説明

すりつぶし機能を備えた調理用切断具

【課題】食品を1回の操作で簡単に細かく切断することができ、しかも食品に強い力を与えてすりつぶすことができる、すりつぶし機能を備えた調理用切断具を提供する。
【解決手段】互いに回動可能に支持された1対の柄1a,1bと、各柄の先端に設けられたブレード列2a,2bとを備え、ブレード列2a,2bは、各柄の先端に設けられた基部7a,7bに、該基部から延びるように所定間隔を置いて配列された複数のブレード8a,8bからなり、各ブレードはその先端に所定大きさの端面を有し、1対の柄1a,1bを各ブレード列が接近する方向に回動させたとき、各ブレード列2a,2bのブレードが互いに噛み合い、かつ噛み合った各ブレード8a,8bの先端面が整列してすりつぶし面を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、すりつぶし機能を備えた調理用切断具に関し、さらに詳細には、乳幼児や老人が調理された食品を食べやすいように細かく切断し、さらにはすりつぶすのに好適な切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
離乳食期の乳幼児に例えばヌードル類を与える場合、乳幼児は歯が完全に生えそろっておらず噛み切ることが困難であることから、一般には母親はヌードル類を細かく切断して与えている。この場合、ゆであがったヌードル類を切断したり、あるいはゆでる前にバラバラに折ったりしているが、いずれにしても日に何度も乳幼児に食事を与える母親にとっては大変な作業である。
【0003】
このような背景のもと、ヌード類を簡単に切断することができる切断具が提供されている(特許文献1参照)。この切断具は、1対の柄の先端にそれぞれ設けた複数の歯(あるいはブレード)の噛み合いによりヌードル類を切断するものである。この切断具によれば、ゆであがったヌードル類を食器に入れたまま、1回の操作で簡単に細かく切断することができる。
【0004】
また、離乳食期の乳幼児にはポテト類や野菜類の調理品をすりつぶして与えることがある。しかし、特許文献1に記載の切断具は、すりつぶし機能を備えておらず、別途、それ専用の調理器具を必要とする。
【0005】
すりつぶし機能と切断機能との双方を備えた調理器具も提案されている(特許文献2参照)。この調理器具は、第1レバーの先端に設けた面板部に対して、第2レバーの先端に設けた刃部を押し付けて食品を切断し、また面板部を食品に押し付けてすりつぶすものである。しかし、この調理器具は、1つの刃部のみによって食品を切断するので切断性が悪く、また、面板部に対してレバーが傾斜しているので食品に強い押し付け力を加えることができず、すりつぶし機能に関しても良好なものであるとは言えない。
【特許文献1】特開平9−206480号公報
【特許文献2】特開2000−237069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、食品を1回の操作で簡単に細かく切断することができ、しかも食品に強い力を与えてすりつぶすことができる、すりつぶし機能を備えた調理用切断具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、互いに回動可能に支持された1対の柄と、各柄の先端に設けられたブレード列とを備え、
前記ブレード列は、各柄の先端に設けられた基部に、該基部から延びるように所定間隔を置いて配列された複数のブレードからなり、
各ブレードはその先端に所定大きさの端面を有し、前記1対の柄を各ブレード列が接近する方向に回動させたとき、前記各ブレード列のブレードが互いに噛み合い、かつ噛み合った各ブレードの先端面が整列してすりつぶし面を形成することを特徴とする、すりつぶし機能を備えた調理用切断具にある。
【0008】
より具体的には、各ブレードの前記先端面は、中央部にくぼみを有している態様を採ることもできる。また、前記各ブレードの回動方向前面に凹状湾曲面が形成されている態様を採ることもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、複数のブレードを有するブレード列の噛み合いにより、1回の切断操作で食品を多数片に切断することができる。また、各ブレードの先端面を所定大きさのものとし、ブレード列が噛み合ったときに整列してすりつぶし面が形成されるようにしたので、柄を握りすりつぶし面を介して食品に強い押し付け力を与えることができ、食品を簡単にすりつぶすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1,図2は、この発明によるすりつぶし機能を備えた調理用切断具(以下、単に切断具という)の全体を示す斜視図であり、図1はブレード列が互いに離間する方向に柄を回動させた状態を示し、図2はブレード列が互いに接近する方向に柄を回動させた状態を示している。
【0011】
