説明

はんだ付け装置

【課題】蓋体や抑止板にフラックスヒュームが付着し難く、蓋体も軽量で清掃作業等のメンテナンス作業が容易なはんだ付け装置を実現する。
【解決手段】被はんだ付けワークWを搬送する搬送手段を覆うように配設されたチャンバ体30を有し、チャンバ体30内にワーク搬送方向に沿って複数の抑止板36,46を並設すると共に、はんだ付け部1を指向して不活性ガスを供給しながらはんだ付けを行う。チャンバ体30上部に開口部34を開設し、開口部34に透明な蓋体35を着脱可能に蓋着し、開口部34に対応して、抑止板46をユニット化してなるラビリンスユニット36をチャンバ体30自体において着脱可能に装架する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ体内に形成した低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で、電子部品等のはんだ付けを行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のはんだ付けを行う際、低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中では電子部品のリード端子やプリント配線板のはんだ付けランド等の被はんだ付け部の酸化が抑制され、優れたはんだ濡れ性が得られる。なお、不活性ガスとして通常、窒素ガスが用いられる。従って、フローはんだ付けにおいて被はんだ付け部に予め塗布するフラックスも微量で済むため、はんだ付け後のプリント配線板にフラックス残渣が殆ど残らない。また、同様にリフローはんだ付けにおいても、クリームはんだ中のフラックス量を少なくできる。
【0003】
そのため、はんだ付け後のプリント配線板の洗浄を行う必要がない。このような洗浄は、高信頼性プリント配線板のはんだ付け実装において、フラックス残渣による腐食等の影響を排除するために行われている。
【0004】
ここで特許文献1には、トンネル状チャンバ体内にプリント配線板の搬送コンベアが設けられ、その搬送順にプリヒータと溶融はんだの噴流波を形成するはんだ槽を設けたフローはんだ付け装置が開示されている。トンネル状チャンバ体はプリント配線板を仰角搬送する領域と俯角搬送する領域とがあり、搬送コンベアの搬送方向に沿う縦断面で見て「へ」の字状のチャンバ体を構成している。そして、この仰角搬送領域にはプリヒータと溶融はんだの噴流波を形成するはんだ槽が設けられ、俯角搬送部分では被はんだ付けワークであるプリント配線板の冷却が行われるように構成されている。
【0005】
また、チャンバ体内に溶融はんだの噴流波を位置させるためにこのチャンバ体には、はんだ槽を臨むように開設された開口が設けられると共に、この開口にははんだ槽側へ伸びるスカートが設けられ、このスカートをはんだ槽内の溶融はんだに浸漬することでこの開口の完璧な封止を実現している。
【0006】
そして、プリント配線板の搬送方向から見てはんだ槽の後段側には窒素ガス等の不活性ガスを供給するノズルが設けられ、プリント配線板と噴流波とが接触する領域へ向けて窒素ガスを供給するように窒素供給の指向性が定められている。これにより低酸素濃度の不活性ガス雰囲気をチャンバ体内に形成している。なお、チャンバ体内へ窒素ガスが供給されることにより、搬入口と搬出口からチャンバ体内雰囲気が放出される。この場合、チャンバ体内に設けられている抑止板は、チャンバ体内における不要な雰囲気流動を抑止する部材であり、これによりラビリンスシール構造を形成している。
【0007】
図5は、従来のチャンバ体の構成例を説明する図であり、図5(a)は搬送コンベアの搬送方向に沿ってその縦断面で見たチャンバ体の搬入口付近の構造を示し、図5(b)はチャンバ体に設けられる蓋体の全容を説明する斜視図である。なお、図5(a)においては図を分かり易くするために搬送コンベアを一点鎖線で簡略化して示している。
【0008】
