説明

つり革型情報表示装置

【課題】公共交通機関の車内に設置されたつり革において、前記つり革に電気的に書き換え可能とされ、各種のデータを記憶、保持するメモリーと、電気的に書き換え可能な画像表示装置と、中央演算処理装置と、データ通信手段と、電源と、電力受給手段を有し、前記つり革の持ち手部分に掛かった荷重によって前記画像表示装置に表示された表示物を操作できることを特徴とするつり革型情報表示装置を提供する。
【解決手段】利用者はつり革の持ち手につかまった状態で表示された情報から好みのものを選択でき、利用者一人一人のニーズにあったコンテンツおよび広告情報の提供が可能となるつり革型情報表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共交通機関の車両内に設置されたつり革への画像表示装置に関するもので、特に表示画像を操作できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公共交通機関の車両内に掲示された広告等の表示形態には、広告情報を紙などに印刷し、通路上に吊るしたり、扉横や網棚の上の壁面に張り付けたもの、また、広告物をシールや商品を模した立体物に加工したものをつり革の持ち手以外の部分に取り付けたものが見られる。
【0003】
一般的にこれらの広告は印刷物であり表示できる情報量は紙などの掲示物の大きさに依存する。そのため情報量を増やすには、文字や画像などの表示を小さくし一つの掲示物に情報を詰め込む方法と一つの広告を複数の掲示物に分ける方法がある。
【0004】
前者の場合は広告内容が読みにくくなり広告効果が低下してしまうデメリットがあり、後者の場合は掲示スペースが多く必要となってしまい、車内の空きスペースを利用しての広告では掲示場所に限界が生じる。
【0005】
近年、より多くの広告を表示する方法として、ドア上部や壁面に設置した液晶ディスプレイなどに広告情報を表示する形態が普及している。ここでは列車の運行状況や天気、ニュースといった所謂コンテンツ情報と広告情報を同時にまたは交互に表示させて、乗客の目を引き広告効果を高めている。
【0006】
しかし、これらの広告表示方法では表示機と利用者の関係は1対多数となっており、表示されるコンテンツの内容や広告を利用者全てのニーズに合わせることは困難であり、広告効果を高めるには限界がある。
【0007】
これに対し、利用者一人一人に対して鉄道等の公共交通機関の利用者向けのコンテンツと広告を配信する方法として、携帯電話などの移動体情報端末への情報配信方法が提案されている。
【0008】
下記に本発明に関連する先行技術文献を記載する。
【特許文献1】特開2003−242406
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記した従来の方法では、携帯電話などの移動体情報端末の利用によって利用者一人一人に対してコンテンツや広告情報の提供が可能であるが、例えば手提げ荷物を持った状態でつり革につかまって乗車しているなど、両手がふさがった場合には利用できない。
【0010】
そこで本発明は、つり革に映像表示装置を付加することで利用者一人一人に情報を提供し、利用者が持ち手部分を操作することによって表示情報の選択ができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解決するために、本発明のつり革型情報表示装置は、少なくとも一つの電
源装置と中央演算装置と情報記憶装置と画像表示装置を有し、つり革の持ち手部分に掛かった荷重により入り切りするスイッチにより映像表示装置に表示された表示内容を操作できることを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、利用者はつり革の持ち手につかまった状態で表示された情報から好みのものを選択でき、利用者一人一人のニーズにあったコンテンツおよび広告情報の提供が可能となる。
【0013】
具体的には、請求項1の発明によれば、公共交通機関の車内に設置されたつり革において、前記つり革に電気的に書き換え可能とされ、各種のデータを記憶、保持するメモリーと、電気的に書き換え可能な画像表示装置と、中央演算処理装置と、データ通信手段と、電源と、電力受給手段を有し、前記つり革の持ち手部分に掛かった荷重によって前記画像表示装置に表示された表示物を操作できることを特徴とするつり革型情報表示装置を提供するものである。
【0014】
請求項2の発明によれば、前記画像表示装置が、画像情報を保持するための電力を必要としないマイクロカプセル型電気泳動表示装置である、請求項1に記載のつり革型情報表示装置を提供するものである。
【0015】
請求項3の発明によれば、前記メモリーが、記憶されているデータを保持するための電力を必要としないフラッシュメモリである、請求項1または2に記載のつり革型情報表示装置を提供するものである。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項1から3何れかに記載のつり革型情報表示装置において、つり革の持ち手部分に掛かった荷重の有無で入り切りする手段を備えたものであるつり革型情報表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、公共交通機関の車内での広告等掲示方法において、つり革持ち手部分の操作によって画面に表示された情報を選択できる装置を利用することで、つり革につかまった状態で乗車している利用者一人一人に対して、それぞれが欲するコンテンツや広告情報を提供することができ広告効果を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明のつり革型情報表示装置100の正面図である。
【0019】
