説明

つなぎ装置、仮設構造物の支持方法、仮設構造物の支持構造

【課題】建物と仮設構造物との間で回転移動が生じた場合にも損傷することがなく、簡単な構成のつなぎ装置を提供する。
【解決手段】建物1の高さ方向に沿って延びるように設けられる仮設構造物2を建物1により支持するためのつなぎ装置100は、一端が建物1側に回動可能に接続され、他端が仮設構造物2側に回動可能に接続された少なくとも3本の長手形状を有する支持部材110を備え、支持部材110は、所定の大きさ未満の軸力に対しては、実質的に伸縮せず、所定の大きさ以上の軸力に対しては、その軸力に応じて伸縮可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンや工事用エレベータなどの仮設構造物を建物に支持する構造及びこの支持構造に用いられるつなぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設工事の際に設置されるタワークレーンや工事用エレベータなどの仮設構造物は、建物と仮設構造物とを接続するように設けられたつなぎ装置により支持されている。ここで、建物に地震などにより振動が加わると、免震構造を有する建物は免震層の上下で大きな層間変位が生じるため、建物に取り付けられた仮設構造物の免震層の上下の部分の間に大きな変形が発生してしまう虞がある。
【0003】
このように仮設構造物に大きな変形が発生するのを防止するため、例えば特許文献1には、工事用タワークレーンのポストを取り囲むように略正方形形状のフレームを配置し、フレームを建物に固定されたステー材で支持し、フレームの四隅とポストとを結ぶように摩擦ダンパーを介装したつなぎ装置が記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、工事用エレベータのガイドレールを支持しているサポートフレームに対して、水平面内一方向へ移動可能にスプリングフレームを設け、サポートフレームの移動を吸収する第1の免震部をサポートフレームとスプリングフレームとの間に設け、躯体側サポートフレームに対してこれと直交する方向に移動可能な躯体側スプリングフレームを設け、躯体側サポートフレームの移動を吸収する第2の免震部を躯体側スプリングフレームと躯体側サポートフレームとの間に設け、スプリングフレームと躯体側スプリングフレームとを結合したつなぎ装置が記載されている。
【特許文献1】特開2006−16101号報
【特許文献2】特開2005−225665号報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のつなぎ装置では、タワークレーンのポストを取り囲むようにフレームを設けなければならず、つなぎ装置が大掛かりになってしまう。
また、特許文献2記載のつなぎ装置では、建物が仮設構造物に対して、近接及び離間する方向や横方向に移動した場合には、これに応じて変形することができるが、建物が仮設構造物に対して回転移動した場合には、これに応じて変形することができないため、タワークレーンのポストに大きな変形が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、建物と仮設構造物との間で回転移動が生じた場合にもこれに応じて変形することができる、簡単な構成のつなぎ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のつなぎ装置は、建物の高さ方向に沿って延びるように設けられる仮設構造物を前記建物により支持するためのつなぎ装置であって、一端が前記建物側に回動可能に接続され、他端が前記仮設構造物側に回動可能に接続された少なくとも3本の長手形状を有する支持部材を備え、前記支持部材は、所定の大きさ未満の軸力に対しては、実質的に伸縮せず、前記所定の大きさ以上の軸力に対しては、その軸力に応じて伸縮可能であることを特徴とする。
【0008】
また、前記少なくとも3本の支持部材のうち何れか2本の支持部材は、前記建物側又は前記仮設構造物側の一方に同一又は互いに近接した位置で接続され、前記建物側又は前記仮設構造物側の他方に互いに離間した位置で接合され、これら2本の支持部材と、前記建物又は前記仮設構造物の他方とで略三角形状を構成してもよい。
また、前記支持部材は、一端が前記建物側に回動可能に接続された第1の部材と、一端が前記仮設構造物側に回動可能に接続された第2の部材と、前記第1の部材と第2の部材との間に介装されたダンパーと、を備えてもよい。
【0009】
