説明

せん断補強工法とせん断補強筋支持具

【課題】削孔の障害となる支障物が存在するコンクリート構造物の内部にせん断補強筋を設置する。
【解決手段】
支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔する。この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成する。この縦溝の内部に、せん断補強筋支持具を組み立てる。支持具の支柱には中受け具と上受け具を固定する。構造物内で各受け具にせん断補強筋を載置する。その後に充填材を充填して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断補強工法とせん断補強筋支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
阪神淡路震災を受けて、従来の設計法で構築した鉄筋コンクリート構造物の一部でせん断耐力が不足していることが判明した。
そこで多くの既存の鉄筋コンクリート構造物において、そのせん断補強が実施されている。
その補強方法としては、鉄筋コンクリート構造物の全面にわたってせん断補強鋼材であるアンカーボルトを打ち込み、このアンカーボルトに鋼板を固定する方法が知られている。(特許文献1)
あるいはボックスカルバートを対象として、その壁面の内側からコンクリート構造物に長穴を削孔し、その内部にせん断補強筋を挿入して充填材を充填する方法も知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−140850号公報。
【特許文献2】特開2003−113673号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のせん断補強工法にあっては、次のような問題点がある。
<1> 何れの方法でも、所定の間隔でコンクリート構造物に長穴を削孔する必要があるが、側壁にケーブル、管路などが取り付けてあるボックスカルバートのような場合にはそれらが障害となってそのままでは削孔ができない。
<2> そのためにケーブル、管路などをいったん移設し、せん断補強筋を設置後に戻すという手数を要している。
<3> 削孔する長穴は直線状態の円柱であるから、せん断補強筋は棒状のものに限られ、たとえばL字状のようなせん断補強筋を設置することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明のせん断補強工法は、コンクリート構造物の壁面に、削孔の障害となる支障物が存在する場合の工法であって、支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔し、この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成し、この縦溝の内部に、下端に基礎台を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の中受け具を固定した支柱を、少なくとも2基挿入し、次に、各受け具の上に、せん断補強筋を載置し、次に、上記の工程で載置したせん断補強筋の上に、下端に最下受け具を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の受け具を固定した支柱を、その最下受け具を介して設置し、次に、各受け具の上に、せん断補強筋を載置し、以上の作業を繰り返した後、縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置するせん断補強工法である。
【0006】
また本発明のせん断補強筋工法は、コンクリート構造物の壁面に、削孔の障害となる支障物が存在する場合の工法であって、支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔し、この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成し、この縦溝の内部に、下端を基礎台に固定し、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた下段支柱を、少なくとも2基挿入し、次に、両下段支柱の中受け具と上受け具の上に、せん断補強筋を載置し、次に、上記の工程で載置したせん断補強筋の上に、下端に下受け具、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた上段支柱を、その下受け具を介して設置し、次に、両上段支柱の中受け具と上受け具の上に、せん断補強筋を載置し、以上の作業を繰り返した後、縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置する、せん断補強工法である。
【0007】
また本発明のせん断補強筋支持具は、下端に基礎台を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の中受け具を固定した支柱と、下端に最下受け具を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の受け具を固定した支柱とより構成し、最下受け具はせん断補強筋の断面の上半分を受ける形状に、他の受け具はせん断補強筋の断面の下半分を受ける形状に形成した、せん断補強筋支持具である。
