説明

はんだ粉の製造方法

【課題】平均粒径が0.05μm以上、3μm未満のはんだ粉を安定した収率でもって効率的に得ることができるはんだ粉の製造方法を提供する。
【解決手段】容器中に、固体または液体の金属と、非水系溶媒と、直径0.05mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得る工程と、前記混合物を前記金属の融点−5℃〜前記金属の融点+20℃に加熱し、攪拌する工程と、攪拌後の前記混合物から粉砕用ボールを分離して、はんだ粉と非水系溶媒の混合物を得る工程と、前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離して、はんだ粉を得る工程を有する、はんだ粉の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径が微細であるはんだ粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機器等の電子機器の小型化か進んでおり、それに組み込まれる電子部品・電子回路の小型化が進み、今後もこの傾向は続くものと考えられる。はんだ粉を配合したはんだペーストが使用される部品・回路のサイズは小さくなっており、基板のスルーホールやICチップの配線において100μm程度の線幅または径に対応したファインピッチソルダリング技術の要求に適合したはんだペーストが必要となってきている。この場合、用いるはんだペーストに配合するはんだ粉の平均粒径は、5μm以下であることが望まれる場合がある。今後予想される電子部品や回路の更なる小型化の要請に対応するために、はんだペーストに配合するはんだ粉として、平均粒径3μm未満、更には平均粒径1μm未満のはんだ粉が要望されることが増加すると考えられる。
【0003】
従来よりはんだ粉は、ディスクアトマイズ法やガスアトマイズ法にてその多くが製造されているが、これらの方法では平均粒径10μm以下のはんだ粉を得ることが困難であった。特許文献1には、ガスアトマイズ法でも製造条件を調整することにより、平均粒径5μm以下のはんだ粉が得られることが記載されている。しかし、ディスクアトマイズ法やガスアトマイズ法で平均粒径4μm以下のはんだ粉が得られた報告例はない。
【0004】
また、ディスクアトマイズ法、ガスアトマイズ法以外のはんだ粉の製法としては、特許文献2に、オイルとハンダ溶融物を攪拌することによりはんだ粉を得る方法が記載されている。特許文献3には、微細粒状にされたリフローはんだを製造する方法が記載されているが、いずれの文献でも、平均粒径3μm未満のはんだ粉は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−098118号公報
【特許文献2】特表2002−519509号公報
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4402042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、平均粒径3μm未満のはんだ粉は得られていない。そこで、本発明の目的は、平均粒径が0.05μm以上、3μm未満のはんだ粉を安定した収率でもって効率的に得ることができるはんだ粉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究の結果、容器中に、固体または液体の金属と、非水系溶媒と、直径0.05mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得て、前記混合物を150℃以上に加熱し、攪拌した後、前記混合物から粉砕用ボールを分離して、はんだ粉と非水系溶媒の混合物を得て、前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離することにより、平均粒径0.05μm以上、3μm未満のはんだ粉を得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かかる知見に基づく本発明によれば、容器中に、固体または液体の金属と、非水系溶媒と、直径0.05mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得る工程と、前記混合物を前記金属の融点−5℃〜前記金属の融点+20℃に加熱し、攪拌する工程と、攪拌後の前記混合物から粉砕用ボールを分離して、はんだ粉と非水系溶媒の混合物を得る工程と、前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離して、はんだ粉を得る工程を有する、はんだ粉の製造方法が提供される。
