説明

ほとんど溶解しない塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液または凍結乾燥物、それを含有する製剤学的配合物の製造方法および医薬品としてのその使用

本発明はエンボン酸セトロレリクスといったほとんど溶解しないペプチド複合体の滅菌懸濁液または凍結乾燥物の新しい製造方法に関する。また、本発明はほとんど溶解しない塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液および滅菌凍結乾燥物およびこれを含む製剤学的配合物にも関する。前記配合物は、哺乳動物、特にヒトにおいて非経口投与による疾患および病理学的状態の治療および予防のための薬物として用いるのに特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はわずかしか溶解しない塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液および滅菌凍結乾燥物を製造するための新しい方法に関する。さらに、本発明は、滅菌懸濁液および滅菌凍結乾燥物、本発明に従って製造したわずかしか溶解しない塩基性ペプチド複合体の凍結乾燥物を1つ以上含む製剤学的配合物に関する。本発明に従って製造した懸濁液および凍結乾燥物は、たとえば良性または悪性腫瘍性疾患の治療、ホルモン療法、不妊および避妊のための治療、HIV感染症の治療および神経疾患または神経変性疾患の治療のための医薬品として用いることができる。
【0002】
従来技術
ペプチドの十分に高い生体内利用率および結果としての治療における有効性は、非経口投与のみによって保証される。ペプチドは経口投与の後にタンパク質分解を受け、経鼻的には吸収率が低く、経皮的には全く吸収されないためである。
【0003】
体内におけるペプチドの半減期が短いことから、たとえばゴセレリン(INN)、リュープロレリン(INN)またはトリプトレリン(INN)といったいわゆるスーパーアゴニストと呼ばれる黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、アンチド(INN)、セトロレリクス(INN)、デガレリクス(INN)またはガニレリクス(INN)といったLHRHアンタゴニストなどのペプチド医薬品の非経口投与は、投与期間中毎日行い、目標とする黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)への抑制作用を得てそれを維持しなければならない。
この抑制作用が得られた結果、男性ではテストステロンの産生および放出量が減少し、女性ではエストラジオールの産生および放出量が減少するが、対象疾患において必要とされるその現象の程度がきわめて異なることには大いに可能性がある。性ホルモンの血中値を低下させることは、恒久的な低値への減少(精巣・卵巣摘出)が必要となる性ホルモン感受性腫瘍の緩和的治療における標準的な治療である。また、これは、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫および良性前立腺肥大症といった良性の生殖器または泌尿器の疾患の治療、不妊症のための治療および避妊に対しても標準的治療であり、治療戦略にもよるがこうした症例では、間欠的かつ部分的な性ホルモン値の減少で十分とされる場合もある。
【0004】
毎日の服用の必要が時代遅れのものとなる、長時間作用型および放出制御型のペプチド医薬品の非経口投与を可能にする貯蔵型配合物に対する需要が、比較的昔から認識されてきた。
【0005】
ドイツ特許DE3822459A1号は、たとえばLHRH類似体のような水不溶性ペプチドとエンボン酸、タンニン酸およびステアリン酸および生体分解性乳酸−グリコール酸コポリマーとの複合体を含む製剤学的配合物を開示している。この明細書に開示されている製造方法では、ジクロロメタンなどの塩素化炭化水素が溶媒として使用され、その後その大半が回転蒸発により除去される。しかし、こうした潜在的に発がん性を有する溶媒を使用することは、溶媒の蒸発によって製造する剤型においては、たとえば4500ppmのジクロロメタンといった溶媒が高濃度で残留することから欠点とされる(Koushik K and Kompella UB, Pharmaceutical Research, 2004, 21: 524-535)。ICHガイドライン「不純物:残留溶媒に関するガイドライン−Q3C」は、医薬品の安全性を守るため、製剤学的製品においてクラス2の溶媒の残留溶媒を厳しく制限している。たとえば、塩素化炭化水素であるジクロロメタンおよびクロロホルムはそれぞれ600ppmおよび60ppmまでに抑えなければならない。さらに決定的な欠点とは、揮発性の毒性を有する溶媒の回転蒸発であり、汚染および爆発の危険がある。製造方法における塩素化炭化水素の使用は、さらに従業員および環境への危険ともなる。製剤学的配合物の滅菌性は、引き続いてのγ線照射によってのみ可能になる。莫大な追加的コストや従業員および環境への危険の上昇を別にしても、引き続いてのγ線照射は、その放射線量の高さ(Ph.Eurによれば25kGy)からも、分解量を増加させ、そのためにこれらの配合物の安定性に対して悪影響を及ぼす。さらに、γ線照射の使用は、高度な資格およびバリデーションの要件を満たすためには許可を得るのに特別な障害となる(EC Guide to Good Manufacturing Practice - Annex 12参照)。
【0006】
米国特許5134122号は、その水不溶性エンボン酸塩、タンニン酸塩、ステアリン酸塩またはパルミチン酸塩の形態でペプチドを製剤学的な活性物質として含む乳酸−グリコール酸コポリマーの微粒子の製造について記載している。しかし、この明細書に記載された方法は、何かと欠点の多い特殊な高度な押し出し成形機械の使用および、ペプチドの破壊や分解物の増加または縮合物による製剤学的形態の汚染の増大につながるおそれのある100℃に至る熱処理を必要とする。この方法のさらなる欠点は、微粒子を篩過して目的の粒径を得る必要があるということである。こうした篩過段階は、粒子の汚染のおそれがあるため、クリーンルームにおける無菌的製造方法においてはほとんど不可能である(EC Guide to Good Manufacturing Practice - Annex 1参照)。
【0007】
ドイツ特許DE4223282A1号およびDE4223284A1(および対応特許に属する米国特許としての米国特許5445832号および米国特許5637568号)は、水不溶性医薬品ペプチド物質が生体分解性ポリマー材料の微粒子に組み込まれている医薬品の製造方法を記述している。いずれの方法も発がん性を有する塩素化炭化水素を用いなければならないという前述の欠点および生理学的に許容不可能な残留溶媒の問題を有している。更なる欠点は、活性成分を有する微粒子が低率であることと前述のγ線照射の問題である。
【0008】
ドイツ特許4342092A1号(および対応特許に属する米国特許としての米国特許5773032号)は、特定の酸塩の水溶液をLHRH類似体ベースの酢酸溶液と反応させることによってペプチドLHRH類自体の溶解しにくい酸が添加された塩を沈殿させるという非滅菌的製造および医薬品としてのその使用を開示している。しかし、この方法の欠点の一つは、パイロットスケールでも製造スケールでも濾過を必ず行わなくてはならないという点で、たとえばバッチ中のペプチド30gを使用することによって、不均一なゼラチン様ペプチド沈殿物が生成され、それは再懸濁できないため、許容不可能なほど濾過時間が長くなる。また、この濾過にはたとえば酢酸ナトリウムといったアルカリ土類金属およびアルカリ金属塩が同時に沈殿し、ペプチド塩の分解が促進され、非経口投与を受けた患者に忍容性の問題が生じるという欠点が伴う。この製造方法のさらなる欠点とは、ジメチルアセトアミドおよびジメチルアセテートといった前述の残留溶媒の問題を伴う有機溶媒の使用があり、前述のようにクリーンルームにおける無菌的製造方法においてはほとんど不可能である篩過方法が必要であることである。また、ドイツ特許DE4342092A1号に記載され、開示方法によって製造される塩および懸濁液は無菌ではなく、その明細書に記載の「濾過」および「乾燥」方法を含む段階が、本質的に無菌の方法産物を産業的に得ることはできず(沈殿物としての乾燥濾過ケーキ)、そのため直接的な非経口投与が不可能になるだけでなくさらに無菌的な段階での加工が不可能になる。
【0009】
無菌的な更なる加工およびこうした塩および懸濁液を医薬品として投与するという必須の要件である無菌性を欠くということは、ドイツ特許4342092A1号には開示されていないγ線照射という滅菌方法を追加することによってのみ達成できることである。
【0010】
しかし、上述のとおり、引き続きγ線照射を行うことは、線量が多いため、分解が増大し、莫大な追加的コストや従業員および環境への危険の上昇を別にしても、こうした塩および懸濁液の安定性に悪影響を及ぼし、その定性およびバリデーション手段を高度なものにする。また、ドイツ特許4342092A1号に従って製造した塩は、粘性を高め再懸濁性を介助するための添加剤を添加しなくても、したとしても長期にわたって安定な懸濁液をともに生成することのできない微粒子の形態をとる。懸濁液を持続的な混合によってたとえば水溶液で生成することはできるが、それはむしろ液相において固相の微粒子を振盪するということである。混合を停止または中断すれば、この2相の混合物は迅速に元に戻り、互いに離れた固相(微粒子)と液相(水溶液)を形成する。
【0011】
Felberbaumら(Human Reproduction, 1998, 13: 1660-1668)は、子宮線維腫の治療における、ドイツ特許4342092A1に従って製造したエンボン酸セトロレリクス微粒子の使用を記述している。微粒子を水溶液で再懸濁し、ポリソルベート80、水酸化ナトリウム溶液およびカルボキシメチルセルロール(CMC)を添加し、γ線照射で処理した微粒子の滅菌懸濁液を用いた。しかし、上述のとおり、エンボン酸セトロレリクス微粒子のこうした配合物は、粘性を高め再懸濁性を介助するための添加剤を添加しても、したとしても長期にわたって安定する懸濁液にはならない。それどころか、迅速に2相の混合物に戻り、互いに離れた液相と固相を形成する。
【0012】
しかし、粘性を高めるCMCを添加することは多大な欠点となる。CMCは特に非経口投与においてはアレルギー反応または場合によってはアナフィラキシーを引き起こすことがあり(Bigliardiら、Dermatology, 2003, 207:100-103; Oppliger and Hauser, JDDG 2004, 2:928-930)、そのため避ける必要があるためである。さらに、微粒子懸濁液を投与することにより、患者によってはエストラジオールが不適切に抑制されてしまう。一方、別の患者においては、エストラジオール値が明らかに20pg/mLを下回り、望ましくない化学的な精巣卵巣摘出状態が起こり(Kaufmannら、Journal of Clinical Oncology 1989, 7:1113-1119; Battagliaら、Gynecological Endocrinology 1995, 9:143-148; Reronら、Neuroendocrinology Letters 2002, 23: 455-458)、それに対応するホルモン欠乏症状は患者にとって不都合である。この著者らはこのように認められた欠点を避けるため、配合物を改良する必要に言及している。
【0013】
ドイツ特許10040700A1号(および対応特許に属する米国特許としての米国特許6780972号、米国特許2002/198146号および米国特許2004/259801号)は、塩基性ペプチドの溶解した最初のペプチド塩を混床イオン交換装置または酸性および塩基性イオン交換装置の混合物と反応させて、遊離型の塩基性ペプチドを生成し、その後イオン交換装置を取り除いて、この遊離型の塩基性ペプチドを酸と反応させて最終のペプチド塩を生成し、最後に溶媒を取り除くという、溶解しにくいペプチド塩の製造方法を記述している。しかし、この明細書で開示された方法では、GMPガイドラインに準拠していない非滅菌性のイオン交換装置を使用しなければならず、スルホン酸残留物および細菌性残留物といった有機性の残留性分のため、汚染の原因になりうるという欠点がある。このため、非滅菌性のイオン交換粒子の内腔にある細菌を、使用前に簡単に確かめることはできない。こうしたイオン交換装置の使用は、たとえば攪拌や振盪といった反応方法中に粒子が機械的に損傷を受けるおそれまたは破壊されるおそれがあることから、製造すべきペプチド複合体の許容不可能かつ予測不可能な汚染リスクとなる。さらなる欠点は、この塩基性溶液中の遊離型ペプチドベースが不安定であり、短時間、たとえばわずか10分後における分解産物を増加させ、ICHガイドライン「新規医薬品(製剤)中の不純物−Q3C(登録商標)」に従って特許に開示された懸濁物を得るには高度な同定および定性が必要になることである。この欠点となる分解は、イオン交換装置の大過剰モルによって部分的に抑えられるのみで、それによって反応からの産物収率が低くなる(約15〜20%の収率の低下)という欠点が伴う。この開示方法のさらなる欠点は、蒸留による溶媒の除去の必要により、溶解しにくいペプチド塩に対する熱応力が多くなり、そのため同様に分解産物が増加し、剤型中の汚染度が高くなるという点である。また、揮発性溶媒の蒸留による除去は、汚染および爆発のリスクがあることからクリーンルーム領域で行うことはほぼ不可能である。さらに、この開示された方法で製造された懸濁液は必ずしも無菌ではなく、場合によっては上述の理由により細菌に汚染されていることがある。したがって、ドイツ特許10040700A1号の方法によって製造されたやや溶解しにくいペプチド塩では、非経口投与に使用する前に必ず、たとえばγ線照射によって滅菌する必要があり、それにはすでに記載した欠点が伴う。
【0014】
発明の説明
