説明

うつ病及びその他の気分障害のために、NMDA受容体アンタゴニストと選択的セロトニン再取り込み阻害薬の併用

本発明はNMDA 受容体アンタゴニストとシタロプラム又はエスシタロプラムであるSSRIの併用によって、難治性(treatment-resistant)うつ病及びその他の気分障害を含むうつ病の治療方法を提供る。これらの組み合わせが、単剤療法としてのどちらかの化合物の相乗及び増強された作用を有し、低い薬用量で増強された治療効果をみたらすことは予想されなかったことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参考文献として全体がここに含まれる米国仮出願第 60/473,639号 (2003年5月 27日出願)から優先権を主張する。
本発明は、NMDA 受容体アンタゴニストとシタロプラム又はエスシタロプラムの併用によって、難治性(treatment-resistant)うつ病及びその他の 気分障害を含むうつ病の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気分障害
気分障害、たとえばうつ病, 双極性障害及び季節性情動障害は、典型的に数種の抗うつ剤で治療される。気分障害の治療に有効な古典的な向精神薬は3つのクラスにグループ分けすることができる: 三環系抗うつ薬 (TCA), モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) 及びリチウム塩。TCA及びMAOI薬は双極性障害のうつ期の治療に適応している一方で, リチウムは双極性気分変動を弱めることは知られている。より新しい抗うつ薬は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI), 選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬 (NARI), 及び 二重SSRI/NARI(これは SNRIと呼ばれる。)を含む。
【0003】
TCAはモノアミンの再取り込みを遮断し, それによってノルアドレナリン及びセロトニン (5-ヒドロキシトリプタミン; 5-HT)のレベルを増加させる。イミプラミン 及びアミトリプチリンはTCAの具体例である。SSRI はセロトニンを調整する。トラゾドンは5-HTの作用を制御する。 一方、フルオキセチンは効力のある、そして選択的5-HT 再取り込み阻害薬である。 5-HT 及び ノルエピネフリン再取り込みの双方を阻害する3- クロロイミプラミンは、 欧州及びカナダで抗うつ薬として広範囲に使用されてきた。現在重要であるか又は抗うつ薬として検査されたその他の化合物は、フルボキサミン (Luvox:登録商標), シタロプラム (Celexa:登録商標), エスシタロプラム (Lexapro:登録商標), セルトラリン (Zoloft:登録商標), ブプロピオン (Wellbutrin:登録商標, Zyban:登録商標), レボキセチン (Edronax:登録商標)及び ミルタザピン (Remeron:登録商標)を含む。 フルボキサミンは、シナップス前ニューロンにセロトニン再取り込みを有効かつ選択的に阻害することによってセロトニン作動性神経伝達を促進させる。 レボキセチンは、重いうつ病の治療で用いられる可能性のある選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。更にその他の化合物、たとえばミルナシプラン (Ixel:登録商標), ベンラファキシン (Effexor:登録商標), デュロキセチン (Cymbalta:登録商標), ミルタザピン及びアトモキセチン (Strattera:登録商標)は 5-HT及びノルエピネフリン再取り込みの双方を遮断する。
これらの化合物, 特にTCAの多くは治療レベルで投与された場合、 有害な副作用を有する。SSRIを用いる治療の間 最も高い頻度で生じる有害作用は、胃腸障害、たとえば吐き気, 下痢/軟便, 便秘[6 〜37% の割合で発生(非特許文献1)], 及び 性的機能不全である。 吐き気は発生率の点で主要な有害作用である。これらの有害作用は, 重症度で穏やかないし中程度であるが, SSRIを用いる治療を受けることに幾人かの患者を思いとどませる。TCAの有害作用 は、口渇, 便秘, 視覚低下、 抗ヒスタミン性作用, 鎮静作用及び体重増加を含む。 MAOI はたまにしか使用されない。というのはこのクラスの医薬はしばしば非常に多くのその他の医薬及び多くの食品との相互作用を有するからである。MAOIの最も普通の副作用は、立ちくらみの際の血圧の低下及び不眠症を含む。過剰のリチウムは毒性であり, そしてその他の副作用はめまい, 下痢, 眠気, 悪心震え及び体重増加を含む。TCAは MAOIと相互に作用して、発熱, 動揺, けいれん及び死でさえも生じうる。
【0004】
更に, SSRIはその他の抗うつ薬と相互に作用する。たとえば, SSRlはTCA レベルを増加させて、結果として異常な心拍リズムをもたらすことができる。SSRIと MAOIの相互作用は、重い, 時には死に至る反応-------これは高体温症, 硬直, ミオクローヌス, バイタルサイン(生命徴候)の起こりうる急速な変動を伴う自律神経不安定症, 及び精神錯乱及び昏睡状態へと進行する過度の興奮を含む精神状態の変化------------を引き起こすことが知られている。 セロトニン症候群は、中枢及び末梢セロトニン作動性受容体の過度の刺激によって生じる。セロトニン症候群は、危険かつ死に至る可能性の高い症候群であり、これはバイタルサイン(生命徴候) (発熱, 血圧の振幅)の急速な変化, 発汗, 吐き気, 嘔吐, 硬直した筋肉, ミオクローヌス, 動揺, 精神錯乱, 発作及び昏睡状態を含む。発作の危険性の増加; 要注意。SSRIは、増加したSSRI 血液レベルの故に併用されない。
【0005】
上記医薬と対照的に、NARIは全く異なるプロフィールを有する。これらはセロトニン及びドパミン取り込み部位に、又はアドレナリン作動性, ヒスタミン作動性及びムスカリン作動性受容体に親和性をほとんど有しない。 ノルエピネフリン再取り込みを遮断する及び中枢及び末梢神経系でのそのアベイラビリティを増加させることに起因する副作用は、震え, 頻脈及び 排尿困難を含む。 NARIの起こる可能性のある副作用は、 吐き気, 頭痛, 口渇, 鎮静作用及び震えを含む。
【0006】
ほとんどの副作用は用量依存性である。したがって, もし比較的少量の投薬量が治療上有効であるとされるならば、このような副作用を患う患者は1種以上の医薬の比較的少量の投与から恩恵を受けるであろう。
【0007】
NMDA 受容体及び気分障害
N-メチル-D-アスパルタート (NMDA) 受容体は、シナプス後の, イオン調節型受容体である。 この受容体は、特に興奮性アミノ酸グルタミン酸(glutamate )及びグリシン 及び合成化合物NMDAに応答し, 受容体の名称はこれに由来する。NMDA受容体は二価 (Ca ++ ) 及び 一価(Na+ , K+ )イオン双方のシナップス後神経細胞への流れを受容体関連チャネルによって調節する(非特許文献2)。 NMDA/グルタミン酸/アスパラギン酸結合部位に最も近くにストリキニーネ非感受性結合部位がある。 グリシンは、NMDA 受容体複合体でグルタミン酸と共にコアゴニストであり、そして2つのアゴニストの同時結合はNMDA受容体チャネルの活性化に必要となる。半グリシンアゴニストのその部位への結合は、アロステリックにNMDA結合部位を阻害する。このような半グリシンアゴニストは、NMDAアンタゴニストであるともみなされる。
【0008】
ほかにも理由はあるが, 興奮性アミノ酸グルタミン酸の過剰の及び(又は) 持続性シナプスレベル又は酸化的ストレスに起因する異常なNMDA 受容体活性化は、 増加したカルシウム流入を導く。産生される細胞内カルシウムの高いレベルは正常な細胞機能に作用する生化学的カスケードを活性化し、そして, もしこれが長期にわたって維持されるならば、細胞損傷及び最後に細胞死に至る蛋白質, DNA 及び 膜 分解を結果として生じさせる。興奮毒性として知られているこの現象は、低血糖症 及び心不全から癲癇に及ぶその他の疾患に関連する神経の損傷に関与するとも考えられている。
【0009】
グルタミン酸受容体の過剰の活性化は、また不安及び不安障害に関与した。 著しく高いグルタミン酸血漿レベルは、比較される被検者におけるよりも気分障害の患者に検出された。ラットでの社会的交流テストにおいて、基本のグルタミン酸興奮の遮断は抗不安様作用を誘発した (非特許文献3)。さらに, ハンチントン病, パーキンソン病及びアルツハイマー病の慢性神経変性に類似の関与を示すリポートがある (非特許文献4)。 NMDA 受容体の活性化は、 脳卒中後痙攣に関与すると示めされ, そして癲癇の特定のモデルで, NMDA 受容体の活性化は 発作の発生に必要であると示された。
【0010】
したがってNMDA 受容体 に作用する医薬は、顕著な治療効果を有することが期待される。たとえば特許文献1(Cordi 等によって発行 (Cordi I))に, NMDA 受容体を調節する(modulate)ことで知られていたD-シクロセリンが記憶を改善/増強させるために及び神経障害に連結する認知障害を治療するために使用されると記載されている。D- シクロセリンは、ストリキニーネ-非感受性グリシン受容体に結合するグリシン アゴニストとして記載されている。
【0011】
特許文献2(Cordi 等によって発行 (Cordi II)に、D-シクロセリン及びD-アラニンの併用がアルツハイマー病, 加齢に伴った 記憶障害, 学習障害及び精神障害の治療に, 並び健康な人の記憶又は学習の改善に使用されると記載されている。D-アラニンはD- シクロセリンと併用投与され、D- シクロセリンの臨床試験で観察される副作用、主に、天然腸内細菌叢の減少をもたらす微生物へのその増殖抑制作用に起因する副作用を減少させる。D-アラニンは、D-シクロセリンの微生物への増殖抑制作用を 無効にする。D-シクロセリンが実際に半アゴニスト性質を有することも報告されている。
【0012】
特定のアダマンタン誘導体及び関連する化合物は、NMDA 受容体アンタゴニスト活性で知られている。 たとえば 特許文献3〜5を参照。これらすべてを参考のためにここに示す。
【0013】
特許文献6(Trullas 等によって発行)に、ストリキニーネ-非感受性グリシン結合部位の半アゴニストとしてNMDA 受容体を調節することで知られていた1-アミノシクロプロパンカルボン酸 (ACPC)を、大うつ病, 双極性障害, 気分変調及び季節性情動障害を含む気分障害を治療することに使用することが記載されている。そこには、ACPCが動物実験で 臨床上有効な抗うつ薬の作用に類似した作用を呈するとも記載されている。この場合もやはり、添付の実施例では, その化合物を腹腔内投与した。
【0014】
特許文献7(Mueller 等)に, 種々のタイプの障害、たとえばうつ病, 強迫性障害 (OCD), 睡眠障害, 性的機能不全及び 摂食障害の治療に使用することができる、セロトニン再取り込み部位でも、N-メチル-D-アスパルタート受容体でも活性な化合物が記載されている。このPCT明細書によれば,セロトニン再取り込み部位での強力な活性が好まれ(約100 nMより少ない), 一方NMDA 受容体での中程度の活性が好まれる (約100 nM 〜5mM のIC50)。 NMDA 受容体での活性が強力すぎるのは、起こりうるPCP-様副作用の故にあまり好ましくない。
【特許文献1】米国特許第4,904,681号明細書
【特許文献2】米国特許第5,061,721号明細書
【特許文献3】米国特許第6, 071,966号明細書
【特許文献4】米国特許第6,034,134号明細書
【特許文献5】米国特許第5,061,703号明細書
【特許文献6】米国特許第5,086,072号明細書
【特許文献7】国際公開(WO)第00/02551号明細書
【非特許文献1】Leonard 等, Drugs 1992; 43(Suppl. 2):3-9
【非特許文献2】Foster 等, Nature 1987; 329:395-396; Mayer 等, Trends in Pharmacol. Sci. 1990; 11:254-260
【非特許文献3】Brodkin 等, Pharmacol. Biochem. Behav. 2002; 73(2):359-66
【非特許文献4】Mattson, Neuromolecular Med. 2003; 3(2):65-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら, このような進歩にも拘わらず, 抗うつ薬で治療されたうつ病患者の30% 〜 45% 以上は一部しか又はまったく応答を示さない。対象者として考えられる患者の間でさえ, うつ病の残りの症状がある。 残りの症状の存在は、より不良な予後及び より高い再発の危険を伴う。したがって、難治性うつ病 又は 治療抵抗性うつ病は、不完全な臨床転帰に基づいてしか識別されない病型である。したがって, すべての患者集団で治療有効性を、所望されない有害な副作用を減少させながら最大化する、うつ病のための併用療法を提供することに技術的必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
本発明は、機能性NMDA受容体アンタゴニストと、シタロプラム又はエスシタロプラムである選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)のうちの1つを併用投与することによる、うつ病を含む気分障害の治療方法を提供する。
【0017】
好ましい実施態様において, NMDA 受容体アンタゴニストはメマンチン又はネラメキサンであり、そしてSSRIはシタロプラムである。
【0018】
別の好ましい実施態様において, NMDA 受容体アンタゴニストはメマンチンであり、そしてSSRIはエスシタロプラムである。
【0019】
別の好ましい実施態様において, NMDA 受容体アンタゴニストはネラメキサンであり、SSRI はシタロプラムである。
【0020】
また別の実施態様において, NMDA 受容体アンタゴニストはネラメキサンであり、そしてSSRI はエスシタロプラムである。
【0021】
ある実施態様において、NMDAアンタゴニスト又はSSRIは、併用投与が治療効果を増強する最適値より少ない(sub-optimal)作用効果又は閾値以下(sub-threshold)の作用効果で投与される。
【0022】
別の実施態様において, NMDAアンタゴニストも、SSRIも併用投与が相乗治療効果を増強するか又はこれを有する最適値より少ない作用効果又は閾値以下の作用効果で投与される。
【0023】
本発明はまた(i) 第一の量のNMDA 受容体アンタゴニスト 及び (ii) 第二の量のシタロプラム又はエスシタロプラムである選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)を含む2つの有効成分の調合物を提供する。
【0024】
ある好ましい実施態様において, これらの化合物は同一の調合物中に配合される。
【0025】
別の実施態様において, これらの化合物は別々の調合物中に配合されるが、たとえば併用 (好ましくは同時の, 又は準-同時の 及び少なくとも同日内) 投与に適するブリスター包装 又はその他の同一包装で提供される。
【0026】
図面の簡単な説明
図 1. 図 1は、C57BI マウスにおいて投薬量0 〜20 mg/kg で ネラメキサンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。 それぞれAnova F(4,52)=67.34, P<0.001 及び F(3,41)=6.056; P<0.01。 記号: * P<0.05; ** P<0.01; *** P<0.001 vs. 賦形剤.
