子内二重5−exo環化反応を施す工程を備える、項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0032】
項9.一般式(E):
【0033】
【化8】

【0034】
[式中、W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は同じか又は異なり、それぞれ−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子)で示される基又は置換基を有していてもよいアリール基;Rはハロゲン原子、一般式(E1):
【0035】
【化9】

【0036】
(RB1aは置換基を有していてもよいアリール基)
で示される基、又は一般式(E2):
【0037】
【化10】

【0038】
(RB1aは前記に同じ)
で示される基;Rはハロゲン原子、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基、一般式(E3):
【0039】
【化11】

【0040】
(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は前記に同じ;Xはハロゲン原子)
で示される基、一般式(E4):
【0041】
【化12】

【0042】
(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は前記に同じ;RB2aは置換基を有していてもよいアリール基)
で示される基、又は一般式(E5):
【0043】
【化13】

【0044】
(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’及びRB2aは前記に同じ)
で示される基;RとRは同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物。
【0045】
項10.一般式(C):
【0046】
【化14】

【0047】
[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RC1及びRC2は同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリーレン基;RC3及びRC4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示される単位を繰り返し単位として有する、π共役有機化合物の(共)重合体。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高い化合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例11で得られた化合物のX線結晶構造解析の結果を示す図面である。
【図2】実施例12で得られた化合物のX線結晶構造解析の結果を示す図面である。
【図3】実施例11で得られた化合物のパッキング構造を示す図面である。
【図4】実施例12で得られた化合物のパッキング構造を示す図面である。
【図5】実施例11〜13で得られた化合物のジクロロメタン中における紫外可視吸収スペクトルである。なお、図中、29a〜cはそれぞれ実施例11、12、13で得た化合物である。
【図6】実施例11〜13で得られた化合物のジクロロメタン中における蛍光スペクトル(励起波長460nm)である。なお、図中、29a〜cはそれぞれ実施例11、12、13で得た化合物である。
【図7】実施例11〜13で得られた化合物及び参照化合物のフロンティア軌道のエネルギー準位、空間分布図及び第一遷移エネルギー (B3LYP/6-31G(d)レベルによる計算)を示す図面である。なお、39は参照化合物(5,5’-ジ(p-トリル)-2,2’-ビチオフェン)、29a〜29cはそれぞれ実施例11〜13で得た化合物を示す。
【図8】実施例11〜13で得られた化合物の結晶の写真(左から順番に実施例11、12、13)である。
【図9】実施例11〜13で得た化合物のサイクリックボルタモグラムである。なお、図中、29a〜cはそれぞれ実施例11、12、13で得た化合物である。
【図10】実施例12及び15で得られた化合物のジクロロメタン中における紫外可視吸収スペクトルである。なお、図中、29bは実施例12、44は実施例15で得た化合物である。
【図11】実施例12及び15で得られた化合物のジクロロメタン中における蛍光スペクトル(励起波長470nm)である。なお、図中、29bは実施例12、44は実施例15で得た化合物である。
【図12】実施例12及び15で得られた化合物のフロンティア軌道のエネルギー準位、空間分布図及び第一遷移エネルギーを示す図面である。なお、図中、29bは実施例12、44は実施例15で得た化合物である。
【図13】実施例15で得た化合物の微分パルスボルタモグラムである。
【図14】実施例12で得た化合物の微分パルスボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
1.π共役有機化合物
本発明のπ共役有機化合物は、一般式(A):
【0051】
【化15】

【0052】
[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RA1〜RA4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示される化合物(A)である。
【0053】
式(A)において、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はOである。特に、2個のEがともにSである場合には、特に化学的に安定な化合物が得られる。さらに、EがともにSである場合には、大気中での安定性に顕著に優れている。
【0054】
式(A)において、RA1〜RA4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。
【0055】
アリール基としては、炭素数が6〜50、好ましくは6〜20のものであれば特に制限はなく、例えば、フェニル基、オリゴアリール基(ナフチル基、アントリル基等)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、フェナンスレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。また、アリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、炭素数が1〜100のアルキル基及び置換アルキル基、炭素数が2〜50のアルケニル基及び置換アルケニル基、炭素数が6〜50のアリール基、炭素数が1〜100のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、及びボリル基等が挙げられる。この置換基を有する場合、置換基の数は1〜5個が好ましい。なお、これらの置換基がさらに置換基を有する場合、そのような置換基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等である。
【0056】
このようなアリール基としては、具体的には、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられ、このうち特に4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基等が好ましい。
【0057】
複素環基としては、環員数が5〜50、好ましくは5〜20のものであれば特に制限はなく、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等が挙げられる。また、複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、炭素数が1〜50のアルキル基及び置換アルキル基、炭素数が2〜50のアルケニル基および置換アルケニル基、炭素数が6〜50のアリール基、炭素数が1〜50のアルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、及びボリル基等が挙げられる。この置換基を有する場合、置換基の数は1〜4個が好ましい。
【0058】
アルキル基としては、炭素数が1〜100、好ましくは1〜20のものであれば特に制限はなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。アルキル基としては、環状アルキル基(シクロアルキル基)であってもよく、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、炭素数が2〜50のアルケニル基;エチニル基、プロパギル基、フェニルアセチニル基などのアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、ビニルオキシ基やアリルオキシ基などのアルケニルオキシ基、アリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基などのパーフルオロ基及びさらに長鎖のパーフルオロ基、アミノ基、ボリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、スルフィニル基、シリル基、アリール基、ヘテロ環基などが挙げられる。そのほかに、ニトロ基、ホルミル基、ニトロソ基、ホルミルオキシ基、イソシアノ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアノ基等が挙げられる。
【0059】
−SiRで示される基としては、特に制限はなく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、フェニルジメチルシリル基等が挙げられる。なかでも、Rが全てアルキル基であるトリアルキルシリル基が好ましく、TBDMSがより好ましい。
【0060】
なお、−SiRで示される基のうち、Rがボリル基の場合、ボリル基としては、特に制限はなく、ジメシチルボリル基、ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリル基、ジヒドロキシボリル基、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル基、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル基等が挙げられる。
【0061】
ハロゲン原子としては、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、ボリル基としては、上述した、−SiRで示される基のうち、Rがボリル基の場合に使用できるボリル基等が挙げられる。
【0062】
上記のなかでも、RA1〜RA4としては、水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましい。特に、RA1及びRA2が置換基を有していてもよいアリール基であり、且つ、RA3及びRA4が水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。特に、RA1及びRA2が置換基を有していてもよいアリール基であり、且つ、RA3及びRA4がともに水素原子であることがより好ましい。
【0063】
このような化合物(A)としては、具体的には、一般式(A1):
【0064】
【化16】

【0065】
[式中、E及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される化合物(A1)、一般式(A2):
【0066】
【化17】

【0067】
[式中、E及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される化合物(A2)、及び一般式(A3):
【0068】
【化18】

【0069】
[式中、E及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される化合物(A3)が挙げられる。
【0070】
これら化合物(A1)〜(A3)のなかでも、合成の容易さの点から、一般式(A1)で示される化合物(A1)が好ましい。
【0071】
以上のような観点から、本発明のπ共役有機化合物としては、
【0072】
【化19】

【0073】
[式中、2個のE’は同じか又は異なり、それぞれS又はO;RA1a〜RA4aは同じか又は異なり、RA1及びRA2が置換基を有していてもよいアリール基であり、RA3及びRA4が水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基である。]
で示される化合物(A1a)が好ましい。このうち特に、式(A1a)中、2個のE’がともにSである化合物は、大気中での安定性にさらに優れる点で好ましい。
【0074】
これらのπ共役有機化合物は、文献未記載の新規化合物であるが、高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高い化合物であるため、有機EL、有機薄膜トランジスタ、太陽電池等に使用される有機半導体として有用である。
【0075】
2.π共役有機化合物の製造方法
本発明のπ共役有機化合物は、以下の式:
【0076】
【化20】

【0077】
[式中、E、W〜W及びRA1〜RA4は前記に同じ;RB1〜RB4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基;RB1はRA1と同じ;RB2はRA2と同じ;RB3はRA3と同じでも異なっていてもよい;RB4はRA4と同じでも異なっていてもよい。]
で示される分子内二重5−exo環化反応により得られる。
【0078】
上記の一般式(A)及び(B)において、E、W〜W及びRA1〜RA4は、上述したものと同様である。
【0079】
上記の一般式(B)において、RB1〜RB4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiRで示される基、ハロゲン原子及びボリル基の具体例は、上述のRA1〜RA4におけるものと同様である。
【0080】
これらのなかでも、RB1〜RB4としては、水素原子、置換基を有していてもよいアリール基又は−SiRで示される基が好ましい。特に、RB1及びRB2が置換基を有していてもよいアリール基であり、且つ、RB3及びRB4が水素原子、置換基を有していてもよいアリール基又は−SiRで示される基であることが好ましい。特に、RB1及びRB2が置換基を有していてもよいアリール基であり、且つ、RB3及びRB4が置換基を有していてもよいアリール基又は−SiRで示される基であることがより好ましい。
【0081】
この反応は、具体的には、以下の式:
【0082】
【化21】

【0083】
[式中、E、RA1〜RA4及びRB1〜RB4は前記に同じ;RB1はRA1と同じ;RB2はRA2と同じ;RB3はRA3と同じでも異なっていてもよい;RB4はRA4と同じでも異なっていてもよい。]
【0084】
【化22】

【0085】
[式中、E、RA1〜RA4及びRB1〜RB4は前記に同じ;RB1はRA1と同じ;RB2はRA2と同じ;RB3はRA3と同じでも異なっていてもよい;RB4はRA4と同じでも異なっていてもよい。]
【0086】
【化23】

【0087】
[式中、E、RA1〜RA4及びRB1〜RB4は前記に同じ;RB1はRA1と同じ;RB2はRA2と同じ;RB3はRA3と同じでも異なっていてもよい;RB4はRA4と同じでも異なっていてもよい。]
等が挙げられる。
【0088】
上記の3つの反応式のなかでも、以下の式:
【0089】
【化24】

【0090】
[式中、E、RA1〜RA4及びRB1〜RB4は前記に同じ;RB1はRA1と同じ;RB2はRA2と同じ;RB3はRA3と同じでも異なっていてもよい;RB4はRA4と同じでも異なっていてもよい。]
で示される反応式を経ることが好ましい。
【0091】
以下、当該反応工程について、目的物ごとに詳細に説明する。
【0092】
<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>
一般式(A)において、EがいずれもSである場合の製造方法を説明する。
【0093】
具体的には、一般式(B)で示される化合物(B)と、一般式(D):
【0094】
【化25】

