説明

ばね組付ユニット及び圧力調整弁用ばね

【課題】治具を用いてキャップ部材を回動不能に支持することにより、キャップ部材に対するオープンエンドのコイルばねの組付けを容易にするばね組付ユニットを提供すること。
【解決手段】オープンエンドのコイルばねと、前記コイルばねの端部を支持するキャップ部材と、前記キャップ部材に前記コイルばねの端部を支持する際に用いられる治具と、を有するばね組付ユニットであって、前記キャップ部材は、平坦部と、前記コイルばねの端部を支持する螺旋突起部と、多角形の貫通孔とを有し、前記治具は、前記平坦部を支持する台座部と、前記貫通孔に挿入する多角柱体部を有し、前記貫通孔を前記多角柱体部に挿入し、前記平坦部を前記台座部に支持した状態で、前記コイルばねの端部と前記キャップ部材の組付けが行われる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂オープンエンドのコイルばねと、このオープンエンドのコイルばねの端部を支持するキャップ部材との組付けを容易にするばね組付ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料供給装置の圧力調整弁は既に知られている。この圧力調整弁は、例えば自動車の燃料噴射弁に燃料を送る燃料供給系に設けられ、燃料ポンプから送られる燃料の圧力が所定以上になると開放され、余剰燃料を燃料タンクに戻す機能を有するものである。
【0003】
図10に従来の圧力調整弁の一例を示す。圧力調整弁10は、ケース11、弁体14及びコイルばね16等からなる。ケース11は、圧力調整弁10の外郭を形成する部材であり、燃料導入口12及び燃料吐出口13を有する。
【0004】
前記弁体14は、燃料導入口12を開閉する部材であり、その内底面とばね受け15との間にコイルばね16が介在される。コイルばね16は、常時、弁体14を燃料導入口12方向へ押圧し、弁体14の先端部を弁座17に当接し、燃料供給系と燃料タンクとの連通を遮断するが、燃料供給系の燃料の圧力が所定値以上になると弁体14は下方へ押圧され、余剰燃料は矢印で示すように燃料タンクに戻される。
【0005】
ところで、前記コイルばね16が所謂オープンエンドの場合、ばね荷重の作用線がばね中心軸に対し偏心し易い。このようなオープンエンドのコイルばね16を用いても、図10に示す弁体14が筒状部14aを有するものであれば、この筒状部14aがケース11の内面に沿って上下動するため、オープンエンドのコイルばね16の荷重の偏心による弊害を低減することができる。
【0006】
しかしながら、弁体14が球形弁等であって上記筒状部14aがない場合、弁体14が弁座17に対し均等な開閉が行われなくなったり、或いは引っ掛かりによりヒステリシスが生じてしまう問題が生じる。
【0007】
このような問題をなくすものとして、本出願人は、オープンエンドのコイルばねの改良発明として図11及び図12に示すばねユニットYを出願している。このばねユニットYは、オープンエンドのコイルばね16と、このコイルばね16の上下端に係合されるキャップ部材18を有してなる。
【0008】
キャップ部材18は、それぞればね座としての平坦部18aと、コイルばね16の端部近傍の略1巻部を係合し、支持する螺旋突起部18bと、その軸心方向に開口する円形孔18cとを有し、コイルばね16の上下端をそれぞれキャップ部材18の螺旋突起部18bにねじ込むように回動しながら係合し、コイルばね16の上下端にキャップ部材18を組付ける。
【0009】
そして、上下のキャップ部材18を弁体とばね受け15とにそれぞれ当接する形態で用いることになり、このような形態のばねユニットYを用いることによりオープンエンドコイルばね16の荷重偏心による弊害をなくすことができる(特許文献1参照)。
【0010】
ところで、コイルばね16の上下端にキャップ部材18を組付ける場合、キャップ部材18の外周部を片方の手の指で持ち、反対の手の指でコイルばね16を持ち、コイルばね16の端部の先端16aが螺旋突起部18bの始端段部18bbに当接するまでキャップ部材18の螺旋突起部18bに沿ってコイルばね16の端部をねじ込むように回動することになる。
【0011】
しかしながら、上記ばねユニットYのキャップ部材18は、その外周は円形であるため、キャップ部材18の外周部を片方の手の指で持ってコイルばね16を組付けようとすると、キャップ部材18が指の中で回動してしまい、その組付けがうまく行われないという問題が発生する。特にコイルばねが小さいものであるとそのような問題が顕在化する。
【0012】