つり革型情報表示装置100はマイクロカプセル型電気泳動表示装置102が表示面を外側に向けて設置してある筐体101と吊り紐A103と吊り紐B104と持ち手105より構成さている。吊り紐A103は車両内部の天井などと筐体101を接続し、吊り紐B104は筐体101と持ち手105を接続している。
【0020】
図2は、本発明のつり革型情報表示装置100の側断面図である。
【0021】
筐体101には本体基板201とスイッチ機構614が内蔵されている。
【0022】
本体基板201の片面にはマイクロカプセル型電気泳動表示装置102が取り付けてあり、これとは反対の面には通信装置202とメモリー203とCPU204と蓄電池205と充電コネクタ206が実装されており、それぞれは導線により接続されている。
【0023】
スイッチ機構614は前記本体基板201の背面に設置してあり、スイッチ機構614
の上端に設置の吊り紐固定具A600は吊り紐A103と接続され、スイッチ機構614の下端に設置の吊り紐固定具B613は吊り紐B104と接続されている。
【0024】
図3は前記、マイクロカプセル型電気泳動表示装置102の実施形態の一例を模式的に示す側断面図である。
【0025】
図3に示すマイクロカプセル型電気泳動表示装置102は、表面に透明電極膜302(ITO膜など)が形成されているガラスや高分子樹脂フィルム、例えばポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの透明な基板301の透明電極膜302の面に、スクリーン印刷、スピンコート、ディップコートなどの各種コーティング方法により電子インク304を印刷し、マイクロカプセル表示層306を形成する。次いで、マイクロカプセル表示層306の面に導電性接着剤層305が形成してある。
【0026】
マイクロカプセル型電気泳動表示装置102において、マイクロカプセル表示層306に含まれるマイクロカプセルは、例えば、図4に示すように、メタクリル酸樹脂、ユリア樹脂、アラビアゴム等をカプセル殻401とし、その内部に酸化チタンからなる白の粒子403とカーボンブラックからなる黒の粒子404が、シリコーンオイル等の透明で粘度の高い分散媒402に分散された状態で封入されているものである。
【0027】
白の粒子403である酸化チタンは正電荷を帯びており、一方、黒の粒子404であるカーボンブラックは負電荷を帯びている。これらの特長により、図5に示すように画素電極307と透明電極膜302の間に印加された電圧によって、これらの電極間にあるマイクロカプセル内の白の粒子403または黒の粒子404が、透明電極膜302側または画素電極基板307側に電気泳動し、白または黒の画像を表示することが可能となる。
【0028】
また、これらの粒子の周りは粘性の高い分散媒402で満たされているので、電圧の印加を止めても粒子はその位置に留まり、画像を保持することが可能である。
【0029】
表示できる画像の解像度はマイクロカプセルの大きさにはよらず画素電極基板307の各電極の大きさによる。そのため、文字や絵や写真など様々な画像を表示することができる。
【0030】
図6は前記、スイッチ機構614の実施形態の一例を模式的に示す正面図である。
【0031】
固定板A606には吊り紐固定具支持体605によって吊り紐固定具A600が取り付けられており、固定板A606と吊り紐A103は吊り紐固定具A600を介して接続されている。さらに、固定板A606には固定シャフト611によって固定板B607が接続されている。この固定板B607には可動シャフト通し穴616が開けてある。
【0032】
可動板A608には固定シャフト通し穴615が開けてあり、固定板A606と固定板B607の間を固定シャフト611の軸方向(図では上下方向)に可動できるように可動板A608が取り付けてある。この可動板A608には可動シャフト612によって可動板B609が接続されている。この可動板B609には吊り紐固定具支持体605によって吊り紐固定具B613が取り付けられており、可動板B609と吊り紐B104は吊り紐固定具B613を介して接続されている。
【0033】
可動板A608と固定板B607の間にはスプリング610が可動シャフト612に巻き付けた状態で取り付けてある。固定板B607にはボタンを押している間だけ回路が閉じるスイッチ604が設置してあり、可動板A608にはこのスイッチ604とボタン6
03に対面する位置にボタン押し体602が設置してある。
【0034】
持ち手105に荷重が掛かっていない状態ではスプリング610の復元力によって可動板A608は上方向に持ち上げられている。このときボタン押し体602はボタン603から離れておりスイッチ604の回路は開いている(OFF状態)。一方、持ち手105にスプリング610の復元力以上の荷重を掛けた場合には、可動板A608が引き下げられてボタン押し体602がボタン603を押してスイッチ604の回路が閉じる(ON状態)。
【0035】
図7は前記スイッチ機構614において、OFF状態とON状態を示した正面図である。
【0036】
図8はつり革型情報表示装置の本体基板201に導線を介して接続された動作制御用の各装置の接続関係を示すブロック図である。
【0037】
蓄電池205より供給される電力は本体基板201の導線によって各装置へと伝えられる。蓄電池205には外部電源より充電するための充電用端子206が接続されている。また、中央演算処理装置(CPU204)にはメモリー203と通信装置202とボタン603と連動してON・OFFするスイッチ604と画像表示用ドライバIC208と画面となるマイクロカプセル型電気泳動表示装置105が接続されており、CPU204の指示によってメモリー203に記憶されているコンテンツや広告などの画像情報を画面に表示することができるようになっている。また、メモリーに記憶されているコンテンツや広告などの情報は通信装置202によって更新できるようになっている。
