説明

その純粋形態を含む芳香族カルボン酸を製造するための方法及び装置

芳香族カルボン酸を製造するための方法及び装置は、芳香族炭化水素供給材料を液相酸化し、液相酸化からの高圧排ガスを処理して水及び反応溶媒を分離し、液相酸化副生成物種を分離から得られた液相及び気相の間に選択的に分配することを含む。純粋な形態の芳香族カルボン酸を製造する方法も包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相酸化反応混合物中において芳香族供給材料を不純芳香族カルボン酸生成物に酸化し、液相酸化工程からの高温で高圧のオフガスを分離し、分離から同様に得られる液体及び気相の中から、液体水及び酸化及び分配酸化副生成物のための液体反応溶媒を回収することによって芳香族カルボン酸を製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレフタル酸及び他の芳香族カルボン酸は、ポリエステルの製造において、通常は繊維、フィルム、容器、ビン、及び他の包装材料、並びに成形物品に転化させるためにエチレングリコール、より高級なアルキレングリコール又はこれらの組み合わせと反応させることによって広く用いられている。
【0003】
商業的な実施においては、芳香族カルボン酸は、通常、メチル置換基の位置が所望の芳香族カルボン酸生成物におけるカルボキシル基の位置に対応しているメチル置換ベンゼン及びナフタレン供給原料の酢酸水溶液溶媒中において、コバルト及びマンガンを含む臭素促進触媒の存在下で、通常は気体状の空気又は他の酸素源によって液相酸化することによって製造されている。酸化は発熱反応であり、芳香族供給材料の部分的又は中間酸化生成物、及びメタノール、酢酸メチル、及び臭化メチルのような酢酸反応生成物を含む副生成物と共に芳香族カルボン酸が生成する。また、水も副生成物として生成する。通常は供給原料の酸化副生成物と共に得られる芳香族カルボン酸は、通常、液相反応混合物中に溶解している状態か又は懸濁している固体の状態で形成され、通常は結晶化及び固液分離法によって回収される。発熱酸化反応は、通常、好適な反応容器中、昇温及び昇圧下で行う。液相反応混合物が容器内に保持され、発熱酸化の結果として形成された気相が液相から蒸発し、反応温度が制御された反応器から取り出される。気相は、水蒸気、気化酢酸反応溶媒、並びに、溶媒及び供給原料副生成物の両方を含む少量の酸化の副生成物を含む。またこれは、通常、酸化工程において消費されなかった酸素ガス、少量の未反応供給原料、炭素酸化物、及びプロセスのための酸素源が空気又は他の酸素含有気体混合物である場合には、窒素、炭素酸化物、及び源ガスの他の不活性気体成分も含む。
【0004】
繊維及びビンのような重要な用途のためのポリエステルの製造のためには、しばしば純粋形態の芳香族カルボン酸が望まれている。これは、かかる酸化プロセスにおいて芳香族供給原料から生成する副生成物、より一般的には種々のカルボニル置換芳香族種のような不純物が、酸から製造されるポリエステルにおける発色、及び次にポリエステル二次加工品における望ましくない色を引き起こすか又はこれに関連することが知られているからである。減少した不純物レベルを有する芳香族カルボン酸は、米国特許4,877,900、4,772,748、及び4,286,101から公知のように、供給原料の部分的酸化生成物を所望の酸生成物に転化するために、酸化の生成物を回収するために結晶化する際に、上記に記載の液相酸化からの粗生成物を1回以上、温度及び酸素レベルを徐々に低くして更に酸化することにより製造することができる。より低い不純物含量を有する好ましい純粋な形態のテレフタル酸及び他の芳香族カルボン酸、例えば精製テレフタル酸すなわちPTAは、純度のより低い形態の酸、例えば芳香族供給原料の液相酸化によって生成する芳香族カルボン酸及び副生成物を含む粗生成物、或いは所謂中程度の純度の生成物を、溶液中、昇温及び昇圧下で、貴金属触媒を用いて接触水素化することによって得られる。商業的な実施においては、粗芳香族カルボン酸へのアルキル芳香族供給材料の液相酸化、及び粗生成物の精製は、しばしば、液相酸化からの粗生成物を精製のための出発物質として用いる連続統合プロセスで行われる。
【0005】
かかるプロセスにおける液相酸化によって生成する高温及び高圧の気相は、回収可能な酢酸反応溶媒、未反応の供給材料、及び反応副生成物、並びにエネルギーの潜在的に貴重な源である。しかしながら、その大きな含水量、高温及び高圧、並びに気体状臭化メチル、酢酸溶媒及び水のような成分に起因する腐食性のために、再循環のための成分を分離又は回収すること、及びそのエネルギー含量を回収することの技術的及び経済的な課題がもたらされる。更に、回収されたプロセス流中に未分離で残留する不純物は、不純物が他のプロセス性状又は製品品質に悪影響を与える場合には、流の再使用を妨げる可能性がある。例えば、米国特許5,200,557に記載されているように、モノカルボン酸は、精製プロセスにおいて用いる水素化触媒に悪影響を与え、酸化反応液体から回収される粗芳香族カルボン酸生成物中に存在するような低いレベルの酢酸残留物であっても有害であると考えられる。
【0006】
英国特許明細書1,373,230、米国特許5,304,676;5,723,656;6,143,925;6,504,051、ヨーロッパ特許明細書0498591−B1、及び国際出願WO97/27168においては、その一部分又は成分を回収及び再循環するために、及び幾つかの場合においてはエネルギーを回収するために、高圧のオフガスを酸化工程から取り出して処理する、芳香族供給材料の液相酸化によって芳香族カルボン酸を製造する方法が記載されている。米国特許5,304,676のようなオフガスの凝縮は、水、酢酸、及びオフガスの他の凝縮可能な成分を回収するのに有効であるが、得られる凝縮液中の水、酢酸、及び他の成分を分離することは、技術的に複雑で、経済的に実用性がない。米国特許5,723,656、6,143,925、6,504,051、及びWO97/27168の方法のような高圧オフガス分離は、オフガスを分離して、酢酸に富む液体及び更なる処理に好適な水蒸気を含むガスを回収するのに有効である可能性がある。しかしながら、かかる分離法においては、酸化工程のある種の副生成物は液相及び気相の両方の中に分配される傾向があり、このためにこれらの回収工程が複雑になり、他のプロセス流及び工程に潜在的に悪影響を与える。これらの問題は、精製液体反応混合物又は高圧分離からの流出ガスから凝縮した液体から純粋な形態の芳香族カルボン酸を回収した後に残留する母液のような副生成物含有流を分離工程において用いるプロセスにおけるかかる副生成物の蓄積によってより悪化する。引用した特許によるプロセスのいずれも、液相酸化からの高圧オフガスから凝縮される液体を、不純芳香族カルボン酸の精製において溶媒又は他の水含有液体として用いてはおらず、かかるプロセスにおける物質及びエネルギーの回収は、しばしば、例えば、物質を回収するための冷却又は減圧のためのエネルギー含量の損失、大気放出を制御するための物質の燃焼、並びに酸化工程からの高温及び高圧の気相を、かかる物質を取り出すために冷却又は減圧しない場合に生じる酸化溶媒、供給原料、及び副生成物の他の損失のために、互いの犠牲の上で行われている。
【0007】
再循環流中に残留する不純物は、プロセス運転を混乱させ、製品品質を損なう可能性がある。材料、エネルギー又は両方を回収するために追加される装置及びプロセス工程は、プロセスの複雑性を更に増大させ、材料及びエネルギーの節約を上回るコストを増大させる場合にはその実用性を制限又は排除する可能性がある。かかるファクター、エネルギーの損失及び材料の損失は、プロセス運転の規模によってより大きくなる。500,000〜1,000,000トン又はそれ以上の製品の年間製造能力を有する世界的規模の商業的な製造プラントにおいては、小数点以下のパーセントすなわち数百ppmの供給原料及び溶媒が損失したり或いは望ましくないか又は使用できない副生成物に転化したり、エネルギー回収が僅かに非効率的であったり、流出水を処理するために更に添加を行うだけでも、材料の大きな実際的な損失、燃料又は電力の消費の増大及び追加の処理、並びに気体及び液体放出物及び流出物の処理のためのエネルギー、材料及び必需品に関するコストにおける問題及び変動のために予測できないプロセスの効率性及び経済性をもたらす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その幾つかの態様及び特徴において、酸化反応溶媒、水、及び酸化副生成物の分離及び回収のための液相酸化工程からの高圧気相の改良された処理を伴う、芳香族炭化水素供給材料の液相酸化による芳香族カルボン酸の製造を提供するか又は可能にする方法及び装置を提供する。幾つかの態様においては、本発明は、酸化オフガスからのエネルギーの有益な回収法も提供することができる。
【0009】
本発明は、また、液相酸化において生成し、酸化反応オフガス中に持ち越されるか、或いはそれから水及び酸化反応溶媒を分離するためのオフガス処理中に存在する、芳香族供給材料及び酸化のためのモノカルボン酸溶媒の副生成物の選択的制御を伴う、芳香族カルボン酸を製造するための改良された方法及び装置も提供する。かかる副生成物は、本発明の一態様によれば、液相酸化からの高圧気相から高圧で分離される酸化反応溶媒又は水を含む1以上の液相、或いは分離から得られる高圧ガスに選択的に分配される。他の条件が同じであるならば、本発明によってかかる副生成物を制御することにより、オフガスから誘導される液体又は蒸気流中に不純物として存在するそのレベルを低下させることができる。また、これによって、かかる副生成物を戻して、それらが有用であるプロセス工程において、より直接的か、或いは分離から得られる液相及び気相中に分配されずに残留した場合よりも濃厚な濃度で用いることが容易になる。
【0010】
液相反応混合物中において、芳香族供給材料を、芳香族カルボン酸及び供給材料の酸化副生成物を含む粗生成物に酸化し、粗生成物を、水を含む液体中のその溶液の水素化によって精製する工程を含む純粋な形態の芳香族カルボン酸を製造するための統合法において、本発明は、また、他の源からの脱塩水又は純水に関する必要性を排除又は減少し、公知の方法においては達成されず、且つ実質的に公知の方法よりも改良された、液相酸化において生成する水と精製において用いられる水との間のバランスを提供する。酸化反応オフガスからの溶媒及び水を、酸化及び精製工程に戻すか又はそれにおいて用いるのに好適な液相中に実質的に分離することに加えて、本発明方法は、精製反応溶液から精製芳香族カルボン酸生成物を回収した後に残留する精製母液を含む液体を、還流として分離工程に送ることを含む態様を包含する。かかる態様においては、酸化副生成物、例えば所望の芳香族酸生成物としてテレフタル酸又はイソフタル酸に転化することのできるカルボキシベンズアルデヒド及びトルイル酸酸化中間体のみならず、精製溶液を形成するのに用いる不純芳香族カルボン酸生成物中の溶媒残留物、及び分離工程から得られる気体中に残留する溶媒副生成物も、酸化工程に戻すことができる。
【0011】
酸化工程からの気相中の溶媒モノカルボン酸及び水を実質的に分離した後に残留する高圧気相中に存在する、溶媒モノカルボン酸、液相酸化において生成するその反応生成物、酸化工程からの未反応芳香族供給材料、或いはこれらの組み合わせの回収は、分離工程からの高圧ガスを凝縮して水含有液体を回収し、一方、高圧の凝縮器排ガスを、1以上のスクラビング剤が、供給材料、溶媒、及び溶媒の酸化副生成物の1以上を除去するのに有効な温度に冷却する他の態様によって更に向上する。得られたガスは、供給材料及び/又はかかる溶媒副生成物を分離するために更に処理することができ、且つ、更なる態様においては、供給材料、溶媒副生成物又はこれらの組み合わせを含む流れを、液相酸化工程に送ることができる。
【0012】
一態様においては、本発明は、芳香族カルボン酸を製造するための装置を提供する。この装置によって、エネルギーを回収し、プロセス運転における材料の損失を防ぐ改良された能力が提供される。その幾つかの態様においては、この装置は、装置、及び幾つかの場合においては補助装置又は他のプロセス機器の部品を、芳香族カルボン酸の製造において従来用いられているチタン、ニッケル合金鋼、及び他のより高価な高耐腐食性金属の代替として、ステンレス鋼、軟鋼、又は二相鋼のような中程度の耐腐食性を有する金属及び合金で構成することができるように、プロセスガス流の腐食性を低下させることによって、更なる有利性を提供するように構成する。
【0013】
簡潔に言えば、本発明による装置は、液相反応混合物中での置換芳香族炭化水素供給原料の液相酸化による芳香族カルボン酸の製造において生成する反応器オフガスの成分を分離するためのものであり、
(a)置換芳香族炭化水素供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中で、液相反応混合物が保持され、溶媒モノカルボン酸及び水蒸気を含む高圧塔頂気相が反応容器内で生成するような条件下で、気体状酸素によって液相酸化するための反応容器から取り出される高圧塔頂気相を、受容し、装置の分別領域の第1段階に送るための、少なくとも一つの下部気体流入口;及び
(b)多数の理論平衡段で、それを通る対向流で気相と液相とを接触させるための分別領域であって、
(1)溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相が還流液中に取り出され、溶媒モノカルボン酸が消耗した水蒸気を含む高圧の第1の中間気相が形成されるように、高圧気相中の水及び溶媒モノカルボン酸を、分別領域の中間段階から受容する還流液の成分を含む還流液の対向流と接触させて実質的に分離することができ、それから還流液を受容するための分別領域の中間部分、及びそれへの第1の中間気相の流路と流体連通しており、その中へ第1の液相が取り出される還流液を液体受容器に送る手段を有する第1の部分;
(2)芳香族炭化水素前駆体の副生成物が還流液中に取り出され、溶媒モノカルボン酸及び芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない水蒸気を含む高圧の第2の中間気相が形成されるように、第1の中間気相中の水及び置換芳香族炭化水素供給材料の液相酸化副生成物を、分離装置の上部部分から受容する還流液の液体成分を含む還流液の対向流と接触させて分離することができ、それから還流液を受容するための分別領域の上部部分、及びそれへの第2の中間気相の流路と流体連通している中間部分;及び
(3)溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まない水を含む第2の液相が還流液中に取り出され、水蒸気及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含み、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相が形成されるように、第2の中間気相及び上部部分に供給される還流液の少なくとも一つの中の水及び溶媒モノカルボン酸の液相酸化副生成物を、還流液の対向流と接触させて実質的に分離することができ、その中へ第2の液相が取り出される還流液の少なくとも一部を収集するための収集手段をその下部に有する上部部分;
を有する分別領域;
(c)分別領域の第1の部分から、その中に第1の液相が取り出された還流液を受け取るための液体受容器;
(d)装置から液体を取り出すための、液体受容器と連通している少なくとも一つの液体流出口;
(e)分別領域の上部部分の上部領域中に還流液を導入するための、少なくとも一つの液体流入口;
(f)分別領域の下部部分の上部領域中に還流液を導入するための、少なくとも一つの液体流入口;
(g)その中に第2の液相が取り出された還流液の少なくとも一部を装置から取り出すための収集手段と連通している少なくとも一つの液体流出口;
を具備する、実質的に円柱状で、実質的に被包された容器を有する。
【0014】
より具体的な態様においては、分別領域は、好ましくは約20〜約80の理論平衡段を与える。他の態様による分別領域の第1の部分は、溶媒モノカルボン酸の少なくとも約95重量%が還流液に取り出されるように、液相酸化からの高圧蒸気中の水及び溶媒モノカルボン酸を分離することができる。他の態様においては、分別領域の第1の部分は、好ましくは、約20〜約70の理論平衡段を与える。他の態様においては、それに第2の液相が取り出された還流液を収集するための収集手段と連通する少なくとも一つの流出口と、分別領域の下部部分の上部領域中に還流液を導入するための少なくとも一つの流入口とは、好ましくは、約1〜約10理論平衡段により分離される。更に他の態様においては、少なくとも一つのかかる流出口と、分別領域の上部部分の上部領域中に還流液を導入するための少なくとも一つの流入口とは、約1〜約10理論平衡段により分離される。
【0015】
本発明の他の態様による装置は、好ましくは、置換芳香族炭化水素供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中、液相反応混合物が保持され、溶媒モノカルボン酸及び水蒸気を含む高圧塔頂気相が反応容器内で生成するような条件下で、気体状酸素によって液相酸化するための反応容器であって、高圧の塔頂気相を受容して分離装置の分別領域の第1段階に送るための少なくとも一つの下部気体流入口と流体連通している、それから高圧の塔頂気相を取り出すための少なくとも一つの排気口を有する反応容器を具備する。
【0016】
他の態様においては、本発明の幾つかの態様による装置は、好ましくは、水性液体中に溶解している芳香族カルボン酸及び不純物を含む溶液を、水素化触媒の存在下、昇温及び昇圧下で、水素と接触させて精製液体反応混合物を形成し、精製反応混合物から減少した不純物を含む固体の芳香族カルボン酸生成物を回収することを含む純粋な形態の芳香族カルボン酸を製造する方法と統合したプロセスにおいて用いるのに適合している。かかるプロセスによって精製芳香族カルボン酸を製造するための好ましい装置は、液体精製反応溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒の存在下で、水素と接触させて精製液体反応混合物を形成するように適合している少なくとも一つの反応容器、及びより好ましくは、反応容器から取り出された精製液体反応混合物を回収し、それから減少した不純物レベルを有する固体の芳香族カルボン酸生成物を回収するための、反応容器と流体連通している少なくとも一つの生成物回収容器を有する。好ましくは、かかる装置は、また、精製反応溶媒中に粗又は不純芳香族カルボン酸を溶解したり、液体媒体から固体の精製芳香族カルボン酸を濾過又は他の方法で分離したり、固体の精製芳香族カルボン酸生成物を洗浄するなどのための1以上の更なる容器も含む。
【0017】
本発明のこの形態の一態様による装置は、また、エネルギーを、仕事の形態で、或いは分離装置から取り出された第2の高圧気相から熱を抽出することによって回収するための手段も有することができる。
【0018】
他の態様においては、本発明は、芳香族カルボン酸の製造方法を提供する。この方法は、
酸への少なくとも一つの芳香族炭化水素前駆体を含む供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相酸化反応混合物中、少なくとも一つの重金属成分を含む触媒組成物の存在下、液相酸化反応混合物を保持し、且つ液相酸化反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物、並びに、溶媒モノカルボン酸、水、及び少量の芳香族炭化水素前駆体、並びに前駆体及び溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物を含む高圧気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下の反応領域において、気体状酸素と接触させ;
反応領域から取り出された高圧気相を、芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物が第1の液相に選択的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に選択的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、及び酸化副生成物を、少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む少なくとも一つの第2の液相、及び水蒸気を含む溶媒モノカルボン酸が消耗した少なくとも一つの第2の高圧気相に実質的に分離することができる分離領域に移し;そして
分離領域から、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、並びに芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相を、別々の流れで取り出す;
工程を含む。
【0019】
他の態様においては、水、溶媒モノカルボン酸、及び副生成物の分離は、好ましくは水含有液体であり、より好ましくは、分離領域から取り出された第2の高圧気相から凝縮された水含有凝縮液、或いは液体精製反応混合物から固体の純粋な形態の芳香族カルボン酸を回収することによって得られる母液、或いはこれらの組み合わせである還流液が供給される分離領域において行う。更に具体的な態様においては、分離領域は段階付けられており、水及び溶媒モノカルボン酸を実質的に分離するための段階に供給される第1の還流液は精製母液を含み、第2の高圧気相中に溶媒副生成物を分配するための段階に供給される更なる還流液は第2の高圧気相から回収された凝縮液を含む。
【0020】
他の態様においては、本発明は、