図 2. 図 2 は、C57/Bl マウスにおいて、イミプラミンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。それぞれAnova F(3,44)=17.94, P<0.001 及び F(2,27)=3.388, P<0.05。記号: * P<0.05; ** P<0.01; *** P<0.001 vs. 賦形剤.
図 3. 図 3 は、C57/Bl マウスにおいて、フルオキセチンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。それぞれAnova F(3,36)=17.186, P<0.001 及び F(2,27)=1.42; NS。記号: * P<0.05; ** P<0.01; *** P<0.001 vs. 賦形剤.
図 4. 図 4 は、C57/Bl マウスにおいて、ベンラファキシンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。それぞれ Anova F(4,44)=30.02, P<0.001 及び F(2,27)=10.36; P<0.001。記号: * P<0.05; *** P<0.001 vs. 賦形剤.
図 5. 図 5 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 2.5 mg/kg とイミプラミンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。記号: * P<0.05 vs. 賦形剤; # P<0.05 vs. IMIの対応する投薬量; ァ P<0.05 vs. NERの対応する投薬量。
図 6. 図 6 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 20 mg/kg とイミプラミンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。 記号: * P<0.05 vs. 賦形剤; # P<0.05 vs. IMI の対応する投薬量; ァ P<0.05 vs. NERの対応する投薬量。
図 7. 図 7 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 2.5 mg/kg とフルオキセチンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。記号: * P<0.05 vs. 賦形剤; # P<0.05 vs. IMI の対応する投薬量; ァ P<0.05 vs. NERの対応する投薬量。
図 8. 図 8 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 20 mg/kg とフルオキセチンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。 記号: * P<0.05 vs. 賦形剤; # P<0.05 vs. IMI の対応する投薬量; ァ P<0.05 vs. NERの対応する投薬量。
図 9. 図 9 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 2.5 mg/kg とベンラファキシンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。記号: * P<0.05 vs. 賦形剤; # P<0.05 vs. IMI の対応する投薬量; ァ P<0.05 vs. NERの対応する投薬量。
図 10. 図 10は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 20 mg/kg とベンラファキシンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。 記号: * P<0.05 vs. 賦形剤; # P<0.05 vs. IMI の対応する投薬量; ァ P<0.05 vs. NERの対応する投薬量。
【0027】
発明の詳細な説明
患者のほぼ三分の一は、単剤療法として投与されたSSRI又はその他の医薬に応答しない。本発明は、(i) NMDA 受容体アンタゴニスト 及び (ii) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI), ノルエピネフリン 再取り込み阻害薬 (NARI), 2つの成分からなるSSRI/NARI (SNRI) 又は三環系抗うつ薬 (TCA)の併用によって、うつ病 及び 気分障害の治療用単剤療法以上の増強された治療効果を提供する。これらの組み合わせが、単剤療法に比べてそれぞれの化合物のより低い有効薬用量で相加(相乗)効果を提供する。これは以下にうつ病の動物実験で使用して証明する。
本発明者は、1-アミノシクロヘキサン誘導体、たとえばメマンチン又はネラメキサンとSSRI, NARI, SNRI又はTCAの組み合わせて臨床投与が治療抵抗性うつ病及びその他の気分障害を含むうつ病の治療に対して予期されない価値ある薬物療法であることを最初に着想し、そして実証した。
【0028】
本発明の利点は、次の事項を含む: (i) 機能性NMDA受容体アンタゴニスト とSSRI, NARI, SNRI 又はTCAの組み合わせによって生じる 増強された抗うつ活性 (単剤療法以上に) を提供すること。この組み合わせは、上記2つの化合物のどちらかが単独で投与される場合に達成される、それぞれの化合物の治療効力を改善する; (ii) 抗うつ薬単剤療法に非応答であるか又は一部応答する患者に代替治療法を提供すること; 及び (iii) より低量(すなわち 最適値より少ない薬用量又は閾値以下の薬用量) で治療効力を提供し, それによってどちらかの化合物に関連する副作用 (上述した)を減少させるか及び(又は)相乗又は相加メカニズムの効力を増加させる。
【0029】
NMDA 受容体アンタゴニスト
NMDA 受容体アンタゴニストは、急性神経変性 (たとえば 卒中及び 外傷に関連する), 慢性神経変性 (たとえばパーキンソン病, AD, ハンチントン病, 及び筋萎縮側索硬化症[ALS]に関連する), 癲癇, 薬物依存, うつ病, 不安及び慢性疼痛を含む多くのCNS障害において潜在的に広範な治療に適用される(参考のために参照: Parsons 等, Drug News Perspect., 1998, 11:523-533; Parsons 等, 1999, 上記参照; Jentsch 及び Roth, Neuropsychopharmacology, 1999, 20: 201-205; Doble, Therapie, 1995, 50: 319-337)
NMDA 受容体の機能阻害を、NMDA 受容体複合体内の種々の認知部位, たとえば: 第一伝達物質部位 (競合), カチオンチャネル内部に位置するフェンシクリジン部位(非競合), ポリアミン調節部位, 及び ストリキニーネ-非感受性, コアゴニスト性グリシン部位 (グリシン B) (Parsons等, 1999, 上記参照)での作用によって達成することができる。 NMDA 受容体は、シナップス可塑性、たとえば学習及び記憶に係わるシナップス可塑性の種々の型で重要な生理学的役割を果たすので(たとえば Collingridge and Singer, Trends Pharmacol. Sci., 1990, 11:290-296参照), NMDA 受容体に高い親和性を有する神経保護薬は正常なシナップス伝達を損ない、それによって多くの副作用を引き起こす可能性が高い。確かに、今日まで識別された多くのNMDA 受容体アンタゴニストは、その推定上の治療範囲内の投薬量で非常に所望されない副作用を生じる。したがって, 臨床試験は 、ジゾシルピン(+)MK-801;(+)-5-メチル-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾシクロヘプテン-5,10-イミン マレイン酸塩), Cerestat(登録商標) (CNS-1102), Licostinel(登録商標) (ACEA 1021), Selfotel(登録商標) (CGS-19755), 及び D-CPP-ene (SDZ EAA 494; EAA-494-Leppik, Epilepsia, 1998, 39 (Suppl 5):2-6; Sveinbjornsdottir 等, Epilepsia, 1993, 34:493-521; SCRIP 2229/30, 1997, p. 21)のようなNMDA 受容体アンタゴニストに対するおびただしい副作用が原因で良好な治療に対してその利用を支援しなかった。 したがってこの分野でのチャレンジは、NMDA 受容体の病的な活性化を防ぐが、その生理学的活性を許可するNMDA 受容体アンタゴニストを開発することであった。
【0030】
本発明の意味内で, 用語“NMDAアンタゴニスト薬”は、NMDA 受容体-介在神経細胞の発火の正常な要因を抑制することができる医薬に関連して使用される。 本発明の好ましいNMDAアンタゴニスト薬は、1-アミノシクロヘキサン誘導体、たとえばメマンチン及びネラメキサンである。これらの化合物はまた5HT3アンタゴニスト活性及び(又は)神経ニコチン受容体アンタゴニスト活性を有する。
【0031】
本発明に有用なNMDA 受容体アンタゴニストは次のものを含む:
メマンチン (1-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン) は1-アミノシクロヘキサン (アマンタジン) の同族体であり、そして米国特許第4,122,193号;第4,273,774号;第 5,061,703号及び第5,614,560号明細書に記載されている。 ネラメキサン (1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)は、また1-アミノシクロヘキサンの誘導体であり、そして米国特許第 6,034,134号明細書に記載されている。
【0032】
メマンチン及びネラメキサン, 並びにいくつかのその他の1-アミノアルキル-シクロヘキサン類は 、受容体に中程度の親和性を有する、系統的に活性のある非競合 NMDA 受容体アンタゴニストである。これらは強い電圧依存性質及び速い遮断/非遮断動力学を示す (Parsons 等, 1999, 上記参照; Goetelmeyer 等, Arzneim-Forsch/Drug Res., 1992, 42:904-913; Winblad 等, Int. J. Geriat. Psychiatry, 1999, 14:135-146; Rogawski, Aminso Acids, 2000, 19: 133-49; Danysz 等, Curr. Pharm. Des., 2002, 8:835-43; Jirgensons 等, Eur. J. Med. Chem., 2000, 35: 555-565)。これらの化合物は、高い親和性NMDA 受容体アンタゴニスト、たとえば(+)MK-801よりもはるかに迅速にNMDA 受容体 チャネルから離れ、そしてNMDA 受容体の持続性過刺激によって生じる神経細胞可塑性の崩壊を減衰させる。この受容体に対するその比較的低い親和性, 強い電圧依存性及び速い受容体非遮断動力学の故に, これらの化合物は、治療範囲内の薬用量でその他のNMDA 受容体アンタゴニストの副作用を本質的に持っていない(Kornhuber等, Eur. J. Pharmacol., 1991, 206:297-311)。確かに, メマンチンは15 年の間臨床で使用され、200,000人を上回る治療患者の多くに良好に許容されている (Parsons 等, 1999, 上記参照)。
【0033】
メマンチン, ネラメキサン及び その他の1-アミノアルキルシクロヘキサン類は 、ADでの痴呆, パーキンソン病, 及び 痙縮の緩和に有用であると提案された (たとえば 米国特許第5,061,703; 5,614,560, 及び 6,034,134; Parsons 等, 1999, 上記参照; Moebius, ADAD, 1999,13:S172-178; Danysz 等, Neurotox. Res., 2000, 2:85-97; Winblad 及び Poritis, Int. J. Geriatr. Psychiatry, 1999, 14:135-146; Goertelmeyer 等, 1992, 上記参照; Danysz 等, Curr. Pharm. Des., 2002, 8:835-843; Jirgensons等, Eur. J. Med. Chem., 2000, 35: 555-565参照)。これらの疾患はグルタミン酸作動性伝達障害に起因する。すなわちNMDA 受容体 チャネルを通過する過剰のカルシウム流入が, 特定の脳領域で脳細胞の破壊を導き, 損なわれた機能、そして最後に脳細胞の破壊を導く(Choi, J. Neurobiol., 23: 1261-1276, 1992; Rothman and Olney, Trends Neurosci., 10: 299, 1987; Kemp 等, Trends Pharmacol. Sci., 8: 414, 1987)。 メマンチンによる成熟ラットの長期にわたる治療は、海馬長期増強の誘発を促進させ, シナップス可塑性の永続性を増加させ, 空間記憶能力を改善し, そしてNMDA 受容体 アゴニストによって生じる記憶障害を無効にさせることを示した(Barnes 等, Eur. J. Neurosci., 1996; 8:65-571; Zajaczkowski等, Neuropharm., 1997, 36:961-971)。 1-アミノシクロヘキサン誘導体及び詳しくはメマンチンは、またAIDS 痴呆症(米国特許第 No. 5,506,231), 神経因性疼痛 (米国特許第5,334,618), 脳虚血(米国特許第 5,061,703), 癲癇, 緑内障, 肝性脳症, 多発性硬化症, 脳卒中及び 遅発性ジスキネジー (Parsons 等, 1999, 上記参照) の治療に有用であると提案された。更に, 慢性及び神経因性疼痛のいくつかのモデルにおいて、メマンチン及びネラメキサンは、運動反射に明らかな作用することなく、運動活動に著しく影響を与えない薬用量で、温熱性痛覚過敏及び機械的異痛を選択的に遮断することが分かった。1-アミノシクロヘキサン誘導体はまた免疫調節, 抗マラリヤ, 抗ボルナ(Borna)ウイルス及び 抗C型肝炎活性を有すると例示された (たとえば米国特許第6,034,134 号明細書及びここに引用された参考文献参照)。