【0095】
[式中、2個のRは同じか又は異なり、それぞれアルキルチオ基、アリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリール基である。]
で示される化合物を反応させて、分子内二重5−exo環化反応を起こさせればよい。
【0096】
一般式(D)で示される化合物は、ローソン試薬(Lawesson試薬)又はその類縁体として知られる化合物を包含するものである。
【0097】
この一般式(D)中、2個のRは通常は同一の基であるが、異なっていてもよい。具体的には、アルキルチオ基、アリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリール基である。
【0098】
アルキルチオ基としては、炭素数が1〜100、好ましくは1〜20のアルキル基と硫黄原子が結合したものが例示される。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、チオヘプチル基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0099】
アリールチオ基としては、炭素数が6〜50、好ましくは6〜20のアリール基と硫黄原子が結合したものが例示される。例えば、フェニルチオ基、オリゴアリールチオ基(ナフチルチオ基等)等が挙げられる。
【0100】
置換基を有していてもよいアリール基としては、上述したものが例示される。
【0101】
このような条件を満たす一般式(D)で示される化合物としては、具体的には、
2個のRがメトキシフェニル基:ローソン試薬(Lawesson試薬)
2個のRがフェノキシフェニル基:ベレオー試薬
2個のRがアルキルチオ基:デービー試薬(アルキル基:メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基)
2個のRがフェニルチオ基:ジャパニーズ試薬
等が挙げられる。
【0102】
当該反応工程は、通常溶媒中で行う。
【0103】
溶媒の種類には特に限定はなく、極性溶媒でも非極性溶媒でもよい。
【0104】
極性溶媒としては、プロトン性極性溶媒でも非プロトン性極性溶媒でもよい。極性溶媒としては、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、アニソール、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、アルコール(メタノール、エタノール、アリルアルコール等)、エステル化合物(酢酸エチル等)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム)が挙げられる。
【0105】
非プロトン性極性溶媒としては、具体的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)等)、ウレア系溶媒、リン酸アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロアルカン系溶媒等が挙げられる。
【0106】
非極性溶媒としては、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。脂肪族有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンが挙げられる。芳香族有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。
【0107】
これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0108】
当該反応工程において、一般式(B)で示される化合物と、一般式(D)で示される化合物との量及び割合には特に限定はない。これらは、必要に応じて適宜調整することができる。
【0109】
当該反応工程の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜72時間、好ましくは2〜15時間とすることができる。反応温度は、通常還流下にて行われ、溶媒によって異なるが、例えば、20〜200℃、好ましくは40〜150℃とすることができる。反応雰囲気も特に限定はないが、乾燥ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応雰囲気として具体的には、例えば、乾燥空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。本発明では、π共役有機化合物を得ることができる限り、反応系に他の物質を添加してもよい。
【0110】
本発明の製造方法は、必要に応じて他の工程を含んでいてもよい。例えば、一般式(B)において、RB3及びRB4が水素原子以外である場合には、上記の分子内二重5−exo環化反応とともに、これらの脱離反応が起こる。この脱離反応が不完全な場合には、この後、公知の方法により、完全に脱離させてもよい。例えば、RB3及びRB4が−SiRで示される基である場合、例えば、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化セシウム(CsF)等を用いて、必要に応じてテトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等の1種又は2種以上の溶媒中で脱離させればよい。
【0111】
また、反応終了後、公知の方法、例えば、蒸留、吸着、抽出、及び再結晶等の方法又はこれらの方法を組み合わせて、π共役有機化合物の回収及び精製を行ってもよい。
【0112】
この方法の反応機構は、明確ではないが、以下のとおりと考えられる。なお、以下の図では、一般式(B1)で示される化合物を用いて一般式(A1)で示される化合物を製造する場合について示しているが、一般式(B2)又は(B3)で示される化合物を用いて一般式(A2)又は(A3)で示される化合物を製造する場合も同様である。
【0113】
【化26】

【0114】
[式中、W〜W及びRB1〜RB4は前記に同じ;この工程により、RA1〜RA4がRB1〜RB4であるπ共役有機化合物が得られる。]
【0115】
具体的には、(i)カルボニル基のローソン試薬(Lawesson 試薬)によるチオカルボニル基への変換、(ii)チオカルボニル基のアセチレンに対する求核的5−exo環化、及び(iii)生じたチオラートのアレンに対する求核的環化の三段階からなると考えられる。
【0116】
<目的物が、チアゾロ[2,3−c]フラン骨格を有する場合>
一般式(A)において、EがいずれもOである場合の製造方法を説明する。
【0117】
一般式(B)で記載される化合物において、RB3及びRB4の少なくとも1つが水素原子ではない場合、まず、公知の方法により、これらを脱離する。例えば、RB3及びRB4が−SiRで示される基である場合、例えば、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化セシウム(CsF)等を用いて、必要に応じて<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>にて上記した1種又は2種以上の反応溶媒中で脱離させればよい。
【0118】
これにより、以下の式:
【0119】
【化27】

【0120】
[式中、W〜W及びRB1〜RB4は前記に同じである。]
で示される経路、具体的には、
【0121】
【化28】

【0122】
[式中、RB1〜RB4は前記に同じである。]
【0123】
【化29】

【0124】
[式中、RB1〜RB4は前記に同じである。]
【0125】
【化30】

【0126】
[式中、RB1〜RB4は前記に同じである。]
で示される経路により、脱離反応が進行する。
【0127】
次に、光を照射させることで、分子内二重5−exo環化反応を進行させれば、本発明のπ共役有機化合物が得られる。この際、光照射の方法としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ等を用い、波長250〜370nm程度の紫外光を照射すればよい。
【0128】
当該反応は、通常溶媒中で行われる。この際使用できる溶媒は、特に制限されないが、例えば、<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>にて上記した1種又は2種以上の反応溶媒等が挙げられる。
【0129】
当該反応工程の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜1000分、好ましくは5〜60分とすることができる。反応温度は−100〜100℃、好ましくは0〜30℃とすることができる。反応雰囲気には、生成物の分解を抑制するため、不活性ガス雰囲気を用いることが好ましい。本発明では、π共役有機化合物を得ることができる限り、反応系に他の物質を添加してもよい。
【0130】
3.中間体
本発明は、一般式(E):
【0131】
【化31】

【0132】
[式中、W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は同じか又は異なり、それぞれ−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子)で示される基又は置換基を有していてもよいアリール基;Rはハロゲン原子、一般式(E1):
【0133】
【化32】

【0134】
(RB1aは置換基を有していてもよいアリール基)
で示される基、又は一般式(E2):
【0135】
【化33】

【0136】
(RB1aは前記に同じ)
で示される基;Rはハロゲン原子、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基、一般式(E3):
【0137】
【化34】

【0138】
(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は前記に同じ;Xはハロゲン原子)
で示される基、一般式(E4):
【0139】
【化35】

【0140】
(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は前記に同じ;RB2aは置換基を有していてもよいアリール基)
で示される基、又は一般式(E5):
【0141】
【化36】

【0142】
(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’及びRB2aは前記に同じ)
で示される基;RとRは同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物にも関する。
【0143】
一般式(E)において、−SiRについては、その具体例等は上述したものと同様である。
【0144】
一般式(E)において、Rは、ハロゲン原子、一般式(E1)で示される基、又は一般式(E2)で示される基である。
【0145】
ハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0146】
一般式(E1)及び(E2)において、RB1aは、置換基を有していてもよいアリール基であるが、その具体例は、式(B)におけるRB1〜RB4におけるものと同様である。
【0147】
このようなRとしては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基等が挙げられる。
【0148】
一般式(E)において、Rは、ハロゲン原子、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基、一般式(E3)で示される基、一般式(E4)で示される基、又は一般式(E5)で示される基である。
【0149】
一般式(E3)〜(E5)において、−SiRについては、その具体例等は上述したものと同様である。
【0150】
一般式(E3)において、Xはハロゲン原子であり、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0151】
一般式(E4)及び(E5)において、RB2aは、置換基を有していてもよいアリール基であるが、その具体例は、式(B)におけるRB1〜RB4におけるものと同様である。
【0152】
このようなRとしては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基、
【0153】
【化37】

【0154】
等が挙げられる。
【0155】
このような条件を満たす、一般式(E)で示される化合物としては、一般式(E−1):
【0156】
【化38】

【0157】
[式中、Rは前記に同じ;2個のX’は同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子である。]
で示される化合物、一般式(E−2):
【0158】
【化39】

【0159】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
で示される化合物、一般式(E−3):
【0160】
【化40】

【0161】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
で示される化合物、一般式(E−4):
【0162】
【化41】

【0163】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
で示される化合物、一般式(E−5):
【0164】
【化42】

【0165】
[式中、R、RB1a及びRB2aは前記に同じである。]
で示される化合物、一般式(E−6):
【0166】
【化43】

【0167】
[式中、R、RB1a及びRB2aは前記に同じである。]
等が挙げられる。
【0168】
これらの化合物群は、上述した本発明のπ共役有機化合物の合成中間体として使用できる点で有用な化合物群であり、文献未記載の新規化合物である。
【0169】
特に、一般式(E−6)で示される化合物は、一般式(B1)で示される化合物に含まれるものであり、本発明のπ共役有機化合物の原料として直接本発明の製造方法を適用することができる。
【0170】
この一般式(E−6)で示される化合物は、特にこれに制限されるわけではないが、一般式(E−1)〜(E−5)で示される化合物を経由して合成することができる。具体的には、以下の反応式:
【0171】
【化44】

【0172】
[式中、R、X’、RB1a及びRB2aは前記に同じである。]
で示される経路を経ることにより得られる。
【0173】
以下、各ステップについて説明する。
【0174】
<ステップ(1)>
【0175】
【化45】

【0176】
[式中、Rは前記に同じである。]
【0177】
ステップ(1)では、まず、有機リチウム化合物を用いて、ハロゲン−金属交換反応を行う(非特許文献4参照)。この際使用できる有機リチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム等が挙げられる。これらのうち、n−ブチルリチウム等が好ましい。
【0178】
上記有機リチウム化合物の使用量は、原料のチアゾール化合物1モルに対して、1〜2モルが好ましく、1〜1.1モルがより好ましい。
【0179】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0180】
反応時間は5〜600分程度、反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させる有機リチウム化合物が溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。乾燥空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
【0181】
次に、SiR(Rは前記に同じ;Xはハロゲン原子)で示されるシラン化合物を用いて反応させることで、ステップ(1)が終了する。この際使用できるシラン化合物としては、種々挙げられるが、後述のステップ(5)の容易さを考慮すると、t−ブチルジメチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド等が好ましい。
【0182】
上記シラン化合物の使用量は、原料のチアゾール化合物1モルに対して、1〜10モルが好ましく、1〜1.1モルがより好ましい。
【0183】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限はなく、<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>にて上記した1種又は2種以上の反応溶媒等が挙げられる。
【0184】
この際の反応条件には特に限定はない。通常反応時間は1分以上とすればよい。反応時間が長くても特に不利益はないが、時間がかかるため、通常5000分以下である。反応温度は−110〜30℃とすればよい。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0185】
<ステップ(2)>
【0186】
【化46】

【0187】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
【0188】
ステップ(2)では、チアゾール環の5位をハロゲン化する。ここでは、まず、有機リチウム化合物を用いて5位をリチオ化する。
【0189】
使用できる有機リチウム化合物は、上記のステップ(1)と同様の化合物に加えて、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiTMP(リチウムテトラメチルピペリジド)等のリチウムアミドも使用できる。
【0190】
上記有機リチウム化合物の使用量は、シリル化されたチアゾール化合物1モルに対して、1〜2モルが好ましく、1〜1.1モルがより好ましい。
【0191】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0192】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜600分、反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させる有機リチウム化合物が溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0193】
次に、ハロゲン化炭化水素を用いてハロゲン化すればよい。
【0194】
使用できるハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジブロモエタン、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,2−ジヨードエタン等が挙げられる。これらのうち、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン等が好ましい。
【0195】
また、上記ハロゲン化炭化水素の使用量は、シリル化されたチアゾール化合物1モルに対して、1〜50モルが好ましく、1〜2モルがより好ましい。
【0196】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0197】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜1000分、反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させる有機リチウム化合物が溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0198】
<ステップ(3)>
【0199】
【化47】