置換基をカルボキシル基に酸化することのできる少なくとも一つの置換芳香族炭化水素を含む供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相酸化反応混合物中、少なくとも一つの重金属成分を含む触媒組成物の存在下、液相酸化反応混合物を保持し、且つ液相酸化反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物、並びに、水、モノカルボン酸、未反応の置換芳香族炭化水素、酸素、及び反応副生成物を含む高圧気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下の反応領域において、気体状酸素と接触させることを含む少なくとも一つの液相酸化工程;
少なくとも一つの液相酸化工程からの液相酸化反応混合物から回収された、水を含み、その中に芳香族カルボン酸及び不純物が溶解した液体を含む精製反応溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒金属を含む触媒の存在下で水素と接触させて、水含有液体中に溶解した芳香族カルボン酸及び水素化不純物を含む精製液体反応混合物を形成することを含む少なくとも一つの精製工程;及び
少なくとも一つの液相酸化工程の反応領域から取り出された高圧気相を、芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物が第1の液相に選択的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に選択的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、及び酸化副生成物を、溶媒モノカルボン酸に富む少なくとも一つの第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む少なくとも一つの第2の液相、及び水蒸気を含む溶媒モノカルボン酸が消耗した少なくとも一つの第2の高圧気相に実質的に分離することができる分離領域に移し、溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相を分離領域から取り出すことを含む、少なくとも一つのオフガス分離工程;及び
少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を、少なくとも一つの精製工程において用いるか又はその生成物の回収、分離又は洗浄のための水含有液体が凝縮液を含むように精製領域に送ることを含む少なくとも一つの工程;
を含む、芳香族カルボン酸の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の幾つかの態様による方法の液相酸化、精製、及びオフガス分離工程は、好ましくは、単一の液相酸化工程からの芳香族カルボン酸及び副生成物を含む液相酸化生成物及び高圧気相が、それぞれ精製工程及びオフガス分離工程に送られ、オフガス分離工程で回収された液相酸化からの溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まず水を含む第2の液相を水含有液体として用いるために精製工程に送られるように、統合される。
【0022】
他の態様においては、本発明方法は、
(a)芳香族カルボン酸への芳香族炭化水素前駆体を含む供給材料と気体状酸素とを、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相酸化反応混合物中、重金属成分を含む触媒組成物の存在下、液体反応混合物を保持し、且つ液相酸化反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び置換芳香族炭化水素の副生成物を含む不純物、並びに、溶媒モノカルボン酸、水、置換芳香族炭化水素の副生成物、及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含む高圧気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下の反応領域において接触させ;
(b)液相酸化反応混合物から、芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物を含む固体生成物を回収し;
(c)芳香族カルボン酸、及び置換芳香族炭化水素の副生成物を含む不純物を含む液相酸化反応混合物から回収された固体生成物を、少なくともその一部が工程(i)にしたがって回収された第2の液相を含む水含有液体中に溶解又は懸濁して、精製溶液を形成し;
(d)精製溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒の存在下で、水素と接触させて精製液体反応混合物を形成し;
(e)精製液体反応混合物から、減少した不純物レベルを有する芳香族カルボン酸を含む固体精製生成物、並びに、水、及び少量の置換芳香族炭化水素前駆体の副生成物、その水素化誘導体、又はこれらの組み合わせを含む液体精製母液を回収し;
(f)溶媒モノカルボン酸、水蒸気、置換芳香族炭化水素の副生成物、及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含む工程(a)からの高圧気相を、還流液が供給され、置換芳香族炭化水素の酸化副生成物が第1の液相に実質的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に実質的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸に富む少なくとも一つの第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む少なくとも一つの第2の液相、及び溶媒モノカルボン酸が消耗した水蒸気を含む少なくとも一つの第2の高圧気相に、溶媒モノカルボン酸、水、及び副生成物を分離することができる分離領域に移し;そして
(g)分離領域から、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、並びに芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相を、別々の流れで取り出し;
(h)工程(c)、(d)、又は(e)の少なくとも一つにおける水含有液体が第2の液相を含むように、工程(g)において分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を、工程(c)、(d)、又は(e)の少なくとも一つに送る;
工程を含む。
【0023】
より具体的な態様においては、分離領域からの溶媒モノカルボン酸に富む液体を含む液体流を反応領域に移す。他の態様においては、分離領域から取り出された液相酸化のための芳香族炭化水素出発物質の酸化副生成物を実質的に含まない水を含む第2の高圧気相を冷却することで、熱が第2の気相から熱交換媒体に移動して加圧下の蒸気又は他の加熱流体が生成することによって凝縮が起こって水含有凝縮液が回収され、得られた加圧下の蒸気又は加熱流体は、他の工程又はプロセスにおける加熱のために用いることができる。また、このような第2の高圧気相又はその一部、或いは第2の高圧気相を凝縮した後に残留する高圧の排ガスは、未反応の供給材料及び溶媒又は溶媒副生成物を回収する工程、熱交換などによって熱を抽出することによってエネルギーを回収する工程、膨張器又は他の好適な装置などによって機械的エネルギーに変換することによってエネルギーを回収する工程、或いはこれらを組み合わせた工程の1以上の更なる工程で処理することができる。
【0024】
本発明に適した芳香族カルボン酸としては、1以上の芳香環を有し、液相系中での気体及び液体の反応物質の反応によって製造することのできるモノ及びポリカルボキシル化種が挙げられる。かかる芳香族カルボン酸の例としては、テレフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸、フタル酸、イソフタル酸、安息香酸、及びナフタレンジカルボン酸が挙げられる。本発明は、精製テレフタル酸及び所謂中間純度のテレフタル酸をはじめとする純粋な形態のテレフタル酸の製造に特に適している。
【0025】
本発明方法の酸化工程は、酸素ガスと、カルボン酸基に酸化することのできる置換基を有する芳香族炭化水素を含む供給材料とを、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中、少なくとも一つの重金属成分を含む触媒組成物の存在下において接触させることを含む液相酸化である。酸化工程は、液相反応混合物を保持し、高温で高圧の気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下で行う。液相酸化工程における芳香族供給材料の酸化によって、芳香族カルボン酸、並びに、芳香族供給材料の部分的又は中間酸化生成物、及び溶媒副生成物のような反応副生成物が生成する。液相酸化工程及びそれに関連するプロセス工程は、バッチ法、連続法、或いは半連続法として行うことができる。酸化工程は、1以上の反応器内で行うことができる。
【0026】
酸化のために好適な芳香族供給材料は、一般に、通常は製造される芳香族カルボン酸のカルボン酸基の位置に対応する1以上の位置において、カルボン酸基に酸化することのできる少なくとも一つの基で置換されている芳香族炭化水素を含む。酸化可能な一つ又は複数の置換基は、メチル、エチル、又はイソプロピル基のようなアルキル基、或いはヒドロキシアルキル、ホルミル、又はケト基のような既に酸素を有する基であってよい。置換基は、同一であっても異なっていてもよい。供給原料化合物の芳香族部分は、ベンゼン核であってもよく、或いはナフタレン核のような二環又は多環式であってもよい。供給原料化合物の芳香族部分上の酸化可能な置換基の数は、芳香族部分上で利用できる部位の数に等しくてよいが、一般にかかる部位全体よりも少なく、好ましくは1〜約4、最も好ましくは2である。単独で又は組み合わせて用いることのできる有用な供給化合物の例としては、トルエン、エチルベンゼン及び他のアルキル置換ベンゼン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、トルアルデヒド、トルイル酸、アルキルベンジルアルコール、1−ホルミル−4−メチルベンゼン、1−ヒドロキシメチル−4−メチルベンゼン、メチルアセトフェノン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1−ホルミル−2,4−ジメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、アルキル−、ホルミル−、アシル−、及びヒドロキシメチル−置換ナフタレン、例えば2,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジエチルナフタレン、2,7−ジメチルナフタレン、2,7−ジエチルナフタレン、2−ホルミル−6−メチルナフタレン、2−アシル−6−メチルナフタレン、2−メチル−6−エチルナフタレン、及び上記化合物の部分酸化誘導体が挙げられる。
【0027】
それらの対応して置換された芳香族炭化水素前駆体の酸化によって芳香族カルボン酸を製造するため、例えば、モノ置換ベンゼンから安息香酸、パラ二置換ベンゼンからテレフタル酸、オルト二置換ベンゼンからフタル酸、及びそれぞれ2,6−及び2,7−二置換ナフタレンから2,6−又は2,7−ナフタレンジカルボン酸を製造するためには、比較的純粋な供給材料、より好ましくは所望の酸に対応する前駆体の含量が少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、或いはそれ以上である供給材料を用いることが好ましい。テレフタル酸を製造するために用いるのに好ましい芳香族炭化水素供給原料は、パラキシレンである。安息香酸を製造するために好ましい供給材料はトルエンである。
【0028】
液相酸化工程において芳香族供給材料を液相反応して芳香族カルボン酸生成物にするための溶媒は、好ましくはC1〜C8モノカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、及び安息香酸である低分子量モノカルボン酸を含む。芳香族カルボン酸への液相酸化において用いる反応条件下でより高分子量のモノカルボン酸よりも望ましくない反応生成物への反応性が低く、酸化における触媒効果を高めることができるので、より低分子量の脂肪族モノカルボン酸及び安息香酸が好ましい。酢酸が最も好ましい。その水溶液の形態、例えば約80〜約95重量%の酸の溶液の形態の溶媒が、商業的な運転において最も通常的に用いられる。液相酸化反応条件下でモノカルボン酸に酸化するエタノール及び他の共溶媒材料も、そのままか又はモノカルボン酸と組み合わせて用いて良好な結果を得ることができる。モノカルボン酸及びかかる共溶媒の混合物を含む溶媒を用いる場合には、好ましくは、同じモノカルボン酸に酸化することのできる共溶媒を用いて、溶媒分離工程が更に複雑にならないようにする。
【0029】
本発明による液相酸化のための溶媒に関し、種々の気体又は液体流の成分に関して本明細書において用いる「溶媒モノカルボン酸」という表現は、液相酸化のための溶媒として用いるモノカルボン酸と同じ化学組成を有するモノカルボン酸を指す。また、このような使用法によって、これらの化学組成物を、酸化副生成物として存在する可能性のある他のモノカルボン酸から識別する。一例として、酸化のための液相反応混合物が酢酸溶媒を含む場合、「溶媒モノカルボン酸」という表現は、酢酸を指すが、本発明にしたがって用いられる芳香族供給材料の通常の部分的又は中間酸化副生成物である安息香酸及びトルイル酸のような他のモノカルボン酸種は含まない。また、文脈から明らかなように、「溶媒モノカルボン酸」という表現において用いる「溶媒」という用語は、必然的ではないが、それが指すモノカルボン酸の機能を指す場合がある。而して、再び一例として、液相酸化反応混合物の成分として記載する「溶媒モノカルボン酸」は、混合物のための溶媒として存在するが、酸化において生成する高圧気相中に存在する成分、或いはかかる気相から分離される液相の成分として記載する「溶媒モノカルボン酸」は、モノカルボン酸が溶媒として機能することを示すことを意図してはいない。
【0030】
液相酸化のために用いる触媒は、芳香族供給材料の芳香族カルボン酸への酸化を触媒するのに有効な物質を含む。可溶性の触媒は、触媒、酸素ガス、及び液体供給材料の間の接触を促進するので、好ましい触媒は酸化のために用いる液相反応混合物中に可溶性のものである。しかしながら、不均一系触媒又は触媒成分を用いることもできる。通常、触媒は、約23〜約178の範囲の原子量を有する金属のような少なくとも一つの重金属成分を含む。好適な重金属の例としては、コバルト、マンガン、バナジウム、モリブデン、クロム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、セリウム、又はハフニウムのようなランタニド金属が挙げられる。これらの金属の好適な形態としては、例えば、酢酸塩、水酸化物、及び炭酸塩が挙げられる。好ましい触媒は、コバルト、マンガン、これらの組み合わせ、及び1以上の他の金属、特にハフニウム、セリウム及びジルコニウムとの組み合わせを含む。
【0031】
好ましい態様においては、液相酸化のための触媒組成物は、また、好ましくは望ましくないタイプ又はレベルの副生成物を生成しないで触媒金属の酸化活性を促進する促進剤も含む。酸化において用いる液体反応混合物中に可溶な促進剤が、触媒、促進剤、及び反応物質の間の接触を促進させるために好ましい。ハロゲン化合物、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン置換炭化水素、ハロゲン置換カルボン酸、及び他のハロゲン化化合物が、促進剤として通常用いられる。好ましい促進剤は、少なくとも一つの臭素源を含む。好適な臭素源としては、ブロモアントラセン、Br2、HBr、NaBr、KBr、NH4Br、臭化ベンジル、ブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、テトラブロモエタン、二臭化エチレン、臭化ブロモアセチル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。他の好適な促進剤としては、アセトアルデヒド及びメチルエチルケトンのようなアルデヒド及びケトンが挙げられる。
【0032】
酸化工程の液相反応のための反応物質としては、また、分子状酸素を含む気体が挙げられる。酸素ガス源として空気が好都合に用いられる。酸素に富む空気、純粋な酸素、及び通常は少なくとも約10容量%のレベルで分子状酸素を含む他の気体混合物もまた有用である。明らかなように、源の分子状酸素の含量が増加するにつれて、圧縮器の必要性、及び反応器オフガス中の不活性ガスの取り扱いが減少する。空気又は他の酸素含有気体混合物をこのプロセスのための酸素源として用いる場合には、酸化工程における液相反応によって生成する高圧気相は、窒素、又は酸素源の他の不活性ガス成分を含む。
【0033】
芳香族供給材料、触媒、酸素、及び溶媒の割合は、本発明には重要ではなく、反応物質、溶媒、及び触媒組成物の選択、及び所期の芳香族カルボン酸生成物、プロセス設計及び運転ファクターの詳細をはじめとするファクターによって変動する。約1:1〜約30:1の範囲の溶媒:芳香族供給原料の重量比が好ましく、約2:1〜約5:1がより好ましいが、より高い及びより低い比であって、数百:1の範囲であっても用いることができる。酸素ガスは、通常、芳香族供給材料を基準として少なくとも化学量論量で用いるが、反応条件、速度、液相反応から得られる高圧気相の有機成分を考慮して、可燃性の混合物が気相中に存在する程には多くない量で用いる。好ましい芳香族供給材料、溶媒モノカルボン酸、触媒組成物、及び運転条件を用いる商業的な運転においては、最も通常的には空気の形態で供給される酸素ガスを、好ましくは、芳香族炭化水素供給材料1モルあたり少なくとも約3〜約5.6モルの分子状酸素を与えるのに有効な速度で液相酸化工程に供給する。液相酸化工程から得られる高圧気相は、好ましくは、反応領域における気相の酸素含量が無溶媒基準で測定して約0.5〜約8容量%の酸素を含むような速度で反応から取り出す。他の条件が同じならば、液相酸化においてより多量又はより少量の触媒を用いることにより反応速度を増加又は減少させることなどによって気相の酸素含量を変動させることにより、酸化における副生成物の生成に影響を与えることができ、例えば約3容量%以下、或いは約0.5〜約2.5容量%のより低い気相酸素含量を用いると、芳香族カルボン酸への芳香族炭化水素供給原料のより完全な転化が起こり、次に芳香族供給原料の酸化副生成物が減少するが、溶媒副生成物の生成が増加する傾向がある。一例として、パラキシレン供給材料及び酸化のための溶媒として酢酸を用いる液相酸化においては、芳香族カルボン酸生成物を製造するために約0.5〜約3容量%の気相酸素含量が好ましく、この条件では、より高い気相酸素含量における運転と比較して、パラキシレン副生成物のレベルが減少するが、酢酸副生成物が増加する。触媒は、好適には、芳香族炭化水素供給原料及び溶媒の重量を基準として、約100ppmwより大きく、好ましくは約500ppmwより大きく、約10,000ppmw未満、好ましくは約6,000ppmw未満、より好ましくは約3,000ppmw未満の触媒金属の濃度で用いる。好ましくは、ハロゲン促進剤、より好ましくは臭素を含む促進剤を存在させる。かかる促進剤は、触媒金属に対するハロゲンの原子比が、好適には約0.1:1より大きく、好ましくは約0.2:1より大きく、好適には約4:1未満、好ましくは約3:1未満となるような量で存在させる。触媒金属に対するハロゲンの原子比は、最も好ましくは約0.25:1〜約2:1の範囲である。他の条件が同じならば、酸化反応混合物中における触媒濃度が増加すると、液相酸化における反応速度及び酸素の消費が増加し、酸化工程からの気相中の未反応の酸素のレベルが減少する。
【0034】
芳香族カルボン酸を含む生成物へ芳香族供給材料を酸化するための液相反応は、通常は1以上の酸化反応容器を含む好適な酸化反応領域において行う。好適な酸化反応容器は、反応領域において用いられ存在する高温及び高圧の条件並びに腐食性の液相及び気相内容物に耐え、触媒、液体及び気体状の反応物質、及び溶媒を添加及び混合し、芳香族カルボン酸生成物又はかかる生成物を含む液体をその回収のために取り出し、反応熱を制御するために液相反応によって生成する高圧気相を取り出すように構成及び構築されている。用いることのできる反応器のタイプとしては、連続撹拌タンク反応器、及びプラグフロー反応器が挙げられる。通常、酸化反応器は、通常は容器をプロセスで使用するために配置した際に垂直に伸長する中心軸を有し、液体反応物質を混合し、酸素ガスを液相沸騰反応混合物内に分配するための1以上の混合機構を有する円柱状の容器を有する。通常、混合機構は、回転可能か又は他の形式の動きが可能なシャフト上に載置された1以上のインペラーを有する。例えば、インペラーは、回転可能な中心縦シャフトから伸長することができる。反応器は、用いる特定の温度、圧力、及び反応化合物に耐えるように設計された材料で構築することができる。一般に、好適な酸化反応器は、チタンのような不活性の耐腐食性材料を用いるか、或いは少なくとも液体反応混合物及び反応オフガスが含まれる内部空間又は容積を画定するその表面をチタン又はガラスのような材料でライニングして構築される。
【0035】
液相酸化のための反応混合物は、芳香族供給材料、溶媒、及び触媒を含む成分を配合し、混合物に気体状酸素を加えることによって形成する。連続又は半連続法においては、成分は、好ましくは、酸化領域に導入する前に1以上の混合容器内で混合する。しかしながら、反応混合物を酸化領域内で形成することもできる。酸素ガス源は、1以上の場所で反応器中に導入することができ、通常は、分子状酸素と他の反応化合物との間の接触を促進させるような方法で、例えば反応容器の内部容積の下部又は中間部分内の液体中に圧縮空気又は他の気体状酸素源を導入することによって導入する。
