説明

はんだ組成物

【課題】はんだ粒子同士の合一を抑制し、はんだブリッジの発生を抑制できるはんだ組成物を提供する。
【解決手段】はんだ組成物10は、多数のはんだ粒子11と、ベース材としての脂肪酸エステル油およびこの脂肪酸エステル油に添加されるテトラ(ステアリン酸)錫(IV)のような4価の有機酸錫塩を含む液状体12(液体材料)とからなり、例えばパッド電極22にはんだバンプを形成するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板やインターポーザ基板の上に突起状のはんだバンプを形成してFC(filip chip)やBGA(ball grid array)を製造する際に用いられるはんだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的なはんだバンプの形成方法は、スクリーン印刷法やディスペンス法などを用いて基板のパット電極上にはんだペーストを塗布し、このはんだペーストを加熱してリフローするというものであった。
【0003】
しかしながら、近年の更なる多電極化、高密度化および微細化に対して、スクリーン印刷法やディスペンス法では対応できなくなりつつある。すなわち、スクリーン印刷法では、メタルマスクの機械的強度が低下したり、メタルマスクの開口からはんだペーストが抜け難くなったりする、という問題が生じてきた。ディスペンス法では、多数のパッド電極の上に一つずつはんだペーストを載せていくので、パッド電極が多くなるほど量産には向かなくなる。
【0004】
そこで、最近では、はんだバンプを選択的に形成する様々な技術が開発されている。これらの技術は、微細なバンプの形成に適しており、バンプの一括形成もできるので、生産性にも優れる。
【0005】
このような技術として、例えば特許文献1には、以下のはんだバンプの形成方法が記載されている。特許文献1のはんだバンプ形成方法では、油脂よりなる液状体と該液状体に含まれる遊離脂肪酸からなるフラックス成分とはんだ粒子との混合物からなるはんだ組成物(はんだバンプ形成材料)を、表面に電極が形成された基板上にベタ塗りし、基板を加熱する。これにより、電極の近傍のはんだ粒子が溶融し、電極にはんだ皮膜が濡れ広がり、さらにこのはんだ皮膜に対して、はんだ粒子が合体していき、隣接電極間で短絡をおこさず、濡れ性の高い電極上に選択的にはんだバンプを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第05/091354号公報パンフレット
【0007】
特許文献1に記載のはんだバンプの形成方法では、はんだ組成物に、はんだ粒子同士の合一を抑制する合一抑制成分が含まれている。この合一抑制成分が、リフロー時にはんだ粒子同士の合一を抑制するように作用することによって、はんだ粒子同士の合体によるはんだブリッジの発生を抑制できる。特許文献1には、この合一抑制成分として、有機酸錫塩が記載されている。この有機酸塩錫は、はんだに錫が含まれる場合に有機酸が還元する過程で、副生成物として得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1には、はんだ粒子同士の合一を大幅に抑制する有機酸錫塩が
、具体的に開示されていない。はんだ粒子同士の合一抑制を目的として、はんだ組成物に有機酸錫塩を予め添加した場合、有機酸錫塩の種類によっては、はんだ粒子同士の合一を抑制する効果が弱いため、はんだ粒子同士の合一が進行してはんだブリッジが発生し、ショート不良等の問題が生じるおそれがある。
【0009】
したがって、この発明の目的は、はんだ粒子同士の合一を抑制し、はんだブリッジの発生を抑制できるはんだ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、この発明は、脂肪酸エステル油と、脂肪酸エステル油に添加された合一抑制剤と、はんだ粒子とを含み、合一抑制剤は、式(1)で表される4価の有機酸錫塩を含むはんだ組成物である。
式(1)
Sn(R1COO)4
(式中、R1は炭化水素基である。)
【0011】
この発明では、脂肪酸エステル油に添加された式(1)で表される4価の有機酸錫塩が、はんだ粒子同士の合一を抑制する合一抑制成分として作用することによって、はんだ粒子同士の合一を抑制し、はんだブリッジの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、はんだ粒子同士の合一を抑制し、はんだブリッジの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施の形態によるはんだ組成物を基板上に塗布した状態を示す断面図である。
【図2】この発明の一実施の形態によるはんだ組成物を用いたはんだバンプの形成方法を説明するための断面図である。
【図3】この発明の一実施の形態によるはんだ組成物を用いたはんだバンプの形成方法を説明するための断面図である。
【図4】リフロープロファイルを示すグラフである。
【図5】試験例1−1−1の測定結果をまとめたグラフである。