このような場合、キャップ部材18の外周を多角形にすることが考えられるが、キャップ部材18の外周を多角形にすると、このキャップ部材18を支持するばね受け15のばね支持部の形状を多角形にする等の変更が生じたり、或いはキャップ部材18の外周を多角形にしたとしても小さなコイルばねの場合、依然としてキャップ部材18が指の中で回動しうまくコイルばねを組付けることができないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−20061号公報(図9〜図12参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、治具を用いてキャップ部材を回動不能に支持することにより、キャップ部材に対するオープンエンドのコイルばねの組付けを容易にするばね組付ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本願発明は以下の構成を採用する。
【0016】
請求項1に係る発明では、オープンエンドのコイルばねと、前記コイルばねの端部を支持するキャップ部材と、前記キャップ部材に前記コイルばねの端部を支持する際に用いられる治具と、を有するばね組付ユニットであって、前記キャップ部材は、平坦部と、前記コイルばねの端部を支持する螺旋突起部と、多角形の貫通孔とを有し、前記治具は、前記平坦部を支持する台座部と、前記貫通孔に挿入する多角柱体部を有し、前記貫通孔を前記多角柱体部に挿入し、前記平坦部を前記台座部に支持した状態で、前記コイルばねの端部と前記キャップ部材の組付けが行われる構成。なお、本願発明のばね組付ユニットは、用途は特に問わず、所謂オープンエンドのコイルばねであれば、どのような用途のコイルばねにも適用可能である。
【0017】
請求項2に係る発明では、請求項1に記載の発明に加え、前記多角形は、六角形である構成。なお、六角形は正六角形が好ましい。
【0018】
請求項3に係る発明では、請求項1または請求項2に記載の発明に加え、前記貫通孔は、前記平坦部側に設けられる大径の円形孔と、前記平坦部側と反対側に設けられる前記円形孔より小さい多角形孔とからなる構成。
【0019】
請求項4に係る発明では、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明に加え、前記キャップ部材は、前記コイルばねの始端部側及び終端部側に設けられ、始端部側に設けられるキャップ部材の貫通孔と、終端部側に設けられるキャップ部材の貫通孔とは、大きさ或いは形状が異なる構成。
【0020】
請求項5に係る発明では、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のばね組付ユニットで組付けられる圧力調整弁用ばね。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、キャップ部材の多角形の貫通孔を治具の多角柱体部に挿入してキャップ部材を回動不能にし、その状態で、コイルばねの端部へのキャップ部材の組付けを行うことにより、コイルばねの端部とキャップ部材との組付けを容易且つより確実に行うことができるとともに、組付け時間を短縮することができる。
【0022】
また、多角形を六角形にすることにより、キャップ部材を比較的容易に成形することができ、また、従来の円形孔とほぼ同様の大きさを確保することができるため、治具の多角柱体部への挿入作業を容易にすることができる。
【0023】
また、貫通孔を、平坦部側の大径の円形孔と、円形孔に続く円形孔より小さい多角形孔の2段階形状の孔にすることにより、この貫通孔へ治具の多角柱体部を挿入する場合、まず多角柱体部の先端に大径の円形孔を単に挿入し、次いで、その状態でキャップ部材を若干回動しながら押し込めば両部材の嵌合ができるようになる。即ち、上記構成により、キャップ部材と治具との嵌合を容易且つより確実に行うことができる。
【0024】
そして、上記構成により、弁体側のキャップ部材の場合、平坦部側の円形孔内に弁体下部を挿入して支持することができるようになり、弁体の支持を容易且つより確実に行うことができる。
【0025】
また、キャップ部材をコイルばねの始端部側と終端部側に設け、始端部側に設けるキャップ部材の貫通孔と、終端部側に設けるキャップ部材の貫通孔との大きさ或いは形状を異ならせることにより、ばねユニットとして異なるものを組付けたり、或いはばねユニットを天地逆に組付けたりする誤組付けを防止することができる。更に、弁体に対し高い寸法精度を要求するガイド部材(図10参照)を別途設ける必要がないためそれだけ生産コストを低減することができる。
【0026】