【0008】
また本発明のせん断補強筋支持具は、下端を基礎台に固定し、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた下段支柱と、下端に下受け具、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた上段支柱とより構成し、下受け具はせん断補強筋の断面の上半分を受ける形状に、中受け具と上受け具はせん断補強筋の断面の下半分を受ける形状に形成した、せん断補強筋支持具である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のせん断補強工法とせん断補強筋支持具は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 既設のコンクリート構造物の壁面に電線、管路あるいは各種の設備が支障物として取り付けてあっても、それらを移設することなくコンクリート構造物の内部にせん断補強筋を設置することができる。
<2> 電線などの支障物の撤去と再度の取り付け作業を行うことがないから、特に延長の長いボックスカルバートのようなコンクリート構造物においてはその経済効果は極めて高いものである。
<3> 棒状の鉄筋のようなせん断補強筋に限らず、先端をフック状、L字状に曲げ加工したせん断補強筋をコンクリート内部に設置することができ、効率のよいせん断補強効果を得ることができる。
<4> 各支柱は、支柱の中間に中受け具を、支柱の上端に上受け具を設けた構成である。そのために一度に2段ずつ、あるいは複数段のせん断補強筋を設置することができ、組み立て効率を大幅に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】支障物を避けて元穴を削孔する状況の説明図。
【図2】ウォータジェットで縦溝を形成している状態の説明図。
【図3】支障物と縦溝の位置関係の説明図。
【図4】せん断補強筋を支持する下段支柱の実施例の斜視図。
【図5】下段支柱を組み立てる説明図。
【図6】下段支柱の受け具にせん断補強筋を載置する状態の説明図。
【図7】下段支柱のせん断補強筋の上に上段支柱を載置する状態の説明図。
【図8】下段支柱の上に上段支柱を組み立てている状態の説明図。
【図9】下段支柱の上に上段支柱を組み立てた側面図。
【図10】構造物の内部に複数段にせん断補強筋を配置した状態の説明図。
【図11】ウォータジェットのノズル部の例の斜視図。
【図12】支柱の他の実施例の説明図。
【図13】支柱を下支柱と上支柱に分割可能に構成した実施例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照にしながら本発明の工法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
<1>前提条件。
本発明の工法の対象は、特に壁面などに、削孔の障害となる支障物が存在するコンクリート構造物である。
例えばボックスカルバートのようなコンクリート構造物ではその壁面に全長にわたって電線や管路を取り付けてある場合が一般であり、本発明の工法の利用の範囲は広い。
なお、以下の説明は壁面について行うが、壁面に限らず、柱、スラブ、梁、床版、フーチングなども対象とすることができる。
【0013】
<2>ウォータジェット。
本発明の縦溝5はウォータジェットによってコンクリートを破壊して形成する。
このウォータジェットは、図10に示すように、送水管の先端にほぼ直交する方向に向けたノズルを取り付けたものであり、このノズル部分は長いものに交換することが可能である。
このノズルから高圧の水を噴射することによってコンクリートを破壊し削孔する装置は公知である。
このウォータジェットを利用して、コンクリートを破壊して後述する縦溝5を形成する。なお図3はカッターで元穴51を、ウォータジェットで縦溝5を形成した例である。
【0014】
<3>せん断補強筋支持具。
本発明の工法では、せん断補強筋支持具Aを使用する。
その支持具Aは下段支柱1と上段支柱2によって構成するが、その構造を図4から図8によって説明する。
なお、一般に、支障物の背後に設置したせん断補強筋は、その配置状況、すなわち「出来形」を目視確認するのが困難である。
しかし本発明の場合にはせん断補強筋支持具Aを使用するので、長穴5にせん断補強筋を設置する前に、事前に開放部で仮組立を行うことができる。
その仮組み立ての形状から、せん断補強筋の間隔が保持されている状態、せん断補強が前後に傾斜していない状態を目視して確認することができる。
その際に、せん断補強筋支持具Aの支柱には、せん断補強筋を所定の間隔に保持するスぺーサーの役割を持たせることができる。
【0015】
<3−1>下段支柱。
下段支柱1は、鉄筋のような細い鋼棒の柱材11の下端に基礎台12を固定し、中間に中受け具13を、上端に上受け具14を固定して構成する。
柱材11としては、異形鋼棒、普通丸鋼、全ねじボルトまたは各種形鋼などを使うことができる。
柱材11の下端の基礎台12としてはたとえば短いチャンネルを、開放部を下向きにして利用し、柱材11を直立させて固定する。
この基礎台12の幅は、後述する縦溝の幅よりも多少狭い幅で形成する。
柱材11の中間に固定した中受け具13、上端に固定した上受け具14は、たとえば短いパイプを中心軸と平行に半分に切断したような半円形の樋状の受け部材である。