【0200】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
【0201】
ステップ(3)において、原料の化合物において5位に置換しているハロゲンと、一般式(E−1)で示される化合物において5位に置換しているハロゲンが同一の場合には、単にハロゲンを導入すればよい。しかし、得ようとしている一般式(E−1)で示される化合物において5位に置換しているハロゲン(例えばヨウ素原子)が、原料の化合物において5位に置換しているハロゲン(例えば臭素原子)と異なる場合には、ハロゲン転位反応により例えば臭素を4位に転位した後に、ハロゲン(例えばヨウ素原子)を導入する必要がある。
【0202】
ハロゲン転位反応を行う場合には、例えば、リチウムN,N−ジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムテトラメチルピペリジド(LiTMP)等のリチウムアミド等を用いればよい。
【0203】
この化合物の使用量は、原料の化合物1モルに対して、1〜2モルが好ましく、1〜1.2モルがより好ましい。
【0204】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0205】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜1000分、反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させるリチウムアミドが溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0206】
ハロゲン転位反応を行った場合は5位、ハロゲン転位反応を行わない場合は4位に、ハロゲンを導入すればよい。この際、ハロゲン、1,2−ジヨードエタン,N−ハロゲン化スクシンイミド等を使用すればよい。
【0207】
これらハロゲン等の使用量は、原料の化合物1モルに対して、1〜10モルが好ましく、1〜1.1モルがより好ましい。
【0208】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限はなく、<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>にて上記した1種又は2種以上の反応溶媒等が挙げられる。
【0209】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1分以上とすればよい。反応時間が長くても特に不利益はないが、時間がかかるため、通常5000分以下である。反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させる有機リチウム化合物が溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0210】
<ステップ(4)>
【0211】
【化48】

【0212】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
ステップ(4)では、薗頭−萩原カップリングにより、−C≡C−SiRで示される基を導入する。
【0213】
このカップリングは、通常、パラジウム化合物及び銅化合物の存在下で行われる。
【0214】
パラジウム化合物としては、金属パラジウムをはじめ、有機化合物(高分子化合物を含む)等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。具体的には、Pd(PPh(Phはフェニル基)、PdCl(PPh(Phはフェニル基)、Pd(OAc)(Acはアセチル基)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリt−ブチルホスフィノ)パラジウム(0)等が挙げられる。本工程では、PdCl(PPh等が好ましい。
【0215】
銅化合物としては、ハロゲン化銅が好ましく、ヨウ化銅がより好ましい。
【0216】
パラジウム化合物の使用量は、一般式(E−1)で示される化合物1モルに対して、通常、0.01〜0.2モル、好ましくは0.01〜0.05モル程度とすればよい。また、銅化合物の使用量は、一般式(E−1)で示される化合物1モルに対して、通常、0.01〜0.2モル、好ましくは0.01〜0.05モル程度とすればよい。
【0217】
このカップリングでは、他に、アミン化合物及びH−C≡C−SiRで示される化合物を使用する。
【0218】
アミン化合物としては、具体的には、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン等が使用され、これらは溶媒としての役割も有する。
【0219】
H−C≡C−SiRで示される化合物としては、Rが上記したものである限り特に制限はないが、例えば、トリメチルシリルアセチレン等が使用される。
【0220】
アミン化合物の使用量は、一般式(E−1)で示される化合物1モルに対して、通常、1モル以上である。なお、使用量は、多ければ多いほどよく、上限値は特にないが、50モル程度とすればよい。また、H−C≡C−SiRで示される化合物の使用量は、一般式(E−1)で示される化合物1モルに対して、通常、1〜2モル、好ましくは1〜1.1モル程度とすればよい。
【0221】
上記したように、アミン化合物が溶媒でもあるが、さらに別途溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、使用できる溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0222】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜5000分、反応温度は−78〜200℃とすればよい。反応雰囲気には、酸素を除いた不活性ガス雰囲気等を用いることが好ましい。
【0223】
<ステップ(5)>
【0224】
【化49】

【0225】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
【0226】
ステップ(5)では、アセチレン末端の−SiRで示される基のみを脱保護する。この場合、2位の保護基は、塩基に対して耐性のあるt−ブチルジメチルシリル基であることが好ましい。具体的には、塩基を使用してアセチレン末端の−SiRで示される基を脱保護する。
【0227】
具体的には、塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等が使用できる。好ましくは,炭酸カリウムを用いればよい。
【0228】
酸化剤の使用量は、一般式(E−2)で示される化合物1モルに対して、通常、0.01〜1モル、好ましくは0.1〜0.2モル程度とすればよい。
【0229】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限はなく、<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>にて上記した1種又は2種以上の反応溶媒等が挙げられるが、THF/エタノールの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0230】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜5000分、反応温度は−78〜30℃とすればよい。反応雰囲気も特に限定はなく、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
【0231】
<ステップ(6)>
【0232】
【化50】

【0233】
[式中、R及びX’は前記に同じである。]
【0234】
ステップ(6)では、一般式(E−3)で示される化合物と一般式(E−1)で示される化合物を用いて、薗頭−萩原カップリングを行う。このカップリングで使用する化合物は、ステップ(4)と同様である。つまり、H−C≡C−SiRで示される化合物の代わりに、一般式(E−1)で示される化合物を使用する。
【0235】
パラジウム化合物の使用量は、一般式(E−3)で示される化合物1モルに対して、通常、0.01〜0.2モル、好ましくは0.01〜0.05モル程度とすればよい。また、銅化合物の使用量は、一般式(E−3)で示される化合物1モルに対して、通常、0.01〜.0.2モル、好ましくは0.01〜0.05モル程度とすればよい。アミン化合物の使用量は、一般式(E−3)で示される化合物1モルに対して、通常、1モル以上である。なお、使用量は、多ければ多いほどよく、上限値は特にないが、50モル程度とすればよい。また、一般式(E−1)で示される化合物の使用量は、一般式(E−3)で示される化合物1モルに対して、通常、0.5〜2モル、好ましくは1〜1.2モル程度とすればよい。
【0236】
この工程でも、アミン化合物が溶媒でもあるが、さらに別途溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、使用できる溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0237】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜5000分、反応温度は−78〜200℃とすればよい。反応雰囲気には、酸素を除いた不活性ガス雰囲気等を用いることが好ましい。
【0238】
<ステップ(7)>
【0239】
【化51】

【0240】
[式中、R、X’、RB1a及びRB2aは前記に同じである。]
【0241】
ステップ(7)では、ステップ(1)と同様に、まず、有機リチウム化合物を用いて、ハロゲン−金属交換反応を行う。この際使用できる有機リチウム化合物は、ステップ(1)と同様である。
【0242】
上記有機リチウム化合物の使用量は、一般式(E−4)で示される化合物1モルに対して、2〜5モルが好ましく、2〜4モルがより好ましい。
【0243】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0244】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1分以上とすればよい。反応時間が長くても特に不利益はないが、時間がかかるため、通常5000分以下である。反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させる有機リチウム化合物が溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0245】
次に、所望のアリール基を有するアリールアルデヒドを用いて反応させることで、ステップ(7)が終了する。この際使用できるアリールアルデヒドとしては、例えば、
【0246】
【化52】

【0247】
等が挙げられる。
【0248】
上記アリールアルデヒドの使用量は、一般式(E−4)で示される化合物1モルに対して、2〜20モルが好ましく、2〜3モルがより好ましい。
【0249】
この反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、特に制限はなく、特に制限されるわけではないが、通常エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒等が用いられる。例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
【0250】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1分以上とすればよい。反応時間が長くても特に不利益はないが、時間がかかるため、通常1000分以下である。反応温度は−110〜100℃程度とすればよい。なお、反応温度は、溶媒によって異なり、系中で発生させる有機リチウム化合物が溶媒と反応しない温度とすることがより好ましい。具体的には、THFを使用する場合は−80℃程度以下とすることが好ましいが、炭化水素系溶媒を使用する場合には100℃程度までの加熱が可能である。反応雰囲気には、乾燥ガスを用いることが好ましい。
【0251】
<ステップ(8)>
【0252】
【化53】

【0253】
[式中、R、RB1a及びRB2aは前記に同じである。]
【0254】
ステップ(8)では、一般式(E−5)で示される化合物を酸化させればよい。この際使用できる酸化剤は、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)、二酸化マンガン、ジョーンズ試薬、クロロクロム酸ピリジニウム、二クロム酸ピリジニウム等が挙げられる。
【0255】
上記酸化剤の使用量は、一般式(E−5)で示される化合物1モルに対して、2〜20モルが好ましく、2〜3モルがより好ましい。
【0256】
この反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、特に制限はなく、<目的物が、チアゾロ[2,3−c]チオフェン骨格を有する場合>にて上記した1種又は2種以上の反応溶媒等が挙げられる。
【0257】
この際の反応条件には特に限定はない。反応時間は1〜1000分、反応温度は0〜100℃とすればよい。反応雰囲気も特に限定はなく、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気等が挙げられる。
【0258】
以上のステップ(1)〜(8)により、一般式(B1)で示される化合物に包含される概念である、一般式(E−6)で示される化合物を得ることができる。同様の方法により、一般式(B1)で示される化合物に包含される他の化合物も合成可能である。
【0259】
なお、チアゾール環の2位に置換する基はシリル系の基のみならず、アリール基のものも合成することができる。
【0260】
具体的には、以下の反応式:
【0261】
【化54】

【0262】
[式中、X’、RB1a及びRB2aは前記に同じ;Arは同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基である。]
で示される経路を経ることにより得られる。
【0263】
式中、Arは置換基を有していてもよいアリール基である。このような置換基を有していてもよいアリール基としては、前述したようなものが使用できる。
【0264】
<ステップ(1a)>
【0265】
【化55】

【0266】
[式中、X’及びArは前記に同じである。]
【0267】
ステップ(1a)では、2位にハロゲンを有するチアゾールと任意のアリール金属化合物とのクロスカップリング反応により、2位にアリール基を有するチアゾールを合成する。
【0268】
例えば、これに限定されるわけではないが、2位にハロゲンを有するチアゾールと任意のアリールボロン酸化合物とを出発原料とし、パラジウム化合物及び塩基を用いた鈴木−宮浦カップリング反応により、2位に任意のアリール基を導入すればよい。
【0269】
この際使用できるアリールボロン酸化合物としては、特に制限されない。例えば、フェニルボロン酸、4−メチルフェニルボロン酸、4−メトキシフェニルボロン酸、4−フルオロフェニルボロン酸、4−tert−ブチルフェニルボロン酸、3−フルオロ−4−メトキシフェニルボロン酸、3,4,5−トリメトキシフェニルボロン酸等が挙げられる。
【0270】
パラジウム化合物の種類及び配位子の添加の有無については特に限定はない。パラジウム化合物としては、例えば、酢酸パラジウム、Pd(PPh3)4、Pd2(dba)3、PdCl2(PPh3)2、Pd(tBu3)2等が好ましい。配位子を使用する場合には、酢酸パラジウムに配位子としてS−Phos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)を添加するのが特に好ましい。
【0271】
パラジウム化合物の使用量は、原料1モルに対して、通常0.01〜0.2モル、好ましくは0.01〜0.05モル程度とすればよい。添加物としてホスフィン化合物等の配位子を添加する場合には、原料1モルに対して、通常0.01〜0.5モル、好ましくは0.01〜0.10モル程度とすればよい。
【0272】
塩基の種類には特に限定はないが、使用できる塩基としては、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。リン酸カリウムを使用するのが特に好ましい。
【0273】
溶媒の種類には特に限定はないが、トルエン又はトルエンを水と任意の割合で混合させたものが特に好ましい。
【0274】
この際の反応雰囲気には特に限定はない。反応時間は1〜100時間、酸素を除いた不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0275】
<ステップ(2a)〜(8a)>
ステップ(2a)〜(8a)については、前述のステップ(2)〜(8)と同様の反応である。したがって、使用する薬品や反応条件等も同様である。
【0276】
また、一般式(B1)で示される化合物のみならず、同様の反応により、一般式(B2)及び(B3)で示される化合物を合成することも可能である。
【0277】
一般式(B2)で示される化合物を合成する場合、例えば、以下の反応式:
【0278】
【化56】