【0036】
芳香族カルボン酸を含む生成物への芳香族供給材料の酸化は、液相反応混合物を保持し、液相反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び芳香族炭化水素前駆体の副生成物を含む不純物を形成し、その気体成分が、主として、溶媒モノカルボン酸(例えば、酸化反応溶媒が酢酸を含む場合には酢酸)及び水、並びに少量の溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物、例えば、低級アルコール及びその溶媒モノカルボン酸エステル(例えば、溶媒が酢酸を含む場合にはメタノール及び酢酸メチル)、並びに芳香族炭化水素供給材料の酸化副生成物、例えば部分的及び中間酸化生成物(例えば、芳香族供給材料がパラキシレンを含む場合には安息香酸及びp−トルイル酸)である高温及び高圧の気相を生成するのに有効な酸化反応条件下で行う。気相の溶媒副生成物の含量は、通常、約0.5〜約2重量%の範囲である。芳香族炭化水素前駆体副生成物のレベルは、通常、約0.01〜約0.05重量%である。高圧気相は、通常、気相中に入る未反応の芳香族供給材料及び酸素ガスも含む。商業的スケールの運転において通常実施されているように空気を用いるか、或いは窒素又は他の不活性ガス成分を含む他の酸素ガス源を用いる場合には、気相は、これらの不活性成分も含む。酸化によって生成する熱は、液相反応混合物を沸騰させ、反応領域から塔頂気相を取り出すことによって消費される。
【0037】
概して、液相反応の温度は、約120℃以上、好ましくは約140℃以上であるが、約250℃未満、好ましくは約230℃未満に保持する。テレフタル酸、安息香酸、及びナフタレンジカルボン酸のような芳香族カルボン酸生成物の製造においては、約145℃〜約230℃の範囲の反応温度が好ましい。約120℃未満の温度においては、液相酸化は、経済的に魅力がないか、或いは製品品質に悪影響を与える可能性のある速度又は転化率で進行する可能性がある。例えば、約120℃未満の温度でパラキシレン供給原料からテレフタル酸を製造すると、実質的に完了するまで進行させるのに24時間以上かかる可能性があり、得られるテレフタル酸生成物は、その不純物含量のために更なる処理が必要である可能性がある。250℃を超える温度は、望ましくない燃焼及び溶媒の損失の可能性のために好ましくない。液相反応混合物の圧力を用いて、液相反応混合物が沸騰する温度を制御することができ、これは実質的に液相の反応混合物が保持されるように選択される。約5〜約40kg/cm2ゲージの圧力が好ましく、特定のプロセスに関して好ましい圧力は、供給原料及び溶媒組成物、温度、及び他のファクターによって変動し、より好ましくは約10〜約30kg/cm2の範囲である。約7〜約21kg/cm2の反応圧力において、溶媒として酢酸を含む反応混合物、及び液相反応から得られる気相の温度は、約170〜約210℃である。反応容器内での滞留時間は、与えられた処理量及び条件に適するように変動させることができ、一定範囲のプロセスに対しては約20〜150分が一般的に適している。幾つかの芳香族カルボン酸の製造、例えば反応混合物のために酢酸溶媒を用いるパラキシレン供給材料からのテレフタル酸の製造のためには、沸騰液相反応混合物中の固形分含量は、液体反応混合物の約50重量%程度の高さであってよく、約10〜約35重量%のレベルがより通常的である。芳香族酸生成物が反応溶媒中に実質的に可溶であるプロセスにおいては、液体中の固形分濃度は無視できる量である。芳香族カルボン酸の製造における当業者には明らかなように、好ましい条件及び運転パラメーターは、異なる生成物及びプロセスによって変動し、上記に示した範囲内或いはこれを更に外れて変動する可能性がある。
【0038】
液相酸化反応の生成物は、芳香族供給材料から酸化された芳香族カルボン酸、液相反応の結果として生成した副生成物を含む不純物、及び、上記に記載したように、反応温度を制御するために気相を除去するための液相反応混合物の沸騰を含む液相反応から得られる高圧気相を含む。芳香族供給材料の副生成物の特定の例としては、トルイル酸、トルアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、及びヒドロキシメチル安息香酸のような部分的又は中間酸化生成物が挙げられる。液相反応の副生成物は、また、反応溶媒から酸化されたメタノール及び他の低級脂肪族アルコール、並びにかかるアルコールと溶媒との反応によって生成したエステル(例としては、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチルなどが挙げられる)のような溶媒反応生成物も含む。副生成物は、通常、液相酸化反応混合物及びそれから得られる気相のいずれか又は両方の中に存在する。炭素酸化物副生成物が、溶媒、供給材料、又はこれらの副生成物の酸化から得られる可能性がある。促進剤として臭素源を用いて液相反応を行う本発明の態様においては、副生成物は、通常、低級アルキル臭化物、例えば、反応溶媒として酢酸を用いる場合には、通常は臭化物イオンと酢酸との反応によって形成される臭化メチルも含む。上記に記載のように、これらの臭素含有副生成物及び不純物は、液相反応混合物及びそれから生成する高圧気相のいずれか又は両方の中に存在する可能性がある。本発明方法の幾つかの態様、例えば、液相酸化からの固体生成物を精製し、精製工程液体又はその成分を含む母液又は他の再循環流を、還流液として液相酸化又はオフガス分離工程に直接か又は間接的に移す態様においては、精製液体中に持ち越される安息香酸及びトルイル酸のような更なる副生成物、並びに精製工程から得られる種々の副生成物化合物の水素化誘導体、並びに精製工程中に持ち越される未反応の酸化工程への芳香族炭化水素供給原料も、液相酸化反応混合物及びオフガスに導入することができる。
【0039】
また、水も、酸化工程における液相反応の副生成物として生成する。しかしながら、水はそれへの添加の結果として液相反応混合物中にも存在する可能性があるので、例えば、モノカルボン酸水溶液溶媒を用いる場合、或いは他のプロセス工程からの再循環流においては、また、酸化工程において存在する相当量の水のために、副生成物としてか又は意図的な添加としてかに拘わらず、且つ反応水と意図的に加えられた水との間の識別が不可能であるか又はその必要がないために、本明細書において用いる「液相反応の副生成物」という表現及び同様の表現は、他に示さない限り、水を指さない。同様に、本明細書において種々のプロセス液体、気体、又は流れの成分として水又は水蒸気を説明する場合には、他に示すか又は記載から明らかである場合を除き、水が液相酸化工程からの副生成物水であるか、プロセス中に意図的に加えられたものであるか、或いは両方のものであるかは問わない。
【0040】
液相酸化工程からの液体反応混合物の一部の中にスラリー化又は溶解している芳香族カルボン酸反応生成物は、その中に含まれる芳香族カルボン酸反応生成物を回収するために任意の好適な方法を用いて処理することができる。通常、液体反応混合物中にスラリー化、溶解、又はスラリー化且つ溶解している芳香族カルボン酸生成物及び酸化工程への芳香族供給材料の副生成物は、液相反応に用いた反応領域から取り出し、好適な方法によって回収する。而して、本発明方法による液相酸化工程は、酸化反応に加えて、液相酸化反応混合物から、芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物を含む生成物を回収することを含む工程を含むことができる。生成物は、好ましくは固体生成物として回収する。
【0041】
液体中に溶解した可溶性生成物は、結晶化によって回収することができ、これは、通常、酸化反応領域から取り出された液体スラリー又は溶液を冷却し、それにかかる圧力を解放することによって行う。液体中にスラリー化している固体生成物、及び反応液体又は結晶化溶媒から結晶化された固体は、遠心分離、濾過、又はこれらの組み合わせによって液体から好都合に分離することができる。かかる方法によって反応液体から回収される固体生成物は、芳香族カルボン酸、及び芳香族供給材料の副生成物を含む不純物を含む。液体反応混合物から固体生成物を回収した後に残留する液体は、酸化母液とも称され、溶媒モノカルボン酸、水、触媒及び促進剤、液相酸化の可溶性副生成物、及び再循環流からのもののような存在する可能性のある不純物を含む。母液は、通常、少量の芳香族カルボン酸、及び液体から未回収で残留する芳香族供給材料の部分的又は中間酸化生成物も含む。母液は、好ましくは、少なくとも一部を少なくとも一つの液相酸化工程の反応領域に戻して、触媒、促進剤、溶媒、及び所望の芳香族カルボン酸に転化することのできる副生成物のような液相反応において有用なその成分を再使用することができるようにする。
【0042】
本発明の好ましい態様においては、芳香族カルボン酸及び液相酸化反応の副生成物を含む酸化工程からの液相反応混合物を、単一の結晶化容器、或いは初めの段階から後の段階へ温度及び圧力を逐次的に低下させて生成物回収率を増加させる一連の結晶化容器中での処理のような、1以上の段階での結晶化によって液体から回収する。例えば約140〜約250℃の範囲の酸化反応温度及び約5〜約40kg/cm2ゲージの範囲の圧力から約110〜約150℃の範囲の最終結晶化温度及び雰囲気圧〜約3kg/cm2の圧力での、二段階〜四段階の結晶化によって、固体芳香族酸生成物の実質的な結晶化が与えられる。結晶化によって固体生成物から分離された母液は、上記に記載のようにして液相反応工程に戻すことができる。反応液体のフラッシング又は他の圧力降下の結果として形成される気相を除去することによって結晶化のために用いた容器から熱を除去し、好ましくは1以上の段階から取り出される気相を凝縮し、以下に説明するように、直接、又は1以上の更なる回収段階を介して間接的に、少なくとも一部を液相酸化において用いるために反応領域に戻す。
【0043】
通常は芳香族カルボン酸、及び芳香族供給材料の中間酸化生成物のような酸化副生成物を含む不純物を含む、液相酸化工程から回収される固体生成物は、任意の好適な方法によって、固体生成物の回収から得られる液体酸化母液から分離することができる。例としては、遠心分離、真空濾過、加圧濾過、及びベルトフィルターを用いた濾過が挙げられる。得られた固体生成物は、好ましくは、分離した後、純水のような水を含み液体、或いは、直接か又は反応領域に戻される酸化母液再循環流又は他の液体のような他の液体と組み合わせて酸化工程に有益に再循環することのできる、少量の溶媒モノカルボン酸、触媒、芳香族供給原料、酸化副生成物、又はこれらの組み合わせを含む洗浄液で洗浄する。回収された固体の不純芳香族カルボン酸の酸化母液からの分離、及び固体生成物の洗浄は、米国特許5,679,846、及び米国特許5,200,557に開示されているような加圧フィルターを用いる加圧下での溶媒交換濾過によって好都合に行うことができる。かかる分離法のために好ましい濾過装置は、米国特許5,200,557により詳しく説明されているようなBHS Festフィルターである。濾過ケーキから取り出される母液及び洗浄液は、直接又は間接的に液相酸化工程に移すことができる。多段階で、純度を増加させた洗浄液を用いて、例えば下流段階においてフィルターケーキから取り出された液体をより前段階における洗浄液として用いて固体生成物の濾過及び洗浄を行うことにより、酸化工程に戻すために濾過した固体から置換される溶媒モノカルボン酸を濃縮することによって更なる有利性が得られる。より具体的な態様においては、かかる容積式濾過から得られる洗浄液で湿潤している濾過ケーキを、最終洗浄段階から乾燥段階に送り、ここで場合によっては、ケーキから残留液体を実質的に除去するために、通常は弱〜中程度の加圧下で不活性ガスと接触させる。芳香族酸及び副生成物を含む固体生成物を洗浄し、それから洗浄液を実質的に除去した後、得られる固体を乾燥して、保管工程、或いは固体生成物の精製のための反応溶液の調製を含むことができる他の工程に送ることができる。好ましくは、精製工程に送られる固体生成物中の残留溶媒モノカルボン酸のレベルは、約5,000ppmw以下である。固体生成物は、窒素又は他の不活性ガスの流通流で乾燥して、残留溶媒レベルを減少させることができる。
【0044】
本発明方法による酸化工程の液相反応において形成される芳香族カルボン酸反応生成物に加えて、上記記載のような溶媒モノカルボン酸、水、及び液相酸化の副生成物を含む高圧気相が生成する。この気相は、通常、少量の未反応芳香族供給材料、未消費の酸素ガス、及び存在する場合には酸素源の不活性成分も含む。反応領域中に存在する気相の温度及び圧力は、液相反応の条件に対応する。本発明によるオフガス分離によって、液相酸化反応から回収された高温で高圧のオフガスからの物質の回収、及び幾つかの態様においてはエネルギー並びにこれらの組み合わせの回収が与えられる。
【0045】
本発明方法によるオフガス分離は、芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物が第1の液相に優先的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に優先的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、及び酸化副生成物を、少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸が消耗した水蒸気を含む第2の高圧気相に実質的に分離することのできる分離領域に、液相酸化の反応領域から取り出された気相を移すことを含む。溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相が、分離領域から取り出される。分離は、高圧気相で、それから気相が取り出される液相酸化工程における気相の温度及び圧力よりも実質的に低くない温度及び圧力において行う。
【0046】
より詳しく説明すると、分離工程は、分離工程から取り出される液相の溶媒副生成物の含量及び気相の芳香族炭化水素酸化副生成物の含量が最小になるように、高温及び高圧において気相で運転して気相中の水及び溶媒モノカルボン酸を実質的に分離し、酸化からの副生成物を分離工程から得られる液相及び気相の中に分配することのできる分離領域に、液相酸化のために用いた反応容器から取り出された高温及び高圧の気相を送ることを含む。高圧の気相は、分離装置が酸化反応容器又は他の反応領域に直接又は近接して載置されている場合のように、液相酸化工程の反応領域から分離領域に直接、或いは例えば移送を行うための好適な導管、バルブ、ポンプなどによって間接的に移すことができる。液相酸化工程からの高圧及び高温の気相の少量を、高圧蒸気又は熱交換流体の生成のような他の用途に送ることができる。好ましくは、分離工程に送られる気相は十分に高い温度及び圧力を保持しているので、分離領域に導入される気相のエネルギー含量は少なくとも実質的に保持され、気相は分離領域に供給される還流液と接触して分離するための十分な熱を与える。最も好ましくは、分離領域への気相の移送は、分離領域へ導入される気相の温度が液相酸化工程における反応温度よりも約10℃以上低くならず、分離領域へ導入される気相の圧力が液相酸化工程における圧力よりも約3kg/cm2以上低くならないように、反応領域から直接的に流路によって又は好適な圧力定格配管を通して行う。分離領域は、また、高温及び高圧で、好ましくは反応領域中に存在する高圧気相の温度及び圧力よりも実質的に低くない温度及び圧力で運転して、反応領域からの気相のエネルギー含量の損失を避けるように設計される。より好ましくは、分離領域は、酸化工程における気相の圧力の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更に好ましくは少なくとも約95%の圧力下で気相を処理するように設計される。分離領域の装置の圧力定格は、好ましくは、それから気相が分離工程に送られる本発明方法の酸化工程の酸化反応容器又は領域の定格の少なくとも約80%、より好ましくは約90〜約110%である。分離領域における気相の温度は、好ましくは約140〜約200℃、より好ましくは約160〜約185℃の範囲である。約5〜約40kg/cm2の圧力が好ましく、約10〜約20kg/cm2がより好ましい。
【0047】
分離領域は、分離工程に導入された高圧気相中の溶媒モノカルボン酸及び水蒸気を実質的に分離することができる。好ましくは、分離領域は、分離工程から得られる高圧ガスが、分離領域に導入された気相の約10%以下、より好ましくは約5%以下の溶媒モノカルボン酸含量を含むように、高圧気相中の水及び溶媒を分離することができる。より好ましくは、分離工程からの第2の高圧気体流出流の溶媒モノカルボン酸含量は、分離領域に導入される気相の溶媒モノカルボン酸含量の約2%以下、より好ましくは約1%以下である。分離領域は、また、酸化工程への芳香族供給材料の副生成物を少なくとも一つの液相に、及びそうでなければ通常は分離を行う温度及び圧力において気相及び液相の両方に分配される溶媒モノカルボン酸の副生成物を第2の高圧気相に優先的に分配するように適合されている。例えば、酢酸溶媒を含む液相反応混合物中でのパラキシレン供給材料の液相酸化の場合においては、パラキシレンの安息香酸及びp−トルイル酸副生成物、及び酢酸のメタノール及び酢酸メチル副生成物を、実用上大きなレベルで気相及び液相の間に分配することができる。分離領域は、第2の高圧気相が、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まず、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約1〜約5重量%を含むように副生成物を分配することができる。好ましくは、第1の溶媒モノカルボン酸に富む液相、及び第2の水に富む液相に取り出される芳香族炭化水素前駆体の副生成物は、より好ましくはその約75重量%、更に好ましくは少なくとも約85重量%〜約100重量%が第1の液相中に存在し、その約25重量%以下、更に好ましくは約2〜10重量%が第2の液相中に存在するように、第1相に優先的に分配される。アルコール及びその溶媒酸エステルを含む溶媒モノカルボン酸の副生成物は、好ましくは第2の水に富む液相が約10重量%以下、より好ましくは約1〜約4重量%のかかる副生成物を含むように、導入高圧気相中の水及び溶媒モノカルボン酸の分離から得られる第2の高圧気相に好ましく分配される。
【0048】
本発明によるオフガス分離のための分離領域は、上記に記載のように、液相酸化工程から取り出された高温及び高圧の気相中の溶媒モノカルボン酸及び水を実質的に分離して、高温及び高圧で装置中に存在する酸化副生成物を分配して、溶媒モノカルボン酸に富む液相、水に富む第2の液相、及び水を含む第2の高圧気相を得るのに好適な任意の装置又は手段を含むことができる。
【0049】
一態様においては、好ましい分離領域は、液相反応領域から分離領域に導入される高圧気相中の溶媒モノカルボン酸が、気相から液相に実質的に取り出されて、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相を形成し、且つ得られた溶媒モノカルボン酸が消耗した高圧気相からの水が、水に富む第2の液相を分離領域から抜き出すために還流液相中に取り出されるように、蒸気と、それを通して対向流で流れる還流液相との接触を行わせるように適合されている。分離における条件下で気相及び液相の両方に分配される傾向を有する液相酸化工程へ供給される芳香族供給原料の酸化副生成物は、液相酸化工程から分離領域に導入される高圧気相中に存在し、それに供給される還流液中で分離領域中に導入される可能性もある。酸化工程からの高圧気相から溶媒モノカルボン酸が取り出される液相に分配されたかかる副生成物は、第1の液相中に取り出すことができる。溶媒モノカルボン酸が消耗した気相中に存在するかかる副生成物は、更に、還流液相との接触によって溶媒が消耗した気相から水が取り出される液相に分配され、その中にも導入される。気相及び液相の間に分配される傾向を有する溶媒モノカルボン酸の副生成物は、分離領域に導入される酸化工程からの高圧気相中に存在する可能性がある。また、これらは、分離領域に供給される還流液中に存在する可能性もある。分離装置において還流液相中に存在するかかる副生成物は、還流液によって気相からストリッピングされる。
【0050】
かかる分離装置内における還流液の流れは、気相から液相に取り出されたか又は分配された液体成分、並びに液相中に存在するか又は残留する分離領域に供給される還流液の成分を含む。
【0051】