【0034】
1-アミノシクロヘキサン誘導体、たとえばメマンチン及びネラメキサン[米国特許出願第09/597,102号明細書及びその対応国際特許出願PCT EP 01/06964( 2001年12月27日に国際特許出願(WO)第 01/98253号パンフレットとして公表された); 米国特許第6,034,134号明細書参照] は、また非NMDA介在経路を経て作用すると提案された。したがって, メマンチンは、5HT3-介在電流(天然N1E-115 及び 異種 HEK-293 細胞中で) 及び NMDA 受容体-媒介電流(ラット海馬スライス中で) とほぼ等しい親和性でもって阻止することが分かった(Parsons 等, 1999, 上記参照; Rammes 等, 2001, Neurosci. Lett., 306:81-84)。 メマンチンのように, ネラメキサンもまた 5-HT3 受容体-介在電流を阻止することが分かった (Rammes 等, 2001, Neurosci. Lett., 306:81-84)。5HT3 受容体アンタゴニストは動物で学習及び記憶を改善すると知られている (Carli 等, 1997, Behav. Brain Res., 82:185-194; Reznik 及び Staubli, 1997, J. Neurophysiol., 77:517-521)。
【0035】
定義
本発明で使用されるNMDAアンタゴニストとしての1-アミノシクロヘキサン誘導体は、一般式(I):
【0036】
【化1】

【0037】
(I)
{式中、
R* は -(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、
n+m = 0, 1又は 2,
A は線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6),線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及び R2 は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6) アリール, 置換されたアリール 及びアリールアルキルより成る群から選ばれ,
R3 及び R4 は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれるか, 又は 一緒になってアルキレン (C2-C10) 又はアルケニレン (C2-C10) 又はN原子と一緒になって 3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケン---------これは 置換された (アルキル (C1-C6), アルケニル (C2-C6)) 3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケンを含む----------を形成するか、 あるいは独立して R3 又は R4 はRp, Rq, Rr 又はRs と一緒になってアルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t,
(式中、t= 0 又は1 及び アルキレン鎖の左側 U 又はYに結合し、アルキレン鎖の右側は Nに結合し、そしてR6 は水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール 及びアリールアルキルより成る群から選ばれる。)
を形成することができるか、 あるいは
独立してR3 又はR4 はR5 と一緒になって式 -CH2-CH2-CH2-(CH2)t-で表わされるアルキレン鎖又は式 -CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は-CH2-CH=CH-(CH2)t-(式中、 t= 0 又は1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, そしてこのアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側は Wに結合し、アルキレン環の右側はN に結合し、
R5 は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれるか, 又はR5 はこれが結合する炭素及び隣接する環炭素と一緒になって二重結合を形成し,
Rp, Rq, Rr, 及び Rs は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6), シクロアルキル (C3-C6) 及び アリール, 置換されたアリール 及びアリールアルキルより成る群から選ばれるか、又はRp, Rq, Rr 及び Rs はこれらに結合するU又はYと一緒になって独立して二重結合を形成することができるか、Rp, Rq, Rr 及び Rs は 一緒になって結合して、 低級アルキレン -(CH2)x- 又は低級アルケニレン架橋 (式中、x は2-5である。)を示すことができ、このアルキレン架橋は更にR5 と結合して付加的な低級アルキレン -(CH2)y- 又は低級アルケニレン架橋(式中、y は1-3である。)を形成することができ、
そして記号 U, V, W, X, Y, Zは炭素原子を示す。}
によって表わされ, そしてこの誘導体は光学異性体, ジアステレオマー、ポリマー, 対掌体, 水和物, 薬学的に許容し得る塩及び式 (I)の範囲内で化合物の混合物を含む。
U-V-W-X-Y-Zによって定義される環は、シクロヘキサン、シクロヘキシ-2-エン, シクロヘキシ-3-エン, シクロヘキシ-1,4-ジエン, シクロヘキシ-1,5-ジエン, シクロヘキシ-2,4-ジエン 及び シクロヘキシ-2,5-ジエンより成る群から選ばれるのが好ましい。
【0038】
NMDAアンタゴニストの種々の塩及び異性体(立体異性体及び対掌体を含む) を使用することができる。用語 "塩" は、酸付加塩又は遊離塩基の付加塩を含むことができる。薬学的に許容し得る酸付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、無機酸、たとえば塩酸, 硫酸又はリン酸及び(又は)有機酸、たとえば酢酸, マレイン酸, コハク酸又はクエン酸等を含む。 これらの塩 (又はその他の類似の塩)のすべては常法によって製造することができる。塩又は異性体の性質は決定的なものではない。但しそれは無毒であり、そして所望の薬学的有効性を実質的に妨げない。本発明の方法にとって好ましい塩は、メマンチン塩酸塩である。第二に好ましい塩はネラメキサン メシラートである。
【0039】
用語"1-アミノシクロヘキサン誘導体" は、類似の、しかし僅かに異なる医薬を製造するために使用される方法で 1-アミノシクロヘキサン (又はその入手可能な誘導体, たとえばネラメキサン又はメマンチン)から導かれる化合物を表すために本明細書で使用される。
【0040】
用語“同族体”又は“誘導体”は、基準分子 (たとえば 1-アミノシクロヘキサン)に構造上類似する分子を言及するために通常の薬学的知識にしたがって本明細書で使用されるが, 目標とされた及び調節された方法で基準分子の1種以上の置換基を代替置換基で置換して変更され、それによって基準分子に構造上類似する分子を生じさせる。同族体の合成及びスクリーニング (たとえば構造分析 及び(又は) 生化学分析を用いて)は, 改善された又は偏った特徴(たとえば 特定の標的受容体タイプでのより高い効力及び(又は)選択性,哺乳類血液脳関門を浸透するより高い能力, より少ない副作用等) を有することができる公知化合物の僅かに変更された形態を同定するために、薬化学でよく知られているドラッグデザインアプリーチである。
【0041】
本発明にしたがって使用される1-アミノシクロヘキサン誘導体の限定されない例はつぎの化合物より成る群から選ばれた1-アミノアルキルアイクロヘキサン誘導体を含む:
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(トランス),3(トランス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1(シス),3(シス),5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン (ネラメキサン),
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-シス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,5S)シス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-トランス-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,5S)トランス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキル) ピロリジン,
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン,
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
1 アミノ-1,3,3,5(トランス)-テトラメチルシクロヘキサン (アキシャルアミノ 基),
3-プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン半水和物,
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチル-3(シス)-プロピルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
シス-3-エチル-1(トランス)-3(トランス)-5-トリメチルシクロヘキサミン,
1-アミノ-1,3(トランス)-ジメチルシクロヘキサン,
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-プロピルシクロヘキサン,
1-メチル-3(シス)- プロピルシクロヘキシルアミン,
1-アミノ-1-メチル-3(トランス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(シス)-エチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(トランス)-エチルシクロヘキサン,
シス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
トランス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5.5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチルシクロヘキサン,
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン,
2-メチル-l-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン,
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキル-l)-エチルアミン半水和物,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキル)-ピロリジン,
1-アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1R,SS)トランス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5, 5-トリメチル-3(シス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(トランス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-エチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1-メチル-3(シス)-メチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン,
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
1-アミノ-l-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-エチル-l-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又は ピペリジン,
N-[1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン 又は ピペリジン,
N-[1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-シス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-[(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-トランス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-[(1R,SS)トランス-5-エチル,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン 又は ピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキル)ピロリジン,
その光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物, その薬学的に許容し得る塩, 及び その混合物。
【0042】
一般式 (I)で表わされる特定の1-アミノシクロヘキサン誘導体は、3つのアキシャルアルキル置換基, たとえばRp, Rr 及び R5 のすべてが一緒になって橋頭を形成し、下記式 IIb - IId で表わされる化合物(いわゆる1-アミノアダマンタン類) を生じる場合を含む:
【0043】
【化2】

【0044】
式 (I)で表わされる特定の1-アミノシクロヘキサン誘導体(式中、 n + m = 0、 U, V, W, X, Y 及び Z はシクロヘキサン環を形成し、そしてR3 及び R4 のうちの1つ又は2つは独立して 、Rp, Rq, Rr, Rs 又は R5 によって形成されるアルキレン架橋を介して上記シクロヘキサン環に結合する。)は 次式IIIa-IIIcによって表わされる:
【0045】
【化3】

【0046】
(式中、 Rq, Rr, Rs, Rr 及び R5 は式(I)に対して上記に定義された通りであり、 R6 は 水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール又はアリールアルキルであり、Y は飽和されているか又はR6 と共に結合し、これが結合する環炭素と共に炭素-水素結合を形成し、l= 0 又は 1 及び k= 0, 1 又は 2、そして ------ は単結合又は二重結合を示す。)
本発明にしたがって使用される1-アミノシクロヘキサン誘導体の非限定例は、1-アミノ アダマンタン 及び つぎの化合物より成る群から選ばれたその誘導体を含む:
1-アミノ-3-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-メチル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン (メマンチン),
1-アミノ-3-エチル アダマンタン,
1-アミノ-3-イソプロピル アダマンタン,
1-アミノ-3-n-ブチル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジイソプロピル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジ-n-ブチル アダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-エチル アダマンタン,
1-N-メチルアミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N-エチルアミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N-イソプロピル-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N,N-ジメチル-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N-メチル-N-イソプロピル-アミノ-3-メチル-5-エチル アダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジペンチル アダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-ヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-シクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-ペンチル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-シクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-ヘキシル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジシクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-シクロヘキシル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジフェニルアダマンタン,
1-アミノ-3,5,7-トリメチル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジメチル-7-エチル アダマンタン,
1-アミノ-3,5-ジエチル-7-メチル アダマンタン,
1-N-ピロリジノ 及び 1-N-ピペリジン誘導体,
1-アミノ-3-メチル-5-プロピル アダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ブチル アダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ペンチル アダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-ヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-シクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-メチル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-プロピル アダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ブチル アダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ペンチル アダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-ヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-シクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-エチル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ブチル アダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ペンチル アダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-ヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-シクロヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-プロピル-5-フェニル アダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ペンチル アダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-ヘキシル アダマンタン,
1-アミノ-3-ブチル-5-シクロヘキシル アダマンタン,
その光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物, N-メチル-, N,N-ジメチル-, N-エチル-, N-プロピル誘導体, その薬学的に許容し得る塩, 及びその混合物。
【0047】
式IIb 及び IIdで表わされる1-アミノ アダマンタン誘導体(メマンチン含む)はハロゲン化アダマンタン, 好ましくは ブロモ- 又は クロロアダマンタンのアルキル化によって一般に製造される。ジ- 又は トリ-置換されたアダマンタン類は、付加的なハロゲン化処理及びアルキル化処理によって得られる。アミノ基は三酸化クロムを用いる酸化及び HBrを用いる臭素化 又は 臭素を用いる臭素化 及びホルムアルデヒドとの反応 、ついで加水分解によるいずれかで導入される。アミノ官能基は 一般的に認められた方法にしたがってアルキル化することができる。メチル化はたとえばクロロメチルホルマート との反応、ついで 還元によって行うことができる。エチル基はそれぞれアセトアミドの還元によって導入することができる。合成に関して更に詳細はたとえば米国特許第5,061,703号 及び第 6,034,134号明細書を参照。前記化合物に対する別の合成法を、仮出願番号第60/350,974号明細書 (出願日:2001年11月7日), 仮出願番号第60/337,858 号明細書(出願日:2001年11月8日)及び仮出願番号第 60/366,386号明細書 (出願日:2002年3月21日)[ すべて参考のために示す。] 並びに 下記の合成例に見出すことができる。
【0048】
本発明によれば, 式(I) で表わされる1-アミノシクロヘキサン誘導体は、そのまま投与することができるか又はその薬学的に許容し得る塩(たとえば酸付加塩、たとえば塩酸塩, 臭化水素酸塩, 硫酸塩, 酢酸塩, コハク酸塩又は酒石酸塩, 又はこれをフマル酸, マレイン酸, クエン酸 又はリン酸との酸付加塩 を含めて)の形で使用することができる。
更に, 当業者に周知の方法を用いて, 本発明の化合物の同族対掌体及び誘導体を製造することができる。これらは、痴呆のコントロールでの改善された治療効果, すなわち特異的標的受容体タイプでのより高い有効性及び(又は) 選択性、哺乳類の血液脳関門を浸透するより大きい又はより低い能力 (たとえばより高い又はより低い血液脳関門 浸透率), より少ない副作用等を有する。
【0049】
用語“気分障害”は、大うつ病, 双極性障害, 単極性うつ病, 気分変調, 循環気質, 季節性情動障害, 及び 産後うつ病を含む。用語“気分障害”はまた全身性疾患又は神経疾患に起因する二次性(secondary) うつ病を意味する。神経疾患の例は、多発性硬化症, パーキンソン病, アルツハイマー病, 頭部外傷, 脳腫瘍, 脳卒中後, 初期痴呆, 及び睡眠時無呼吸を含み, 一方全身性疾患は感染, 内分泌障害, 膠原血管病, 栄養失調及び腫瘍性疾患を含むが、これらに限定されない。 二次性うつ病はまた主に心筋梗塞後の患者にみられる。この患者は非うつ病の心筋梗塞後の患者の死亡率の3倍の死亡率を示す。
【0050】
本明細書で, 用語 "うつ病"は、治療のない状態で少なくとも2週間続く持続性悲しい気分又は活動への興味の喪失を含む臨床的な症候群を意味することで使用される。精神疾患の診断及び統計学的マニュアル(DSM-IV-TR) 基準を、うつ病を患う患者を診断するために使用することができる (American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-Text Revision. 4th ed. Washington: American Psychiatric Association; 2000)。同様に, 世界保健機関の疾患の国際分類、第10版(the International Classification of Disease, version 10 (IDC-10), of the World Health Organization)に, うつ病に関する基準が挙げられている。
【0051】
用語“うつ病”は、IDC-10 及び DSM-IV 評定尺度で分類された疾患及び病態を含むうつ病に関連するすべての疾患及び病態を意図する。このような疾患又は大うつ病, 気分変調性障害, 双極性障害の抑うつエピソード及びその他の気分障害に関連する抑うつエピソード(季節性気分障害、たとえば季節性情動障害, 亜症候群うつ病, 単一エピソードうつ病, 産後うつ病, 及び 一般の病態に起因する気分障害を含む), 薬物に誘発された気分障害, 反復性又は難治性うつ病, 幼児虐待に誘発されたうつ病, 非定型うつ病, 循環気質, 月経関係の障害, 身体表現性障害に関連するうつ病, 及び 難治性うつ病を含む。
【0052】
大うつ病性障害及び気分変調性障害は、慢性化, 重症度 及び 持続度に基づき区別される。大うつ病で、抑うつ気分は2週間続くかねばならない。気分変調性障害で、抑うつ気分は2年間にわたってほとんどの日々に存在しなければならない。常に大うつ病性障害 は、通常の機能とははっきり異なることによって特徴づけられる。 大うつ病性エピソードの患者は正常に機能し、かつ感じることができるが、突然にうつ病のひどい症状が現れる。これに反して気分変調性障害のヒトは、 大うつ病に比べて重くない慢性うつ病にかかる。
【0053】
“三環系抗うつ薬”又は“TCA”は、第一, 第二, 第三及び置換されたアミン を含み、これはアミトリプチリン, クロミプラミン, トリミプラミン, ドキセピン, ノルトリプチリン, デシプラミン 及び プロトリプチリンを含む。
【0054】
“選択的セロトニン再取り込み阻害薬”又は“SSRI”は、フルオキセチン, パロキセチン (Paxil:登録商標), シタロプラム (Celexa:登録商標), セルトラリン (Zoloft:登録商標) 及び フルボキサミン, 及びその対掌体、たとえばエスシタロプラム (すなわちLexapro:登録商標)を含む。これらの好ましい塩は、フルオキセチン 塩酸塩, フルボキサミン マレイン酸塩, パロキセチン 塩酸塩 及び 塩酸塩半水和物, シタロプラム 臭化水素酸塩, エスシタロプラムシュウ酸塩, 及び セルトラリン 塩酸塩である。
【0055】
“選択的 ノルエピネフリン 再取り込み阻害薬”又は“NARI”は、レボキセチン及び アトモキセチンを含む。 更に好ましくは, レボキセチンメシラート及びアトモキセチン 塩酸塩。
【0056】
二重“セロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害薬”又は“SNRI”は、ベンラファキシン, ミルナシプラン 及び デュロキセチンを含む。更に好ましくは, ベンラファキシン 塩酸塩, ミルナシプラン 塩酸塩 及び デュロキセチン塩酸塩を含む。
【0057】
本発明の意味する範囲内で, 用語“NMDAアンタゴニスト薬”は、NMDA 受容体-介在ニューロン活動を減衰させることができる医薬を意味して使用される。 本発明の好ましいNMDAアンタゴニスト薬は、アミノアダマンタン類、たとえばメマンチン 及び ネラメキサンを含む1-アミノシクロヘキサン誘導体及び同族体である。 NMDA“機能性アンタゴニスト”はヒトに 薬学的に有効な性質を有し、そしてNMDA 応答カチオンチャネルで過剰の活性を減少させるあらゆる化合物である。 本発明の“機能性”アンタゴニストは、ストリキニーネ-非感受性 グリシン 結合部位の半アゴニスト, 並びにその他の結合部位でのNMDA 受容体複合体で競合及び非 -競合アンタゴニストである化合物を含む。この用語はまた何らかの方法でNMDA 受容体 を変化させる因子を含む。
【0058】
NMDA“競合アンタゴニスト”は、内因性神経伝達物質 グルタミン酸及びアスパラギン酸に比べて競合アンタゴニスト性質を有する化合物である。
【0059】
NMDA“非-競合アンタゴニスト”は、ストリキニーネ-非感受性 グリシン 結合部位又はNMDA 結合部位以外の場所においてNMDA-作動性カチオンチャネルでの活性を減少させる化合物である。このような部位の例は、カチオンチャネル内にあり, たとえば メマンチンである。非-競合アンタゴニストが好ましい。
【0060】