【0279】
[式中、X’、RB1a及びRB2aは前記に同じ;R’は同じか又は異なり、それぞれ−SiRで示される基又は置換基を有していてもよいアリール基である。]
により合成できる。
【0280】
ステップ(1b)及び(2b)は、ステップ(1)〜(2)、(1a)〜(2a)と同様である。
【0281】
その後、リチウム塩基(リチウムジイソプロピルアミド等)を作用させてチアゾール環4位の水素原子を引き抜き、ハロゲン転位反応を行った後、ハロゲンで捕捉する代わりに水で処理することで、2位にトリアルキルシリル基又はアリール基、4位にハロゲンを有するチアゾールを合成する(ステップ(3b))。
【0282】
この後、ステップ(4)と同様の園頭−荻原カップリング反応を行い(ステップ(4b))、その後、ステップ(5)と同様にアセチレン末端のシリル基を、塩基を用いて脱保護する(ステップ(5b))。
【0283】
さらに、ステップ(6)と同様に、ステップ(5b)で得られた化合物とステップ(3b)で得られた化合物間の園頭−荻原カップリング反応を行い(ステップ(6b))、さらにステップ(3)と同様に、低温でリチウム塩基を作用させた後にハロゲン化剤で捕捉する(ステップ(7b))。
【0284】
その後は、ステップ(7)及び(8)と同様の方法(ステップ(8b)及び(9b))で、環化前駆体となる一般式(B2)で示される化合物が合成できる。このように、一般式(B1)で示される化合物の合成方法を参考に、一般式(B2)で示される化合物を合成できる。
【0285】
一般式(B3)で示される化合物を合成する場合、例えば、以下の反応式:
【0286】
【化57】

【0287】
[式中、X’、R、RB1a及びRB2aは前記に同じ;R’は同じか又は異なり、それぞれ−SiRで示される基又は置換基を有していてもよいアリール基である。]
により合成できる。
【0288】
ステップ(1c)〜(5c)は、ステップ(1b)〜(5b)と同じである。
【0289】
ステップ(6)と同様に、ステップ(5c)で得られた化合物とステップ(3)で得られた化合物間の園頭−荻原カップリング反応を行い(ステップ(6c))、さらにステップ(3)と同様に、低温でリチウム塩基を作用させた後にハロゲン化剤で捕捉する(ステップ(7c))。
【0290】
その後は、ステップ(7)及び(8)と同様の方法(ステップ(8c)及び(9c))で、環化前駆体となる一般式(B3)で示される化合物が合成できる。このように、一般式(B1)で示される化合物の合成方法を参考に、一般式(B3)で示される化合物を合成できる。
【0291】
4.π共役有機化合物の(共)重合体
本発明のπ共役有機化合物の(共)重合体は、一般式(C):
【0292】
【化58】

【0293】
[式中、E、W〜Wは前記に同じ;RC1及びRC2は同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリーレン基;RC3及びRC4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示される単位を繰り返し単位として有するものである。
【0294】
式(C)において、RC3及びRC4はそれぞれRA3及びRA4と同じ、RC1及びRC2はそれぞれRA1及びRA2由来の基である。
【0295】
このような本発明のπ共役有機化合物の(共)重合体としては、具体的には、一般式(C1):
【0296】
【化59】

【0297】
[式中、E、RC1〜RC4は前記に同じである。]
で示される単位、一般式(C2):
【0298】
【化60】

【0299】
[式中、E及びRC1〜RC4は前記に同じである。]
で示される単位、及び一般式(C3):
【0300】
【化61】

【0301】
[式中、E及びRC1〜RC4は前記に同じである。]
で示される単位等が挙げられる。
【0302】
この本発明のπ共役有機化合物の(共)重合体は、特に制限されないが、本発明のπ共役有機化合物をモノマーとして用い、必要に応じて本発明のπ共役有機化合物と共重合可能なモノマーを用いて重合させることで得られる。重合の方法及び条件は特に制限はなく、公知のものを採用すればよい。
【0303】
具体的には、以下の方法等により合成可能である。なお、この合成方法にしたがえば、一般式(C2)及び(C3)で示される単位を有する(共)重合体も合成可能である。
【0304】
<重合前駆体>
(1)RA1及びRA2がベンゼン環を有する場合
【0305】
【化62】

【0306】
[式中、E及びRA3〜RA4は前記に同じ;RC5〜RC6は同じか又は異なり、それぞれオルト配向基;X”は同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子である。]
【0307】
ベンゼン環上にオルト配向基(例えばアルコキシ基、ハロゲン等)をもつ化合物に対して、塩基を作用させることで、選択的に隣接する炭素上の水素を引き抜いた後、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、臭素、NBS等で処理することで、対応するブロモ化体が得られる。また、ヨウ素、1,2−ジヨードエタン等を用いることで、ヨウ素化された化合物も得ることができる。
【0308】
用いる塩基の種類に特に限定はなく、LDA(リチウムジイソプロピルアミド),LiTMP(リチウムテトラメチルピペリジド)、アルキルリチウム(例えばn−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム)等のリチウム塩基の他、カリウムアルコキシド(例えばt−BuOK)、有機亜鉛試薬(例えば(TMP)tBu2ZnLi)等が挙げられる(非特許文献7)。
【0309】
(2)RA1及びRA2が複素環を有する場合
【0310】
【化63】

【0311】
[式中、E及びRA3〜RA4は前記に同じ;X”は同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子;W及びWは同じか又は異なり、それぞれN又はCHである。]
【0312】
塩基で水素を引き抜いた後、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、臭素、NBS等で処理することで、対応するブロモ化体が得られる。また、ヨウ素、1,2−ジヨードエタン等を用いることで、臭素のかわりにヨウ素化された化合物も得ることができる。
【0313】
用いる塩基の種類に特に限定はなく、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiTMP(リチウムテトラメチルピペリジド)、アルキルリチウム(例えばn−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム)等のリチウム塩基の他、カリウムアルコキシド(例えばt−BuOK)、有機亜鉛試薬(例えば(TMP)tBu2ZnLi)等が挙げられる(非特許文献7)。
【0314】
<ポリマー>
【0315】
【化64】

【0316】
[式中、E、X”及びRC1〜RC4は前記に同じ;nは2以上の整数である。]
上記のように重合前駆体を得た後、当該重合前駆体を出発原料として用い、Ni(cod)等のニッケル錯体を用いたホモカップリング型重合を行うことで合成できる(非特許文献8〜11)。
【0317】
<コポリマー>
共重合体の合成は、上記で得られる重合前駆体と、種々の有機金属試薬(有機スズ化合物、有機ホウ素化合物、有機マグネシウム化合物、有機ケイ素化合物等)との遷移金属触媒(パラジウム錯体、ニッケル錯体等)を用いたクロスカップリング反応等によって可能である。
【0318】
典型例として、有機金属試薬として有機スズ化合物を用いた場合は、以下のスキーム:
【0319】
【化65】

【0320】
[式中、E、X”及びRC1〜RC4は前記に同じ;nは2以上の整数;Rは置換基を有していてもよいアルキル基;Ar’は置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を有する基である。]
により合成可能である(非特許文献12)。
【0321】
また、以下のスキーム:
【0322】
【化66】

【0323】
[式中、E、X”及びRC1〜RC4は前記に同じ;nは2以上の整数;Rは置換基を有していてもよいアルキル基;Ar’は置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基を有する基である。]
に示すように、トリアルキルスタンニル基(SnR)等の金属が置換した有機金属化合物と、ハロゲン化アリールとのクロスカップリング反応によっても同様に合成可能である。
【0324】
この際、原料となる有機金属化合物は、例えば、上記で得られる重合前駆体から塩基で水素を引き抜いた後、金属交換反応を行うことで、対応する有機金属化合物が得られる。用いる塩基の種類に特に限定はなく、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiTMP(リチウムテトラメチルピペリジド)、アルキルリチウム(例えばn−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム)等のリチウム塩基の他、有機マグネシウム試薬(例えばRMgX)、カリウムアルコキシド(例えばt−BuOK)、有機亜鉛試薬(例えば(TMP)tBu2ZnLi)等が挙げられる。また、金属交換反応の際に用いる試薬の種類にも特に限定はなく、RSnY(Y=Cl、Br又はOTf)を用いれば有機スズ試薬が、RSiY(Y=F、Cl、Br、又はOTf)を用いれば有機ケイ素試薬が、B(OR)を用いれば有機ホウ素試薬が、MgY(Y=Cl又はBr)を用いれば有機マグネシウム試薬が調製可能である。
【0325】
また、本発明のπ共役有機化合物の(共)重合体は、本発明のπ共役有機化合物と同じ骨格を有することから、本発明のπ共役有機化合物と同様に、高い平面性と高い化学的安定性をあわせもち、且つ、電子供与性の高いものである。
【実施例】
【0326】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0327】
融点(mp)は、Yanako微量融点測定装置 MP-S3を用いて測定した。1H NMR及び13C NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置AL-400 (JEOL) を用いて測定した(共鳴周波数 1H: 400 MHz, 13C: 100 MHz)。化学シフト値はppmで表記し、溶媒には重クロロホルムを用いた。内部標準には溶媒の残存プロトン由来のシグナルを用い、1H NMR測定時はδ7.26 ppm, 13C NMR測定時はδ77.1 ppmとした。高分解能質量分析スペクトル測定は、Bruker MicrOTOF Focusを用いて測定した。薄層クロマトグラフィーはMerck silica gel 60F-254 (厚さ0.25 mm) を用いた。カラムクロマトグラフィーは、富士シリシア化学silica gel PSQ100Bを用いた。分取リサイクル型ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) にはポリスチレンゲルカラム(JAIGEL-1H及び2H) を備えた日本分析工業LC-918を用いた。光反応の光源には、高圧UVランプ UM-452 (ウシオ電機) を用いた。紫外可視吸収スペクトルは、島津UV-350を用いて測定した。蛍光スペクトルは、紫外可視近赤外分光光度計UV-3150 (島津製作所) で測定した。絶対量子収率は,マルチチャンネル分光器PMA-10又は PMA-12 を備えた絶対PL量子収率測定装置 C9920-02 (浜松ホトニクス) を用いて測定した。サイクリックボルタンメトリー(CV) 測定は、ALS/CHI-617A (BAS) を用い、作用電極にグラッシーカーボン電極、カウンター電極に白金電極及びAg/AgNO3の参照電極を用いた。測定試料には、アルゴン雰囲気下0.1 mMのヘキサフルオロリン酸フッ化テトラブチルアンモニウム(Bu4N+PF6-) を支持電解質に含むCH2Cl2溶液中に、試料を0.5 mMで溶かした溶液を用いた。電位はフェロセンを基準電位として計算した。脱水溶媒は特に記述の無い限り、市販のもの(関東化学)を用いた。反応は特に記述のない限り,アルゴン雰囲気下でおこなった。
【0328】
[合成例1:2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール]
【0329】
【化67】

