説明

はんだ印刷機及びはんだ付け方法

【課題】スルーホールを有するプリント基板にクリームはんだを印刷した後のクリームはんだの落下を防止すること。
【解決手段】本発明にかかるはんだ印刷装置は、開口部31を有するメタルマスク30を介して、クリームはんだ18をプリント基板20に形成されたスルーホール21内に印刷するスキージ13と、クリームはんだ18を印刷する際に、プリント基板20を保持するバックアップ治具15と、プリント基板20のスルーホール21に対応して設けられた圧力室16と、圧力室16にエアーを印加するエアー供給口17とを備え、スルーホール21内に印刷されたクリームはんだ18に対し、プリント基板20の下面側から正圧を印加してプリント基板20の上面側に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ印刷機及びはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に部品をはんだ付けする方法として、メタルマスクを用いてプリント基板の所定の位置にクリームはんだを印刷し、はんだを加熱溶融して部品をはんだ付けする方法が知られている。従来から、リード付の挿入部品に対しても、このような表面実装技術(SMT:Surface mount technology)が適用されている。
【0003】
特許文献1には、プリント基板のスルーホールに部品のリードを挿入してはんだ付けする方法が記載されている。特許文献1に記載のメタルマスクには、スルーホール上の一部にリードと略同径の目隠し部が設けられている。このようなメタルマスクを用いてクリームはんだを印刷することにより、スルーホールに供給されるクリームはんだにリードと略同径の孔が設けられる。これにより、スルーホールにリードを挿入した場合に、クリームはんだが押し出されるのを防止し、はんだ量が不足するのを抑制している
【0004】
特許文献2には、プリント基板の表面と裏面の両方に、表面実装部品、挿入部品を実装する方法が記載されている。特許文献2では、裏面のパッドにクリームはんだを供給する際にスルーホールにもクリームはんだを予め供給している。その後、裏面と同様に、表面のパッドとスルーホール上にクリームはんだを印刷して、表面・裏面同時にはんだ付けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−305272号公報
【特許文献2】特開平9−27678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
挿入部品をSMTで実装する場合、接合の信頼性及び検査の視認性を確保するため、部品とプリント基板の接合部のはんだ量を十分に確保することが重要となる。
【0007】
特許文献1において、十分なはんだ量を確保するために、メタルマスクの開口面積の拡大やメタルマスク厚を厚くすることが考えられる。しかしながら、開口面積を拡大すると、はんだがスルーホールを覆って広く印刷されることとなる。このはんだが、溶融時に引きちぎられてはんだボールとなり、狭ピッチのICに付着すると、回路ショートが発生する恐れがある。また、メタルマスク厚を厚くすると、はんだがプリント基板上に転写されず、メタルマスクに詰まったままとなる、いわゆる版抜け不良が発生するおそれがある。
【0008】
特許文献2では、表面と裏面の両面において、スルーホール上にはんだを印刷している。しかし、版抜け不良を起こさないためのメタルマスク厚はせいぜい数百μmであるため、挿入部品に必要なはんだ量を確保しようとすると、メタルマスク厚を厚くする必要があり、上記と同様の問題が発生する。
【0009】
また、クリームはんだを塗布するためのスキージの速度や角度等を調整して、スルーホール内にクリームはんだを押し込むことによりはんだ量を確保しようとすると、次の工程にプリント基板を搬送する際、あるいは、リードをスルーホール内に挿入したときに、クリームはんだが落下してしまう恐れがある。
【0010】
メタルマスクによる印刷工程では、挿入部品が実装される箇所のみを局所的にはんだ厚を厚くできないため、はんだ印刷機と併せて、インクジェット式やディスペンサ式のはんだ供給装置を用いることも考えられる。しかし、これらの装置への投資が必要となるとともに、加工時間が長くなるという問題が発生する。
【0011】
一方、はんだ量の不足分をチップ型はんだ等の整形はんだで補う方法も考えられる。しかし、チップ型はんだを実装するためのプリント基板上のデッドスペースが増加したり、及びクリームはんだより高価なチップはんだの部品費がかかるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記のような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、スルーホールを有するプリント基板にクリームはんだを印刷した後のクリームはんだの落下を防止することができるはんだ印刷装置及びはんだ付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様に係るはんだ印刷機は、開口部を有するマスクを介して、クリームはんだをプリント基板に形成されたスルーホール内に印刷するスキージと、前記スルーホール内に印刷されたクリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させる圧力印加部とを備える。これにより、クリームはんだの落下の恐れを低減することができる。