上記のことから、本発明は、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液および滅菌凍結乾燥物を製造し、さらにγ線照射による滅菌、有毒な有機溶媒の使用、再懸濁が困難なペプチド塩粒子の製造といった既知の方法の上述の欠点を避けることを可能にする新しい方法を提供することを目的とする。本発明のさらなる目的は、直接非経口投与することができるか、凍結乾燥など無菌的製造方法によってさらに直接加工された、こうした溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を提供することならびにこうした溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の対応する滅菌凍結乾燥物を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、ある側面において、滅菌条件下でa)i)塩基性ペプチドの塩または複合体および脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩を含む滅菌溶液を溶媒または溶媒混合物中で、任意には溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤を添加しつつ混合し、ii)溶媒または溶媒混合物中の塩基性ペプチドの塩および/または複合体、滅菌溶液と溶媒または溶媒混合物中の脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩の滅菌溶液を、任意には溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤を添加しつつ合わせて混合し、b)1つ以上の段階で希釈剤および溶媒または希釈剤混合物の添加をしつつ、塩基性ペプチドの複合体の溶解しにくい塩基性ペプチドと、その複合体が希釈剤または希釈剤混合物の添加後に最終的に沈殿するカルボン酸の懸濁液を製造し、c)持続的または段階的分離方法において混合しながら、溶媒または溶媒混合物、遊離型非ペプチドイオン、過剰なカルボン酸および任意に最終の懸濁液に添加した溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制するか作用を有する添加剤を除去し、懸濁液の液体成分を減少させ、任意には1つ以上の段階でさらに希釈剤または希釈剤混合物を添加し、d)上記で得た溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を混合しながら、任意には製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加することからなる、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための新しい方法を驚くべき方法で提供することによって達成された。
【0016】
好ましい実施形態において、上述の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法は、塩基性ペプチドの塩または複合体の滅菌溶液および段階a) ii)の同じ溶媒または溶媒混合物中に存在する脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩の滅菌溶液を含む。
【0017】
さらに異なる側面において、本発明の目的は、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造のための前述の方法の段階c)またはd)で得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を凍結乾燥し、任意にはその得られた凍結乾燥物に製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加することからなる、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を製造するための新しい方法を驚くべき方法で提供することによって達成された。
【0018】
さらに異なる側面において、本発明の目的は、前述の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を製造するための方法によって得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の凍結乾燥物を、生理学的認容可能な復元用の媒質で復元することからなる、非経口投与に好ましい滅菌懸濁液を製造するための新しい方法を驚くべき方法で提供することによって達成された。
【0019】
さらに異なる側面において、本発明の目的は、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための前述の方法、および非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法によって得ることのできる、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を提供することによって驚くべき方法で達成された。
【0020】
さらに異なる側面において、本発明の目的は、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を製造するための前述の方法によって得ることのできる、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を提供することによって驚くべき方法で達成された。
【0021】
用語「塩基性ペプチド」は本発明の目的のため、アルギニン、ヒスチジン、ピリジルアラニンまたはリジンといった1つ以上の塩基性アミノ酸および/またはたとえば式中Rが「アルキル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アラールキルオキシ、ヘテロアラールキルオキシ」からなる基から選択され(米国特許5942493号に記載のとおり)、全体的に塩基性の特徴を有する「−NH2」、「−NHR」または「−NR2」基などの一級、二級または三級アミノ基といった少なくとも1つの塩基性基を含む、2〜50個の天然産生および/または合成されたアミノ酸、好ましくは5〜20個のアミノ酸、特に好ましくは9〜10個のアミノ酸からなるペプチドを意味する。
【0022】
好ましい塩基性ペプチドはLHRH類似体であり、特に好ましいのはいわゆるLHRHスーパーアゴニストであるゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリンおよびLHRHアンタゴニストであるアンチド、A−75998、セトロレリクス、オザレリクス[D−63153、Ac−D−Nal(2)−4−Cl−D−Phe−D−Pal(3)−Ser−N−Me−Tyr−D−Hci−Nle−Arg−Pro−D−Ala−NH2、式中Nal(2)は2−ナフチルアラニンを意味し、Pal(3)は3−ピリジルアラニンを意味し、Meはメチルを意味し、Hciはホモシトルリンを意味し、Nleはノルロイシンを意味する]、デガレリクス、ガニレリクス、Nal−Gluアンタゴニスト、テベレリクス(Antarelix(登録商標))および米国特許5942493号に開示されている化合物である一般式(I)のアンタゴニストであって、
【化1】

式中、nは3または4であり、R1はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アラルキルオキシ基またはヘテロアラルキルオキシ基の非置換型または置換型であり、R2およびR3はそれぞれ互いに無関係に水素原子、アルキル基、アラルキル基またはヘテロアラルキル基の非置換型または置換型であって、そのうち置換型はアリール基またはヘテロアリール基からなり、−NR23はアミノ酸基であり、R4は式(II)を有する基であって、
【化2】

式中、pは1〜4の整数であり、R5は水素またはアルキル基であり、R6は非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基であるか、R4は一般式(III)の環であって、
【化3】

式中、qは1または2であり、R7は水素原子またはアルキル基であり、R8は水素原子またはアルキル基であり、Xは酸素または硫黄原子であって、そのうち芳香族またはヘテロ芳香族ラジカルが部分的または完全に水素化されており、キラル炭素原子がRまたはSの形状を有していてよい化合物、
一般式(IV)の化合物に基づくLHRHアンタゴニストであって、
Ac−D−Nal(2)−D−(pCl)Phe−D−Pal(3)−Ser−Tyr−D−Xxx−Leu−Arg−Pro−D−Ala−NH2
(IV)
式中、D−Xxxは一般式(V)のアミノ基であって、
【化4】

式中、nは3または4であり、R4は式(VI)を有する基であって、
【化5】

式中、pは1〜4の整数であり、R5は水素またはアルキル基であり、R6は非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基であるか、R4は一般式(VII)の環であって、
【化6】

式中、qは1または2であり、R7は水素原子またはアルキル基であり、R8は水素原子またはアルキル基であり、Xは酸素または硫黄原子である化合物、
一般式(VIII)の化合物に基づくLHRHアンタゴニストであって、
A−Xxx1−Xxx2−Xxx3−Xxx4−Xxx5−Xxx6−Xxx7−Xxx8−Xxx9−Xxx10−NH2
(VIII)
式中、Aはアセチルまたは3−(4−フルオロフェニル)プロピオニル基であり、Xxx1はD−Nal(1)またはD−Nal(2)であって、Xxx2−Xxx3はD−Cpa−D−Pal(3)または単結合であり、Xxx4はSerであり、Xxx5はN−Me−Tyrであり、Xxx6はD−Cit、D−Hciまたは一般式(IX)のD−アミノ酸基であって、
【化7】

式中、nは3または4であり、R1は一般式(X)を有する基であって、
−(CH2)p−CO−NR23
(X)
式中、pは1〜4の整数であり、R2は水素またはアルキル基であり、R3は非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基であり、R1は3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボニル基であるか、R1は一般式(XI)の環であって、
【化8】

式中、qは1または2であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、R5は水素原子またはアルキル基であり、Xは酸素または硫黄原子であり、
Xxx7はLeuまたはNleであり、
Xxx8はArgまたはLys(iPr)であり、
Xxx9はProであり、
Xxx10はAlaまたはSarであるLHRHアンタゴニストである。
【0023】
さらなるペプチドはアバレリクス、アザリンB、デチレリクス、ラモレリクスおよびRS−68439である。前記ペプチドの構造は、特にBehreらGnRH antagonists, an overview, Proceedings of the 2nd World Conference on Ovulation Induction, The Parthenon Publishing Group Ltd.; KutscherらAngew. Chem. 1997, 109, 2240; Stoeckemann and Sandow, J. Cancer Res. Clin. Oncol. 1993, 119, 457に記載がある。
【0024】
本発明の目的のため特に好ましいLHRHアンタゴニストは、セトロレリクス、オザレリクス(D−63153)およびテベレリクス(Antarelix(登録商標))である。
【0025】
塩基性ペプチドに関する用語「塩基性の特徴」および「塩基性」は、本発明の目的のため、純粋なペプチド、すなわち塩の付加物および/または他の添加物のない純粋なペプチドベースのpHが、標準的な条件下で飽和水溶液として7.00を上回ることを意味する。
【0026】
標準的な条件とは、当業者には既知である温度約22℃および大気圧約1000hPa(105Pa)であって、たとえば気候や季節に起因する変化などの通常の変動も考慮に入れたものを意味する。
【0027】
本発明の段階a)の方法で使用する出発材料は、通常は安定性および可溶性に欠ける塩基性ペプチドの遊離塩基ではなく、塩基性ペプチドの塩または複合体である。出発材料として使用するこの塩または出発材料として使用するこの複合体は、通常、好ましい溶媒または溶媒混合物に溶解する塩か、可溶性の複合体である。本発明の目的に好ましい溶媒または溶媒混合物を以降に詳述する。
【0028】
好ましい実施形態において、本発明に基づく方法における段階a)で使用する塩または塩基性ペプチドの複合体は、溶解しにくくはない塩または複合体であって、好ましくは、「酢酸塩、塩酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、アスパラギン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩」からなる基から選択される塩または複合体であるのがよい。
【0029】
本発明によれば、用語「塩基性ペプチド複合体」には、いかなる一定の化学量論の対象になる必要がなく、少なくとも1つの構成要素が塩基性ペプチドであって、少なくとも1つの構成要素が脂肪族または芳香族の有機カルボン酸である系を形成する2つ以上の構成要素の組み合わせを含み、その構成要素の組み合わせは、主として二次原子価結合に関与する相互作用の重ね合わせ、またイオン性相互作用の重ね合わせにも起因するものである。
【0030】
このため、塩基性ペプチド複合体における塩基性ペプチドのカルボン酸に対するモル比としては、たとえば100:1から1:100の間のすべての値をとるが、好ましくは20:1から1:20の間、さらに好ましくは5:1から1:5の間、特に好ましくは2:1から1:2の間の値がよい。
【0031】
塩基性ペプチドと異なり、塩基性ペプチド複合体は必ずしも塩基性の特徴を有さなくても、塩基性でなくてもよい。たとえば、pHが7.00以下であってもよい。
【0032】