また、ばね組付ユニットにより組付けたばねユニットを圧力調整弁用ばねとすることにより、圧力調整弁の性能をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】圧力調整弁が適用される燃料供給装置の概要図
【図2】本発明のばねユニットを有する圧力調整弁の断面図
【図3】本発明の組付け後で弁体の一部を付加した状態を示す図
【図4】本発明の組付け前の状態を示す図
【図5】本発明の始端側キャップ部材の上面図(A)、及び断面図(B)
【図6】本発明の終端側キャップ部材の断面図(A)、及び底面図(B)
【図7】本発明の他の終端側キャップ部材の断面図(A)、及び底面図(B)
【図8】本発明のキャップ部材を治具に挿入した状態を示す断面図
【図9】本発明のキャップ部材の各種貫通孔の平面図
【図10】従来の圧力調整弁の断面図
【図11】従来のキャップ部材の断面図
【図12】従来のばねユニットの図
【実施例】
【0028】
図1に燃料噴射弁に燃料タンクの燃料を供給する燃料供給装置を示し、図2に本発明のばねユニットを備えた圧力調整弁を示し、図3に本発明のばねユニットの組付け後の拡大図を示す。なお、本発明のばねユニットは、所謂オープンエンドのコイルばねであればいかなる用途にも適応可能であり、以下においては、圧力調整弁用のコイルばねを例にして説明する。
【0029】
図1で示す燃料供給装置Kが知られている。この燃料供給装置Kは、燃料タンク20内に収容される燃料ポンプ21、目の粗い第1フィルタ22及び目の細かい第2フィルタ23と、エンジンに設けられる燃料噴射弁24とを有し、燃料タンク20内の燃料を燃料ポンプ21で吸い上げ、燃料供給通路25を介して燃料噴射弁24に供給する。
【0030】
前記燃料供給通路25には、分岐通路26の一端が連通され、分岐通路26の他端には圧力調整弁30が設けられる。そして、この圧力調整弁30は、燃料供給通路25内の圧力が所定以上になると開き、燃料供給通路25内の余剰燃料を分岐通路26を介して燃料タンク20に戻し、燃料噴射弁24に供給する燃料圧力を所定値に調整する。
【0031】
圧力調整弁30は、例えば図2に示すように、ケース31、弁体38、ばねユニット40及びばね受け35等を有してなる。ケース31は、上下が開口した中空部材であり、内部空間32を有する。ケース31の上端には前記分岐通路26に連通する燃料導入口33を有し、燃料導入口33の下端内周面には弁座34が形成される。
【0032】
また、ケース31の下端には前記燃料タンク20内に連通する下部開口36が設けられ、この下部開口36の内周面にはばね受け35が圧入される。
【0033】
前記ばね受け35は、ケース31の下部開口36の内周面に圧入される肉厚の部材で、その中心部には前記燃料タンク20内に連通する燃料吐出口37を有し、矢印で示すように燃料供給系の余剰燃料を燃料タンク20に戻す。
【0034】
前記弁体38は、球状の玉弁である。そして、この弁体38は、組立て後ではその上端を前記弁座34に当接し、その下端を後記ばねユニット40に当接する形態で支持され、通常時ではその上端を弁座34に当接して燃料導入口33を閉鎖するが、燃料供給通路25内の圧力が所定以上になると下方へ押され燃料導入口33を開放し、燃料供給通路25内の余剰燃料を矢印で示すように燃料タンク20に戻す。
【0035】
ばねユニット40について説明する。ばねユニット40は、所謂オープンエンドのコイルばね41とキャップ部材42からなる。
【0036】
コイルばね41は、略同径の棒状部材を始端部41aから終端部41bにかけて等ピッチにコイル状に巻いた金属製のばねであり、直立状にすると、図4に示すように始端部41aと終端部41bがそれぞれ最上位と最下位を占め、自立するのが難しいばねである。
【0037】
なお、前記始端部41aと終端部41bとの呼び方は便宜的なもので、一般的なコイルばね41の場合、その一方を始端部41aとし他方を終端部41bとすればよい。図2等で一例として示す圧力調整弁用のものは、弁体38側を始端部41a(図では上方端)とし、ばね受け35側を終端部41b(図では下方端)とした。
【0038】
キャップ部材42は、コイルばね41の始端部41a側及び終端部41b側に設けられる。以下、始端部41a側に設けられるものを始端側キャップ部材43(弁体38側のもの)と呼び、終端部41b側に設けられるものを終端側キャップ部材47(ばね受け35側のもの)と呼び、共通なものとして呼ぶときはキャップ部材42と呼ぶ。
【0039】
始端側キャップ部材43と終端側キャップ部材47とは、その外径及び貫通孔を除いて同じ形状である。
【0040】