【0009】
前記非水系溶媒の沸点は150℃以上であってもよい。また、前記非水系溶媒はアルデヒド基またはヒドロキシ基を有する有機溶媒であってもよい。また、前記非水系溶媒は一級アミノ基、または二級アミノ基、または三級アミノ基の内の少なくとも一種以上を含む有機溶媒であってもよい。
【0010】
また、羽根を周速200cm/秒〜20000cm/秒で回転することにより前記攪拌する工程を行ってもよい。また、前記固液分離を遠心分離またはフィルタープレスにより行ってもよい。また、前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離した後、はんだ粉を沸点150℃以下の有機溶媒で洗浄してもよい。また、前記金属の体積が、前記非水系溶媒の体積の0.1体積%〜20体積%であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平均粒径が3μm未満と小さく、今後ますます高度化することが予想されるファインピッチソルダリング技術の要求に適合したはんだペースト用材料として活用することができるはんだ粉が安定した収率でもって効率的に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0013】
<はんだ粉の合金組成>
本発明におけるはんだ粉の合金組成としては、種々のはんだ合金を用いることが可能である。具体的な合金組成としては第1に、Snが90質量%〜99.9質量%、Agが0.05質量%〜10質量%含有する合金が挙げられる。この場合、鉛を含有しない無鉛はんだ粉を得ることも可能である。第2に、Snが50質量%〜90質量%、Pbが10質量%〜50質量%含有合金が挙げられる。これらの合金組成にすることにより、低融点のはんだ粉を得ることができ、低融点であることは、溶媒中で攪拌する本発明の製造方法を適用する上で、有利である。前記の合金は、必要に応じて、銅、亜鉛、ビスマス、インジウム、アンチモン等の元素のいずれか一種又は二種以上を含んでもよい。
【0014】
<はんだ粉の平均粒径>
はんだ粉の平均粒径は、0.05μm以上、3μm未満であることが好ましい。3μm以上の場合には、ファインピッチソルダリング技術の要求に十分適合できない場合があり、0.05μm未満のはんだ粉は、表面活性が高く、酸化等の変質による問題が生じることがある。
電子部品や電子回路の更なる小型化によるファインピッチソルダリング技術の要求水準高度化に対応するためには、はんだ粉の平均粒径は、1μm未満とすることが更に好ましく、0.7μm以下とすることが一層好ましい。
【0015】
本発明によれば、平均粒径3μm未満のはんだ粉は、以下の工程を経ることにより、安定した収率でもって効率的に製造することができる。
容器中に、固体または液体の金属と、非水系溶媒と、直径0.05mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得る工程。
(2)前記混合物を前記金属の融点より5℃低い温度(融点−5℃)〜前記金属の融点より20℃高い温度(融点+20℃)に加熱し、攪拌する工程。
(3)前記混合物から粉砕用ボールを分離して、はんだ粉と非水系溶媒の混合物を得る工程。
(4)前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離して、はんだ粉を得る工程。
必要に応じて、得られたはんだ粉に対して、洗浄、乾燥等を行ってもよい。
【0016】
<原料金属>
はんだ粉の原料金属としては、得ようとするはんだ粉と同一の金属組成を持つ例えばSnが90質量%〜99.9質量%、Agが0.05質量%〜10質量%含有するはんだ合金、Snが50質量%〜90質量%、Pbが10質量%〜50質量%含有するはんだ合金またはこれらはんだ合金の原料となる金属の混合物を使用することができる。均一な金属組成を持つはんだ粉をより容易に得ることができるようにするためには、合金を使用することが好ましい。
【0017】
<非水系溶媒>
