説明

あり溝用シール材およびこのシール材が装着された真空用ゲート弁

【課題】特に、半導体製造装置、液晶製造装置などに好適に使用されるあり溝用シール材で、あり溝内への装着性が良好で、かつ脱落抵抗力が高く、仮に大型化された真空用ゲート弁に使用された場合であっても、低荷重で十分なシール力を得ることができるあり溝用シール材を提供する。
【解決手段】シール面に形成されたあり溝42に装着される閉環状のシール材20であって、あり溝42内に装着されるシール材本体20aの断面形状が、略三角形の栗形状を呈しており、あり溝42の底面に対向する位置に形成された1つの頂部を第1の隅角部24、残り2つの隅角部を第2の隅角部26、第3の隅角部28としたとき、第2の隅角部26、第3の隅角部28各々の少なくとも一部が前記あり溝の側面に当接し、第2の隅角部26と第3の隅角部28の間を連結する基端部32の底面に、凹所34が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あり溝用シール材およびこのシール材が装着された真空用ゲート弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などで使用されている真空用ゲート弁として、例えば、ワンアクションタイプの真空用ゲート弁が知られている。図9は、ワンアクションタイプの真空用ゲート弁の分解斜視図を示したものである。
【0003】
すなわち、この真空用ゲート弁10は、弁板2がアクチュエータ4から加えられる力により単一方向の直線移動を行い、これにより略矩形状のゲート開口部6を封止する構造を有している。
【0004】
このようなゲート弁10では、一般に、弁板2の外周面に装着されるシール材として、断面が円形状であるOリング8が使用されている。
このような真空用ゲート弁10は、半導体あるいはFPD製造装置などにおいて、基板を内外に受け渡すために減圧と大気開放が繰り返される、ロードロックチャンバに使用される場合がある。
【0005】
ここで、真空用ゲート弁の弁体が閉じた状態でロードロックチャンバが大気に開放されると、弁体は1気圧の差圧を受け、閉じられた状態のままロードロックチャンバと反対方向に移動する。そして、ロードロックチャンバが再び減圧されると、弁体はロードロックチャンバ側へ再び移動する。このように、ロードロックチャンバに取付けられた真空用ゲート弁では、装置の構成上、弁体が頻繁に水平方向に移動することになる。
【0006】
例えば、図10に示したように、弁体2の矢印方向への移動が繰り返して行なわれると、Oリング8にシール荷重とスラスト荷重の合力が繰り返して作用するため、Oリング8の一部にねじれが発生し、シール不良が発生し易い。また、断面円形のOリング8は転動を起こし易い形状であるため、シール溝14からの脱落が発生し易い。このように、ねじれや脱落によるシール不良を発生し易いOリング8を使用したゲート弁10では、Oリング8を交換するためのメンテナンス作業が頻繁に必要になる。このようなメンテナンス作業は、生産ラインを一時的に停止することになるため、生産性に大きな損失を来たし、コスト高を招来する。
【0007】
一方、Oリング8を使用した場合、被処理体であるシリコンウェハなどの大型化に伴い真空用ゲート弁10が大型化されると、それに伴って、加工精度、組立誤差を許容する必要があるため、Oリング8の断面形状も大きくしなければならない。したがって、真空用ゲート弁10が大型化されると、Oリング8に対するつぶし代を得るための荷重も大きくなり、結果として、バルブケーシング12の剛性を上げたり、押付力を増すためにアクチュエータ4の出力を上げたりするなどの対応が必要で、コストアップの大きな要因となっている。
【0008】
そこで、近年では、本出願人などにより、断面円形のOリング8に代えて、特殊な異形品のシール材が提供され、その異形品のシール材が、あり溝内に装着されるあり溝用シール材が提供されている。図11は、本出願人によって出願されたシール材30を示したものであり、このシール材30では、脱落と転動を防止するために断面円形のOリングではない異形品のシール材が採用されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−316724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図11に示したあり溝用シール材30では、大型化した真空用ゲート弁に適用する場合に、比較的高い圧縮荷重が必要とされる。そのため、シール推力を得るために大型のシリンダなどが必要になり、結果的に真空用ゲート弁が大型化してしまう。
【0010】
また、過度に圧縮されてしまうと、メタル同士のこすれによって、パーティクルが発生する虞もある。
さらに、シール材30のように断面円形のOリングに代わる異形品の場合には、あり溝12内への装着性が困難になる場合が多い。