【図6】試験例2−1−1〜試験例2−5−2の測定結果をまとめたグラフである。
【図7】試験例3−1−1〜試験例3−2−1の測定結果をまとめたグラフである。
【図8】試験例4−1−1〜試験例5−3−2の測定結果をまとめたグラフである。
【図9】試験例6−1−1〜試験例6−4−1の測定結果をまとめたグラフである。
【図10】試験例6−5−1〜試験例6−7−1の測定結果をまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施の形態は、この発明の具体的な例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、実施の形態に限定されないものとする。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.はんだ組成物
2.はんだ組成物を用いたはんだバンプの形成
3.変形例
【0015】
1.はんだ組成物
図1は、この発明の一実施の形態によるはんだ組成物を基板上に塗布した状態を示す断面図である。この発明の一実施の形態によるはんだ組成物10は、多数のはんだ粒子11と、液状体12とから構成されている。はんだ組成物10は、例えばパッド電極22にはんだバンプを形成するために用いられる。
【0016】
このはんだ組成物10は、パッド電極22を有する基板20上に、常温において自然落下により滴下させる。これだけで、基板20上に均一な厚みのはんだ組成物10を塗布できる。つまり、スクリーン印刷やディスペンサを用いることなく、均一な膜厚のはんだ組成物10の塗布膜を基板20上に塗布できる。
【0017】
はんだ組成物10の厚みの均一性は、はんだバンプのばらつきに影響を及ぼすため、はんだ組成物10をできる限り均一に塗布する。その後、基板20全体を均一に加熱することにより、はんだバンプの形成が可能となる。なお、基板20の加熱では、短時間ではんだ融点以上まで昇温することが好ましい。短時間で昇温することにより、プロセス中において、はんだ組成物10の活性成分の活性力の低下を抑えることができる。
【0018】
[液状体]
液状体12は、ベース材としての脂肪酸エステル油と、活性成分としての有機酸と、脂肪酸エステル油に添加され、はんだ粒子11同士の合一を十分に抑制するための合一抑制剤とを含む。なお、活性成分としての有機酸は、ベース材に対して添加してもよいが、脂肪酸エステル油に含まれる遊離脂肪酸を、活性成分としての有機酸としてもよい。この液状体12は、常温で流動して母材の一例である基板20に層状に堆積する粘性を有している。
【0019】
(脂肪酸エステル油)
脂肪酸エステル油としては、例えば、熱・酸化安定性に優れたネオペンチルポリオールエステルなどが挙げられる。なお、脂肪酸エステル油は、ネオペンチルポリオールエステルに限定されるものではなく、種々の脂肪酸エステル油を用いることができる。
【0020】
(活性成分)
活性成分としての有機酸は、はんだ粒子11の融点以上に加熱された状態で、はんだ粒子11とパッド電極22とのはんだ付けを促進すると共に、パッド電極22上に形成されるはんだ皮膜とはんだ粒子11との合体を促進する作用を有する。また、有機酸は、はんだ粒子11の自然酸化膜を除去する作用があるものの、その作用は弱い。そのため、はんだ粒子11の自然酸化膜は完全には除去されず、はんだ粒子11の自然酸化膜によって、はんだ粒子11同士の合一を抑制することができる。
【0021】
なお、はんだ粒子11に錫が含まれる場合には、有機酸がはんだ表面の酸化膜を除去する(還元する)過程で有機酸錫塩が副生成物として得られる。この有機酸錫塩は、はんだ粒子11同士の合一を抑制する合一抑制成分として機能する。
【0022】
(合一抑制剤)
合一抑制剤には、式(1)で表される4価の有機酸錫塩が、はんだ粒子同士の合一を大幅に抑制するための有効成分として含まれる。
【0023】
式(1)
Sn(R1COO)4
(式中、R1は炭化水素基である。炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、炭化水素基としては、アルキル基のような飽和炭化水素基、アルケニル基、アルキニル基のような不飽和炭化水素基が挙げられる。R1は、例えば、炭素数5〜19の炭化水素基である。)
【0024】
また、合一抑制剤には、式(1)で表される4価の有機酸錫塩の他に、所定の含有量(例えば0wt%<含有量≦70wt%:重量%は合一抑制剤に対する重量%)であれば、式(2)で表される2価の有機酸錫塩を含んでいてもよい。
【0025】
式(2)
Sn(R2COO)2
(式中、R2は炭化水素基である。炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、炭化水素基としては、アルキル基のような飽和炭化水素基、アルケニル基、アルキニル基のような不飽和炭化水素基が挙げられる。R2は、例えば、炭素数5〜19の炭化水素基である。)
【0026】
式(1)で表される4価の有機酸錫塩としては、より具体的には、式(3)で表されるテトラ(ステアリン酸)錫(IV)が挙げられる。