本発明での非水系溶媒とはその沸点が、150℃以上であるものが好適であり、200℃以上であるものが特に好適である。後述するように、はんだ粉を得るためには、非水系溶媒として得ようとするはんだ粉の融点よりも高い沸点を持つものが好ましいが、攪拌をおこなう容器に圧力容器を用いることにより、雰囲気圧力を上げ、常圧の沸点がはんだ粉の融点より低い非水系溶媒でも、使用が可能である。しかしながら製造装置に耐圧性能が必要となるので、沸点は、得ようとするはんだ粉の溶融温度よりも10℃以上高いことが望ましい。更に非水系溶媒として、はんだ粉が酸素と反応して、表面に酸化物を形成しやすいために、還元性を有する溶媒であることが更に好ましい。
【0018】
例えば、このような非水系溶媒の一例として、沸点が150℃から400℃の範囲のアルコール系溶媒が挙げられる。具体的にはSn−Ag−Cu系はんだの融点が218℃の場合、且つ常圧下で以下に述べる攪拌操作を行ない、微粉化されたはんだ粉を得るためには、非水系溶媒の沸点は220℃以上であることが好ましく、250℃以上であることが更に好ましい。
【0019】
具体的には、非水系溶媒として、一価アルコール、または二価アルコールのグリコールがある。一価アルコールとしては、例えば、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール等がある。グリコール系の溶媒としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ベンズピナコール、ヒドロベンゾイル、シクロペンダジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリコール酸アミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等があり、分子量の大きいものではポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールエーテルがある。特にグリコール、ジオール系のものは水酸基を二つ持つものであるため、極性を持ち、粉の分散性に寄与するので望ましい。このような溶媒としては、例えば−CH−CHOH、または−CHR−CHOH、−CR−CHOH、=CHCHOH、=CRCHOH(R、R、R:側鎖)を分子中に含まれるもので、且つ溶媒の沸点は少なくとも100℃以上のものである。更にはアルデヒド基−CHOを持つ有機化合物も同様な効果を持ち、例えば、脂肪族飽和アルデヒドとして、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ミリスチンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、ペンタデシルアルデヒド、パルミチンアルデヒド、マルガリンアルデヒド、ステアリンアルデヒドが挙げられ、脂肪族ジアルデヒドとしては例えばスクシンジアルデヒドがあり、脂肪族不飽和アルデヒドとして、クロトンアルデヒド、更には芳香族アルデヒドには、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、ナフトアルデヒド等があり、複素環式アルデヒドにはフルフラールが挙げられる。アミン系の還元性溶媒としては、ヘキシルアミン、ヘブチンアミン、オクチルアミン、ウンデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ナフチルアミン、トルイジン等がある。
【0020】
<粉砕用ボール>
本発明に用いる粉砕用ボールとしては、材質としてセラミックス系を用いたアルミナボール、ジルコニアボール、ムライトボール、ガラスボール、金属系のステンレスボールや鉄ボール等を使用することができ、特に材質に制限はないが、粉砕用ボールの材質として、耐久性が高く、はんだ粉への不純物の混入が少ない利点のある、ジルコニア、アルミナ、ステンレス鋼が、特に好適である。
【0021】
粉砕用ボールは、粒径が0.05mm〜5mmであることが好ましい。粒径15mm超の粉砕用ボールのみを使用すると、目的とする微細な粒径を持つはんだ粉を得ることが難しくなり、粒径0.05mm未満の粉砕用ボールのみを使用すると、攪拌後の固液分離に時間を要することがある。
より粒径の小さいはんだ粉を容易に得るためには、粉砕用ボールの粒径は、0.1〜5mmが更に好ましく、0.1〜3mmが一層好ましく、0.1〜1mmが更に一層好ましい。粉砕用ボールを大きな粒径のものと小さな粒径のものとを組み合わせて使用することも可能である。この場合には、大きなボールサイズは特に粒径15mmにこだわる必要はなく、例えば、粒径30mmでも良い。少なくとも粒径0.05mm〜15mmの粉砕用ボールが50質量%入っていることが必要である。
【0022】