【0330】
500 mLの二口丸底フラスコにn-ブチルリチウムヘキサン溶液65.6 mL (1.60M、105 mmol) を入れ、脱水THF 150 mLを加えた。-78℃に冷却し、2-ブロモチアゾール9.01 mL (100 mmol) を40分かけて滴下した。滴下後1時間撹拌し、別途調製したtert-ブチルジメチルシリルクロリド15.07 g (100 mmol) の脱水THF溶液 40 mLを1時間で滴下した。室温まで昇温し、2時間撹拌したのち、減圧下で溶媒を留去した。クロロホルム(150 mL) と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL) を加えて分液し、水層をクロロホルム30 mL で 3 回抽出したのち、有機層をあわせて飽和食塩水30 mLで 3 回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗成生物を減圧蒸留(20 mmHg) により精製し、2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾールを13.9 g の無色液体として得た(69.7 mmol、収率70%)。
沸点:103-103.5℃ (20 mmHg). 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.40 (s, 6H), 0.97 (s, 9H), 7.54 (d, J= 2.8 Hz, 1H), 8.15 (d, J = 2.8 Hz, 1H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -5.24, 17.05, 26.41, 121.51, 145.83, 172.29. HRMS (APCI) Calcd. for C9H18NSSi: 200.0924 ([M+H]+). Obsd. 200.0916 ([M+H]+).
【0331】
[合成例2:5−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール]
【0332】
【化68】

【0333】
1 Lの3口丸底フラスコに合成例1で得た2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール13.96 g (70.0 mmol) を入れ、脱水THF 400 mLを加えた。-78℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液47.5 mL (1.60 M, 76 mmol) を1時間かけて滴下した。反応混合物を30分撹拌したのち、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン8.85 mL (73.5 mmol) を20分かけて滴下した。室温まで昇温し、3時間撹拌したのち、減圧下で溶媒を留去した。クロロホルム(50 mL) と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL) を加えて分液し、水層をクロロホルム20 mL で 3 回抽出したのち、有機層をあわせて飽和食塩水15 mLで3 回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル (10/1) に2% (v/v)トリエチルアミン添加, Rf = 0.63) で精製することで、18.2 g の5−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾールを茶色の液体として得た(65.8 mmol、収率94%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.36 (s, 6H), 0.96 (s, 9H), 7.95 (s, 1H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ-5.47, 17.05, 26.33, 112.08, 147.21, 175.89. HRMS (APCI) Calcd. for C9H17BrNSSi: 278.0034 ([M+H]+). Obsd. 278.0040 ([M+H]+).
【0334】
[実施例1:4−ブロモ−5−ヨード−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール]
【0335】
【化69】

【0336】
1 Lの3口丸底フラスコにN,N-ジイソプロピルアミン10.6 mL (75.4 mmol) を入れ、脱水THF 250 mL を加えた。-78℃に冷却し、n-ブチルリチウムヘキサン溶液47.0 mL (1.60 M, 75.2 mmol) を1時間かけて滴下した。滴下後30分撹拌したのち、0℃に昇温することで、リチウム N,N-ジイソプロピルアミドのTHF 溶液を調製した。1時間後再び -78℃に冷却し、合成例2で得た5−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール(18.9 g, 67.9 mmol) の脱水THF (75 mL) 溶液を1時間30分かけて滴下した後、反応溶液を同じ温度で45分撹拌し、ヨウ素 18.2 g (71.7 mmol) の脱水THF溶液40 mLを1時間かけて滴下した。1時間撹拌したのち室温まで昇温し、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を20 mL加えた後分液し、水層をクロロホルム50 mLで3回抽出し、有機層をあわせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30 mLで3回、続いて飽和食塩水で15 mLで3回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン2% (v/v)トリエチルアミン添加、Rf= 0.65) で精製することで25.6 gの4−ブロモ−5−ヨード−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾールを茶色の固体として得た(63.3 mmol、収率93%)。
融点:64.2-65.0 oC. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.36 (s, 6H), 0.96 (s, 9H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -5.51, 17.12, 26.34, 75.55, 138.35, 180.25. HRMS (APCI) Calcd. for C9H16BrINSSi: 403.8995 ([M+H]+). Obsd. 403.8983 ([M+H]+).
【0337】
[実施例2:4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)−5−[2−(トリメチルシリル)エチニル]チアゾール]
【0338】
【化70】

【0339】
500 mLの2口丸底フラスコにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム561.5 mg (0.80 mmol)、ヨウ化銅76.2 mg (0.40 mmol)、実施例1で得た4−ブロモ−5−ヨード−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール8.08 g (20.0 mmol) を入れ、脱水THF 200 mL、トリエチルアミン8.35 mL (60 mmol) を加えた。0℃に冷却し、トリメチルシリルアセチレン3.04 mL (22.0 mmol) を15分かけて滴下した。室温まで昇温し、終夜で撹拌したのち溶媒を留去した。クロロホルム(50 mL) 飽和NaHCO3水溶液 (20 mL) を加えて分液し、水層をクロロホルム30 mLで3回抽出したのち、有機層をあわせて飽和食塩水15 mLで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をクーゲルロール蒸留(0.60 mmHg、オーブン温度185-195℃) により精製し、4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)−5−[2−(トリメチルシリル)エチニル]チアゾールを5.12 gの黄色液体として得た(13.7 mmol、収率69%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.27 (s, 9H), 0.36 (s, 6H), 0.95 (s, 9H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ-5.85, -0.491, 26.01, 93.11, ([M+H]+). Obsd. 374.0416 ([M+H]+).
【0340】
[実施例3:4−ブロモ−5−エチニル−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール]
【0341】
【化71】

【0342】
200 mLの2口丸底フラスコに実施例2で得た4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)−5−[2−(トリメチルシリル)エチニル]チアゾール3.01 g (8.01 mmol) を入れ、脱水THF 70 mLを加えた。0℃に冷却し、炭酸カリウム225 mg (1.6 mmol)、エタノール10 mLを加えた。その後室温に昇温し、6時間撹拌した。溶媒を留去した後、クロロホルム(50 mL) と飽和NaHCO3水溶液 (15 mL) を加えて分液し、水層をクロロホルム30 mL で 3 回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水15 mLで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去することで、4−ブロモ−5−エチニル−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾールを2.43 gの赤色固体として得た(8.00 mmol、収率99%)。
融点:78.1℃ (dec). 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.37 (s, 6H), 0.97 (s, 9H), 3.71 (s, 1H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ-5.513, 17.09, 26.33, 88.23, 118.02, 134.21, 175.33. HRMS (APCI) Calcd. for C11H17BrNSSi: 302.0029 ([M+H]+). Obsd. 302.0019 ([M+H]+).
【0343】
[実施例4:ビス5−[4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0344】
【化72】

【0345】
100 mLの2口丸底フラスコにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム 139 mg (0.120 mmol)、ヨウ化銅46.0 mg (0.240 mmol)、実施例3で得た4−ブロモ−5−エチニル−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール3.24 g (8.01 mmol)を入れ、脱水THF 50 mL、トリエチルアミン3.40 mL (24.0 mmol) を加えた。0℃に冷却し、実施例1で得た4−ブロモ−5−ヨード−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾール2.42 g (8.00 mmol) のTHF溶液5 mLを 15 分かけて滴下した。室温まで昇温し、終夜で撹拌したのち、溶媒を留去した。クロロホルム(30 mL) と飽和NaHCO3水溶液 (20 mL) を加えて分液し、水層をクロロホルム30 mL で 3 回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水15 mLで3回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン (1/4)、1%(v/v)トリエチルアミン添加、Rf= 0.15-0.30) で精製することで、3.25 gのビス5−[4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを黄色の固体として得た(5.64 mmol、収率70%)。
融点:78.1-79.0 oC. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.39 (s, 6H), 0.98 (s, 9H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -5.809, 16.83, 26.03, 88.73, 117.96, 133.97, 175.70. HRMS (APCI) Calcd. for C20H31Br2N2S2Si2: 576.9828 ([M+H]+). Obsd. 576.9804 ([M+H]+).
【0346】
[実施例5:ビス5−[4−(4−メチルフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0347】
【化73】

【0348】
20 mLのシュレンク管に実施例4で得たビス5−[4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン200 mg (0.346 mmol)を入れ、脱水THF 3 mLを加えた。-78℃に冷却し、t-ブチルリチウムペンタン溶液0.87 mL (1.60 M、1.38 mmol) を 5分かけて滴下した。滴下後30分撹拌したのち、p-トルアルデヒド98 μL (0.830 mmol) を1分かけて滴下した。3時間撹拌したのち室温まで昇温し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液2 mLを加えて分液し、水層をクロロホルム15 mL で 3 回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水15 mL で 3 回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (20/1)、2%(v/v)トリエチルアミン添加、Rf= 0.40) で精製したのち、分取リサイクルGPC (トルエン) により精製することで、ビス5−[4−(4−メチルフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを184 mgの茶色液体として得た(0.277 mmol、収率80%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.376 (d, J = 0.8 Hz, 6H), 0.976 (s, 9H), 2.29, 2.30 (s, 3H), 3.79, 3.86 (d, J= 7.6 Hz, 1H), 5.89, 5.93 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.08, 7.10 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 7.23-7.29 (m, overlap with residual CHCl3). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ-5.653, -5.612, 16.82, 20.98, 26.07, 71.13, 71.25, 88.60, 115.14, 115.24, 126.45, 126.52, 128.94, 137.22, 137.23, 139.29, 139.38, 163.52, 165.55, 174.23, 174.27. HRMS (APCI) Calcd. for C36H49N2O2S2Si2: 661.2768 ([M+H]+). Obsd. 661.2771 ([M+H]+).
【0349】
[実施例6:ビス5−[4−(4−メトキシフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0350】
【化74】

【0351】
20 mLのシュレンク管に実施例4で得たビス5−[4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン500 mg (0.864 mmol)を入れ、脱水THF 8 mLを加えた。-78℃に冷却し、t-ブチルリチウムペンタン溶液2.16 mL (1.60 M、3.46 mmol) を5分かけて滴下した。反応溶液を30分撹拌したのち、アニスアルデヒド0.231 mL (1.90 mmol) を1分かけて滴下した。2時間撹拌したのち室温まで昇温し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3 mLを加えて分液し、水層をクロロホルム30 mL で 3 回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水15 mLで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム、2% (v/v) トリエチルアミン添加、Rf= 0.38) で精製したのち、分取リサイクルGPC (トルエン) で精製することで、ビス5−[4−(4−メトキシフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを496 mgの橙色液体として得た(0.717 mmol、収率83%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.378 (s, 6H), 0.975 (s, 9H), 3.75 (d, J= 4.8 Hz, 3H), 3.78, 3.84 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 5.88, 5.92 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.80, 6.82 (d, J = 5.2 Hz), 7.26-7.32 (m, overlap with residual CHCl3). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ-5.01, -4.99, 17.47, 26.70, 55.66, 71.63, 71.64, 89.22, 89.25, 114.26, 115.75, 115.85, 128.47, 128.55, 135.12, 135.22, 159.64, 164.25, 164.28, 174.88. HRMS (APCI) Calcd. for C36H49N2O4S2Si2: 693.2667 ([M+H]+). Obsd. 693.2684 ([M+H]+).
【0352】
[実施例7:ビス5−[4−(3,4,5−トリメトキシフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0353】
【化75】