この中受け具13、上受け具14は、後述する下段のせん断補強筋3を支えることが可能なように、せん断補強筋3の断面の下半分を受け得る形状、すなわちせん断補強筋の直径よりも大きい直径の半円などで受け皿状に形成してあることが必要である。
この中受け具13、上受け具14の断面方向の幅も、後述する縦溝5の幅よりも短く形成する。
この中受け具13が下せん断補強筋32を、上受け具14が上せん断補強筋33を下から支える部材となる。
このような各受け具は、柱材11に溶接して固定するだけでなく、柱材11の一部、あるいは全部にねじ加工を施し、受け具をナットに取り付けておけば、ナットを回転させることによって各受け具の位置を調整することができる。
【0016】
<3−2>上段支柱。
上段支柱2は、鉄筋のような細い棒状の柱材21の下端に下受け具22を、中間に中受け具23を、上端に上受け具24を固定して構成する。
この各受け具も、短いパイプを中心軸と平行に半分に切断したような樋状の受け部材である。
柱材21の中間に固定した中受け具23と、上端に固定した上受け具24は、上向きの樋状であり、後述するせん断補強筋を下から支える部材となる。
柱材21の下端に固定した下受け具22は、下向きの樋状であり、下段支柱1の上受け具14に載置した上せん断補強筋33の上に被せて、上段支柱2を支持する部材となる。
なお下受け具22を上せん断補強筋33の上に被せても、そのままでは支柱は倒れてしまうが、本願発明の上段支柱2は、後述するように狭い縦溝5の間に立てこむ構成であるから、上段支柱2は縦溝の両側の壁面に寄りかかり、ほぼ鉛直性を維持することができる。
【0017】
<4>元穴の削孔。
次に実際の組み立て方法について説明する。
コンクリート構造物の表面から、その表面にほぼ直交する方向に向けて元穴51を削孔する。
その場合に、コンクリート構造物の表面には支障物が位置しているから、この元穴51の削孔は支障物の隙間を利用して行う。
削孔方法はウォータジェットやダイヤモンドカッターを利用した方法など公知の方法によって行う。
この元穴51は、支障物の隙間を使って複数個所に削孔しておくと、後工程の縦溝5の形成が容易である。
【0018】
<5>縦溝の形成。
元穴51の内部に、前記したウォータジェットのノズルを挿入して、ノズル7を元穴51の上下に向けて高圧水を噴射してコンクリートを破壊して縦溝5を形成する。
このウォータジェットは、図10に示すように、送水管71の先端にほぼ直交する方向に向けてノズル7を取り付けてあるから、このノズル7の方向を多少左右に振りながら高圧の水を噴射することによって、コンクリートを一定幅で破壊し、縦溝5を形成することができる。
元穴51からのウォータジェットの噴射によって、縦に長い溝5を形成することができるが、特に元穴51を上下方向に同一線上で複数形成できると、それらを縦溝5で上下方向に連続させることにより、より容易に長い縦溝5を形成することができる。
ウォータジェットは、先端のノズル7部分が交換可能であるから、縦溝5が長くなるにしたがって長いノズル7と交換することにより、効率的に長溝を形成することができる。
ウォータジェットでのコンクリート破壊の場合に、その水圧を調整すれば、コンクリートだけを破壊し、既存の鉄筋は切断しないという選択を容易に行うことができる。
【0019】
<6>支持具の組み立て。
縦溝5の完成後に縦溝5内に支持具Aを組み立てる。
しかし、縦溝5と外部の作業空間の間には支障物Bが存在する。
だから、支持具Aを外部で組み立てておいて縦溝5の内部にそのままスライドさせることはできない。
そこで、いわゆるマジックハンドと称される、元側での開閉操作を、長い筒の先端の指状片の開閉として伝達する公知の工具を使用する。
この工具を使用して、支持具Aを構成する各部材を1本ずつつかんで、縦溝5内に挿入して内部で組み立てを行う。
その場合にも各部材を鉛直の姿勢で平行移動させて縦溝5内に挿入設置することができないので、1本ごとに支障物の下方や上方の空間を、水平に近い状態で寝かして通過させ、通過させた後に、支障物の裏の縦溝5内で徐々に鉛直に引き起こして配置することになる。
作業者は場合によっては支障物の下に寝転がったり、二人でタイミングを合わせて工具の操作をする必要があるが、内部の状況はカメラで撮影してモニターで確認できるから正確な組み立てが可能である。
【0020】
<7>下段支柱の設置。
まず縦溝5の最下部に、下段支柱1を挿入する。
下段支柱1は、柱材11の下端に基礎台12が取り付けてあるから、溝5内で鉛直に立てると基礎台12を縦溝5の床面に設置した状態で柱材11を鉛直の姿勢に維持することができる。
こうして、2本の下段支柱1を縦溝5の奥と、手前に平行して設置する。
両下段支柱1の基礎台12の間は、最下段のせん断補強筋31で連結する。
そのために奥の下段支柱1の基礎台12には半円状の受筒15を設置しておき、手前の基礎台12には事前に最下段のせん断補強筋31を取り付けておき、このせん断補強筋31を奥の基礎台12の受け筒15に挿入して設置することができる。
【0021】
<8>下段せん断補強筋の設置。
並行して設置した2本の下段支柱1の中間と上端には、上向きに開放した半円状の中受け具13と上受け具14が取り付けてある。
そこでその中受け具13と上受け具14の樋の上に、中せん断補強筋32と上せん断補強筋33を載置する。
こうして2本の鉛直の支柱の間に、3本のせん断補強筋を取り付けることができる。