本明細書で使用される用語 "治療"は、明らかな症状のある徴候、障害又はこのような用語が適用される病態, あるいはこのような障害又は病態の1種以上の症状の進行を逆転、緩和又は阻止するか又は防止することを意味する。本明細書で使用される用語 "処置"は、"治療" が上記に定義された通り、治療する行為を意味する。本発明に関して, 用語 “治す”は認定された抑うつ障害、たとえばうつ病, 双極性障害又は季節性情動障害の1種以上の症状を緩和又は除去することを意味する。
【0061】
本明細書で使用される用語 "薬学的に有効な量"は、抑うつ障害の症状、たとえば重度の大うつ病性障害; 双極性障害; 季節性情動障害, 気分変調, 循環気質を緩和又は除去するための薬物の併用量を意味する。
【0062】
有効物質に適用される用語“組み合わせ(combination)”は、本明細書で、本発明の2つの医薬(すなわち NMDA 受容体アンタゴニスト 及びSSRI, NARI, SNRI又はTCA)を含む単一医薬調合物(製剤)又は本発明の単一医薬(すなわちNMDA 受容体アンタゴニスト 及び SSRI)をそれぞれが含む2つの別々の医薬調合物 (製剤)を一緒に投与することと定義される。
【0063】
用語“増強する ”は、医薬又は生物製剤の作用を増加させること、又は医薬又は生物製剤と相乗的に作用することを意味する。別の実施態様において, 用語“増強する”は 、個々の化合物の最適値より少ない量又は閾値以下の量を併用投与して、単剤療法としての個々の化合物の効果にほぼ等しい又はこれよりも大きい治療効果を提供することができることを意味する。本発明のある実施態様において, NMDAアンタゴニストは SSRI, SNRI, NARI又はTCAの治療効果を増強する。別の実施態様において, SSRI, SNRI, NARI又はTCAは、NMDAアンタゴニストの治療効果を増強する。
【0064】
本発明の意味で、用語“併用投与”は、1-アミノシクロヘキサン誘導体及びSSRI, NARI, SNRI又はTCAを1つの調合物中で同時に投与するか, 又は異なる調合物中で同時に又は連続して投与することに使用される。しかしながら“併用”とみなされる連続投与に関して, 1-アミノシクロヘキサン誘導体及び SSRI, NARI, SNRI 又はTCA を、哺乳類においてうつ病又は別の気分障害に関連する症状又は挙動を治療、防止、阻止に対して結果として得られる有益な効果が依然として容認される時間間隔で別々に投与しなければならない。たとえば, 1-アミノシクロヘキサン誘導体及び SSRI, NARI, SNRI 又はTCAを、同じ日に (たとえばそれぞれ一日1回又は2回), 好ましくはそれぞれ1時間以内に, 及び最も好ましくは同時に投与しなければならない。
【0065】
薬用量又は量に適用される用語“治療に有効な”は、化合物又は医薬調合物を必要とする哺乳類に投与しながら所望の有効性をもたらすのに十分である化合物又は医薬調合物のその量を意味する。1-アミノシクロヘキサン誘導体, たとえばメマンチン又はネラメキサン及びSSRI, たとえばシタロプラム又はエスシタロプラム, NARI, SNRI又はTCAを含む医薬調合物に関して, 本明細書で、 用語“治療上有効な量/薬用量”はそれぞれ化合物を組み合わせた場合、哺乳類に投与しながら有効な応答を生じさせるのに十分であるそれぞれの化合物の量/薬用量を意味する。
【0066】
用語“閾値以下”は、応答を生じるのに不十分な有効成分の量、すなわち単剤療法として有効成分を使用した場合、最小の有効量に満たない量を意味する。
同一の背景で用語“最適値より少ない”は、より高い量で達成されるであろう応答を、完全な程度でないが生じる有効成分の量を意味する。
用語“付加的”は2つの化合物を投与する組み合わせ効果---------単剤療法として化合物を投与した場合、応答全体が応答の合計に等しいか、又はほぼ等しい-------を意味する。
【0067】
用語“相乗的な”は2つの治療化合物を投与する組み合わせ効果--------応答全体が2つの個々の効果の合計よりも大きい--------を意味する。用語“相乗効果”は、単剤療法として投与した場合, 予測されない応答を生じないが, 別の治療化合物と併用投与した場合に第二化合物のみで生じる応答よりも大きい応答全体を生じる、量の化合物1種を投与する、組み合わせ効果も意味する。
【0068】
本発明の調合物に関連して使用される、語句"薬学的に許容し得る" は、生理学的に耐性であり、そして哺乳類 (たとえばヒト)に投与した場合、典型的に不利な反応を生じないこのような調合物の医療用物質(molecular entities) 及び他の成分を意味する。好ましくは, 本明細書では, 用語 "薬学的に許容し得る" は米国連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は哺乳類に使用される, 及び 更に具体的にはヒトに使用される、その他の一般に容認された薬物類中に列挙されていることを意味する。
【0069】
本発明の医薬調合物に適用される用語 "キャリヤー" は、希釈剤, 賦形剤又は媒体(vehicle)を意味し、これと共に有効化合物 (たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体及び(又は) SSRI, NARI, SNRI 又は TCA ) を投与する。このような医薬用キャリヤーは滅菌液体, たとえば水, 食塩水, デキストロース水溶液, グルセロール水溶液及び油状物(石油-, 動物-, 植物-又は合成-由来のもの, たとえばピーナッツ油, 大豆油, 鉱油, ごま油等々を含む。)であることができる。 適する医薬用キャリヤーは、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martin, 18th Edition中に記載されている。
本明細書では、用語 "対象者(subject)" は哺乳類を意味する。特に, この用語は前記背景技術で議論したうつ病又は気分障害が現れるヒト意味する。
【0070】
用語 "約" 又は "およそ"は、常に所定の値又は範囲の20%以内, より好ましくは10%以内, 及び最も好ましくはまた5%以内を意味する。あるいは, 特に生体系で, 用語 "約" はほぼ1 ログ(a log)(すなわち 一桁)以内、好ましくは2つの所定の値のファクター内であることを意味する。
【0071】
医薬調合物 及び投与
本発明の方法と同時に、NMDA 受容体アンタゴニスト (たとえば メマンチン又は ネラメキサン) の治療上有効な量の及び(又は) SSRI, NARI, SNRI 又はTCA, (たとえば エスシタロプラム)の治療上有効な量、並びに場合により付加的なキャリヤー又は賦形剤 (すべて薬学的に許容し得る)を含む医薬調合物も提供する。上記化合物 を、単一調合物として又は (同日に, 好ましくはそれぞれ1時間以内、そして最も好ましくは同時に) 併用投与することができる2つの別個の調合物として調製することができる。好ましくは, これらを単一調合物としてか又は好ましくは同時投与する2つの別個の調合物として調製する。この調合物を、1日1回投与又は1日2回投与に調製することができる。したがってNMDA 受容体アンタゴニストを1日2回及びSSRI, NARI, SNRI 又は TCA を1日2回、それぞれの投与に対して1個の調合物として又は2個の別々の調合物として投与することができる。あるいは2つを1日1回投与することができる(又はその逆もある)。あるいはこれらをそれぞれ1個の調合物として又は2個の別々の調合物として1日1回投与することができる。
【0072】
記載の調合物中に、2つのNMDA 受容体アンタゴニスト 及びSSRI, NARI, SNRI 又は TCA は治療上有効な量で存在するか、又はこれらのうちの1つ又は2つが最適値より少ない量か又は閾値以下の量であることができる。投与の厳密なモード、医薬が投与される形態、投与の対象となる症状、関係する対象者(subject involved)(たとえば体重、体の状態、年齢、性別等々)及び更に担当する医者又は獣医の好み又は経験を考慮にいれて、治療上有効な最適量は実験で決定されねばならない。本明細書で記載したように、2つの化合物の相乗効果があるので, 1つ又は2つは単剤療法としてその対応する有効量より低い量で組み合わせて有効である。
【0073】
当該化合物を、経口で, 局所に, 腸管外に又は粘膜に(たとえば口腔に, 吸入によって, 又は直腸に)通常の非毒性薬学的に許容し得るキャリヤーを含む単位投薬剤形で投与することができる。通常、経口経路を使用するのが望まれる。当該化合物を、カプセル, 錠剤等々の形で、又は半固形又は液剤として経口で投与することができる (Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack 5 Publishing Co., Easton, PA参照)。経口投与された医薬は、拡散律速系, 浸透装置, 溶解調節されたマトリックス 及び侵食性/分解性 マトリックスを含む、時間調節された遊離媒体の形で投与することができる。
【0074】
錠剤又はカプセルの形の経口投与に関して, 当該化合物を非毒性薬学的に許容し得る賦形剤、たとえば結合剤 (たとえば前糊化されたトウモロコシデンプン, ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース); 増量剤 (たとえば乳糖, ショ糖, グルコース, マンニトール, ソルビトール及び その他の還元糖 及び非還元糖, 微結晶セルロース, 硫酸カルシウム又はリン酸水素カルシウム); 滑沢剤 (たとえばステアリン酸マグネシウム, タルク又はシリカ, ステアリン酸, ステアリルフマル酸ナトリウム, ベヘン酸グリセリル, ステアリン酸カルシウム等); 砕解剤 (たとえばジャガイモデンプン又はグリコールデンプンナトリウム); 又は 湿潤剤 (たとえば ラウリル硫酸ナトリウム), 着色剤及び矯味矯臭薬, ゼラチン, 甘味料, 天然及び合成ゴム (たとえばアカシア, トラガント又はアルギナート類), 緩衝塩, カルボキシメチルセルロース, ポリエチレングリコール, ロウ等々と共に配合することができる。
【0075】
錠剤は技術的によく知られた方法によって被覆することができる。コアを、たとえばアラビアゴム, ゼラチン, タルク、 二酸化チタン等々を含むことができる濃縮された砂糖溶液でコーティングすることもできる。あるいは, 錠剤を当業者に周知のポリマー----------このポリマーは容易に揮発する有機溶剤又は有機溶剤の混合物に溶解される-------------でコーティングすることができる。
【0076】
軟ゼラチンカプセル製剤に関して, 有効物質をたとえば植物油又はポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセルは、上記錠剤用賦形剤、たとえば 乳糖, ショ糖、ソルビトール, マンニトール, デンプン(たとえばジャガイモデンプン, コーンスターチ又はアミロペクチン), セルロース誘導体又はゼラチンを用いて有効物質の顆粒を含む。医薬の液体又は半固体も硬ゼラチンカプセル中に充填することができる。
【0077】
本発明の調合物は、微小カプセル(microspheres) 又は マイクロカプセル(たとえばポリグリコール酸/乳酸 (PGLA)から製造される)に加えることもできる (たとえば米国特許第 5,814,344号; 第5,100,669号 及び第 4,849,222号明細書; PCT 公表WO第95/11010号 及び WO第93/07861号明細書参照)。医薬の調節された遊離を達成するのに有用な生体適合性ポリマーは、たとえばポリ乳酸, ポリグリコール酸, ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー, ポリイプシロンカプロラクタム, ポリヒドロキシ酪酸, ポリオルトエステル類, ポリアセタール類, ポリヒドロピラン類, ポリシアノアクリレート類, 及びヒドロゲル類の架橋された又は両親媒性ブロックコポリマーを含む。
【0078】
半-固形又は液状形での当該化合物の製剤化は当業者にできる範囲内にある。というのは有効成分が水性媒体に非常に溶解性であるからである。常に1種以上の有効物質, たとえばメマンチン及びSSRIは製剤の0.1 〜99重量%, さらに詳しくは注射用製剤に対して0.5 〜20重量%及び経口投与に適する製剤に対して0.2 及び 50重量%を構成する。
【0079】
経口投与用液体調合物は、たとえば溶液、シロップ、エマルション又は懸濁液の形をとることができるか又はこれらは使用前に水 又は その他の適当な媒体を用いて再構成させるために乾燥製品として存在させることができる。 経口投与用調製物を、調節された又は延期された有効物質の遊離を生じるように適当に製剤化することができる。経口の時間調節された遊離医薬製剤の具体例は、米国特許第 5,366,738号明細書に記載されている。
【0080】
液体形での経口投与に対して、医薬成分を非毒性薬学的に許容し得る不活性キャリヤー (たとえばエタノール, グリセロール, 水), 懸濁化剤 (たとえばソルビトールシロップ, セルロース誘導体 又は 水素添加された食用油), 乳化剤 (たとえばレシチン又はアカシア), 非水性賦形剤(たとえばアーモンド油, 油状エステル類, エチルアルコール 又は 分留植物油), 保存剤(たとえばメチル 又は プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)等々と一緒に配合することができる。 安定化剤、たとえば酸化防止剤 (BHA, BHT, 没食子酸プロピル, アスコルビン酸ナトリウム, クエン酸)を投薬形態を安定化するために添加することができる。たとえば, 溶液は約 0.2重量% 〜約 20重量%のメマンチンを, 糖、 及びエタノール, 水, グリコール及びプロピレングリコールの混合物でバランスをとりながら含むことができる。 場合によりこのような液体製剤は、着色剤、矯味矯臭薬、サッカリン及び増量剤としてカルボキシメチル-セルロース又は当業者に周知のその他の賦形剤を含むことができる。
【0081】
吸入投与のために、本発明の治療薬を、適する噴射剤, たとえばジクロロフルオロメタン, トリクロロフルオロメタン, ジクロロテトラフルオロエタン, 二酸化炭素, 又はその他の適当なガスの使用と共に、加圧パック又は噴霧器からのエアゾルスプレープレゼンテーションの形で通常供給することができる。 加圧エアゾルの場合、単位投薬量は計量された量を供給するためにバルブを備えることによって決定することができる。たとえば吸入器又は通気器(insufflator)中に使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを調製することができ、これは当該化合物と適する粉末ベース、たとえばラクトース又はデンプンの粉末混合物を含有する。