【0354】
20 mLのシュレンク管に実施例4で得たビス5−[4−ブロモ−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン(500 mg, 0.864 mmol) を入れ、脱水THF 6 mLを加えた。-78℃に冷却し、t-ブチルリチウムペンタン溶液2.16 mL (1.60 M、3.46 mmol) を 5分かけて滴下した。滴下後30分撹拌したのち、3,4,5-トリメトキシフェニルカルボアルデヒド407 mg (2.07 mmol) の脱水THF (2 mL) 溶液を5分かけて滴下した。2時間撹拌したのち室温まで昇温し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3 mLを加えて分液した。水層をクロロホルム15 mL で 3 回抽出したのち、有機層をあわせて飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (10/1)、1% (v/v)トリエチルアミン添加、Rf= 0.30) で精製したのち、分取リサイクルGPC (トルエン) で精製することにより、ビス5−[4−(3,4,5−トリメトキシフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを586 mgの橙色固体として得た(0.717 mmol、収率83%)。
融点:59.1-62.0 oC. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.386 (s, 6H), 0.97 (s, 9H), 3.736, 3.772 (s, 3H), 3.761, 3.794 (s, 6H), 5.91, 5.97 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.66 (s, 1H), 6.70 (s, 2H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -5.04, 17.46, 26.68, 56.40, 61.23, 72.15, 72.20, 89.34, 89.48, 104.03, 104.17, 115.68, 115.76, 138.49, 138.58, 153.68, 164.06, 164.21, 175.42. HRMS (APCI) Calcd. for C40H57N2O8S2Si2: 813.3089 ([M+H]+). Obsd. 813.3128 ([M+H]+).
【0355】
[実施例8:ビス5−[4−(4−メチルフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0356】
【化76】

【0357】
50 mLの2口丸底フラスコに実施例5で得たビス5−[4−(4−メチルフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン300 mg (0.454 mmol) を入れ、1,4-ジオキサン 10 mL を加えた。DDQ 238 mg (1.05 mmol) の1,4-ジオキサン溶液5 mLを 30分かけて滴下した。室温で24時間撹拌したのち、1,4-ジオキサン及びクロロホルムを加えて不溶性の固体を濾過した。減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物を塩基性アルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (5/1)、Rf= 0.82) で精製することにより、ビス5−[4−(4−メチルフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを260 mgの黄色固体として得た(0.395 mmol、収率87%)。
融点:216.5-217.3℃. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.397 (s, 6H), 1.00 (s, 9H), 2.42 (s, 3H), 7.24-7.26 (m, overlap with residual CHCl3), 8.08 (d, J = 8.0 Hz, 2H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -5.32, 17.18, 21.89, 26.38, 91.70, 126.99, 128.87, 131.23, 134.84, 143.82, 158,11, 173.82, 186.80. HRMS (APCI) Calcd. for C36H45N2O2S2Si2: 657.2455 ([M+H]+). Obsd. 657.2436 ([M+H]+).
【0358】
[実施例9:ビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0359】
【化77】

【0360】
20 mLのシュレンク管に実施例6で得たビス5−[4−(4−メトキシフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン497 mg (0.717 mmol)を入れ、1,4-ジオキサン10 mLを加えた。DDQ 374 mg (1.65 mmol) の1,4-ジオキサン溶液5 mLを30分かけて滴下した。室温で17時間撹拌した後、1,4-ジオキサン及びクロロホルムで不溶性の固体を濾過した。減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物を塩基性アルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (5/1)、Rf= 0.70 ) で精製することで、ビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを458 mgの橙色固体として得た(0.667 mmol、収率93%)。
融点:159℃ (dec). 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.40 (s, 6H), 1.01 (s, 9H), 3.88 (s, 3H), 6.93 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.22 (d, J= 8.8 Hz). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ -5.00, 17.49, 26.71, 55.91, 91.93, 113.75, 127.08, 130.62, 133.85, 158.60, 163.96, 174.03, 185.98. HRMS (APCI) Calcd. for C36H45N2O4S2Si2: 689.2354 ([M+H]+). Obsd. 689.2342 ([M+H]+).
【0361】
[実施例10:ビス5−[4−(3,4,5−トリメトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン]
【0362】
【化78】

【0363】
20 mLのシュレンク管に実施例7で得たビス5−[4−(3,4,5−トリメトキシフェニルヒドロキシメチル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン455 mg (0.560 mmol) を入れ、1,4-ジオキサン10 mLを加えた。DDQ 291 mg (1.28 mmol )の1,4-ジオキサン溶液5 mLを30分かけて滴下した。室温で18時間撹拌した後、1,4-ジオキサン及びクロロホルムで不溶性の固体を濾過した。減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物を塩基性アルミナカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (5/1)、Rf= 0.68) で精製することで、ビス5−[4−(3,4,5−トリメトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレンを384 mgの橙色固体として得た(0.482 mmol, 収率86%)。
融点:149℃ (dec). 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.42 (s, 6H), 1.01 (s, 9H), 3.90 (s, 6H), 3.94 (s, 3H), 7.67 (s, 2H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ-4.99, 17.42, 26.71, 56.64, 61.43, 92.12, 109.10, 128.15, 132.57, 143.02, 153.07, 158.39, 174.06, 185.52. HRMS (APCI) Calcd. for C40H53N2O8S2Si2: 809.2776 ([M+H]+). Obsd. 809.2779 ([M+H]+).
【0364】
[実施例11:6,6’−ビス(4−メチルフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)]
【0365】
【化79】

【0366】
褐色のヤングコックシュレンク管に実施例8で得たビス5−[4−(4−メチルフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン(89 mg、0.135 mmol)、ローソン試薬(Lawesson試薬)60.3 mg (0.149 mmol)、脱水トルエン3 mLを加えた。還流下13時間撹拌したのち室温まで冷却し、減圧下で溶媒を留去した。脱水THF 3 mL、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムの1M THF溶液0.41 mL (0.41 mmol) を加え、室温で1時間撹拌した。不溶性の固体を濾過し、THFとトルエンで洗浄することで、6,6’−ビス(4−メチルフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)を33 mgの赤橙色固体として得た(0.072 mmol、収率53%)。
融点> 300℃. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ2.05 (s, 3H), 7.29 (m, overlap with residual CHCl3), 8.01 (d, J = 8 Hz, 2H), 9.02 (s, 2H). HRMS (APCI) Calcd. for C24H17N2S4: 461.0269 ([M+H]+). Obsd. 461.0270 ([M+H]+).
【0367】
[実施例12:6,6’−ビス(4−メトキシフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)]
【0368】
【化80】

【0369】
褐色のヤングコックシュレンク管に実施例9で得たビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン80 mg (0.116 mmol)、ローソン試薬(Lawesson試薬)51.6 mg (0.123 mmol)、脱水トルエン3 mLを加えた。還流下2時間撹拌したのち室温まで冷却し、減圧下で溶媒を留去した。脱水THF 3 mL、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムの1M THF溶液0.35 mL (0.350 mmol) を加え、室温で1時間撹拌した。蒸留水10 mLを加えた後分液し、水層をクロロホルム40 mLで 3 回抽出し、飽和食塩水15 mL で 3 回洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム、Rf= 0.45) で精製することで、6,6’−ビス(4−メトキシフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)を44 mgの濃赤色固体として得た(0.089 mmol、収率77%)。
融点> 300℃. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.88 (s, 3H), 7.01 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.05 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.99 (s, 1H). HRMS (APCI) Calcd. for C24H17N2O2S4: 493.0167 ([M+H]+). Obsd. 493.0159 ([M+H]+).
【0370】
[実施例13:6,6’−ビス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)]
【0371】
【化81】

【0372】
褐色のヤングコックシュレンク管に実施例10で得たビス5−[4−(3,4,5−トリメトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン89 mg (0.110 mmol), ローソン試薬(Lawesson試薬)49 mg (0.12 mmol)、脱水トルエン3 mLを加えた。還流下11時間撹拌したのち室温まで冷却し、減圧下で溶媒を留去した。脱水THF 3 mL、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムの1M THF溶液0.33 mL (0.33 mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。蒸留水10 mLを加えた後分液し、水層をクロロホルム30 mLで 3 回抽出し、飽和食塩水15 mL で 3 回洗浄したのち,無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (5/1)、Rf= 0.45) で精製することで、6,6’−ビス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)を46 mgの濃赤色固体として得た(0.076 mmol、収率69%)。
Mp > 300℃. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.92 (s, 3H), 4.00 (s, 6H), 7.39 (s, 2H), 9.01 (s, 1H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ56.52, 61.20, 104.59, 126.57, 128.07, 128.75, 129.43, 129.86, 153.77, 155.85, 160.24. HRMS (APCI) Calcd. for C28H25N2O6S4: 613.0590 ([M+H]+). Obsd. 613.0535 ([M+H]+).
【0373】
[実施例14:ビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)チアゾリル]アセチレン]
【0374】
【化82】

【0375】
50 mLの2口丸底フラスコに実施例9で得たビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)−2−(t−ブチルジメチルシリル)チアゾリル]アセチレン63 mg (0.092mmol) を入れ、脱水THF 3mLを加えた。その後、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムの1M THF溶液 0.19 mL (0.19 mmol) を滴下し、室温で1時間撹拌した。蒸留水10 mLを加えた後分液し、水層をクロロホルム20 mLで 3 回抽出し、飽和食塩水15 mL で 3 回洗浄したのち、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (5/1)、Rf= 0.68) で精製することで、ビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)チアゾリル]アセチレンを41.8 mgの黒色固体として得た(0.091 mmol、収率99%)。
融点:214.1-215.0 oC. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 3.87 (s, 3H), 6.96 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 8.8 Hz), 8.79 (s, 1H). 13C{1H} NMR (CDCl3, 400 MHz) δ55.67, 90.47, 113.72, 123.77, 129.88, 133.21, 152.63, 156.39, 163.89, 185.45. HRMS (APCI) Calcd. for C24H17N2O4S2: 461.0624 ([M+H]+). Obsd. 461.0620 ([M+H]+).
【0376】
[実施例15:6,6’−ビス(4−メトキシフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)]
【0377】
【化83】

【0378】
50 mLのシュレンク管に実施例14で得たビス5−[4−(4−メトキシフェニルカルボニル)チアゾリル]アセチレン10 mg ( 0.022 mmol) を入れ、脱水THF 25 mLを加えた。反応溶液を20℃とし、紫外線を20分照射した。減圧下で溶媒を留去したのち、脱水THF 1 mlを加えて0℃で撹拌した。析出した不溶性の固体をアルゴン下で濾過することで、6,6’−ビス(4−メトキシフェニル)−2,2’−ビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)を7.0 mgの黄色固体として得た(0.015 mmol、収率 70%)。
融点:284.8-285.5 oC. 1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 3.89 (s, 3H), 7.04 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 8.07 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 8.70 (s, 1H). HRMS (APCI) Calcd. for C24H17N2O4S2: 461.0624 ([M+H]+). Obsd. 461.0640 ([M+H]+).
【0379】
[合成例3:2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール]
【0380】
【化84】

【0381】
還流管、ラバーセプタム及び三方コックを備えた500 mLの二口ナス型フラスコに、アルゴン雰囲気下で3,4,5−トリメトキシフェニルボロン酸(10.1 g、47.2 mmol)、酢酸パラジウム(160 mg、0.71 mmol)、S−Phos(583 mg、1.42 mmol)、及びリン酸カリウム(30 g、142 mmol)を入れ、トルエン(200 mL)及び水(30 mL)に溶解させたのち、2−ブロモチアゾール(7.74 g、47.2 mmol)を加え、撹拌しながら100℃で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷ました後二層に分離し、水層をクロロホルム50 mLで3回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過し、減圧下で溶媒を留去することで粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル (20/1)、Rf = 0.40)で精製することで、7.9 gの2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾールを得た(31.4 mmol、収率67%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.90 (s, 3H), 3.96 (s, 6H), 7.20 (s, 2H), 7.32 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.85 (d, J= 3.2 Hz, 1H).
【0382】
[合成例4:5−ブロモ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール]
【0383】
【化85】

