説明

はんだリフロー装置

【課題】本発明は、はんだリフロー工程において発生するボイドや接合不良、外観不良を回避し、はんだ接合面の理想的還元・清浄を実現することで製品の不良発生を抑制できるはんだリフロー装置を提供することを目的とする。
【解決手段】はんだリフロー処理を行う処理室と、還元性薬液を霧状にして該処理室に導入するインジェクターと、N2ガスを該処理室に導入するN2ガス供給ダクトとを備える。そして、該インジェクターは該N2ガス供給ダクト内に収容されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内への還元性材料の供給を伴ったはんだリフローを行うはんだリフロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動や電力変換などの電力制御の分野では、パワー半導体モジュールが広く利用されている。パワー半導体モジュールはたとえばIGBTやMOSFET、ダイオードといったパワー半導体素子を1つのパッケージに内蔵するものである。パワー半導体素子は実際にはチップとして形成されるため半導体チップと呼ばれることがある。比較的大きな電流容量を扱うパワー半導体モジュールは、セラミック基板の両面に銅などの導体層(導体パターン)が設けられた絶縁基板にパワー半導体素子などをはんだ付けすることが多い。具体的には、セラミック基板の上面側には上述の半導体チップがはんだ付けされる。セラミック基板の下面側には銅やアルミニウムなどからなる金属ベース板がはんだ付けされる。このような構成のパワー半導体モジュールはたとえば特許文献1に記載がある。
【0003】
セラミック基板へのパワー半導体素子および金属ベースのはんだ付けにははんだリフロー法が用いられている。はんだリフロー法では、まずセラミック基板などの絶縁基板と金属ベース板の間の板はんだを加熱して液相化させる。そして冷却器を用いて一定温度で冷却することによりはんだを固化させるなどの処理が行われる。
【0004】
上述のはんだリフロー法による処理は還元性ガス雰囲気下で行うことが多い。還元性ガスによってはんだ表面の還元、清浄化が行われる。還元性ガス雰囲気下ではんだリフローを行うことではんだリフロー後の洗浄が不要となり、フラックスレスとすることができる。
なお、特許文献1−5にははんだリフロー法についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−233934号公報
【特許文献2】特開2001−244618号公報
【特許文献3】特開2002−210555号公報
【特許文献4】特開2002−361472号公報
【特許文献5】特開平06−190584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、還元性雰囲気下ではんだリフローを行う方法として代表的なものは以下の2通りの方法が用いられていた。第一の方法は、薬液バブリングを経た後の還元性混合ガスを処理室に導入する方法である。第二の方法は、薬液を直接はんだ処理室に噴射ノズルなどで投入する方法である。
【0007】
第一の方法の場合、主に薬液バブリングの際の温度および圧力が還元性混合ガスの濃度を決める。しかしながら、周辺の温度変化やキャリアガスの圧力変動などにより還元性ガスの濃度が変化する問題があった。還元性ガスの濃度変動が起こるとはんだ付け処理プロセスが不安定となる。特に還元性ガス濃度が適正濃度より低くなったときははんだ濡れ特性が低下する問題があった。その結果はんだ広がり不足によるボイドや接合不良が発生する問題があった。
【0008】
第二の方法の場合、半導体チップに薬液の液滴もしくは液膜が付着し、しみが発生する問題があった。その結果、半導体チップの外観検査において不良と判断され歩留まり低下要因となる問題があった。
【0009】
ところで、近年は環境対策の観点から鉛フリーはんだの使用が欠かせないものとなっている。そして、特に固相線温度と液相線温度の大きい鉛フリーはんだを使用する場合には上述の問題が顕著になる問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ボイドや接合不良、外観不良を回避し、はんだ接合面の理想的還元・清浄を実現することで製品の不良発生を抑制できるはんだリフロー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の発明にかかるはんだリフロー装置は、はんだリフロー処理を行う処理室と、還元性薬液を霧状にして該処理室に導入するインジェクターと、N2ガスを該処理室に導入するN2ガス供給ダクトとを備える。そして、該インジェクターは該N2ガス供給ダクト内に収容されたことを特徴とする。
【0012】
本願の発明にかかるはんだリフロー装置は、はんだリフロー処理を行う処理室と、還元性薬液を霧状にして該処理室に導入するインジェクターと、該インジェクターをはんだに対して上下動させる上下駆動機構とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弊害無くはんだ接合面を還元・清浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のはんだリフロー装置である。
【図2】実施形態2のはんだリフロー装置である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1
本実施形態は図1を参照して説明する。なお、同一または対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。他の実施形態でも同様である。
【0016】
本実施形態のはんだリフロー装置10ははんだリフロー処理を行う処理室12を備える。さらに、還元性薬液を霧状にして処理室12に導入するインジェクター22を備える。還元性薬液は加圧ポンプ18で加圧されて配管20を経由してインジェクター22へ供給される。本実施形態のはんだリフロー装置は還元性薬液とともにN2ガスを処理室12へ導入する。N2ガスはN2ガス供給ダクト40を経由して処理室12へ供給される。そして、前述のインジェクター22はN2ガス供給ダクト40内に収容されている。つまり、複数のインジェクター22はそれぞれ、N2ガス供給ダクト40の開口部分に覆われるように配置されている。さらに、処理室12内の排気を行う真空ポンプ16が処理室12に接続される。