【0082】
注射による腸管外投与用溶液を、有効物質の薬学的に許容し得る水溶性塩を有する水溶液の形で, 好ましくは 約0.5重量% 〜約10重量%の濃度で調製することができる。これらの溶液はまた分解防止剤 及び(又は) 緩衝剤 を含むことができ、そして種々の投薬単位アンプルで通常提供することができる。
【0083】
直腸投与用投薬単位は溶液又は懸濁液であることができるか、又は当該化合物を中性脂肪ベースとの混合物として含む坐薬又は停留浣腸の形で、又は有効物質を植物油又はパラフィン油との混合物の形で含むゼラチン直腸カプセルの形で調製することができる。
【0084】
本発明の製剤を、腸管外に、すなわち静脈内 (i.v.), 脳室内 (i.c.v.), 皮下(s.c.), 腹腔内 (i.p.), 筋肉内 (i.m.), 皮下 (s.d.), 又は 皮内 (i.d.) 投与によって, 直接注射、 たとえばボラス注射又は連続吸入によって供給することができる。 注射用製剤は、添加された保存剤と共に単位投薬形、たとえばアンプル又は多薬用量容器 (multi-Dose containers)中にあることができる。あるいは, 有効成分は、使用前に適当な媒体, たとえば 滅菌発熱物質不含水を用いて再構成される粉末形にあることができる。
【0085】
本発明はまたNMDAアンタゴニスト及びSSRI, NARI, SNRI又はTCAを含む1種以上の容器(左側に ml単位を示す)からなる医薬包装又はキットを提供する。
【0086】
薬用量
本明細書では, 本発明の調合物中の成分の投薬量は、連続的に又は間欠的に投与される薬用量が実験動物及び患者の個々の病態に生じる結果を考慮した後に決定された量を必ず超えないことを定める。 具体的な薬用量は、当然のことながら投薬処理、患者又は対象となる動物の状態、たとえば年齢体重、性別、感受性、食餌、投薬期間、組み合わせで使用される医薬、疾患の過酷さにしたがって変化する。一定の条件下での適当な薬用量及び投薬回数を、上記の指示に基づく試験によって決定することができるが、 精緻化し、そして最後に医師の判断にしたがって及び標準臨床法によるそれぞれの患者の環境 (年齢, 全身状態, 症状の重症度, 性別等々) にしたがって決めることができる。
【0087】
本発明の調合物の毒性及び治療有効性は、動物実験で標準医薬操作によって、たとえばLD50 (人口の50%が死に至る量) 及びED50 (人口の50% に治療上有効な薬用量)を測定することによって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の薬用量割合は治療指標であり、そしてこれを比率 ED50/LD50.として表わすことができる。大きな治療指標を示す調合物が好ましい。
【0088】
本発明の医薬調合物は、比較的に低い投薬量で非常に有効であるばかりでなく、低い毒性を有し、そして副作用が少ない。ヒトの治療処置において本発明の調合物中の有効化合物の適する一日投薬量は、経口投与で体重1 あたり約0.01-10 mg 及び非経口投与で体重1 あたり0.001-10 mgである。 SSRI, NARI, SNRI 又はTCAの一日投薬量は、NMDA 受容体アンタゴニストの一日投薬量と明白に異なるが, 投薬量は2つの有効物質に関して同じであることもできる。
【0089】
本発明の単位投薬量中に使用することができる1-アミノシクロヘキサン誘導体メマンチンの具体的量は、一日あたり約 1 mg 〜約60 mgの範囲にあり, そしてネラメキサンに関しては, 一日あたり 約10〜100 mgの範囲にある。ある実施態様において, メマンチンを一日あたり約 5〜20 mgの範囲で及びネラメキサンを一日あたり約 25〜75 mgの範囲で投与する。
【0090】
SSRIに関して, その投薬量が医薬に従うので, 適する投薬量は、フルボキサミンに対して一日あたり約50-300 mg、フルオキセチンに対して一日あたり10-40 mg(一日あたり80 mgに増加させることができる); セルトラリンに対して一日あたり50-200 mg; パロキセチンに対して一日あたり20-50 mg; 好ましい実施態様エスシタロプラムに対して一日あたり1-30 mg; 好ましい実施態様シタロプラムに対して一日あたり 10-60 mg; 及びブプロピオンに対して一日あたり75-200 mgである。
【0091】
同様に, TCA又はその他の環状抗うつ薬に関して, その投薬量も医薬に従う。 適する投薬量はイミプラミンに対して一日あたり約150 mg/250 mg; デシプラミンに対して一日あたり25-300 mg; ノルトリプチンに対して一日あたり50-75 mg, 幾人かの要求に応じて150 mgまで; 一日あたり150-300 mgのクロミプラミン; 一日あたり200-300 mgのアミトリプタリン; 一日あたり75-300 mgのドキセピン; 及び一日あたり150-300 mgのベンラファキシンであることができる。
【0092】
いくつかの特に好ましい実施態様において, 再取り込み阻害薬がシタロプラムの場合, 本発明の併用を受けるヒトに投与すべき量は、一日あたり約 10 mg 〜約 60 mg , 好ましくは一日あたり約20 〜約 40 mgの範囲内にある。再取り込み阻害薬がエスシタロプラムである場合, 本発明の併用を受けるヒトに投与すべき量は、一日あたり約 10 mg 〜約 30 mg , 好ましくは一日あたり約5 〜約 20 mgの範囲内にある。NMDA 受容体アンタゴニストがメマンチンである場合, 本発明の併用を受けるヒトに投与すべき量は、一日あたり約 1 mg 〜約 60 mg , 好ましくは一日あたり約5 〜約 20 mgの範囲内にある。NMDAアンタゴニストがネラメキサンである場合, その範囲は約 10 〜100 mg, 好ましくは約25〜75 mgであるのがよい。
【0093】
好ましい実施態様において, 一方又は他方の有効成分又は双方の有効成分の量は最適量より少ない量又は閾値以下の量であり、そしてその効果は併用によって増強される。たとえばNMDAアンタゴニストがメマンチン、そして SSRIがシタロプラムである1つの実施態様において, メマンチンを一日あたり約2.5 〜10 mg及び シタロプラムを一日あたり約10 〜60 mgで投与する。NMDAアンタゴニストがメマンチン、そしてSSRIがエスシタロプラムである場合, メマンチンを一日あたり約2.5〜 10 mg及び エスシタロプラムを一日あたり約1 〜30 mgで投与する。NMDAアンタゴニストがメマンチン、 そしてSSRIがシタロプラムであるもう一方の実施態様において, メマンチンを一日あたり約1 〜60 mg及びシタロプラムを一日あたり約5〜10 mgで投与する。NMDAアンタゴニストがメマンチン、そしてSSRIがエスシタロプラムである場合, メマンチンを一日あたり約1〜 60 mg 及び エスシタロプラムを一日あたり約 2.5 〜 5 mgで投与する。
【0094】
NMDAアンタゴニストがネラメキサン、そして SSRIがシタロプラムであるもう一つの実施態様において、ネラメキサンを 一日あたり約10 〜20 mg及びシタロプラムを一日あたり約10 〜60 mgで投与する。 NMDAアンタゴニストがネラメキサン、そしてSSRIがエスシタロプラムである場合, ネラメキサンを一日あたり 約10 〜20 mg及び エスシタロプラムを一日あたり約1 〜30 mgで投与する。NMDAアンタゴニストがネラメキサン、そしてSSRIが シタロプラムである別の実施態様において, ネラメキサンを一日あたり約10 〜100 mg及びシタロプラムを一日あたり約5 〜10 mgで投与する。NMDAアンタゴニストがネラメキサン、そしてSSRIがエスシタロプラムである場合, ネラメキサンを一日あたり約10 〜100 mg及び シタロプラムを一日あたり約2.5 〜5 mgで投与する。以下の例によれば、 ネラメキサンの治療以下の投薬量(sub-therapeutic dose)は2.5 mgほど低くてよい。
【0095】
別の実施態様において, 2つの化合物を最適量より少ない又は閾値以下の投薬量で投与し、この併用が相乗治療効果をもたらす。
【0096】
別の好ましい実施態様において, 難治性, あまり応答しない又は不応性でさある患者の場合, 各成分の量は、2つの有効成分の併用投与について少なくとも1種の症状又は指標によって評価される抗うつ効果をもたらすのに十分な量である。
【0097】
実施例
更に、本発明を具体例によって説明する。しかし, これらの例は本発明を説明するものであって本発明又はあらゆる例示される用語の範囲及び意味を何ら限定するものではない。同様に, 本発明は本明細書に記載された、あらゆる具体的な好ましい実施態様に限定されない。実際, 本発明の多くの変更及び変法は、本明細書を読むにあたって当業者にとって明らかであり、そしてその思想及び範囲から離れることなく実施することができる。したがって本発明は、特許請求の範囲が権利を与える範囲に相当する全容に沿って、添付の特許請求の範囲の表現によってのみ限定されねばならない。
【0098】
例 1: メマンチンとエスシタロプラムの併用による強制水泳テスト
SSRIによる単剤療法は、うつ病に対するモデルである強制水泳テストで有効でないことが概してわかっている。このモデルは, 部分的に, SSRI 難治性うつ病 (回帰性うつ病)の代表である。 したがって, NMDAアンタゴニストとSSRI 抗うつ薬の併用は、このモデルで有効性を評価する。
【0099】
材料及び方法
動物。雄性ウスターラット(250-270g)を適宜、投薬前に22℃の一定の温度で保つ。 1グループあたり10-12匹のラットを使用する。複数のグループは、コントロール (賦形剤のみ), 単剤療法 (メマンチン又はエスシタロプラムのみ) 及びメマンチン 及び エスシタロプラムが併用投与される少なくとも1つのグループ (1つより多くのグループならば, それぞれの有効成分の異なる量(それぞれの有効成分の最適値より少ない量又は閾値以下の量を含む)を使用する。種々の投薬量を下記対照表に示す:
表 1
【0100】
【表1】

【0101】
薬物:メマンチン (1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン) は、Merz Pharmaceuticals, フランクフルト, ドイツ及びForest Laboratories, ニューヨーク, NYから入手することができる。 エスシタロプラムはForest Laboratories, ニューヨーク, NY 及び Lundbeck A/S, コペンハーゲン, デンマークから入手できる。医薬を、腹腔内投与のために薬学的に許容し得るキャリヤー、たとえば蒸留水又は生理食塩水 (場合により保存剤と共に)に溶解させる。 投与は実験の1時間前である。約 .001-10 mg/kgの範囲を、2-4 ml の水性キャリヤーで投与する。メマンチン及び エスシタロプラムの併用グループに関して, エスシタロプラム の投薬量は0.25-0.5 mg/kg 及び メマンチンの投薬量は約2.5-5.0 mg/kgである。
【0102】
強制水泳テスト。これはPorsolt 等, Eur. J. Pharmacol. 1978; 27(4): 379-91に記載され、そして Detke 等, Psychopharmacology 1995; 121: 66-72によって変更された方法にしたがって行われる。 簡潔に説明すると, ラットを水が充填された、動物がそのシリンダー底に接触することができないようなシリンダー中に入れる。 5 秒間隔で顕著な挙動を評定するためにタイムサンプリング法を用いて, 活動的な挙動の3つの特異的な挙動要素に点数をつけて、抗うつ薬効果を評価する。これらの挙動はよじ登る挙動、泳ぐ挙動及び不動を含む。処置されていない又は 賦形剤処置されたコントロール動物と比べて, 不動の持続時間の減少及びよじ登る挙動又は泳ぐ挙動の増加は、薬物療法の抗うつ薬様活性に関連する。
【0103】
結果
メマンチン及びエスシタロプラムの併用は、コントロールと比べて, あるいはメマンチン又はエスシタロプラムを単独で投与した場合と比べて、不動の著しく減少された持続時間及び泳ぐ又はよじ登る挙動の増加を生じると考えられる。この効果は単剤療法としてメマンチン又はエスシタロプラムそれぞれを投与する場合に比べて、2つの医薬の低い投薬量 (すなわち単剤療法としてこれらを投与したならば閾値以下の薬用量) を用いて達成されると考えられる。たとえば, 同一の時間差が、たとえメマンチン及びエスシタロプラムの併用よりも高い薬用量のメマンチン又はエスシタロプラム単独であっても、単剤療法によって観察されるかもしれない。実際には, 1つ又は2つの成分を最適量より少ない量又は閾値以下の量で投与する。
【0104】
例 2: ネラメキサン及びエスシタロプラムの併用による強制水泳テスト
材料及び方法
材料及び方法は、メマンチンをネラメキサン (1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサンメシラートもMerz Pharmaceuticalsから入手できる)に置き換える他は上記と実質上同一である。種々の投薬量を下記対照表に示す:
表 2
【0105】
【表2】

【0106】
結果
ネラメキサン及びエスシタロプラムの併用は、コントロールと比べて, あるいはメマンチン又はエスシタロプラムを単独で投与した場合と比べて、不動の著しく減少された持続時間及び泳ぐ又はよじ登る挙動の増加を生じると考えられる。この効果は単剤療法としてネラメキサン又はエスシタロプラムそれぞれを投与する場合に比べて、2つの医薬の低い投薬量 (すなわち単剤療法としてこれらを投与したならば閾値以下の薬用量) を用いて達成されると考えられる。たとえば, 同一の時間差が、たとえネラメキサン及びエスシタロプラムの併用よりも高い薬用量のネラメキサン又はエスシタロプラム単独であっても、単剤療法によって観察されるかもしれない。実際には, 1つ又は2つの成分を最適量より少ない量又は閾値以下の量で投与する。
【0107】
例 3: SSRI, SNRI及びTCAと組み合わせたネラメキサンの抗うつ作用
ネラメキサン (NER)を単独で及び3つの公知の抗うつ薬 (イミプラミン (IMI), フルオキセチン (FLU) 及び ベンラファキシン (VEN))と組み合わせた場合の抗うつ様活性 をマウス尾懸垂テスト(TST)によって調べる。
【0108】
方法
実験を、Popik 等, Brit.J.Pharmacol. 2003; 139:1196-1202によって記載されているように本質的に実施する。