粉砕用ボールの表面に、はんだが付着しにくい材質であるダイヤモンドライクカーボン(DLC)やB,C,N等の化合物を形成することができる。
【0023】
<混合物の体積比>
前記混合物の体積比は、用いる非水系溶媒の体積に対して、金属原料は、0.1体積%〜20体積%が好ましく、0.1体積%〜10体積%が一層好ましい。粉砕用ボールは、用いる非水系溶媒の体積に対して、20体積%〜600体積%が好ましい。金属原料が0.1体積%未満の場合、生産性が低くなり、20体積%超の場合には、得られるはんだ粉の粒径が十分小さくならないことがある。粉砕用ボールが20体積%未満の場合には、得られるはんだ粉の粒径が十分小さくならないことがあり、600体積%超の場合は、粉砕用ボールの表面に原料用金属が多く付着した状態となることがある。前記混合物を容器中で静置したときに、前記粉砕用ボールの上面と前記非水系溶媒の上面の高さが、略同一となるように、前記粉砕用ボールの前記非水系溶媒に対する体積比率を調整することにより、微粒子のはんだ粉が得やすくなるので、更に好ましい。
【0024】
<加熱・攪拌工程>
前記金属原料と、前記非水系溶媒と、前記粉砕用ボールの混合物を加熱・攪拌することにより、平均粒径が0.05μm以上、3μm未満であるはんだ粉を生成することができる。
【0025】
加熱・攪拌する雰囲気は、不活性ガスまたは還元性ガスとすることが好ましい。雰囲気を空気とした場合、生成したはんだ粉の表面に厚い酸化膜が生成することがあり、雰囲気中の酸素濃度は低いほうが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられ、還元性ガスとしては、水素または水素と不活性ガスの混合ガスが挙げられる。
【0026】
加熱・攪拌する際、混合物の加熱温度は、得ようとするはんだ粉の合金組成物の融点より高い温度とすればよいが、前記融点より5℃低い温度〜前記融点より20℃高い温度に加熱することが好ましい。より好ましくは、前記融点と同じ温度〜前記融点より17℃高い温度とすればよい。また、さらに好ましくは、前記融点より7℃高い温度〜前記融点より12℃高い温度とすればよい。合金組成物の融点近傍の温度で加熱・攪拌を行うことではんだ粉の収率(はんだ粉収量/はんだ合金原料投入量)が好適なものとなる。前記加熱温度は、使用する非水系溶媒の沸点(加圧下で加熱・攪拌する場合には、該加圧下での沸点)未満の温度とする。
【0027】
攪拌は、攪拌羽根を回転することによりおこなうことができ、ミル等の粉砕用ボールを用いることができる粉砕機を用いておこなってもよい。回転数等の粉砕条件は、混合物の内容と得ようとするはんだ粉の平均粒径に応じて、適宜選択すれば良く、攪拌羽根等の回転数を上昇させることにより、得られるはんだ粉の平均粒径を小さくすることができる。例えば、攪拌羽根を用いる場合、その回転数は、100〜100000
rpmの範囲、攪拌羽根の周速は、100〜5000cm/secの範囲に設定することができる。
【0028】
<粉砕用ボールの分離>
加熱・攪拌後、混合物は、攪拌をおこなった状態で、はんだ粉の融点より10℃以上低い温度まで冷却する。その後、混合物から粉砕用ボールをメッシュを通す等の公知の手段により分離して、はんだ粉と非水系溶媒の混合物を得る。
【0029】
<固液分離>
前記工程で得られたはんだ粉と非水系溶媒の混合物の固液分離をおこなう。固液分離は、遠心分離、フィルタープレスによるろ過等の公知の方法によりおこなうことができる。なお、用いた非水系溶媒が、はんだ粉の分散媒として支障ない場合には、固液分離をおこなう必要はない。
【0030】
<洗浄・乾燥>
固液分離したはんだ粉は、溶媒で洗浄することができる。前記溶媒としては、メタノール、エタノール等の低沸点であるアルコールの有機溶媒が好適な例としてあげられる。洗浄後、真空乾燥等の高温加熱をおこなわない方法で乾燥することにより、使用した非水系溶媒の残留が少ないはんだ粉を得ることができる。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