本発明のより具体的な態様にかかる好ましい分離領域は、分離領域の複数の部分又は区域を通して、対向流で、液相と気相との間の段階的な接触を行うように構成される。気相流は、好ましくは分離領域の複数の部分を通る上昇流であり、液相流は、好ましくはそれを通る下降流である。水、溶媒モノカルボン酸、及び副生成物の分離は、分離領域の第1の部分を通って第2の部分、更に第3の部分への気相流が、分離領域の第3の部分を通って第2の部分、更に第1の部分への還流液相の対向流と接触するように、反応領域から取り出された高圧気相を分離領域の第1の部分へ、還流液を分離領域の第3の部分へ送ることによって行う。第3の部分へ供給される還流液は、水を含み、好ましくは液相酸化のための芳香族供給材料の酸化副生成物を実質的に含まない。対向して流れる気相及び還流液相中の水及び溶媒モノカルボン酸は、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び高圧の溶媒モノカルボン酸が消耗した中間気相が形成されるように、第1の部分において実質的に分離される。第1の部分からの溶媒に富む第1の液相は、分離領域から取り出すために集められる。分離装置の第1の部分から第2の部分への気相流は、第1の部分からの中間気相を含む。第2の部分において、対向して流れる気相及び還流液相中の水及び副生成物は、芳香族炭化水素前駆体の副生成物が還流液相に取り出され、溶媒モノカルボン酸及び芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない水蒸気を含む高圧の第2中間気相が形成されるように、分離される。分離領域の第2の部分から第3の部分への気相の流れは、第2の中間気相を含む。第3の部分において、対向して流れる気相及び還流液相中の水及び溶媒モノカルボン酸の副生成物は、溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び水蒸気及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含み、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相が形成されるように、分離される。第3の部分からの水に富む第2の液相は、その中に第1の液相が抜き出されるものとは別の液体流で、分離装置から抜き出すために集められる。第2の高圧気相は、排出ガスとして分離装置から取り出される。分離領域を通る還流液相の流れは、水を含む更なる還流液を分離領域の1以上の部分に供給することによって補うことができる。好ましい態様においては、水含有液体は、かかる分離領域の第2の部分と第3の部分との間に更なる還流液として供給される。
【0052】
かかる段階的分離において、分離領域の第1の部分は、好ましくは、溶媒の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも約98重量%が第1の液相に取り出されるように、溶媒モノカルボン酸及び水を分離することができる。第2の部分は、好ましくは、液相酸化のための芳香族前駆体の副生成物を、第2の高圧気相が、第1及び第2の液相及び第2の高圧気相中に存在するかかる副生成物の量の約10%以下、より好ましくは約1〜約5%を含むように、第1及び第2の液相に分配することができる。分離領域の第3の部分は、好ましくは、溶媒モノカルボン酸の液相酸化副生成物を、第2の液相が、第1及び第2の液相及び第2の高圧気相中に存在するかかる副生成物の量の約10%以下、より好ましくは約1〜約4%を含むように、第2の高圧気相に分配することができる。
【0053】
好ましい態様においては、分離領域の第1の部分は、液相酸化工程から分離領域中に取り出された高圧気相を受容するための流入口と、水含有液体を還流液として分離領域に導入するための流入口との間に配置された分離領域の区域として画定される。分離領域の第2の部分は、水含有液体を還流液として第1の部分に供給するための流入口と、第3の部分から収集される水に富む第2の液相を取り出すための流出口との間に配置された領域の区域によって画定される。第3の部分は、第3の部分から収集される水に富む第2の液相を取り出すための流出口と、液相酸化のための芳香族供給材料の酸化副生成物を実質的に含まない水含有液体を分離装置に導入するための流入口との間の区域として画定される。
【0054】
本発明の幾つかの態様によれば、水、溶媒モノカルボン酸、及び副生成物を分離及び選択分配するための分離領域は、液相酸化工程からの高圧気相中の水及び溶媒モノカルボン酸を実質的に分離するための、少なくとも約20理論平衡段を有する分別領域を含む。より好ましくは、かかる分別領域は、約20〜約60の理論平衡段を有する。少なくとも約2の理論平衡段を有する分別領域が、水、及び芳香族供給材料の酸化副生成物を分離するために好ましい。より好ましくは、かかる分別領域は、約2〜約10の理論平衡段を与える。水及び溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物を分離するための分別領域は、好ましくは、少なくとも1、より好ましくは約1〜約10の理論平衡段を有する。
【0055】
好ましい分離装置は、気相と液相との間の物質移動のために、しばしば「理論段」と称される、流動する気相及び液相の成分を分離し選択的に分配するように構成された多数の理論平衡段で、それを通って流れる気相と液相との間の接触を行うように設計された、しばしば蒸留カラム及び塔、脱水塔、精留カラム、水除去カラム、及び高効率分離装置と称される種々のカラム又は塔である。流動する気相と液相との間の接触は、気液接触のための表面及び分離のための理論平衡段を与えるトレー又は充填材のような内部構造によって促進される。酸化工程から取り出された高圧気相の温度は、通常、十分に高く、液相酸化反応によって与えられたものを超えて再沸騰させる能力は必要ない。酸化工程からの高圧気相を装置の下部部分において導入し、還流液を少なくとも一つ、好ましくは2以上の上部部分において導入するなどして気相及び液相の対向流を形成することが、分離装置での気相と液相との間の接触を促進させるために好ましい。
【0056】
本発明による分離領域は、単一の装置、或いは塔、カラム、又は他の構造物のような多数の装置を直列で有することができる。2以上の装置を直列で用いる場合には、それらは、酸化反応容器から取り出された高圧気相が、一連の装置中に流れ、一連の装置の中をこれを通って流れる蒸気及び還流液の反対方向の流れの中の溶媒モノカルボン酸、水、及び副生成物の分離及び分配が行われるように、構成され、それぞれの流入口及び流出口が連通される。
【0057】
分離領域に供給される還流液は、水を含む。水を含み、分離に有害な不純物を実質的に含まない任意の好適な液体源を利用することができる。脱塩水又は他の精製源を用いることができるが、還流液の好ましい源としては、本発明方法による分離及び/又は凝縮領域から取り出される高圧ガスから凝縮された液体が挙げられる。他の好ましい態様においては、分離工程への還流液が精製母液を含むように、少なくとも一つの精製液体反応混合物からの精製芳香族カルボン酸生成物の回収において得られる精製母液を分離工程に送る。最も好ましくは、分離工程のための還流液は、かかる精製母液、及び分離領域から取り出された高圧ガスから凝縮された水含有液体を含み、これは、個別に、或いは1以上の個々の流れで組み合わせて分離工程に供給することができる。
【0058】
上記に記載した本発明の好ましい態様による段階的分離においては、精製母液を含む還流液を、領域の第2の部分を通してその液相成分を流すために分離領域に導入し、分離領域から取り出された第2の高圧気相から回収された凝縮液を、第3の部分を通して流すために導入する。精製母液は、通常、精製工程から得られるその水素化誘導体をはじめとする液相酸化への芳香族供給材料の副生成物を含むが、かかる副生成物は、分離工程において回収される液相、主として調整溶媒を与えるために酸化工程に戻すのに好適な溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相に選択的に分配される。分離領域から取り出された第2の高圧気相から凝縮された水含有液体は、芳香族供給材料の副生成物を実質的に含まないが、分離工程において第2の高圧気相中にストリッピングされ、次に第2の高圧ガスから凝縮される水含有液体中に存在する可能性がある溶媒モノカルボン酸の副生成物を含む可能性がある。分離領域の第3の部分に供給される還流液中で分離工程に戻されるかかる副生成物は、分離工程において第2の高圧気相中に再びストリッピングされる。分離工程からの第2の高圧気相から回収される凝縮液の一部を、パージするか或いはかかる副生成物の回収のための処理に送る本発明の好ましい態様においては、かかる副生成物の望ましくない蓄積が抑制される。
【0059】
還流液は、好ましくは、酸化工程から気相で、分離領域に移される液相酸化反応の熱を冷却するのに有効な速度及び温度で供給する。分離領域が、気相を酸化工程から分離工程へ実質的に直接移送するための液相酸化からの反応容器に接続している場合には、反応容器はリボイラーとして機能する。かかる態様においては、液体還流液を分離領域に供給する速度は、好都合には、液相酸化工程に導入される芳香族供給材料の重量に対する、領域に提供される液体の重量として表される。好ましくは、本発明方法によって分離領域に提供される還流液は、約120〜約170℃、より好ましくは約130〜約160℃の範囲の温度である。かかる温度においては、液体は、好ましくは、液相酸化工程に導入される芳香族前駆体の重量に対して約4〜約5重量部の液体の速度で分離工程に供給される。還流液を分離領域の異なる段階に別々に供給する場合には、それは、好ましくは、分離領域の第1段階へ供給される還流液が、還流液の流量の少なくとも40%、より好ましくは約60〜約90%を構成するように、異なる段階の間に分配する。
【0060】
液相酸化工程から取り出され、分離領域中に導入される高圧蒸気流中に含まれる水及び溶媒モノカルボン酸の蒸気は、水が欠乏した溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相が回収されるように分離される。分離された第1の液相は、好ましくは、少なくとも約60重量%の溶媒モノカルボン酸、及び約35重量%以下の水を含む。より好ましくは、分離された液相の水含量は、約15〜約30重量%である。分離工程からの液体流は、また、分離領域において洗浄されるか又は第1の液相中に移される、少量のより重質の不純物、例えば芳香族供給材料の部分的又は中間酸化副生成物、及びその水素化誘導体、例えば安息香酸、並びに、酸化において用いる芳香族前駆体に依存して、m−トルイル酸及び/又はp−トルイル酸も含む。第1の液相は、また、芳香族カルボン酸生成物及び触媒金属のような他の成分も含む可能性がある。かかるより重質の成分の含量は、約2重量%程度の高さであってよいが、好ましくは約0.5重量%以下である。
【0061】
分離領域において気相から凝縮された溶媒モノカルボン酸に富む液相は、液相酸化のための溶媒の有用な源である。上記に記載したように、これは、また、芳香族供給材料の酸化副生成物、及び酸化工程に戻して、所望の芳香族カルボン酸に転化するのに好適な他の成分も含む可能性がある。液体凝縮物に関する他の好適な用途としては、酸化母液又は結晶化溶媒から回収された液相酸化の固体生成物を固液分離するために用いるロータリー真空フィルター又は他の装置のための洗浄液、並びにプロセスにおいて用いる場合には酸化乾燥器スクラバーのようなスクラバーに対する補充液が挙げられる。本発明方法の好ましい態様においては、分離領域から取り出された分離された第1の液相の少なくとも一部、より好ましくは全部又は実質的に全部を、反応容器に直接か、或いは反応領域へ補充溶媒を供給するために用いる保持容器に供給して、液相酸化工程に戻す。かかる態様においては、分離領域に導入される高圧気相中の水及び溶媒モノカルボン酸は、分離工程から得られる液相が約15〜約30重量%の水を含み、より好ましくは分離された液体の水含量、及びプロセスからの他の液体流中で酸化工程に戻される水が、酸化工程の芳香族カルボン酸生成物を回収及び分離するために酸化工程から取り出された高圧塔頂気相及び液体水中で、酸化工程から取り出された水蒸気と実質的に均衡するように分離される。
【0062】
分離工程から回収される第2の液相は、水に富み、液相酸化工程からのその溶媒モノカルボン酸副生成物を実質的に含まない。これは、本発明による分離においてかかる副生成物を液相に選択的に分配する結果、少量の液相酸化への芳香族供給材料の副生成物も含む可能性がある。第2の液相の溶媒モノカルボン酸の含量は、通常、約5重量%未満、好ましくは約1/2〜約3重量%である。溶媒副生成物のレベルは、通常、約1重量%以下、好ましくは約0.05〜約0.2重量%である。第2の液相中に存在する芳香族供給材料の副生成物は、通常、約0.003〜約0.1重量%、好ましくは約0.005〜約0.05重量%の範囲である。かかる液体は、本明細書においてより詳しく説明するように、不純形態の芳香族カルボン酸を精製するためのプロセスの1以上の工程において水含有液体として用いるのに好適である。第2の液相に関する他の用途としては、酸化母液を分離するために用いる固液分離装置に対するシールフラッシュ液、及び液相酸化反応混合物から回収された不純固体芳香族カルボン酸生成物からの洗浄液が挙げられる。
【0063】
分離工程から得られる第2の高圧ガスは、相当量の水を含み、溶媒モノカルボン酸を比較的含まない。好ましくは、このガスは、少なくとも約55容量%、より好ましくは少なくとも約65容量%の水を含む。このガスの溶媒モノカルボン酸含量は、概して、約5重量%未満、好ましくは約3重量%未満である。このガスは、また、未反応の芳香族供給材料及び液相酸化の副生成物も含む可能性があるが、これらは通常、約2重量%以下の少量又は微量で存在する。分離工程からの加圧ガスの酸素ガス含量は、通常、約4容量%以下、好ましくは約1〜約4容量%の範囲である。通常は窒素及び炭素酸化物をはじめとする酸素源の不活性ガス成分は、加圧ガスの約45容量%以下を構成することができ、気体酸素源として空気を用いる場合には、加圧ガスの窒素含量は、通常、約30〜約40容量%の範囲である。
【0064】
好ましくは、分離工程からの第2の高圧気相の圧力は、液相酸化反応における圧力よりも約1kg/cm2ゲージ以下低い。分離工程からの高圧ガスの温度は、好ましくは、液相酸化反応の温度よりも約20℃以下低く、好ましくは酸化反応温度よりも約5℃〜約15℃低い。好ましくは、分離工程からの高圧ガスは、約100℃より高く、より好ましくは約120℃より高く、約250℃未満、より好ましくは約230℃未満の温度である。分離の後に残留する加圧ガスの圧力は、約4〜約40kg/cm2ゲージである。
【0065】
分離工程から取り出された第2の高圧気相は、酸化工程からの溶媒モノカルボン酸及び芳香族供給材料及び溶媒の副生成物のような有機不純物を実質的に含まない水含有液体凝縮物を気相から凝縮するために、凝縮領域に送ることができる。凝縮領域は、凝縮領域に導入される高圧ガスから有機不純物を実質的に含まない水を凝縮するのに有効な任意の手段を有することができる。好ましくは、これは、高圧気相と、吸熱材料、好ましくは熱交換流体との間の間接的な熱移動を与えるのに有効な1以上の凝縮器又は熱交換手段を含む。単一の装置、又は直列の多数の装置を用いることができる。シェル・チューブ型の熱交換器及びケトル型の凝縮器が、好ましい装置の例である。好ましくは、それから熱エネルギー及び物質の両方を実質的に回収することを可能にするために、分離工程からの高圧蒸気の全部又は実質的に全部を凝縮領域に送る。冷却は、好ましくは、凝縮領域に導入されるガスの圧力から実質的に減少していない圧力下の凝縮領域排ガスが、液体凝縮物を凝縮した後に残留し、凝縮手段から回収されるような条件下で行う。この加圧凝縮領域排ガスは、分離領域からの高圧ガスの凝縮できない成分、気体反応副生成物を含み、また、液相酸化オフガス、或いは分離工程に送られて第2の高圧気相中に未分離で残留する還流液からの少量の芳香族供給材料も含む可能性がある。凝縮領域からの排ガスは、最も好ましくは、約50〜約150℃の温度で、凝縮領域への導入ガスの圧力よりも約3kg/cm2以下低い圧力下である。より好ましくは、分離装置から取り出されるガスと、液体凝縮物の凝縮後の凝縮領域排ガスとの間の圧力差は、約2kg/cm2以下、最も好ましくは約0.5〜約1kg/cm2である。
【0066】
凝縮領域における吸熱材料による熱交換による高圧ガスの冷却は、また、吸熱材料を加熱するのに役立つ。吸熱材料は、好ましくは吸熱流体、最も好ましくは水である。熱交換流体として水を用いる場合には、分離工程からの高圧ガスによる熱交換によって、水が蒸気に転化され、これは加熱のためか又はプロセスの外部で用いるために本発明方法の他の部分に送ることができる。同様に、加圧ガスと他のプロセス工程からの液体との間の熱交換を、かかる液体を加熱するために用いることができる。而して、本発明は、異なる圧力の蒸気が熱交換水から生成するように、凝縮領域に導入される分離領域からの高圧ガスと、水を含む熱交換流体との間の熱交換を、逐次的により低い温度で運転する一連の熱交換器内で行う態様を包含する。異なる圧力の蒸気は、好ましくは、対応する一つ又は複数の圧力下の蒸気が加熱のために有用である1以上のプロセス工程に送り、一方、逐次的により低い温度の水含有液体凝縮物が加圧ガスから生成する。
【0067】
凝縮領域からの排ガスから、エネルギーを、熱の形態、仕事の形態、或いは両方として回収することができる。プロセスのための熱としてエネルギーを回収することにより、そうでなければプロセスのための熱を生成するのに必要な燃料の消費を減少することができる。仕事として回収されるエネルギーは、プロセスにおいて用いるための電力に変換することができ、これによってプロセスにおいて用いる場合には外部源からの電力の消費を減少することができる。
【0068】
本発明の好ましい態様は、凝縮領域に送られた高圧ガスの全部又は実質的に全部を凝縮することを含むが、本発明の幾つかの態様においては、ガスの水分含量の一部のみが凝縮されるようにガスから熱エネルギーを抽出することによって、或いは分離工程からの第2の高圧気相の一部を凝縮手段に送り、他の部分を機械的エネルギーに変換することによってエネルギーを回収するための手段に送ることによって、分離領域から取り出された高圧ガスの凝縮を行う。分離工程から取り出された第2の高圧気相を部分的に凝縮するか、或いはその流れをその一部のみを凝縮するために分割することによって、仕事の形態で更にエネルギー回収を行うために高圧凝縮領域排ガス中に未凝縮の水を残しながら、低い有機不純物量を有し、上記記載のように分離工程のための還流液として有用な実質的に純粋な水含有液体凝縮物を回収し、高圧ガスを冷却して液体凝縮物を凝縮することで熱交換流体に移される熱エネルギーを回収することが可能になる。
【0069】
本発明の他の態様によれば、酸化からの高圧気相中のモノカルボン酸及び水並びに酸化副生成物の分離からの第2の高圧気相の全て又は実質的に全てを、吸熱流体による熱交換によって凝縮する。分離工程からの高圧ガスの凝縮可能な成分の全て又は実質的に全てを凝縮することにより、凝縮した後に残留するガスの引き続くプロセス工程への流量が減少し、プロセス中に含ませることのできる引き続くオフガス処理工程のための装置において、より高価なより高度に耐腐食性の金属又は合金に代わるものとして、ステンレス鋼、軟鋼、又は二相鋼のような低いか又は中程度の耐腐食性しか有しない金属を使用することが可能になる。また、分離工程から取り出された高圧ガスの凝縮可能な成分を実質的に完全に凝縮することにより、本発明方法によって生成する有機不純物を実質的に含まない水含有液体凝縮物の容量が増加し、凝縮後に残留する未凝縮の気体中に残留する芳香族供給材料及び溶媒モノカルボン酸又はその液相酸化副生成物のより向上した回収が容易になる。
【0070】
凝縮は、単一の工程で行うことができる。また、それは、分離領域から取り出された高圧ガスを含む気体流を第1段階において第1の温度に冷却して第1段階凝縮液、及び気体の未凝縮部分を与え、これを次に第2段階においてより低い温度で凝縮して第2段階凝縮液及び第2段階に導入された気体の未凝縮部分を与える多段階工程、並びに場合によっては前段階からの気体の未凝縮部分を前段階よりも低い温度で凝縮して液体凝縮物及び残留未凝縮気体部分を形成する1以上の更なる段階で行うこともできる。段階的凝縮器において加圧ガスとその未凝縮部分との間の熱交換を行うことにより、異なる温度又は圧力の熱交換流体、例えば温和及び低い圧力の蒸気が得られ、これは他のプロセス工程又はプロセスの外部において加熱のために用いることができる。本発明の好ましい態様においては、2以上のレベルの蒸気がエネルギー回収のために生成し、エネルギー回収は、凝縮又は他の低圧蒸気タービンを用いて好都合に行われる。かかる態様においては、異なる温度において取り出される凝縮液を対応する温度の他のプロセス用途に送って、これによって凝縮液部分の更なる加熱又は冷却を回避し、且つ幾つかの場合においては、凝縮液が再循環される工程における溶媒モノカルボン酸酸化副生成物のような不純物の蓄積を制限することができる。例えば、より高い温度、例えば約130〜約160℃の範囲の温度で回収される凝縮液は、更なる熱の投入を僅かにしか行わないか又は全く行わないで、そのままか、或いは精製工程において精製芳香族カルボン酸を回収及び/又は分離した後に残留する母液のような他のプロセス工程からの水性液体と組み合わせて、分離工程への還流液として適切である。かかる高温の凝縮液は、分離工程への還流液として用いると、液相酸化において溶媒副生成物として生成し、より低温の凝縮液中により高濃度で凝縮される傾向を有する低級アルコール及びその溶媒モノカルボン酸エステルのような軽質成分のより低い含量のために、更なる有利性が与えられる。また、より低い温度、例えば約60〜約90℃の範囲の温度での凝縮液は、液相酸化工程、精製工程、又は両方の工程における生成物分離のための洗浄液及びシールフラッシュ液のような熱凝縮液用途にも適しており、更に低い温度、例えば約40〜約50℃の範囲の温度の凝縮液は、スクラバー洗浄液のような冷凝縮液用途に適している。凝縮液を適合しうる温度の他のプロセス用途に送ることができるように異なる温度で凝縮を行うことによって、本発明方法における有益なエネルギー管理のための選択肢が与えられるが、他の工程において用いるのに必要か又は好ましいより高いか又はより低い温度で凝縮した液体凝縮物の部分又は流れは、かかる他の工程において用いるために、所望のように、例えば熱交換によって冷却又は加熱することができることが好ましいであろう。
【0071】