【0027】
式(3)
Sn(C1735COO)4
【0028】
式(2)で表される2価の有機酸錫塩としては、より具体的には、式(4)で表されるジ(ステアリン酸)錫(II)が挙げられる。
【0029】
式(4)
Sn(C1735COO)2
【0030】
合一抑制剤は、例えば、液状体12の全量に対して、0.05wt%以上1wt%以下含まれる。合一抑制剤の含有量が、0.05wt%未満であると、はんだ粒子同士の合一を抑制する効果が弱すぎて、はんだブリッジの発生を十分に抑制できない。また、合一抑制剤の含有量が、1wt%より大きいと、はんだ粒子同士の合一を抑制する効果が強すぎて、不濡れが発生してしまう。
【0031】
[はんだ粒子11]
はんだ粒子11は、液状体12内を母材の一例である基板20に向けて沈降するとともに、液状体12内に均一に分散可能な混合比および粒径を有する粒剤である。
【0032】
はんだ粒子11としては、例えば、錫鉛系はんだまたは鉛フリーはんだ等を用いることができる。より具体的には、例えばSn−Pb(融点183℃程度)、Sn−Ag−Cu(融点218℃程度)、Sn−Ag(融点221℃程度)、Sn−Cu(融点227℃程度)、その他の鉛フリーはんだ等を用いることができる。
【0033】
はんだ粒子11は液状体12中に均一に分散している必要があるので、はんだ組成物10は使用直前に攪拌しておくことが望ましい。
【0034】
隣接するパッド電極22同士の周端間の最短距離aよりも、はんだ粒子11の直径bを小さくするとよい。この場合、隣接する二つのパッド電極22上のはんだ皮膜にそれぞれ到達したはんだ粒子11同士は、接触しないため、合体してはんだブリッジの形成が抑制される。
【0035】
[基板20]
基板20は、例えばシリコンウエハである。基板20の表面21には、パッド電極22が形成されている。パッド電極22上には、はんだバンプが形成される。基板20は、はんだバンプを介して、他の半導体チップや配線板に電気的および機械的に接続される。パッド電極22は、形状が例えば円であり、直径cが例えば40μmである。隣接するパッド電極22の中心間の距離dは、例えば80μmである。はんだ粒子11の直径bは、例えば3〜15μmである。
【0036】
[パッド電極22]
パッド電極22は、基板20上に形成されたアルミニウム電極24と、アルミニウム電極24上に形成されたニッケル層25と、ニッケル層25上に形成された金層26とからなる。ニッケル層25および金層26はUBM(under barrier metalまたはunder bump metallurgy)層である。基板20上のパッド電極22以外の部分は、保護膜27で覆われている。
【0037】
パッド電極22は、例えば、以下のようにして形成できる。まず、基板20上にアルミニウム電極24を形成し、アルミニウム電極24以外の部分にポリイミド樹脂またはシリコン窒化膜によって保護膜27を形成する。これらは、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて形成される。続いて、アルミニウム電極24表面にジンケート処理を施した後に、無電解めっき法を用いてアルミニウム電極24上にニッケル層25および金層26(UBM層)を形成する。このUBM層を設ける理由は、アルミニウム電極24にはんだ濡れ性を付与するためである。
【0038】
2.はんだ組成物を用いたはんだバンプの形成
この発明の一実施の形態によるはんだ組成物を用いた、はんだバンプの形成方法について説明する。このはんだバンプの形成方法は、基板上の電極および電極周辺部を含む領域に塗布され、加熱によって電極表面にはんだを付着させるプリコート法と呼ばれるものである。
【0039】
以下、図2および図3を参照しながらこの発明の一実施の形態によるはんだ組成物を用いたはんだバンプの形成方法について説明する。なお、図1と同じ部分は同じ符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0040】
図2および図3は、この発明の一実施の形態によるはんだ組成物を用いたはんだバンプの形成方法を説明するための断面図である。図2は滴下工程であり、図2A〜図2Cの順に工程が進行する。図3は、リフロー工程であり、図3A〜図3Cの順に工程が進行する。
【0041】
図2では、基板20上のパッド電極22の図示を略している。まず、図2Aに示すように、受け容器30に基板20を入れる。そして、注ぎ容器31中で必要に応じはんだ組成物10を撹拌した後、注ぎ口32からはんだ組成物10を基板20上に滴下させる。すると、はんだ組成物10が自重で広がって均一な厚みになる。このときは、常温でよく、しかも、はんだ組成物10の自然落下を利用できる。そのため、印刷機や吐出機を用いなくても、はんだ組成物10を簡単に基板20上に塗布できる。
【0042】