Sn99質量%、Ag0.3質量%、Cu0.7質量%である組成のはんだ合金線1mmΦを10g秤量し、このはんだ線を300mLのセパラブルフラスコに投入した。前記はんだ合金線の融点を示差走査熱量計(DSC)(株式会社リガク製、Thermo plus DSC8230)で測定した結果、融点は、218℃であった。次に0.3mmΦのジルコニアボール300gを前記セパブルフラスコに投入し、更に、テトラエチレングリコール100mLを投入して、混合物を得た。この後、セパラブルフラスコの上蓋をして密封し、窒素ガスを100mL/minで流し、10分間ガス置換をした。次に、セパブルフラスコ内に設置してあった回転径が6cmのステンレス製の攪拌羽根を700rpm回転させることにより攪拌をおこなった状態で、混合物を表1に記載の14種類の温度(加熱温度)まで加熱した。なお、混合物の温度は、セパブルフラスコ内に設置された熱電対により測定した。混合物を前記加熱温度で1時間保持した後、前記攪拌状態を維持したまま、前記混合物を5℃/minの冷却速度で冷却した。混合物が40℃以下になった段階で攪拌羽根の回転を止めた。次にこの混合物を250メッシュのナイロン生地の網を通過させて、0.3mmΦのジルコニアボールを混合物から分離した。ろ過された側には微粉化したはんだ粉が分散した溶媒(テトラエチレングリコール)が回収された。テトラエチレングリコールを洗浄除去するために、前記はんだ粉が分散した溶媒を3000rpm、5分間の処理条件で遠心分離して固液分離し、上澄みの液体を除去して、はんだ粉を回収した。この後、下記の要領で、洗浄を行った。回収したはんだ粉を100mLのエタノール中と攪拌混合し、再分散した後、3000rpm、5分間の処理条件で遠心分離して固液分離し、上澄みの液体を除去して、はんだ粉を回収した。この回収したはんだ粉をエタノール中に分散後、遠心分離による固液分離する操作を5回繰返しおこなった。得られたはんだ粉を60℃で真空乾燥して、加熱温度が異なる14種類の乾燥済みのはんだ粉を得た。
【0032】
加熱温度が215℃〜235℃である6種類の前記乾燥済みのはんだ粉を、反射型のFT−IR(PerkinElmer社製、Spectrum 100)でテトラエチレングリコールのヒドロキシ基のピークの有無について調べたが、前記ピークは認められなかった。
【0033】
加熱温度が215℃〜235℃である6種類の前記乾燥済みのはんだ粉について、SEM観察を行った結果、粒子形状は球状であった。前記乾燥済みのはんだ粉の平均粒径D50を表1に示した。
なお、本願では、はんだ粉試料0.3gをイソプロピルアルコール30mLに入れ、45W超音波洗浄器にて5分間処理後、当該処理液に対しマイクロトラック9320−X100(ハネウエル−日機装製)を用いて粒径測定した際の、累積50質量%粒径(D50)を銀粉の平均粒径とした。ここで、平均粒径D50について説明する。測定対象であるはんだ粉全体の粒度分布が求められたとき、その銀紛全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが、例えば、10%、50%、90%となる点の粒子径をそれぞれD10、D50、D90と表記した。そして、累積中位径(Median径)であるD50を、平均粒径としている。
得られた乾燥済みのはんだ粉の質量を、使用したはんだ合金線の質量で除することにより、はんだ粉の収率を計算した。その結果を、表1に示す。
【表1】

【0034】
[実施例2]
はんだ合金線の組成をSn99質量%、Ag0.3質量%、Cu0.7質量%から、Sn96.5質量%、Ag3.0質量%、Cu0.5質量%に変更し、前記加熱温度を表1の14種類から表2の13種類に変更した以外は、実施例1と同様の方法で乾燥済みはんだ粉を得て、評価をおこなった。なお、はんだ合金線の融点を測定した結果、223℃であった。
【0035】
前記乾燥済みのはんだ粉を、反射型のFT−IRでテトラエチレングリコールのヒドロキシ基のピークの有無について調べたが、前記ピークは認められなかった。
【0036】
加熱温度が215℃〜235℃である6種類の前記乾燥済みのはんだ粉について、SEM観察を行った結果、粒子形状は球状であった。前記乾燥済みのはんだ粉の平均粒径D50とはんだ粉の収率を表2に示した。
【表2】

【0037】
[実施例3]
はんだ合金線の組成をSn99質量%、Ag0.3質量%、Cu0.7質量%から、表3に記載の5種類に変更し、前記加熱温度を表1の14種類から表3、表4、表5の加熱温度(はんだ合金の融点+5℃、はんだ合金の融点−10℃、はんだ合金の融点−10℃)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で乾燥済みはんだ粉を得て、評価をおこなった。なお、5種類の組成のはんだ合金線について、融点を測定した結果を表3〜表5に示した。また、表3〜表5には各試料におけるはんだ粉の収率とはんだ粉の平均粒径D50を示した。
【表3】

【表4】

【表5】

【0038】
