説明

はすばギア

【課題】本発明は、ギア回転試験前後での変形量が小さく、かつ、ギア回転試験に伴う音の増大を小さくできるはすばギアを提供することを目的とする。
【解決手段】中心に形成された貫通孔と外周に形成された歯部とを有し、前記貫通孔から外周への方向に放射状に設けられた複数のリブと、前記複数のリブの間に設けられた平板状のウエブと、を備えるはすばギアであって、ポリアセタール樹脂を含有する引張弾性率が3500〜7000MPaのポリアセタール樹脂組成物の成形体であり、ねじれ角が5〜30°、歯幅が1〜20mm、前記ウエブの厚さが1.5〜6mm、前記リブの数が6〜24であるはすばギア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はすばギアに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつ、その加工性が容易であることから、代表的なエンジニアリングプラスチックスとして、電気、電子機器の機構部品、自動車部品及びその他の機構部品を中心に広範囲に亘って用いられている。中でも、摩擦摩耗性、繰り返し衝撃性に優れるとともに射出成形による生産が可能なことから、ポリアセタール樹脂は様々な分野においてギア(歯車)用途として広く利用されている。近年、ギアに求められる性能としては、ギア使用前後での変形量が小さいこと、かつ、ギア使用時の音の発生が小さいことが挙げられる。
【0003】
ところで、ギアの一種であるはすばギアは歯すじがつるまき線をなすギアであるが、かみ合い率が高く静かなギアであるため、プリンター部品を中心として用いられている。近年、プリンター、複写機などのOA機器の高精度化、高速化に伴い、これらのOA機器の動力伝達、回転伝達を行うギアには、その最も重要な目的の一つである回転の角度伝達誤差の小ささを確保するだけでなく、その誤差の小ささを維持するための変形のし難さが要求されている。すなわち、ギアの噛み合いが進行している状態で負荷によって歯に歪みが発生すると、回転時の伝達角度が変動することにより、回転角が一様にならず動的にピッチむらが生じるため、良質の画像が得られない等、OA機器の性能を十分に発揮できなくなる(例えば特許文献1参照)。そこで、ギアの材料には、角度伝達誤差が小さくなるよう高精度の成形を可能にするだけでなく、高い剛性をも確保できることが要求されている。
【0004】
剛性の高いポリアセタール樹脂組成物を得る手法としては、結晶化度を高めるといったようなベース樹脂(ポリアセタール樹脂)自体の物性を変化させる方法、及び、フィラーを組成物に含有させる方法が挙げられる(例えば非特許文献1参照)。これらのうち、ベース樹脂自体の剛性を高める方法は限界があるため、多種のフィラーをポリアセタール樹脂組成物に含有させて剛性を変化させる方法が従来、多く採用されている。ところが、多種のフィラーを含有させると、組成物の成形性が低下したり、収縮異方性、収縮むらなどが生じたりする結果、成形精度の低下を引き起こす。そのため、従来は、ポリアセタール樹脂組成物における好ましいフィラーの配合量が10質量%以下とされている(例えば特許文献2、非特許文献2参照)。
【0005】
また、樹脂組成物から剛性が高く変形し難いギアを得るための他の方法として、形状バランスを決めて成形時に部分加圧したり(例えば特許文献3参照)、熱硬化性樹脂を用いたり(例えば特許文献4参照)、二重射出成形(例えば特許文献5参照)を行ったりする方法も検討されている。さらに、例えば特許文献7では、歯部と軸支持部とウエブとを備えたギアであって、ウエブに周方向リブが形成され、この周方向リブと歯部との間のウエブの周方向断面形状が略波形形状に形成されたギアが提案されている。
【0006】
ギアの剛性が不足すると、実際に使用される回転数や回転トルク下で角度伝達誤差が非常に大きくなり、動的精度が低下することは既に公知の事項として述べられている(例えば特許文献6参照)。現状では、動的高精度のギアを得るためには、材料の弾性率の影響よりも静的精度の影響の方が支配的であるとされている(例えば非特許文献3参照)。また、特定次数の位相差合計値が低く抑えられているギアがトルク変動に鈍いものであることが従来述べられており、ギアのトルク変動依存性は、単に動的高精度の影響が支配的であるとされている(例えば特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−137156号公報
【特許文献2】特開平11−51154号公報
【特許文献3】特開2002−235835号公報
【特許文献4】特開平9−144848号公報
【特許文献5】特開2001−336608号公報
【特許文献6】特開2002−235835号公報
【特許文献7】特開2001−336609号公報
【特許文献8】特開2007−298157号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日刊工業新聞社発行、ポリアセタール樹脂ハンドブック初版1版、P64
【非特許文献2】テナックハンドブック、2002年5月発行版、P167
【非特許文献3】成型加工学会03年度大会発表資料、ポリアセタール樹脂製歯車の回転伝達精度に関する研究
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献3〜5に記載の方法では、設備導入や工程増加等、コストがかかってしまうという問題がある。さらに、特許文献7で提案されたギアは形状が複雑であり、金型等のコストがかかってしまうという問題がある。そこで、これらの方法に代替し、ギア回転試験等によりはすばギアに負荷をかけられても、変形し難くかつ噛み合い時に発生する音の増大を小さくできる手法が求められる。
【0010】
また、どのように高剛性化された材料がどのように評価されることで、高いトルク変動に耐えられるギアとなるのかについて、現行のJIS B1702(1976)で規定される評価方法ではさほど明確にはなっておらず、ギアのトルク変動依存性について、どのような要因に影響されるか更に検討の余地がある。
【0011】
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、ギア回転試験前後での変形量が小さく、かつ、ギア回転試験に伴う音の増大を小さくできるはすばギアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の諸元を有するはすばギアは、特定の引張弾性率を有するポリアセタール樹脂組成物から成形されると、負荷をかけられても変形量及び音の増大を小さくできることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち本発明は下記の通りである。