【0011】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、特に、半導体製造装置、液晶製造装置などに好適に使用されるあり溝用シール材で、あり溝内への装着性が良好で、かつ脱落抵抗力が高く、仮に大型化された真空用ゲート弁に使用された場合であっても、低荷重で十分なシール力を得ることができるあり溝用シール材を提供することを目的としている。
【0012】
さらに、本発明は、半導体製造装置、液晶製造装置などに使用される大型化された真空用ゲート弁であっても、低荷重で十分なシール力を得ることができる真空用ゲート弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るあり溝用シール材は、
シール面に形成されたあり溝に装着される閉環状のシール材であって、
前記あり溝内に装着されるシール材本体の断面形状が、略三角形の栗形状を呈しており、前記あり溝の底面に対向する位置に形成された1つの頂部を第1の隅角部、残り2つの隅角部を第2、第3の隅角部としたとき、第2、第3の隅角部各々の少なくとも一部が前記あり溝の側面に当接し、前記第2の隅角部と前記第3の隅角部の間を連結する基端部の底面の少なくとも一部に、凹所が形成されていることを特徴としている。
【0014】
係る構成による本発明によれば、シール面を構成する頂部が容易に変形するので、低荷重で所定のシール力を得ることができるとともに、逆に想定された圧宿荷重を超える場合には、基端部の底面に形成された凹所を中心に両側が潰れるように変形し、さらに凹所内の空気が排出されるので、ここに生じる吸盤作用により、このシール材の転動を防止することができる。また、吸盤作用により所定の反発力を維持することができる。
【0015】
これにより、メタルタッチを防止でき、パーティクルの発生を防止することができる。
また、基端部の底面に凹所を設けることにより、シール材のあり溝への装着性が容易になり、さらに、シール材の転動を効果的に防止することができる。
【0016】
ここで、本発明では、前記あり溝用シール材の全幅をW、および前記あり溝用シール材の高さをH、前記第1の隅角部の半径をRとしたとき、
R/W=0.05〜0.2 であり、かつ、R/H=0.05〜0.2 であることが好ましい。
【0017】
このような構成であれば、シール面を構成する第1の隅角部を速やかに変形させることができ、シール座面と第1の隅角部とが当接して形成されるシール面の面積が小さくなるため、シール座面を形成する弁体とあり溝用シール材とが固着しにくい。
【0018】
また、本発明では、前記シール面を構成する第1の隅角部は、小径の円弧で形成され、前記第2の隅角部は、これより大径の円弧で形成され、前記第3の隙角部は、少なくとも2辺からなる直線部で構成されていても良い。
【0019】
このような構成であれば、あり溝に装着する際のシール材の弾性変形は、第3の隅角部周辺のわずかな部分だけでよく、角部があり溝の開口縁を通過した後に、そのまま軽く押し込めば、シール材を所定の位置に装着することができる。
【0020】
本発明に係る真空用ゲート弁は、上記いずれかに記載されたあり溝用シール材が、弁体に装着されていることを特徴としている。
このような構成の真空用ゲート弁によれば、シール材の転動が防止され、あり溝への装着性も良好で、メタルタッチ、パーティクルの発生を防止することができ、加えてシール不良によるメンテナンスを少なくすることができる。したがって、ロードロックチャンバなどに効果的に使用することができる。また、ウェハなどの生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るあり溝用シール材によれば、シール面を構成する第1の隅角部が小さな荷重で極めて容易に変形するので、低荷重でシール力を得ることができる。また、基端部の底面に形成された凹所を中心に、両側が潰れるように変形し、凹所内の空気が排出されるので、ここに生じる吸盤作用により、シール材の転動を防止することができる。これにより、メタルタッチによるパーティクルの発生を防止することができる。
【0022】
さらに、あり溝への装着に関しては、第1の隅角部24と第2の隅角部26の間に構成された凹み部を、あり溝42の開口縁に係止させ、その状態からシール材を回動させれば良いので、極めて容易に、かつ適正な姿勢でシール材を装着することができる。
【0023】
このようなあり溝用シール材が採用された真空用ゲート弁は、減圧と大気開放が繰り返して行なわれるロードロック室のロードロックチャンバに有効に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1(A)、(B)、(C),(D)は、それぞれ本発明の一実施例に係るあり溝用シール材20を示した平面図、側面図、底面図およびA−A線方向の断面図である。図2は、本発明の一実施例に係るあり溝用シール材20の装着状態を、図3はそのシール構造を備えた真空用ゲート弁30の概略を示したものである。また、図4は、シール材20の自然状態での断面形状を示したものである。
【0025】