また、前記ダンパーは、摩擦ダンパー、オイルダンパー、粘弾性ダンパー、又は鉛押し出し型ダンパーであってもよい。
【0010】
上記のつなぎ装置によれば、支持部材が適宜伸縮することにより、仮設構造物に対して建物が回転移動する場合にも、変形に追随することができる。また、比較的に簡単な構成であるため、装置が大掛かりとならない。
【0011】
また、本発明のつなぎ方法は、建物の高さ方向に沿って延びるように設けられる仮設構造物を前記建物により支持する方法であって、所定の大きさ未満の軸力に対しては、実質的に伸縮せず、前記所定の大きさ以上の軸力に対しては、その軸力に応じて伸縮可能である少なくとも3本以上の長手形状を有する支持部材を、一端を前記建物側に回動可能に接続し、他端を前記仮設構造物側に回動可能に接続したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の仮設構造物の支持構造は、建物の高さ方向に沿って設けられる仮設構造物を、複数のつなぎ装置を用いて前記建物により支持する支持構造であって、前記複数のつなぎ装置の少なくとも一部を上記のつなぎ装置としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の仮設構造物の固定構造は、免震層を備えた建物の高さ方向に沿って設けられる仮設構造物を、複数のつなぎ装置を用いて前記建物により支持する支持構造であって、前記複数のつなぎ装置のうち、少なくとも前記免震層の直上位置又は直下位置にあたるつなぎ装置を上記のつなぎ装置としたことを特徴とする。
【0014】
本発明の仮設構造物の固定構造によれば、地震動が建物に作用して、建物が相対的に移動した場合にも、上記のつなぎ構造がこれに合わせて変形するため、仮設構造物に過度の変形荷重が作用するのを防止し、仮設構造物が破損するのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のつなぎ装置によれば、平常時には大きな荷重が作用せずに、支持部材が伸縮しないため、仮設構造物を支持することができ、地震により一定以上の荷重が作用すると、支持部材が適宜伸縮する。このため、仮設構造物に対して建物が回転移動する場合にも、これに合わせて変形することができる。また、比較的に簡単な構成であるため、装置が大掛かりとならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の仮設構造物のつなぎ装置及び支持構造の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では仮設構造物の一例としてタワークレーンのポストを支持する場合について説明する。
まず、本実施形態のつなぎ装置について説明する。図1は、本実施形態のつなぎ装置100を示す平面図である。同図に示すように、本実施形態のつなぎ装置100は、建物1に固定された取り付け部材5と、タワークレーンのポスト2に固定された拘束部材4とを連結する3本の支持部材110(110A、110B、110C)を備える。また、支持部材110とポスト2の間及び支持部材110と建物1とは、水平方向に回動可能にピン接合されている。
【0017】
図2は、支持部材110を拡大して示す図であり、(A)は断面図、(B)は側面図である。同図に示すように、支持部材110は、中央に立設された突出部111Bを備えた断面T字状の第1の部材111と、第1の部材111の突出板材111Aを挟むように板材112Aに取り付けられた一対のL型部材112Bからなる第2の部材112と、第1の部材111の突出部111BとL型部材112Bとが重なりあった部分に介装された摩擦材113と、第1の部材111の突出部111B及びL型部材112Bとを摩擦材113を介装した状態で押圧する皿ばねユニット114とを備える。第1の部材111の一端はポスト2側にピン接合されており、第2の部材112の一端は建物1側にピン接合されている。
【0018】
第1の部材111の突出部111Bには、第2の部材112のL型部材112Bと重なりあった部分に、ボルト117を挿通するためのスリット115が支持部材110の軸方向に延びるように設けられている。また、第2の部材112のL型部材112Bには、第1の部材111の突出部111Bと重なりあった部分にボルト117を挿通するための挿通孔116が設けられている。この挿通孔116の径は、ボルト117の径と略等しく、ボルト117を隙間なく挿通することができる。
【0019】