[1]中心に形成された貫通孔と外周に形成された歯部とを有し、前記貫通孔から外周への方向に放射状に設けられた複数のリブと、前記複数のリブの間に設けられた平板状のウエブと、を備えるはすばギアであって、ポリアセタール樹脂を含有する引張弾性率が3500〜7000MPaのポリアセタール樹脂組成物の成形体であり、ねじれ角が5〜30°、歯幅が1〜20mm、前記ウエブの厚さが1.5〜6mm、前記リブの数が6〜24であるはすばギア。
[2]前記ねじれ角が10〜30°である、[1]のはすばギア。
[3]前記歯幅が7〜20mmである、[1]又は[2]のはすばギア。
[4]前記ウエブの前記厚みが1.8〜6mmである、[1]〜[3]のいずれか一つのはすばギア。
[5]前記リブの数が8〜24である、[1]〜[4]のいずれか一つのはすばギア。
[6]前記ポリアセタール樹脂組成物はフィラーを含有し、そのフィラーの平均粒径は0.01μmを超えて5μm未満であり、前記フィラーの粒子の平均短径に対する平均長径の比が30以下である、[1]〜[5]のいずれか一つのはすばギア。
[7]前記フィラーは炭酸カルシウムである、[6]のはすばギア。
[8]前記フィラーを、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対して5〜120質量部含有する、[6]又は[7]のはすばギア。
[9]前記フィラーを、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対して5〜100質量部含有する、[6]又は[7]のはすばギア。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ギア回転試験前後での変形量が小さく、かつ、ギア回転試験に伴う音の増大を小さくできるはすばギアを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のはすばギアの一例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【図2】図1に示すはすばギアの模式図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
図1及び2は、本実施形態のはすばギアの一例を示す模式図であり、図1の(a)は平面図、(b)は底面図であり、図2の(a)は正面図、(b)は図1のA−A’線に沿った断面図である。本実施形態のはすばギア100は、中心に形成された貫通孔110と外周に形成された歯部120とを有し、貫通孔110から外周への方向に放射状に設けられた複数のリブ130と、複数のリブの間に設けられた平板状のウエブ140とを備える右ねじれ方向のはすばギアであって、ポリアセタール樹脂を含有する引張弾性率が3500〜7000MPaのポリアセタール樹脂組成物の成形体であり、ねじれ角が5〜30°、歯幅が1〜20mm、ウエブの厚さが1.5〜6mm、リブの数が6〜24である。また、そのはすばギア100のモジュールは0.3〜3であると好ましく、リブ130の厚さは1〜5mmであると好ましい。さらに歯たけは低歯、並歯、高歯のいずれであってもよい。はすばギア100は、その外周部に外周リム150を備え、外周リム150の外周面に歯部120が形成されている。はすばギア100は、貫通孔110の外周に円筒状の内周リム160を備え、その内周リム160の内壁である壁部により貫通孔110が包囲されている。また、はすばギア100は、その底面(裏面)にキー溝170を有している。このキー溝170は、はすばギア100を回転させるために貫通孔110内に通された軸芯(図示せず)を嵌合するためのものであり、それにより軸芯がはすばギア100に固定される。
【0018】
本実施形態のはすばギア100は、5〜30°のねじれ角を有すると好ましく、そのねじれ角が10〜30°であればより好ましい。ねじれ角が5°以上であることにより、本発明による上記効果がより十分に発揮されやすくなり、ねじれ角が30°以下であることにより、射出成形等の成形が容易になる。
【0019】
本実施形態のはすばギア100は、1〜20mmの歯幅を有すると好ましく、その歯幅が7〜20mmであればより好ましい。歯幅が1mm以上であることにより本発明による上記効果がより十分に発揮されやすくなり、歯幅が20mm以下であることにより、射出成形等の成形が容易になる。
【0020】
本実施形態のはすばギア100は、そのウエブ140の厚さが1.5〜6mmであると好ましく、ウエブ140の厚さが1.8mm〜6mmであればより好ましい。ウエブ140の厚さが1.5mm以上であることにより本発明による上記効果がより十分に発揮されやすくなり、ウエブ140の厚さが6mm以下であることにより、はすばギア100の成形において冷却時間を短縮でき、生産効率が向上する。
【0021】
本実施形態のはすばギア100は、そのリブ130の数が6〜24であると好ましく、リブ130の数が8〜24であるとより好ましい。リブ130の数が6以上であると本発明による上記効果がより十分に発揮されやすくなり、リブ130の数が24以下であることにより、厚いリブの成形が容易に可能となる。
【0022】
本実施形態のはすばギア100は、そのモジュールが0.3〜3であると好ましい。はすばギア100のモジュールが0.3以上であると噛合い率が高くなり、静音化という効果が得られ、3以下であると成形によるヒケが少なくなるという効果が得られる。
【0023】
本実施形態のはすばギア100は、そのリブ130の厚さが1〜5mmであると好ましい。リブ130の厚さが1mm以上であると歯車の強度向上という効果が得られ、5mm以下であると成形によるヒケが少なくなるという効果が得られる。
【0024】
本実施形態のはすばギア100は、ポリアセタール樹脂を含有するポリアセタール樹脂組成物を成形して得られるものである。上述の諸元を有する本実施形態のはすばギア100について、上記ポリアセタール樹脂組成物の引張弾性率は3500〜7000MPaである。その引張弾性率は4000〜6500MPaであれば好ましく、その上限は6000であるとより好ましく、5000MPaであると更に好ましく、4500MPaであると特に好ましい。その引張弾性率が3500MPa以上であることにより、本発明による上記効果を十分に発揮することができ、引張弾性率が7000MPa以下であることにより、はすばギア100の変形を抑制するのに、多量のフィラーをポリアセタール樹脂組成物中に含有させる必要がなくなるため、その組成物の流動性及び/又は熱安定性の低下に起因して射出成形が困難になる、という問題が生じなくなる。
【0025】
ポリアセタール樹脂組成物の引張弾性率は、シリンダー温度205℃、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度90℃の条件により、ISO9988−2に準拠して、その組成物を射出成形して試験片を得、その試験片についてISO178に準拠して測定されるものである。
【0026】
ポリアセタール樹脂組成物が上述の引張弾性率を有するためには、その組成物の組成を下記の範囲で調整すればよい。
【0027】
