説明

うつ病の治療のためのロチゴチンの使用

本発明は、ロチゴチン[(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール]並びにそのプロドラッグ及び薬学的に許容可能な塩の、うつ病の治療のための医薬品の製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な記載
WHOの見積もりによれば、うつ病は2020年までに、疾病に関連した障害に対する2番目にもっとも多い原因となる(Murray,Lancet 349(1997)1498)。現在の薬理学的な治療の効率は、様々な理由から、例えばこの医薬品の遅延した作用開始、副作用又は不十分な効果のために制限されている。前記疾病の頻繁さ及び期間及び再発性のために、新規の、革新的な抗うつ薬に対する大きな需要が存在する。
【0002】
これまでは、抗うつ薬として主にアミン再取り込み阻害剤又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤が使用された(Goodman&Gilman’s,The pharmacological basis of therapeutics,9th Edition)。最近では、見込みのある治療構想として、セロトニン作動性(5HT1)レセプターも、アドレナリン作動性レセプター(α2)をも影響する作用物質の使用が検討されている(Westenberg,J.Clin.Psychiatry 60,Suppl.17,1999,4;Schatzberg,Human Psychopharmacology 17,2002,S.17)。そのような二重の作用原理を有する作用物質の例は、ミルタザピンである(Gorman,J.Clin.Psychiatry 60,Suppl.17,1999,9)。
【0003】
二重の作用原理を有する作用物質に、古典的な抗うつ薬と比較してより迅速な作用の開始及び優れた効果が期待され、というのは前記作用物質の高い選択性及びこれに関連した有利な副作用特性が、この患者の個人の維持量に対する迅速な調節を可能にするからである(Deakin,Int.Clin.Psychopharmacology 17,Suppl.1,2002,S.13)。
【0004】
新たにドーパミンアゴニスト、プラミペキソール及びロピニロールも、抗うつ性の効果が書き加えられ、かつこの作用が臨床研究において確認された(Ostow,M.,Am J Psychiatry.2002 Feb;159(2):320−1)。しかしこの際、前記ドーパミン−アゴニスト作用がどのような寄与を果たし、かつ前記の試験したドーパミン−アゴニストの可能性のあるその他の作用がどのような寄与を果たしたかは未だ不明瞭であり、というのはこれらは物質特異的にその他の神経伝達系をも影響するからである。
【0005】
ドーパミン−アゴニストとして記載されたロチゴチン(Metman,Clinical Neuropharmacol.24,2001,163)が、α2−レセプターにも、5HT1A−レセプターにも結合することが意外にも見出された。ロチゴチンはα2−レセプターにアンタゴニスト的に作用する一方で、5HT1A−レセプターにはアゴニスト性の活性を示した。
【0006】
前記特性により、特に、意外なアゴニスト性の5HT1A−活性に関する特性により、ロチゴチン[(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール]は、抗うつ薬としての使用のための候補となる。
【0007】
3つの異なる妥当な動物モデルで、ロチゴチンの抗うつ薬としての適性を実証した。
【0008】
「強制水泳試験」は急性ストレスによってうつエピソードが引き起こされる動物モデルである。この際ラットは制限された空間で水泳せざるをえない。初期の自己救助の試み(この試みにおいて前記動物は逃げ道がないことを理解する)後、前記動物は不動の状態に陥る。前記試験の繰り返しでは、前記動物は前記試験の開始から不動の状態のままである。抗うつ薬での予備処置では、この繰り返し試験の際の不動の状態の時間は短くなり、前記動物は大抵、前記水槽中への移送後すぐに、探索運動及び脱出運動を開始する(Porsolt,Biomedicine 30,1979,139)。ロチゴチンは明らかに短くなった静止時間を生じる。
【0009】