前記始端側キャップ部材43は、図3〜図5に示すように、その上端部のフランジ部44と、下端部の円柱部45とを有する金属製或いは樹脂製の部材である。フランジ部44は、その上面に座面として機能する水平な平坦部44aを有し、その下面には、コイルばね41と同一ピッチの螺旋突起部44bが上方の始端段部44bbから下方に向かって所定長さ(図では略第1巻の長さ)に亘って形成される部分である。前記始端段部44bbは、段状の部分であり、コイルばね41に始端側キャップ部材43が組付けられるとコイルばね41の始端部41aが当接する。
【0041】
前記円柱部45は、貫通孔46を有する筒状の部分であり、その貫通孔46は前記フランジ部44の平坦部44aにかけて上下に貫通している。また、円柱部45の外周部にはコイルばね41の内周面が嵌合される。そして、前記貫通孔46は、第1貫通孔46a及び第2貫通孔46bの2段階で且つ2種類の孔からなる。
【0042】
前記第1貫通孔46aは、ほぼフランジ部44に平坦部44aから円柱部45に向かって形成される第2貫通孔46bより大径の円形孔であり、その平坦部44a側には外方に広がるテーパ状の面取り46aaを有する。この第1貫通孔46aには、図3に示されるように弁体38の円弧状の下端部が嵌入され、弁体38を安定した状態で支持する。
【0043】
なお、第1貫通孔46aの面取り46aaはなくてもよいが、あれば、弁体38を均等且つ安定に載置することができる。更には治具60の挿入をより容易にすることができ、打痕、バリ等の凸状突起物が平坦部44aに突き出るようなこともなくなる。また、第1貫通孔46aは、弁体38を安定して載置するためには円形が好ましいが、例えば正多角形であってもよい。
【0044】
前記第2貫通孔46bは、ほぼ円柱部45に第1貫通孔46aからコイルばね41に向かって形成される第1貫通孔46aより小さい多角形孔(この例の場合は正六角形)である(図5でいえば、H1>H)。この第2貫通孔46bは、始端側キャップ部材43にコイルばね41を組付ける際に後記治具60が挿入され、始端側キャップ部材43を回動不能にするために用いられる孔である。この第2貫通孔46bの形状は、多角形であればよいが、正多角形の方が治具60の挿入が容易になるため好ましい。
【0045】
なお、第1貫通孔46aのように大径の円形孔を第2貫通孔46bの前(平坦部44a側)に設けることにより、後記治具60を挿入する場合、第1貫通孔46aから挿入することになるが、第1貫通孔46aは大径であるため、その挿入が容易であり、第1貫通孔46aを挿入した状態で始端側キャップ部材43を若干回動しながら押し込めば両部材の嵌合が行われるというように、最初から治具60の多角柱体部62と貫通孔(例えば、終端側キャップ部材47の貫通孔50)との挿入を行うものに比べて両部材の嵌合を容易にすることができる。
【0046】
また、この実施例では、第2貫通孔46bは正六角形であるが、図9に示すように十字形(A)、四角形(B)、正三角形(C)及び楕円(D)等であってもよい。
【0047】
前記終端側キャップ部材47は、図3、図4及び図6に示すように、その下端部のフランジ部48と、上端部の円柱部49とを有する金属製或いは樹脂製の部材である。フランジ部48は、その下面に座面として機能する水平な平坦部48aを有し、その上面には、コイルばね41と同一ピッチの螺旋突起部48bが図示しない下方の始端段部から上方に向かって所定長さ(図では略第1巻の長さ)に亘って形成される部分である。前記図示しない始端段部は、上記始端側キャップ部材43の始端段部44bbと同様の段状の部分であり、コイルばね41に終端側キャップ部材47が組付けられるとコイルばね41の終端部41bが当接する。
【0048】
前記円柱部49は、貫通孔50を有する筒状の部分であり、その貫通孔50は前記フランジ部48の平坦部48aにかけて上下に貫通している。また、円柱部49の外周部にはコイルばね41の内周面が嵌合される。
【0049】
貫通孔50は、フランジ部48から円柱部49に亘って設けられる断面の大きさh(図6参照)の多角形孔(この例の場合は正六角形)であり、その平坦部48a側には外方に広がるテーパ状の面取り51を有する。なお、この面取り51はなくてもよいが、あれば、治具60の挿入をより容易にすることができ、打痕、バリ等の凸状突起物が平坦部44aに突き出るようなこともなくなる。
【0050】
この貫通孔50は、始端側キャップ部材43の第2貫通孔46bと同様の機能を有するもので、コイルばね41を組付ける際に後記治具60を挿入し、終端側キャップ部材47を回動不能にするために用いられる。この貫通孔50の形状も、多角形であればよいが、正多角形であってもよく、図9に示すように十字形(A)、正四角形(B)、正三角形(C)及び楕円(D)等であってもよい。
【0051】