まず、本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られるものであり、実質的にオキシメチレン単位のみからなる。ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコール若しくはジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル又は環状ホルマールとを共重合させて得られるものである。また、ポリアセタールコポリマーは、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。さらに、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又は上記ホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー;同じく、両末端若しくは片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。以上のように、本実施形態に係るポリアセタール樹脂として、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いることが可能である。ポリアセタール樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらのうち好ましいのはポリアセタールコポリマーである。
【0028】
ポリアセタール樹脂が、トリオキサンと上記1,3−ジオキソラン等のコモノマーとのポリアセタールコポリマーである場合、一般的には、トリオキサン100mol%に対してコモノマーの共重合割合は0.1〜60mol%であると好ましく、より好ましくは0.1〜20mol%であり、更に好ましくは0.13〜10mol%である。
【0029】
ポリアセタール樹脂を重合により得る際に用いられる重合触媒としては特に制限されないが、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。ただし、ルイス酸はこれらに限定されない。また、プロトン酸、そのエステル又は無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。これらの重合触媒の中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。そのような重合触媒として、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
【0030】
ポリアセタール樹脂の重合方法としては特に限定されないが、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、米国特許第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358号明細書、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、特開平7−70267号公報に記載の方法が挙げられる。
【0031】
ポリアセタール樹脂の重合方法としては、一般には塊状重合が挙げられ、バッチ式、連続式のいずれの方式であってもよい。用いられる重合装置としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が挙げられる。溶融状態のモノマーが重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリアセタール樹脂が得られる。
【0032】
上述のようにして得られたポリアセタール樹脂には、熱的に不安定な末端部(−(OCH2n−OH基)が存在するため、その実用性を向上させるために、不安定な末端部の分解除去処理を行うことが好ましく、下記に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことがより好適である。すなわち、特定の不安定末端部の分解除去処理(以下、単に「不安定末端部除去処理」という。)とは、下記一般式(1)で表される少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下で、ポリアセタール樹脂の融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタール樹脂を溶融させた状態で熱処理する方法である。
【0033】
[R1234+n-n (1)
ここで、式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基の少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を示し、非置換アルキル基又は置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状(すなわち非置換シクロアルキル基又は置換シクロアルキル基)である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を示す。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0034】
第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表されるものであれば特に制限はないが、一般式(1)におけるR1、R2、R3、及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらに、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩が挙げられる。これらの中でも、水酸化物(Xn-=OH-)、硫酸(Xn-=HSO4-、SO42-)、炭酸(Xn-=HCO3-、CO32-)、ホウ酸(Xn-=B(OH)4-)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸塩のなかでは、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩が特に好ましい。
【0035】
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
【0036】
上記熱処理する方法に用いる第4級アンモニウム化合物の量は、ポリアセタール樹脂と第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表される第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50質量ppmであると好ましく、より好ましくは1〜30質量ppmである。
P×14/Q (2)