「無力学習試験」において、ラットは複数回制御不可能なストレスに曝される。これは動物に、前記動物が再度このストレスを回避することが可能であった、この後の状況(例えば、48h後)において悪化した学習能力を引き起こす。抗うつ薬の、亜慢性であって急性でない投与によって、前記学習能力は再度正常化し、かつ前記動物は、(予告された)ストレスを(ちょうどよい時に)逃れることを学習する(Sherman,Pharmacology Biochemistry&Behavior 16,1982,449)。ロチゴチンデポー懸濁液(実施例2)の数日間の投与により、前記動物は低濃度の際に改善した学習挙動を示した;但しよりこの多い用量では、前記動物の活動性をも非試験条件下で上昇させた。
【0010】
更なる動物モデル(実施例3)において、ロチゴチンの前記抗うつ作用が一般的に運動性刺激とは異なるかを試験した。この際ロチゴチンをラットに投与し、前記ラットの嗅球を両側切除した。前記嗅球の切除は未処置の対照群では、適応性活動亢進を生じた。文献から、前記モデルでの慢性的に投与された抗うつ薬は前記動物の運動活動性の減少を生じ、その一方で刺激はこの運動活動性を更に上昇させることが公知である(van Riezen H et al, Br J Pharmacol.60(4),1977,521;Kelly JP et al,Pharmacol Ther.74(3),1997,299)。前記モデルを用いて従って、作用物質の抗うつ性効果と非特異的な刺激による効果とが区別される。少ない用量のロチゴチンは特異的な抗うつ作用を示し、これはおよそ抗うつ薬イミプラミンの作用に相当し、かつ前記球切除誘導性の移動運動の活動亢進のほぼ完全な抑制を生じる。より高いロチゴチン濃度では、前記刺激性ドーパミン−アゴニスト性効果がこれに対して優勢である。
【0011】
これにより、皮下に適用されたロチゴチンが、全ての3つの試験で意外にも著しい抗うつ作用を有することが明らかに示された。
【0012】
図1は、ロチゴチンが「強制水泳試験」において静止時間の明らかな減少を生じることを示す。
【0013】
図2は、ロチゴチンデポー懸濁液を用いて(実施例2)処理した動物が、「無力学習試験」において、媒体のみで処置した対照群(HC)に対して正常化した学習挙動(NHC)を用量依存的に示すことを示す。
【0014】
図3は、少ない用量でのロチゴチンが球切除したラットにおいて(実施例3)、運動の活動亢進を明らかに減少させ、これにより明らかな抗うつ作用を発揮することを示す。より多い用量ではこれに対して、移動運動の活動性の非特異的な活性化が、支配的でありかつ球切除した動物の際にも対照動物の際にも発生した。
【0015】
これらの前臨床データからも、ロチゴチン、その生理活性代謝産物並びに相応するプロドラッグ及び塩により、うつ病の治療のための新規の、効果のある医薬品が提供されてよいという結論が生じる。
【0016】
本発明の主題は従って、ロチゴチン、そのプロドラッグ及び塩の、うつ病の治療のための医薬品の製造のための使用である。「治療」の概念は、本特許出願において、存在するうつ病の治療も、うつ病の予防的治療(予防法)をも、例えば再発性のうつ相の予防的治療をも含む。
【0017】
うつ障害は、よりよい理解のために及び最適な個人治療の達成のために、亜類に分類され、その際この異なる亜類の移行部はしばしば定かでない。このうつ病の分類は、−典型的には−その仮定された原因により、又は−最近では−その症状に応じて行われる(これに関して、ICD−10、WHOの「nternational Statistical lassification of iseases and Refated Heafth Problems」参照)。
【0018】
「うつ病」の概念とは本特許出願において、様々な、以下に挙げる典型的な、うつ病の亜類とも、ICD−10で「情動障害」の概念のもとに包含された障害(これはうつエピソードを伴う)、殊にうつエピソード、再発性うつ障害、双極性情動障害の際のうつ相並びに不安障害、適応障害及び脳器質性疾病(これらはそれぞれうつの症状を伴う)とも理解される。相応する障害は例えばICD−10分類(2.0版、November 2000)F31、F32、F33、F41、F43、F45及びF06に記載されている。
【0019】
うつ病の典型的な分類では、原因により通常は4つの主分類が類別される;
I.内因性うつ病
内因性うつ病の際には、容易に認識可能な外因性原因がうつ病の誘因として同定されない。誘因は、脳の神経伝達系の障害のようである。内因性うつ病にとって典型的なのは、相のある経過であり、その際前記うつエピソードは繰り返して生じる可能性がある。内因性うつ病は通常は以下に分類される