凝縮領域からの排ガスは、好ましくは加圧下であり、本発明の好ましい態様によれば水蒸気を実質的に含まないが、凝縮工程における凝縮の程度によって分離工程からの第2の高圧気相からの水の一部が残留する可能性がある。排ガス中に存在する可能性のあるかかる水蒸気に加えて、このガスは、酸化工程からの未反応の酸素、窒素、炭素酸化物、及び酸化のための酸素源中に存在する場合には他の不活性気体成分、及び炭素酸化物のような液相酸化オフガスからの凝縮できない成分を含む可能性があり、また、少量の酸化工程からの溶媒モノカルボン酸副生成物、及び微量の溶媒モノカルボン酸、他の酸化副生成物、並びに他の工程において取り出されなかった未反応の芳香族炭化水素供給材料を含む可能性がある。凝縮後に残留する未凝縮の排ガスが実質的に水を含まないように、排ガス中の水を液体凝縮物に実質的に完全に凝縮する場合であっても、排ガスの圧力は十分に高く、特に酸化工程から取り出される気相、及び次には分離及び凝縮領域からの加圧ガスが相当量の不活性ガス含量を有するように、液相酸化のための気体酸素源が、相当な不活性ガス含量を有する空気又は他の気体混合物である場合には、凝縮領域排ガスの容量は、エネルギーの回収ための有用な源となり得るようなものである。
【0072】
本発明の幾つかの態様によれば、凝縮工程からの加圧排ガスからエネルギーを回収することができる。好ましくは、エネルギーは、仕事の形態で回収する。これらの態様においては、凝縮領域からの排ガスを含む加圧気体流を、直接か又は間接的に、仕事としてエネルギーを回収するための装置に送る。好ましいエネルギー回収装置は、加圧下の気体流を受容するように適合され、流動気体によって回転することのできるブレードが取り付けられ、これによって他のプロセス工程又はプロセスの外部において有用な仕事、及び減圧下の冷却気体を生成する、膨張器又は同様の装置である。加圧ガスから抽出された仕事は、例えば、発電機を用いて電力を生成するため、或いは、液相酸化において用いる空気又は気体酸素源を圧縮するためのコンプレッサー、又は機械的仕事を必要とする他の装置を運転するために用いることができる。かかる抽出されたエネルギーは、他の場所で、本プロセス又は他のプロセスにおいて用いることができる。また、これは、貯蔵するか、又は他の場所に移送するために配電網に配送することができる。仕事としてエネルギーを回収した後に残留する排ガスは、好ましくは、更なる処理、例えば、凝縮領域排ガス中に相当量で存在する場合には水を除去するための凝縮処理、及び大気中に放出するのが望ましくない可能性がある臭素又は他の化合物を除去するための苛性洗浄処理にかけた後に排気することができる。所望の場合には、エネルギー回収は、腐食性成分を除去するためにガスをスクラビング又は他の方法で処理した後に行うことができる。エネルギー回収の前に腐食性成分を除去することにより、膨張器又は他の動力回収装置の内部部品を、そうでなければ好ましいであろうものよりも低い耐腐食性の材料で構築することが可能になるという点で有利である可能性があるが、かかる成分を除去するために処理を行うことによって、ガスから回収できる動力が減少する可能性もある。
【0073】
凝縮領域高圧排ガスからエネルギーを回収するための代替法として、或いはより好ましくは上記に記載のように仕事の形態でエネルギーを回収することに先行する更なる工程として、凝縮工程からの排ガスを、有機及び他の燃焼性化合物及び腐食性成分を除去するために処理することができる。かかる処理は、幾つかの態様においては、酸化工程からの少量の溶媒モノカルボン酸の反応生成物、並びに排ガス中に残留する可能性のある微量の未反応の芳香族炭化水素供給材料を回収するのに特に有用である。分離工程からの高圧ガスの凝縮が、ガス中の水が、実質的に、及び好ましくはその少なくとも約80%が凝縮され、低級アルコール及び溶媒モノカルボン酸のエステル反応生成物が、十分に、好ましくは約40〜約90℃の範囲の温度に冷却される未凝縮の排出気相中に実質的に保持されるのに十分に低い温度での1以上の凝縮工程を含む本発明の態様においては、凝縮工程からの未凝縮の排ガスが、回収のための液体スクラビング剤を用いるのに十分に冷却されているので、かかる不純物の回収のための処理は容易である。他の態様においては、処理は、他の方法で取り出されていない場合にはかかる未反応の供給材料及び溶媒副生成物、並びに臭素源が液相酸化触媒のための促進剤として用いられ、液相酸化工程において生成した高圧気相中、及び次に分離工程から取り出された高圧ガス及び凝縮工程から取り出された排ガス中に持ち越される液相酸化工程からの腐食性臭化アルキル反応副生成物のような有機種を減少又は排除するのに役立つ。かかる処理は、凝縮後の排ガスから回収できるエネルギーの量に影響を与える可能性があると認められるであろう。したがって、凝縮領域排ガスを、仕事の形態でエネルギーを回収する前に処理する本発明の態様においては、好ましい処理は、ガスの圧力又は容量の実質的な損失なしに行う。凝縮領域排ガスが相当量の水含量を有する場合には、ガスから水を相当量凝縮したり、或いは仕事の形態でのエネルギーの回収が水の大きな凝縮を引き起こす程度まで冷却することをしないで、任意のかかる処理を行うことも好ましい。かかる態様においては、エネルギーを回収する前に処理したガスを予備加熱することも有益である可能性がある。
【0074】
未反応の供給材料、及び溶媒モノカルボン酸の低級アルキルエステルのような液相酸化において生成した溶媒副生成物を除去するために凝縮工程からの加圧排ガスを処理することを含む本発明の態様においては、処理は、かかる成分を酸化工程に戻すことを可能にする上で有益である。また、処理によって、プロセス再循環流中のかかる不純物の存在量、及び全プロセス運転におけるその定常状態平衡レベルを減少させることもできる。凝縮工程から加圧下で取り出された未凝縮のガスは、好ましくは約35〜約60℃の温度で、液体スクラビング剤と接触させて、芳香族供給材料及び/又は溶媒副生成物の減少したレベルを有するスクラビングされた気相、及び、スクラビング剤を含み、液相酸化工程からの未反応の芳香族供給材料及び溶媒モノカルボン酸反応生成物の少なくとも一方に富む液体生成物を与えることができる。液体生成物は、好ましくは、液相酸化工程における反応領域に戻す。スクラビングは、高圧凝縮排ガスを含む気体流と接触させて、酸化工程からの未反応の供給材料及び溶媒モノカルボン酸副生成物のような揮発性成分を、気体から液相中に取り出すための任意の好適なスクラビング装置及びスクラビング剤を用いて行うことができる。トレー又は充填床のようなスクラビングする気体と液体スクラビング剤との間の接触を促進するための内部構造を有する高圧吸収カラムが、通常用いられる。好適なスクラビング剤は、スクラビングする気体の温度において液体で、回収する材料がその中での実質的な可溶性を有する材料である。例としては、低級アルコール、及びC1〜C8カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸などが挙げられる。好ましい液体スクラビング剤は、液相酸化のための溶媒として用いられるモノカルボン酸、及びそれと水との混合物である。芳香族カルボン酸への芳香族供給材料の液相酸化からオフガス成分を回収するための、好適なスクラビング剤、装置、及びその使用は、米国特許6,143,925(参照として本明細書中に包含する)において更に詳細に記載されている。
【0075】
加圧凝縮器排ガスは、また、上記に記載のように未反応の供給材料又は溶媒副生成物をスクラビングするための先行処理を行うか又は行わないで、腐食性又は他の燃焼性物質を除去するために処理することもできる。ガスの圧力及び容量の実質的な損失を伴わないかかる除去のための任意の手段を用いることができるが、ガスは、好ましくは、有機質で燃焼性且つ腐食性の成分を除去するための酸化プロセス、最も好ましくは接触酸化プロセスにかける。かかる処理は、一般に、未凝縮のガスを加圧下で加熱し、凝縮工程から取り出されたか又はスクラビング若しくは他の処理を行った後の加圧下の排ガス、及び気体状酸素を、加圧ガスの圧力よりもそれほどは低くない圧力下、有機質で燃焼性且つ腐食性の成分を、二酸化炭素及び水を含むより低腐食性か又はより環境的に適合しうるガスに酸化するのに有効な昇温下の燃焼領域内に含ませることを含む。加圧下での酸素ガスと一緒の加熱は、好ましくは、それを通る加圧ガスの流れを妨げないように燃焼領域内に配置された好適な酸化触媒の存在下で行う。加圧ガスは、場合によっては酸化の前に予備加熱にかけることができる。予備加熱は、熱交換、直接蒸気注入、又は他の好適な手段によるなどの任意の好適な手段によって行うことができる。場合によっては、燃焼処理は、また、燃焼工程から取り出された加圧ガスをスクラビングして、上記記載のように液相酸化のために臭素源を用いた場合に凝縮器排ガス中に存在する臭化アルキルの酸化によって生成する臭素及び臭化水素のような酸性の無機物質を除去する工程も含むことができる。
【0076】
接触酸化のための触媒は、一般に、少なくとも一つの周期律表(IUPAC)の遷移族元素を含む。第VIII族の金属が好ましく、白金、パラジウム、及びこれらの組み合わせ、並びにこれと1以上の更なる金属か又は補助金属との組み合わせが特に好ましい。かかる触媒金属は、酸化物のような複合体形態で用いることができる。通常、触媒金属は、触媒活性がより低いか又は無いが、燃焼領域の高温及び高圧の酸化環境に耐えるのに十分な強度及び安定性を有する支持体又は担体材料上に配置される。好適な触媒担体材料としては、1以上の金属を含む金属酸化物が挙げられ、その例としては、ムライト、スピネル、砂、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、及びジルコニアが挙げられる。α−、γ−、δ−、及びη−アルミナ、並びにルチル及びアナターゼチアニアのような種々の結晶質形態のかかる材料を用いることができる。担体組成物上への触媒金属の装填量は、好適には小数点以下から数重量%の間であり、約20容量%以上のような大きな水蒸気含量を有するガスを処理する場合には、より大きな装填量が用いるのに好ましい。触媒は、任意の好都合な構造、形状、又は寸法で用いることができる。例えば、触媒は、ペレット、顆粒、環状体、球体などの形態であってよく、好ましくは、領域を通る気体流を妨げずに燃焼領域内に存在する気体との接触を促進する、剛性で、セルラー形状、ハニカム形状、有孔体形状、又は多孔質の構造体に形成するか、又はそのような構造体の上に形成することができる。本発明によるオフガス処理における凝縮工程から取り出される排ガスの燃焼処理のための接触酸化触媒の特定の例は、アルミナモノリス担体上に担持された約1/2〜約1重量%のパラジウムを含む。
【0077】
凝縮領域から取り出された排ガスを含む気体から仕事の形態でエネルギーを回収する本発明の態様においては、且つ特にかかる気体が相当量、例えば少なくとも約5容量%の水を含む場合には、気体は、場合によっては加熱して、エネルギー回収に送られる気体中に液体水が存在することを防ぐことができる。かかる加熱は、加熱酸化又は接触酸化のような他の処理又は処理工程の前、後、又はこれと組み合わせて行うことができる。かかる態様においては、加熱は、熱交換、又は蒸気若しくは他の加熱ガスの直接注入によるなどの任意の好適な方法によって行うことができる。水の凝縮を避けるためには約200℃以上への加熱が有効であり、約250〜約350℃の温度が好ましい。
【0078】
分離領域から取り出された高圧ガスの凝縮後に残留する凝縮領域排ガスに加えて、本発明方法のオフガス処理工程による凝縮によって、加圧気体から液体が凝縮される。凝縮液は、上記記載のように高い純度の水を含み、本発明の好ましい態様によれば、分離領域へ供給される還流液がかかる凝縮液を含むように、少なくとも一部が分離領域に送られる。また、凝縮液は、液相酸化からの不純芳香族カルボン酸生成物の固液分離のための洗浄液のような他の用途にも好適である。凝縮液と本発明方法のオフガス分離工程から取り出された水に富む第2の液相とを比べると、第2の液相は、分離工程からの第2の高圧気相から取り出された凝縮液中よりも低い溶媒モノカルボン酸酸化副生成物含量のために、液相酸化工程から回収されたもののような不純芳香族カルボン酸の精製を含む統合プロセスにおいて用いるのに好ましい。
【0079】
精製芳香族カルボン酸の精製又は製造を含む本発明の態様においては、精製は、昇温及び昇圧下、水素化触媒金属を含む触媒の存在下で、水を含み、その中に芳香族カルボン酸及び不純物が溶解している液体を含む精製反応溶液を水素と接触させて、水含有液体中に溶解した芳香族カルボン酸及び水素化不純物を含む精製液体反応混合物を形成することを含む少なくとも一つの工程を含む。好ましい態様においては、精製反応溶液は、水含有液体中に、芳香族カルボン酸、及び酸化工程からの芳香族供給材料の酸化副生成物を含む不純物を含む液相酸化工程から回収された粗固体生成物を溶解することによって形成する。減少したレベルの不純物を含む純粋な形態の芳香族カルボン酸生成物を、好ましくは結晶化によって精製液体反応混合物から回収することができ、得られた純粋な形態の生成物は、純粋な形態の生成物を回収した後に残留する液体精製母液から、及び/又は、結晶化溶媒及び洗浄液のような水を含む1以上の液体から分離することができる。本発明は、精製において用いる水を含む少なくとも一つの液体が、本発明によるオフガス分離の分離領域から取り出された水に富む第2の液相を含む態様を包含する。上記に示すように、他の態様においては、少なくとも一つの精製工程からの精製母液を、水を含む還流液として分離領域へ導入するためにオフガス分離工程に送る。
【0080】
上記に記載したように、酸化し得る置換基を有する芳香族化合物を含む供給材料の液相酸化によって得られる芳香族カルボン酸生成物(これは、時によっては、粗芳香族カルボン酸生成物又は液相酸化からの粗生成物とも称する)は、芳香族カルボン酸、及び1以上の酸化中間体又は副生成物を含む。中間体及び副生成物の特定の化学組成は、酸化供給材料の組成、酸化反応条件、及び他のファクターによって変動し、与えられた供給材料に関してすら完全には知られていない場合もあるが、これらは、所望の芳香族カルボン酸生成物又はそれから製造されるポリエステルの望ましくない色を引き起こすか又はこれに関連し、芳香族カルボニル化合物及び芳香族カルボン酸よりも水溶液中でより可溶性の種、又は色若しくは色形成傾向がより小さい種に水素化することのできる、ベンズアルデヒド、カルボキシベンズアルデヒド、フルオレノン、及びアントラキノンのような1以上の芳香族カルボニル化合物を含むことが知られている。本発明の幾つかの態様によって精製するのに好ましい不純芳香族カルボン酸生成物は、液相酸化工程、最も好ましくは、液相酸化の粗固体生成物が精製のための出発物質となるように液相酸化工程と精製工程を統合した連続法において芳香族供給材料の液相酸化によって生成した芳香族カルボン酸及び副生成物を含む粗生成物である。しかしながら、精製のための出発物質は、存在しているか、或いは芳香族供給材料の統合又は非統合液相酸化工程からか又は他のプロセス若しくは源から副生成物として生成するかに拘わらず、上記記載のような芳香族カルボン酸及び芳香族カルボニル不純物を含む不純生成物であってもよく、或いはこれを含んでいてもよい。而して、本発明は、精製のための不純芳香族カルボン酸生成物出発物質が、芳香族カルボン酸、及び非水素化芳香族カルボニル不純物よりも大きな水溶液中での可溶性又は小さな色又は色形成傾向を有する水素化カルボニル置換芳香族生成物を形成する少なくとも一つの芳香族カルボニル不純物を含む態様を包含する。また、本発明の幾つかの態様による液相酸化工程から回収された粗生成物を含む、精製のための出発物質として好適な不純形態の芳香族カルボン酸生成物は、不純生成物中に残留する少量の溶媒モノカルボン酸残留物も含む可能性がある。商業的スケールの液相酸化工程からの生成物中に通常存在するような数百〜数千ppmwの範囲の量は、本発明方法による精製に悪影響を与えない。より好ましくは、精製する芳香族カルボン酸生成物の溶媒モノカルボン酸含量は、約10重量%を超えない。
【0081】
より詳細に説明すると、本発明による好ましい精製工程は、その少なくとも一部が最も好ましくは本発明によるオフガス分離工程から取り出された水を含む第2の液相を含む、水含有液体中に、芳香族カルボン酸及び不純物を含む固体生成物を溶解して、精製反応溶液を形成し、精製溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒の存在下で、水素と接触させて、精製液体反応混合物を形成し、精製液体反応混合物から、減少した不純物レベルを有する芳香族カルボン酸を含む固体精製生成物を回収し、回収された固体精製生成物から、酸化副生成物、その水素化生成物、及びこれらの組み合わせを含む水性液体精製母液を分離することを含む。
【0082】
不純物レベルを減少させるための不純芳香族カルボン酸の水素化は、水溶液中で、不純酸を用いて行う。本発明の幾つかの態様において精製溶液のための好ましい溶媒は、本発明によるオフガス分離の分離領域から取り出された第2の液相を含む。コスト、複雑さ、並びに凝縮液の更なる取り扱い、保管、又は処理のための更なる装置を避けるために、連続及び統合プロセス運転で、分離工程から直接に、且つ副生成物又は不純物を除去するための更なる処理又は中間処理を行わないで第2の液相を供給することが好ましいが、かかる更なる処理は、第2の液相を精製のための溶媒として好適にするのには必要ないが、本発明から排除されるものではない。同様に、本発明による精製溶媒として用いるために十分な純度の液体を得るためには必要ないが、本発明は、オフガス分離工程からの第2の液相に加えて、或いはこれの代替として、新鮮な脱塩水又は他の精製水源のような他の好適な水源を使用することを意図している。好ましくは、本発明による分離工程からの水に富む第2の液相は、精製反応溶液のための溶媒の少なくとも約50%、より好ましくは約80〜約100%を構成する。
【0083】
精製工程において処理する不純芳香族カルボン酸の精製溶媒中での濃度は、概して、不純酸が実質的に溶解するのに十分に低く、且つ、実際のプロセス運転及び効率的な使用、並びに溶媒として使用する液体の取り扱いのために、並びに精製反応混合物から減少した不純物を含む純粋な形態の芳香族カルボン酸を回収した後に母液として残留するのに十分に高いものである。好適には、プロセス温度において溶液100重量部あたり約5〜約50重量部の不純芳香族カルボン酸を含む溶液が、実際の運転のための適当な可溶性を与える。好ましい精製反応溶液は、接触水素化による精製のために用いる温度において、約10〜約40重量%、より好ましくは約20〜約35重量%の不純芳香族カルボン酸を含む。
【0084】
精製水素化反応において用いるのに好適な触媒は、酸化中間体及び副生成物、及び/又は芳香族カルボニル種のような不純芳香族カルボン酸生成物中の不純物の水素化のための触媒活性を有する1以上の金属を含む。触媒金属は、好ましくは、水中に不溶で、精製プロセス条件下で芳香族カルボン酸と非反応性である担体材料上に支持又は担持される。好適な触媒金属は、パラジウム、白金、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、及びこれらの組み合わせをはじめとする、元素周期律表(IUPAC版)の第VIII族の金属である。パラジウム、又はパラジウムを含むかかる金属の組み合わせが最も好ましい。数百又は数千m2/gの表面積、及び運転条件下での長期間の使用のために十分な強度及び耐摩耗性を有する炭素及び活性炭が好ましい担体である。金属装填量は重要ではないが、実際的に好ましい装填量は、担体及び単数又は複数の触媒金属の合計重量を基準として約0.1重量%〜約5重量%である。パラキシレンを含む供給材料の液相酸化によって得られる粗テレフタル酸を含む不純芳香族カルボン酸生成物中に存在する不純物を転化させるための好ましい触媒は、約0.1〜約3重量%、より好ましくは約0.2〜約1重量%の水素化金属を含む。かかる用途のためには、金属は、最も好ましくはパラジウムを含む。
【0085】
実際の用途のためには、触媒は、最も好ましくは、例えばペレット、押出物、球体、又は顆粒のような粒子状形態で用いるが、他の固体形態もまた好適である。触媒の粒径は、触媒粒子の床が、好適な精製反応器内に容易に保持されるが、望ましくない圧力降下を伴わずに床を通して精製反応混合物が流れることを可能にするように選択される。好ましい平均粒径は、触媒粒子が2メッシュのスクリーンを通過するが、24メッシュのスクリーン(US篩シリーズ)上に保持され、より好ましくは4メッシュのスクリーンを通過するが、12メッシュ、最も好ましくは8メッシュのスクリーン上に保持されるようなものである。
【0086】
精製のための触媒の存在下での水性精製反応溶液と水素との接触は、昇温及び昇圧下で行う。温度は約200〜約370℃の範囲であり、約225〜約325℃が好ましく、約240〜約300℃が最も好ましい。圧力は、水性反応溶液を含む液相を保持するのに十分なレベルである。全圧は、少なくとも、運転温度における、プロセスに導入される水素ガス及び水性反応溶液から沸騰して取り出される水蒸気の分圧の合計に等しく、好ましくはこれよりも大きい。好ましい圧力は、約35、より好ましくは約70から約105kg/cm2である。
【0087】
水性精製反応溶液は、上記に記載の水素化条件下、反応温度及び圧力、並びにその液体内容物の酸性にも耐えることのできる好適な反応容器中で、水素ガスと接触させる。好ましい反応器の構造は、反応器をプロセスで使用するために配置した際に垂直に配置される実質的に中心の軸を有する円筒形の反応器である。上向流及び下降流反応器の両方を用いることができる。触媒は、通常、それを通る反応溶液の比較的自由な通過を可能にしながら床内に触媒粒子を保持するための機械的支持材で保持される粒子の1以上の固定床で反応器内に存在する。しばしば単一の触媒床が好ましいが、同一又は異なる触媒の多重床、或いは、例えば粒径、水素化触媒金属、若しくは金属装填量の点で異なる触媒、或いは触媒及び触媒を保護するための研磨剤のような他の材料が積層された単一の床も、同様に用いることができ、有利性を与える可能性がある。適度に離隔された平行なワイヤーから形成された平坦なメッシュスクリーン又はグリッドの形態の金属支持材が通常用いられる。他の好適な触媒保持手段としては、例えば、管状のジョンソンスクリーン又は多孔板が挙げられる。反応器及び触媒床のための機械的支持材の内部部品及び表面は、好適には酸性の反応溶液及び反応生成物混合物との接触による腐蝕に対して抵抗性の材料で構成する。最も好ましくは、触媒床のための支持材は、約1mm以下の開口を有し、ステンレス鋼、チタン、又はハステロイCのような金属で構成する。