【0014】
本発明の第2の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記圧力印加部は、印刷されたクリームはんだに対し、前記プリント基板の下面側から正圧を印加して移動させることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第3の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記クリームはんだを印刷する際に、前記プリント基板を保持するバックアップ治具をさらに備え、前記圧力印加部は、前記バックアップ治具に設けられることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第4の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記圧力印加部は、前記プリント基板の前記スルーホールに対応して設けられた圧力室と、前記圧力室にエアーを印加するエアー供給口とを含むものである。
【0017】
本発明の第5の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、複数のスルーホールに対して1つの前記圧力室が設けられていることを特徴とするものである。これにより、複数のスルーホールに対して均等に圧力を印加することが可能となる。
【0018】
本発明の第6の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、複数のスルーホールにそれぞれ対応して、複数の圧力室が設けられていることを特徴とするものである。これにより、複数のスルーホールのそれぞれに合わせて、圧力を調整することが可能となる。
【0019】
本発明の第7の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記複数のスルーホールの形状に対応して、異なる圧力が印加されることを特徴とするものである。これにより、各スルーホールにおいて、クリームはんだを落下を防止できる最適な状態にすることが可能となる。
【0020】
本発明の第8の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記圧力印加部は、印刷されたクリームはんだに対し、前記プリント基板の上面側から負圧を印加することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第9の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記スルーホール内に印刷された前記クリームはんだが、前記プリント基板の下面から突出するか否かを観察するセンサを備えることを特徴とするものである。これにより、より確実にクリームはんだの落下を防止することが可能となる。
【0022】
本発明の第10の態様に係るはんだ印刷機は、上記のはんだ印刷機において、前記スルーホール内に印刷された前記クリームはんだが、前記スルーホール内から前記プリント基板上の前記スルーホール近傍に移動したか否かを観察するセンサをさらに備える請求項1〜9のいずれか1項に記載のはんだ印刷装置。これにより、確実にクリームはんだの落下を防止することが可能となる。
【0023】
本発明の第11の態様に係るはんだ付け方法は、プリント基板に形成されたスルーホールにリード付の挿入部品をはんだ付けするはんだ付け方法であって、前記スルーホール内にクリームはんだを印刷し、前記クリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させ、前記クリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させた後に、前記リードを前記スルーホールに挿入し、前記クリームはんだを加熱することを特徴とする。これにより、プリント基板の搬送中や、リード挿入時のクリームはんだの落下の恐れを抑制することができる。
【0024】
本発明の第12の態様に係るはんだ付け方法は、上記のはんだ付け方法において、前記クリームはんだが前記プリント基板の下面から突出しないように、前記クリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させることを特徴とする。これにより、より確実にクリームはんだの落下を防止することが可能となる。
【0025】
本発明の第13の態様に係るはんだ付け方法は、上記のはんだ付け方法において、前記クリームはんだが前記スルーホール内に残存しないように、当該クリームはんだを前記プリント基板上の前記スルーホール近傍に移動させることを特徴とする。これにより、確実にクリームはんだの落下を防止することが可能となる。
【0026】
本発明の第14の態様に係るはんだ付け方法は、上記のはんだ付け方法において、前記プリント基板の下面側から正圧を印加する、又は、前記プリント基板の上面側から負圧を印加することにより、前記クリームはんだを移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、スルーホールを有するプリント基板にクリームはんだを印刷した後のクリームはんだの落下を防止することができるはんだ印刷装置及びはんだ付け方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1に係るはんだ印刷装置の構成を示す図である。