即ち、搬送コンベア201の搬送方向に沿ってトンネル状チャンバ体200が設けられ、電子部品が搭載されたプリント配線板(ワークW)が搬入口202から搬入されると共に、チャンバ体200内を搬送されてはんだ付けが行われる。そして、チャンバ体200には搬送コンベア201の搬送方向とその板面が直交するように、搬送コンベヤ201の上下に抑止板203が複数枚並設され、ラビリンスシール構造を形成している。また、チャンバ体200の上方には開口204が開設されると共に、開口204にはシール部材205を介して蓋体206が開閉可能に設けられ、チャンバ体200内のメンテナンス作業が行い易いように構成している。なお、蓋体206には抑止板203が付設され、チャンバ体200内にラビリンスシール構造を形成するように構成されている。更に、蓋体206にはガラス板207を設けた窓部208が設けられることもある。把手209は開閉作業用の把持部材である。
【0009】
特許文献1にも開示されているように、はんだ槽には図示しないヒータの他に温度センサや温度制御装置が設けられている。そして、はんだ槽内の溶融はんだの温度を予め決めた所定の温度に維持するように構成されている。ちなみに、溶融はんだの温度は通常、250〜260℃程度に設定される。
【0010】
また、プリヒータには赤外線等の熱線加熱を行う手段や熱風加熱を行う手段、更には熱線と熱風とを併用した手段等が設けられ、赤外線ヒータの表面温度や熱風温度が予め決めた温度になるように、センサと温度制御装置とにより制御される。ちなみに、プリヒータにより加熱されるプリント配線板の温度は通常、90〜150℃程度になるように設定される。
【0011】
かかるはんだ付け装置において、プリント配線板のフローはんだ付けは次のように行われる。即ち、予めフラックスが塗布されたプリント配線板をチャンバ体の搬入口から搬入すると、プリヒータによってプリント配線板が加熱され予め塗布されているフラックスの乾燥と前置的活性化が行われる。この加熱は予備加熱と呼称され、この工程を予備加熱工程と呼称する。この予備加熱工程は、プリント配線板が溶融はんだの噴流波に接触する際のヒートショックを緩和する役割も有する。
【0012】
プリント配線板の予備加熱が完了すると、続いてはんだ槽上の噴流波に接触してその被はんだ付け部に溶融はんだが供給され、はんだ付けが行われる。この工程ははんだ付け工程と呼称され、その後プリント配線板は冷却(冷却工程)され、チャンバ体の搬出口から搬出されて一連のフローはんだ付けが完了する。
【0013】
【特許文献1】特開2001−230538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
予めフラックスが塗布されたプリント配線板をチャンバ体内へ搬送してはんだ付けを行うと、予備加熱工程とはんだ付け工程においてフラックスヒュームが発生する。そして、このフラックスヒュームは70℃程度の温度以下になると急速に凝結を生じて結露を発生するようになる。
【0015】
一方で、図5に示したシール部材205にはシリコーンゴム系のシール部材が使用されるが、このシール部材205は断熱材としても作用する。そのため蓋体206、更には蓋体206に設けられている抑止板203が周辺大気によって冷却されて温度低下し、この抑止板203と蓋体206の表面にフラックスヒュームが多量に結露・付着する。
【0016】
そして、かかる付着物はやがて滴下するようになり、そのままでは搬送コンベア201で搬送されるプリント配線板上に落下し、ワークWの汚染を生じる問題がある。
また、蓋体206は一般的に金属(ステンレス鋼)板で構成されるため、蓋体206の重量が大きくなって開閉作業ひいてはチャンバ体200内のメンテナンス作業、更には蓋体206やそれに設けられている抑止板203の清掃作業等が煩雑にならざるを得ないのが実情であった。
【0017】
本発明はかかる実情に鑑み、蓋体や抑止板にフラックスヒュームが付着し難く、蓋体も軽量で清掃作業等のメンテナンス作業が容易なはんだ付け装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
先ず、本発明のはんだ付け装置は、被はんだ付けワークを搬送する搬送手段を覆うように配設されたチャンバ体を有し、このチャンバ体内にワーク搬送方向に沿って複数の抑止板を並設すると共に、不活性ガスを供給しながらはんだ付けを行うようにしたはんだ付け装置であって、前記チャンバ体上部に開口部を開設し、この開口部に透明な蓋体を着脱可能に蓋着し、前記開口部に対応して、前記抑止板をユニット化してなるラビリンスユニットを前記チャンバ体自体において着脱可能に装架することを特徴とする。
【0019】