皿ばねユニット114は、複数の皿ばね119と、皿ばね119に挿通されるボルト117と、ボルト117に締付けられるナット118とで構成される。この皿ばね119が発生する弾性力により第1の部材111の突出部111B及び第2の部材112のL型部材112Bが摩擦材113に押し付けられることで、両者の間に摩擦力が作用する。このため、支持部材110に作用する軸力が静摩擦力以下の場合には支持部材110は伸縮することはないが、軸力が静摩擦力を超えると、支持部材110は軸方向に伸縮することになる。
なお、図2に示す支持部材110は、断面T字状の第1の部材111と、一対のL型部材112Bからなる第2の部材112と、第1の部材111と第2の部材112の間に介装された摩擦材113とを備え、ウェブ部を皿ばねユニット114により押圧する構成としているが、これに限らず、支持部材に断面H型状の部材を用いて、ウェブ部とフランジ部に皿ばねユニットを取り付けた構成としてもよく、要するに摩擦ダンパーとしての機能を備えた構成であればよい。
【0020】
図1に戻り、3本の支持部材110は、平常時には、支持部材110に大きな変形荷重が作用することがないため、支持部材110は軸方向に伸縮しない。また、図1の例では、第2の支持部材110B、第3の支持部材110C及びポスト2が略三角形を構成し、また、第1の支持部材110A、第2の支持部材110B及び建物1が略三角形を構成するトラス状の構造となっている。このため、支持部材110が伸縮しない平常時においては、ポスト2は建物1に対して強固に固定される。
【0021】
次に、図3〜図5を参照して地震動や強風により建物1とポスト2とが、相対的に移動した場合のつなぎ装置100の挙動について説明する。
まず、建物1がポスト2に対して横方向(図3〜図5における左右方向)に移動する場合のつなぎ装置100の挙動について説明する。図3は、地震動により建物1がポスト2に対して横方向に移動した状態のつなぎ装置100を示す模式図であり、(A)は移動前の状態を、(B)は建物1が図中左方向に移動した状態を、(C)は建物1が図中右方向に移動した状態を示す。
地震動等により建物1がポスト2に対して図中左方向に移動すると、第1の支持部材110Aには引張軸力が作用し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cには圧縮軸力が作用する。この軸力が一定以上となると、図3(B)に示すように、第1の支持部材110Aが伸長し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cが収縮する。
【0022】
また、地震動等により建物1がポスト2に対して図中右方向に移動すると、第1の支持部材110Aには圧縮軸力が作用し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cには引張軸力が作用する。この軸力が一定以上となると、図3(C)に示すように、第1の支持部材110Aが収縮し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cが伸長する。このように、本実施形態によれば、地震動等により建物1がポスト2に対して横方向に移動しても、つなぎ装置100がこれに追従して変形することで、建物1とポスト2の変位差を吸収することができる。
【0023】
次に、建物1がポスト2に対して離間又は近接する方向に移動する場合のつなぎ装置100の挙動について説明する。
図4は、地震動等により建物1がポスト2に対して離間又は近接する方向に移動した状態のつなぎ装置100を示す模式図であり、(A)は移動前の状態を、(B)は建物1が近接する方向に移動した状態を、(C)は建物1が離間する方向に移動した状態を示す。
地震動等により建物1がポスト2に対して近接する方向に移動すると、第1の支持部材110A、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cには圧縮軸力が作用する。この軸力が一定以上となると、図4(B)に示すように、第1の支持部材110A、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cが収縮する。
【0024】
また、地震動等により建物1がポスト2に対して離間する方向に移動すると、第1の支持部材110A、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cには引張軸力が作用する。この軸力が一定以上となると、図4(C)に示すように、第1の支持部材110A、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cが伸長する。このように、本実施形態によれば、地震動等により建物1がポスト2に対して離間又は近接する方向に移動しても、つなぎ装置100がこれに追従して変形することで、建物1とポスト2の変位差を吸収することができる。