なお、受け容器30は、リフロー工程で基板20とともに加熱するので、耐熱性があって熱伝導が良く、且つはんだ粒子11によるはんだ濡れが生じない金属から構成される。この金属としては、例えばアルミニウムが挙げられる。また、堆積工程の途中または後に、基板20を水平に回転させることによって、基板20上のはんだ組成物10を均一な厚みにしてもよい。基板20を水平に回転させるには、市販のスピンコート装置を用いればよい。
【0043】
堆積工程の終了は、はんだ組成物10中に基板20が浸漬されるまで、はんだ組成物10を滴下するか否かによって二通りに分かれる。図2Bは、はんだ組成物10中に基板20を浸漬しない場合である。この場合、基板20上に層状に堆積するはんだ組成物10の厚みt1は、はんだ組成物10の主に表面張力および粘性によって決まる値である。一方、図2Cは、はんだ組成物10中に基板20を浸漬する場合である。この場合、基板20上に層状に堆積するはんだ組成物10の厚みt2は、滴下するはんだ組成物10の量に応じた所望の値に設定できる。
【0044】
以上の堆積工程によって、図1に示すように、複数のパッド電極22が離間して設けられた基板20上に、はんだ組成物10がベタ塗りによって載置されたことになる。このとき、複数のパッド電極22上およびこれらの間隙の保護膜27上を含む面に、全体的にはんだ組成物10が載置される。はんだ組成物10は、ちょうどインクのような状態である。
【0045】
続いて、リフロー工程で、基板20およびはんだ組成物10の加熱が始まると、液状体12の粘性が更に低下する。すると、図3Aに示すように、はんだ粒子11は、液状体12よりも比重が大きいので、沈降してパッド電極22上および保護膜27上に積み重なる。
【0046】
続いて、図3Bに示すように、はんだ組成物10がはんだ粒子11の融点以上に加熱される。このとき、液状体12に含まれる活性成分および合一抑制成分の作用によって、次のような状態が引き起こされる。まず、はんだ粒子11同士は、合一抑制成分によって合体が抑えられる。
【0047】
ただし、図3Bでは図示していないが、一部のはんだ粒子11同士は合体して大きくなる。つまり、はんだ粒子11同士は合体しても一定の大きさ以下であれば問題ない。一方、はんだ粒子11は、パッド電極22上に広がって界面に合金層を形成する。その結果、パッド電極22上にはんだ皮膜23’が形成され、はんだ皮膜23’に更にはんだ粒子11が合体する。すなわち、はんだ皮膜23’は成長して、図3Cに示すようなはんだバンプ23となる。なお、図3Cにおいて、はんだバンプ23の形成に使用されなかったはんだ粒子11は、残った液状体12とともに後工程で洗い落とされる。
【実施例】
【0048】
この発明の効果を、以下の試験例を用いて説明する。ただし、この発明の技術的範囲は以下の例に限定されるものではない。
【0049】
[試験例]
合一抑制剤の有効成分を検討するため、以下に説明する試験を行った。まず、表1に示すサンプル1〜サンプル5のステアリン酸錫を直接法または複分解法で合成した。
【0050】
【表1】

【0051】
直接法では、酸化錫(SnO)をステアリン酸と直接反応させて、ステアリン酸錫を合成した。複分解法では、ステアリン酸と水酸化ナトリウムとを反応させてステアリン酸ナトリウム塩を合成し、このステアリン酸ナトリウム塩の水溶液と塩化錫塩の水溶液とを混合し、反応させて、ステアリン酸錫を合成した。
【0052】
ステアリン酸錫分析は、錫の価数ごとの含有量を分析することで間接的な成分分析を行った。表1において、2価錫と全ての価数の錫(全錫)との項目に分けて記載しているが、全錫は、2価の錫以外の大部分が4価の錫である。そして、2価錫はジ(ステアリン酸)錫(II)またはSnO、4価錫はテトラ(ステアリン酸)錫(IV)またはSnO2であると考えられる。
【0053】
この中でも、SnOまたはSnO2は小量不純物と考えられ、定量された錫は、ほとんどがジ(ステアリン酸)錫(II)またはテトラ(ステアリン酸)錫(IV)によるものと考えられる。
【0054】
なお、2価錫の含有量の定量および全錫の含有量の定量は、ヨウ素酸カリウム滴定法により行った。
【0055】
<試験例1−1−1>
まず、比較用として、合一抑制剤を添加していない、以下のはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 94.0wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0056】
このはんだ組成物を用いて、以下に説明するようにはんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定した。
【0057】
Al製の受け容器内に、はんだバンプ形成用のバッド電極が縦122個×横120個配置された基板を配した後、上記のはんだ組成物1gを供給し、基板をはんだ組成物に浸漬させた。
【0058】
次に、上記状態で基板が配された受け容器を、リフロー装置で、リフロー加熱して基板のバッド電極上にはんだバンプを形成した。リフロー加熱は、図4に示すリフロー条件で行った。
【0059】
(はんだバンプ高さの測定)