次に、本発明のはんだ付け装置において、前記蓋体は、ガラス材又は合成樹脂材により板状に形成される共に周囲に枠体を有し、前記開口部の周縁部に沿って敷設したシール部材に弾接するようにしたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明のはんだ付け装置において、前記チャンバ体の開口部の開口縁に設けた載置台部と前記ラビリンスユニットの側部に突設した掛止部とにより構成される該ラビリンスユニットの装架手段と、前記蓋体を前記シール部材に弾接させるように構成された弾機手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のはんだ付け装置において、前記搬送手段の上方に位置して前記ラビリンスユニットを構成する前記抑止板と、前記搬送手段の下方に位置する前記抑止板とを、それぞれの板面が整合するように配置することを特徴とする。
【0022】
本発明の主な作用として、チャンバ体上部の開口部に蓋着する蓋体は、熱伝導率が小さい材料、典型的にはガラスもしくは合成樹脂により形成する。この場合、蓋体は、チャンバ体内に並設される抑止板とも別体・分離した構成とする。このように構成することによって、チャンバ内側の蓋体の表面温度の低下を抑止し、ラビリンスシールを構成するラビリンスユニットが実質的にチャンバ体と同一温度になり、フラックスヒュームの冷却による結露を防ぎ、フラックスヒュームが付着し難くなる。
【0023】
更に、チャンバ体の上部に設けた開口部の全面を典型的にはガラス板で覆い、これによりチャンバ体内の視認性が極めて良好となり、はんだ付け装置の運転性が向上する。その際、具体的にはそのガラス板に枠体を設けて蓋体としているので、軽量で開閉・着脱作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、チャンバ体内に複数列設される抑止板を揃えて配設することで、ラビリンスシールを良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、蓋体が蓋着する開口部を介してチャンバ体内を広く見渡すことができると共に、蓋体や板状部材でなる抑止板にフラックスヒュームが付着し難く、蓋体も軽量であることから清掃作業等のメンテナンス作業が容易なはんだ付け装置を実現することができる。また、蓋体の熱伝導率が格段に小さいので、はんだ付け装置で生じる損失、即ちチャンバ体ひいては蓋体を介して大気中へ放出されるエネルギーが小さくなり、省エネルギーのはんだ付け装置を実現できる。その結果、プリント配線板のはんだ付け実装作業を快適に行うことが可能になり、運転性と省エネルギー性等に優れたはんだ付け実装環境を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明によるはんだ付け装置の好適な実施の形態を説明する。
この実施形態において、はんだ付けされるべき被はんだ付け部品として、例えば電子部品が搭載されたプリント配線板(以下、ワークWという)とし、ワークWの被はんだ付け部へ噴流する溶融はんだにより、溶融はんだを供給してはんだ付けを行うものとする。
【0027】
図1は、本発明のはんだ付け装置の全体構成を示している。図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。更に図3は、チャンバ体の開口部とラビリンスユニット、そして蓋体等の構成を説明する分解斜視図である。
本発明装置の主要構成において、ワークWに対してはんだ付けを行うはんだ付け部1、ワークWを所定の搬送路に沿って搬送する搬送部2、及び搬送部2に沿ってこれを覆うように配設されたチャンバ体部3を含んでいる。
【0028】
ここで先ず、本実施形態における装置全体構成を概略説明する。はんだ付け部1においてはんだ付け噴流波形成装置10が配置されている。ワークWはフラックス塗付等を含む前処理工程後、搬送部2により順次、図1に示すようにはんだ付け噴流波形成装置10の上方所定位置に搬送位置決めされ、溶融はんだを供給されるようになっている。なお、図1においては、矢印B方向にワークWが搬送される。また、搬送部2はワークWが投入される搬入口2A及びワークWが搬出される搬出口2Bを有する。
【0029】