上述の方法の段階b)で製造される塩基性ペプチドとカルボン酸の溶解しにくいペプチド複合体は、段階a)i)後の1つの滅菌溶液または段階a) ii)後の2つの滅菌溶液に溶解した出発材料の反応から生じたもので、そこで溶解した塩基性ペプチドの塩または複合体とは異なる。この反応は通常、従来の複分解といった化学反応であり、その平衡はたとえばその溶解しにくさのために、結果として生じて沈殿する塩基性ペプチド複合体の方向にずらすことができる。
【0033】
出発材料、すなわち塩基性ペプチドの塩または複合体および脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩は、上述の方法の段階a)を実行する前またはその前処理において、任意には一緒に[段階a)i)の通り]または個別に[段階a] ii)の通り]、同じまたは異なる溶媒または溶媒混合物に溶解して滅菌することができる。その溶液が混合した場合に早期に沈殿しやすいか、懸濁が早期に形成されるために、滅菌のための濾過が実行できない場合は、亜型の段階であるa) ii)に従って段階a)を行うのが好ましい。
【0034】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法では、塩基性ペプチドの塩または複合体および脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩を含む滅菌溶液を段階a)で混合し、任意には溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制するか作用を有する添加剤を添加するのがよい。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法では、段階a)の滅菌溶液を、a)塩基性ペプチドの塩または複合体を溶媒または溶媒混合物に溶解し、b)固形、懸濁物または溶解物の形態をとる脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩を混合しながら段階a)で得た塩基性ペプチドの塩または複合体の溶液に添加して溶解し、c)この方法で得られた溶液を濾過によって滅菌することによって製造するのがよい。
【0036】
段階a)で得られる1つの溶液または複数の溶液の滅菌は一般に、濾過による滅菌が望ましく、γ線照射などの放射線活性による滅菌は適切ではない。
【0037】
本発明による方法の段階b)で製造され、希釈剤または希釈剤混合物の添加後に最終的に得られる沈殿物である、塩基性ペプチドとカルボン酸の溶解しにくいペプチド複合体は、本発明の意図の枠内において、本来の溶媒または溶媒混合物に溶解しにくい、および/または希釈剤または希釈剤混合物の添加前にすでに沈殿して懸濁液を形成する。
【0038】
「塩基性ペプチド複合体」に関する用語「溶解しにくい」は、本発明の目的において、可溶性すなわち、溶媒および/または希釈剤またはその混合物に標準的な条件下で溶解する塩基性ペプチドの塩または複合体の最大量が、1000mg/L以下、好ましくは300mg/L以下、特に好ましくは100mg/Lであることを意味する。この可溶性を測定するために用いる溶媒または希釈剤またはその混合物は、好ましくは本発明の目的のために用いられる溶媒および/または希釈剤またはその混合物であり、好ましくは水である。
【0039】
本発明の目的において「塩基性ペプチド複合体」に関する「溶解しにくい」という基準の評価および設定は、希釈剤または希釈剤混合物の添加が1つまたは複数の段階で実施されるか否かに関係なく、方法の段階b)で希釈剤または希釈剤混合物を完全に添加した後、上述の段階c)を実行する前に、その際存在する溶媒および希釈剤またはその混合物中における塩基性ペプチド複合体の可溶性によって決定する。可溶性は、当業者の専門的な知見によって、たとえばしかるべき予備検査によって容易に判定することができる。
【0040】
好ましい実施形態において、本発明による方法はさらに、段階c)における分離方法で混合しながらの1つ以上、好ましくはそれ以上の段階を用いての希釈剤または希釈剤混合物の添加を含む。
【0041】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法は、段階b)および段階c)での同じ希釈剤または希釈剤混合物の使用を含む。
【0042】
本発明によればカルボン酸として好ましいのは、炭素原子2〜30個からなる分枝鎖または非分枝鎖、飽和または不飽和の脂肪族の有機カルボン酸および芳香族の有機カルボン酸であり、1つ以上の芳香環系からなる後者の芳香族は芳香環系上で縮合または非縮合であることができ、置換または非置換であることができる。また、こうしたカルボン酸は、ジ−、トリ−またはテトラ−カルボン酸といったポリカルボン酸またはスルホン酸またはリン酸であってよい。本発明による使用に好ましいのは、たとえばGRAS(「General Recognized As Safe」)リストから選択される、当業者には既知の製剤学的にも毒性学的にも許容可能なものである。このほか、本発明の目的において好ましいのは、アジピン酸、アルギニン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、ベンゼン−スルホン酸、コハク酸、ジブチルリン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジオクチルリン酸、酢酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、αリポ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、オクチルリン酸、オレイン酸、酒石酸および/またはその塩、たとえばアンモニウム塩およびアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩である。本発明の目的において特に好ましいのは、エンボン酸、クエン酸、パルミチン酸、サリチル酸、タンニン酸、ステアリン酸、安息香酸、桂皮酸および/またはその塩、たとえばアンモニウム塩およびアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩である。
【0043】
さらに好ましい実施形態において、脂肪族または芳香族の有機カルボン酸は、「エンボン酸、クエン酸、パルミチン酸」からなる基から選択される。
【0044】
好ましい溶媒および/または希釈剤は、水、エタノール、酢酸、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、アセトンまたはメチルエチルケトンまたは溶媒混合物および/または希釈剤混合物としての上述の溶媒2つ以上の混合物である。溶媒と希釈剤は同じであっても異なっていてもよい。好ましい溶媒または溶媒混合物は、水、エタノール、酢酸、イソプロパノール、tert−ブタノールまたはアセトンおよびその混合物である。特に好ましい水性の溶媒混合物、すなわちたとえば上述のような1つ以上の有機溶媒と水との混合物の水分含有率は1〜90%であり、好ましくは4〜80%である。
【0045】
溶媒混合物として、エタノール含有率が10〜99%(m/m)、好ましくは20〜96%(m/m)、好ましくは50〜90%(m/m)、特に好ましくは約70%(m/m)である水−エタノール混合物を使用するのが特に好ましい。
【0046】
好ましい希釈剤は水、エタノール、酢酸、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブ多ノール、tert−ブタノール、アセトンまたはメチルエチルケトンまたはこれらの希釈剤の2つ以上の混合物である。
【0047】
特に好ましい希釈剤は水である。
【0048】
ある変形において、溶解性を高めるおよび/または凝集、特にゲル形成を抑制する作用を有し、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法の段階a)において任意に添加される添加剤は、滅菌前および段階a)i)またはa) ii)を実行する前に、一緒になった溶液または個別の溶液の製造中に添加する。
【0049】
好ましくはこれらの添加剤として界面活性剤を使用してよく、特に「Tween 20(INCI ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 80(INCI ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレーと)、Cremophor RH 40(マクロゴール/グリセロールヒドロキシステアレート40、INCI PEG−40水素化ヒマシ油)、Cremphor RH 60(マクロゴール/グリセロールヒドロキシステアレート60、INCI PEG−60水素化ヒマシ油)、Cremophor EL(マクロゴール/グリセロールリシノール酸塩35、ポリオキシル35ヒマシ油)およびソルトールHS−15(ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレート、マクロゴール/グリセロールヒドロキシステアレート15)」からなる基から選択される界面活性剤が好ましい。これらおよびさらなる添加剤は、たとえば「Fiedler-Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete」(第五版、2002年)に記載のように当業者には既知である。
【0050】
溶解性を高めるおよび/または凝集、特にゲル形成を抑制する作用を有するこうした添加剤の添加なしに、方法段階a)i)およびii)に基づいた手順で1つの溶液または複数の溶液を製造するのは好ましい。
【0051】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法および溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を製造するための方法の方法段階a)からd)は、好ましくは当業者には既知の閉鎖された製剤学的製造系において完全に無菌的な条件下で実施されるのがよい。この種の製造系は、本発明の目的のため、当業者の専門的な知見では既知であり、無菌的な製剤製造に好ましい1つ以上の容器からなる。これらの容器はさらにあらゆる技術的に可能な容量であってよい。さらに、方法段階a)からd)を、1つの同じ容器で実施することも、2つ以上の容器で実施することも可能である。2つ以上の容器を用いる場合、1つの容器で2つ以上の方法段階を実施することも可能である。1つ以上の容器を用いる場合、当業者には既知の好ましい方法でそれらの容器を接続してもよいが、互いに離しておくこともできる。物質の懸濁液および溶液および物質の混合物といったあらゆる材料を無菌的に2つ以上の容器の間を移動させるには、たとえば加圧や減圧(ポンプを用いる)といった当業者に既知の方法で実施することができる。また、窒素などの保護ガスをこうした方法段階に用いることができる。各容器を、冷却ジャケットや好ましい冷却材を用いるなどといった好ましい冷却系の存在を介し望ましい特異的な温度に制御可能にすることによって、追加的に区別する。冷却系および冷却材は、当業者の専門的な知見では既知である。冷却系によって設定することのできる方法段階a)からd)を実施するための温度は、好ましくは0〜40℃、好ましくは2〜25℃、特に好ましくは4〜16℃である。また、各容器は、たとえばローラーなどのしかるべき移動要素の存在を介して任意には移動可能なものであってよく、任意には取り外し可能な混合用装置、好ましくは撹拌機、たとえば製剤製造で用いるようなパドル撹拌機を有していてよい。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、1つの同じ容器における方法段階a)からd)の実施を含み、その容器は任意には混合用の取り外し可能な装置を有することができる。
【0053】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法は、2つ以上の容器における方法段階a)からd)の実施を含み、各容器は任意には混合用の取り外し可能な装置を有し、また2つ以上の方法段階を1つの容器で実施することができる。
【0054】
本発明による方法の方法段階a)からd)における混合は、好ましくは攪拌によって実施され、任意には持続的または間欠的に実施することができる。ただし、混合は多様な方法で、たとえば追加的な撹拌機を用いても用いなくても循環式の製造系におけるポンピングによって、同時にまたは連続的に、持続的にまたは間欠的に、複数の混合法によって達成することもできる。
【0055】
混合を実施する場合、収率の低下を最小限にするように注意を払う必要がある。たとえば、激しすぎる迅速な攪拌などによって起こることのある泡の形成や塩基性ペプチド複合体の容器壁への付着量の増加による減少があってはならない。しかし、混合のしかるべき最適化は、専門的な知見に基づく当業者により容易に実現することができる。
【0056】
(適切な)混合はたとえば溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子の凝集を防ぐとともに、再懸濁することができないか部分的にしか再懸濁することができない固形の沈渣の形成を防ぎ、とりわけ、方法段階a)からd)後に製造される溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液を均一にし、直接非経口投与できるようにすることができる。
【0057】
また、とりわけ、滅菌凍結乾燥物を滅菌された生理学的に忍容できる復元用媒質で復元することによって、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の非経口投与に好ましい滅菌懸濁液を製造するための方法によって製造された懸濁液を、同様に均一にし、ペプチド粒子の凝集および/または再懸濁が不可能であるか部分的にしか可能にならない固形の沈渣の形成をなくし、直接非経口投与ができるようにすることもできる。