【0088】
本発明の好ましい態様においては、精製する不純芳香族カルボン酸の水溶液を、反応容器の頂部又はその付近において昇温及び昇圧下で反応容器に加えて、溶液を、水素ガスの存在下で、反応容器内に含まれる触媒床を通して下向きに流して、ここで、不純物を、水素によって、多くの場合には所望の芳香族カルボン酸よりも大きな反応混合物中での溶解度を有するか、又はより小さな色又は色形成傾向を有する水素化生成物へ還元する。かかる好ましい形態においては、反応器の下部又は底部か又はその付近の位置において、反応容器から芳香族カルボン酸及び水素化不純物を含む液体精製反応混合物が取り出される。
【0089】
精製のために用いる反応器は、幾つかの形態で運転することができる。一つの形態においては、予め定められた液体レベルを反応器内で保持し、与えられた反応器圧力のために、予め定められた液体レベルを保持するのに十分な速度で水素を供給する。実際の反応器圧力と、反応器のヘッドスペース内に存在する気化精製溶液の蒸気圧との間の差は、ヘッドスペース内の水素分圧である。また、水素を、窒素又は水蒸気のような不活性ガスと混合して供給することができ、この場合には、実際の反応器圧力と存在する気化反応溶液の蒸気圧との間の差は、水素及びそれと混合している不活性ガスの分圧の合計値である。かかる場合においては、水素分圧は、混合物中に存在する水素及び不活性ガスの既知の相対量から算出することができる。
【0090】
他の運転形態においては、反応器を水性液体反応溶液で満たして、反応器蒸気スペースが実質的に存在しないが、反応器の頂部又はヘッド内において水素気泡が存在し、これが寸法的に膨張又は収縮して反応器ヘッド内の容量を与えて、反応器に加えられた水素が投入された精製反応溶液中に溶解するようにすることができる。かかる態様においては、反応器を水理学的に充填した系として運転して、溶解した水素を流れ制御によって反応器に供給する。溶液中の水素の濃度は、反応器への水素の流速を調整することによって調節することができる。所望の場合には、溶液水素濃度から擬似水素分圧値を算出して、これを次に反応器への水素流速と相関させることができる。
【0091】
水素分圧を調節することによってプロセス制御を行うように運転する場合には、反応器内の水素分圧は、好ましくは、反応器の圧力定格、不純芳香族カルボン酸の不純物レベル、触媒の活性及び使用年数、及び当業者に公知の他の事項に依存して、約1/2〜約15kg/cm2ゲージ又はそれ以上の範囲である。供給溶液中の水素濃度を直接調節することを含む運転形態においては、溶液は、通常、水素に関しては飽和状態未満であり、反応器それ自体は水理学的に充填されている。而して、反応器への水素流速を調節することによって、溶液中の水素濃度の所望の制御が得られる。
【0092】
水素化中の、1時間あたり、触媒の重量あたりの精製反応溶液中の不純芳香族酸の重量として表される空間速度は、通常、約1時-1〜約25時-1、好ましくは約2時-1〜約15時-1である。触媒床内での精製液体流の滞留時間は、空間速度に応じて変動する。
【0093】
精製溶液を調製するために用いられる粗又は他の不純芳香族カルボン酸生成物に対して減少した不純物レベルを有する純粋な形態の芳香族カルボン酸生成物が、液体精製反応混合物から回収される。芳香族カルボン酸、及びその非水素化前駆体よりも大きな水性反応液体中での溶解度を有する水素化芳香族不純物がその中に溶解している水性反応溶媒を含む精製反応混合物を冷却して、反応混合物から減少した不純物を含む純粋な形態の固体芳香族カルボン酸を分離し、水素化不純物がその中に溶解している液体精製母液を残留させる。分離は、通常、芳香族カルボン酸の結晶化を起こすのに十分に低い結晶化温度に冷却して、それによって液相内に結晶を生成させることによって行う。結晶化温度は、溶解した不純物及び水素化から得られるその還元生成物が液相中に溶解したままとなるのに十分に高いものである。結晶化温度は、概して、160℃以下、好ましくは約150℃以下の範囲である。連続運転においては、分離は、通常、精製反応器から液体精製反応混合物を取り出し、1以上の結晶化容器内で芳香族カルボン酸を結晶化することを含む。一連の段階又は別々の結晶化容器内で行う場合には、異なる段階又は容器における温度は、同一であっても異なっていてもよく、好ましくは互いの段階又は容器から次の段階又は容器に向かって低下する。また、結晶化によって、通常、精製液体反応混合物から液体がフラッシングされ、これは凝縮によって回収して、1以上の精製工程、1以上の上流での結晶化段階、或いは本発明の好ましい態様においては、液相酸化工程からの高圧気相中の溶媒モノカルボン酸及び水蒸気の分離工程に再循環することができる。好ましくは本発明方法によるオフガス分離工程において第2の液相として回収された水に富む液体を含む水含有液体は、好ましくは、段階的結晶化において回収された精製液体反応混合物から回収された結晶化生成物に、直接か、或いはより好ましくは、結晶化生成物のための1以上の洗浄液中で間接的に加える。
【0094】
その後、結晶化された精製芳香族カルボン酸生成物は、水素化不純物がその中に溶解している精製母液から分離する。結晶化生成物の分離は、通常、遠心分離によるか又は濾過によって行う。好ましい分離は、参照として本明細書に包含する米国特許5,175,355に記載のように、純粋な形態の芳香族カルボン酸の水性スラリーを加圧濾過し、濾過から得られたフィルターケーキを、水含有液体で洗浄することを含む。上記記載のようなオフガス分離工程からの水に富む第2の液相は、純粋な形態の芳香族カルボン酸のための洗浄液として用いるのに好ましい水含有液体である。
【0095】
精製反応混合物から固体精製芳香族カルボン酸を回収した後に残留する精製母液は、水、及び不純芳香族カルボン酸出発物質中に存在する副生成物又は不純物の水素化誘導体を含む。母液は、また、通常、溶液中に残留する少量の芳香族カルボン酸も含む。かかる水素化誘導体は、液相酸化によって芳香族カルボン酸に転化するのに好適な化合物を含み、したがって本発明の好ましい態様においては、かかる水素化誘導体の少なくとも一部を、直接又は間接的に液相酸化工程に移す。また、母液中に存在する残留芳香族カルボン酸も、かかる水素化誘導体から分離した後か、或いはより好ましくはそれと一緒に、直接又は間接的に液相酸化工程に移すことができる。酸化工程へのかかる誘導体及び芳香族カルボン酸の移送は、好都合には、固体で純粋な形態の芳香族カルボン酸を分離した後に残留する精製母液の少なくとも一部を液相酸化工程に送ることによって行われる。精製母液の水含量は、酸化工程へ送られる精製母液からの水が酸化工程へ戻される可能性のある他の流れの中に含まれない限り、酸化工程における水バランスを混乱させる可能性がある。精製母液中の水素化不純物を、単独か又は好ましくは母液中に存在する芳香族カルボン酸と組み合わせて液相酸化工程へ移すことは、好ましくは、酸化工程における水バランスを混乱させることなく行う。より好ましくは、液体精製反応混合物から固体の精製芳香族カルボン酸を分離した後に残留する液体母液の少なくとも一部、最も好ましくは実質的に全部を、本発明によるオフガス分離の分離領域に直接か又は間接的に移して、ここで上記に記載したように還流液として用いる。本発明による方法において有用な精製反応器及び触媒床構造及び運転の詳細及び結晶化並びに生成物回収方法及び装置は、参照として本明細書に包含する米国特許3,584,039、米国特許4,626,598、米国特許4,629,715、米国特許4,782,181、米国特許4,892,972、米国特許5,175,355、米国特許5,354,898、米国特許5,362,908、及び米国特許5,616,792においてより詳細に記載されている。
【0096】
図1は、本発明による芳香族カルボン酸の製造方法、及びオフガス分離のための装置の態様を更に詳細に示す。図は、酸化、及び酢酸、水、及び酸化の副生成物のオフガス分離のための、水及び溶媒モノカルボン酸として酢酸を含む液相反応混合物中、好ましい供給原料としてのパラキシレンの液相酸化による、選択された芳香族カルボン酸であるテレフタル酸の製造、並びに、酸化及びオフガス分離工程を、液相酸化工程からの粗生成物の回収及び分離、液相酸化生成物及び種々の更なる副生成物の精製、並びにエネルギー回収をはじめとする更なる工程と統合する本発明の更なる好ましい態様及び特徴を示し、特にこれを参照して説明しているが、特定の態様、特徴、詳細及び選択は、本発明の理解を助けるために記載するものであり、本発明又は任意の形態又は態様におけるその特徴を限定するものではない。
【0097】
図1に示すプロセスは、また、液相酸化工程からの粗芳香族カルボン酸生成物を、精製溶液を形成するのに用いるために精製工程に送り、酸化工程からの高圧オフガスをオフガス分離工程に送り、オフガス分離工程からの液相を精製液として用い、分離工程への還流液が精製工程からの母液を含むように、液相酸化工程、オフガス分離工程、及び精製工程を統合した本発明方法の好ましい態様を示しているが、本発明は図面に示された特定の統合案に限定されるものではなく、種々の多重経路、共用経路、並びに他の統合及び非統合構成が本発明によって意図されることを理解すべきである。一例として、多重液相酸化工程からの芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む生成物を、1以上の酸化工程又は他の液相酸化工程からの高圧気相のオフガス分離において回収される液相が、プロセス液体として用いるために送られる単一の精製工程に送ることができる。更なる例として、単一の液相酸化工程からの粗生成物を、平行して運転されている別々の複数の精製経路において精製し、液相酸化工程からの高圧気相を、溶媒副生成物を実質的に含まず水に富む液相を回収するためのオフガス分離にかけ、これを、かかる精製経路のいずれか又は両方に、或いはその代替としてか又はこれに加えて、別の酸化工程又はプロセスからの不純芳香族カルボン酸を上記記載のような精製プロセス又はプロセス工程において精製するプロセスに送ることができる。
【0098】
また、図は、本発明、並びに装置を液相酸化のための反応容器のような他の装置と統合した本発明の更なる態様による分離装置も示す。
図1に示すプロセスにおいて用いられ、存在する液体及び気体の流れ及び材料は、通常、プロセスの使用及び安全性のための適当な材料で構成された好適な移送ライン、導管、及び配管を通して送られ、移送される。特定の部材を物理的に並置することができ、適当な場合には、これらは柔軟な領域、剛性の領域、又は両方を有することができる。流れ又は化合物を送る際には、介在する装置又は場合によって用いる処理を包含することができる。例えば、適当なポンプ、バルブ、マニホールド、気体及び液体流量計及び分配器、サンプリング及び検出装置、並びに、圧力、流れ、及び他の運転パラメーターを監視、制御、調節、及び転換するための他の装置を存在させることができる。
【0099】
図を参照すると、分離装置330は、被包内部空間を画定する円筒形構造であり、酸化反応器110から流れ111で取り出される高圧気相を受容し、ガス流出口334を通して第2の高圧気相を取り出すように適合されている。また、これは、例えば336及び344において、他のプロセス工程又は保持容器からの流れなどで外部源から供給される還流液を導入するための流入口も有している。例えば345における流出口は、還流液流入口336及び344に対して中間に配置されていて、カラム内で回収された第2の液相を取り出すためのものである。カラムの内部空間内であって、酸化反応器110からの高圧気相を受容するための流入口と、還流液流入口336との間の中間に配置された構造によって、内部における分別領域が与えられる。
【0100】
分離装置は、運転中において、装置に導入される高圧で高温の酸化反応器の塔頂ガス中のC1〜C8モノカルボン酸及び水を実質的に分離し、モノカルボン酸に富む第1の液相、水に富むが、溶媒及び液相酸化において生成したその副生成物を実質的に含まない第2の液相、及び水を含み、溶媒及び液相酸化工程への芳香族供給材料の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相が形成されるように、液相酸化の副生成物を選択的に分配することができるように設計される。好ましい態様においては、酸化反応器と分離装置との直接的な接続又は密な結合は、液相反応条件下で気相が反応容器から取り出されて、反応領域内と同等又は実質的に同等の温度及び圧力の分離装置中に導入されるように、酸化反応容器内の1以上の排気口と、分離装置への1以上のガス流入口との間を、直接か、又は好適な圧力定格配管又は他の導管によって接続することによって行われる。
【0101】
分離装置の分別領域は、内部トレー、構造充填材、トレーと充填材との組み合わせ、或いは装置内に存在する気相と液相との間の物質移動のための装置の内部内の表面を与える他の構造又はその組み合わせによって与えることができるような多数の理論平衡段を有するように構成される。少なくとも約20の理論平衡段が与えられる。分離効率は、他の条件が同じならば理論平衡段を増加させることによって増大し、本発明によって用いる分離装置内に含ませることができる平衡段の数に対する理論的な上限はない。しかしながら、実際の目的のためには、分離装置に導入された高圧気相中の溶媒モノカルボン酸が実質的に液相中に取り出されるような分離は、少なくとも約20、好ましくは少なくとも約25の理論平衡段によって達成することができ、約100の理論平衡段によって与えられるものを超える分離は、更なる段を実用的でなく経済的に非効率的にする。
【0102】
構造充填材を有する好ましい分離装置は、少なくとも約3の充填材の床又は領域、より好ましくは約4〜約8のかかる床を有して、分離のための適度な表面及び理論平衡段を与える。好適な充填材材料の例は、流路を形成し、それらの交差部が液相と気相のための混合点を生成するように十字路の関係で配置された波形金属の薄いシートの形態でKGGP LLCから入手できるFlexipac構造充填材である。トレーを有する好ましい分離装置は、30〜約90のトレーを含み、その少なくとも約70%は、図2において338で最もよく示されるように、反応容器から分離装置に導入される高圧ガスのための流入口と、少なくとも一つの還流液流入口との間に配置される。篩、又は泡鐘段の形態のトレーが好ましく、これは好ましくは約30〜約60%の分離効率を有する。与えられた数の理論平衡段のためのトレーの数は、段数をトレー効率で割ることによって算出することができる。
【0103】
プロセスの使用においては、分離装置中に導入され、その中に存在する気相及び液相は、昇温下であり、水、溶媒モノカルボン酸、及び他の腐食性成分、例えば、酸化のために用いた触媒が臭素源を含む場合には酸化反応塔頂ガス中に存在する臭化水素のような臭素化合物及びその分裂生成物を含む。したがって、本発明の好ましい態様においては、プロセス運転中に気体及び液体と接触する分離装置の内部構造及び他の機構は、かかる接触による腐蝕及び他の損傷に耐える好適な金属で構成する。チタン金属は、分別領域のトレー、充填材、又は他の構造をはじめとするかかる表面のための構造体の好ましい材料である。かかる構造体のチタン表面は、装置を通って循環する液体中に存在する不純物からの鉄酸化物を含む固体沈殿物の望ましくない蓄積の影響を起こしやすい。プロセス液体中における鉄酸化物沈殿又は可溶性鉄不純物含量の蓄積を制御するための方法は、同じ譲受人に譲渡された米国特許6,852,879及び米国特許出願2002/374719(参照として本明細書に包含する)において記載されている。
【0104】
図に示す本発明の態様においては、分離装置330は、その特定の例が図2において333及び337において最もよく示されている多数のトレーを有する高圧蒸留カラムである。また、図2において示されるように、カラムは、カラムから液体を例えば酸化工程に取り出すための少なくとも一つの下部流出口を例えば332において有する。ガス流入口338が、酸化反応器オフガスを受容するためにカラム下部部分に配置されており、排気口334が、第2の高圧気相を排出ガスとして取り出すために上部部分に配置されている。本発明による段階的分離のために、ガス流入口338と還流液流入口344との間の領域が、カラム330の第1の段又は部分において液相酸化工程から取り出された高圧気相中の溶媒モノカルボン酸及び水を実質的に分離するための理論平衡段を与えるトレーを有する。還流液流入口344と第2の液体の流出口345との間に配置され、酸化工程への芳香族供給材料の副生成物及び水を分離してかかる副生成物を還流液相に分配するための理論平衡段を与えるトレーによって、カラム内の分離領域の第2の部分が与えられる。333及び337において示されるような、液体流出口345と還流液流入口336との間に配置されたトレーによって、分離領域の第3の部分において溶媒モノカルボン酸酸化副生成物及び水を分離するための理論段が与えられる。液体流出口332が、分離領域の第1の部分において酸化オフガスから分離された溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相を塔底液として取り出すために配置される。例えば339における、その円周境界におけるブーツ、トラフ、集積流路、又は他の回収手段を有するように構成されたトレーが、液体流出口345と流体連通し、流出口345を通して取り出すために分離領域を通って流れる還流液の第2の液相を回収するように適合されている。流出口345と、分別領域のトレー又は充填床又は他の構造体、例えば回収手段339の間において、又はそこから還流液相を回収するための分離装置の関連する内部構造とが組み合わさって、装置内において回収された水に富む第2の液相を回収し取り出すためのカラムからの側流が与えられる。
【0105】
再び図1を参照すると、分離装置は、液相酸化反応領域110からの高圧気相を受容するように適合されている。幾つかの態様においては、本発明による装置は、分離装置を、例えば116における少なくとも一つの塔頂ガス排気口を通して容器から取り出された高圧塔頂ガスが分離装置中に受容されるように分離装置と流体連通している少なくとも一つの液相酸化反応器と組み合わせて有する。かかる態様においては、反応容器110は、好ましくは、実質的に被包された内部容積を画定する実質的に円筒形のシェルを有する。使用においては、内部容積の下部部分は液体反応物を含み、一方塔頂反応オフガスは、液体レベルよりも上方の内部容積の部分内に含まれる。内部容積は、その例を図1において112として示す多数の流入口を通して反応容器の外部と連通しており、この流入口を通して液体芳香族供給材料、溶媒、及び可溶形態の触媒が液体充填容器(図示せず)から導入され、圧縮空気又は他の酸素ガス源が好適な移送ライン(図示せず)を介して圧縮器又は他の好適な装置(図示せず)から導入される。流入口は、好ましくは、液体及び気体成分が、容器の内部に、液体レベルの下方で導入されるように配置される。反応容器は、また、例えば114において、芳香族カルボン酸及び酸化副生成物を含む粗生成物を含む液相反応混合物を内部から取り出すための少なくとも一つの流出口も有する。反応容器110は、また、例えば116において、液体反応物から蒸発した高圧気相を容器の内部から取り出すための少なくとも一つの排気口又は流出口も有する。排気口116は、好ましくは、プロセスで使用するために配置した際に容器の上部部分に該当するように配置される。
【0106】
好ましい反応容器のデザインは、容器をプロセスで使用するために配置した際に実質的に垂直に伸長する中心軸を有する実質的に円筒形の容器である。容器は、その上に取り付けられた1以上のインペラーを有し、プロセスで使用している間に反応容器の内部で回転して容器内に存在する液体反応混合物を混合することのできるシャフトを有する攪拌機構120と共に使用するように適合されている。本発明の好ましい態様においては、容器の下部部分内での固形分の不都合な沈降を起こさずに液体反応物内で気体及び液体成分を混合するために、少なくとも二つのインペラー又は混合機構がシャフト上に取り付けられる。一般にプロペラとして構成された軸流インペラー、フラットブレード盤タービン及びディスペンサ盤のような放射流ミキサー、らせんリボン混合部材、上向流又は下向流のためのブレードピッチを有するピッチブレードタービン、主として接線流を与えるアンカータイプのミキサー、及び他の構造が、液相酸化反応系を混合するのに好適であり、好ましくは、液体反応混合物の下部領域におけるより大きな固形分含量、上部領域におけるより大きな気体含量、及び液体物全体にわたって変動する可能性のある液相反応混合物の他の特徴に対応するように種々の組み合わせで用いられる。他のデザインは、平坦なローター上に取り付けられた放射状に伸長する回転ブレードを有し、不連続的な前縁と、連続的な後縁とを有し、外部の凹形の表面及び開放された外縁を有さず、好ましくはガス供給のための垂直管又は有孔ガス噴霧器と併せて用いられる混合部材が記載されている米国特許5,198,156、並びに、撹拌部材が、中心の回転シャフト上に下向きの角度で取り付けられ、液体を通る動きの方向にV字型に成形されており、ブレードの後縁の放射状の内部端がブレードの動きの方向に外向きに角度が付けられており、シャフトの一端における円錐状の円盤によって形成される中心の空洞部分の中に撹拌部材の下側からガスを導入するための機構と共に用いられるミキサーが記載されている米国特許5,904,423において開示されている。
【0107】
反応容器、攪拌機シャフト、及び混合部材の、少なくともプロセスの使用中に液体反応混合物及び塔頂ガスと接触する部分は、実質的に耐腐食性の材料で構成する。例としては、チタン金属(これが好ましい)、合金、及び二相ステンレス鋼が挙げられる。
【0108】