切断具は、中間部で互いに回動可能に枢支された1対の柄1a,1bと、各柄1a,1bの先端に設けられたブレード列2a,2bとを備えている。図3は、1対の柄のうちの第1の柄1aを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。第1の柄1aは、先端部近くが幅が狭く、中間部において幅方向及び厚み方向にわずかに屈曲してそれよりも上部は幅が大きくなる板状のもので、幅が大きな部分が握り部3aを形成している。この握り部3aには指を入れて柄1aを掴むための穴4が形成されている。
【0012】
第1の柄1aの一方の面には、その屈曲部下方にピン5が設けられている。このピン5の先端には抜け止めのためのストッパ6が設けられている。第1の柄1aの先端には、その回動面に対して直角となるように基部7aが設けられている。ブレード列2aは、この基部7aにから延びるように設けられている。
【0013】
ブレード列2aを構成する複数(この実施形態では3つ)のブレード8aは、所定の厚みを有し、その厚み方向に間隔をおいて配列されている。各ブレード8aは、その中間部がくびれて回動方向の前後面に湾曲面9,10が形成されている。そして、各ブレード8aの先端は所定大きさの短辺寸法L1(ブレード8aの厚み寸法に相当する) 及び長辺寸法L2 をもつ矩形の端面11aとなっている。この端面11aの中央にはくぼみ12が形成されている。なお、回動方向前面とは、ブレード列2a,2bが接近する方向に柄を回動させた場合の前面をいい、後面とはその反対側の面をいう。
【0014】
図4は、1対の柄のうちの第2の柄1bを示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。第2の柄1bは第1の柄1aとほぼ対称をなす全体形状を有し、したがって、第1の柄1aと同様に、先端部近くが幅が狭く、中間部において幅方向及び厚み方向にわずかに屈曲してそれよりも上部は幅が大きくなる板状のもので、幅が大きな部分が握り部3bを形成している。この握り部3bには指を入れて柄1bを掴むための穴4が形成されている。
【0015】
第2の柄1bの一方の面には、その屈曲部下方にピン穴12が設けられている。このピン穴12は一部が長穴13となっている。この長穴13と第1の柄1aのピン5のストッパ6とを一致させて、ピン5がピン穴12に挿入される。そして、第1の柄1aと第2の柄1bとを相対的に適宜角度回動させると、ストッパ6がピン穴12の周縁に係合し、このようにして両柄1a,1bが回動可能に枢支される。
【0016】
第2の柄1bの先端には、第1の柄1aと同様に、その回動面に対して直角となるように基部7bが設けられている。ブレード列2bは、この基部7bから延びるように設けられている。
【0017】
ブレード列2bを構成する複数(この実施形態では、ブレード列2aに対応して2つ)のブレード8bは、ブレード8aと同様のものであり、所定の厚みを有し、その厚み方向に間隔をおいて配列されている。各ブレード8bは、ブレード8aと同様に、その中間部がくびれて回動方向の前後面に湾曲面9,10が形成され、先端は所定大きさの短辺寸法L1(ブレード8bの厚み寸法に相当する)及び長辺寸法L2 をもつ矩形の端面11bとなっている。この端面11bの中央にはくぼみ12bが形成されている。
【0018】
各ブレード列2a,2bにおいて、ブレード8a,8a間の間隔はブレード8bの厚みに等しく、またブレード8b,8b間の間隔はブレード8aの厚みに等しくなっている。したがって第1,第2の柄1a,1bをブレード列2a,2bが接近する方向に回動させると、すなわち第1,第2の柄1a,1bを閉じると、各ブレード列2a,2bのブレード8a,8bが互いに噛み合う。このブレード8a,8bの噛み合い時に、それらの側面によってせん断作用が生じる。
【0019】
また、ブレード列2a,2bが完全に噛み合うと、図5に示すように、ブレード8a,8bの各先端面11a,11bが整列して、すりつぶし面14が形成される。このすりつぶし面14は、各ブレード8a,8bの長辺寸法L2 を短辺寸法とし、また短辺寸法L1 の総和を長辺寸法とする矩形面である。すなわち、各ブレード8a,8bの先端面11a,11bの面積の総和に等しい面積をもつ矩形面である。
【0020】
次に、上記切断具の作用を使用例を参照しながら説明する。図6は、上記切断具を使用してヌードル類を細かく切断する例を示している。図6(a)に示すように、通常のはさみを使用するときと同じように、握り部3a,3bの穴4に指を入れて柄1a,1bを軽く握り、ブレード列2a,2bを互いに離間させた状態、すなわち柄1a,1bを開いた状態でブレード列2a,2bを容器15の中に入れる。そして、柄1a,1bを閉じると、ブレード列2a,2bが互いに噛み合い、その噛み合い時に生じるせん断作用により、図6(b)に示すように、ヌードル類が切断される。このような柄の開閉操作を適宜回数繰り返すことにより、容器15内のヌードル類が多数片に細かく切断される。
【0021】
切断の際、ブレード列2a,2bは複数のブレード8a,8bを持っているので、1回の操作でヌードル類を所定の長さ、すなわちブレードの厚みに対応した長さに多数片に切断することができる。したがって、少ない回数の柄の開閉操作で、ヌードル類を短時間で切断することができる。また、各ブレード8a,8bは、回動方向の前面に湾曲面9を有しているので、これらの湾曲面9が互いに協働してヌードル類を掬い上げ、しかも拘束することとなり、ヌードル類を逃がすことなく確実に切断することができる。