【0384】
三方コック、滴下漏斗を備えた300 Lの2口丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下でN,N−ジイソプロピルアミン4.11 mL(29.3 mmol)を入れ、脱水THF100 mLを加えた。-78℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液18.3 mL(1.60 M、29.3 mmol)を50分かけて滴下した。滴下後1時間撹拌したのち、0℃に昇温することで、リチウムN,N−ジイソプロピルアミドのTHF溶液を調製した。1時間後、-95℃に冷却し、上記の合成例3で得た2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール(7.00 g、27.9 mmol)の脱水THF(40 mL)溶液を50分かけて滴下した後、反応溶液を同じ温度で50分撹拌し、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン3.68 mL(30.7 mmol)を10分かけて滴下した。1時間撹拌したのち室温まで昇温し、THFを留去したのち水及びクロロホルムを加えて分液し、水層をクロロホルムで3回抽出し、有機層をあわせて飽和食塩水で3回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム、Rf = 0.33)で精製することで8.70 gの5−ブロモ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾールを得た(26.3 mmol、収率94%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.90 (s, 3H), 3.94 (s, 6H), 7.09 (s, 2H), 7.71 (s, 1H).
【0385】
[実施例16:4−ブロモ−5−ヨード−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール]
【0386】
【化86】

【0387】
三方コック、滴下漏斗を備えた300 mLの2口丸底フラスコにN,N−ジイソプロピルアミン3.58 mL(25.5 mmol)を入れ、脱水THF100 mL を加えた。-78℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液15.9 mL(1.60 M、25.5 mmol)を50分かけて滴下した。滴下後30分撹拌したのち、0℃に昇温することで、リチウムN,N−ジイソプロピルアミドのTHF溶液を調製した。1時間後再び-78℃に冷却し、上記の合成例4で得た5−ブロモ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール(7.60 g、23.0 mmol)の脱水THF(40 mL)溶液を1時間10分かけて滴下した後、反応溶液を同じ温度で50分撹拌し、ヨウ素7.00 g(27.6 mmol)の脱水THF溶液20 mLを1時間かけて滴下したのちゆっくりと室温まで昇温し、一晩撹拌した。飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後分液し、水層をクロロホルム50 mLで3回抽出し、有機層をあわせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、続いて飽和食塩水で3回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで9.75 gの4−ブロモ−5−ヨード−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾールを得た(21.4 mmol、収率93%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.90 (s, 3H), 3.93 (s, 6H), 7.08 (s, 2H).
【0388】
[実施例17:4−ブロモ−5−トリメチルシリルエチニル−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール]
【0389】
【化87】

【0390】
滴下漏斗とジムロート冷却管及び三方コックを備えた100 mLの2口丸底フラスコにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム270 mg(0.385 mmol)、ヨウ化銅30.0 mg(0.158 mmol)、上記実施例16で得た4−ブロモ−5−ヨード−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール3.50 g(7.69 mmol)を入れ、脱水THF50 mL、トリエチルアミン5.35 mL(38.5 mmol)を加えた。0℃に冷却し、トリメチルシリルアセチレン1.12 mL(8.08 mmol)を15分かけて滴下した。室温まで昇温し、一晩撹拌したのち溶媒を留去した。クロロホルム及び水を加えて分液し、水層をクロロホルム20 mLで3回抽出したのち、有機層をあわせて飽和食塩水20 mLで3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム (1/10)) により精製し、4−ブロモ−5−トリメチルシリルエチニル−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾールを2.27 gの黄色固体として得た(6.41 mmol、収率83%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ0.29 (s, 9H), 3.90 (s, 3H), 3.93 (s, 6H), 7.11 (s, 2H).
【0391】
[実施例18:4−ブロモ−5−エチニル−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール]
【0392】
【化88】

【0393】
100 mLの2口丸底フラスコに、炭酸カリウム45 mg(0.32 mmol)、メタノール8 mL、THF8 mLを入れ、上記の実施例17で得た4−ブロモ−5−トリメチルシリルエチニル−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール1.36 g(3.19 mmol)をTHF12 mLに分散させた懸濁液を30分かけて加えた。反応混合物を1時間撹拌したのち溶媒を留去し、クロロホルムと飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて分液し、水層をクロロホルム20 mLで3回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水で3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去することで、4−ブロモ−5−エチニル−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾールを1.10 gの淡黄色固体として得た(3.11 mmol、収率97%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.73 (s. 1H), 3.90 (s, 3H), 3.94 (s. 6H), 7.12 (s, 2H).
【0394】
[実施例19:ビス{4−ブロモ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾリル}アセチレン]
【0395】
【化89】

【0396】
滴下漏斗とジムロート冷却管及び三方コックを備えた100 mLの2口丸底フラスコにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム67 mg(0.094 mmol)、ヨウ化銅9.0 mg(0.047 mmol)、上記の実施例16で得た4−ブロモ−5−ヨード−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール1.42 g(3.13 mmol)を入れ、脱水THF30 mL、トリエチルアミン2.20 mL(15.6 mmol)を加えた。0℃に冷却し、上記の実施例18で得た4−ブロモ−5−エチニル−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾール1.11 g(3.13 mmol)のTHF溶液10 mLを30分かけて滴下した。室温まで昇温して一晩撹拌したのち、生じた沈殿を濾過した。得られた固体をクロロホルムで洗浄することで、838 mgの4−ブロモ−5−ヨード−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾールを得た。また、濾液はあわせて水を加えたのち分液し、水層をクロロホルムで3回抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水で3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥・濾過し、減圧下で溶媒を留去した。得られた固体をクロロホルムで再結晶することで、さらに744 mgのビス{4−ブロモ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)チアゾリル}アセチレンを得た(合計1.58 g、2.32 mmol、収率74%)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ3.92 (s, 6H), 3.95 (s, 12H), 7.15 (s, 4H).
【0397】
この後、実施例5〜13と同様の手法により、本発明のπ共役有機化合物が合成可能である。
【0398】
[試験例1:反応時間と収率]
実施例11〜13を比較すると、最も電子供与性の高いp-アニシル基を有する実施例12においては、2時間と短い時間で反応が完結した。結果を表1に示す。
【0399】
【表1】

【0400】
また、ベンゾ[c]チオフェン、ビ(チエノ[2,3−c]チオフェン)誘導体等が大気下溶液状態で徐々に分解するのとは対照的に、得られた化合物はいずれも、同条件下で高い化学的安定性を示すことが確認され、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いた精製操作によって化合物を単離することができた。
【0401】
[試験例2:ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体のX線結晶構造解析]
実施例11で得た6,6’-ビス(4-メチルフェニル)-2,2’-ビ(チアゾロ[2,3-c]チオフェン)のX線結晶構造解析は、以下のようにして行った。単結晶は、クロロベンゼンを用いた再結晶により得た。強度データはRigaku Single Crysytal CCD X線解析装置(Saturn 70 with MicroMax-007、Mo Kα照射 (λ = 0.71070 Å))を用いて123 Kで得た。初期構造はSIR97により求め、full-matrix least-square on F2(SHELXS-97)により最適化した。結晶データC24H16N2S4; FW = 460.63、結晶サイズ0.15 × 0.08× 0.02 mm3、monoclinic、P21/n (#14)、a= 11.611(3)Å、b = 6.6484(17)Å、c= 13.561(4)Å、β= 107.184(4)°、V = 1000.1(5)Å3、Z = 2、Dcalcd= 1.530 g cm-3、μ= 0.491 mm-1、R1= 0.0316 (I > 2σ(I))、wR2= 0.0741 (all data)、GOF = 1.089.
【0402】
実施例12で得た6,6’-ビス(4-メトキシフェニル)-2,2’-ビ(チアゾロ[2,3-c]チオフェン)のX線結晶構造解析は、以下のようにして行った。単結晶は、トルエンを用いた再結晶により得た。強度データはRigaku Single Crysytal CCD X線解析装置(Saturn 70 with MicroMax-007, Mo Kα照射(λ = 0.71070 Å), graphite monochromator )を用いて123 Kで得た。初期構造はSIR97により求め、full-matrix least-square on F2 (SHELXS-97)により最適化した。結晶データ: C24H16N2O2S4;FW = 492.63、結晶サイズ 0.20 × 0.04 × 0.02 mm3、monoclinic、P21/c (#14)、a= 5.1805(17) Å、b = 19.578(6) Å、c= 10.206(3) Å、β = 95.689(5)°、V = 1030.1(6) Å3、Z = 2、Dcalcd= 1.588 g cm-3、μ= 0.489 mm-1、R1= 0.0391 (I > 2σ(I))、wR2= 0.0842 (all data)、GOF = 1.119.
【0403】
結果を図1〜2に示す。いずれの化合物においても、チアゾロチオフェン骨格間の二面角が約180°、チアゾロチオフェンとアリール基の二面角(C3−C4−C6−C7)は実施例11で16.5°、実施例12で12.2°であり、分子骨格全体として高い平面性をもつことが明らかになった。これらの結果から、本発明のビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体は、両端の基にまで十分な共役が広がる構造であるといえる。また、実施例11及び12のいずれで得られた化合物についても、二つの硫黄原子間の距離はいずれも3.36Åであり、硫黄原子のファンデルワールス半径の和3.70Åよりも顕著に短いことがわかった。硫黄原子間に非結合性相互作用が存在することが示唆される。
【0404】
次に、これらの化合物のパッキング構造を図3〜4に示す。いずれの誘導体も平面性の高い分子構造に由来して密なパッキング構造をとっていることが明らかになった。特に、実施例11で得た化合物はヘリングボーン型のパッキング構造を形成しており、面間距離は3.59 Åであった。一方実施例12で得た化合物は、ずれたスタッキング構造をとっており、面間距離は3.43Åと短く、より密なパッキング構造を形成していた。
【0405】
[試験例3:ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体の光物性]
実施例11〜13で得たビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体の光物性を明らかにするために、ジクロロメタン溶液での紫外可視吸収及び蛍光スペクトルを測定した。その結果を表2及び図5〜6に示す。なお、図5〜6において、29aは実施例11、29bは実施例12、29cは実施例13で得た化合物を示す。
【0406】
【表2】

【0407】
実施例11で得た化合物は460 nm付近に強い吸収帯を示し、ピークフィッティングにより457 nm及び486 nmに吸収極大をもつと見積もられた。また、実施例11で得た化合物は弱い黄色の蛍光を示し、その蛍光極大波長は511 nm、蛍光量子収率は0.05であった。参照化合物である下記式:
【0408】
【化90】

