説明

いもち病用殺菌剤

【課題】いもち病に対する優れた植物病害防除作用を示ピラゾールカルボン酸誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有するいもち病用殺菌剤。


[式中、Rはアルキル基等を表し、RおよびRは水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、ハロアルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。Aは、−OH、−OR、−SR、−NHR、NR、−NR10NR1112等を表し、R〜R12はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いもち病用殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
病害虫防除が水稲栽培に於いて果たす役割は大きい。特にイネいもち病は重要な病害として種々の殺菌剤が開発され、利用されている。すでにある種のピラゾールカルボン酸誘導体が殺菌活性を有することは知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、ハロアルキル基と、窒素原子に置換ベンゼン環を有するアミド結合とを有するピラゾールカルボン酸誘導体が除草活性および殺虫活性を有することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、環境問題等の観点から安全かつ低濃度で有害菌を防除できる新しい殺菌剤が求められている。
【特許文献1】特開平9−176125号公報
【特許文献2】特開平2−129171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のピラゾールカルボン酸誘導体は、本発明のピラゾールカルボン酸誘導体に該当するものではなく、また、より優れた殺菌活性を有するピラゾールカルボン酸誘導体化合物が要望されていた。更に、特許文献2に記載の化合物は、殺菌活性に関して具体的な記載がない。
本発明は、いもち病に対する優れた植物病害防除作用を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ない、いもち病用殺菌剤を提供することを目的とする。
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の新規なピラゾールカルボン酸誘導体を合成し、それらの殺菌活性等について種々検討した。その結果、いもち病に対する優れた植物病害防除作用を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ない化合物を見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有するいもち病用殺菌剤である。
【0005】
【化1】