前記乾燥済みのはんだ粉を、反射型のFT−IRでテトラエチレングリコールのヒドロキシ基のピークの有無について調べたが、前記ピークは認められなかった。
加熱温度が融点+5℃である5種類の前記乾燥済みのはんだ粉について、SEM観察を行った結果、粒子形状は球状であった。この乾燥済みのはんだ粉の平均粒径D50とはんだ粉の収率を表3に示した。そして、表4および表5に示すように、加熱温度が、融点−10℃および融点+30℃である場合には、いずれもはんだ粉の収率は1%未満であった。
【0039】
[実施例4]
はんだ合金線の質量を10gから、表6に記載の値に、加熱温度を表1に記載の値から表6に記載の値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で乾燥済みはんだ粉を得て、評価をおこなった。
【0040】
前記乾燥済みのはんだ粉を、反射型のFT−IRでテトラエチレングリコールのヒドロキシ基のピークの有無について調べたが、前記ピークは認められなかった。
前記乾燥済みのはんだ粉の平均粒径D50とはんだ粉の収率を表6に示した。表6の結果から粉砕時の合金濃度が変化しても、好適なはんだ粉収率を得るための加熱温度の範囲は変わらないことが分かった。
【表6】

【0041】
[実施例5]
加熱温度を表1に記載の値から250℃に変更し、冷却速度を5℃/minから、200℃に到達するまでは0.2℃/minに変更した以外は、実施例1と同様の方法で乾燥済みはんだ粉を得て、評価をおこなった。
【0042】
前記乾燥済みのはんだ粉を、反射型のFT−IRでテトラエチレングリコールのヒドロキシ基のピークの有無について調べたが、前記ピークは認められなかった。
前記乾燥済みのはんだ粉の平均粒径D50は、0.9μmであり、はんだ粉の収率は、30質量%であった。
[実施例6]
加熱温度を表2に記載の値から255℃に変更し、冷却速度を5℃/minから、210℃に到達するまでは0.2℃/minに変更した以外は、実施例2と同様の方法で乾燥済みはんだ粉を得て、評価をおこなった。
【0043】
前記乾燥済みのはんだ粉を、反射型のFT−IRでテトラエチレングリコールのヒドロキシ基のピークの有無について調べたが、前記ピークは認められなかった。
前記乾燥済みのはんだ粉の平均粒径D50は、0.9μmであり、はんだ粉の収率は、32質量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、粒径が微細であるはんだ粉の製造方法に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器中に、固体または液体の金属と、非水系溶媒と、直径0.05mm〜5mmの粉砕用ボールとを入れ、混合物を得る工程と、
前記混合物を前記金属の融点−5℃〜前記金属の融点+20℃に加熱し、攪拌する工程と、
攪拌後の前記混合物から粉砕用ボールを分離して、はんだ粉と非水系溶媒の混合物を得る工程と、
前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離して、はんだ粉を得る工程を有する、はんだ粉の製造方法。
【請求項2】
前記非水系溶媒の沸点は150℃以上である、請求項1に記載のはんだ粉の製造方法。
【請求項3】
前記非水系溶媒はアルデヒド基またはヒドロキシ基を有する有機溶媒である、請求項2に記載のはんだ粉の製造方法。
【請求項4】
前記非水系溶媒は一級アミノ基、または二級アミノ基、または三級アミノ基の内の少なくとも一種以上を含む有機溶媒である、請求項2に記載のはんだ粉の製造方法。
【請求項5】
羽根を周速200cm/秒〜20000cm/秒で回転することにより前記攪拌する工程を行う、請求項1〜4のいずれかに記載のはんだ粉の製造方法。
【請求項6】
前記固液分離を遠心分離またはフィルタープレスにより行う、請求項1〜5のいずれかに記載のはんだ粉の製造方法。
【請求項7】
前記はんだ粉と非水系溶媒の混合物を固液分離した後、はんだ粉を沸点150℃以下の有機溶媒で洗浄する、請求項1〜6のいずれかに記載のはんだ粉の製造方法。
【請求項8】
前記金属の体積が、前記非水系溶媒の体積の0.1体積%〜20体積%である、請求項1〜7のいずれかに記載のはんだ粉の製造方法。

【公開番号】特開2011−104634(P2011−104634A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263519(P2009−263519)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】