図1に示す好ましいプロセス態様によれば、少なくとも約99重量%のパラキシレンを含む液体パラキシレン供給材料、好ましくは約70〜約95重量%の酢酸を含む酢酸水溶液、酸化触媒金属源としてのコバルト及びマンガンの可溶性化合物、例えばそれらのそれぞれの酢酸塩、及び触媒のための促進剤としての臭化水素のような臭素の可溶性化合物、並びに空気を、その一つが例示の目的で例えば112において示される流入口を通して、圧力定格連続撹拌タンク反応器である酸化反応容器110に連続的に充填する。溶媒及びパラキシレン供給材料は、約2:1〜約5:1の溶媒:供給材料の重量比を与える速度で充填する。コバルト及びマンガン源は、好ましくは、パラキシレン供給材料の重量を基準としてそれぞれ約100〜約800ppmwを与える量で用いる。臭素は、好ましくは、臭素:触媒金属の原子比が約0.1:1〜約1.5:1であるような量で用いる。
【0109】
撹拌は、そのシャフトを外部動力源(図示せず)によって駆動して、シャフト上に取り付けられ、反応器内の液体物内に配置されたインペラーによって、液体を混合し、液体物内で気体を分散させ、その下部領域での固形分の沈降を防ぐための力を与える攪拌機120の回転によって与えられる。触媒及び促進剤を、それぞれ好ましくは酢酸溶媒中の溶液として、反応容器内の液体物中に導入する。空気を、下部インペラーの下側でその掃流路内に、芳香族供給材料1モルあたり少なくとも約3モルの分子状酸素を与えるのに有効な速度で供給する。
【0110】
パラキシレンは、反応器110内の撹拌液体反応混合物中で、主としてテレフタル酸に酸化されるが、同時に、反応して、4−カルボキシベンズアルデヒド、1,4−ヒドロキシメチル安息香酸、及びp−トルイル酸、並びに安息香酸のような他の化合物のような部分的及び中間酸化生成物をはじめとする副生成物を形成する。テレフタル酸及びパラキシレン酸化副生成物を含む固体反応生成物が、液体反応混合物から沈殿し、そのより少ない量が液体中に溶解して残留する。液体スラリーの固形分含量は、通常、約50重量%以下、好ましくは約20〜約40重量%の範囲である。また、酸化の生成物として水も生成する。酸化反応は、発熱性であり、反応によって生成する熱により液相反応混合物が沸騰し、気化酢酸、水蒸気、及び酸化反応からの気体状副生成物、炭素酸化物、反応系に充填された空気からの窒素、及び未反応の酸素を含む塔頂気相が形成される。気相は、また、少量の未反応パラキシレン供給材料も含む可能性がある。反応器110の内部容積は、反応混合物の液相性を保持するのに十分な圧力下、好ましくは約5〜約21kg/cm2ゲージに保持する。塔頂蒸気は、排気口116を通して反応器から取り出される。反応器の内容物は、気相の取り出し速度に基づいて、且つ下記に記載するように反応器から取り出されそれに戻される流れの温度及び流速も考慮して、約160〜約225℃の範囲の運転温度に保持する。
【0111】
液相反応混合物中でスラリー化されたテレフタル酸を含む固体のパラキシレン酸化生成物を含み、同時に溶解したパラキシレン、酸化副生成物、及び触媒金属も含む液体流出流が、スラリー流出口114を通して反応容器110から取り出され、流れ115内で、テレフタル酸及びパラキシレン供給材料の酸化副生成物を含む酸化工程の固体生成物を回収するための結晶化領域に送られる。
【0112】
図1に示す本発明の態様においては、結晶化は、直列に配置され、生成物スラリーを容器152から容器156に移すために流体連通している多重撹拌結晶化容器152及び156内で行われる。結晶化容器内での冷却は圧力開放によって行われ、スラリーは、容器152内において約150〜190℃の範囲の温度に冷却され、次に更に容器156内において約110〜約150℃に冷却される。圧力降下から得られる蒸気を熱交換手段(図示せず)に取り出して、フラッシュ蒸気から蒸気を生成させるために、1以上の結晶化容器を、それぞれ例えば154及び158において排気する。容器152のような1以上の上流の結晶化容器から熱交換手段に取り出された蒸気は、好ましくは凝縮して、水、酢酸溶媒、及び可溶性生成物、並びに酸化の副生成物を含む液体凝縮物を、例えば156における1以上の下流の結晶化容器に送って、1以上の上流の容器からのフラッシュ蒸気に侵入してそれから凝縮されるテレフタル酸及び酸化副生成物のような結晶化可能な成分を回収することができる。
【0113】
結晶化容器156は、酢酸及び水を含む酸化工程からの母液中のテレフタル酸及び酸化副生成物を含む固体生成物のスラリーを結晶化容器から受容して、液体からテレフタル酸及び副生成物を含む粗固体生成物を分離するように適合された、固液分離装置190と流体連通している。分離装置190は、遠心分離器、ロータリーバキュームフィルター、又は加圧フィルターである。本発明の好ましい態様においては、分離装置は、フィルターケーキ中の母液を加圧下で水を含む洗浄液によって正置換することによって溶媒交換するように適合されている加圧フィルターである。分離から得られる酸化母液は、母液ドラム192に移すために流れ191中で分離装置190から排出される。母液の大部分は、母液中に溶解しているか又は微細固体粒子として存在している酢酸、水、触媒、及び酸化反応副生成物を液相酸化反応に戻すために、ドラム192から酸化反応器110に移される。テレフタル酸、及びパラキシレン供給材料の酸化副生成物を含む不純物を含む粗固体生成物は、中間の乾燥及び貯蔵を行うか又は行わないで、流れ197で、分離装置190から精製溶液調整容器202に移送される。粗固体生成物は、調整容器202内において、その全部又は少なくとも一部、好ましくはその約60〜約100重量%が反応器110からカラム330へ取り出された気相中の水及び酢酸のオフガス分離からの第2の液相及び酸化の副生成物を含む精製反応溶媒中でスラリー化する。用いる場合には、新鮮な脱塩水、又は下記に議論するように、精製テレフタル酸生成物の結晶化において圧力降下から得られる蒸気から凝縮された液体のような好適な再循環流のような調整溶媒を、容器204から調整タンク202に送ることができる。調整タンク内のスラリー温度は、好ましくは約80〜約100℃である。
【0114】
粗生成物は、調整タンク202内において例えば約260〜約290℃に加熱することによるか、或いはそれが精製反応器210に移される間に熱交換器(図示せず)を通過させることによって溶解して、精製反応溶液を形成する。反応器210においては、精製反応溶液を、好ましくは約85〜約95kg/cm2の範囲の圧力下で水素と接触させる。
【0115】
精製液体反応混合物の一部を、水素化反応器210から流れ211で結晶化容器220に連続的に取り出して、ここで、液体上への圧力を低下させることによってテレフタル酸及び減少したレベルの不純物を反応混合物から結晶化する。容器220内で形成された精製テレフタル酸及び液体の得られたスラリーを、流れライン221で固液分離装置230に送る。結晶化反応器内で圧力降下によって得られた蒸気は、冷却のための熱交換器(図示せず)に通すことによって凝縮して、得られた凝縮液を例えば好適な移送ライン(図示せず)を通して精製供給流調整タンク202に再循環するように、プロセスに再び送ることができる。精製テレフタル酸は、流れ231で固液分離装置230から排出される。固液分離装置は、遠心分離器、ロータリーバキュームフィルター、加圧フィルター、又はこれらの1以上の組み合わせであってよい。カラム330から取り出された第2の液相は、精製生成物の最終洗浄のための脱塩水に置き換えるか又はその必要性を減少するための分離用の洗浄液として分離装置に送ることができる。
【0116】
固液分離器230内でそれから固体の精製テレフタル酸生成物が分離される精製母液は、水、少量の溶解及び懸濁しているテレフタル酸並びに母液中に溶解又は懸濁している水素化酸化副生成物を含む不純物を含む。図1に示す好ましいプロセス態様によれば、精製母液の少なくとも一部、好ましくは全部又は実質的に全部を、流れ233で、高圧蒸留カラム330中での酸化反応オフガス分離に送り、そこに導入する。カラム330に送られた精製母液は、例えば344においてカラムの下部部分に導入されて、分離のための液体還流液を与える。精製母液を固液分離装置230から高圧蒸留カラムに移すことによって、また、母液中のテレフタル酸及び安息香酸及びp−トルイル酸副生成物のような不純物を酸化反応器110に再循環して、そこで酸化するか又はテレフタル酸に転化すると共に、蒸留カラム内で精製母液の含有水を気化及び還流して、酸化工程における水バランスに大きな影響を与えることなく、加圧ガス及び/又はカラムから取り出される第2の液相中に排出することも可能になる。また、精製母液を固液分離装置230から蒸留カラムに移すことによって、液体廃棄物処理に送ることが必要な液体流出物の容量が減少し、貴重なテレフタル酸を酸化工程に戻し、次に酸化結晶化器152及び156において回収するために取り出すことが可能になる。
【0117】
反応容器110においてパラキシレン供給材料の液相酸化によって生成する反応オフガスは、排気口116を通して反応器から取り出され、流れ111で、図2に示すように、好ましくは約28〜約63の理論段を与える多数のトレーを有する高圧蒸留カラムであり、液体流入口336及び344を通して還流のための液体が供給されるカラム330における分離工程に送られる。酸化工程からの蒸気流は、好ましくはそれぞれ約150〜約225℃及び約4〜約21kg/cm2ゲージで、酸化反応器110内におけるよりもそれほどは低くない温度及び圧力下でカラム330に導入する。上記に説明したように、図1は、カラムへ導入される還流液が、固液分離装置230においてそれから固体精製テレフタル酸が分離される精製母液を含む好ましい態様を示す。カラム330は、80のトレーを有し、その約50〜70が還流液流入口344の下側に配置され、残りが還流液流入口344の上方であるが336における第2の還流液の流入口よりも下方に配置される。流入口336及び344は、それらが、少なくとも約3の理論平衡段、好ましくは約3〜約20のかかる段に相当するトレーによって分離されるように配置される。図1に示す本発明の好ましい態様によれば、カラム336に供給される還流液は、好ましくは、蒸留カラム330から取り出された高圧及び高温の第2の気相を凝縮領域350において凝縮することによって回収され、流れ355でカラムに送られる凝縮液であり、一方、流れ233から還流液流入口344において供給される還流液は、好ましくは、液相酸化工程からの精製生成物の固液分離からかかる使用のためにカラムに送られる精製母液である。流入口においてカラムに供給される還流液は、好ましくは、流入口344及び336においてカラムに加えられる還流液の流量の約70〜約85%を与える。
【0118】
カラムの下部部分において、カラム330への高圧導入ガスから回収された液相酸化のための酢酸溶媒に富む第1の液相が、カラム330において液相に分配された安息香酸及びp−トルイル酸のようなパラキシレン酸化副生成物と共に回収される。主として水であるが、液相に分配された少量の安息香酸及びp−トルイル酸副生成物も含む第2の液相が、回収され、側流流出口345においてカラムから取り出される。水蒸気、酸化オフガスの凝縮できない成分、及び気相に選択的に分配されたメタノール及び酢酸メチルのような酢酸副生成物を含む第2の高圧気相が、塔頂排気口334を通して、排出ガスとしてカラムから取り出される。
【0119】
蒸留カラム330において分離から得られた酢酸に富む第1の液相が、その下部部分においてカラムから排出され、好ましくは例えば流れ331で酸化反応器110に直接か又は間接的に戻される。この液相を酸化工程に戻すことによって、酸化反応への溶媒酢酸の補充が与えられ、酸化気相から凝縮された中間体及び副生成物、並びに精製母液還流液からカラムに再循環されるものを所望の生成物に転化することが可能になることによって供給原料の損失が減少する。側流流出口345においてカラムから回収された第2の液相は、流れ357で、粗生成物スラリー及び精製反応器210へ送る精製反応溶液を形成するのに用いるために精製溶液調整容器202に送られる。水に富む第2の液相を送ることができる他の精製容器及び液体受容装置並びにその使用としては、結晶化器内で気化した精製反応液体を置換するための清浄な調整溶媒として用いるための結晶化容器220、及び洗浄液又はシールフラッシュとして用いるための固液分離装置230が挙げられる。また、凝縮液は、溶媒交換フィルターのための洗浄液のように、精製工程の外部において用いるのにも好適である。
【0120】
排気口334においてカラムから回収される排出ガスは、図1に示すように凝縮器352及び362、並びに解放ドラム372を含む凝縮手段350に送られる。好ましくは、凝縮は、約40〜約60℃の温度の液体凝縮水が少なくとも一つの段階において回収されるように行う。図に示す態様においては、凝縮は、凝縮手段352内において約120℃〜約170℃の温度で水によって間接的に熱交換することによって行い、得られる液体凝縮物は、還流液流入口336において加えるために流れ355でカラム330に送る。凝縮器352からの液体及び未凝縮気体は、約30〜約40℃において冷却水を用いて凝縮を行うために流れ361で凝縮器362に送る。凝縮器362からの気体及び液体流出流は、流れ363でドラム372に送り、ここで水含有凝縮液を回収して流れ373中に取り出し、これは、シールフラッシュ液のような他の用途、或いはパージ流に送ることができる。加圧下の凝縮器排ガスは、流れ375で回収される。
【0121】
蒸留カラム330からの第2の高圧ガスの凝縮のための熱交換流体として用いられる水は、凝縮手段350内で熱交換によって加熱されて加圧蒸気が生成し、これは、図1に示すプロセス態様において蒸気タービン450のようなエネルギー回収装置に送ることができる。逐次的により低い温度の熱交換流体を用いる一連の2以上の凝縮器を用いて凝縮を行うことにより、異なる圧力の蒸気を生成することができ、これにより、蒸気が用いられる運転に異なる熱又はエネルギー投入を適合させることによって異なる圧力の蒸気を使用することを効率的にすることができる。
【0122】
流れ375中に取り出される凝縮工程からの未凝縮排ガスは、酸化工程からの未消費酸素、酸化工程への酸素源として用いた空気からの窒素、かかる空気及び酸化工程における反応からの炭素酸化物、並びに微量の未反応パラキシレン及びその酸化副生成物、酢酸メチル及びメタノール、並びに酸化工程において用いた臭素促進剤から形成された臭化メチルのような凝縮できない成分を含む。図に示す態様においては、未凝縮ガスは、凝縮手段において回収される凝縮液中への実質的に完全な凝縮のために、水蒸気を実質的に含まない。
【0123】
凝縮手段350からの未凝縮排ガスは、約10〜約15kg/cm2の加圧下であり、動力回収装置に直接送るか、或いは動力回収に先だって腐食性で燃焼性の種を除去するための汚染制御装置に送ることができる。図1に示すように、未凝縮ガスは、まず、ガス中に残留する未反応の供給材料、及び微量の溶媒酢酸及び/又はその反応生成物を除去するための処理に送る。而して、未凝縮ガスは、流れ375で、圧力を実質的に損失することなく、パラキシレン、酢酸、メタノール、及び酢酸メチルを吸収するための高圧吸収器380に移す。吸収塔380は、凝縮後に残留する実質的に水が消耗した気体を受容し、1以上の液体スクラビング剤と接触させることによって酸化工程からのパラキシレン、溶媒酢酸及びその反応生成物を気体から分離するように適合されている。図に示す好ましい吸収器の構造は、気相と液相との間の物質移動を行うための表面を与える多数の内部に配置されたトレー又は床若しくは構造充填材(図示せず)を有する塔380を含む。それぞれ流れ381及び383で吸収器へスクラビング剤を加えるための流入口(図示せず)が、塔の1以上の上部部分並びに1以上の下部部分に配置される。吸収器は、また、吸収器への流入気体の凝縮できない成分を含む加圧下のスクラビングされた気体がそれから流れ385中に取り出される上部排気口382、及びパラキシレン、酢酸、メタノール、及び/又は酢酸メチルの1以上を含む気相からの成分がその中にスクラビングされた液体酢酸流を取り出すための下部流出口384も有する。塔底液が塔の下部部分から取り出され、回収した成分を再使用するために反応容器110に送られる。
【0124】
凝縮手段350、或いは図1に示されるように高圧吸収器から排気口382から取り出された加圧気体は、凝縮器又は吸収器からの気体中の有機成分及び一酸化炭素を二酸化炭素及び水に転化するために、例えば390における汚染制御手段に送ることができる。好ましい汚染制御手段は、気体を受容し、場合によってはそれを加熱して燃焼を促進し、装置を通る気体流が実質的に影響を受けないようにセルラー形状又は他の形状の担体上に配置された高温安定性の触媒と気体を接触させるように適合された接触酸化ユニットである。吸収器380からの塔頂ガスは、プレヒーター392及び接触酸化ユニット394を含む汚染制御システム390に送られる。ガスは、プレヒーター内において約250〜450℃に加熱され、約10〜約15kg/cm2の加圧下で酸化ユニット394を通り、ここで有機成分及び副生成物が、有益な環境管理により適した化合物に酸化される。
【0125】
酸化された高圧ガスは、接触酸化ユニット394から、発電機420に接続された膨張器400に送られる。酸化高圧ガスからのエネルギーは、膨張器400内で仕事に変換され、この仕事は発電機420によって電気エネルギーに変換される。膨張したガスが膨張器から排出され、これは、好ましくは苛性洗浄及び/又は放出を適当に管理するための他の処理を行った後に大気中に放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、本発明の幾つかの態様によって芳香族カルボン酸を製造及び精製するために用いる他の装置との統合を包含する、本発明の好ましい態様による装置及び方法を示すフロー図である。
【図2】図2は、本発明の幾つかの態様による方法を実施するのに有用な、本発明の好ましい態様による装置の好ましい形態の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの酸への芳香族炭化水素前駆体を含む供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相酸化反応混合物中、少なくとも一つの重金属成分を含む触媒組成物の存在下、液相酸化反応混合物を保持し、且つ液相酸化反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物、並びに、溶媒モノカルボン酸、水、及び少量の芳香族炭化水素前駆体、並びに前駆体及び溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物を含む高圧気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下の反応領域において、気体状酸素と接触させ;
反応領域から取り出された高圧気相を、芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物が第1の液相に選択的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に選択的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、及び酸化副生成物を、少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び少なくとも一つの、溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び少なくとも一つの、水蒸気を含む溶媒モノカルボン酸が消耗した第2の高圧気相に実質的に分離することができる分離領域に移し;そして
分離領域から、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、並びに芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相を、別々の流れで取り出す;
工程を含む、芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項2】
分離領域において、溶媒モノカルボン酸、水及び酸化副生成物を分離する工程であって、
分離領域の第1段階から第2段階、更に第3段階への気相流が、分離領域の第3段階から第2段階、更に第1段階への還流液相の対向流と接触するように、反応領域から取り出された高圧気相を分離装置の第1段階に、還流液を分離装置の第3段階に送り;
溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相及び高圧の溶媒モノカルボン酸が消耗した中間気相が形成されるように、第1段階において対向して流れる気相及び還流液相中の水及び溶媒モノカルボン酸を実質的に分離し;そして
芳香族炭化水素前駆体の副生成物が還流液相に取り出され、溶媒モノカルボン酸及び芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない水蒸気を含む高圧の第2の中間気相が形成されるように、第2段階において対向して流れる気相及び還流液相中の水及び副生成物を実質的に分離し;そして
溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び水蒸気及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含み、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相が形成されるように、第3段階において対向して流れる気相及び還流液相中の水及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を実質的に分離する;