ここで、式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタール樹脂に対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0037】
第4級アンモニウム化合物の添加量が、上記換算による0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下する傾向にあり、50質量ppmを超えると不安定末端部除去処理後のポリアセタール樹脂の色調が悪化する傾向にある。
【0038】
ポリアセタール樹脂の不安定末端部除去処理は、そのポリアセタール樹脂の融点以上260℃以下の温度でポリアセタール樹脂を溶融させた状態で熱処理することにより達成される。この熱処理に用いる装置には特に制限はないが、押出機、ニーダー等を用いて熱処理することが好適である。また、分解により発生したホルムアルデヒドは減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタール樹脂パウダーに吹きかける方法などが挙げられる。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタール樹脂を熱処理する工程で添加されていればよく、押出機の中に注入してもよい。あるいは、ポリアセタール樹脂組成物に押出機等を用いてフィラーやピグメントの配合を行う場合、樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端部除去処理を行ってもよい。
【0039】
不安定末端部除去処理を、重合により得られたポリアセタール樹脂中の重合触媒を失活させた後に行ってもよく、重合触媒を失活させずに行ってもよい。重合触媒の失活処理としては特に制限されないが、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒を失活させずに、ポリアセタール樹脂の融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱し、重合触媒を揮発除去により低減した後、該不安定末端部除去処理を行うことも有効な方法である。
【0040】
不安定末端部除去処理を行うことにより、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタール樹脂を得ることができる。
【0041】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物は、はすばギア100の変形を抑制する観点から、フィラーを含有すると好ましい。そのフィラーは、粒径が小さいほど、更に、粒子の平均短径(D)に対する平均長径(L)の比である平均アスペクト比(L/D)が小さいほど、はすばギア100表面での収縮を抑制し、成形精度を向上させることができるので好ましい。具体的には、フィラーの分散性と成形精度との関係より、フィラーの平均粒径が0.01μmを超えて5μm未満であると好ましく、また、平均アスペクト比が30以下であると好ましく、それらの両方を満足することがより好ましい。更に好ましくは、平均粒径が0.01μmを超えて4μm未満であり、平均アスペクト比が10未満のフィラー、特に好ましくは平均粒径が0.01μmを超えて3μm未満、平均アスペクト比が2未満のフィラーである。
【0042】
ここで、本明細書において、フィラーの粒子形状及び寸法は、Heywoodの定義を用い、粒子の平面図において、その粒子の輪郭(外周)に接する二つの平行線の最短距離を短径、最長距離を長径として測定される。平均粒径、平均長径、平均短径、平均アスペクト比は、単位体積中に長径Li、短径diのフィラーがNi個存在するとき、以下のように定義される。
平均粒径=平均長径=ΣLi2Ni/ΣLiNi
平均短径=Σdi2Ni/ΣdiNi
平均アスペクト比L/D=(ΣLi2Ni/ΣLiNi)/(Σdi2Ni/ΣdiNi)
【0043】
より具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、測定対象のフィラーのサンプリングを行い、これを用いて粒子像を倍率1千倍から5万倍で撮影し、無作為に選んだ最低100個のフィラー粒子からそれぞれの長さを測定し求める。
【0044】
本実施形態に係るフィラーは、公知のフィラーであれば特に限定されるものではなく、大別して有機フィラー、無機フィラーが挙げられる。
【0045】
有機フィラーとしては、ポリアセタール樹脂と比較して、融点又はガラス転移点が高い炭化水素系の微細な有機フィラーが好ましい。その具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、脂肪族又は芳香族ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の微紛及び微粒子、液晶ポリマー樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリサルフォン樹脂等のスーパーエンジニアプラスチック樹脂の微粉及び微粒子が挙げられる。有機フィラーは、低分子量の樹脂の粉末及び微粒子であってもよいし、高分子量、又は架橋された樹脂の粉末及び微粒子であってもよい。また、重合によって得られた樹脂を粉砕等の機械的処理によって上記の形状や粒径としたものであってもよい。有機フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0046】
無機フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトに代表される珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛に代表される金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムに代表される金属硫酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトに代表される炭酸塩、その他、炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の粒子が挙げられる。無機フィラーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
粒径をより小さくでき、粒度分布が狭いといった観点から、好ましい無機フィラーとして、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化硼素、マイカ、ガラスフレークが挙げられる。より好ましくは、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、窒化硼素、マイカであり、さらに好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、カオリン、タルク、酸化亜鉛、炭酸カルシウムであり、特に好ましくは炭酸カルシウムである。