【0022】
<9>上段支柱の設置。
上せん断補強筋33の上に、上段支柱2の下側の下受け具22を被せて設置する。
この上段支柱2も、縦溝5の奥と手前に平行して設置する。
下受け具22は半円形の金具であるから、単に下段の上せん断補強筋33の上から被せるだけで左右方向の固定はできない。
しかし上段支柱2の両側には縦溝5の壁面が接近して位置するから、上段支柱2が多少傾いても問題はない。
【0023】
<10>上段せん断補強筋の設置。
平行して設置した2本の上段支柱2の中間と上端には、上向きに開放した半円状の中受け具23と上受け具24が固定してある。
そこで中受け具23の上と、上受け具24の上に、新たなせん断補強筋を載置する。
【0024】
<11>連続組み立て。(図10)
上記の工程によって、順次上に上段支柱2を載置し、その中受け具23と、上受け具24の上にせん断補強筋3を載置する作業を繰り返して行き、側面から見て梯子状に組み立ててゆく。
この梯子の横桟に相当するのがせん断補強筋3であり、梯子の縦桁に相当するのが上下段の支柱2、1である。
【0025】
<12>充填材の充填。
ひとつの縦溝5内で、支持具Aを用いたせん断補強筋の配置が終わったら、縦溝5の表面側に型枠として板を取り付け、縦溝5の内部にモルタルやコンクリートなどの充填材を充填する。
その結果、図に示すようにコンクリート構造物の内部に複数段にわたってせん断補強筋を設置した補強作業が完成し、表面に支障物のあるコンクリート構造物を、支障物を撤去したり移動することなく補強することができる。
【0026】
<13>他の形状の支柱。(図12)
前記した図4から図9に示した実施例は1本の支柱の下端と中間と上端に下受け具22、中受け具23、上受け具24を固定した構成であった。
しかし1本の支柱に上中下の三段に分けて受け具を固定する場合に限らず、図12に示すように、1本の長尺支柱4に複数段にわたって受け具を固定することができる。
すなわち、1本の長尺支柱4の下端には最下受け具41を、その上には複数段にわたって第一段受け具42、第二段受け具43、・・・を固定し、上端には最上受け具44を固定する構成である。
その場合も、最下受け具41だけが下向きの樋状に形成し、それ以外の受け具は上向きの樋状に形成することは他の実施例と同様である。
最下受け具41を、図4の実施例の基礎台12に代えることもできる。
なおここで「長尺」とは、説明を明確にするために他の実施例との相対的な意味で使ったものであり、特別に長い、という意味ではない。
この長尺支柱の場合の施工方法も前記の実施例と同様である。
すなわち、縦溝の内部に下端に基礎台を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の中受け具を固定した支柱を、少なくとも2基挿入し、次に各受け具の上にせん断補強筋を載置し、次に上記の工程で載置したせん断補強筋の上に、下端に最下受け具を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の受け具を固定した支柱を、その最下受け具を介して設置し、次に、各受け具の上に、せん断補強筋を載置し、以上の作業を繰り返した後、縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置するものである。
【0027】
<14>分割型の支柱。(図13)
さらに図13に示すように1本の支柱を上下に分割する構成を採用することもできる。
すなわち、基礎台12と中受け具13を1本の下支柱25に固定し、一方上受け具14だけを他の1本の上支柱26に固定し、両者を嵌合可能に構成するものである。
嵌合可能とするためには、1本の下支柱25の上端を円筒状の受け筒16として構成し、他方の上支柱26の下端を円錐状、円柱状またはその他の円筒に挿入可能な形状に形成すればよい。
各受け筒16は各支柱と同心円状に位置し、一方、各受け具は支柱の軸線から外れた位置にある。
1本の下支柱25の下端に基礎台12だけを固定し、他の上支柱26の中間に中受け具13を、上端に上受け具14を固定した組み合わせを採用することもできる。
なお最下端には、基礎台12に代えて、図7の実施例の下受け具22を固定することもできる。
施工に際しては、下端を基礎台に固定し、上端に受け筒を設け、かつ中受け具を設けた下支柱を、少なくとも2基を縦溝内に挿入する。
次に、両下支柱の中受け具の上に、せん断補強筋を載置する。
次に、下支柱の上端の受け筒内に、上端に受け筒を設け、かつ上受け具を設けた上支柱の下端を挿入して一体化する。
次に、両上支柱の上受け具と上受け具の上に、せん断補強筋を載置する。
以上の作業を繰り返した後、縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置するものである。
【0028】
<15>二種類の支持具の組み合わせ。
縦溝内に二種類の支持具を使い分けて設置することもできる。
例えば操作しやすい手前には図13の実施例のように、上下に分割したタイプの支柱を設置する。
縦溝の奥には、他の図の実施例のように、1本の支柱に複数段に中受け具を取り付けたタイプの支柱を設置し、上下の支柱を接続する手数を省略するような方法である。
【符号の説明】
【0029】
A:せん断補強筋支持具
1:上段支柱
13:中受け具
14:上受け具
2:下段支柱
22:下受け具
23:中受け具
24:上受け具