・単極性うつ病(「大うつ病」)、この際うつ相のみが現れる
・双極性うつ病(「躁うつ障害」)、この際このうつエピソードは躁相と交代する。
II.体因性のうつ病
このうつ病の原因は、体の器質性障害である。一般的に、体因性のうつ病は、以下に分類される
・器質性うつ病、これは脳の疾病又は損傷に起因する。前記疾病又は損傷はしばしば変化した脳の物質代謝を伴い、例えば脳腫瘍、パーキンソン病、偏頭痛、てんかん、脳麻痺、脳の動脈硬化、脳外傷、髄膜炎、脳卒中、及び痴呆、例えばアルツハイマー病である;
・症候性うつ病、これはしばしば疾患の結果又は随伴症状として生じ、これは脳機能を非直接的にのみ影響する。これは例えば、循環疾患、甲状腺機能低下又はその他のホルモン障害、感染症、癌又は肝疾患であってよい;
・薬物性のうつ病、例えばアルコール乱用、薬物乱用又は麻薬乱用での薬物性のうつ病。
III.心因性うつ病
これはしばしば、1つ以上のトラウマ的な体験に対する過剰反応である。しばしば、消耗性うつ病、神経性うつ病、及び現在の葛藤又は出来事に対する反応性うつ病に分類される。
IV.特別な人生の場面でのうつ病
例えば、産褥性うつ病、老人性うつ病、幼年性うつ病、季節性うつ病並びに青春性うつ病である。
【0020】
ロチゴチン並びにこのプロドラッグ及び塩は根本的に、様々な上記したうつ病状態の治療のための、又は情動障害、特にうつエピソード、再発性うつ障害、及び双極性情動障害でのうつ相(ICD−10に相応する)の治療のための医薬品の製造のために適している。
【0021】
本発明により、ロチゴチンは有利には、うつエピソード及び深刻な再発性うつ障害(例えばこれは内因性の単極性うつ病(「大うつ病」)の際に生じる)の治療のための医薬品の製造のために使用される。
【0022】
内因性の単極性うつ病のための原因として、脳細胞の物質代謝障害、即ちノルアドレナリン欠乏性の又はセロトニン欠乏性の、及び/又は遺伝子的な素因が考えられる。
【0023】
「大うつ病」の概念とは、本特許出願において、特に、アメリカの診断マニュアル「The Diagnostic and Statistic Manual of Mental Disorders−4th Edition」(American Psychiatric Association,1994;(DSM IV))に記載された障害である。
【0024】
ロチゴチン[(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール]及びそのプロドラッグ及び塩は、特に有利には、躁うつ患者のうつエピソードの治療のための抗うつ薬の製造にも適する。双極性障害の際のこのうつ相は本特許出願において、「うつ病」の概念のもとに包含される。
【0025】
更に、ロチゴチンは有利には、やはり上記した「器質性」うつ病の治療のための医薬品の製造に使用される。器質性うつ病は例えばしばしばパーキンソン病の際に、又は脳血管疾患及び痴呆障害の際に生じる。
【0026】
パーキンソン病の結果として生じるうつ病の治療の際には、本発明から、抗うつ薬及び抗パーキンソン剤の通常の併用投薬は、このうつのパーキンソン患者をロチゴチンで処置する場合には必要でないという臨床プラクシスに関係した結論が生じる。
【0027】
本発明の主題は従って、ロチゴチン、その代謝産物、プロドラッグ及び塩の、パーキンソン病に関連したうつ病の治療のための医薬品の製造のための使用であって、その際その他の抗うつ薬との併用投薬を選択的に断念してもよい使用に関する。
【0028】
本発明のその他の主題は、ロチゴチン、その代謝産物、プロドラッグ及び塩の、そのつど単独での又はその他の抗うつ薬との組み合わせでの、パーキンソン病に関連しない器質性うつ病の治療のための使用である。前記器質性うつ病の例は、脳腫瘍、偏頭痛、てんかん、脳麻痺、脳の動脈硬化、脳外傷、髄膜炎、脳卒中、痴呆、アルツハイマー病又はパーキンソンプラス症候群(Parkinson Plus Syndrom)に関連したうつ病である。
【0029】
本発明の更なる主題は、哺乳類のうつ病、特に内因性の単極性うつ病(「大うつ病」)、双極性障害のうつ相、パーキンソン関連うつ病、又はパーキンソン病に依存しない器質性うつ病の、ロチゴチン、代謝産物、プロドラッグ、又は塩の治療的な有効量の、前記哺乳類、特にヒトに対する投与による治療方法に関する。
【0030】
ロチゴチンの「プロドラッグ」とは、本特許出願において特に、ヒトの体中で、特に血漿中で、又は皮膚又は粘膜を介した侵入の際に、治療的な効果量がロチゴチンへと分解され、反応され、又は代謝される化合物が理解される。