【0038】
図9は表示される画像の一例を示したものである。画像の表示モードは3種あり、「待ち受けモード」では画面には予め設定した時間ごとに広告情報が入れ替えて表示される。「コンテンツ選択モード」では画面にコンテンツタイトルが複数行に分けて表示され、現在のコンテンツの選択状況を示すカーソルが表示されている。「コンテンツ表示モード」では利用者が選択したコンテンツ情報と広告情報を交互に表示する。
【0039】
これらのモードの切り替えはCPU204によって指示される。CPU204はボタン603と連動してON・OFFするスイッチ604の状態によって判断するようにプログラムされた動作アルゴリズムによって指示を決定する。
【0040】
図10は動作アルゴリズムを示したフローチャートである。待ち受けモードではスイッチがOFFまたはt1秒未満のONの場合には待ち受けモードを維持する。スイッチがt1秒以上ONの状態が続いた場合コンテンツ選択モードに切り替わる。
【0041】
コンテンツ選択モードでは図9に示したように画面にはコンテンツタイトルが複数行に分けて表示してあり、スイッチがt1秒未満ONの場合にはコンテンツの選択状況を示すカーソルが移動し次のコンテンツタイトルが選択された状態になる。利用者は複数回この操作を繰り返し好みのコンテンツタイトルにカーソルを移動する。
【0042】
カーソルが好みのコンテンツタイトルを示している状態でスイッチをt1秒以上ONにすると、そのコンテンツに決定され画面がコンテンツ表示モードに切り替わる。
【0043】
一方、t2秒以上OFF状態が続いた場合には利用者がつり革から離れたと判断し画面を待ち受けモードに戻す。
【0044】
コンテンツ表示モードではスイッチがON状態の場合にはコンテンツ画面と広告画面を
順繰りに表示しコンテンツが最終ページとなったら待ち受けモードに切り替わる。
【0045】
ここでも他のモードのときと同様にt2秒以上OFF状態が続いた場合には利用者がつり革から離れたと判断し画面を待ち受けモードに戻す。
【0046】
以上のアルゴリズムによって、利用者はつり革の持ち手に荷重をかけた状態(ON)と荷重をかけない状態(OFF)を作ることでコンテンツを選び、決定し、閲覧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のつり革型情報表示装置の一例を示す正面図。
【図2】本発明のつり革型情報表示装置の一例を示す側断面図。
【図3】マイクロカプセル型電気泳動表示装置の一例を示す側断面図。
【図4】マイクロカプセルを説明する側断面図。
【図5】マイクロカプセル表示層の表示形態の一例を模式的に表す斜視図。
【図6】スイッチ機構の一例を示す正面図。
【図7】スイッチ機構のOFF状態とON状態を示す正面図。
【図8】動作制御用の各装置の接続関係を示すブロック図。
【図9】画面に表示される情報の一例。
【図10】動作アルゴリズムを示したフローチャート。
【符号の説明】
【0048】
100・・・つり革型情報表示機
101・・・筐体
102・・・マイクロカプセル型電気泳動表示装置
103・・・吊り紐A
104・・・吊り紐B
105・・・持ち手
200・・・表面保護板
201・・・本体基板
202・・・通信装置
203・・・メモリー
204・・・CPU
205・・・蓄電池
206・・・充電用端子
207・・・導線
208・・・画像表示ドライバIC
301・・・透明な基板
302・・・透明電極膜
303・・・バインダ樹脂
304・・・電子インク
305・・・導電性接着剤層
306・・・マイクロカプセル表示層
307・・・画素電極基板
401・・・カプセル殻
402・・・分散媒
403・・・白の粒子
404・・・黒の粒子
600・・・吊り紐固定具A
601・・・シャフト固定ボルト
602・・・ボタン押し体
603・・・ボタン
604・・・スイッチ
605・・・吊り紐固定具支持体
606・・・固定板A
607・・・固定板B
608・・・可動板A
609・・・可動板B
610・・・スプリング
611・・・固定シャフト
612・・・可動シャフト
613・・・吊り紐固定具B
614・・・スイッチ機構
615・・・固定シャフト通し穴
616・・・可動シャフト通し穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共交通機関の車内に設置されたつり革において、前記つり革に電気的に書き換え可能とされ、各種のデータを記憶、保持するメモリーと、電気的に書き換え可能な画像表示装置と、中央演算処理装置と、データ通信手段と、電源と、電力受給手段を有し、前記つり革の持ち手部分に掛かった荷重によって前記画像表示装置に表示された表示物を操作できることを特徴とするつり革型情報表示装置。
【請求項2】
前記画像表示装置が、画像情報を保持するための電力を必要としないマイクロカプセル型電気泳動表示装置である、請求項1に記載のつり革型情報表示装置。
【請求項3】
前記メモリーが、記憶されているデータを保持するための電力を必要としないフラッシュメモリである、請求項1または2に記載のつり革型情報表示装置。
【請求項4】
請求項1から3何れかに記載のつり革型情報表示装置において、つり革の持ち手部分に掛かった荷重の有無で入り切りする手段を備えたものであるつり革型情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−52572(P2010−52572A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219400(P2008−219400)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】