【0017】
被処理物について説明する。絶縁基板30の上面側にははんだ31を介して半導体チップ32が搭載される。絶縁基板30の下面側には板はんだ33を介して金属ベース板34が配置される。上述の被処理物は搬送ベルト36上に配置される。
【0018】
N2ガス供給ダクト40の開口部にインジェクター22が設けられている点が本実施形態の特徴である。このような構成によりN2ガス供給ダクト40から処理室12へ供給されるN2ガスと、インジェクター22から処理室へ供給される霧状の還元性薬液とは瞬時に混合する。そして霧状の還元性薬液が気化し予混合気が作られる。この予混合気が処理室12に導入される。この結果、処理室12内の還元性ガスの濃度が均一化される。還元性薬液は加圧ポンプ18と配管20を経由して安定的にインジェクター22へ供給される。ゆえに、薬液バブリングを用いて還元性ガスを導入する場合と比較して処理室12内の還元性ガス濃度を均一化できる。言い換えれば、処理室内の還元性ガス濃度が温度や圧力に影響されることを回避できる。
【0019】
さらに、N2ガスと霧状の還元性薬液を別々に導入する場合と比較して、処理室内の還元性ガス濃度がさらに均一化できる。以上より、ボイドや接合不良の問題を解消できる。また、薬液バブリングを行わないためバブリングボトル(バブラー)も不要となる。さらに、半導体チップに薬液の液滴もしくは液膜が付着することも無いため、外観不良も解消できる。
【0020】
本実施形態のはんだリフロー装置は様々な変形が可能である。例えば、N2ガス供給ダクト40の各開口にN2流量制御弁を設けても良い。N2流量制御弁により各開口から導入されるN2ガス流量を制御することにより、処理室12内の還元性ガス濃度の更なる均一化ができる。
【0021】
本実施形態では還元性薬液は特に限定しなかった。還元性薬液としてはたとえば、カルボン酸(ギ酸、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、ブリチック酸、バレチック酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、カプリン酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、ニトロカルボン酸)が挙げられる。
【0022】
実施の形態2
本実施形態は図2を参照して説明する。本実施形態のはんだリフロー装置50は、インジェクター22を絶縁基板30に対して上下動させる上下駆動機構52を備える。上下駆動機構52は複数のインジェクター22を個別に制御するものである。さらに、処理室12の側面にはN2ガス供給ダクト14を備える。
【0023】
本実施形態では還元性薬液はインジェクター22により霧化されて処理室12へ導入される。インジェクター22への還元性薬液の供給は加圧ポンプ18、配管20を経由して安定的に行われる。よって薬液バブリングを用いた場合の還元性ガスの濃度変動の問題を回避できる。また、バブラーは不要となる。また、ガス濃度管理作業なども要しない。よって低コスト化、管理作業容易化ができる。
【0024】
一般にはんだリフロー工程においては、被処理物の形状や、被処理物の狭クリアランス部などに応じて還元性ガスの濃度を変化させることが望ましい。つまり、被処理物の狭クリアランス部に位置するはんだに対しても十分な還元性ガスを供給することが望ましい。そのためには還元性ガスの濃度勾配を生成することが必要である。本実施形態のはんだリフロー装置50によれば、還元性ガスの濃度勾配生成が可能である。すなわち、上下駆動機構52によりインジェクター22を個別に上下動させてインジェクター22、被処理物間のクリアランスを変動させることができる。これにより任意の場所に局所的に高濃度の還元性ガス雰囲気を生成できる。ゆえに被処理物の構造に対応した還元性ガス雰囲気を作り出せるため、狭クリアランス部に位置するはんだに対しても十分な還元性ガスを供給できる。よってはんだ表面の還元・清浄化を効率的に実施できる。この特徴はパワー半導体モジュールの品種別に最適プロセス条件の策定が可能となる点で有効である。本実施形態のはんだリフロー装置50はこのように、パワー半導体モジュールの品質向上に寄与する。
【0025】
本実施形態のはんだリフロー装置50は様々な変形が可能である。例えば、実施形態1で説明したインジェクター22に上下駆動機構を取り付けると本実施形態および実施形態1の効果を得ることができる。また、本実施形態のはんだリフロー装置50は少なくとも実施形態1相当の変形が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 はんだリフロー装置、 12 処理室、 22 インジェクター、 40 N2ガス供給ダクト、 52 上下駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだリフロー処理を行う処理室と、
還元性薬液を霧状にして前記処理室に導入するインジェクターと、
N2ガスを前記処理室に導入するN2ガス供給ダクトとを備え、
前記インジェクターは前記N2ガス供給ダクト内に収容されたことを特徴とするはんだリフロー装置。
【請求項2】
はんだリフロー処理を行う処理室と、
還元性薬液を霧状にして前記処理室に導入するインジェクターと、
前記インジェクターをはんだに対して上下動させる上下駆動機構とを備えたことを特徴とするはんだリフロー装置。
【請求項3】
前記インジェクターを複数有し、
前記上下駆動機構は前記インジェクターを個別に制御することを特徴とする請求項2に記載のはんだリフロー装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−134894(P2011−134894A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292990(P2009−292990)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】