ことを含む工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分離領域から、溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まず水を含む第2の液相を回収する工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
精製領域において少なくとも一つの水含有液体が第2の液相を含むように、分離領域から抜き出された第2の液相を芳香族カルボン酸精製領域に送る工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
分離装置の第1段階が、溶媒モノカルボン酸の少なくとも約95重量%が第1段階の還流液に取り出されるように分離領域に送られる高圧気相中の水及び溶媒モノカルボン酸を分離することができる理論平衡段を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
還流液を分離領域の第1段階に供給する請求項2に記載の方法。
【請求項7】
第1段階に供給される還流液が、精製領域から分離領域へ送られる精製母液を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分離領域の第3段階に供給される還流液が、水蒸気及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含み、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相から凝縮された液体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
芳香族炭化水素前駆体がパラ−キシレンであり、溶媒モノカルボン酸が酢酸を含み、分離領域から取り出される第2の液相が、溶媒モノカルボン酸、メタノール及び酢酸メチルを実質的に含まない水を含み、第2の高圧気相が、p−トルイル酸を実質的に含まない水蒸気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない水を含む第2の高圧気相を凝縮して、水含有凝縮液及び高圧凝縮排ガスを形成し、高圧凝縮排ガスから少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸の副生成物を回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精製領域において不純芳香族カルボン酸を精製する方法が、
(a)水含有液体中に溶解又はスラリー化した芳香族カルボン酸及び不純物を含む精製反応溶液を形成し;
(b)水含有液体中に芳香族カルボン酸及び不純物を含む精製反応溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒の存在下において、水素と接触させて精製液体反応混合物を形成し;
(c)芳香族カルボン酸及び不純物を含む精製液体反応混合物から、減少した不純物レベルの芳香族カルボン酸を含む固体精製生成物及び精製母液を回収し;
(d)芳香族カルボン酸、不純物、水含有液体を含む精製液体反応混合物から回収された固体精製芳香族カルボン酸生成物を、少なくとも一つの水含有液体で洗浄する;
工程を含む、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
置換基をカルボン酸基に酸化することのできる少なくとも一つの置換芳香族炭化水素を含む供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相酸化反応混合物中、少なくとも一つの重金属成分を含む触媒組成物の存在下、液相酸化反応混合物を保持し、且つ液相酸化反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物、並びに、水、モノカルボン酸、未反応の置換芳香族炭化水素、酸素、及び反応副生成物を含む高圧気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下の反応領域において、気体状酸素と接触させることを含む少なくとも一つの液相酸化工程;
少なくとも一つの液相酸化工程からの液相酸化反応混合物から回収された、その中に芳香族カルボン酸及び不純物が溶解した水含有液体を含む精製反応溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒金属を含む触媒の存在下で、水素と接触させて、水含有液体中に溶解した芳香族カルボン酸及び水素化不純物を含む精製液体反応混合物を形成することを含む少なくとも一つの精製工程;及び
少なくとも一つの液相酸化工程の反応領域から取り出された高圧気相を、芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物が第1の液相に選択的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に選択的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、及び酸化副生成物を、少なくとも一つの、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び少なくとも一つの、溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び少なくとも一つの、水蒸気を含む溶媒モノカルボン酸が消耗した第2の高圧気相に実質的に分離することができる分離領域に移し、分離領域から、溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相を取り出すことを含む、少なくとも一つのオフガス分離工程;及び
少なくともオフガス分離工程における分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を、少なくとも一つの精製工程において用いるか、又は回収、分離又はその生成物の洗浄のための水含有液体が凝縮液を含むように精製領域に送ることを含む少なくとも一つの工程;
を含む、芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項13】
少なくとも一つの精製工程が、水含有液体中に、少なくとも一つの液相酸化工程において液体酸化反応混合物から取り出された芳香族カルボン酸及び酸化副生成物を含む不純物を含む固体生成物を溶解して精製溶液を形成することを含む工程を含み、水含有液体が、少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つの精製工程が、精製液体反応混合物から回収された芳香族カルボン酸及び減少したレベルの不純物を含む固体生成物の水含有液体中スラリーを形成することを含む工程を含み、水含有液体が、少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの精製工程が、精製液体反応混合物から回収された減少した不純物レベルを有する芳香族カルボン酸を含む固体生成物を水含有液体で洗浄することを含む工程を含み、水含有液体が、少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
減少した不純物レベルを有する固体で純粋な形態の芳香族カルボン酸及び精製母液を、少なくとも一つの精製工程において精製液体反応混合物から回収し、精製母液を、分離領域に供給される還流液が精製母液を含むように少なくとも一つのオフガス分離工程に送る少なくとも一つの工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない水を含む第2の高圧気相を凝縮して、水含有凝縮液を形成する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
分離領域に供給される還流液が水含有凝縮液を含むように、水含有凝縮液を少なくとも一つのオフガス分離工程における分離領域に送る工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない水含有第2高圧気相からエネルギーを回収する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも一つの液相酸化工程における置換芳香族炭化水素がパラ−キシレンであり、液相酸化工程における溶媒モノカルボン酸が酢酸である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出される溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まない第2の液相が、酢酸、メタノール、及び酢酸メチルを実質的に含まず、分離領域から取り出される第2高圧気相がp−トルイル酸を実質的に含まない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも一つのオフガス分離工程において分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の酸化副生成物を実質的に含まない水含有第2高圧気相を凝縮して、水含有凝縮液及び高圧凝縮排ガスを形成し、高圧凝縮排ガスから少なくとも一つの溶媒モノカルボン酸の副生成物、未反応の芳香族供給材料、又はこれらの混合物を回収する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
(a)芳香族カルボン酸への芳香族炭化水素前駆体を含む供給材料と気体状酸素とを、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相酸化反応混合物中、重金属成分を含む触媒組成物の存在下、液体反応混合物を保持し、且つ液相酸化反応混合物中に溶解又は懸濁した芳香族カルボン酸及び置換芳香族炭化水素の副生成物を含む不純物、並びに、溶媒モノカルボン酸、水、置換芳香族炭化水素の副生成物、及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含む高圧気相を形成するのに有効な昇温及び昇圧下の反応領域において接触させ;
(b)液相酸化反応混合物から、芳香族カルボン酸及び反応副生成物を含む不純物を含む固体生成物を回収し;
(c)芳香族カルボン酸、及び置換芳香族炭化水素の副生成物を含む不純物を含む液相酸化反応混合物から回収された固体生成物を、少なくともその一部が工程(g)にしたがって回収された第2の液相を含む水含有液体中に溶解又は懸濁して、精製溶液を形成し;
(d)精製溶液を、昇温及び昇圧下、水素化触媒の存在下で、水素と接触させて精製液体反応混合物を形成し;
(e)精製液体反応混合物から、減少した不純物レベルを有する芳香族カルボン酸を含む固体精製生成物、並びに、水、及び少量の置換芳香族炭化水素前駆体の副生成物、その水素化誘導体、又はこれらの組み合わせを含む液体精製母液を回収し;
(f)溶媒モノカルボン酸、水蒸気、置換芳香族炭化水素の副生成物、及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含む工程(a)からの高圧気相を、還流液が供給され、置換芳香族炭化水素の酸化副生成物が第1の液相に実質的に分配され、溶媒モノカルボン酸の酸化副生成物が第2の高圧気相に実質的に分配されるように、溶媒モノカルボン酸、水、及び副生成物を、少なくとも一つの、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び少なくとも一つの、溶媒モノカルボン酸を実質的に含まず水に富む第2の液相、及び少なくとも一つの、水蒸気を含む溶媒モノカルボン酸が消耗した第2の高圧気相に実質的に分離することができる分離領域に移し;そして
(g)分離領域から、溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相、及び溶媒モノカルボン酸及びその酸化副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相、並びに芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相を、別々の流れで取り出し;
(h)工程(c)、(d)、又は(e)の少なくとも一つにおける水含有液体が第2の液相を含むように、工程(g)において分離領域から取り出された溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まず水に富む第2の液相を、工程(c)、(d)、又は(e)の少なくとも一つに送る;
工程を含む、芳香族カルボン酸の製造方法。
【請求項24】
工程(f)における分離領域に供給される還流液が精製母液を含むように、工程(e)にしたがって回収された精製母液を工程(f)に送る工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(g)にしたがって分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相から、水含有凝縮液を回収する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
工程(f)における分離領域に供給される還流液が凝縮液を含むように、第2の高圧気相から回収された水含有凝縮液を工程(f)に送る工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
工程(f)における分離領域に供給される還流液が精製母液を含むように、工程(e)にしたがって回収された精製母液を工程(f)に送る工程を更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
凝縮液を含む還流液を、その上部部分において分離領域に供給する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
精製母液を含む還流液を、その下部部分において分離領域に供給する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
精製母液を含む還流液を、その下部部分において分離領域に供給する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
工程(g)にしたがって分離領域から取り出す第2の液相を、上部部分と下部部分の間の中間部分において分離領域から取り出す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程(g)にしたがって分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相からエネルギーを回収する工程を更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
工程(g)にしたがって分離領域から取り出された芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相からエネルギーを回収する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
エネルギーを仕事の形態で回収する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
エネルギーを熱の形態で回収する請求項33に記載の方法。
【請求項36】
置換芳香族炭化水素がパラ−キシレンであり、溶媒モノカルボン酸が酢酸を含む、請求項23〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
工程(g)において分離領域から取り出される第2の液相が、酢酸、メタノール、及び酢酸メチルを実質的に含まず、分離領域から取り出される第2の高圧気相がp−トルイル酸を実質的に含まない、請求項23〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
置換芳香族炭化水素供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中で、液相反応混合物が保持され、溶媒モノカルボン酸及び水蒸気を含む高圧塔頂気相が反応容器内で生成するような条件下で、気体状酸素によって液相酸化するための反応容器から取り出される高圧塔頂気相を、受容し、分別領域の第1段階に送るための、少なくとも一つの下部気体流入口;及び
多数の理論平衡段で、それを通る対向流で気相と液相とを接触させるための容器の内部容積内の分別領域であって、次の要素:
溶媒モノカルボン酸に富む第1の液相が還流液中に取り出され、溶媒モノカルボン酸が消耗した高圧の水蒸気を含む第1の中間気相が形成されるように、高圧気相中の水及び溶媒モノカルボン酸を、分別領域の中間段階から受容する還流液の成分を含む還流液の対向流と接触させて実質的に分離することができ、それから還流液を受容するための分別領域の中間部分、及びそれへの第1の中間気相の流路と流体連通しており、その中へ第1の液相が取り出される還流液を液体受容器に送る手段を有している第1の部分;
芳香族炭化水素前駆体の副生成物が還流液中に取り出され、溶媒モノカルボン酸及び芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない水蒸気を含む高圧の第2の中間気相が形成されるように、第1の中間気相中の水及び置換芳香族炭化水素供給材料の液相酸化副生成物を、分離装置の上部部分から受容する還流液の液体成分を含む還流液の対向流と接触させて実質的に分離することができ、それから還流液を受容するための分別領域の上部部分、及びそれへの第2の中間気相の流路と流体連通している中間部分;及び
溶媒モノカルボン酸及びその副生成物を実質的に含まない水を含む第2の液相が還流液中に取り出され、水蒸気及び溶媒モノカルボン酸の副生成物を含み、芳香族炭化水素前駆体の副生成物を実質的に含まない第2の高圧気相が形成されるように、第2の中間気相及び上部部分に供給される還流液の少なくとも一つの中の水及び溶媒モノカルボン酸の液相酸化副生成物を、還流液の対向流と接触させて実質的に分離することができ、その中へ第2の液相が取り出される還流液の少なくとも一部を収集するための収集手段をその下部に部分に有する上部部分;
を有する分別領域;
分別領域の第1の部分から、その中に第1の液相が取り出された還流液を受け取るための液体受容器;及び
装置から液体を取り出すための、液体受容器と連通している少なくとも一つの液体流出口;及び
分別領域の上部部分の上部領域中に還流液を導入するための、少なくとも一つの液体流入口;及び
分別領域の下部部分の上部領域中に還流液を導入するための、少なくとも一つの液体流入口;及び
その中に第2の液相が取り出された還流液の少なくとも一部を装置から取り出すための収集手段と連通している少なくとも一つの液体流出口;
を具備する、内部容積を画定する実質的に円柱状で実質的に被包された容器を有する、液相反応混合物中での置換芳香族炭化水素供給材料の液相酸化による芳香族カルボン酸の製造において生成する反応器オフガスの成分を分離する装置。
【請求項39】
分別領域が約20〜約80の理論平衡段を与える請求項38に記載の装置。
【請求項40】
分別領域の第1の部分が、溶媒モノカルボン酸の少なくとも約95重量%が還流液に取り出されるように、水及び溶媒モノカルボン酸を高圧気相中で分離することができる、請求項38に記載の装置。
【請求項41】
収集手段と連通している少なくとも一つの流出口と、還流液を分別領域の下部部分の上部領域中に導入するための少なくとも一つの流入口とが、約1〜約10理論平衡段により分離されている、請求項38に記載の装置。
【請求項42】
収集手段と連通している少なくとも一つの流出口と、還流液を分別領域の上部部分の上部領域中に導入するための少なくとも一つの流入口とが、約1〜約10理論平衡段により分離されている、請求項38に記載の装置。
【請求項43】
少なくとも一つの蒸留カラムの形態の請求項38〜42のいずれかに記載の装置。
【請求項44】
置換芳香族炭化水素供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中、液相反応混合物を保持し、溶媒モノカルボン酸及び水蒸気を含む高圧塔頂気相が反応容器内で生成するような条件下で、気体状酸素によって液相酸化するための反応容器であって、高圧塔頂気相を受容して分別領域の第1段階に送るための少なくとも一つの下部気体流入口と流体連通しており、それから高圧塔頂気相を取り出すための少なくとも一つの排気口を有する反応容器を更に具備する、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
置換芳香族炭化水素供給材料を、モノカルボン酸溶媒及び水を含む液相反応混合物中、液相反応混合物を保持し、溶媒モノカルボン酸及び水蒸気を含む高圧塔頂気相が反応容器内で生成するような条件下で、気体状酸素によって液相酸化するための反応容器であって、高圧塔頂気相を受容して分別領域の第1段階に送るための少なくとも一つの下部気体流入口と流体連通しており、それから高圧塔頂気相を取り出すための少なくとも一つの排気口を有する反応容器を更に具備する、請求項38〜42のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−538213(P2008−538213A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503155(P2008−503155)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/010486
【国際公開番号】WO2006/102459
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】