【0006】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のハロアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
【0007】
が水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表す場合、RおよびRの少なくとも一方は炭素数1〜6のハロアルキル基を表し、Aは−OHまたは−NRを表す。Rは水素原子を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0008】
が炭素数1〜6のハロアルキル基を表す場合、Aは、−OH、−OR、−SR、−NR、または−NR10NR1112を表す。
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、もしくは置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、もしくはアリールアミノカルボニル基を表す。RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
10、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、またはアリールアミノカルボニル基を表す。また、R11およびR12は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0009】
一般式(1)におけるRは炭素数1〜6のハロアルキル基であることが好ましく、一般式(1)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であって、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、Rが水素原子であることがより好ましく、一般式(1)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であって、Rがトリフルオロメチル基であって、Rが水素原子であることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、いもち病に対する優れた植物病害防除作用を示すとともに、有用作物に対し何ら害を及ぼさない、またはきわめて害が少ない、いもち病用殺菌剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のいもち病用殺菌剤は、下記一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。
これにより、いもち病に対する優れた植物病害防除作用を示すことができる。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のハロアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
【0014】
一般式(1)において、Rが水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表す場合、RおよびRの少なくとも一方は炭素数1〜6のハロアルキル基を表す。またAは−OHまたは−NRを表す。
【0015】
は水素原子を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0016】
一方、一般式(1)において、Rが炭素数1〜6のハロアルキル基を表す場合、
Aは、−OHまたは−OR、−SR、−NR、または−NR10NR1112を表す。
【0017】
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0018】
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0019】
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、もしくは置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、もしくはアリールアミノカルボニル基を表す。
ここでRおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0020】
10、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、またはアリールアミノカルボニル基を表す。
ここで、R11およびR12は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0021】
前記一般式(1)において、前記炭素数1〜6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。
【0022】
炭素数1〜6のハロアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、トリクロロエチル基、トリブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基等を、炭素数1〜6のフルオロアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基等を挙げることができる。
【0023】
炭素数1〜6のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等を、前記炭素数1〜6のハロアルコキシ基としてはトリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロプロピル基等を、前記炭素数1〜6のアルキルチオ基としてはメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等を、前記炭素数1〜6のハロアルキルチオ基としてはトリフルオロメチルチオ基、トリフルオロエチルチオ基、トリクロロエチルチオ基等を挙げることができる。
【0024】
前記炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としてはメタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基等を、前記炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基としてはトリフルオロメタンスルフィニル基、トリフルオロエタンスルフィニル基、トリクロロエタンスルフィニル基等を、前記炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としてはメタンスルホニル基、エタンスルホニル基等を、前記炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基としてはトリフルオロメタンスルホニル基、トリフルオロエタンスルホニル基、トリクロロエタンスルホニル基等を挙げることができる。
【0025】
前記ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0026】
また、また前記炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。また炭素数3〜6のシクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0027】
前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を、前記ヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピラジニル基、チエニル基、フラニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基等を挙げることができる。
【0028】