【0031】
プロドラッグの例は、エステル、特にアルカノイルエステル、特に有利には6つまでの炭素原子を有するアルカノイルエステルである。プロドラッグのその他の例は、カルバマート、カルボナート、ケタール、アセタール、ホスファート、ホスホナート、スルファート、及びスルホナートである。
【0032】
ロチゴチンと、相応して活性のある前駆体、例えば酸塩化物、酸無水物、カルバモイル塩化物、スルホニル塩化物、その他との反応による前記プロドラッグの製造は、当業者に医化学の領域で公知であり、かつ関連する専門文献から取り出される。
【0033】
文献部の例は、Bundgaard:Design of Prodrugs,Elsevier,Amsterdam,1985;Higuchi及びStella:Pro−drugs as novel drug delivery systems in American Chemical Society,Washington DC,1975;Sloan:Prodrugs−Topical and Ocular Drug Delivery,Ed:M.Dekker,1992;Roche:Design of biopharmaceutical properties through prodrugs and analogs,Washington,DC,1977である。
【0034】
ロチゴチン−誘導体のプロドラッグとしての根本的な適性は、それぞれの化合物を、定義した条件下で、酵素混合物、細胞調製物、細胞ホモジェネート、又は酵素含有細胞分画と共にインキュベートし、この生じたロチゴチンを測定することで決定されてよい。適した酵素混合物は例えば、Gentest社(Woburn,MA,USA)のS9−肝臓調製物中に含有されている。特に素早く分解可能なプロドラッグの測定のために、試験すべきプロドラッグを、血漿中でも、例えばヒトの血液からの血漿中でもインキュベートしてよい。前記プロドラッグの最適加水分解速度は、目標設定に依存する。素早く分解可能なプロドラッグは例えば、迅速な濃度上昇に、例えば経鼻投与の際の迅速な濃度上昇に適していてよい。よりゆっくりと分解可能なプロドラッグは例えば、遅延化に、例えば経皮投与、非経口投与、又は経口投与の際の遅延化に適していてよい。
【0035】
ロチゴチンの(N−0437)前記ラセミ体の様々なプロドラッグが例えば、Den Haas et al.,Naunyn−Schmiedeberg’s Arch Pharmacol 342,1990,655及びDen Haas etal,J. Pharm Pharmacol 43,1991,11において記載されている。
【0036】
in vivoで、プロドラックは、血漿中でのロチゴチンの治療的に有効の定常状態濃度が達成される程度にロチゴチンを放出するのが好ましい。治療的に有効な濃度としてこの際、一般的には0.05〜20ng/血漿mL、有利には0.1ng〜10ng/血漿mL、特に有利には0.2〜5ng/血漿mLのロチゴチン濃度が考えられる。
【0037】
うつ病の特別な治療のために、場合により、より低いロチゴチン−血漿中濃度も十分であってよく、例えば2ng/血漿ml、例えば0.05〜1ng/血漿mL、又は0.1〜0.5ng/血漿mlのロチゴチン−血漿中濃度も十分であってよい。
【0038】
ロチゴチンは、5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールのS−(−)−エナンチオマーである。これは、前記医薬品におけるこの(R)−エナンチオマーの割合は、本発明によれば少ないことを意味する。前記(R)−エナンチオマーは有利には、ロチゴチン総量に対して、<10モル%の割合で、特に有利には<2モル%の割合で、とりわけ特に有利には<1モル%の割合で前記抗うつ薬中に存在する。
【0039】
ロチゴチン及びそのプロドラッグは、遊離の塩基として、又は生理学的に許容可能な塩の状態で、例えば塩酸塩の状態で、前記医薬品中に存在してよい。
【0040】
「生理学的に許容可能な塩」は、有機の又は無機の酸を有する、例えばHClを有する、塩基、特に遊離の塩基の状態の前記式(I)の化合物の非毒性の付加塩が含まれる。
【0041】
ロチゴチン及びそのプロドラッグの投与のために、様々な適用方法が使用可能であって、前記適用方法は当業者が、患者の必要、状態、及び年齢に従って、必要な用量及び所望の適用間隔を選択しかつこれに合わせてよい。
【0042】