図7に終端側キャップ部材47の変形例を示す。この例のものは、終端側キャップ部材47の貫通孔を始端側キャップ部材43と同様な形状にするもので、その他の部分は図3、図4及び図6に示す終端側キャップ部材47と同じであるため省略する。
【0052】
即ち、円柱部49に設けられる貫通孔50は、第1貫通孔50a及び第2貫通孔50bの2段階で且つ2種類の孔からなる。
【0053】
前記第1貫通孔50aは、ほぼフランジ部48に平坦部48aから円柱部49に向かって設けられる第2貫通孔50bより大径の円形孔であり、その平坦部48a側には外方に広がるテーパ状の面取り51を有する。
【0054】
なお、第1貫通孔50aのテーパ状の面取り51はなくてもよいが、あれば、治具60の挿入をより容易にすることができ、打痕、バリ等の凸状突起物が平坦部44aに突き出るようなこともなくなる。
【0055】
前記第2貫通孔50bは、ほぼ円柱部49に第1貫通孔50aからコイルばね41に向かって設けられる第1貫通孔50aより小さい多角形孔(この例の場合は正六角形)である(図7でいえば、h1>h)。この第2貫通孔50bは、終端側キャップ部材47にコイルばね41を組付ける際に後記治具60が挿入され、終端側キャップ部材47を回動不能にするために用いられる孔である。この第2貫通孔50bの形状は、多角形であればよいが、正多角形の方が治具60の挿入が容易になるため好ましい。
【0056】
なお、第1貫通孔50aのように大径の円形孔を第2貫通孔50bの前の平坦部48a側に設けることにより、後記の治具60を挿入する場合、上記したようにその挿入を容易にすることができる。
【0057】
始端側キャップ部材43と終端側キャップ部材47とは、フランジ部と貫通孔とを除いて同様な形状及び大きさである。この例では、始端側キャップ部材43のフランジ部44の径の方が終端側キャップ部材47のフランジ部48の径より大きくしている。その理由は、終端側キャップ部材47のフランジ部48を載置するばね受け35の面の大きさに合わせるためと、ばねユニット40の天地の誤組付けを防止するためである。しかし、フランジ部44とフランジ部48とは同じ大きさであってもよい。
【0058】
ところで、上記したように、図1〜図6のものでは、始端側キャップ部材43の貫通孔46は、円形の第1貫通孔46aと正六角形の第2貫通孔46bの2段階形状であるのに対し、終端側キャップ部材47の貫通孔50は、正六角形のみの1段階形状であるというように、両キャップ部材の貫通孔の形状は異なっている。このような構造とすることにより、ばねユニット40の天地の誤組付けを防止することができる。
【0059】
なお、図7のように終端側キャップ部材47の貫通孔を始端側キャップ部材43の貫通孔と同様な形状とする場合は、それぞれの第1貫通孔46aと第1貫通孔50aの大きさを変えるか、またはそれぞれの第2貫通孔46bと第2貫通孔50bの大きさを変えればよい。いずれにしても、誤組付けを防止できるように天地の識別がつく形状或いは大きさであればどのようなものでもよい。
【0060】
次いで、ばねユニット40の組付けについて説明する。組付けは図8に示すような治具60を用いる。本発明では、コイルばね41とキャップ部材42と治具60とでばね組付ユニットを構成する。
【0061】
前記治具60は、台座部61及び多角柱体部62を有する金属性或いは樹脂製の部材である。前記台座部61は、略円柱状の部分で、その上面にキャップ部材42の平坦部44a、48aを載置する水平部61aを有している。なお、この台座部61は、水平部61aを有していればどのような形状であってもよい。
【0062】
前記多角柱体部62は、水平部61aより立設する断面多角形の部分であり、その大きさは、キャップ部材42の貫通孔(始端側キャップ部材43では第2貫通孔46b、終端側キャップ部材47では貫通孔50または第2貫通孔50b)より小さく且つ同形のものである。
【0063】
始端側キャップ部材43の組付けについて説明する。図8に示すように治具60を置き、その上方に始端側キャップ部材43を逆にして置く。その後、始端側キャップ部材43を下方に移動させ、第1貫通孔46a及び第2貫通孔46b内に治具60の多角柱体部62を挿入し、始端側キャップ部材43の平坦部44aを台座部61の水平部61aに載置する。
【0064】
その後、図8(B)の状態の上方に図4で示すようにコイルばね41を垂直に置き、その後コイルばね41を下方に移動させ、コイルばね41の始端部41aを螺旋突起部44bに当接させ、その後コイルばね41を更に下方に押圧しながら時計方向に回動する。
【0065】