また、前記置換されていてもよいアリール基および置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基およびトリフルオロエチル基等のハロゲン置換アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基等のアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基およびトリフルオロエトキシ基等のハロゲン置換アルコキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基およびブチルチオ基等のアルキルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基およびトリフルオロエチルチオ基等のハロゲン置換アルキルチオ基、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、プロパンスルフィニル基およびブタンスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基、トリフルオロメタンスルフィニル基、ジフルオロメタンスルフィニル基およびトリフルオロエタンスルフィニル基等のハロゲン置換アルキルスルフィニル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基およびブタンスルホニル基等のアルキルスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ジフルオロメタンスルホニル基およびトリフルオロエタンスルホニル基等のハロゲン置換アルキルスルホニル基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基、スルホンアミド基およびブタンスルホンアミド基等のアルキルスルホンアミド基、トリフルオロメタンスルホンアミド基、ジフルオロメタンスルホンアミド基およびトリフルオロエタンスルホンアミド基等のハロゲン置換アルキルスルホンアミド基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アセチル基およびベンゾイル基等のアシル基を挙げることができる。
【0029】
また、前記炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等を挙げることができる。
【0030】
前記炭素数2〜6のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等を、前記炭素数3〜6のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等を、前記炭素数2〜6のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等を挙げることができる。
【0031】
前記カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基としては、1−カルボキシエチル基、1−カルボキシプロピル基等を挙げることができる。
また炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基としては、1−(メトキシカルボニル)−2−メチルプロピル基、1−(エトキシカルボニル)−エチル基等を挙げることができる。
【0032】
前記アシル基としては、アセチル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基等のアリールカルボニル基および置換されていてもよいピラゾールカルボニル基等のヘテロアリールカルボニル基等を、前記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等を、前記アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0033】
前記アルキルスルホニル基としては、メタンスルホニル基、プロパンスルホニル基等を、前記アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基等を、
前記アルキルアミノカルボニル基としては、メチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基等を、前記アリールアミノカルボニル基としては、フェニルアミノカルボニル基等をそれぞれ挙げることができる。
【0034】
前記炭素数2〜5のヘテロ環基としては、モルホリニル、チオモルホリニル、アジリジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリル等を挙げることができる。
【0035】
前記一般式(1)において、Rが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す場合、Rとしては、殺菌活性の観点から、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0036】
また前記一般式(1)において、Rが炭素数1〜6のハロアルキル基を表す場合、Rとしては、殺菌活性の観点から、炭素数1〜6のフルオロアルキル基であることが好ましく、ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0037】
またRは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
本発明においては、殺菌活性の観点から、Rは炭素数1〜6のハロアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基であることがさらに好ましい。
【0038】
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
本発明においては、殺菌活性の観点から、Rは水素原子であることが好ましい。
【0039】
が水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す場合、Aは−OHまたは−NRを表し、Rは水素原子を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
本発明においては、殺菌活性の観点から、Aが−NHRであって、Rは置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、置換されてもよいフェニル基、または置換されてもよいピリジル基であることがより好ましい。
【0040】
本発明のいもち病用殺菌剤においては、Rが水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す場合、一般式(1)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であって、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、Rが水素原子であって、Aが−NHRであって、Rが置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基であることが好ましく、Rがメチル基であって、Rがトリフルオロメチル基であって、Rが水素原子であって、Aが−NHRであって、Rが置換されていてもよいフェニル基、または置換されていてもよいピリジル基であることがより好ましい。
【0041】
一方、一般式(1)におけるRが炭素数1〜6のハロアルキル基を表す場合、Aは−OH、−OR、−SR、−NR、または−NR10NR1112を表す。
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0042】
は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
【0043】
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、もしくは置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、もしくはアリールアミノカルボニル基を表す。
ここでRおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0044】
10、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、またはアリールアミノカルボニル基を表す。
ここで、R11およびR12は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。
【0045】
本発明においては、Rが炭素数1〜6のハロアルキル基を表す場合、殺菌活性の観点から、Rが水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜6のハロアルキル基であって、Rが水素原子であって、Aが−OHまたは−NRであって、Rが水素原子を現す場合、Rは置換されていてもよいアリール基、または炭素数1〜12のアルキル基を表し、Rが置換されていてもよいアリール基を現す場合、Rは置換されていてもよいアリールスルホニル基、または炭素数1〜12のアルキルスルホニル基を表すことが好ましく、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、Rが水素原子であって、Rが水素原子であることがより好ましい。
【0046】
本発明において一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸は、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体は、下記反応式(1)で表される反応により製造することができる。
【0047】
【化3】