ロチゴチンの投与の有利な方法は、経皮投与である。前記剤形は基本的に、例えば軟膏、ペースト、スプレー、シート、プラスター、又はイオントフォレシス装置から選択してよい。
【0043】
有利にはロチゴチンをこの際、プラスターの形で前記患者の皮膚に設けてよく、その際前記作用物質は有利には、接着性ポリマー、例えば自己付着性の接着性ポリシロキサンからなるマトリックス中で存在する(実施例1)。適した経皮製剤の例は、WO99/49852, WO 02/89777及びWO02/89778中に見出される。前記剤形は、十分に一定した血漿中濃度の調節を可能にし、これにより一定のドーパミン作動性刺激を、全ての適用間隔にわたって可能にする(WO 02/89778;Metman,Clinical Neuropharmacol.24,2001,163)。
【0044】
これに対して、皮下の又は筋肉内のデポー剤形の状態にある抗うつ薬が所望される場合には、ロチゴチンを、例えば塩の結晶として、例えば結晶性の塩酸塩として、疎水性の水不含媒体中で懸濁し、注入するか(WO 02/15903に記載のとおり)、又は生体分解高分子ベースのマイクロカプセル、マイクロ粒子、又はインプラントの形(WO02/38646に記載のとおり)で投与してもよい。
【0045】
ロチゴチン及びそのプロドラッグの投与のその他に考えうる形は、粘膜用製剤、例えば舌下スプレー、経鼻用又は直腸用製剤、又は肺投与のためのエアゾールである。
【0046】
ロチゴチンの適した用量は、0.1〜約50mg/日であり、その際有利には0.2〜40mg/日、特に有利には0.4〜20mg/日が投与される。ロチゴチンの特に有利な用量は0.5mg/日より多く、その際パーキンソン病の運動障害の同時の治療が必要ないロチゴチン適用のためには、特に有利には前記式Iの化合物、特にロチゴチンの抗うつ作用がはっきりと示されるものの、その際ロチゴチンの非特異的な刺激性作用が可能な限り少ない剤形が選択される前記用量は一般的に10mg/日より少なく、例えば一日当たり7.5mgより少なく、又は5、4、3、2より少なく、又は1mgより少なく、特に0.5〜5mg/日である。
【0047】
パーキンソン病患者の場合にはこれに対して、時に5mg/日より多い用量が、運動障害の同時の治療のために必要であってよい。相応する用量は例えば、患者の年齢及び状態、疾病の重症度その他に依存して、時に1mg/日を明らかに上回り、例えば5、6、7、8、9、10、又は10〜50mg/日、例えば10〜25mg/日にもなる。
【0048】
前記の選択した適用の種類に依存して、前記の所望の一日量はこの製剤設計によって制御されてよい。例えば、経皮投与したロチゴチンの一日量を、単位面積当たりの相応するフラックス率の調節により、及び/又は前記プラスターの大きさの変化により調節してよい。この際、前記用量を緩やかに増量してよく、即ち、前記処置を場合により、少ない用量で開始し、これを次に維持量にまで上昇させてよい。
【0049】
本発明の主題は従って、上述したように、ロチゴチンのうつ病の治療のために相応する必要量、例えば0.5〜10mg/日、又は0.5〜5mg/日を放出する剤形、例えばプラスター又は注入可能なデポー製剤である。
【0050】
当業者には、前記投薬間隔を適用した量、適用方法、及び前記患者の一日の必要に依存して変えてよいことは明らかである。従って経皮適用形、例えば一日一回、三日に一回、又は七日に一回の投与のための経皮適用形が考慮されてよく、その一方で皮下又は筋肉内のデポー注入を例えば、一週間リズム、二週間リズム、又は四週間リズムで可能にしてよい。
【0051】
ロチゴチン及びそのプロドラッグを、うつ病の治療のための単独療法として使用してよい。本発明の実施態様において、抗うつ薬の剤形中に、ロチゴチンの他にその他の作用物質1つも存在してよい。
【0052】
このための例は、セロトニン代謝又はノルアドレナリン代謝を直接的に又は非直接的に影響する、その他の抗うつ薬である。
【0053】
このための例は、
−選択的セロトニン再取り込み阻害剤、例えばセルトラリン、シタロプラム、パロキセチン、又はフルオキセチン、
−混合した、セロトニン再取り込み阻害剤、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えばベンラキサフィン、ミルナシプラム、ミルタザピン、及び三環系抗うつ薬、例えばアミトリプチリン、及びイミプラミン、
−選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、例えばレボキセチン、
−モノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えばトラニルシプラミン、又はクロルジリン、
−アルファ2−レセプター及び/又はセロトニンレセプターの調節剤、例えばミルタザピン又はネファゾドンである。
【0054】
抗うつ薬のその他の例は、アデノシン−アンタゴニスト、例えばST1535、シグマ−オピオイドレセプター−リガンド、NK−アンタゴニスト、例えばGW597599、サレジュダント(Saredudant)又はアプレピタント(Aprepitant)、メラトニン−アゴニスト、又は視床下部−下垂体−副腎軸の調節剤である。
【0055】
前記うつ病の原因及び症状に依存して、組み合わせ製剤は、付加的な抗精神病薬、鎮静剤、抗不安薬、又は偏頭痛剤、又は抗うつ性、抗精神病性、鎮静性、抗不安性、又は抗偏頭痛性の作用から選択された1つ以上の作用を発揮する、作用物質1つを含有してもよい。
【0056】
この際、前記式I又はIIの化合物及び付加的な、抗うつ薬、抗精神病薬、鎮静剤、抗不安薬、又は偏頭痛剤は、同一の医薬品製剤中で、例えば組み合わせタブレット中で、又は異なる適用ユニット、例えば2つの別々のタブレットの状態で存在してもよい。必要に応じて、両方の作用物質は同時に、又は時間的に離れて投与されてよい。
【0057】
組み合わせ製剤では、例えば逐次放出が達成されてよく、剤形、例えば、異なる医薬的活性成分のために相違する放出特性を有する2つの異なる層を有する経口タブレットによって逐次放出が達成されてよい。当業者に公知には、本発明の意味において、様々な剤形及び適用パターンが考えられ、これらは全て本発明の主題である。
【0058】
抗精神病薬の例は、プロメタジン、フルフェナジン、ペルフェナシン(Perphenacin)、レボメプロマジン、チオリダジン、ペラジン、プロマジン、クロルプロチキセン、ズクロペンチキソール、プロチペンジル、フルペンチキソール、ゾテピン、ベンペリドール、ピパンペロン、メルペロン、ハロペリドール、ブロムペリドール、スルピリド、クロザピン、ピモジド、リスペリドン、クエチアピン、アミスルプリド、オランザピンである。
【0059】
鎮静剤の例は、ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシラミン、ニトラゼパム、ミダゾラム、ロルメタゼパム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、オキサゼパム、ブロマゼパム、トリアゾラム、ブロチゾラム、テマゼパム、抱水クロラール、ゾピクロン、ゾルピデム、トリプトファン、ザレプロンである。
【0060】
抗不安薬の例は、フルスピリレン、チオリダジン、オキサゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、ロラゼパム、プラゼパム、ジアゼパム、クロバザム、メダゼパム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸二カリウム、ノルダゼパム、メプロバメート、ブスピロン、カバイン、ヒドロキシジンである。
【0061】
偏頭痛剤の例は、アルモトリプタン、ゾルミトリプタン、アセチルサリチル酸、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、メチルセルジド、イプラゾクロム、イブプロフェン、スマトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタン、パラセタモールである。
【0062】
実施例:
実施例1:ロチゴチン−プラスター
ロチゴチン(遊離塩基)1.8gをエタノール2.4g中に溶かし、Kollidon 90F(エタノール1g中に溶かした)0.4gを添加した。この混合物を、シリコーンポリマー(BioPSA 7−4201 8.9g+BIO−PSA 7−4301 8.9g[Dow Corning])のヘプタン中の74%溶液に添加した。石油エーテル2.65gの添加の後に、この混合物を700rpmで1時間撹拌し、均質な分散液を得た。ポリエステル上にラミネートした後に、50℃で乾燥させた。このプラスター重量は、最終的に50g/cmであった。
【0063】
実施例2:ロチゴチン−デポー懸濁液
(a)Miglyol 812 1411.2gを、Duranフラスコ中に量り取った。Imwitor 312 14.4gを、前記Miglyolに添加し、引き続き30分間撹拌下で80℃に加熱した。この澄んだ溶液を、室温にまで冷却し、濾過した。