本実施例のあり溝用シール材20は、図1(A)、(B)、(C)に示したように、閉環状のシール材であり、下面側が下膨れの形状となっている。断面形状は、図1(D)に示したように、断面略三角形状の栗形状を呈している。また、このあり溝用シール材20は、図2に示したように、閉環状のあり溝42が形成された一方の部材(例えば、弁板に相当)40と、他方の部材(例えば、バルブケーシングに相当)50との封止箇所に装着される。
【0026】
一方の部材40の表面に形成されたあり溝42は、開口幅Bを有し、開口端縁から底面にかけてテーパ−状に拡がる台形状をなし、一対の傾斜面と平坦な底面を有している。また、あり溝42の開口縁には、小さな面取りが設けられ、底面側の隅部には大きなアールが設けられている。
【0027】
一方、シール材20のシール材本体20aは、あり溝42から外方に突出される頂点側の第1の隅角部24と、底面側の第2の隅角部26と第3の隅角部28とを有している。
第1の隅角部24は、あり溝42の底面に対して垂直な中心線S−S上に配置されている。また、第2の隅角部26と第3の隅角部28との間を連結する基端部32の底面に、凹所34が形成されている。
【0028】
本実施例のシール材20は、このような形状を基本構造としているが、さらに具体的な形状について詳述する。
すなわち、シール材20のシール材本体20aは、図2および図4に示したように、あり溝42の底面側に配置される基端部32と、他方の部材50の表面に当接する第1の隅角部24と、前記第1の隅角部24の一方の裾部に連続し外側に張り出す第2の隅角部26と、前記第1の隅角部24の他方の裾部に連続し外側に張り出す第3の隅角部28とを備えており、この第3の隅角部28は、第1の直線部35と第2の直線部36とから構成されている。
【0029】
これら第1の隅角部24と第2の隅角部26と第3の隅角部28は、シール材本体20aの中心点Oから略120°置きの3分割線上に配置されている。
上記第3の隅角部28は、中間部に少なくとも一箇所の角部28aが形成され、この角部28aを境に、第1の直線部35と第2の直線部36とに区画されている。
【0030】
以下、本実施例によるシール材20の各部の望ましい設計条件について説明する。
図4において、シール材20の全幅をW、およびシール材20の高さをH、第1の隅角部24の半径をRとしたとき、
R/W=0.05〜0.2 であり、かつ、R/H=0.05〜0.2 であることが望ましい。
【0031】
R/WおよびR/Hがこの範囲を越えると、低荷重シール材として寄与せず、また弁体が固着しやすくなる。逆に、この範囲より小さくなると、第1の隅角部24が挫屈したり、十分なシール性が得られなくなる。
【0032】
また、第1の隅角部24の両側に構成される凹みの半径を、それぞれR2、R3としたとき、R2,R3は同じでなくても良いが、製品の全幅Wを基準に設定すれば、
R2/W=0.3〜0.4
R3/W=0.3〜0.4 であることが望ましい。
【0033】
Wに対するR2,R3の割合がこれよりも小さくなると、低荷重で十分なシール性能を発揮することができず、逆にこれより大きくなると第1の隅角部24が挫屈しやすくなり、シール性能を発揮することができない。
【0034】
また、製品の全幅をW、あり溝の開口幅をBとしたとき、
W/B=1.1〜1.4であることが望ましい。
W/Bがこれより小さいと、シール材20はあり溝42から脱落する虞があるこれより大きいとシール材20に対する装着性が悪くなる。
【0035】
さらに、シール材の高さをH、シール溝の深さをH1としたとき、
(H−H1)/H=0.15〜0.30
シール材の高さHがこのような範囲に設定されていれば、閉環状のあり溝42が形成された一方の部材(例えば、弁板に相当)40と、他方の部材(例えば、バルブケーシングに相当)50とが、当接することなく良好に封止することができ、メタルタッチによるパーティクルの発生を防止できる。
【0036】
また、圧縮荷重が小さく低推力シール材にしようとすると、シール材のつぶし量が小さくなる傾向にある。本発明では、低推力であってもシールのつぶし代を従来のシール材と同等になるように設計されており、製品高さHが上記のように設定されていれば、それに寄与することができる。
【0037】
さらに、基端部32の凹所34の半径をR1とし、製品幅Wを基準にして設定すると、
R1/W=0.2〜0.4であることが望ましい。
また、凹所34の凹み深さをD、これをシール材の高さHを基準にして設定すると、
D/H=0.03〜0.2であることが望ましい。
【0038】
凹所の深さDがこれより大きくなるとシール材の剛性が無くなるので好ましくない。
また、凹所34の深さDがこのような範囲にあれば、シール材をあり溝に装着する際、シール材が適度に変形するため容易に装着でき、さらに、締付けた場合の吸盤作用により、シール材の転動を効果的に防止することができる。
【0039】
よって、上記のような範囲に各部材の寸法が設計されていることが望ましい。
本実施例によるシール材20は、全体が弾性変形可能なゴム材料から形成されている。ゴム材料としては、例えば、硬度60〜70HA程度のフッ素ゴム、シリコンゴム、EPDM系ゴムなどが挙げられるが、特に、半導体製造装置や液晶製造装置の真空用ゲート弁などに使用される場合には、内部がプラズマ環境となる場合が多いことから、耐プラズマ性に優れたフッ素ゴムが好ましい。