25:下支柱
26:上支柱
3:せん断補強筋
31:下せん断補強筋
32:中せん断補強筋
33:上せん断補強筋
4:長尺支柱
5:縦溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物の壁面に、削孔の障害となる支障物が存在する場合の工法であって、
支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔し、この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成し、この縦溝の内部に、
下端に基礎台を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の中受け具を固定した支柱を、少なくとも2基挿入し、
次に、各受け具の上に、せん断補強筋を載置し、
次に、上記の工程で載置したせん断補強筋の上に、
下端に最下受け具を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の受け具を固定した支柱を、
その最下受け具を介して設置し、
次に、各受け具の上に、せん断補強筋を載置し、
以上の作業を繰り返した後、
縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置する、
せん断補強工法。
【請求項2】
コンクリート構造物の壁面に、削孔の障害となる支障物が存在する場合の工法であって、
支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔し、この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成し、この縦溝の内部に、
下端を基礎台に固定し、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた下段支柱を、少なくとも2基挿入し、
次に、両下段支柱の中受け具と上受け具の上に、せん断補強筋を載置し、
次に、上記の工程で載置したせん断補強筋の上に、
下端に下受け具、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた上段支柱を、
その下受け具を介して設置し、
次に、両上段支柱の中受け具と上受け具の上に、せん断補強筋を載置し、
以上の作業を繰り返した後、縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置する、
せん断補強工法。
【請求項3】
コンクリート構造物の壁面に、削孔の障害となる支障物が存在する場合の工法であって、
支障物を避けてコンクリート構造物の表面から元穴を削孔し、この元穴の内部に、元穴の中心線にほぼ直交する方向に向けて高圧水を噴射できるノズルを挿入して元穴を中心に縦溝を形成し、この縦溝の内部に、
下端を基礎台に固定し、上端に受け筒を設け、かつ中受け具を設けた下支柱を、少なくとも2基挿入し、
次に、両下支柱の中受け具の上に、せん断補強筋を載置し、
次に、下支柱の上端の受け筒内に、上端に受け筒を設け、かつ上受け具を設けた上支柱の下端を挿入して一体化し、
次に、両上支柱の上受け具と上受け具の上に、せん断補強筋を載置し、
以上の作業を繰り返した後、縦溝内に、充填材を充填してせん断補強筋をコンクリート構造物の内部に設置する、
せん断補強工法。
【請求項4】
下端に基礎台を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の中受け具を固定した支柱と、
下端に最下受け具を、上端に最上受け具を、中間には複数段に第一、第二・・の受け具を固定した支柱とより構成し、
最下受け具はせん断補強筋の断面の上半分を受ける形状に、
他の受け具はせん断補強筋の断面の下半分を受ける形状に形成した、
せん断補強筋支持具
【請求項5】
下端を基礎台に固定し、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた下段支柱と、
下端に下受け具、中段に中受け具、上端に上受け具を設けた上段支柱とより構成し、
下受け具はせん断補強筋の断面の上半分を受ける形状に、
中受け具と上受け具はせん断補強筋の断面の下半分を受ける形状に形成した、
せん断補強筋支持具。
【請求項6】
下端を基礎台に固定し、上端に受け筒を設け、かつ中受け具を設けた下支柱と、
上端に受け筒を設け、かつ上受け具を設けた上支柱で構成し、
上支柱の下端は、下支柱の上端の受け筒内に挿入可能に形成した、
せん断補強筋支持具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−67490(P2012−67490A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212485(P2010−212485)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【特許番号】特許第4695227号(P4695227)
【特許公報発行日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(596105208)第一カッター興業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】