【0048】
反応式(1)中、R、R、RおよびAは、それぞれ、一般式(1)におけるR、R、RおよびAと同義である。
反応式(1)において、一般式(2)で表されるピラゾールカルボン酸と、一般式(3)で表される化合物とを、無溶媒もしくは溶媒中で、縮合反応させることにより、一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体を製造できる。
【0049】
一般式(2)で表されるピラゾールカルボン酸は、例えば、特開平2−53775号公報等に記載の方法により製造できる。
また本発明においては、一般式(3)で表される化合物A−Hの塩も使用できる。使用できる塩における酸としては特に制限はなく、無機酸であっても有機酸であってもよい。
【0050】
また、反応式(1)においては、縮合剤を用いて反応を行うこともできる。用いることができる縮合剤には特に制限はなく、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド等を例示することができる。
縮合剤を用いる場合、縮合剤の使用量としては一般式(2)で表される化合物に対し、1〜2モル当量であり、好ましくは1〜1.2モル当量である。
【0051】
反応式(1)において溶媒を用いる場合、溶媒としては特に制限はなく、無機溶媒であっても有機溶媒であってもよい。具体的には例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。
【0052】
反応式(1)における、一般式(2)で表されるカルボン酸誘導体の使用量としては、一般式(3)で表される化合物に対して1〜2モル当量、好ましくは1〜1.2モル当量である。
また、上記反応式(1)における反応温度および反応時間は、広範囲に変化させることができる。一般的には、反応温度は−20〜200℃であり、好ましくは0〜100℃である。また、反応時間は0.01〜50時間であり、好ましくは0.1〜15時間である。
【0053】
また、一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体は、下記反応式(2)で表される反応により製造することもできる。
【0054】
【化4】