【0022】
図7は、上記切断具を使用してポテト類をすりつぶす例を示している。切断具をすりつぶし器具と使用する場合は、柄1a,1bを閉じた状態で2つの握り部3a,3b全体を片手で握る。柄1a,1bは閉じられているので、互いに噛み合ったブレード列2a,2bの下端面には、図5に示したように、すりつぶし面14が形成されている。このすりつぶし面14を容器16に入れたポテト類に押し付け、これをすりつぶすことができる。その際、すりつぶし面14に対して柄1a,1bがほぼ直角方向を向くので、ポテト類に鉛直方向に大きな力を加えることができ、短時間で容易にすりつぶすことができる。また、すりつぶし面14を形成する各ブレード8a,8bの先端面にはくぼみ12a,12bが形成されているので、ポテト類をすりつぶし面14の下に拘束する作用が生じ、すりつぶし操作が容易となる。
【0023】
上記切断具を構成するブレード列2a,2bを含む柄1a,1bは、プレスチック材料を射出成形して作ることができる。しかし、プレスチック材料に限らず、金属、木などで作ることもできる。柄1a,1bは、図3,図4に示したピン5及びピン穴12の構造により取り外し可能であるので、簡単に洗浄することができる。
【0024】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施形態では、ブレード8a,8bの厚み(先端面の短辺の大きさ)がすべて等しくなっているが、この厚みは必ずしも等しくする必要はない。要は、ブレード8a,8bが噛み合い、噛み合った時に先端面が整列してすりつぶし面14が形成されればよい。
【0025】
また、上記実施形態では1対の柄1a,1bが中間部でピン5により互いに枢支され、回動可能となっているが(はさみと同様の構造)、これに限らない。図8に示すように、1対の柄1a,1bの基端部で互いに支持されて回動可能となっている構造、すなわち、1対の柄1a,1bが全体として「氷つかみ」のようにU字状あるいはV字状となっている構造とすることもできる。
【0026】
この発明の切断具は、調理された食品のみならず、調理前の食材を切断あるいはすりつぶすのに適用することができる。また、この発明の切断具は乳幼児のみならず、歯が弱った老人が食品を食べやすくするための器具としても極めて有用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施形態を示し、ブレード列が互いに離間する方向に柄を回動させた状態の斜視図である。
【図2】同実施形態のものの、ブレード列が互いに接近する方向に柄を回動させた状態の斜視図である。
【図3】第1の柄を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。
【図4】第2の柄を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。
【図5】ブレード列の噛み合いにより形成されるすりつぶし面を示す平面図である。
【図6】使用例として食品を切断する場合を示す図である。
【図7】使用例として食品をすりつぶす場合を示す図である。
【図8】別の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1a,1b 1対の柄
2a,2b ブレード列
2a,2b 各ブレード列
3a,3b 握り部
5 ピン
6 ストッパ
7a,7b 基部
8a,8b ブレード
9,10 湾曲面
11a,11b 先端面
12 ピン穴
13 長穴
14 すりつぶし面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに回動可能に支持された1対の柄と、各柄の先端に設けられたブレード列とを備え、
前記ブレード列は、各柄の先端に設けられた基部に、該基部から延びるように所定間隔を置いて配列された複数のブレードからなり、
各ブレードはその先端に所定大きさの端面を有し、前記1対の柄を各ブレード列が接近する方向に回動させたとき、前記各ブレード列のブレードが互いに噛み合い、かつ噛み合った各ブレードの先端面が整列してすりつぶし面を形成することを特徴とする、すりつぶし機能を備えた調理用切断具。
【請求項2】
各ブレードの前記先端面は、中央部にくぼみを有していることを特徴とする請求項1記載のすりつぶし機能を備えた調理用切断具。
【請求項3】
前記各ブレードの回動方向前面に凹状湾曲面が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のすりつぶし機能を備えた調理用切断具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−104537(P2008−104537A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288260(P2006−288260)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(503465443)有限会社モーメント (2)
【Fターム(参考)】