【0048】
本実施形態に係るフィラーは、樹脂との親和性を向上させるために公知の表面処理剤により表面処理を施されてもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸)、脂環族カルボン酸、樹脂酸、金属石鹸が挙げられる。しかしながら、これらの表面処理剤ははすばギア100の剛性を低下させる要因ともなり、この観点から、フィラーに対する表面処理剤の添加量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、更に好ましくは実質的に表面処理されていないことである。
【0049】
また、フィラーが無機フィラーである場合、その無機フィラーは、表面処理を施されたもの及び未表面処理のもののいずれであっても使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施されたものが好ましい場合がある。無機フィラーの表面処理に用いられる表面処理剤は従来公知のものであればよく、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が挙げられる。より具体的には、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネートが挙げられる。
【0050】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物を成形して得られるはすばギア100中のフィラーの含有量は、機械的特性の観点から、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、5〜120質量部であると好ましい。フィラーの含有量が5質量部以上であることにより、フィラーを添加することに伴う上記効果をより有効に奏することができ、収縮による変形が一層抑制される。また、フィラーの含有量が120質量部以下であることにより、成形性及び耐久性が更に良好なものとなる傾向にある。
【0051】
ギア回転試験前後での変形量及びギア回転試験に伴う音の増大を抑制する点から、ポリアセタール樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、5〜120質量部であると好ましく、より好ましくは5〜100質量部、更に好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは20〜100質量部である。
【0052】
ポリアセタール樹脂組成物が必要に応じて適当な添加剤を含有することにより、そのポリアセタール樹脂組成物を成形して得られるはすばギア100は、更に熱安定性に優れたものとなる。添加剤の好適な例としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物、蟻酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型剤、及び潤滑剤から選ばれる少なくとも1種である。添加剤は、ポリアセタール樹脂組成物中に、ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部含有されていると好ましい。
【0053】
酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
ホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12が挙げられる。また、他の例としては、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、より具体的には、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体が挙げられる。その他のホルムアルデヒド反応性窒素を有する重合体又は化合物の例としては、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物が挙げられる。
【0055】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジンが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物が挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アーリル置換尿素が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントインが挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、アラントインが挙げられる。ヒドラジン誘導体の具体例としては、ヒドラジド化合物が挙げられる。ヒドラジド化合物の具体例としては、ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられ、更に具体的には、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等が挙げられる。イミド化合物の具体例としては、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。
【0056】
これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を有する重合体又化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
蟻酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。他の蟻酸捕捉剤としては、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。より具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、層状複水酸化物が挙げられる。
【0058】
上記カルボン酸塩におけるカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0059】
層状複水酸化物としては、例えば下記一般式(3)で表されるハイドロタルサイト類をあげることができる。
〔(M2+1-X(M3+X(OH)2X+〔(An-x/n・mH2O〕X- (3)
ここで、式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、An-ハn価(nは1以上の整数)のアニオンを示し、Xは、0<X≦0.33の範囲の数であり、mは正の数である。
【0060】