【0025】
次に、地震動等により建物1がポスト2に対して回転移動する場合のつなぎ装置100の挙動について説明する。
図5は、地震動等により建物1がポスト2に対して回転移動した状態のつなぎ装置100を示す模式図であり、(A)は移動前の状態を、(B)は建物1が図中時計回りに回転移動した状態を、(C)は建物1が図中反時計回りに回転移動した状態を示す図である。
地震動等により建物1がポスト2に対して図中時計回りに回転移動すると、第1の支持部材110Aには圧縮軸力が作用し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cには引張軸力が作用する。この軸力が一定以上になると、図5(B)に示すように、第1の支持部材110Aは収縮し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cが収縮する。
【0026】
また、地震動等により建物1がポスト2に対して図中反時計周りに回転移動すると、第1の支持部材110Aは引張軸力が作用し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cには圧縮軸力が作用する。この軸力が一定以上となると、図5(C)に示すように、第1の支持部材110Aは伸長し、第2の支持部材110B及び第3の支持部材110Cが収縮する。このように、本実施形態によれば、建物1が地震動等により回転移動しても、つなぎ装置100が、これに追従して変形することで、建物1とポスト2の変位差を吸収することができる。
【0027】
以上説明したように本実施形態によれば、建物1が横方向の移動、離間又は近接する方向の移動、及び回転移動しても、つなぎ装置100がこの変形を吸収することができる。さらに、これらの移動が組み合わさった場合にも、第1の支持部材110A、第2の支持部材110B、及び第3の支持部材110Cが適宜伸縮することにより、建物1とポスト2との変位差を吸収できる。
【0028】
なお、上記の説明において、つなぎ装置100を図1に示すような構成としたが、これに限らず、例えば、図6に示すような構成としてもよく、要するに3本以上の支持部材110により、平常時にポスト2を建物1に対して相対変位しないように支持できる構成であればよい。
【0029】
また、本実施形態では、支持部材110の第1の部材111と、第2の部材112とが重なり合う部分に摩擦材113を介装する構成としたが、これに限らず、第1の部材111と第2の部材112とに挿通孔116を設け、第1部材及び第2部材の挿通孔116に、一定以上のせん断荷重が作用すると折れるような棒材を貫通させる構成としてもよい。また、これらの構成の支持部材に粘弾性ダンパーなどのエネルギー吸収機構を取り付けてもよい。
また、支持部材110を、第1の部材111と、第2の部材112との間にオイルダンパー、粘弾性ダンパー、鉛押し出し型ダンパーなどのダンパーを介装する構成としてもよい。上記のような構成とした場合にも、支持部材110は、一定未満の軸力に対しては、実質的に伸縮せず、一定以上の軸力に対しては、伸縮可能となる。
【0030】
次に、上述した本実施形態のつなぎ装置を用いた仮設構造物の支持構造を説明する。なお、以下の説明では、免震層を備えた建物に仮設構造物として建物外部に設置されたタワークレーンのポストを支持する場合を例として説明する。
図7は、本実施形態のつなぎ装置100を用いて建物1にタワークレーンのポスト2を支持する支持構造10を示す図であり、(A)は平常時の状態を、(B)は地震動等により建物1の免震層3より上の部分がポスト2側に移動した状態を、(C)は、免震層3より上の部分がポスト2と反対側に移動した状態を示す図である。図7(A)に示すように、仮設構造物の支持構造10は、タワークレーンのポスト2と、建物1とを結ぶように設けられた複数のつなぎ装置からなり、免震層3の直上及び直下にあたる部分のつなぎ装置には、上述した本実施形態のつなぎ装置100が用いられ、免震層3の直上及び直下にあたる部分以外のつなぎ装置には、従来のつなぎ装置20が用いられている。図7(A)に示すように、平常時のように大きな外力が作用していない場合には、つなぎ装置100を構成する支持部材110に大きな軸力が作用しないため、つなぎ装置100は変形せずに、ポスト2を支持することができる。