【図2A】実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作を説明する図である。
【図2B】実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作を説明する図である。
【図2C】実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作を説明する図である。
【図2D】実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作を説明する図である。
【図2E】実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作を説明する図である。
【図2F】実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作を説明する図である。
【図3A】実施の形態1に係るはんだ付け方法を説明する図である。
【図3B】実施の形態1に係るはんだ付け方法を説明する図である。
【図3C】実施の形態1に係るはんだ付け方法を説明する図である。
【図3D】実施の形態1に係るはんだ付け方法を説明する図である。
【図3E】実施の形態1に係るはんだ付け方法を説明する図である。
【図3F】実施の形態1に係るはんだ付け方法を説明する図である。
【図4】実施の形態2に係るはんだ印刷装置の構成を示す図である。
【図5A】はんだ付け方法の比較例を示す図である。
【図5B】はんだ付け方法の比較例を示す図である。
【図5C】はんだ付け方法の比較例を示す図である。
【図5D】はんだ付け方法の比較例を示す図である。
【図5E】はんだ付け方法の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、メタルマスクを用いてプリント基板の所定の位置にクリームはんだを印刷し、はんだを加熱溶融して部品をはんだ付けして部品をはんだ付けする技術に関する。スルーホール上に供給されたクリームはんだをプリント基板の上面側に押し出すことにより、搬送中のはんだの落下を防止する。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0031】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係るはんだ印刷装置の構成を示す図である。図1に示すように、実施の形態1に係るはんだ印刷装置は、コンベア10、サイドクランプ11、上面クランプ12、スキージ13、ガイドレール14、バックアップ治具15を備えている。
【0032】
図1において一対のコンベア10は、前後方向に延在している。一対のコンベア10は、クリームはんだが印刷されるプリント基板20の下面の左右の端辺にそれぞれ当接する。コンベア10が図示しない回転機構により回転することにより、プリント基板20が搬送される。
【0033】
サイドクランプ11は、クリームはんだ18を印刷する際に、プリント基板20を側面から固定するものである。なお、サイドクランプ11は、コンベア10のガイドレールを兼ねている。
【0034】
上面クランプ12は、プリント基板20の上面側に当接し、位置決めを行うものである。また、上面クランプ12は、後述するようにクリームはんだ18をスルーホール21を介してプリント基板20の上面側に移動させる際に、プリント基板20をバックアップ治具15に固定する役割を果たす。図1に示す例では、L字型の上面クランプ12が回転して、サイドクランプ11の上面とプリント基板20の上面とに接触し、プリント基板20とバックアップ治具15とを固定している。
【0035】
スキージ13は、ガイドレール14に移動可能に保持されている。ガイドレール14は、プリント基板20の上方に配置されている。ガイドレール14は、プリント基板20と平行に左右方向に延在している。スキージ13は、ガイドレール14が延在する方向に沿って移動する。
【0036】
バックアップ治具15は、矩形の板状部材である。バックアップ治具15は、クリームはんだ18をプリント基板20に印刷する際にプリント基板20が撓まないように、プリント基板20の下面を保持する。
【0037】
また、バックアップ治具15は、圧力室16、エアー供給口17を有している。圧力室16は、プリント基板20に設けられたスルーホール21に対応して設けられている。図1に示す例では、複数のスルーホール21に対して1つの圧力室16が設けられている。これにより、プリント基板20上の複数のスルーホール21に対して、均等に圧力を印加することができる。なお、エアー供給口17には、図示しない圧力レギュレータが設けられている。圧力レギュレータにより、圧力室16内の圧力が調整される。
【0038】
エアー供給口17から圧力室16にエアーを供給することにより、圧力室16内の圧力がプリント基板20の上側の圧力(大気圧)より高い正圧となる。プリント基板20の下面側から正圧を印加することにより、クリームはんだ18をスルーホール21を介してプリント基板20の上面側に移動させることができる。すなわち、圧力印加部には、圧力室16、エアー供給口17が含まれる。
【0039】
なお、各スルーホール21に対して個別に圧力を印加するようにしてもよい。例えば、各スルーホール21に対して、それぞれ別個の圧力室16を設けることができる。また、スルーホール21の大きさ、厚み等に対応して、印加する圧力を変化させることが好ましい。これにより、各スルーホール21において、個別にクリームはんだ18が落下しない最適な状態にすることが可能となる。