【0058】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法の段階b)における溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液の製造は、1つ以上の段階で希釈剤または希釈剤の混合物を添加することによって、塩基性ペプチドとカルボン酸とを、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体が沈殿するまで反応させた後に、結果として得られた塩基性ペプチド複合体の可溶性を低下させることによって実施する。最大限に完全な量的な沈殿および最小限の収率の低下を達成するため、使用する溶媒および希釈剤またはその混合物だけではなく、温度の選択および最適化を注意深く行うことが必要である。ただし、こうした選択および最適化の実験は、当業者にはその専門的な知見により既知であり、たとえば種々の温度における特定の媒質での可溶性の測定または懸濁の開始の目視観察などによって実施するのは簡単である。
【0059】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法の段階c)における持続的または段階的な分離段階は、本発明によれば、溶媒または溶媒混合物、遊離型非ペプチドイオン、過剰なカルボン酸および段階b)で得られた溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を働かせるために任意で添加される添加剤をについて減少させることによって区別されるもので、懸濁液の液体含量が減少し、任意にはさらに希釈されるか、希釈剤を1つ以上の段階で添加する。この減少の意図は、特に溶媒または溶媒混合物、任意に添加して溶解性を高めるおよび/または凝集、特にゲル形成を抑制する作用を有する添加剤の含量を低減させて、ある程度まで溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液の凍結乾燥を可能にするだけでなく、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液または復元した凍結乾燥物の直接的な非経口投与をも可能にする。
【0060】
凍結乾燥法が依然として許可される溶媒含量の程度は、特定の溶媒または溶媒混合物によって左右される。特徴的な限界値は関連の専門文献を見れば当業者には既知である。たとえば、TeagardenとBakerによるレビュー(European Journal of Pharmaceutical Sciences, 2002, 15: 115-133)は、種々の溶媒または溶媒混合物(補助溶剤系)および種々の製剤を製造する場合の凍結乾燥におけるその含量の値を示している。このため、とりわけ、20%(V/V)tert−ブタノール/水の溶媒混合物の利点が検討されているが、同時に、エタノール/水、n−プロパノール/水またはメタノール/水といった他の溶媒混合物でも、特定の有機溶媒の含量は、完全に凍結乾燥を成功させるには容量の最大10%に限定されるようであることにも言及されている。
【0061】
たとえば界面活性剤、好ましくはTween 20(INCI ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween 80(INCI ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート)、Cremophor RH 40(マクロゴール/グリセロールヒドロキシステアレート40、INCI PEG−40水素化ヒマシ油)、Cremphor RH 60(マクロゴール/グリセロールヒドロキシステアレート60、INCI PEG−60水素化ヒマシ油)、Cremophor EL(マクロゴール/グリセロールリシノール酸塩35、ポリオキシル35ヒマシ油)およびソルトールHS−15(ポリエチレングリコール15−ヒドロキシステアレート、マクロゴール/グリセロールヒドロキシステアレート15)などの、溶解性を高めるおよび/または凝集、特にゲル形成を抑制する作用を有し、依然として溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液または復元した凍結乾燥物の直接的な非経口投与を可能にする添加剤の程度は、特定のペプチド複合体および特定の製剤学的配合物に左右されるが、これは専門的な知見に基づけば当業者には既知である。このため、たとえば種々の経口用および非経口用配合物の可溶性およびその含量の値を増加させる多数の製剤学的添加剤は、Strickleyによるレビューで考察されている(Pharmaceutical Research, 2004, 31:201-230)。
【0062】
段階c)の分離方法における減少は、本発明に従って、フィルターの使用または遠心分離という2つの方法で行うことができ、1つ以上の段階で行うことができる。任意にはこれに、1つ以上の段階での希釈剤または希釈剤混合物をさらに添加してよいが、さらなる添加を行うのが好ましい。また、溶解しにくい塩基ペプチド複合体の懸濁液の濃度は、減少を実施した後、希釈剤または希釈剤の混合物の特定の添加によって調節することができ、減少前の最初の濃度より高くすることも、同じにすることも、低くすることもできる。懸濁液の濃度を上昇させるのが好ましい。
【0063】
フィルターの使用による減少においては、篩過サイズおよび/またはフィルターの保持範囲に基づき、懸濁液の液体含量、溶媒または溶媒混合物、遊離型非ペプチドイオン、過剰なカルボン酸および任意に添加し溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制するかその両方の作用を有する添加剤の含量が減少するが、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子は保持される。この場合、特に溶媒または溶媒混合物の含量および、場合によっては、溶解性を高めるおよび/または凝集、特にゲル形成を抑制する作用を有する添加剤の含量を、当業者に既知の目標とする特定の程度まで好ましくは添加する希釈剤または希釈剤混合物の希釈作用によって減少させる。
【0064】
本発明によれば、用語「フィルター」は、段階c)の減少に好ましいすべての材料を含み、これらは溶媒および希釈剤またはその混合物に対して化学的に不活であり、多孔性および/または篩様の構造を有し、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液の粒子を保持し、懸濁液の液体含量を除去することを可能にするものである。
【0065】
本発明の目的におけるフィルターは、たとえば濾過紙、グラスファイバーフィルター、石英ファイバーフィルター、デプスタイプフィルター、メンブレン、メンブレンフィルター、ガーゼおよびフィルターガーゼであってよい。好ましいのはメンブレン、メンブレンフィルター、ガーゼおよびフィルターガーゼである。好ましい材料の例としては、綿、セルロース、セルロース、セルロース混合エステル、硝酸セルロース、酢酸セルロース、再生セルロース、グラスファイバー、石英マイクロファイバー、ガラス、硼珪酸ガラス、硼珪酸グラスファイバー、プラスチック、ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PTFE(Teflon)、PVDF、金属、合金、コーティング金属、焼結金属、セラミックスが挙げられる。好ましいのは、ガラス、セラミックス、鉄、ニッケルおよびクロムなどの金属、ステンレススチールおよび真鍮などの合金、テフロン加工ステンレススチールなどのコーティング金属および/または合金である。ステンレススチールが特に好ましい。さらに好ましい材料は、プラスチック、ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PTFE(Teflon)、PVDF、ポリスルホンおよび/またはその混合物である。
【0066】
プラスチックが意味するのは、その基礎的な構成要素が合成または半合成のポリマーであるすべての既知の材料である。成形性、硬度、弾力性、耐破壊性、熱安定性および化学的安定性といったプラスチックの技術的特性は、出発材料、製造方法および添加剤との混合の選択によってきわめて幅広くなる。こうした添加剤が加わった成形構成物の特徴は、DIN EN ISO 1043(熱塑性)およびDIN 7708(熱硬化性)に規定されている。半合成プラスチックは、天然ポリマーを加工することによって製造されるものである(たとえばセルロースからセルロイド)。合成プラスチックはモノマーの重合(重付加、重縮合など)によって製造される。こうしたプラスチックおよびポリマーはすべて、本発明に属するものとしてみなされる。
【0067】
また、本発明の目的において好ましいのは、3次元フィルター、すなわちその分離表面が3次元空間へと広がる、たとえば上部および下部が開くシリンダーの形態をとる、たとえばステンレススチールでできた、たとえばガーゼまたはフィルターガーゼである(フィルタードラム)。こうした3次元フィルターは、表面積がきわめて大きいため、分離方法においてよりよい分離を行うことができ、こうした改良が分離方法の時間の節約、出発材料の使用量の少なさ、生成物の収率の高さ、優れた特性を有する生成物などといった1つ以上の利点をもたらすことができる。
このため、たとえばステンレススチール製のガーゼフィルタードラムを使用すれば、分離方法を実行する場合に時間が2〜3倍節約できる。同様に、たとえばPVDFおよび/またはポリスルホン製の1つ以上の中空ファイバーメンブレンを用いれば、時間を著明に節約することができる。
【0068】
この文脈におけるフィルターの篩過サイズおよび/または保持範囲の選択は、特定の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒径分布に左右される。粒径分布は個々のペプチド複合体によって異なり、当業者はその専門知識により、たとえばレーザー回折/レーザー回折法によって容易に判定することができる。フィルターの篩過サイズおよび/または保持範囲はこの文脈において選択し、一方では溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子が可能な限り完全に保持できるようにして、収率の低下を最小限にしながらも、他方ではフィルターが遮断されないようにし、懸濁液の液体含量の除去が妨げられないか、たとえば過大に時間および/または圧力を費やすことにより技術的に不可能であるかほぼ不可能になることがないようにする。当業者にとっては、この選択はその専門知識をもとにしれば、たとえばしかるべき最適化実験の手段を介すれば簡単な事項である。
【0069】
フィルターに関する用語「篩過サイズ」および「保持範囲」は、本発明によれば、たとえば製造者が記載する値といった公称値または従来の標準化に基づいて好ましい測定方法で確認した自然値の両方、およびサイズ範囲の場合ではたとえば平均篩過サイズといった平均値も含む。本発明の目的において好ましい篩過サイズおよび/または保持範囲は1〜250μmであり、好ましくは2〜100μmであり、特に好ましくは3〜30μmである。本発明の目的においてさらに好ましいのは、篩過サイズおよび/または保持範囲が0.1〜250μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.1〜30μmである。
【0070】
好ましい実施形態において、本発明に基づく方法は、保持範囲が1〜250μm、好ましくは2〜100μm、特に好ましくは3〜30μmであるステンレス鋼金網のフィルターとしての使用を含み、ステンレス鋼金網を3次元フィルタードラムにすることも可能である。
【0071】
さらに好ましい実施形態において、本発明に基づく方法は、「メンブレン、メンブレンフィルター」からなる群から選択されるフィルターを含み、好ましくは、「プラスチック、ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PTFE、PVDF、ポリサルフォン」から、さらに好ましくはPVDFおよび/またはポリサルフォンからなる選択された材料でできた1つ以上の中空ファイバーメンブレンからなり、篩過サイズおよび/または保持範囲を0.1〜250μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.1〜30μmで使用する。
【0072】
フィルターの使用による分離方法において、混合用装置、好ましくは、撹拌機は対応する容器のフィルターのちょうど上に設置し、適切な混合が達成でき、混合中にフィルターが破損せず、その機能が障害を受けないようにして、上述のようにフィルターの遮断を防ぐようにする。これに対応する最適化は当業者には簡単な事項である。また、3次元フィルターの使用においてもこれを考慮に入れ、こうした場合は混合用装置が好ましくは3次元空間に広がるように、たとえばステンレス鋼金網フィルタードラムの使用において3次元ロッド撹拌機を用いることを考慮に入れる必要がある。また、段階c)後の分離方法ではポンプによる混合が望ましく、任意にはさらに場合によっては取り外し可能な混合装置を使用し、この装置を撹拌機にするのが好ましい。
【0073】
フィルターの使用により懸濁液の液体含量を除去することは、任意には加圧によって実施することができる。この文脈において加圧においては、たとえば持続的または間欠的に実施して、圧力を上昇させるか低下させることが可能である。加圧においては、フィルターが遮断されないように、除去が妨げられないか、たとえば過大に時間を費やすことにより技術的に不可能であるかほぼ不可能になることがないように注意を払う必要がある。無菌的製剤製造における加圧の方法は、当業者にとってはその専門知識により既知であり、たとえば滅菌濾過された圧縮空気または滅菌濾過された窒素によって、必要であれば圧縮のための介助道具、たとえばコンプレッサーを使用して実施することができる。対応する装置を容器または複数の容器に装着する。0〜2バールの加圧が本発明の目的においては好ましい。
【0074】
遠心分離による減少において、懸濁液の液体含量、溶媒または溶媒混合物、遊離型非ペプチドイオン、過剰なカルボン酸および任意に添加され溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤の含量が、1つ以上の段階での遠心分離によって減少し、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液が得られる。これには、特に溶媒または溶媒混合物の含量および、場合によっては、溶解性を高めるおよび/、または凝集、特にゲル形成を抑制する作用を有する添加剤の含量を、当業者に既知の目標とする特定の程度まで好ましくは添加する希釈剤または希釈剤混合物の希釈作用によって減少させることが付随する。