一般式(3)において、M2+の例としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+が挙げられる。M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+が挙げられる。An-の例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、NO3-、CO32-、SO42-、Fe(CN)63-、CH3COO-、シュウ酸イオン、サリチル酸イオンが挙げられ、特に好ましいのは、CO32-、OH-である。上記一般式(3)で表されるハイドロタルサイト類の具体例としては、Mg0.75Al0.25(OH)2(CO30.125・0.5H2Oで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.3Al2(OH)12.6CO3等で示される合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0061】
これらの蟻酸捕捉剤は、1種を単独で又は2種を組み合わせて用いられる。
【0062】
耐候(光)安定剤としては、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0063】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドが挙げられる。これらの中では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、より好ましくは2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、N,N’,N”,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6,テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。好ましくは、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらのヒンダードアミン系光安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0065】
離型剤、潤滑剤としては、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーンが好ましく使用される。
【0066】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の公知の添加剤を必要に応じて更に含有することができる。そのような添加剤として、具体的には、結晶核剤、導電材、熱可塑性樹脂、及び熱可塑性エラストマー、顔料が挙げられる。
【0067】
導電剤としては、例えば、導電性カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、金属粉末又は繊維が挙げられる。
【0068】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂の変性物も例示される。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
【0069】
顔料として、所望に応じてポリアセタール樹脂に通常用いられる公知の顔料を、本発明の目的を妨げない範囲で用いることができる。そのような顔料としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料が挙げられる。無機系顔料としては、樹脂の着色用として一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、塩素性炭素鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、金属硫化物が挙げられる。有機系顔料としては、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アゾメチン系、メチン系、インダンスロン系、ピランスロン系、フラバンスロン系、ベンゼンスロン系、ペリノン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ピルールピロール系、キノフタロン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系の顔料が挙げられる。
【0070】
これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられるが、必要とする色調を得るために通常は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0071】
はすばギア100における顔料の総含有量は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.005〜5.0質量部であると好ましい。ポリアセタール樹脂の熱安定性の点から、その含有量は5.0質量部以下であることが好ましい。
【0072】
本実施形態に係るポリアセタール樹脂組成物のMFRは、はすばギア100を容易に得る観点から、1〜110g/10分であるが、ギア回転試験前後での変形量、ギア回転試験に伴う音の増大を更に抑制する観点から、3〜80g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは6〜40g/10分である。なお、ポリアセタール樹脂組成物のMFRは、ISO1133(1997)の条件Dで規定された測定法に準拠し、加熱筒温度190℃、荷重2160gで押し出される流出量を10分間当たりに換算することによって導出される。
【0073】
また、ポリアセタール樹脂組成物の好適な融点は、ギア回転試験前後での変形量、ギア回転試験に伴う音の増大抑制の観点から162℃〜173℃であり、好ましくは167℃〜173℃、より好ましくは167℃〜171℃である。融点が167℃〜171℃のポリアセタールコポリマーは、トリオキサンに対して1.3〜3.5mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
【0074】
本実施形態のはすばギア100を得るために用いるポリアセタール樹脂組成物は、一般的な押出機を用いて製造される。押出機としては1軸又は多軸混練押出機が挙げられ、中でも減圧装置を備えた2軸押出機が好ましい。該ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法としては、ポリアセタール樹脂と、フィラーと必要に応じて添加剤とを、必要に応じて押出機のトップフィード口(メインフィード口)から供給して溶融混練する方法、ポリアセタールを押出機のトップフィード口から供給し、フィラーと添加剤とをサイドフィード口から供給してそれらを溶融混練する方法が挙げられ、後者の方法が好ましい。
【0075】