【0031】
また、図7(B)に示す如く、地震動等により建物1の免震層3より上の部分がポスト2側に近接することにより大きな層間変位が発生した場合には、免震層3の直上及び直下に位置するつなぎ装置100が建物1とポスト2との変位差を吸収するように変形する。このため、ポスト2に過大な変形が発生するのを防止できる。
【0032】
また、図7(C)に示す如く、地震動等により建物1の免震層3より上の部分がポスト2から離間するように移動した場合にも、免震層3の直上及び直下に位置するつなぎ装置100が建物1とポスト2との変位差を吸収するように変形する。これにより、ポスト2に過大な変形が発生するのを防止できる。
【0033】
また、建物1の免震装置より上の部分がポスト2に対して横方向(すなわち、図7の紙面に垂直な方向)に移動した場合、回転移動した場合も近接又は離間した場合と同様に、免震層3にあたる部分のつなぎ装置100が建物1とポスト2との変位差を吸収するように変形することで、ポスト2に過度の変形が発生するのを防止できる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のつなぎ装置100によれば、地震動等により建物1がタワークレーンのポスト2に対して水平面内で相対的に変位した場合にも、それに合わせて変形することができる。このため、このつなぎ装置100を用いた支持構造10によれば、免震層3を備えた建物1に地震動等が作用して大きな層間変位が発生した場合にも、ポスト2に大きな変形荷重が作用することがなく、ポスト2が破損するのを防止することができる。また、つなぎ装置100が比較的に簡単な構成なので大掛かりとなることがない。
【0035】
なお、上述した支持構造10では、免震層3の上下にあたる部分のつなぎ装置のみに本実施形態のつなぎ装置100を用いる構成としたが、これに限らず、免震層3の上下にあたる部分以外のつなぎ装置にも、本実施形態のつなぎ装置100を用いてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、免震層3の直上及び直下の位置のつなぎ装置に本実施形態のつなぎ装置100を用いる構成としたが、少なくとも直上及び直下のいずれかの位置に設ければよい。
また、本実施形態では、免震層3が中間部に設けられた建物1にポスト2を支持する場合について説明したが、これに限らず、最下層に免震層3が設けられた建物1にも用いることができる。このような場合にも、免震層3の直上位置にあたる部分のつなぎ装置に本実施形態のつなぎ装置100を用いればよい。また、免震層3を備えていない建物1に支持する場合にも、つなぎ装置100はそのポスト2に対する建物1の移動に合わせて変形できるため、ポスト2に過度の変形が発生するのを防止できる。
【0037】
また、本実施形態では、タワークレーンのポスト2が建物1外部に設置された場合について、説明したがこれに限らず、図8(A)に示すように、建物1内部に設けられたタワークレーンポスト2を支持する場合にも用いることができる。このような場合でも、同図(B)に示すように、地震動などにより免震層3において大きな層間変形が発生した際に、これに合わせてつなぎ装置100が変形することによりポスト2に過大な変形荷重が発生するのを防ぐことができるため、ポスト2が破損するのを防止できる。
【0038】
また、本実施形態では、タワークレーンのポスト2を建物1に支持する場合について説明したが、これに限らず、エレベータのガイドフレームや仮設足場などの仮設構造物を支持する場合にも用いることができる。
また、本実施形態では支持部材110をピン接合により建物1側及びポスト2側に接続する構成としたが、ピン接合に代えてユニバーサルジョイントにより三次元的に回動可能に接続してもよい。これにより、高さ方向に変位が発生した場合にも、支持部材110は、この変位を吸収するように変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態のつなぎ装置を示す平面図である。
【図2】支持部材を示す図であり、(A)は断面図、(B)は側面図である。
【図3】地震荷重により建物がポストに対して横方向に移動する場合のつなぎ装置を示す模式図であり、(A)は移動前、(B)は建物が図中左方向に移動した場合、(C)は建物が図中右方向に移動した場合を示す図である。