はんだ付け噴流波形成装置10の典型的には平面視矩形状のはんだ槽11内には、溶融状態のはんだ12(溶融はんだ)が収容されている。はんだ槽11は例えば上部が開口する概略直方体を呈し、その側面及び底面を含むその外壁には複数のヒータ(図示せず)が付設される。はんだ槽11内の溶融はんだ12の温度は、図示しない温度センサにより検出され、その検出信号は制御部に送出される。温度検出信号を受信した制御部は、ヒータに供給すべき電力を制御し、これによりヒータがはんだ槽11内の溶融はんだ12を予め決めた所定の温度の溶融状態に保持するように構成してある。
【0030】
はんだ槽11内には、溶融はんだ12を吐出するポンプ13が浸漬されている。ポンプ13(の溶融はんだ吐出口)は溶融はんだ送給手段を介して、上部に吹き口14aが開口する吹き口体14と接続される。ポンプ13が駆動されると、その吐出口から溶融はんだ12が吐出される。そして、ポンプ13から吐出された溶融はんだ12は、吹き口体14へと送給され、その吹き口14aから噴流波として流出する(図1、矢印C)。この噴流波によって、吹き口体14の吹き口14aの上方に搬送されたワークWがはんだ付けされる。
【0031】
更に、噴流波を形成した溶融はんだ12は、吹き口体14の案内板14bに沿って流れ落ち、はんだ槽11内に還流する。溶融はんだ12はその後、ポンプ13の吸込み口から再び吸い込まれて循環する。
【0032】
次に、搬送部2においてワークWを保持して、はんだ付け噴流波形成装置10の上方直近を通過する搬送コンベア20が架設される。この例ではワークWを仰角搬送する搬送コンベヤ20A(第1の搬送コンベア)と俯角搬送する搬送コンベア20Bとを有し、両者はワーク搬送方向に沿った縦断面で見て、搬送コンベア20全体として「へ」の字状をなすように連結する。搬送コンベヤ20Aに対応して、ワークWを予備加熱するプリヒータ4とはんだ付け部1が配設され、これらにより予備加熱工程(もしくは領域)とはんだ付け工程(もしくは領域)が設定される。また、搬送コンベア20Bに対応して、ワークWを冷却する冷却工程(もしくは領域)が設定される。
【0033】
搬送コンベア20の具体的構成において、図2に示されるようにワークWの両側に沿って対をなして走行するコンベア21,21を有する。各コンベア21には、ワークWの側縁部を挟持して支持する支持片22が付設され、各支持片22を介してワークWをバランスをとりしながら搬送するようになっている。なお、ワークWには複数の電子部品w1,w2,..が搭載されている。
【0034】
次に、チャンバ体部3において、搬送コンベア20を覆うようにチャンバ体30が配設される。搬送コンベヤ20A及び搬送コンベア20Bに対応してチャンバ体30A及びチャンバ体30Bを有し、両者はワーク搬送方向に沿った縦断面で見て、チャンバ体30全体として「へ」の字状をなすように連結する。
【0035】
ここで、チャンバ体30(30A)においてはんだ付け噴流波形成装置10の対応部位に、チャンバ内空間をはんだ付け噴流波形成装置10と連通させるための開口部31が開設されている。そして、この開口部31には、はんだ槽11の溶融はんだ液面上に位置する吹き口体14ひいては噴流波を囲むようにスカート32が垂設される。スカート32をはんだ槽11内の溶融はんだ12中に浸漬することで開口部31の完璧な封止を実現している。
【0036】
また、ワークWの搬送方向に見てはんだ槽11の後部側には、窒素ガス等の不活性ガスを供給するノズル5が設けられている。搬送コンベア20Aによって搬送されるワークWが噴流波と接触する領域へ向けて不活性ガスを供給するように、不活性ガス供給の指向性が定められている。これにより低酸素濃度の不活性ガス雰囲気をチャンバ体30内に形成する。一方、チャンバ体30の下部や側部には板状部材である抑止板33が、ワーク搬送方向と直交する方向に設けられる。この場合、図2に例示するように下方抑止板部33aと側方抑止板部33bとを一体に設けても良い。なお、側方抑止板部33bは必ずしも設ける必要はなく、要求される封止性の程度に応じて設けることができる。そして、これら抑止板33を複数枚並設することにより、トンネル状チャンバ体30内にラビリンスシール構造を形成し、チャンバ体30内において雰囲気の不要な流動を抑止している。
【0037】
さて、本発明において特にチャンバ体30の上部に開口部34を開設し、開口部34に透明な蓋体35を着脱可能に蓋着する。また、開口部34に対応して、後述するように板状部材である抑止板をユニット化してなるラビリンスユニット36をチャンバ体30自体により着脱可能に装架する。つまりラビリンスユニット36は蓋体35とは別個独立しており、従来のように蓋体35を介して支持されず、後述するようにチャンバ体30側にて支持される。蓋体35はガラス材又は合成樹脂材により板状に形成され、開口部34の周縁部に沿って敷設したシール部材37に弾接するようになっている。