【0055】
反応式(2)中、R、R、RおよびAは、それぞれ一般式(1)におけるR、R、RおよびAと同義であり、Yは脱離基を表す。
Yで表される脱離基としては、縮合反応に通常用いられる脱離基を、本発明においても用いることができる。具体的には例えば、塩素原子に代表されるハロゲン原子、メトキシ基およびエトキシ基に代表されるアルコキシ基、フェノキシ基に代表されるアリールオキシ基、アセチルオキシ基に代表されるアシルオキシ基、メトキシカルボニルオキシ基に代表されるアルコキシカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基に代表されるアリールカルボニルオキシ基、N−ヒドロキシコハク酸イミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールならびにイミダゾール基等を例示することができる。
【0056】
反応式(2)において、一般式(4)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを、無溶媒もしくは溶媒中で、反応させることにより、一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体を製造できる。
【0057】
反応式(2)で表される反応は、塩基の存在下で行うことができる。
前記塩基としては特に制限はなく、無機塩基であっても有機塩基であってもよい。具体的には例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属類、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコラート類、酸化ナトリウム等のアルカリ金属酸化物類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩類、燐酸三カリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸一水素二カリウム、燐酸一水素二ナトリウム等の燐酸塩類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の有機塩基類等を挙げることができる。
【0058】
反応式(2)において塩基を用いる場合、塩基の使用量は特に制限されるものではない。特に有機塩基類を用いた場合には、反応式(2)における溶媒として使用することもできる。
反応式(2)で表される反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒としては、前記反応式(1)で示される方法で用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。
【0059】
反応式(2)において、一般式(4)で表される化合物の使用量としては、一般式(3)で表される化合物に対し、1〜2モル当量が好ましく、より好ましくは1〜1.2モル当量である。
また、反応式(2)における反応温度および反応時間は広範囲に変化させることができる。一般的には、反応温度は−20〜200℃が好ましく、より好ましくは0〜100℃である。また、反応時間は0.01〜50時間が好ましく、より好ましくは0.1〜15時間である。
【0060】
前記一般式(4)で表される化合物は、前記一般式(2)で表されるピラゾールカルボン酸を用いて常法により製造することができる。例えば、前記一般式(2)で表されるピラゾールカルボン酸をチオニルクロライド、オキザリルクロライド、ホスゲン、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、臭化チオニル、三臭化リン、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド、1,1’−カルボニルビス−1H−イミダゾール等と反応させることで製造できる。
また、一般式(4)で表される化合物は、一般式(2)で表されるピラゾールカルボン酸と、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類と無触媒もしくは触媒の存在下で反応させるという常法によっても製造できる。
【0061】
本発明のいもち病用殺菌剤は、イネのいもち病(Magnaporthe oryzae)用の殺菌剤として優れた防除作用を示す。
【0062】
本発明のいもち病用殺菌剤は一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の少なくとも1種を含有する。本発明のいもち病用殺菌剤の使用形態としては特に制限はなく、例えば、植物体の地上部に対しての薬剤処理、苗および種子に対しての薬剤処理、湛水および土壌処理等による適用が可能である。
【0063】
本発明のいもち病用殺菌剤は単独で使用することも、他の殺菌剤や殺虫剤、除草剤植物成長調節剤等の農薬、土壌改良剤または肥効性物質と混合して使用することができ、これらとの混合製剤として使用することも可能である。
また本発明のいもち病用殺菌剤におけるピラゾールカルボン酸誘導体の含有方法には特に制限はなく、ピラゾールカルボン酸誘導体をそのまま含有しても、固体または液体の希釈剤を包含する担体と混合した組成物中に含有してもよい。本発明においては、ピラゾールカルボン酸誘導体を前記組成物として含有することが好ましい。ここで言う担体とは処理すべき部位への有効成分の到達を助け、また有効成分化合物の貯蔵、輸送および取り扱いを容易にするために配合される合成または天然の無機または有機物質を意味する。
【0064】
本発明において適当な固体担体としては、モンモリロナイト、カオリナイトおよびベントナイト等の粘土類、珪藻土、白土、タルク、バーミュキュライト、石膏、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、硫安等の無機物質、大豆粉、小麦粉等の植物性有機物質および尿素等があげられる。
また、適当な液体担体としては、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類、ケロシン、鉱油などのパラフィン系炭化水素類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒および水等があげられる。
【0065】
本発明のいもち病用殺菌剤は種々の補助剤を、更に含有することができる。補助剤は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、殺菌剤効力の増強や、製剤の剤型、適用場面等を考慮して種々の補助剤を選択することができる。これらの補助剤はそれぞれ単独に、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
補助剤の具体例としては、乳化、分散、拡展、湿潤、結合および安定化などを目的とした補助剤として、例えば、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩およびポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルチオエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸カルシウム、ワックス等の滑剤、イソプロピルヒドロジエンホスフェート等の安定剤;その他メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アラビアゴム等があげられる。しかし、これらの補助剤の成分は以上のものに限定されるものではない。
【0067】
本発明のいもち病用殺菌剤における一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の含有量は、通常、粉剤では0.1〜20重量%、乳剤では0.5〜50重量%、水和剤では0.5〜90重量%、粒剤では0.1〜20重量%およびフロアブル製剤では0.5〜90重量%とすることができるが、これらの含有量に限定されるものではない。
【0068】
一方、それぞれの剤型における担体の含有量としては、通常、粉剤では60〜99重量%、乳剤では40〜95重量%、水和剤では10〜90重量%、粒剤では80〜99重量%およびフロアブル製剤では10〜90重量%とすることができる。また、補助剤の含有量としては、通常、粉剤では0.1〜20重量%、乳剤では1〜20重量%、水和剤では0.1〜20重量%、粒剤では0.1〜20重量%およびフロアブル製剤では0.1〜20重量%である。尚、これら担体の含有量、補助剤の含有量は限定されるものではなく、製剤の物理化学性、適用場面などを考慮して適宜調節することができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」は重量基準である。
【0070】
(合成例1)
<1−メチル−N−(3−メチルイソキサゾール−5−イル)−3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物番号90)の合成>
1−メチル−3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸1.0gおよび5−アミノ−3−メチルイソキサゾール0.56gをテトラヒドロフラン20mLに溶解させ、氷冷下にて1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩1.1gを加えた。室温で4時間撹拌した後、ジクロロメタン200mLを加えて、水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、標記化合物1.0gを薄茶固体として得た。
【0071】
以下に、上記合成例1と同様にして製造できる化合物として、一般式(5)および一般式(2)で表される化合物をそれぞれ第1表(1)〜第1表(14)、第2表に示す。また併せて、そのうちのいくつかの物性値を第3表(1)〜第3表(8)に示す。
尚、表中に記載のMeはメチル基を、Etはエチル基を、i−Prはイソプロピル基を、n−Prはノルマルプロピル基を、n−Buはノルマルブチル基を、c−Hexはシクロヘキシル基を、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、、Acはアセチル基を、Naphはナフチル基をそれぞれ表すものとする。
【0072】
【化5】