ポリアセタール樹脂組成物を成形して、その成形体である本実施形態のはすばギア100を得る方法については特に制限されず、はすばギア100は、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)又は金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)によって得られる。
【0076】
本実施形態のはすばギア100は、回転試験前後での変形量が小さく、かつ、ギア回転試験に伴う音の増大が小さいものである。この要因は、はすばギア100の原料となるポリアセタール樹脂組成物の引張弾性率を3500〜7000MPaに調整することによって、歯車にかかる負荷に対する歯車全体及び一歯毎の変形量が低減されるため、回転により歯が受ける疲労が少なくなり、その結果、回転試験前の歯形を維持しやすくなるためと推測される。ただし、要因はこれに限定されない。また、本実施形態のはすばギア100は、その形状に起因して、本来的に、ギアの噛み合いによる音の発生が小さいものである。
【0077】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、本発明のはすばギアの寸法及び形状は、図1及び2に示したものに限定されず、上記本実施形態のはすばギア100は、右ねじれ方向のものであったが、もちろん左ねじれ方向のものであってもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例よって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例における評価、測定方法は以下の通りである。
【0079】
〈引張弾性率〉
住友重機械工業(株)製の射出成形機(商品名「SH―75」)を用いて、シリンダー温度205℃、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度90℃の条件にて、ISO9988−2に準拠して、ポリアセタール樹脂組成物から評価用試験片を得て、ISO178に準拠してその試験片の引張弾性率を測定した。
【0080】
〈はすばギアの作製〉
住友重機工業(株)製の射出成形機(商品名「SH−75」)を用いて、シリンダー温度200℃、射出圧力60MPa、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度80℃の条件にて、右ねじれ方向、ピッチ円直径80mm、モジュール1、リブの厚さ1.5mmのはすばギアを作製した。なお、各実施例、比較例におけるはすばギアのねじれ角、歯幅、ウエブの厚さ、リブの数は表1に示すとおりにし、上述以外の点については図1及び2に示すはすばギアと同様の形状とした。
【0081】
〈ギア回転試験前後での変形量〉
上述のようにして得られたはすばギアについて、歯車噛合回転測定機(株式会社東芝製)を用いて、以下の条件にてギア噛み合い試験を行った。その試験前後での歯車精度について、歯車精度測定器(大阪精密機械株式会社製)を用い、JISB1702−1:1998に準拠して、90°間隔の4歯における歯形誤差、及び歯筋誤差を測定し、その変化量を求めた。その歯形誤差の変化量と歯筋誤差の変化量とを合計した数値(差の合計)が大きいほど、はすばギアの変形量が大きいと判断した。
トルク:2Nm、回転数:500rpm、測定温度:23℃、時間:24時間
相手歯車:モジュール1、ピッチ円直径80mm、実施例とは逆の左ねじれであり、同じねじれ角の金属製はすばギア
【0082】
〈ギア回転試験時に発生する音の評価〉
上述のようにして得られたはすばギアについて、歯車噛合回転測定機(株式会社東芝製)を用いて、以下の条件にてギア噛み合い試験を行った。その試験の開始直後(表2中「前」と表記。)及び終了直前(表2中「後」と表記。)の噛み合いにより発生する音圧レベル[dBA]を、はすばギアから80cm離れた位置に騒音計(Lion社製)を設置して測定した。試験開始直後と終了直前との音圧レベルの差を求めた。この音圧レベルの差が小さいほど、音の増大が抑制されていると判断した。
トルク:2Nm、回転数:500rpm、測定温度:23℃、時間:24時間
相手歯車:モジュール1、ピッチ円直径80mm、実施例と同じねじれ角の金属製はすばギア
【0083】
〈フィラーの平均粒径、平均アスペクト比の測定〉
まず、日本電子株式会社製のファインコーターを用いて30mA、60秒間のコーティング条件にて顕微鏡観察用のフィラーの試料を作製した。次いで、その試料におけるフィラーの形状を、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧9.00kV、印加電流10.0μAの条件で観察した。を基板上に塗布した。以下の装置を用いて以下の条件にて観察し、その平均粒径、平均アスペクト比(平均長径と平均短径との比)を求めた。
【0084】
[原材料]
〈ポリアセタール樹脂(a−1)〉
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8)を80℃に調整し、そこにトリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを42.8g/時間(トリオキサン100mol%に対して、1.3mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して2.35×10-3mol、連続的に添加した。さらに重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molとなる量で連続的に重合機に添加し重合を行なった。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行なった。重合触媒の失活したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行い、上記式(2)で表される窒素量に換算して20質量ppmとした。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分間の条件で、その不安定末端部分の分解除去処理を行なった。不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーは、ベント真空度20Torrの条件下で脱揮され、押出機のダイス部よりストランドとして押し出され、ペレット化された。このようにして得られたポリアセタール樹脂(aa−1)の融点は169.5℃、MFRは30g/10分であった。
【0085】
次いで、連鎖移動剤としてのメチラールの添加量を、トリオキサン1molに対して2.35×10-3molから1.52×10-3molに代えた以外は上記と同様にして、ポリアセタール樹脂(a−3)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−3)の融点は169.1℃、MFRは8g/10分であった。