次に、はんだバンプの高さを、三谷商事製のNAZCA 3Dを用いて測定した。測定領域は、基板の1/4の領域(縦60個×横60個)とした。
【0060】
[試験例2−1−1〜試験例2−5−2]
次に、サンプル1〜サンプル5のステアリン酸錫を合一抑制剤として添加したはんだ組成物を用いて、以下の試験を行った。
【0061】
<試験例2−1−1、試験例2−1−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル1) 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0062】
このはんだ組成物を用いて、以下に説明するようにはんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。合一抑制剤が作用することではんだバンプ高さが低くなるので、形成したはんだバンプの高さを測定することで、はんだ粒子同士の合一を抑制する合一抑制剤の効果を評価できる。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0063】
Al製の受け容器内に、はんだバンプ形成用のバッド電極が縦122個×横120個配置された基板を配した後、上記のはんだ組成物1gを供給し、基板をはんだ組成物に浸漬させた。
【0064】
次に、上記状態で基板が配された受け容器を、リフロー装置で、リフロー加熱して基板のバッド電極上にはんだバンプを形成した。リフロー加熱は、図4に示すリフロー条件で行った。
【0065】
(はんだバンプ高さの測定)
次に、はんだバンプの高さを、三谷商事製のNAZCA 3Dを用いて測定した。測定領域は、基板の1/4の領域(縦60個×横60個)とした。
【0066】
<試験例2−2−1、試験例2−2−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル2) 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0067】
このはんだ組成物を用いて、試験例2−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定し、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0068】
<試験例2−3−1、試験例2−3−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル3) 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0069】
このはんだ組成物を用いて、試験例2−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定し、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0070】
<試験例2−4−1、試験例2−4−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル4) 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0071】
このはんだ組成物を用いて、試験例2−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定し、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0072】
<試験例2−5−1、試験例2−5−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル5) 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0073】
このはんだ組成物を用いて、試験例2−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定し、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0074】
試験例1−1−1の結果を図5および表2に示し、試験例2―1―1〜試験例2―5―2の結果を図6および表3に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
[試験例3−1−1〜試験例3−2−1]
サンプル1〜サンプル5のステアリン酸錫の不純物としては、ステアリン酸、SnO2およびSnOが考えられる。実施の形態で説明したように、ステアリン酸は活性成分として作用する。SnO2およびSnOについて、合一抑制効果があるかを以下の試験によって確認した。
【0078】
<試験例3−1−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:SnO2 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0079】