【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】



【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
【表8】

【0081】
【表9】

【0082】
【表10】

【0083】
【表11】

【0084】
【表12】

【0085】
【表13】

【0086】
【表14】

【0087】
【化6】

【0088】
【表15】

【0089】
【表16】

【0090】
【表17】

【0091】
【表18】

【0092】
【表19】

【0093】
【表20】

【0094】
【表21】

【0095】
【表22】

【0096】
【表23】

【0097】
次に、上記合成例1と同様にして製造できる化合物として、一般式(6)〜一般式(10)で表される化合物をそれぞれ第4表〜第8表に示す。また併せて、そのうちのいくつかの物性値を第9表に示す。
尚、表中に記載のMeはメチル基を、Etはエチル基を、i−Prはイソプロピル基を、n−Buはノルマルブチル基を、c−Hexはシクロヘキシル基を、Bnはベンジル基を、Phはフェニル基を、allylはアリル基を、propargylはプロパルギル基を、Acはアセチル基を、Bzはベンゾイル基を、Naphはナフチル基をそれぞれ表すものとする。
【0098】
【化7】

【0099】
【表24】

【0100】
【化8】

【0101】
【表25】

【0102】
【化9】

【0103】
【表26】

【0104】
【表27】

【0105】
【表28】

【0106】
【表29】

【0107】
【表30】

【0108】
【化10】

【0109】
【表31】

【0110】
【表32】



【0111】
【化11】

【0112】
【表33】

【0113】
【表34】



【0114】
[製剤例および試験例]
次に本発明の殺菌剤の製剤例および殺菌活性試験例を示す。以下の説明において「部」は「重量部」を意味する。
【0115】
(実施例1) <粒剤>
化合物番号6 30部、ベントナイト22部、タルク45部、ソルポール5060(界面活性剤:東邦化学(株)商品名)3部および少量の消泡剤を均一に混錬し、バスケット造粒機にて造粒した後乾燥させて粒剤100部を得た。
【0116】
(実施例2) <粒剤>
化合物番号6 15部、ベントナイト60部、タルク21部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル1部およびリグニンスルホン酸ソーダ2部を混合した後、適量の水を加えて均一に混錬し、バスケット造粒機にて造粒した後乾燥させて粒剤100部を得た。
【0117】
(実施例3) <水和剤>
化合物番号32 50部、炭酸カルシウム40部、ソルポール5039(アニオン性界面活性剤とホワイトカーボンの混合物:東邦化学(株)商品名)5部およびホワイトカーボン5部を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0118】
(実施例4) <水和剤>
化合物番号45 30部、カオリナイト63部、ソルポール5039(アニオン性界面活性剤とホワイトカーボンの混合物:東邦化学(株)商品名)5部およびホワイトカーボン2部を均一に混合粉砕して水和剤とした。
【0119】
(実施例5) <乳剤>
化合物番号25 20部、キシレン55部、N,N−ジメチルホルムアミド20部、ソルポール2680(界面活性剤)5部を均一に混合して乳剤とした。
【0120】
(実施例6) <フロアブル剤>
化合物番号25 40部、ソルポール3353(非イオン性界面活性剤:東邦化学(株)商品名)5部、ザンサンガムの1%水溶液5部、水40部、エチレングリコール10部のうち有効成分以外の成分を均一に溶解し、ついで本発明化合物を加え、よく攪拌した後、サンドミルにて湿式粉砕し、フロアブル剤を得た。
【0121】
(実施例7) <粉剤>
化合物番号82 5部、クレー95部を均一に混和し、粉剤を得た。
【0122】
(試験例1)
<イネいもち病防除効果試験(散布試験)>
イネポット(品種:コシヒカリ;2葉期)に、実施例4に準じて、本発明化合物の濃度が250ppmになるように調製した水和剤の希釈液を散布し風乾させた。人工気象室(設定条件:22℃、12時間暗光サイクル)に植物を入れ、いもち病胞子懸濁液を噴霧接種した。気象室内を高湿に保ち、接種7日後に調査を行った。防除価を次式により算出した。
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
【0123】
その結果、以下の化合物が防除価80以上を示した。
化合物番号:15、16、19、24、43、45、54、66、70、80、90。
【0124】
(試験例2) <イネいもち病防除効果試験(初期活性試験)>
イネポット(品種:コシヒカリ;3葉期)に、実施例4に準じて調製した水和剤の希釈液を所定薬量(10アール当たりの本発明化合物の量が30g)となるように灌注処理した。薬剤処理3週間後、イネいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、温度25℃で高湿度の条件下に1週間置き、病斑数を調査した。防除価を次式により算出し、以下の評価基準で評価した結果を第10表に示した。
【0125】
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
−評価基準−
A:防除価が80以上
B:防除価が50以上80未満
C:防除価が50未満
【0126】
【表35】

【0127】
(試験例3) <イネいもち病防除効果試験(育苗箱試験)>
イネ育苗箱(30cm×60cm×3cm)に育成したイネ苗(品種:コシヒカリ;2葉期)に実施例1に準じて調製した粒剤を箱当たり50gになるように処理した。3日後、5000分の1アールのワグネルポットに移植し温室内で育てた。移植30日目にイネいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、温度25℃で高湿度の条件下に1週間置き病斑数を調査した。防除価は次式により算出し、試験例2と同様の評価基準で評価した結果を第11表に示した。
【0128】
防除価(%)=(1−処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100
−評価基準−
A:防除価が80以上
B:防除価が50以上80未満
C:防除価が50未満
【0129】
【表36】

【0130】
本発明の一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有するいもち病用殺菌剤は、イネいもち病に対して優れた防除効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるピラゾールカルボン酸誘導体およびピラゾールカルボン酸の少なくとも1種を有効成分として含有するいもち病用殺菌剤。
【化1】


[式中、
は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のハロアルキル基を表し、
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のハロアルキルチオ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のハロアルキルスルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
が水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表す場合、
およびRの少なくとも一方は炭素数1〜6のハロアルキル基を表し、
Aは−OHまたは−NRを表す。Rは水素原子を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
が炭素数1〜6のハロアルキル基を表す場合、
Aは、−OH、−OR、−SR、−NR、または−NR10NR1112を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、カルボキシ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、もしくは置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、もしくはアリールアミノカルボニル基を表す。RおよびRは互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。R10、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、置換されていてもよいアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいヘテロアリール基で置換された炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボニル基、またはアリールアミノカルボニル基を表す。また、R11およびR12は互いに結合して炭素数2〜5のヘテロ環基を形成しても良い。]
【請求項2】
一般式(1)におけるRが炭素数1〜6のハロアルキル基を表す請求項1に記載のいもち病用殺菌剤。
【請求項3】
一般式(1)におけるRが炭素数1〜6のアルキル基であって、Rが炭素数1〜6のフルオロアルキル基であって、Rが水素原子である請求項2に記載のいもち病用殺菌剤。
【請求項4】
一般式(1)におけるRが、トリフルオロメチル基である請求項3に記載のいもち病用殺菌剤。

【公開番号】特開2009−73823(P2009−73823A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218362(P2008−218362)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】