【0040】
以下に、このようなシール材20のあり溝42内への装着について、図5を参照しながら説明する。なお、図5中の矢印は、力の作用する方向を示したものである。
先ず、図5(A)に示したように、あり溝42内にシール材20の第2の隅角部26側をあり溝42内に対向させ、第2の隅角部26からあり溝42内に挿入し、第1の隅角部24と第2の隅角部26の間に構成された凹み部を、あり溝42の開口縁に位置決めする。さらに図5(B)に示したように、第3の隅角部28側を矢印方向に回動すると、角部28aがあり溝42の開口縁に当接される。このように、角部28aがあり溝42の開口縁に当接された状態から、さらにシール部材20を押し込めば、図5(C)に示したように、第2の直線部36があり溝42の開口縁を完全に通過して、あり溝42の底面側に配置される。このとき、角部28aの近傍を若干圧縮するだけで、シール材20を内方に収納することができる。この際、凹所34を有することでシール材の変形を容易にし、したがって、大きな力が不要である。
【0041】
この状態から凹所34があり溝42の底面に位置するまで押し込めば、図5(D)に示したように、シール材20を完全にあり溝42内に装着することができる。
図5(D)に示したような自然状態において、シール材20は、図の右方に位置する角部28aがあり溝42の内周面に当接される。さらに、反対側では、第2の隅角部26が、あり溝42の傾斜面に当接される。したがって、図5(D)の状態では、シール材20は、あり溝42の幅方向に移動することができず、しかも、あり溝42の開口縁が狭まっていることから、外方に脱落することもない。
【0042】
以下に、一方の部材40に装着されたシール材20を締め付ける場合の挙動について、図2および図6(A),(B)を参照しながら説明する。
今、図2に示したように、シール材20が一方の部材40内に装着され、この部材40に他方の部材50が接近して、図6(A)に示したように、第1の隅角部24の先端部に当接したとする。この状態で押し込まれれば、図6(B)に示したように、凹所34を潰すようにして第2の隅角部26と第1の直線部35の上の角部Rがあり溝42の内周面に
当接した状態で押し込まれる。
【0043】
図6(B)のシール状態では、押圧力により第2の隅角部26と第3の隅角部28が外側に膨出するように変形するので、シール材本体20aの転動が確実に防止されている。
このように、本実施例では、シール部材20が装着された一方の部材40は、他方の部材50との締め付けにより、先に第1の隅角部24が変形され、第1の隅角部24が十分に変形されつつ、第2の隅角部26と第3の隅角部28が外側に膨出するように変形するので、低荷重でシール力を得ることができる。また、このように締め付けられた状態であっても、第2の隅角部26と第3の隅角部28が二股に分かれて両側に変形するので、転動や姿勢の崩れを防止することができる。
【0044】
さらに、図6(B)の状態からさらに、想定外の強い圧縮荷重を受けたとしても、第1の隅角部24が、上方に向けて反力を発生するので、それ以上の圧縮変形が抑制され、一方の部材40と他方の部材50とによるメタルタッチを防止することができる。したがって、パーティクルの発生を可及的に防止することができる。
【0045】
さらに、本実施例では、基端部32に凹所34が形成されているので、図6(B)に示したように、締め付けられた状態では、この凹所34が吸盤作用を発揮するため、このシール材20があり溝42内に、より一層密着される。このように、このシール材20があり溝42側に密着されれば、あり溝42からの脱落防止性を向上させることができる。
【0046】
図7は、従来例であるOリング8と、本実施例によるシール材20との装着性、圧縮性、および脱落防止性を対比して示した断面図である。この図から明らかなように、本実施例のシール材は、つぶし代tを変形させるための荷重がOリング8に比べて小さくて良い。したがって、圧縮時に低荷重でシール性を得ることができる。また、装着性が良好であるとともに、第2の隅角部26と第3の隅角部28との係止により、あり溝42からの抜けを効果的に防止できる。このように、シール時の荷重が低荷重で良く、さらに装着状態からの脱落防止性が極めて良好であることは明らかである。
【0047】
図8は、つぶし代と圧縮荷重との関係を、実施例と従来例とを対比して示したグラフである。
一般に、シール部分では、上記したように、一定以上の応力がシール材8,20に作用して所定のつぶし代tを変形させてシール機能を発揮するが、図8のグラフから明らかなように、従来例であるOリングの場合には、つぶし代tが大きくなるに比例して、これに必要な圧縮荷重も大きくなっているが、本実施例の場合には、つぶし代tが大きくなっても、締付荷重はそれほど変わらないことが確認された。
【0048】