このはんだ組成物を用いて、以下に説明するようにはんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0080】
Al製の受け容器内に、はんだバンプ形成用のバッド電極が縦122個×横120個配置された基板を配した後、上記のはんだ組成物1gを供給し、基板をはんだ組成物に浸漬させた。
【0081】
次に、上記状態で基板が配された受け容器を、リフロー装置で、リフロー加熱して基板のバッド電極上にはんだバンプを形成した。リフロー加熱は、図4に示すリフロー条件で行った。
【0082】
(はんだバンプ高さの測定)
次に、はんだバンプの高さを、三谷商事製のNAZCA 3Dを用いて測定した。測定 領域は、基板の1/4の領域(縦60個×横60個)とした。
【0083】
<試験例3−2−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.9wt%
合一抑制剤:SnO 0.1wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0084】
このはんだ組成物を用いて、試験例3−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定し、合一抑制剤の効果を評価した。
【0085】
試験例3−1−1〜試験例3−2−1の測定結果を図7および表4に示す。
【0086】
【表4】

【0087】
[評価(試験例1−1−1〜試験例3−2−1の評価)]
表1に示す二価錫/理論値(%)が高いほど、ジ(ステアリン酸)錫(II)の純度が高いステアリン酸錫である。すなわち、サンプル1〜サンプル2は、ジ(ステアリン酸)錫(II)の純度が比較的に低いステアリン酸錫であり、サンプル3〜サンプル5はジ(ステアリン酸)錫(II)の純度が比較的に高いステアリン酸錫である。
【0088】
図6および表3に示すように、サンプル1〜サンプル2を添加したはんだ組成物を用いて行った試験例2−1−1および試験例2−1−2、並びに試験例2−2−1および試験例2−2−2では、はんだ粒子同士の合一抑制効果が十分に強く、はんだバンプ高さのばらつきも小さかった。また、サンプル3〜サンプル5を添加したはんだ組成物を用いて行った試験例2−3−1〜試験例2−5−2では、はんだ粒子同士の合一抑制効果が弱く、また、はんだバンプ高さのばらつきも大きかった。
【0089】
また、図7および表4に示すように、試験例3−1−1〜試験例3−2−1では、サンプル1〜サンプル5のステアリン酸錫の不純物として考えられるSnO、SnO2についても効果を確認したが、はんだ粒子同士の合一抑制効果を得ることができなかった。
【0090】
不純物であるSnO、SnO2は、はんだ粒子同士の合一抑制効果を得ることができず、ジ(ステアリン酸)錫(II)の純度が高くなると、はんだ粒子同士の合一抑制効果を十分に得ることができないことから、はんだ粒子同士の合一抑制効果の有効成分は、テトラ(ステアリン酸)錫(IV)によるものと考えられた。
【0091】
[試験例4−1−1〜試験例5−3−2]
次に、以下の試験によってテトラ(ステアリン酸)錫(IV)のはんだ粒子同士の合一抑制効果を確認した。テトラ(ステアリン酸)錫(IV)の合一抑制効果の確認は、サンプル1のステアリン酸錫を合一抑制剤として添加したはんだ組成物、およびテトラ(ステアリン酸)錫(IV)を合一抑制剤として添加したはんだ組成物を用いて行った。
【0092】
<試験例4−1−1、試験例4−1−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 89.95wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル1) 0.05wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 10wt%
【0093】
このはんだ組成物を用いて、以下に説明するようにはんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0094】
Al製の受け容器内に、はんだバンプ形成用のバッド電極が縦29個×横29個配置された基板を配した後、上記のはんだ組成物1.6gを供給し、基板をはんだ組成物に浸漬させた。
【0095】
次に、上記状態で基板が配された受け容器を、リフロー装置で、リフロー加熱して基板のバッド電極上にはんだバンプを形成した。リフロー加熱は、図4に示すリフロー条件で行った。
【0096】
(はんだバンプ高さの測定)
次に、形成したはんだバンプの高さを、レーザ変位計(キーエンス製 商品名:LT9500V)を用いて、横方向にラインスキャンして測定した。
【0097】
<試験例4−2−1、試験例4−2−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 89.93wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル1) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 10wt%