実験計画。薬用量-応答分析を NER, IMI, FLU 及び VENに対して尾懸垂テストで実施する。同様な分析は、医薬の運動活性への非特異的効果を評価するために行う。これらの化合物のTST活性に基づいて, 2つの薬用量を併用試験に選ぶ: 不動の顕著な減少を生じる、最低薬用量 (全て抗うつ薬の場合5 mg/kg) 及び この測定で最大又は最大付近の(sub-maximal)効果を生じる薬用量 (全て抗うつ薬の場合20 mg/kg)。これらの薬用量を使用して、2.5 及び 20 mg/kg の NERの併用の抗うつ様活性を評価する。
【0109】
動物。IMP, Lodz, ポーランドから得られ、そして実験の開始時に約 25 gの体重である雄性C57/Bl マウスをこの実験に使用する。マウスを標準の研究室用ケージ中にグループ分けて収容し、温度調節された環境(21 ア 2ーC) に12-時間明/暗サイクル (点灯: 07:00, 消灯 19:00)で維持する。市販の餌及び水道水を適宜得ることができる。1つのグループあたり少なくとも12 匹のマウスを、 TST実験に使用し、そして1つのグループあたり11匹のマウスを運動活性の評価に使用する。動物の数の不足の故に場合によりTSTに使用したマウスを1週間後に運動活性実験に使用する。これはこのテストに通常容認された操作である。
【0110】
薬物。ネラメキサン HCl (MRZ 2/579, Batch:“Ch.: P9-1475”,“R 911840”, MERZ), イミプラミン HCl (Sigma, I-7379, Lot 083K1037), フルオキセチン HCl (Tocris 0927, Batch 3A/39689) 及び ベンラファキシン HCl (Forest Research Institute, Forest Lot # FMD-VEN-001, 製造元: Cipla)を滅菌生理食塩水(賦形剤) に数分の超音波によって溶解させる。全ての薬物を10 ml/kg (0.2 ml/マウス), IPの用量で投与する。
【0111】
全ての実験を“the National Institutes of Health Guide for Care and Use of Laboratory Animals ”(出版No. 85-23, 改訂版 1985)にしたがって実施する。
薬物投与。 TST テスト: 薬物を TST の40分前 (賦形剤又は NER) 及び 30分前 (賦形剤又は 抗うつ薬)に投与する。 不動を、Steru 等の操作 に従う尾懸垂によって誘発させる(Psychopharmacology 85:367-370, 1985)。マウスを個々に、平らな表面から75 cm上につるし、尾の先端から約 1 cm のところで1 cm 幅の紙接着テープで固定する。不動持続時間は6 分間記録された。3匹のマウスを同時に観察する。マウスが無抵抗につるされ、そして完全の動かないときのみマウスは不動とみなされる。訓練を受けた観察者がコンピューター及び“PORSOLT”プログラムを用いて、 不動の持続時間を測定する。実験を常に盲検法で、すなわち処置条件が教えられていない実験者によって実施される。
【0112】
運動テスト 実験開始の少なくとも1時間前に, マウスを新しい環境に慣らすために実験室に移動させる。薬物をテストの40分前 (賦形剤又はNER) 及び 30分前 (賦形剤又は抗うつ薬)に投与する。テストの間, マウスをアルミニウムアクトロメーター (オーダーメイド、円筒状、直径 30 cm) 中に入れ、そして6分間マウスの粗野な動きを観察する。マウスは評価前に装置に適合していない。
【0113】
データの評価。不動 (秒) 及び 運動活性 (任意の単位/6 分) データを、Windows(登録商標)のStatistica 5.0を用いて統計学的分析に使用する。
【0114】
パート 1 (TST 及び 運動活性で全ての化合物に対する薬用量-応答分析)に関して, 一元配置分散分析(one-way ANOVA)、ついで多範囲検定(Duncan’s test)を使用する。パート 2 (種々の薬用量のNERの作用と種々の薬用量の抗うつ薬の作用の相互作用)に関して, 二元配置分散分析(two-way ANOVA) (ファクターとしてNERの薬用量及び抗うつ薬の薬用量) 、及び一元配置分散分析(賦形剤を含めてすべての薬用量) 、ついでDuncan’s testを使用する。賦形剤治療からのデータ及びいくつかのその他の治療からのデータを、いくつかの独立した実験からプールし、単一のそれぞれのグループを生み出す。
【0115】
結果
A. 単剤療法
尾懸垂テスト。4つの化合物すべてが、MED の 5 mg/kg を用いる尾懸垂テストで用量依存性抗うつ様活性を明らかにする (図1, 2, 3 及び 4)。
【0116】
運動テスト。しかしながら同一化合物が、自発的な運動活性に異なる作用を生じる。 したがって, 検査される全ての薬用量 (5, 10 及び 20 mg/kg)で,NER は運動活性を増加させ、検査される全ての薬用量(10 及び 20 mg/kg)でIMIは運動活性を減少させ, FLU は運動活性を変えず、VENは40 mg/kgで運動活性を増加させるが, 20 mg/kgで増加させない。これらのデータを 図1, 2, 3 及び 4に示す。
【0117】
B. イミプラミンとの併用
尾懸垂テスト。賦形剤と共に投与した場合, NERは20 mg/kgで不動を減少させるが, 2.5 mg/kgで不動を減少させない。賦形剤と共に投与した場合, IMI は20 mg/kgで不動を減少させるが, 5 mg/kgでも不動を減少させない。NER 2.5 mg/kgとIMI 5 mg/kg の併用は、著しく不動を減少させる。この作用は賦形剤, NER 2.5 mg/kg 単独並びに IMI 5 mg/kg単独と統計学的に差異がある (図 5 及び 6)。
【0118】
二元配置分散分析が IMI 薬用量, NER 薬用量 及び 相互作用の顕著な効果を実証する: それぞれF(2,98)=133.20; F(2,98)=222.48 及び F(4,98)=25.01, すべての場合にP<0.001。
【0119】
運動テスト。賦形剤と共に投与した場合, NERは20 mg/kgで不動を増加させるが, 2.5 mg/kgで運動活性を増加させない。賦形剤と共に投与した場合, IMI は20 mg/kgで運動活性を減少させるが, 5 mg/kgでも運動活性を減少させない。NER 2.5 mg/kgとIMI 5 mg/kg の併用は、運動活性に影響を与えない。しかし、NER 20 mg/kg と IMI 5 mg/kg 又は IMI 20の併用は、20 mg/kgで使用された NERに比べて運動活性の際立った減少をもたらす (図 5 及び 6)。
【0120】
二元配置分散分析が IMI 薬用量, NER 薬用量 及び 相互作用の顕著な効果を実証する: それぞれF(2,90)=38.489; F(2,90)=29.76 及び F(4,90)=11.78, すべての場合にP<0.001。
【0121】
C. フルオキセチンとの併用
尾懸垂テスト。賦形剤と共に投与した場合、 NERは 20 mg/kg で不動を減少させ, 予期せぬことに 2.5 mg/kgで不動を増加させる。賦形剤と共に投与した場合、FLU は 20 mg/kg で不動を減少させるが、 5 mg/kgで不動を減少させない。NER 2.5 mg/kgとFLU 5 mg/kg の併用は、賦形剤に比べて不動 を変化させないが、2.5 mg/kgでのNER に比べて不動を減少させる(FLU 5 mg/kg 単独では減少させない), 図 7 及び 8。
【0122】
二元配置分散分析が IMI 薬用量, NER 薬用量 及び 相互作用の顕著な効果を実証する: それぞれF(2,95)=36.38; F(2,95)=205.0 及び F(4,95)=5.53, すべての場合にP<0.001。
【0123】
運動テスト。賦形剤と共に投与した場合、 NERは 20 mg/kg で運動活性を増加させ, 2.5 mg/kgで運動活性を増加させない。賦形剤と共に投与した場合, FLUは運動活性に影響を与えない。 さらにNER 2.5 mg/kgとFLU 5 mg/kg の併用は 運動活性 に影響をあたえない(図 7 及び 8)。
【0124】
二元配置分散分析がNER 薬用量の著しい作用 を実証するが(F(2,88)=32.85; P<0.001), FLU 薬用量ではしない(F(2,88)=0.07); NS 又は相互作用: F(4,88)=0.55; NS。
【0125】
D. ベンラファキシンとの相互作用
尾懸垂テスト。賦形剤と共に投与した場合、NERは2.5 mg/kgでも、20 mg/kgで不動を減少させる。 賦形剤と共に投与した場合、VENも 5 mg/kg 及び 20 mg/kg で不動を減少させる。NER 2.5 mg/kgとVEN 5 mg/kg の併用は著しく不動を減少させる。この作用は賦形剤, NER 2.5 mg/kg 単独並びにVEN 5 mg/kg単独と統計学的に差異がある(図 9 及び 10)。
【0126】
二元配置分散分析がVEN 薬用量, NER 薬用量及び 相互作用の顕著な効果を実証する: それぞれF(2,97)=112.23; F(2,97)=211.38 及び F(4,97)=15.04, すべての場合に P<0.001。
【0127】
運動テスト。賦形剤と共に投与した場合、NERは20 mg/kgで運動活性を増加させるが、 2.5 mg/kg で運動活性を増加させない。賦形剤と共に投与した場合, VEN は20 mg/kgで運動活性を増加させるが、5 mg/kgで運動活性を増加させない。NER 2.5 mg/kgとVEN 5 mg/kgの併用は運動活性に影響を与えない。しかし NER 20 mg/kg とVEN 5 mg/kg 又はVEN20 mg/kgの併用は、20 mg/kg でのNER単独に比べて際立った運動活性増加 をもたらす(図 9 及び 10)。
【0128】
二元配置分散分析がVEN 薬用量及び NER 薬用量の顕著な効果を実証するが相互作用は実証しない: それぞれF(2,90)=13.97; F(2,90)=30.02 (すべての場合にP<0.001) 及び F(4,90)=1.597; NS。
【0129】
議論
NERは 薬用量 5-20 mg/kgでの尾懸垂テストで不動の持続時間を減少させる。3つの実験のうちの1つで (図 7), NER (2.5 mg/kg)は、不動時間を増加させる; 3つの実験のうちの2つで, この薬用量は不動時間に影響を与えず, したがってNER-誘発された不動時間の増加は作為的であるとみなされる。 IMI, FLU 及び VEN は薬用量 5-20 mg/kgで不動の持続時間を減少させる。
【0130】
NERと併用される抗うつ薬のそれぞれは、著しい統計に基づく相互作用と共に抗うつ様効果を生じる。詳しくは、低い及び高い薬用量のIMI は、低い及び高い双方の薬用量のNERの作用を増強させる。高い薬用量のFLUは、低い及び高い双方の薬用量のNERの作用を増強させる。高い薬用量のVENは、低い及び 高い双方の薬用量のNERの作用を増強させ, 一方低い薬用量のVEN は低い薬用量の NERの作用を増強させるが、高い薬用量のNERの作用を増強させない。
表 3
【0131】
【表3】

【0132】
運動活性実験で, NER は薬用量5-20 mg/kgで一定した運動刺激を生じさせるが, 2.5 mg/kgで生じさせない。薬用量10-20 (5でない) mg/kgでのIMI は、運動活性を減少させる。
【0133】
FLU (5-20 mg/kg) は一般に 運動活性に影響を与えない。 薬用量40 mg/kgでのVEN は運動を刺激し, この作用はまた2つの実験のうちの1つで薬用量20 mg/kgに対して観察され (図 9 及び 10); 薬用量5 mg/kg は影響を与えない。
【0134】
NERと併用される抗うつ薬のそれぞれは、運動に複合作用を生じさせる。FLU 又はVENでなくIMIに対して, これらの作用は顕著な統計に基づく相互作用を生じる。 詳しくは, 低い及び高い双方の薬用量でのIMIは高い薬用量のNERの運動刺激作用を減少させるように見える。FLU は試験される薬用量のいずれかで運動へのNERの作用に影響を与えない。2つの薬用量のNERを用いた場合, 高い薬用量のVENは 、それぞれの薬用量のNER 単独に比べて大きい運動刺激を生じさせるように見える。高い薬用量のVENが低い薬用量のNERと共に使用された場合、同様な増強が観察される。
【0135】
例 4: アルツハイマー病におけるうつ病の治療で、エスシタロプラムと組み合わせたメマンチンの評価
アルツハイマー病 (AD)に起因するうつ病の患者で、メマンチン単独及びメマンチンとエスシタロプラムの併用の安全性及び有効性を評価するために、次の実験を行う。
実験計画。実験は 12 週間、メマンチン (MEM)を用いる非盲検, 二重盲検パイロット試験, ついで12周間、MEM + プラシーボ、又はMEM +エスシタロプラム (ESC)のいずれかを用いる無作為の二重盲検処理を含む。
【0136】
患者集団。全部で16人の患者が参加する。患者は50才以上でなければなず、そして(MRI 又はCTスキャンで確認された) プロバブル(probable) ADに対するNINCDS-ADRDA基準に, そしてADに起因するうつ病に対するNIMH 基準に合う。患者は少なくとも15人及び多くて 24人のミニメンタルエクザミネーションスコア(Mini-Mental State Examination (MMSE) score), 及びスクリーニング及びベースラインで少なくとも18 人のハミルトンうつ病評価式尺度(Hamilton Depression Rating Scale Score )を受けねばならない。
【0137】
薬物療法。非盲検処理の最初の周の間、患者に1日あたり5 mgを, 2週目で1日あたり10 mg( b.i.d.)まで増量して投与する。1日あたり10 mg に耐えることができない患者は、研究から除かれる。 2週目の最後に, 患者は1週間、1日あたり15 mgのメマンチン (1日3 回)に増加させ, 4週目の最後に1日あたり20 mg (1日4 回)に増加させる。薬用量は、用量制限事象の患者の場合1日あたり15 mg又は10 mgに減少させることができる。
【0138】
患者は、5-8周目及び 9-12周目に1日あたり20 mgで維持させる。より低い薬用量の患者は、次のより高い薬用量に再チャレンジさせることができる。
【0139】
実験の思い起こさせるために (24周目に), 患者は12周目の最後に服用したのと同一の薬用量を服用する。薬用量調整は、12周目後に認められない.