そして、ポリアセタール樹脂(aa−1)35質量部とポリアセタール樹脂(a−3)65質量部とを混合して、ポリアセタール樹脂(a−1)を得た。
【0086】
〈ポリアセタール樹脂(a−2)〉
1,3ジオキソランの添加量を42.8g/時間から128.3g/時間(トリオキサン100mol%に対して、3.9mol%)に代えた以外はポリアセタール樹脂(aa−1)の製造と同様にして、ポリアセタール樹脂(a−2)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−2)の融点は164.5℃、MFRは30g/10分であった。
【0087】
〈ポリアセタール樹脂(a−3)〉
連鎖移動剤としてのメチラールの添加量を、トリオキサン1molに対して2.35×10-3molから1.52×10-3molに代えた以外はポリアセタール樹脂(aa−1)の製造と同様にして、ポリアセタール樹脂(a−3)を得た。このようにして得られたポリアセタール樹脂(a−3)の融点は169.1℃、MFRは8g/10分であった。
【0088】
〈フィラー〉
(b−1)炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、白石工業株式会社製商品名「Brilliant−15」、平均粒径0.20μm、平均アスペクト比1.0
(b−2)タルク、日本タルク株式会社製(表面未処理)、平均粒径3μm、平均アスペクト比20
(b−3)ウオラストナイト、平均粒径4μm、平均アスペクト比30
(b−4)ガラスファイバー、日本電気硝子株式会社製、平均繊維径(粒径)13μm、平均アスペクト比200
【0089】
[実施例1〜9、比較例1〜6]
ポリアセタール樹脂(a−1)100質量部と、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部と、蟻酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。得られた混合物と表1に示す所定質量部のフィラー(b−1)とを、200℃に設定されたL/D=30の30mmベント付2軸押出機のメインフィード口から別々に供給し、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬することによりポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットから上記〈はすばギアの作製〉に示すようにしてはすばギアを得た。なお、はすばギアのねじれ角、歯幅、ウエブの厚さ、リブの数は表1に示すとおりとした。得られたはすばギアについて、前述の測定方法により、引張弾性率、ギア回転試験前後での変形量(静的精度)、ギア回転試験時に発生するの音の評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
[実施例10、11、比較例7]
フィラーの種類及び含有量を表1に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットから、ねじれ角、歯幅、ウエブの厚さ及びリブの数を表1に示すように代えた以外は実施例1と同様にしてはすばギアを得た。得られたはすばギアについて、前述の測定方法により、引張弾性率、ギア回転試験前後の変形量(静的精度)、ギア回転試験時に発生する音の評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
[実施例12、13]
ポリアセタール樹脂(a−1)を表1に示すポリアセタール樹脂に代えた以外は実施例1と同様にして、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを製造した。得られたペレットから実施例1と同様にしてはすばギアを得た。得られたはすばギアについて、前述の測定方法により、引張弾性率、ギア回転試験前後での変形量(静的精度)、ギア回転試験時に発生する音の評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のはすばギアは、ポリアセタール樹脂が本来的に有する機械物性バランスを有すると共に、ギア回転試験前後での変形量及びギア回転試験に伴う音の増大が抑制されるため、OA、自動車、電気電子、その他工業などの各種分野の機構部品のギアの分野で好適に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
100…はすばギア、110…貫通孔、120…歯部、130…リブ、140…ウエブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に形成された貫通孔と外周に形成された歯部とを有し、前記貫通孔から外周への方向に放射状に設けられた複数のリブと、前記複数のリブの間に設けられた平板状のウエブと、を備えるはすばギアであって、
ポリアセタール樹脂を含有する引張弾性率が3500〜7000MPaのポリアセタール樹脂組成物の成形体であり、ねじれ角が5〜30°、歯幅が1〜20mm、前記ウエブの厚さが1.5〜6mm、前記リブの数が6〜24であるはすばギア。
【請求項2】
前記ねじれ角が10〜30°である、請求項1記載のはすばギア。
【請求項3】
前記歯幅が7〜20mmである、請求項1又は2に記載のはすばギア。
【請求項4】
前記ウエブの前記厚みが1.8〜6mmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のはすばギア。
【請求項5】
前記リブの数が8〜24である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のはすばギア。
【請求項6】
前記ポリアセタール樹脂組成物はフィラーを含有し、そのフィラーの平均粒径は0.01μmを超えて5μm未満であり、前記フィラーの粒子の平均短径に対する平均長径の比が30以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のはすばギア。
【請求項7】
前記フィラーは炭酸カルシウムである、請求項6に記載のはすばギア。
【請求項8】
前記フィラーを、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対して5〜120質量部含有する、請求項6又は7に記載のはすばギア。
【請求項9】
前記フィラーを、前記ポリアセタール樹脂100質量部に対して5〜100質量部含有する、請求項6又は7に記載のはすばギア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−17398(P2011−17398A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163086(P2009−163086)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】