なお、図1において開口部34あるいは蓋体35等は、相互に隣接するかたちでチャンバ体30の全長に亘って連接されるが、それらは実質的に同一であるため参照符号等は適宜簡略化されている。
【0038】
具体的構成において、図2及び図3に示すようにチャンバ体30の上部には典型的には矩形の開口部34が設けられ、この開口部34を囲むようにチャンバ体30の上面にシール部材37を設けてある。開口部34の幅(ワーク搬送方向に直交する方向)は、シール部材37の配設スペースを確保する等ために制限されるものの、チャンバ体30(の上部)の幅にかなり近づくように設定される。シール部材37としては、例えばシリコーンゴム系の断熱性シール部材等が用いられる。本実施形態では蓋体35は、透明で矩形のガラス板38と、ガラス板38の周縁部を挟持するように係合する溝部39aを有する枠体39とを含む。
【0039】
この場合、上記のようにチャンバ体30の開口部34を囲むように設けられたシール部材37に当接するガラス板38は、枠体39の内側部分がシール部材37の平面形状よりも大きく設定される。従って、図2に示すようにチャンバ体30の開口部34を囲むシール部材37にガラス板38が当接した際、開口部34を完全に封止することができる。
【0040】
ガラス板38をシール部材37に対して弾接させる弾機手段を備えている。この例では枠体39の一端側(ワーク搬送方向で見て左又は右側)には2つの支点バー40が設けられると共に、チャンバ体30の一方の外側面には各支点バー40に対応してこれと係合可能な止め具41が設けられる。また、枠体39の他端側(ワーク搬送方向で見て右又は左側)には2つの掛け具42が設けられると共に、チャンバ体30の他方の外面には各掛け具42に対応してこれと係合可能な引張り係止具43が設けられる。なお、枠体39の他端側には把手44が付設されている。
【0041】
蓋体35をチャンバ体30の開口部34に取り付ける際、先ず、支点バー40と止め具41を係合させ(図2、矢印D)、次に枠体39の掛具42に引張り係止具43の引掛けバーを掛けた状態で、そのレバー操作により図2の矢印Eのように下方へ引っ張る。これによりガラス板38が適度な圧力でシール部材37に弾接してその状態に保持され、即ち蓋体35がチャンバ体30の所定位置に固定される。なお、かかる弾機手段以外の手段を用いることにより、ガラス板38をシール部材38に弾接させることも可能である。
【0042】
更に、チャンバ体30の開口縁部には、後述のラビリンスユニット36を載置して保持するための載置台部45、即ち係合部が設けられている。この例ではワーク搬送方向で見て開口部34の左右対向2辺に沿って一対の載置台部45が配設される。ここで、ラビリンスユニット36は図3に示されるように、抑止板46を複数枚並設して保持板47で一体的に構成したものである。各抑止板46は、ワーク搬送方向と直交する方向に配設される。
【0043】
保持板47には、ラビリンスユニット36の側方(ワーク搬送方向と直交する方向)へ鍔状に突出する一対の掛止部47aが設けられている。図2に示すようにラビリンスユニット36をチャンバ体30の開口部34に嵌め合わせた際に、その保持板47の掛止部47aがチャンバ体30の開口部34に設けられた載置台部45に載置・係合し、これによりチャンバ体30の所定位置に保持される。このように載置台部45と保持板47(の掛止部47a)によって構成される装架手段によって、ラビリンスユニット36をチャンバ体30自体において着脱自在に装架する。
【0044】
また、ラビリンスユニット36は、チャンバ体30内において上方抑止板部を形成し、前述した抑止板33(下方抑止板部33aと側方抑止板部33b)とその板面を揃えて、即ち整合するように配設される。なお、作図上、図3に示すラビリンスユニット36においては抑止板46が5枚図示されているのに対して、図1に示すラビリンスユニット36では抑止板46が3枚しか描かれていないが、両者は同一のものである。
【0045】