【0409】
で示される5,5’-ジ(p-トリル)-2,2’-ビチオフェンが376 nmに吸収極大をもつのに対し、チアゾール縮環部位を導入することで吸収が110 nm長波長シフトすることが分かった。この結果より、チアゾールの縮環部位が母骨格の電子構造に大きな摂動を与えていることが明らかになった。
【0410】
また、実施例12〜13で得た化合物はそれぞれ495 nm及び499 nmに最長波長吸収を、また 522 nm及び526 nmに蛍光極大を示した。
【0411】
これらの結果について理解するために、上記の参照化合物(5,5’-ジ(p-トリル)-2,2’-ビチオフェン)及び実施例11〜13で得た化合物についてTD-DFT計算を行った (B3LYP/6-31G(d)レベルによる計算)。
【0412】
その方法は、以下のようにして行った。実施例11〜13で得た化合物の初期構造は、X線結晶構造解析で求めた構造を用い、Gaussian 09 プログラム34を用いて構造最適化を行った。上記の参照化合物(5,5’-ジ(p-トリル)-2,2’-ビチオフェン)については、初期構造をSpartan’04 プログラム35を用いて作成し、PM3レベルで構造最適化を行った後、Gaussian 03 プログラム36を用いて構造最適化を行った。構造最適化及びTD-DFT計算には、B3LYP/6-31G*レベルを採用した。
【0413】
結果を図7に示す。なお、図7において、39は参照化合物(5,5’-ジ(p-トリル)-2,2’-ビチオフェン)、29a〜29cはそれぞれ実施例11〜13で得た化合物を示す。
【0414】
TD-DFT計算の結果、実施例11〜13で得た化合物及び参照化合物の最長波長吸収はいずれも、HOMOからLUMOへの遷移に対応すると帰属された。一連のビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体のHOMOは、アリール基を含む主鎖方向全体に非局在化したπ軌道であり、さらに、縮環チアゾール部位の硫黄原子のn軌道の顕著な寄与がみられた。そのため、実施例11で得た化合物のHOMO準位は参照化合物と比較して大きく上昇していると考えられる。一方、化合物のLUMOに着目すると、電子受容性のチアゾールを縮環部位に導入した実施例11〜13で得た化合物は、参照化合物に比べてエネルギー準位が大幅に低下していることがわかった。これらの結果を反映して、一連のビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体のHOMO−LUMOギャップはおよそ2.7 eVと、参照化合物の3.76 eVと比べて約1.0 eVも狭くなっていることがわかった。以上の結果から、電子受容性のチアゾールを縮環させることで、母骨格の電子構造に大きな摂動を与えていることがわかった。
【0415】
次に、試験例2で述べた結晶状態でのパッキング構造の違いが光物性にもたらす影響について調べるために、結晶状態における光物性について検討したところ、実施例11〜13で得た化合物は溶液状態でいずれも黄色を呈するのに対し、結晶状態において実施例11で得た化合物は濃橙色、実施例12及び実施例13で得た化合物では濃赤色を呈し、溶液状態と比べて著しく長波長シフトした吸収をもつことが示唆された。結果を図8に示す。
【0416】
このことから、結晶状態においては,密なパッキング構造に由来して基底状態での強い分子間相互作用が存在すると考えられる。また、3つの化合物の結晶状態での色調は異なり、特に実施例11と比較して実施例12及び実施例13で得た化合物の吸収は顕著に長波長シフトしていることが示唆された。また、実施例12及び実施例13で得た化合物がほとんど蛍光を示さないのに対し、実施例11で得た化合物は比較的強い橙色蛍光を示し、その蛍光量子収率を、積分球を用いて測定したところ Φ = 0.03 であった。
【0417】
[試験例4:ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体の電気化学特性]
次に、得られたビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体の電気化学特性を明らかにするために、サイクリックボルタンメトリーを測定した。結果を表3及び図9に示す。なお、測定は、試料0.5 mM、支持電解質としてn-Bu4NPF6(0.1 M) をCH2Cl2 に溶解させた試料を用いて行った。電位はフェロセン/フェロセニウムイオン対(Fc/Fc+) を基準に求めた。
【0418】
【表3】

【0419】
p-トリル基を有する実施例11で得た化合物は、酸化側に可逆な二段階の酸化還元波を示し、その第一及び第二酸化電位はそれぞれE1/2 = +0.43 V及びE1/2 = +0.89 Vであった。これは、対応するビ(チエノ[2,3−c]チオフェン)誘導体:
【0420】
【化91】

【0421】
の第一及び第二酸化電位E1/2 = +0.23 V及びE1/2 = +0.86 Vと比較して顕著に正側にシフトした値であった。電子受容性のチアゾール環の導入により、HOMOのエネルギー準位が十分に低下した結果であるといえる。
【0422】
一方、チアゾールが縮環していない参照化合物:
【0423】
【化92】

【0424】
の第一酸化電位は +0.41 V (vs. Fc/Fc+) であることが報告されており(非特許文献5)、第一酸化電位を比較すると、実施例11で得た化合物の方が0.07 V負側にシフトしていることが分かった。このことから、ビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)が高い電子供与性を保っていることが明らかになった。
【0425】
さらに、電子供与性がより高いp-アニシル基及び3,4,5-トリメトキシフェニル基を有する化合物(実施例12〜13で得た化合物)も同様にして電気化学特性を評価した。その結果、実施例13で得た化合物は、Epa = +0.30 Vに不可逆な第一酸化波を示し、電子供与性は実施例11で得た化合物と比べて高くなっているものの、電気化学的安定性は実施例11で得た化合物のほうが高いことが示唆された。一方で実施例12で得た化合物は、E1/2 = +0.34 Vに可逆な第一酸化還元波を、E1/2 = +0.73 Vに可逆な第二酸化還元波を示すことがわかり、高い電気化学的安定性を示すことがわかった。以上の結果は、p型半導体の基本骨格としての潜在性が期待される。
【0426】
[試験例5:ビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)の安定性]
実施例15で得た化合物は溶解性に乏しいため、溶媒を減圧下で留去する途中で黄色固体が析出し、単純な濾過操作により純粋な目的物を単離することができた。得られた化合物は、溶液状態で大気に暴露すると徐々に分解するものの、固体状態では空気中で十分な安定性をもつことがわかった。
【0427】
[試験例6:ビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)の光物性]
実施例15で得られたビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)について、ジクロロメタン中での紫外可視吸収及び蛍光スペクトルを測定した。その結果を表4及び図10〜11に示す。
【0428】
【表4】

【0429】
実施例15で得た化合物は445 nm及び472 nmに吸収極大を示した。また、実施例15で得た化合物は弱い黄色の蛍光を示し、その蛍光極大波長は497 nm、蛍光量子収率は0.06であった。吸収波長を対応するビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体(実施例12で得た化合物)と比較すると、最長波長吸収が短波長側にシフトしていることが明らかになり、より広いHOMO−LUMOギャップを有することが考えられる。
【0430】
これらの結果について理解するために、実施例15で得たビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)について、実施例12で得た化合物とともにTD−DFT計算を行った (B3LYP/6-31G(d)レベルによる計算)。
【0431】
その方法は、以下のようにして行った。初期構造は、X線結晶構造解析で求めた構造を用い、Gaussian 09 プログラム34を用いて構造最適化を行った。構造最適化及びTD-DFT計算には、B3LYP/6-31G*レベルを採用した。
【0432】
結果を図12に示す。なお、図12において、29bは実施例12で得た化合物、44は実施例15で得た化合物である。
【0433】
TD-DFT計算の結果、実施例15で得た化合物の最長波長吸収は、HOMOからLUMOへの遷移であると帰属された。実施例15で得たビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)のHOMOは、対応するビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体(実施例12で得た化合物)と同様に、アリール基を含む主鎖方向全体に非局在化するとともに、フランのn軌道の顕著な寄与をもつことがわかった。また、実施例15で得た化合物のHOMO準位は−4.54 eVと、実施例12で得た化合物と比較して0.14 eV高くなっており、実施例15で得たビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)が、実施例12で得たビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)と比較して電子供与性の高い骨格であることが明らかになった。一方、実施例15で得た化合物のLUMO準位は、実施例12で得た化合物と比べて0.32 eV高くなっていることがわかった。これらの結果を反映して、実施例15で得た化合物のHOMO−LUMOギャップは2.87 eVと、実施例12で得た化合物と比べて広がっており、その結果としてより短波長側の吸収を示したと考えられる。
【0434】
[試験例7:ビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)の電気化学特性]
次に、実施例15で得たビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)の電気化学特性について評価した。なお、得られた化合物の溶解性の低さを考慮し、微分パルスボルタンメトリー (Differential- Pulse Voltammetry, DPV)(非特許文献6)を用いて酸化電位を見積もった。結果を図13〜14に示す。
【0435】
測定の結果、実施例15で得たビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)は+0.14 Vに第一酸化波を、+0.55 Vに第二酸化波を示した(vs. Fc/Fc+)。一方、対応するビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)誘導体(実施例12で得た化合物)は +0.33 Vに第一酸化波を、+0.71 Vに第二酸化波を示した。実施例15で得た化合物の第一酸化波は実施例12で得た化合物と比べて0.19 V負側にシフトしており、ビ(チアゾロ[2,3−c]フラン)がビ(チアゾロ[2,3−c]チオフェン)と比較してより電子供与性の高い骨格であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A):
【化1】

[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RA1〜RA4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示されるπ共役有機化合物。
【請求項2】
一般式(A1):
【化2】

[式中、2個のE及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される、請求項1に記載のπ共役有機化合物。
【請求項3】
2個のEが同じか又は異なり、それぞれS又はO;RA1及びRA2が同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基;RA3及びRA4が同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基である、請求項1又は2に記載のπ共役有機化合物。
【請求項4】
一般式(A):
【化3】

[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RA1〜RA4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示されるπ共役有機化合物の製造方法であって、
(I)一般式(B):
【化4】

[式中、W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RB1〜RB4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示される化合物を用いて分子内二重5−exo環化反応を施す工程
を備える、製造方法。
【請求項5】
前記工程(I)が、一般式(B1):
【化5】

[式中、RB1〜RB4は前記に同じである。]
で示される化合物を用いて、分子内二重5−exo環化反応を施すことにより、一般式(A1):
【化6】

[式中、2個のE及びRA1〜RA4は前記に同じである。]
で示される化合物を製造する工程である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(B)において、RB1及びRB2が同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基;RB3及びRB4が同じか又は異なり、それぞれ−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基又は置換基を有していてもよいアリール基であり、且つ、
前記一般式(A)において、2個のEが同じか又は異なり、S又はO;RA1及びRA2が同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリール基;RA3及びRA4が同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は置換基を有していてもよいアリール基である、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(I)が、一般式(B)で示される化合物と、一般式(D):
【化7】

[式中、2個のRは同じか又は異なり、それぞれアルキルチオ基、アリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリール基である。]
で示される化合物を用いて分子内二重5−exo環化反応を施す工程である、請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程(I)が、光照射して分子内二重5−exo環化反応を施す工程を備える、請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
一般式(E):
【化8】

[式中、W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は同じか又は異なり、それぞれ−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子)で示される基又は置換基を有していてもよいアリール基;Rはハロゲン原子、一般式(E1):
【化9】

(RB1aは置換基を有していてもよいアリール基)
で示される基、又は一般式(E2):
【化10】

(RB1aは前記に同じ)
で示される基;Rはハロゲン原子、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基、一般式(E3):
【化11】

(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は前記に同じ;Xはハロゲン原子)
で示される基、一般式(E4):
【化12】

(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’は前記に同じ;RB2aは置換基を有していてもよいアリール基)
で示される基、又は一般式(E5):
【化13】

(W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;R’及びRB2aは前記に同じ)
で示される基;RとRは同一でも異なっていてもよい。]
で示される化合物。
【請求項10】
一般式(C):
【化14】

[式中、2個のEは同じか又は異なり、それぞれS又はO;W及びWは片方がNで他方がS;W及びWは片方がNで他方がS;実線と破線からなる二重線は単結合又は二重結合;RC1及びRC2は同じか又は異なり、それぞれ置換基を有していてもよいアリーレン基;RC3及びRC4は同じか又は異なり、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアルキル基、−SiR(3個のRは同じか又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、ボリル基又はハロゲン原子である)で示される基、ハロゲン原子又はボリル基である。]
で示される単位を繰り返し単位として有する、π共役有機化合物の(共)重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−56857(P2013−56857A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196516(P2011−196516)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者 川島 信之 発行所 社団法人 日本化学会 刊行物名 日本化学会第91春季年会(2011)講演予稿集IV 発行年月日 2011年3月11日
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】