【図4】地震荷重により建物がポストに対して離間又は近接する方向に移動する場合のつなぎ装置を示す模式図であり、(A)は移動前、(B)は建物が近接する方向に移動した場合、(C)は建物が離間する方向に移動した場合を示す図である。
【図5】地震荷重により建物がポストに対して回転移動する場合のつなぎ装置を示す模式図であり、(A)は移動前、(B)は建物が図中時計回りに回転移動した場合、(C)は建物が図中反時計回りに回転移動した場合を示す図である。
【図6】つなぎ装置の別の実施形態を示す図である。
【図7】本実施形態のつなぎ装置を用いた免震建物のタワークレーンのポストを支持する支持構造を示す図であり、(A)は平常時を、(B)は地震により建物の免震層より上の部分がポスト側に移動した場合を、(C)は、免震層より上の部分がポストと反対側に移動した場合を示す図である。
【図8】建物内部に設けられたタワークレーンのポストを支持する支持構造を示す図であり、(A)は平常時を、(B)は、地震動により建物に変形が生じた場合を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 建物 2 ポスト
3 免震層 4 拘束部材
10 支持構造 20 従来のつなぎ装置
100 つなぎ装置
110、110A、110B、110C 支持部材
111 第1の部材 112 第2の部材
113 摩擦材 114 皿ばねユニット
115 スリット 116 挿通孔
117 ボルト 118 ナット
119 皿ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の高さ方向に沿って延びるように設けられる仮設構造物を前記建物により支持するためのつなぎ装置であって、
一端が前記建物側に回動可能に接続され、他端が前記仮設構造物側に回動可能に接続された少なくとも3本の長手形状を有する支持部材を備え、
前記支持部材は、所定の大きさ未満の軸力に対しては、実質的に伸縮せず、前記所定の大きさ以上の軸力に対しては、その軸力に応じて伸縮可能であることを特徴とするつなぎ装置。
【請求項2】
前記少なくとも3本の支持部材のうち何れか2本の支持部材は、前記建物側又は前記仮設構造物側の一方に同一又は互いに近接した位置で接続され、前記建物側又は前記仮設構造物側の他方に互いに離間した位置で接合され、これら2本の支持部材と、前記建物又は前記仮設構造物の他方とで略三角形状を構成することを特徴とする請求項1記載のつなぎ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のつなぎ装置であって、
前記支持部材は、
一端が前記建物側に回動可能に接続された第1の部材と、
一端が前記仮設構造物側に回動可能に接続された第2の部材と、
前記第1の部材と第2の部材との間に介装されたダンパーと、を備えることを特徴とするつなぎ装置。
【請求項4】
請求項3記載のつなぎ装置であって、
前記ダンパーは、摩擦ダンパー、オイルダンパー、粘弾性ダンパー、又は鉛押し出し型ダンパーであることを特徴とするつなぎ装置。
【請求項5】
建物の高さ方向に沿って延びるように設けられる仮設構造物を前記建物により支持する方法であって、
所定の大きさ未満の軸力に対しては、実質的に伸縮せず、前記所定の大きさ以上の軸力に対しては、その軸力に応じて伸縮可能である少なくとも3本以上の長手形状を有する支持部材を、一端を前記建物側に回動可能に接続し、他端を前記仮設構造物側に回動可能に接続したことを特徴とする仮設構造物の支持方法。
【請求項6】
建物の高さ方向に沿って設けられる仮設構造物を、複数のつなぎ装置を用いて前記建物により支持する支持構造であって、
前記複数のつなぎ装置の少なくとも一部を請求項1から4何れかに記載のつなぎ装置としたことを特徴とする仮設構造物の支持構造。
【請求項7】
免震層を備えた建物の高さ方向に沿って設けられる仮設構造物を、複数のつなぎ装置を用いて前記建物により支持する支持構造であって、
前記複数のつなぎ装置のうち、少なくとも前記免震層の直上位置又は直下位置にあたるつなぎ装置を請求項1から4何れかに記載のつなぎ装置としたことを特徴とする仮設構造物の支持構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−308297(P2007−308297A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142016(P2006−142016)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】