【0098】
このはんだ組成物を用いて、試験例4−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0099】
<試験例4−3−1、試験例4−3−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 89.91wt%
合一抑制剤:ステアリン酸錫(サンプル1) 0.09wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 10wt%
【0100】
このはんだ組成物を用いて、試験例4−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0101】
<試験例5−1−1、試験例5−1−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 89.95wt%
合一抑制剤:テトラ(ステアリン酸)錫(IV) 0.05wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 10wt%
【0102】
このはんだ組成物を用いて、試験例4−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0103】
<試験例5−2−1、試験例5−2−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 89.93wt%
合一抑制剤:テトラ(ステアリン酸)錫(IV) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 10wt%
【0104】
このはんだ組成物を用いて、試験例4−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0105】
<試験例5−3−1、試験例5−3−2>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 89.91wt%
合一抑制剤:テトラ(ステアリン酸)錫(IV) 0.09wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 10wt%
【0106】
このはんだ組成物を用いて、試験例4−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。なお、上記の組成を有するはんだ組成物を2サンプル調製し、この2サンプル夫々について、合一抑制剤の効果を評価した。
【0107】
試験例4−1−1〜試験例5−3−2の結果を、図8および表5に示す。
【0108】
【表5】

【0109】
「試験例6−1−1〜試験例6−7−1」
2価の有機酸錫塩についても、以下の試験によってはんだ粒子同士の合一抑制効果の検討を行った。
【0110】
<試験例6−1−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(カプリル酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0111】
Al製の受け容器内に、はんだバンプ形成用のバッド電極が縦120個×横120個配置された基板を配した後、上記のはんだ組成物1gを供給し、基板をはんだ組成物に浸漬させた。
【0112】
次に、上記状態で基板が配された受け容器を、リフロー装置で、リフロー加熱して基板のバッド電極上にはんだバンプを形成した。リフロー加熱は、図4に示すリフロー条件で行った。
【0113】
(はんだバンプ高さの測定)
次に、はんだバンプの高さを、三谷商事製のNAZCA 3Dを用いて測定した。測定領域は、基板の1/4の領域(縦60個×横60個)とした。
【0114】
<試験例6−2−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(カプリン酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0115】
このはんだ組成物を用いて、試験例6−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0116】
<試験例6−3−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(ラウリン酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0117】
このはんだ組成物を用いて、試験例6−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0118】
<試験例6−4−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(ミリスチン酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0119】