すると、コイルばね41の始端部41aは螺旋突起部44bに沿って略1巻程ねじ込まれ、その始端部41aは螺旋突起部44bの始端段部44bbに当接し、その状態でコイルばね41と始端側キャップ部材43とは係合される。係合が完了するとコイルばね41と始端側キップ部材43とを上方に持ち上げて治具60から取り外す。
【0066】
その後、治具60の上方に終端側キャップ部材47を逆にして置き、その貫通孔50内に多角柱体部62を挿入し、平坦部48aを台座部61の水平部61aに載置する。
【0067】
そして、その上方に既に始端側キャップ部材43を係合したコイルばね41の終端部41bを置き、コイルばね41を下方に移動させ、コイルばね41の終端部41bを螺旋突起部48bに当接させ、その後コイルばね41を更に下方に押圧しながら時計方向に回動する。
【0068】
すると、コイルばね41の終端部41bは螺旋突起部48bに沿って略1巻程ねじ込まれ、その終端部41bは螺旋突起部48bの図示しない始端段部に当接し、その状態でコイルばね41と終端側キャップ部材47とは係合される。係合が完了すると一体になったコイルばね41と始端側キャップ部材43と終端側キャップ部材47とを上方に持ち上げて治具60から取り外す。治具60から取り外すと、コイルばね41と始端側キャップ部材43と終端側キャップ部材47とが一体になったばねユニット40が完成する。
【0069】
完成したばねユニット40は、貫通孔46、50の形状または大きさを認識してその天地通りに圧力調整弁30用のばねユニット40として組付けられる。
【0070】
なお、本発明は、前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
20…燃料タンク 21…燃料ポンプ
22…第1フィルタ 23…第2フィルタ
24…燃料噴射弁 25…燃料供給通路
26…分岐通路 30…圧力調整弁
31…ケース 32…内部空間
33…燃料導入口 34…弁座
35…ばね受け 36…下部開口
37…燃料吐出口 38…弁体
40…ばねユニット 41…コイルばね
41a…始端部 41b…終端部
42…キャップ部材 43…始端側キャップ部材
44…フランジ部 44a…平坦部
44b…螺旋突起部 44bb…始端段部
45…円柱部 46…貫通孔
46a…第1貫通孔 46aa…面取り
46b…第2貫通孔 47…終端側キャップ部材
48…フランジ部 48a…平坦部
48b…螺旋突起部 49…円柱部
50…貫通孔 50a…第1貫通孔
50b…第2貫通孔 51…面取り
60…治具 61…台座部
61a…水平部 62…多角柱体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンエンドのコイルばねと、前記コイルばねの端部を支持するキャップ部材と、前記キャップ部材に前記コイルばねの端部を支持する際に用いられる治具と、を有するばね組付ユニットであって、
前記キャップ部材は、平坦部と、前記コイルばねの端部を支持する螺旋突起部と、多角形の貫通孔とを有し、
前記治具は、前記平坦部を支持する台座部と、前記貫通孔に挿入する多角柱体部を有し、
前記貫通孔を前記多角柱体部に挿入し、前記平坦部を前記台座部に支持した状態で、前記コイルばねの端部と前記キャップ部材の組付けが行われることを特徴とするばね組付ユニット。
【請求項2】
前記多角形は、六角形であることを特徴とする請求項1に記載のばね組付ユニット。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記平坦部側に設けられる大径の円形孔と、前記平坦部側と反対側に設けられる前記円形孔より小さい多角形孔とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のばね組付ユニット。
【請求項4】
前記キャップ部材は、前記コイルばねの始端部側及び終端部側に設けられ、始端部側に設けられるキャップ部材の貫通孔と、終端部側に設けられるキャップ部材の貫通孔とは、大きさ或いは形状が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のばね組付ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のばね組付ユニットで組付けられることを特徴とする圧力調整弁用ばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−167746(P2012−167746A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29535(P2011−29535)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】