【0040】
メタルマスク30は、スキージ13とプリント基板20との間に配置される。メタルマスク30は、プリント基板20のスルーホール21に対応して形成された開口部31を有している。メタルマスク30をプリント基板20に乗せ、クリームはんだ18をスキージ13で開口部31中に押し込むことにより、スルーホール21内にクリームはんだ18が印刷される。
【0041】
なお、ここでは図示していないが、プリント基板20とメタルマスク30との位置合わせを行うためのカメラ等を有していてもよい。
【0042】
ここで、図2A〜2Fを参照して、実施の形態1に係るはんだ印刷機の動作について説明する。図2Aに示すように、上面クランプ12が回転してサイドクランプ11の上面に接触する。上面クランプ12は、サイドクランプ11から内側のプリント基板20の上側まで延在する。
【0043】
その後、バックアップ治具15が上に移動することにより、プリント基板20はコンベア10から離れ、プリント基板20が上面クランプ12に接触する。そして、左右のサイドクランプ11がそれぞれプリント基板20側に移動して、プリント基板20の対向する左右の面に接触する。これにより、プリント基板20が固定される。
【0044】
次に、図2Bに示すように、上面クランプ12がプリント基板20の上側から退避する。そして、プリント基板20を保持したコンベア10、サイドクランプ11及びバックアップ治具15が上昇して、プリント基板20がメタルマスク30に接触する。このとき、メタルマスク30の開口部31がプリント基板20のスルーホール21上に来るように、位置合わせが行われる。
【0045】
そして、図2Cに示すように、スキージ13をメタルマスク30表面に沿って移動させながら、クリームはんだ18を押圧する。そして、クリームはんだ18を開口部31を介して、プリント基板20上に押し出す。クリームはんだ18を印刷している際に、プリント基板20はバックアップ治具15により保持されているため、プリント基板20が撓むことはない。
【0046】
スキージ13の移動速度や、メタルマスク30に対する傾き、往復回数等を調整することにより、適切なはんだ量を確保することができる。プリント基板20上に印刷されたクリームはんだ18は、図2Cに示すように、スルーホール21内に侵入し、プリント基板20の下面側まで到達する。
【0047】
メタルマスク30は、従来から用いられていた厚みのものを用いることができる。従って、メタルマスク30の開口部31にクリームはんだ18が詰まってしまうという、いわゆる版抜け不良の問題は発生しない。
【0048】
その後、図2Dに示すように、プリント基板20を保持した状態でコンベア10、サイドクランプ11及びバックアップ治具15が下降することにより、プリント基板20の上面からメタルマスク30が離れる。そして、上面クランプ12が再び回転し、サイドクランプ11の上面及びプリント基板20の上面に当接する。上面クランプ12により、プリント基板20がバックアップ治具15に固定される。
【0049】
そして、エアー供給口17からエアーを供給することにより、スルーホール21内のクリームはんだ18に正圧を印加する。これにより、図2Eに示すように、プリント基板20の下面側に突出していたクリームはんだ18が、プリント基板20の上面側に押し出される。
【0050】
クリームはんだ18がプリント基板20の下面から突出しない状態になるまで、圧力が印加される。上述したメタルマスク30とプリント基板20との位置合わせを行う際に用いられるカメラを用いて、クリームはんだ18の状態を観察することができる。或いは、クリームはんだ18がプリント基板20の下面から突出しない状態を検出するセンサを別途設けてもよい。
【0051】
クリームはんだ18がプリント基板20の下面から突出しない状態になると、圧力室16へのエアーの供給を停止し、図2Fに示すように、上面クランプ12が回転してプリント基板20の上面側から退避する。また、バックアップ治具15がプリント基板20から離れる下方に移動する。さらに、プリント基板20の左右に配置されるサイドクランプ11が、それぞれプリント基板20から離れる方向に移動する。これにより、プリント基板20はコンベア10に保持され、払い出される。
【0052】
ここで、図3A〜3Fを参照して、実施の形態1に係るはんだ印刷装置を用いたはんだ付け方法を説明する。図3A〜3Cは、上述したはんだ印刷装置を用いたはんだ印刷及び加圧工程を示している。図3Dは、リード付の挿入部品40を実装する部品実装工程を示している。図3Eは、プリント基板20中に供給したはんだを加熱するリフロー加工工程を示している。図3Fは、はんだ付けが完了した状態を示す図である。
【0053】
図3A〜3Bに示すように、スキージ13を用いてクリームはんだ18をメタルマスク30を介して、プリント基板20に印刷する。このとき、スルーホール21内に必要なはんだ量を押し込むと、クリームはんだ18の形状は、図3Bに示すようにプリント基板20の下面から突出した形状となる。
【0054】
その後、メタルマスク30をプリント基板20から離す。そして、クリームはんだ18の印刷直後に、図3Cに示すように、プリント基板20の下面側から圧力を印加して、スルーホール21内のクリームはんだ18をプリント基板20の上面側に移動させる。これにより、クリームはんだ18はプリント基板20の下面からは突出せず、プリント基板20の上面側に略球状のクリームはんだ18が形成される。また、スルーホール21は、クリームはんだ18により充填されている。