したがって、本実施例によれば、仮に、ウェハなどの被処理体が大型化するに伴って真空用ゲートバルブが大型化されたとしても、それに装着されるシール材は、Oリングの場合のように、圧縮荷重をそれ程大きくする必要はないことが確認された。
【0049】
以上、本発明に係るあり溝用シール材の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、特に、半導体製造装置、液晶製造装置において使用されるワンアクションタイプの真空用ゲート弁を例にして説明したが、使用箇所は、これに限定されるものではない。あり溝42が形成されたシール溝であれば、どのような部材にも有効に適用することができる。
【0050】
以上、本発明に係るあり溝用シール材の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、特に、半導体製造装置、液晶製造装置において使用されるワンアクションタイプの真空用ゲート弁を例にして説明したが、使用箇所は、これに限定されるものではなく、いわゆるツーアクションタイプの真空用ゲート弁にも適用可能である。また、特に、半導体あるいはFPD製造装置において、減圧と大気開放とが繰り返されるロードロックチャンバの真空用ゲート弁として好ましく使用することができる。
【0051】
さらに、あり溝42が形成されたシール溝であれば、どのような部材にも有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るあり溝用シール材を示したもので、図1(A)は平面図、図1(B)は側面図、図1(C)は底面図、図1(D)は図1(A)のA−A断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係るあり溝用シール材の使用例を示した断面図である。
【図3】図3は、図1に示したあり溝用シール材の使用例として、真空用ゲートバルブの弁板に装着された例を示す断面図である。
【図4】図4は図1に示したあり溝用シール材の断面構造を詳細に示す断面図である。
【図5】図5は、本実施例によるシール材のあり溝内への装着の手順を示した概略図である。
【図6】図6は、本実施例によるシール材の締め付け時の変形の状態を示した概略断面図である。
【図7】図7は、本願発明品と従来例であるOリングとを対比して、装着状態と圧縮時と脱落状態とを模式的に示した図である。
【図8】図8は本願発明品と従来例であるOリングとを対比して、装着状態と圧縮時と脱落時とを模式的に示した図である。
【図9】図9は、従来のあり溝にシール部材が装着された例として示した真空用ゲート弁の斜視図である。
【図10】図10はOリングが弁体に装着された場合にシール材に作用する力を示す従来例の断面図である。
【図11】図11は特開2004−316724号に開示されているあり溝用シール材の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
20 シール材
20a シール材本体
24 第1の隅角部
26 第2の隅角部
28 第3の隅角部
28a 角部
30 真空用ゲート弁
32 基端部
34 凹所
35 第1の直線部
36 第2の直線部
38 凹所
40 一方の部材
42 あり溝
50 他方の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール面に形成されたあり溝に装着される閉環状のシール材であって、
前記あり溝内に装着されるシール材本体の断面形状が、略三角形の栗形状を呈しており、前記あり溝の底面に対向する位置に形成された1つの頂部を第1の隅角部、残り2つの隅角部を第2、第3の隅角部としたとき、第2、第3の隅角部各々の少なくとも一部が前記あり溝の側面に当接し、前記第2の隅角部と前記第3の隅角部の間を連結する基端部の底面の少なくとも一部に、凹所が形成されていることを特徴とするあり溝用シール材。
【請求項2】
前記あり溝用シール材の全幅をW、および前記あり溝用シール材の高さをH、前記第1の隅角部の半径をRとしたとき、
R/W=0.05〜0.2 であり、かつ、R/H=0.05〜0.2 であることを特徴とする請求項1に記載のあり溝用シール材。
【請求項3】
前記シール面を構成する第1の隅角部は、小径の円弧で形成され、前記第2の隅角部は、これより大径の円弧で形成され、前記第3の隙角部は、少なくとも2辺からなる直線部で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のあり溝用シール材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたあり溝用シール材が、弁体に装着されていることを特徴とする真空用ゲート弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−155016(P2007−155016A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351856(P2005−351856)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】