このはんだ組成物を用いて、試験例6−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0120】
<試験例6−5−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(パルミチン酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0121】
このはんだ組成物を用いて、試験例6−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0122】
<試験例6−6−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(イソステアリン酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0123】
このはんだ組成物を用いて、試験例6−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0124】
<試験例6−7−1>
まず、以下の組成を有するはんだ組成物を調製した。
ベース材:脂肪酸エステル油:(ネオペンチルポリオールエステル、粘度164cst(40℃)、酸価2.5) 93.93wt%
合一抑制剤:ジ(オレイン酸)錫(II) 0.07wt%
はんだ粒子:Sn−Ag−Cu(合金組成Sn96.5wt%、Ag3.0wt%、Cu0.5wt%) 6.0wt%
【0125】
このはんだ組成物を用いて、試験例6−1−1と同様に、はんだバンプを形成し、形成したはんだバンプの高さを測定することによって、合一抑制剤の効果を評価した。
【0126】
試験例6−1−1〜試験例6−2−1の測定結果を図9〜図10および表6に示す。
【0127】
【表6】

【0128】
[評価(試験例4−1−1〜試験例6−7−1の評価)]
図8〜図10および表5、表6に示すように、試験例4−1−1〜試験例5−3−2では、試験例1−1−1と比較して、はんだ粒子同士の合一抑制効果が十分に強く、また、はんだバンプ高さのばらつきも小さかった。また、試験例6−1−1〜試験例6−7―1では、十分な合一抑制効果を得ることができなかった。すなわち、テトラ(ステアリン酸)錫(IV)のような4価の有機酸錫塩は、はんだ粒子同士の合一を抑制するための有効成分であることがわかった。
【0129】
3.変形例
この発明は、上述したこの発明の実施形態に限定されるものでは無く、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、はんだ組成物には、必要に応じて、添加剤を含むようにしてもよい。例えば、シリコンウエハ(FC)に代えて、微細ピッチのサブストレートやインターポーザ、更に配線板(BGA)を用いてもよい。なお、また、電極材料は、アルミニウムに限らず、Al‐Si、Al‐Si‐Cu、Al‐Cu、Cuなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0130】
10・・・はんだ組成物
11・・・はんだ粒子
12・・・液状体
20・・・基板
22・・・パッド電極
23・・・はんだバンプ
24・・・アルミニウム電極
25・・・ニッケル層
26・・・金層
27・・・保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸エステル油と、
該脂肪酸エステル油に添加された合一抑制剤と、
はんだ粒子とを含み、
上記合一抑制剤は、式(1)で表される4価の有機酸錫塩を含むはんだ組成物。
式(1)
Sn(R1COO)4
(式中、R1は炭化水素基である。)
【請求項2】
上記4価の有機酸錫塩は、式(2)で表されるテトラ(ステアリン酸)錫(IV)である請求項1記載のはんだ組成物。
式(2)
Sn(C1735COO)4
【請求項3】
上記合一抑制剤は、式(3)で表される2価の有機酸錫塩をさらに含む請求項1記載のはんだ組成物。
式(3)
Sn(R2COO)2
(式中、R2は炭化水素基である。)
【請求項4】
上記2価の有機酸錫塩は、式(4)で表されるジ(ステアリン酸)錫(II)である請求項3記載のはんだ組成物。
式(4)
Sn(C1735COO)2
【請求項5】
基板上の電極および電極周辺部を含む領域に塗布され、加熱によって電極表面にはんだを付着させるプリコート法に用いる請求項1記載のはんだ組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−20169(P2011−20169A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169812(P2009−169812)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【出願人】(000227342)日東化成株式会社 (28)
【Fターム(参考)】