【0064】
(b) (a)で製造した溶液1188gを、ガラスの実験室反応器中に移し、ロチゴチン12gを添加し、10分間、ウルトラチュラックス(Ultraturrax)を用いて10000rpmで、窒素存在下で均質化した。この懸濁液を、ウルトラチュラックスが運転する際に(2000rpm)、茶色のガラスフラスコ中にデカンテーションした。
【0065】
実施例3:
球切除試験を、Sprague−Dawley−ラットに対して実施した。対照群として、嗅球切除することなしに手術した偽手術した群を用いた。前記手術の14日後、前記ラットを媒体、ロチゴチン−デポー懸濁液(2日置き)又はイミプラミンで処置した。試験日に、前記ラットを試験領域で過ごさせ、かつ3分間放置した。この際この動物の移動運動活動性を、またいだラインの数をもとに測定した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、ロチゴチンが「強制水泳試験」において静止時間の明らかな減少を生じることを示す図である。
【図2】図2は、ロチゴチンデポー懸濁液を用いて(実施例2)処理した動物が、「無力学習試験」において、媒体のみで処置した対照群(HC)に対して正常化した学習挙動(NHC)を用量依存的に示すことを示す図である。
【図3】図3は、少ない用量でのロチゴチンが球切除したラットにおいて(実施例3)、運動の活動亢進を明らかに減少させることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロチゴチン[(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール]並びにそのプロドラッグ及び生理学的に許容可能な塩の、うつ病の治療のための医薬品の製造のための使用。
【請求項2】
前記うつ病は、単極性うつ病[大うつ病]又は躁うつ障害のうつエピソードである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記うつ病は器質性うつ病である、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記うつ病は、パーキンソン病に依存しない器質性うつ病である、請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記うつ病は、パーキンソン病に関連したうつ病である、請求項3記載の使用。
【請求項6】
非経口投与、経皮投与又は粘膜投与のための医薬品が予定されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
ロチゴチンが、一日当たり0.5〜50mgの用量で投与される、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
前記プロドラッグは、エステル、カルバマート、カルボナート、ケタール、アセタート、ホスファート、ホスホナート、スルファート、又はスルホナートである、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
ロチゴチンと、抗うつ薬、抗精神病薬、鎮静剤、抗不安薬、又は偏頭痛薬のグループからなる更なる作用物質1つとを含有する、うつ病の治療のための組み合わせ製剤。
【請求項10】
ロチゴチン又はロチゴチン−プロドラッグ又は塩の治療的な有効量の、哺乳類に対する投与を含む、哺乳類のうつ病の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−500154(P2007−500154A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521476(P2006−521476)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008168
【国際公開番号】WO2005/009424
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(591071997)シュバルツ ファルマ アクチェンゲゼルシャフト (39)
【氏名又は名称原語表記】SCHWARZ PHARMA AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Alfred−Nobel−Strasse 10, D−40789 Monheim, Germany
【Fターム(参考)】