【0075】
遠心分離は任意には水平方向または垂直方向で実施することができる。溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子の沈渣は、水平方向に、すなわち水平方向の遠心分離(垂直の回転軸)では垂直の回転軸に対して直角方向に、および垂直方向に、すなわち垂直方向の遠心分離(水平の回転軸)では水平の回転軸に対して垂直方向に実施される。遠心分離の文脈における用語「水平方向」および「垂直方向」、遠心分離の種類、ローターおよびローターの種類は、それとは対照的に、特定の回転軸に関連するものであって、遠心分離および粒子の沈渣方向に関連するものではない。
【0076】
本発明の目的のために使用することのできる遠心分離器は、製剤製造で使用され、無菌的生産に好ましい、当業者に既知のすべての種類の遠心分離器であり、好ましい例として挙げられるのは、水平遠心分離器、垂直遠心分離器、水平ピーラー遠心分離器、垂直ピーラー遠心分離器および押し出し排出型遠心分離器である。また、この文脈において用語「遠心分離器」は、当業者には既知であって、その遠心分離を特徴付ける、たとえばローターや遠心分離容器または挿入物などのすべての付属器を含むが、以下に記述する追加的な内部装置も含む。すべての既知の種類のローターを、ローターとして使用することができる。たとえば、好ましくは垂直および水平ローター、スウィングローター、固定角ローターであり、1つ以上の遠心分離容器に挿入物として備え付けることが可能で、任意には取り外し可能であるか、特定のローターの固定される部品であることができる。1つ以上の遠心分離容器を用いる場合、これらは特定のローターの回転軸に応じて傾き、好ましい傾斜角度は0〜90°である。
【0077】
本発明の目的において好ましい遠心分離は、水平遠心分離である(垂直回転軸)。本発明に基づき、さらに好ましいのは、傾斜角度が垂直回転軸に対して0°である、任意には取り外し可能か固定された部品の垂直ローターを有する遠心分離容器である。また、傾斜角度が垂直回転軸に対して0〜90°である、任意には取り外し可能か固定された部品の垂直ローターを有する2つ以上の遠心分離容器も好ましい。
【0078】
遠心分離器は当業者の専門知識に基づいて既知の材料からなり、ステンレススチールなど無菌的製剤製造に好ましく、たとえば、遠心分離の対象となる粒子の滑り挙動が研削の深さおよび整列によって改良される研削されたステンレススチールの遠心分離容器などの、たとえば、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子の凝集および/または固形の沈渣物の形成を防ぐことを介助するための製造のために有利に追加的に作成されてよい。
【0079】
さらに遠心分離器は、たとえば溶媒および/または希釈剤および/または好ましい製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加するための撹拌機といった好ましくは混合のための装置、懸濁液の液体含量を減少させるための、たとえば吸い上げポンプ、機械的および/または空気式のピーラー装置などの注入管などの当業者に既知の追加的内部装置をさらに有してよい。さらに、複数のこうした追加的な内部装置および/またはその機能を、たとえば内部が中空で同時に注入管および/または吸い上げ管としても働くパドル式撹拌機などといった1つの装置内で組み合わせることも可能である。こうした追加的な内部装置は、任意には遠心分離器の取り外し可能な部品または固定の部品であることができる。こうした追加的な内部装置の操作および/または作動は当業者には既知であり、混合用装置、たとえば攪拌機はたとえば磁石を使用して外側から作動させることができる。
【0080】
遠心分離の速度または相対遠心分離力(RCF)は、たとえば1−100000gまたは対応する分毎の回転数などの当業者に既知の従来の値すべてを想定することができる。遠心分離の速度または相対遠心分離力は、この文脈において選択するため、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子の凝集および、再懸濁できないか部分的にしか再懸濁できない個体の沈渣物の形成を防ぐ。好ましい遠心分離の速度または相対遠心分離力またはその範囲は、当業者はその専門知識、たとえばしかるべき予備的実験などによって容易に決定することができる。
【0081】
懸濁液の液体含量の減少は、任意には遠心分離中またはその後に、1つ以上の段階において、たとえば吸い上げ管の使用によって行うことができる。本発明の目的においては、間欠的に遠心分離を行い、遠心分離の段階と段階の間および/または遠心分離後に懸濁液の液体含量を減少させ、その間に溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液を保持し、すなわち、液体含量すべてを除去するのではなく、上澄み液をあまりにも広範、迅速または不正確に除去することによって収率が低下するのを最小限に抑えるのが好ましい。
【0082】
希釈剤または希釈剤混合物の好ましい添加は、任意には遠心分離中、遠心分離後および/または、遠心分離を間欠的に行うのであれば1つ以上の段階における遠心分離の段階と段階の間に、しかし好ましくは遠心分離の段階と段階の間および/または懸濁液の液体含量を毎回減少させた後の遠心分離後に行う。
【0083】
遠心分離による分離中の混合は、任意には持続的または間欠的に行うことができる。好ましくは、懸濁液の液体含量を毎回減少させた後の遠心分離の段階と段階の間および遠心分離後、およびこの減少を行った後に希釈剤または希釈剤混合物の添加中および/または添加後などに、間欠的に攪拌によって混合を行うのがよい。また本発明の目的において好ましいのは、任意には追加的な混合用装置に介助された遠心分離中に、遠心分離容器の加速および制動によってのみ混合が行われることである。
【0084】
混合用装置を備えることで、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液を適切に混合することができる。懸濁液の液体含量を減少させるためのさらなる追加的な内部装置、たとえば吸い上げ管だけでなく、混合と減少機能を備えた上述のような組み合わせ装置も備えるおよび/または設計して、上澄み液をあまりにも広範、迅速または不正確に除去することによって収率が低下するのを最小限に抑える。各ケースにおける好ましい装置は、しかるべき実験により当業者によって容易に設定することができる。
【0085】
本発明による方法の段階d)において、任意には好ましい製剤学的な助剤、担体および/または増量剤、たとえばマンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、グルコース、可溶デンプン、スクロースおよびサッカロースを懸濁液または凍結乾燥物に添加することが可能である。これらの助剤、担体および/または増量剤の添加は、滅菌固形物および/または滅菌溶液として行うことができる。
【0086】
本発明の目的において好ましいのは、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法の段階d)において滅菌溶液として、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、グルコース、可溶デンプン、スクロースおよび/またはサッカロースを添加し、好ましくは攪拌によって混合を行うのがよい。さらに好ましいのは、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物の製造方法の段階において滅菌固形物として、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、グルコース、可溶デンプン、スクロースおよび/またはサッカロースを添加し、凍結乾燥前、凍結乾燥中および/または凍結乾燥後に添加を行うことで、任意には混合することが可能である。
【0087】
好ましい実施形態において、滅菌懸濁液の製造方法は、a)「セトロレリクス、テベレリクス、オザレリクス(D−63153)」からなる群から選択されるLHRHアンタゴニストの酢酸塩および「エンボン酸、クエン酸、パルミチン酸」からなる群から選択されるカルボン酸の塩からなる滅菌溶液を、50〜90%(m/m)、特には約70%(m/m)のエタノール含量を有する水性エタノール溶媒混合物を混合し、b)混合し、1つ以上の段階において希釈剤としての水を添加することによって、塩基性ペプチドとカルボン酸との溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液を製造し、その溶解しにくい塩基性ペプチド複合体における塩基性ペプチドとカルボン酸のモル比は2:1〜1:2の間の値をとり、c)混合し、さらなる希釈剤として水を1つ以上の段階でさらに添加しながら、任意には加圧しながら、保持範囲が2〜100μm、好ましくは3〜30μmのステンレス鋼金網フィルターを使用して、段階b)で得られた懸濁液中のエタノール、遊離型非ペプチドイオンおよび過剰なカルボン酸について減少させ、懸濁液の液体含量を低減させ使い果たし、d)こうして得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を混合しながら、増量剤を含有する(滅菌)溶液としてのマンニトールを添加するといった段階を含み、そのうち方法段階a)からd)は1つの同じ容器または2つの容器で実行し、混合は好ましい撹拌機によって行う。
【0088】
さらに好ましい実施形態において、滅菌懸濁液の製造方法は、段階c)におけるフィルターとして1つ以上の中空ファイバーメンブレンを使用し、これは好ましくはPVDFおよび/またはポリスルホンからなり、篩過サイズおよび/または保持範囲は0.1〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特には0.2μmであり、混合はポンプおよび、任意かつ追加的には、任意に取り外し可能な混合用装置によって行い、この装置は好ましくは撹拌機であるのがよい。
【0089】
さらに好ましい実施形態において、滅菌凍結乾燥物の製造方法は、上述の好ましい実施形態による滅菌懸濁液の製造方法の段階d)で得られた滅菌懸濁液の凍結乾燥を含む。
【0090】
さらに好ましい実施形態において、非経口投与に好ましい滅菌懸濁液の製造方法は、滅菌凍結乾燥物の製造方法の上述の好ましい実施形態で得られた凍結乾燥物を注射するための水での復元を含む。
【0091】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物の製造段階において、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法の段階c)またはd)で得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液は、凍結乾燥することができ、任意には製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加することができる。溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を、好ましい製剤学的な助剤、担体および/または増量剤の任意の添加とともに凍結乾燥させることは、無菌的製剤製造に好ましい標準的な凍結乾燥系を用いることにより、当業者の専門知識による既知の方法で実施する。同様に、凍結乾燥前に必要な懸濁液の好ましいバイアルへの分配は当業者に既知であり、無菌的製剤製造に好ましい標準的な分配系を用いて実施し、これは本発明により理解されるはずのもので、容器であり閉じられた生産系の構成要素であることができる。
【0092】
非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法において、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物の製造方法で得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物は、滅菌された生理学的に忍容される復元用媒質で復元することができる。こうした復元用媒質は当業者には既知である。本発明の目的において使用される復元用媒質は、好ましくは粘性を高める及び/または別の方法で懸濁液の安定性を高めるおよび/またはアレルギー反応を誘発する添加剤を全く含まないもののみが好ましいが、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)を含まないものがよい。好ましい復元用媒質は滅菌水であり、特に好ましいのは注射用水である。
【0093】
上述の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法のみでなく、非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法によって本発明に基づいて製造された滅菌懸濁液は、とりわけ、少なくとも2時間、好ましくは4、8、12、24、36、48および/または72時間、通常は数日または数週間静置することによって、粘性を高めるおよび/または別の方法で懸濁液の安定性を高める添加剤、たとえばある状況下においてはアレルギー反応も誘発するカルボキシメチルセルロース(CMC)を添加する必要なく、驚くべきことに区別される。
【0094】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液に関連する用語「安定」および「安定性」は、本発明によれば、懸濁液が固相および液相に互いに離れる様子が肉眼で認識されることがない状態(物理的安定性)が混合することなく安定性が保証される期間持続し、それどころか懸濁液が均質であることを意味する。また、用語「安定」および「安定性」はこの文脈において、塩基性ペプチド複合体のペプチド構成要素も、カルボン酸構成要素も、化学的に分解されないことを意味する(化学的安定性)。