上記構成において、先ずガラス板38と枠体39とにより蓋体35を構成し、この蓋体35はチャンバ体30に対して着脱自在に設けられている。そして、チャンバ体30の開口部34の全面がガラス板38で覆われているため、チャンバ体30内を広々と視認することができる。なお、図2に示すようにラビリンスユニット36を構成する抑止板46のガラス板38側の端部とガラス板38のラビリンスユニット36側の面(内側面)とは、僅かな隙間を有して接触しないように構成する。
【0046】
また、図1に示すようにチャンバ体30には搬送コンベア20の搬送方向に沿って開口部34が並んで設けられ、蓋体35の枠体39がワーク搬送方向に沿って隣接して連設される。従って、チャンバ体30の内部を隅々まで視認することが可能であり、ワークWのプリント配線板の搬送の様子、即ちはんだ付けが行われる一連の工程を障害なく視認することができる。
【0047】
ガラス板38のガラスの熱伝導率は0.7[W/m・K]程度であり、鉄では84[W/m・K]程度、ステンレス(SUS304, SUS316)では17[W/m・K]程度である。即ち、ガラスの熱伝導率は鉄の1/100程度であり、常用されるステンレスの1/24程度で、極めて熱伝導率が小さい。なお、シール部材として使用されるシリコーンゴムの熱伝導率は0.15[W/m・K]程度である。従って、チャンバ体30の開口部34の蓋として設けられるガラス板38は、鉄やステンレス製の蓋と比較して極めて断熱性に優れている。従って、チャンバ体30内側のガラス板38表面温度は鉄やステンレス製の蓋よりも高くなり、ワークWのプリント配線板のはんだ付け実装に伴ってチャンバ体30内で発生するフラックスヒュームがガラス板38に付着し難くなる。
【0048】
なお、透明且つ板状の合成樹脂材料を用いて蓋体35を形成することも可能である。即ち、熱伝導率がガラスと同等又はそれ以下のプラスチック材料(例えばアクリルガラス、PVC(塩化ビニル)等)であれば、上述したような蓋体35と同様な機能を発揮させることができる。
【0049】
また、ラビリンスユニット36はチャンバ体30の載置台部45に接触して保持されているので、その接触部の熱伝導を介して実質的にチャンバ体30の温度と同等の温度に加熱される。従って、ラビリンスユニット36にもフラックスヒュームが付着し難くなる。
更に、ラビリンスユニット36や蓋体35であるガラス板38は、チャンバ体30に対して着脱自在に設けられる構成であるので、長期の使用に伴うメンテナンス等において清掃や洗浄作業を容易化することができる。
【0050】
また、上記実施形態においては所謂フローはんだ付け装置(図1〜図3)について例示したが、リフローはんだ付け装置においてチャンバ体を構成する炉体にも同様の構成を採用することができる。
図4は、リフローはんだ付け装置の1例を示している。このリフローはんだ付け装置を概略説明する。なお、上記実施形態と実質的に同一又は対応する部材には同一符号を用いるものとする。ワークWにおいてプリント配線基板に印刷したペースト状のはんだの上に電子部品が搭載されており、搬送部2の搬入口2Aから投入された後、搬送コンベア20で搬送されながらそのはんだを加熱して溶かし、はんだ付けが行われる。その後、ワークWは搬出口2Bから搬出される。
【0051】
図4において、リフローはんだ付け装置100の炉101内において、ワーク搬送方向に沿って予備加熱工程、リフロー工程及び冷却工程が設定される。予備加熱工程には加熱手段102,103が、リフロー工程には加熱手段104が、そして冷却工程には冷却手段105がそれぞれ配置される。また、窒素ガス供給装置106は炉101内部と接続されており、窒素ガス供給口107から窒素ガスが供給されるようになっている。なお、加熱手段としては、例えば赤外線等を用いた熱線加熱手段や熱風加熱手段等を用いることができる。
【0052】
この例では炉101の前後に、上記実施形態の場合と実質的に同様に構成されたラビリンス部108,109が配置される。即ち、各ラビリンス部108,109において、ガラス板38及び枠体39とにより構成される蓋体35が、チャンバ体30の開口部34に対して着脱自在に設けられている。また、開口部34に対応して、装架手段によってラビリンスユニット36が着脱自在に装架される。
なお、図4において、搬出口2B側のラビリンス部109については、搬入口2A側のラビリンス部108と実質的に同様であるため、その説明は省略するものとする。
【0053】