【0055】
その後、プリント基板20は部品実装工程に搬送される。上述の通り、クリームはんだ18は、プリント基板20の下面から突出しておらず、略球状のクリームはんだがプリント基板20の上面側に形成されている状態である。このため、部品実装工程に搬送中のクリームはんだ18が落下するおそれは少なくなる。
【0056】
そして、図3Dに示すように、部品実装工程において、挿入部品の一例であるリード41を有するコネクタ40がスルーホール21内に挿入される。リード41が挿入されると、プリント基板20の上面にさしかかる位置までは、リード41はクリームはんだ18を押しのけるようにクリームはんだ18内に挿入されていく。その後、スルーホール21内では、リード41は、クリームはんだ18をプリント基板20の下面側に押し出しながら進んでいく。
【0057】
リード41が最終的な挿入終了位置に到達したときには、図3Eに示すように、リード41の先端にわずかにクリームはんだ18が付着した状態となる。そして、この状態のプリント基板20がリフロー加熱工程に搬送されて、クリームはんだ18が加熱される。上述のように、リード41の先端には、わずかにクリームはんだ18が付着した状態であるため、リフロー加熱工程に搬送中に振動が発生したとしても、クリームはんだ18が落下することがない。
【0058】
スルーホール21からあふれたクリームはんだ18は、溶融後に現れる溶融はんだの表面張力によりスルーホール21中に吸い込まれ、図3Fに示すように、釣り合いの取れたフィレット形状を形成し接合は完了する。これにより、十分なはんだ量を確保することができ、プリント基板20とコネクタ40とを良好に接合することが可能となる。
【0059】
ここで、図5A〜5Eを参照して、はんだ付け方法の比較例について説明する。図5A〜5Bは、はんだ印刷工程を示している。図5Cは、リード付の挿入部品40を実装する部品実装工程を示している。図5Dは、プリント基板20中に供給したはんだを加熱するリフロー加熱工程を示している。図5Eは、はんだ付けが完了した状態を示す図である。この比較例では、本実施の形態1のように、クリームはんだ18のプリント基板20上側への押し出しを行わない。
【0060】
図5A〜5Bに示すように、スルーホール21内に必要なはんだ量を押し込むと、クリームはんだ18の形状は、図5Bに示すようにプリント基板20の下面から突出した形状となる。この状態で、プリント基板20は部品実装工程に搬送される。クリームはんだ18は、プリント基板20の下面から突出しているため、部品実装工程への搬送中の振動によりクリームはんだ18が落下するというおそれがある。
【0061】
そして、図5Cに示すように、部品実装工程において、コネクタ40のリード41がスルーホール21内に挿入される。リード41が挿入されると、スルーホール21の内部及びプリント基板20の下面から突出していたクリームはんだ18がリード41に押し出される。
【0062】
これにより、図5Dに示すように、リード41の先端に大量のクリームはんだ18がぶら下がった状態で、リフロー工程に搬送される。リード41の先端に付着したクリームはんだ18は、狭い面積のリード41先端に働くクリームはんだ18自身の粘着力のみでぶら下がっている。このため、リフロー工程への搬送途中に、クリームはんだ18が落下する危険性がさらに高くなる。クリームはんだ18が搬送途中に落下すると、図5Eのようにプリント基板20とコネクタ40との間のはんだ量が不足し、接合状態が悪化する。
【0063】
この比較例と比較すると、実施の形態1に係るはんだ付け方法では、リード41の先端に付着するクリームはんだ18の量は、自身の粘着性のみで落下することなく次の工程まで搬送可能な量となる。
【0064】
以上説明したように、実施の形態1にかかるはんだ印刷機では、印刷時にプリント基板20の撓みを防止するためのバックアップ治具15に、クリームはんだ18をプリント基板20の上面に移動させるための圧力印加部を設けた。これにより、クリームはんだ18の印刷直後に、クリームはんだ18をプリント基板20の上面側に移動させることができる。これにより、リード41の先端に付着するクリームはんだ18の量を抑制することができ、搬送中の振動によるクリームはんだ18の落下を防止することが可能となる。
【0065】
なお、上述の例では、圧力印加部によりプリント基板20の下面から突出しないように、スルーホール21内とプリント基板20の上面側に押し出すようにしたが、これに限定されない。例えば、クリームはんだ18をスルーホール21内から完全に押し出し、プリント基板20の上面のスルーホール21近傍に移動させるようにしてもよい。スルーホール21内からクリームはんだ18が完全に押し出されても、クリームはんだ18を加熱溶融すると表面張力によりスルーホール21内に引き込まれる。
【0066】
スルーホール21内から完全にクリームはんだ18が押し出され、プリント基板20上のスルーホール21近傍に移動されたか否かを観察するため、圧力室16内の圧力をモニタする圧力センサを設けてもよい。
【0067】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係るはんだ印刷装置について図4を参照して説明する。図4は、実施の形態2に係るはんだ印刷装置の圧力印加部の構成を示す図である。圧力印加部以外の構成については、図1に示すはんだ印刷装置と同一の構成を用いることができるため、図示を省略している。