【0095】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液に関連する「安定」および「安定性」の基準の評価および割当ては、当業者にはその専門知識に照らして簡単な事項である。このため、分離の開始はたとえば、沈渣物の形成の開始および/または均質性の発生を介して、すなわち粒子密度に肉眼で検出可能な領域が発生することにより、肉眼的に判定することができる。化学的安定性は、たとえばHPLCなどの好ましいクロマトグラフィー法で確認することができる。
【0096】
上述の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法および、非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法によって本発明に基づいて製造された滅菌懸濁液は、たとえば表面積、形態、形状、サイズおよび/または特異的密度などのより有利な形態を有する粒子によって、驚くべきことに区別される。
【0097】
この粒子の形態は、本発明の目的において、希釈剤または希釈剤混合物の添加による懸濁液の製造の条件を好ましく変化させることによって、たとえば混合速度、添加速度、温度、混合装置の性質(撹拌機の種類など)、混合時間、塩基性ペプチドとカルボン酸の比率など、目標の方法で驚くべきことに有利に制御することができる。このように制御目標に達する可能性は、先行技術で記述した方法に比して、本発明の方法の実質的な利点であり、本明細書に記載のように、本発明に基づく懸濁液の有利な効果をもたらすものである。当業者は、本発明の目的において基礎知識に基づき、こうした制御目標のため方法条件を最適化することは、たとえばしかるべき実験的予備検査を行うことにより容易に可能である。
【0098】
また、驚くべきことに、粒子の形態を変化させることで、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の投与懸濁液からの塩基性ペプチド(活性成分)の放出に影響が出ることが明らかにされている。たとえば、あらかじめ異なる形成をした多少密度のあるゲル網目では、活性成分の溶解速度は異なる。
【0099】
上述の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法および、非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法によって本発明に基づいて製造された滅菌懸濁液は、また、沈渣しているが凝集しておらず、再懸濁できないか、部分的にしか再懸濁できない沈渣物を全く形成していない溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の粒子によって、また、数週間および数ヵ月経た後でも、たとえば短い振盪または攪拌などの簡単な混合によって再び得ることのできる安定な懸濁液によって、驚くべきことに区別される。
【0100】
また、本発明に基づき、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法によって製造された滅菌懸濁液および、非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法によって製造された滅菌懸濁液は、直接的な非経口投与が可能であるかどうか、すなわち、非経口投与を行うのにさらなる加工または処理を必要としないかどうか、また、たとえば粘性を高めるおよび/または別の方法で懸濁液の安定性を高める添加剤、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)をさらに添加しなくても投与が可能であるかどうかによって驚くべきことに区別される。
【0101】
本発明に基づき製造された滅菌懸濁液は、さらに、活性成分の優れた放出(医薬品の放出)を示すことよって、驚くべきことに区別され、この改善により、セトロレリクスのような累積的に放出される塩基性ペプチドの絶対量が増加するとともに、たとえば塩基性ペプチドの放出が持続的に増加するおよび/または特定の期間中より均一になるといった放出の制御が改良され、さらには活性成分の放出期間が延長する。このように、本発明に基づき製造された滅菌懸濁液の制御放出が改善されることは、たとえば塩基性ペプチド複合体からカルボン酸構成要素が速く放出されるとともにペプチド構成要素(活性成分)は長期間にわたって制御されながら複合体から有利に送達されるという特徴をもたらす。
【0102】
本発明に基づき、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法によって製造された滅菌懸濁液および、非経口投与に好ましい溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するための方法によって製造された滅菌懸濁液は、また、皮下投与において局所的忍容性に優れることを示すことによって、驚くべきことに区別される。
【0103】
また、本発明に基づき製造した懸濁液は、驚くべきことにホルモン抑制においてより有利であることを示す。このため、たとえば女性における子宮内膜症または子宮筋腫の治療において、信頼しうる治療的に有効かつ制御されたエストラジオール値の低下が、化学的な卵巣除去を引き起こさず、再発患者には不利益なホルモン低下症状を引き起こさずに達成される。たとえば男性の良性前立腺肥大症(BPH)の治療では、著明、大幅かつ長時間持続するテストステロンの低下が実現するが、同様に精巣摘出レベルまでは達さずおよび/または不利益なホルモン低下症状を引き起こすこともなかった。
【0104】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を製造するための方法によって得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物は、滅菌された生理学的に忍容される復元用媒質でさらに加工または処理を行わなくても、直接的に復元できることにより、驚くべきことに区別され、結果得られた滅菌懸濁液は直接非経口投与することができる。
【0105】
本発明に基づいて製造した滅菌懸濁液および滅菌凍結乾燥物は、非経口投与用の製剤学的配合物の構成要素にもなりうる。これらは、本発明に基づき製造された、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の少なくとも1つの滅菌懸濁液または、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の少なくとも1つの滅菌凍結乾燥物を含む。
【0106】
また、本発明に基づき製造された滅菌凍結乾燥物は、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の少なくとも1つの滅菌凍結乾燥物および、滅菌された生理学的に忍容される少なくとも1つの復元用媒質を含むキットの構成要素にもなりうる。
【0107】
本発明に基づき製造された、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液および滅菌凍結乾燥物および非経口投与用の製剤学的配合物は、哺乳類、特にヒトの疾患および病理学的状態の治療および予防に対する医薬品として使用することができる。
【0108】
これらは好ましくは、良性または悪性腫瘍性疾患の治療、男性の生殖能力制御、ホルモン療法、ホルモン依存性腫瘍性疾患、女性の生殖能力の低下または不妊、体外受精、女性の避妊、HIV感染症の治療、神経疾患または神経変性障害の治療および化学療法による副作用からの保護に用いられ、特に前立腺癌、良性前立腺肥大症(BPH))、子宮内膜症、子宮線維腫、子宮筋腫、乳癌、閉経前乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、卵巣癌、性早熟症、多毛症、多嚢胞性卵巣症候群、AIDS、ARC(エイズ関連複合体)、カポジ肉腫、脳および/または神経系および/または髄膜を原発とする腫瘍(WO99/01764号を参照)、認知症およびアルツハイマー病の治療に好ましくは用いられる。
【0109】
図面の簡単な説明
図1:本発明に基づく濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の縦断面。
【0110】
図2:本発明に基づく遠心分離の手段による減少のための生産系の縦断面。
【0111】
図3:本発明に基づく3次元濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の縦断面。
【0112】
図4:本発明に基づく中空ファイバーメンブレン濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の図式。
【0113】
好ましい装置設計の説明
図1は溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を製造するのに用いる容器1の縦断面を示す。
【0114】
図1から明らかなように、容器1は方法の段階a)i)後の滅菌溶液または段階a) ii)後の滅菌溶液に溶解した出発材料を反応させるために用いる。容器1は冷却系2a、2bに囲まれ、反応温度を調節し維持しており、冷却媒質の入口2aおよび出口2bを備える。反応構成要素とさらなる溶媒または希釈剤および添加剤を、方法段階a)からd)で混合するには撹拌機3を用いる。溶媒または溶媒混合物、イオン、過剰なカルボン酸および添加剤を、反応で得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液から減少させるにはフィルター4を用いて行われる。撹拌機3はフィルター4のすぐ上に取り付ける。容器1の上部に備え付けた装置は、給気口5または加圧6としての機能を果たす。減少をフィルター4を用いて実行する場合、結果得られた懸濁液は懸濁液出口7から排出し、減少した懸濁液の液体含量は液体出口8から排出する。容器1に備え付けられ、ヒンジ10を有する要素は、装置の下部を開くのに役立つ。容器はフレームにローラー11で固定し、装置を動かして用いられるようにする。
【0115】
図2に示す実施形態においては、溶媒または溶媒混合物、イオン、過剰なカルボン酸および添加物の、結果得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液からの減少を遠心分離によって行う場合、フィルター4を用いて分配を行うことが可能である。
【0116】
図2は、垂直の回転軸12およびローターの留め金13上の休止状態の設計における遠心分離系の縦断面である。閉鎖生産系の容器1は、冷却系2a、2bの内部に回転可能に取り付けられる。冷却系2a、2bは容器1の外側に取り付ける。この場合、容器1が遠心分離の対象になる。この実施形態において、撹拌機3は容器の底上に取り付ける。給気口5のほかにも、吸い上げ管9を取り付けて、液相を吸い上げ、これは任意には取り外し可能にするか、固定することができる。
【0117】
図3は、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を、3次元濾過分離の手段によって製造するのに使用される容器1の縦断面である。図3をから明らかなように、容器1は方法の段階a)i)後の滅菌溶液または段階a) ii)後の滅菌溶液に溶解した出発材料を反応させるために用いる。容器1は冷却系2a、2bに囲まれ、反応温度を調節し維持しており、冷却媒質の入口2aおよび出口2bを備える。反応構成要素とさらなる溶媒または希釈剤および添加剤を、方法段階a)からd)で混合するには撹拌機3を用いる。この撹拌機は3次元ロッド撹拌機であるのが有益である。溶媒または溶媒混合物、イオン、過剰なカルボン酸および添加剤を、反応で得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液から減少させるには3次元フィルター4(好ましくはフィルタードラム)を用いる。容器1の上部に備え付けた開口は、給気口5または加圧6としての機能を果たす。減少をフィルター4を用いて実行する場合、結果得られた懸濁液は懸濁液出口7から排出し、減少した懸濁液の液体含量は液体出口8から排出する。容器1に備え付けられ、ヒンジ10を有する要素は、装置を開くのに役立つ。
【0118】
図4に示す中空ファイバーメンブレンフィルター分離の手段を用いる実施形態において、溶媒または溶媒混合物、イオン、過剰なカルボン酸および添加物の、結果得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液からの減少を個別の中空ファイバーメンブレンフィルターモジュール4によって行う場合、当初の容器1のフィルターを用いて分配を行うことが可能である。
【0119】
図4は、本発明に基づく中空ファイバーメンブレン濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の図式である。容器1は方法の段階a)i)後の滅菌溶液または段階a) ii)後の滅菌溶液に溶解した出発材料を反応させるために用いる。容器1は冷却系2a、2bに囲まれ、反応温度を調節し維持しており、冷却媒質の入口2a及び出口2bを備える。反応構成要素とさらなる溶媒または希釈剤および添加剤を、方法段階a)からd)で混合するには、ポンプ14を用いて、任意には追加的に容器1に任意に取り付けられた撹拌機3を追加的に用いて、閉鎖生産系をポンピングすることによって行う。溶媒または溶媒混合物、イオン、過剰なカルボン酸および添加剤を、反応で得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液から減少させるには中空ファイバーメンブレンフィルターモジュール4を用いる。容器1の上部に備え付けた開口は、給気口5または加圧6としての機能を果たす。減少を中空ファイバーメンブレンフィルターモジュール4を用いて実行する場合、結果得られた懸濁液は懸濁液出口7から排出し、減少した懸濁液の液体含量は中空ファイバーメンブレンフィルターモジュールからの出口8から排出する。
【0120】
図5:エンボン酸セトロレリクスの懸濁液の粒子の粒径分布(2:1)
図5は、実施例1で製造され、実施例10で測定されたエンボン酸セトロレリクス懸濁液の粒子の粒径分布を示す。粒子含有率(容量%)を粒径(μm)を関数として累積プロットで示す。