この例ではリフローはんだ付け装置100において、その搬入口2A側や搬出口2B側にのみラビリンスシールを設ける場合とするが、上記実施形態と同様に蓋体35を介してチャンバ体30内を広く見渡すことができると共に、これらの部材にはフラックスヒュームが付着し難く、メンテナンス作業等を容易化することができる。即ち、プリント配線板のはんだ付け実装作業を快適に行うことが可能になり、運転性と省エネルギー性等に優れたはんだ付け実装環境を実現することができる。
【0054】
なお、前述の実施形態において説明したフローはんだ付け装置の場合においても、その搬入口2Aや搬出口2Bにのみラビリンスシールを設けることがあり、その場合でも本発明の構成を適用することができる。
【0055】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば、上記実施形態において蓋体35等は、相互に隣接してチャンバ体30の全長に亘って連接される例を説明したが(図1)、必要に応じて連設せずに間欠的に配設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のはんだ付け装置の実施形態における全体構成例を示す図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明のはんだ付け装置の実施形態におけるチャンバ体の開口部とラビリンスユニット、蓋体等の構成を説明する分解斜視図である。
【図4】本発明の別の適用例としてのリフローはんだ付け装置の全体構成例を示す図である。
【図5】従来のチャンバ体の構成例を示し、(a)は搬送コンベアの搬送方向に沿ってその縦断面で見たチャンバ体の搬入口付近の構造を示す図、(b)はチャンバ体に設けられる蓋体を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 はんだ付け部
2 搬送部
3 チャンバ体部
10 はんだ付け噴流波形成装置
11 はんだ槽
12 溶融はんだ
13 ポンプ
14 吹き口体
20 搬送コンベア
21 コンベア
22 支持片
30 チャンバ体
31 開口部
32 スカート
33 抑止板
34 開口部
35 蓋体
36 ラビリンスユニット
37 シール部材
38 ガラス板
39 枠体
40 支点バー
41 止め具
42 掛け具
43 引張り係止具
45 載置台部
46 抑止板
47 保持板
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被はんだ付けワークを搬送する搬送手段を覆うように配設されたチャンバ体を有し、このチャンバ体内にワーク搬送方向に沿って複数の抑止板を並設すると共に、不活性ガスを供給しながらはんだ付けを行うようにしたはんだ付け装置であって、
前記チャンバ体上部に開口部を開設し、この開口部に透明な蓋体を着脱可能に蓋着し、前記開口部に対応して、前記抑止板をユニット化してなるラビリンスユニットを前記チャンバ体自体において着脱可能に装架することを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項2】
前記蓋体は、ガラス材又は合成樹脂材により板状に形成される共に周囲に枠体を有し、前記開口部の周縁部に沿って敷設したシール部材に弾接するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記チャンバ体の開口部の開口縁に設けた載置台部と前記ラビリンスユニットの側部に突設した掛止部とにより構成される該ラビリンスユニットの装架手段と、
前記蓋体を前記シール部材に弾接させるように構成された弾機手段とを備えることを特徴とする請求項2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記搬送手段の上方に位置して前記ラビリンスユニットを構成する前記抑止板と、前記搬送手段の下方に位置する前記抑止板とを、それぞれの板面が整合するように配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−158687(P2010−158687A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1133(P2009−1133)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
【Fターム(参考)】