【0068】
実施の形態2に係る圧力印加部は、クリームはんだ18の印刷後に、プリント基板20の上面側から、クリームはんだ18に対して内部圧力が大気圧よりも低い負圧を印加する。これにより、プリント基板20の下面から突出するクリームはんだ18を上面側に引き出すことができ、搬送中の振動によるクリームはんだ18の落下を防止することが可能となる。なお、負圧を印加する圧力印加部は、はんだ印刷機内に設けてもよく、はんだ印刷機外に設けてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 コンベア
11 サイドクランプ
12 上面クランプ
13 スキージ
14 ガイドレール
15 バックアップ治具
16 圧力室
17 エアー供給口
18 クリームはんだ
20 プリント基板
21 スルーホール
30 メタルマスク
31 開口部
40 コネクタ
41 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するマスクを介して、クリームはんだをプリント基板に形成されたスルーホール内に印刷するスキージと、
前記スルーホール内に印刷されたクリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させる圧力印加部と、
を備えるはんだ印刷装置。
【請求項2】
前記圧力印加部は、印刷された前記クリームはんだに対し、前記プリント基板の下面側がから正圧を印加して移動させることを特徴とする請求項1に記載のはんだ印刷装置。
【請求項3】
前記クリームはんだを印刷する際に、前記プリント基板を保持するバックアップ治具をさらに備え、
前記圧力印加部は、前記バックアップ治具に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のはんだ印刷装置。
【請求項4】
前記圧力印加部は、
前記プリント基板の前記スルーホールに対応して設けられた圧力室と、
前記圧力室にエアーを印加するエアー供給口と、
を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだ印刷装置。
【請求項5】
複数のスルーホールに対して1つの前記圧力室が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のはんだ印刷装置。
【請求項6】
複数のスルーホールにそれぞれ対応して、複数の圧力室が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のはんだ印刷装置。
【請求項7】
前記複数のスルーホールの形状に対応して、異なる圧力が印加されることを特徴とする請求項6に記載のはんだ印刷装置。
【請求項8】
前記圧力印加部は、印刷されたクリームはんだに対し、前記プリント基板の上面側から負圧を印加することを特徴とする請求項1に記載のはんだ印刷装置。
【請求項9】
前記スルーホール内に印刷された前記クリームはんだが、前記プリント基板の下面から突出するか否かを観察するセンサを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のはんだ印刷装置。
【請求項10】
前記スルーホール内に印刷された前記クリームはんだが、前記スルーホール内から前記プリント基板上の前記スルーホール近傍に移動したか否かを観察するセンサをさらに備える請求項1〜9のいずれか1項に記載のはんだ印刷装置。
【請求項11】
プリント基板に形成されたスルーホールにリード付の挿入部品をはんだ付けするはんだ付け方法であって、
前記スルーホール内にクリームはんだを印刷し、
前記クリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させ、
前記クリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させた後に、前記リードを前記スルーホールに挿入し、
前記クリームはんだを加熱することを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項12】
前記クリームはんだが前記プリント基板の下面から突出しないように、前記クリームはんだを前記プリント基板の上面側に移動させることを特徴とする請求項11に記載のはんだ付け方法。
【請求項13】
前記クリームはんだが前記スルーホール内に残存しないように、当該クリームはんだを前記プリント基板上の前記スルーホール近傍に移動させることを特徴とする請求項11又は12に記載のはんだ付け方法。
【請求項14】
前記プリント基板の下面側から正圧を印加する、又は、前記プリント基板の上面側から負圧を印加することにより、前記クリームはんだを移動させることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載のはんだ付け方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【公開番号】特開2013−55296(P2013−55296A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194060(P2011−194060)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】