【0121】
図6:種々のエンボン酸セトロレリクス配合物からのインビトロの活性成分の放出
図6は、実施例12で実施したインビトロでの放出に基づく、生理学的リンゲル液中の種々のエンボン酸セトロレリクス配合物からの活性成分の放出を示す。放出されたセトロレリクスのmgで示した各累積量(「累積放出セトロレリクス(mg)」)を、hourで示す時間(「時間(h)」)を関数で示す。以下の配合物(それぞれ2連で実施)を用いた、(i)P85P002A(本発明に基づく懸濁液)、(ii)DJ5[ドイツ特許4342092号およびFelberbaumらに基づくエンボン酸セトロレリクス(1:1.6)微粒子配合物(1998)]、(iii)9612−002/05−g(ドイツ特許10040700号に基づいて得られた懸濁液)。
【0122】
図7:テストステロン抑制の比較
図7は、実施例13で認められたテストステロンの抑制状況を示す。値はそれぞれの投与時の最初の値に正規化して示し(ベースラインの%)(0週=100%)、0週目、1週目および2週目を示す[時間(週)](試験3107:ドイツ特許10040700号に基づき製造および投与した懸濁液、試験JAP:本発明に基づき製造および投与した懸濁液)。
【0123】
言及したすべての参照文献および特許の内容は本明細書に参照として組み込まれている。本発明を以下の実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその内容に制限されるわけではない。
【0124】
実施例
実施例1:エンボン酸セトロレリクス(2:1)の滅菌懸濁液およびエンボン酸セトロレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、フィルターによる分離方法を用いた製造。
【0125】
酢酸セトロレリクス123.7gを持続的に攪拌しながら好ましい容器内の注射用水3182gに段階的に添加し溶解した。その後、96%(V/V)エタノール10270gを攪拌しながら添加した。次にエタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水で調節した。エンボン酸二ナトリウム17.0gを持続的に攪拌しながら添加し、エンボン酸二ナトリウムを完全に溶解した(=溶液1)。続いて溶液1 12963gを滅菌用フィルター(0.22μm)を用いて容器に移した(図1参照)。この容器を11±3℃まで冷却し、全方法でこの温度を維持した。あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約26544gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加し、エンボン酸セトロレリクスの懸濁液を製造した(=懸濁液1)。添加後、懸濁液1を20〜30分間攪拌した。滅菌出口バルブ(図1の液体出口8を参照)を開き、ステンレス鋼金網(公称孔径:5μm)を用いて、最初は圧力をかけずに、後には低圧(0.2バール未満)をかけて、懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約22580gを排出した後、バルブを閉鎖した。その後、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約13737gを再び濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液2)。添加後、懸濁液2を20〜30分濾過した。その後滅菌出口バルブを再び開け、前述のように懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約13910gを排出した後、出口バルブを閉鎖し、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約7686gを再び濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液3)。添加後、この懸濁液を20〜30分間攪拌した。滅菌出口バルブを再び開き、前述のように懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約15110gを排出した後、出口バルブを閉鎖した。この懸濁液8280gを第一の容器からさらに別の滅菌容器へと移し、4%(m/m)マンニトール溶液8310gを濾過滅菌しその別の攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液4)。添加後、10〜15分間撹拌し、最終的な懸濁液4を懸濁液出口バルブ(たとえば図1の懸濁液出口7を参照)を通じて10Rガラスバイアルに分配した。分配した溶液は10%以下のエタノールを含む。セトロレリクスとエンボン酸のモル比は2:1であった。満たしたバイアル(約3000本)を凍結乾燥器に入れ、約−45℃で凍結し、初期乾燥でプレート温度を−45℃から+20℃に上昇させながら、二次乾燥では約25℃で、真空中で凍結乾燥した。この凍結乾燥系を滅菌窒素でフラッシュし、系内でバイアルを好ましいストッパーで閉じて、クリンプキャップした。この凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元した。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0126】
実施例2:エンボン酸テベレリクス(2:1)の滅菌懸濁液およびエンボン酸テベレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、フィルターによる分離方法を用いた製造。
【0127】
酢酸テベレリクス115.3gを持続的に攪拌しながら好ましい容器内の注射用水3006gに段階的に添加し溶解した。その後、96%(V/V)エタノール9827gを攪拌しながら添加した。次にエタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水で調節した。エンボン酸二ナトリウム15.7gを持続的に攪拌しながら添加し、エンボン酸二ナトリウムを完全に溶解した(=溶液1)。溶液1 11802gを滅菌用フィルター(0.22μm)を用いて容器に移した(図1参照)。この容器を11±3℃まで冷却し、全方法でこの温度を維持した。あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約24203gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加し、エンボン酸テベレリクスの懸濁液を製造した(=懸濁液1)。添加後、懸濁液1を20〜30分間攪拌した。滅菌出口バルブ(図1の液体出口8を参照)を開き、ステンレス鋼金網(公称孔径:5μm)を用いて、最初は圧力をかけずに、後には低圧(0.2バール未満)をかけて、懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約18987gを排出した後、バルブを閉鎖した。その後、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約11000gを再び濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液2)。添加後、懸濁液2を20〜30分濾過した。その後再び滅菌出口バルブを開け、前述のように懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約11000gを排出した後、出口バルブを閉鎖し、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約10107gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液3)。添加後、この懸濁液を20〜30分間攪拌した。滅菌出口バルブを再び開き、前述のように懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約18303gを排出した後、出口バルブを閉鎖した。この懸濁液8262gを第一の容器からさらに別の滅菌容器へと移し、4%(m/m)マンニトール溶液3187gを濾過滅菌しその別の攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液4)。添加後、10〜15分間撹拌し、最終的な懸濁液4を懸濁液出口バルブ(たとえば図1の懸濁液出口7を参照)を通じて10Rガラスバイアルに分配した。分配する溶液は10%以下のエタノールを含む。テベレリクスとエンボン酸のモル比は2:1であった。満たしたバイアル(約3000本)を凍結乾燥器に入れ、約−45℃で凍結し、初期乾燥でプレート温度を−45℃から+20℃に上昇させながら、二次乾燥では約25℃で、真空中で凍結乾燥した。この凍結乾燥系を滅菌窒素でフラッシュし、系内でバイアルを好ましいストッパーで閉じて、クリンプキャップした。この凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元した。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0128】
実施例3:エンボン酸D−63153(2:1)の滅菌懸濁液およびエンボン酸D−63153の滅菌凍結乾燥物30mgの、フィルターによる分離方法を用いた製造。
【0129】
酢酸D−63153 118gを持続的に攪拌しながら好ましい容器内の注射用水3095gに段階的に添加し溶解した。その後、96%(V/V)エタノール10116gを攪拌しながら添加した。次にエタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水で調節した。エンボン酸二ナトリウム16.2gを持続的に攪拌しながら添加し、エンボン酸二ナトリウムを完全に溶解した(=溶液1)。続いて溶液1 12186gを滅菌用フィルター(0.22μm)を用いて容器に移した(図1参照)。この容器を11±3℃まで冷却し、全方法でこの温度を維持した。あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約24972gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加し、エンボン酸D−63153の懸濁液を製造した(=懸濁液1)。添加後、懸濁液1を20〜30分間攪拌した。滅菌出口バルブ(図1の液体出口8を参照)を開き、ステンレス鋼金網(公称孔径:5μm)を用いて、最初は圧力をかけずに、後には低圧(0.2バール未満)をかけて、懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約20140gを排出した後、バルブを閉鎖した。その後、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約11900gを再び濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液2)。添加後、懸濁液2を20〜30分濾過した。その後再び滅菌出口バルブを開け、前述のように懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約11900gを排出した後、出口バルブを閉鎖し、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約9263gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液3)。添加後、この懸濁液を20〜30分間攪拌した。滅菌出口バルブを再び開き、前述のように懸濁液を濃縮した。透明な濾過物約17186gを排出した後、出口バルブを閉鎖した。この懸濁液8535gを第一の容器からさらに別の滅菌容器へと移し、4%(m/m)マンニトール溶液3283gを濾過滅菌しその別の攪拌しながら容器へと添加した(=懸濁液4)。添加後、10〜15分間撹拌し、最終的な懸濁液4を懸濁液出口バルブ(たとえば図1の懸濁液出口7を参照)を通じて10Rガラスバイアルに分配した。分配する溶液は10%以下のエタノールを含む。D−63153とエンボン酸のモル比は2:1であった。満たしたバイアル(約3000本)を凍結乾燥器に入れ、約−45℃で凍結し、初期乾燥でプレート温度を−45℃から+20℃に上昇させながら、二次乾燥では約25℃で、真空中で凍結乾燥した。この凍結乾燥系を滅菌窒素でフラッシュし、系内でバイアルを好ましいストッパーで閉じて、クリンプキャップした。この凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元した。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0130】
実施例4:エンボン酸セトロレリクス(2:1)の滅菌懸濁液およびエンボン酸セトロレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、遠心分離による分離方法を用いた製造。
【0131】