12周目の最後に, 患者は無作為に10 mg のエスシタロプラム又はプラシーボに割り当てられる。メマンチン及びエスシタロプラム又はプラシーボの薬用量は、一緒に (同時に)服用されねばならない。
【0140】
全ての薬用量は経口錠剤である。
【0141】
評価。患者は10 回評価される: スクリーニング, ベースラインで, 及び2, 4, 8, 12, 14, 16, 20 及び 24周目の最後に。次の評価は示した時間に行われる:
MMSE: スクリーニング, ベースライン及び 12 及び 24周目の最後, 又は早期停止の際に;
痴呆に起因するうつ病のためのコーネルスケール(Cornell Scale for Depression in Dementia (CSDD)): 早期停止を含む各観察(visit);
臨床全般印象(Clinical Global Impression (CGI)): 各観察 及び早期停止で;
24-item Hamilton Depression Rating Scale Score (HAMD): スクリーニング, ベースラインで, 12及び 24周目の最後, 又は早期停止の際に;
Montgomery Asberg Depression Rating Scale Score (MADRS): ベースラインで, 12 及び24周目の最後, 又は早期停止の際に;
Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale (ADAS-cog): ベースラインで, 12 及び 24周目の最後, 又は早期停止の際に;
及びAlzheimer’s Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living inventory (ADCS-ADL): ベースラインで, 12 及び 24周目の最後, 又は早期停止の際に。
【0142】
結果
メマンチン及びエスシタロプラムの併用は、単剤療法としてのメマンチンに比べて全部ではないがほとんどの評価尺度で増加した有効性を実証することが予期される。
【0143】
結論
これらのデータから、NMDA 受容体アンタゴニスト とSSRI, SNRI 又はTCAの併用がどちらかの化合物の抗うつ有効性を増加させ、そして単剤療法として投与されるどちらかの医薬の抗うつ活性に応答しない患者に, 又は有害作用の故に単剤療法の治療上有効な量を許容し得ない患者に有効であることができることが証明される。 この作用はNMDAアンタゴニストが メマンチン 又はネラメキサンであって、そして第二の化合物がシタロプラム又は エスシタロプラムであるSSRIである場合、より一層強固に期待される。更に, 併用によって生じる増強は、いずれかの又は双方の化合物の減少された薬用量を可能にし, それによって有害な副作用を減少させる。
【0144】
データによってまた難治性 (回帰性) うつ病を治療するための有効性が裏付けられる。SSRIは一般に難治性うつ病の治療に有効でないが, メマンチン又はネラメキサンとシタロプラム 及び エスシタロプラム, 特にメマンチン 及び エスシタロプラムの併用が難治性うつ病に有効であると思われる。
【0145】
記載されたすベての特許文献及び参考資料はその全体を本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図 1は、C57BI マウスにおいて投薬量0 〜20 mg/kg で ネラメキサンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図2】図 2 は、C57/Bl マウスにおいて、イミプラミンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図3】図 3 は、C57/Bl マウスにおいて、フルオキセチンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図4】図 4 は、C57/Bl マウスにおいて、ベンラファキシンの不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図5】図 5 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 2.5 mg/kg とイミプラミンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図6】図 6 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 20 mg/kg とイミプラミンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図7】図 7 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 2.5 mg/kg とフルオキセチンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図8】図 8 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 20 mg/kg とフルオキセチンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図9】図 9 は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 2.5 mg/kg とベンラファキシンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。
【図10】図 10は、C57/Bl マウスにおいて、ネラメキサン 20 mg/kg とベンラファキシンの相互作用の不動 (左のパネル) 及び運動活性 (右のパネル)への影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の患う、うつ病, 気分変調, 季節性情動障害, 双極性障害 及び 産後うつ病より成る群から選ばれる気分障害を治療する方法において、この方法が
(i) N-メチル-D-アスパルタート (NMDA) 受容体複合体に対する機能性アンタゴニスト性質を有する化合物の治療上有効な第一の量; 及び
(ii) シタロプラム又はエスシタロプラムである選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)の治療上有効な第二の量からなる併用薬----------この第一及び第二の量の併用が上記障害の治療に有効である----------を、これを必要とする患者に投与することを特徴とする、上記治療する方法。
【請求項2】
併用が相乗治療効果を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
N-メチル-D-アスパルタート (NMDA) 受容体アンタゴニストが非競合NMDA 受容体アンタゴニストである 、請求項1記載の方法。
【請求項4】
NMDA 受容体アンタゴニストが メマンチン又はネラメキサンである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
SSRI がシタロプラムであり、そしてNMDA 受容体アンタゴニストがメマンチンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
SSRIがエシタロプラムであり、そしてNMDA 受容体アンタゴニスト がメマンチンである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
SSRI がシタロプラムであり、そしてNMDA 受容体アンタゴニストがネラメキサンである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
SSRIがエスシタロプラムであり、そしてNMDA 受容体アンタゴニストがネラメキサンである、請求項4記載の方法。
【請求項9】
機能性NMDA受容体アンタゴニストの少なくとも1種及びパート(ii)のSSRI化合物を閾値以下の量(a sub-threshold amout)で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
機能性NMDA受容体アンタゴニストの少なくとも1種及びパート(ii)の化合物を最適値より少ない量(a sub-optimal amount)で投与する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
シタロプラムを1日あたり約10 〜60 mgの薬用量で投与し、そしてメマンチン を1日あたり約1 〜60 mgの薬用量で投与する、請求項5記載の方法。
【請求項12】
シタロプラムを1日あたり約20 〜40 mg投与し、そしてメマンチンを1日あたり約5 〜20 mg投与する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
エスシタロプラムを1日あたり約1 〜 30 mgの薬用量で投与し, そしてメマンチンを1日あたり約1 〜 60 mgの薬用量で投与する、請求項 6記載の方法。
【請求項14】
エスシタロプラムを1日あたり約5 〜 20 mgの薬用量で投与し,そしてメマンチンを1日あたり約5 〜20 mg の薬用量で投与する、請求項 13記載の方法。
【請求項15】
シタロプラムを1日あたり約10 〜 60 mgの薬用量で投与し、そしてネラメキサンを1日あたり約10 〜100 mgの薬用量で投与する、請求項 7記載の方法。
【請求項16】
シタロプラムを1日あたり約20〜40 mg投与し、そしてネラメキサンを1日あたり約 25-75 mg投与する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
エスシタロプラムを1日あたり約1 〜 30 mgの薬用量で投与し, そしてネラメキサンを1日あたり約10 〜100 mgの薬用量で投与する、請求項 10記載の方法。
【請求項18】
エスシタロプラムを1日あたり約5 〜 20 mgの薬用量で投与し,そしてネラメキサンを1日あたり約 25-75 mg投与する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
NMDAアンタゴニスト とSSRIの併用投与が、単剤療法としてどちらかの化合物による治療に比べて治療応答を増強させる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
NMDAアンタゴニストがメマンチンであり、これを一日あたり約2.5〜10 mg投与し、そしてSSRIがシタロプラムであり、これを一日あたり約10 〜60 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
NMDAアンタゴニストがメマンチンであり、これを一日あたり約2.5〜10 mg投与し、そして第二の化合物がエスシタロプラムであり、これを一日あたり約1 〜30 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
NMDAアンタゴニストがメマンチンであり、これを一日あたり約1 〜60 mg投与し、そしてSSRIがシタロプラムであり、これを一日あたり約 5〜10 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項23】
NMDAアンタゴニストがメマンチンであり、これを一日あたり約1〜60 mg投与し、そしてSSRIがエスシタロプラムであり、これを一日あたり約 2.5 〜5 mg投与する、
請求項19記載の方法。
【請求項24】
NMDAアンタゴニストがネラメキサンであり、 これを一日あたり約10 〜100 mg投与し、そしてSSRIがシタロプラムであり、これを一日あたり約5 〜10 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項25】
NMDAアンタゴニストがネラメキサンであり、これを一日あたり約10 〜100 mg投与し、そしてSSRIがエスシタロプラムであり、これを一日あたり約 2.5 〜5 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項26】
NMDAアンタゴニストがネラメキサンであり、これを一日あたり約10 〜20 mg投与し、そしてSSRI がシタロプラムであり、これを一日あたり約10 〜60 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項27】
NMDAアンタゴニストがネラメキサンであり、これを一日あたり約10 〜20 mg投与し、そして SSRI がエスシタロプラムであり、これを一日あたり約1 〜 30 mg投与する、請求項19記載の方法。
【請求項28】
気分障害が 全身性疾患又は神経疾患に起因する二次的うつ病である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
神経疾患が多発性硬化症, パーキンソン病, アルツハイマー病, 頭部外傷, 脳腫瘍, 脳卒中後症, 初期痴呆又は 睡眠時無呼吸である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
全身性疾患が感染症, 内分泌障害, 膠原血管病, 栄養失調又は腫瘍性疾患である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
障害が心筋梗塞後の患者の二次的うつ病である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
機能性NMDAアンタゴニストが次式 (I):
【化1】

(I)
{式中、
R* は-(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、
n+m = 0, 1又は2,
A は線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6),線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 及び線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及びR2 は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6) アリール, 置換されたアリール 及びアリールアルキルより成る群から選ばれ,
R3 及びR4 は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6) 及び線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれるか, あるいは一緒になってアルキレン (C2-C10) 又はアルケニレン (C2-C10)を形成するか又はN原子と一緒になって3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケン----------これは置換された (アルキル (C1-C6), アルケニル (C2-C6)) 3-7-員のアザシクロアルカン又はアザシクロアルケンを含む---------を形成するか、
あるいは独立してR3 又は R4 はRp, Rq, Rr 又はRs と一緒になってアルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t
(式中、t= 0 又は 1、そしてアルキレン鎖の左側は U 又はYに結合し、アルキレン鎖の右側はNに結合し、 そしてR6 は水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール 及びアリールアルキルより成る群から選ばれる。)
を形成することができるか、あるいは
独立してR3 又はR4 はR5 と一緒になって式 -CH2-CH2-CH2-(CH2)t-で表わされるアルキレン鎖又は式 -CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は-CH2-CH=CH-(CH2)t-(式中、 t= 0 又は1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, そしてこのアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側は Wに結合し、アルキレン環の右側はN に結合し、
R5 は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6)及び線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれるか, 又はR5 はこれが結合する炭素及び隣接する環炭素と結合して二重結合を形成し ,
Rp, Rq, Rr 及び Rs は独立して水素, 線状又は分枝状低級 アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6), シクロアルキル (C3-C6) 及びアリール, 置換されたアリール及びアリールアルキルより成る群から選ばれるか又は Rp, Rq, Rr 及びRs はこれらに結合するU又はYと一緒になって独立して二重結合を形成することができるか、又はRp, Rq, Rr 及びRs 一緒になって結合して 低級アルキレン -(CH2)x- 又は低級アルケニレン架橋 (式中、xは2-5である。)を示すことができ、このアルキレン架橋は更にR5 と結合して、付加的な低級アルキレン -(CH2)y- 又は低級アルケニレン架橋 (式中、y は1-3である。)を形成することができ、
そして記号U, V, W, X, Y及びZ は炭素原子を示す。}
で表わされる化合物又はその薬学的に許容し得る塩を有する、請求項1記載の方法。
【請求項33】
U-V-W-X-Y-Z によって定義された環がシクロヘキサン、シクロヘキシ-2-エン, シクロヘキシ-3-エン, シクロヘキシ-1,4-ジエン, シクロヘキシ-1,5-ジエン, シクロヘキシ-2,4-ジエン及びシクロヘキシ-2,5-ジエンより成る群から選ばれる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
機能性NMDA受容体アンタゴニスト, 及びシタロプラム又はエスシタロプラムであるSSRI、及びその薬学的に許容し得る塩、及び薬学的に許容し得るキャリヤーを含む調合物。
【請求項35】
NMDA 受容体アンタゴニストがメマンチン塩酸塩であり、 そしてSSRIがシタロプラム臭化水素酸塩である、請求項34記載の調合物。
【請求項36】
NMDA 受容体アンタゴニスト がメマンチン塩酸塩であり、そしてSSRIがエスシタロプラム シュウ酸塩である、請求項34記載の調合物。
【請求項37】
NMDA 受容体アンタゴニストがネラメキサンメシラート であり、そしてSSRI がシタロプラム 臭化水素酸塩である、請求項34記載の調合物。
【請求項38】
NMDA 受容体アンタゴニストがネラメキサン メシラートであり、SSRIがエスシタロプラム シュウ酸塩である、請求項34記載の調合物。
【請求項39】
固形の経口投薬形である、請求項34記載の調合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−500238(P2007−500238A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533500(P2006−533500)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016959
【国際公開番号】WO2005/000216
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(503450128)フォーレスト ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Forest Laboratories, Inc.
【住所又は居所原語表記】909 Third Avenue, New York, New York 10022, U.S.A.
【Fターム(参考)】