酢酸セトロレリクス1.85gを持続的に攪拌しながら好ましい容器内の注射用水47mLに溶解した。その後、96%(V/V)エタノール128mLを攪拌しながら添加した。次にエタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水で調節した(=溶液1)。エンボン酸二ナトリウム0.24gを攪拌しながらこの溶液1 150mLに添加した。添加後攪拌を10〜15分間続け、エンボン酸二ナトリウムを完全に溶解した。遠心分離器(図2を参照)の各ケースに8〜10個の容器を入れ、この溶液2.4mLを滅菌濾過(0.22μm)しながら遠心分離用容器に入れた。次に各遠心分離用容器に注射用水5.6mLを攪拌しながら添加し、懸濁液を製造した(=懸濁液1)。10分間攪拌した後、撹拌機を停止した。遠心分離装置全体を、全製造方法で4〜16℃で制御し、遠心分離を9500gで約0.5分間実行した。その後、透明な上澄み液5mLを滅菌的に各遠心分離容器から吸い上げ管を用いて減少させ、注射用水約5mLを再び各容器に添加して攪拌した(=懸濁液2)。その後、遠心分離を約13000gで約0.5分間実行した。その後、上澄み液5mLを滅菌的に各遠心分離容器から吸い上げ管を用いて減少させ、注射用水約5mLを再び各容器に添加して攪拌した(=懸濁液3)。最後に、懸濁を約13000gで約0.5分間実行し、上澄み液5mLを各遠心分離容器から滅菌的に減少した。その後、12.5%(w/w)滅菌マンニトール溶液2mLを、各遠心分離容器の懸濁液に攪拌しながら添加し、5%マンニトールを含む等張性懸濁液を得た(=懸濁液4)。その後最終的な懸濁液4を遠心分離用容器から10Rバイアル(5mL)へと無菌的に分配した。上述の手順を新しい遠心分離用容器で反復して、溶液1をすべて反応させた。セトロレリクスとエンボン酸塩のモル比は2:1であった。結果得られた約60本のバイアルを凍結乾燥器に入れ、約−45℃で凍結し、初期乾燥でプレート温度を−45℃から+20℃に上昇させながら、二次乾燥では約25℃で、真空中で凍結乾燥した。この凍結乾燥系を滅菌窒素でフラッシュし、系内でバイアルを好ましいストッパーで閉じて、クリンプキャップした。この凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元した。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0132】
実施例5:パルミチン酸セトロレリクス(1:1)の滅菌懸濁液およびパルミチン酸セトロレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、遠心分離による分離方法を用いた製造。
【0133】
酢酸セトロレリクス1.85gを攪拌しながら好ましい容器内の注射用水47mLに溶解した。その後、96%(V/V)エタノール128mLを攪拌しながら添加し、エタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水で調節した(=溶液1)。パルミチン酸0.3gを攪拌しながらこの溶液1 150mLに添加した(=溶液2)。添加後攪拌を10〜15分間続けた。遠心分離器の各ケースに8〜10個の容器を入れ、各ケース中の溶液2 2.4mLを滅菌濾過(0.22μm)し、1つの遠心分離用容器に入れた。次に注射用水5.6mLを攪拌しながら添加し、懸濁液を製造した(=懸濁液1)。その後、実施例4に記載のように処理を実行したが、遠心分離はすべて約19000gで約15分間実行した。セトロレリクスとパルミチン酸塩のモル比は1:1であった。凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元した。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0134】
実施例6:クエン酸セトロレリクス(1:1)の滅菌懸濁液およびクエン酸セトロレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、遠心分離による分離方法を用いた製造。
【0135】
酢酸セトロレリクス1.85gを攪拌しながら好ましい容器内の注射用水47mLに溶解した。その後、96%(V/V)エタノール128mLを攪拌しながら添加し、エタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水で調節した(=溶液1)。クエン酸一水和物0.24gを攪拌しながらこの溶液1 150mLに添加した(=溶液2)。添加後攪拌を10〜15分間続けた。遠心分離器の各ケースに8〜10個の容器を入れ、各ケース中の溶液2 2.4mLを滅菌濾過(0.22μm)し、1つの遠心分離用容器に入れた。次に注射用水5.6mLを攪拌しながら添加し、懸濁液を製造した(=懸濁液1)。その後、実施例4に記載のように処理を実行したが、遠心分離はすべて約19000gで約15分間実行した。セトロレリクスとクエン酸のモル比は1:1であった。凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元した。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0136】
実施例7:エンボン酸セトロレリクス(2:1)の滅菌懸濁液およびエンボン酸セトロレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、3次元フィルターによる分離方法を用いた製造。
【0137】
酢酸セトロレリクス44.02gを持続的に攪拌しながら第一の好ましい容器内の注射用水約1149gに段階的に添加し溶解する。その後、92%(m/m)エタノール3798gを攪拌しながら添加する。次にエタノール含量が70%(m/m)になるように注射用水0.17gで調節する(=溶液1)。エンボン酸二ナトリウム6.15g[86%(m/m)]を持続的に攪拌しながら添加し、エンボン酸二ナトリウムを完全に溶解する(=溶液2)。溶液2 4850.0gを滅菌用フィルター(0.22μm)を用いて別の容器(図3参照)に移す。この容器を11±3℃まで冷却し、全方法でこの温度を維持する。あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約9700gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加し、エンボン酸セトロレリクスの懸濁液を製造する(=懸濁液1)。添加後、懸濁液1を20〜30分間攪拌する。滅菌出口バルブ(図3の液体出口8を参照)を開き、ステンレス鋼金網(3次元フィルタードラム、公称孔径:3μm)を用いて、最初は大気圧で、後にはわずかに圧力(0.2バール未満)をかけて、懸濁液を濃縮する。透明な濾過物約8639gを排出した後、バルブを閉鎖する。その後、あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約5523gを再び濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加する(=懸濁液2)。添加後、懸濁液2を約10分攪拌する。その後再び滅菌出口バルブを開け、前述のように懸濁液を濃縮する。透明な濾過物約5469gを排出した後、出口バルブを閉鎖する。
【0138】
あらかじめ冷却した注射用水(11±3℃)約1956gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加する(=懸濁液3)。添加後、懸濁液3を約10分間攪拌する。滅菌出口バルブを再び開き、前述のように懸濁液を濃縮する。透明な濾過物約4338gを排出した後、出口バルブを閉鎖する。その後、7.4%(m/m)マンニトール溶液1560.1gを濾過滅菌し攪拌しながら容器へと添加する(=懸濁液4)。添加後、さらに10〜15分間撹拌し、最終的な懸濁液4を懸濁液出口バルブ(図3の懸濁液出口7を参照)を通じて10Rガラスバイアルに分配する。分配する溶液は10%以下のエタノールを含む。セトロレリクスとエンボン酸のモル比は2:1である。満たしたバイアルを凍結乾燥器に入れ、約−45℃で凍結し、初期乾燥でプレート温度を−45℃から+20℃に上昇させながら、二次乾燥では約25℃で、真空中で凍結乾燥する。この凍結乾燥系を滅菌窒素でフラッシュし、系内でバイアルを好ましいストッパーで閉じて、クリンプキャップする。この凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元する。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0139】
実施例8:エンボン酸セトロレリクス(2:1)の滅菌懸濁液およびエンボン酸セトロレリクスの滅菌凍結乾燥物30mgの、中空ファイバーメンブレンフィルターによる分離方法を用いた製造。
【0140】
実施例1のようにエンボン酸セトロレリクスの懸濁液1を好ましい最初の容器(図4に示す閉鎖生産系の構成要素)で製造する。製造した懸濁液1約3540gを11±3℃にあらかじめ冷却しておき、生産系(図4を参照)を介して中空ファイバーメンブレンフィルター(PVDF中空ファイバーメンブレンフィルター付のUMP−153 Pall Microzaモジュール、公称孔径:0.2μm、Pall Corporation)で混合しながら閉鎖循環中でポンピングする。最初の容器はあらかじめ11±3℃に冷却し、全方法でこの温度を維持する。混合は、任意には初期容器に存在するポンプ/ポンプ系および/または撹拌機によって行う。エンボン酸セトロレリクスの懸濁液が持続的にフィルターメンブレンを通過する分離方法を達成し、透明な濾過物がフィルターメンブレン上に分離される(減少)。濾過物の初期量2122.7gを分離した後、あらかじめ11±3℃に冷却した注射用水1343.9gを生産系に混合しながら入れ、分離方法を続行する。濾過物の二次量1349.9gを分離し、あらかじめ11±3℃に冷却した注射用水485.6gを初期の容器に入れて混合しながら、持続的な分離方法を続行し、濾過物の三次量1903.1gを分離する。最終的なエンボン酸セトロレリクスの懸濁液を実施例1に記載のように滅菌マンニトール溶液と混合して、10Rガラスバイアルに分配する。分配する溶液は10%以下のエタノールを含む。セトロレリクスとエンボン酸のモル比は2:1である。満たしたバイアルを凍結乾燥器に入れ、約−45℃で凍結し、初期乾燥でプレート温度を−45℃から+20℃に上昇させながら真空中で、二次乾燥では約25℃で凍結乾燥する。この凍結乾燥系を滅菌窒素でフラッシュし、系内でバイアルを好ましいストッパーで閉じて、クリンプキャップする。この凍結乾燥物をバイアル毎に注射用水2mLを用いて復元する。ゆっくりと旋回させて得られた懸濁液は皮下投与または筋肉内投与することができる。
【0141】
実施例9:セトロレリクス塩基およびテベレリクス塩基のpHの測定
セトロレリクス塩基およびテベレリクス塩基の飽和溶液のpHの測定を、inoLabのWTW pH meter level 1 pH meterおよびMetrohmのIdrolyte, pH1 − 11; 0℃−60℃、注文番号6.0224.100電極を用いて室温(22℃)で実施した。
【0142】
注射用水合計1.5mLをバイアル中のセトロレリクス塩基74.56mgに添加し、混濁したきわめて粘性の高い溶液が製造されるまで攪拌した。この溶液のpHを24時間後まで異なる時間に測定した。pHは約25分後にプラトー(pH=12.2)に達し、24時間後にも同じ値であった。注射用水(ブランク)のpHは6.5であった。
【0143】
注射用水合計0.75mLをバイアル中のテベレリクス塩基47.26mgに添加し、飽和した透明なきわめて粘性の高い溶液が製造されるまで攪拌した。この溶液のpHを24時間後まで異なる時間に測定した。pHは約30分後にプラトー(pH=8.3)に達し、24時間後にも同じ値であった。注射用水(ブランク)のpHは6.5であった。
【0144】
実施例10:エンボン酸セトロレリクス(2:1)の懸濁液の粒子の粒径分布の測定
エンボン酸セトロレリクス(2:1)の懸濁液の粒子の粒径分布の測定を、レーザー回折法によって、Master Sizer X 、小容量ユニットであるMSX 1およびMalvern Instrumentsの「フローセル」を用いて、以下のパラメータ:焦点:300mm(1.2〜600μm)、多分散系モデル、活性ビーム長:2.4mm、不明瞭性:10〜20%、分散媒:水、攪拌速度:3250rpm(レベル:6.5)で実施した。
【0145】
実施例1で製造されたエンボン酸セトロレリクス(2:1)の懸濁液から、フィルターを用いた分離方法を実施する前に、十分量の懸濁液を攪拌しながら注射用水95mLに添加し、それをMSX 1攪拌セルに入れ、不明瞭性を10〜20%とした。攪拌をさらに1.5分間続行して、攪拌しながら測定を実施した。図5は、粒径分布の測定結果を示す。単峰形分布であるのは、エンボン酸セトロレリクスペプチド複合体の粒子の凝集がなく、再懸濁ができないか、部分的にしか再懸濁できない沈渣物がないことの証明である。測定された粒径分布に基づき、ステンレス鋼金網(公称孔径:5μm)を分離方法のフィルターとして使用した。
【0146】
実施例1に記載のとおり製造したエンボン酸セトロレリクス(2:1)の凍結乾燥物30mgを、注射用水2mL中で同様に復元し、ゆっくりと3分間旋回させて懸濁液を製造し、同様に粒径分布を測定した。単峰形分布であることは、エンボン酸セトロレリクスペプチド複合体の粒子の凝集がなく、凍結乾燥物が完全に再懸濁可能であることを証明するものである。
【0147】
実施例11:種々のエンボン酸セトロレリクス配合物の安定性の測定
下記の種々のエンボン酸セトロレリクス配合物の安定性を、その不均質性すなわち、肉眼で認識できる2相混合物の発生のタイミングに関して調査した。
A)P85P002A(本発明に基づく懸濁液)
B)D−20762−PRT/a [ドイツ特許4342092号に基づくエンボン酸セトロレリクス(1:1.6)微粒子配合物]
C)D−20762−PRT/a [Felberbaumら(1998)に基づくエンボン酸セトロレリクス(1:1.6)微粒子配合物]
A)およびB)の場合は注射用水2mL、C)の場合はSM1媒質2mL [マンニトール176.5mg、ポリソルベート80 21.1mg、カルボキシメチルセルロースナトリウム83.9mg、水酸化ナトリウム31.4〜52.5mg(0.1N溶液)および注射用水4.3gまで]で凍結乾燥物で配合物を復元し、約1〜2分間旋回させて、15分間かけて安定性を肉眼で観察した。
【0148】
第1表は、上記のエンボン酸セトロレリクス配合物の種々の時間における安定性を肉眼で観察した結果を示す。
【0149】
【表1】

【0150】
表1を見れば、本発明に基づく懸濁液A)が対象期間を通じて安定であり、2相の混合物を形成するような不均質性は認められないことは明確である。これに対し、微粒子配合物B)およびC)では、明らかな沈渣物の形成が認められる2相の混合物が即時またはきわめて迅速に形成される不均質性が認められる。
【0151】
実施例12:種々のエンボン酸セトロレリクス配合物からの活性成分のインビトロでの放出
種々のエンボン酸セトロレリクス配合物からの活性成分のインビトロでの放出を以下のように実施した。Erweka社のERWEKA DFZ60フローセルシステムを使用した。セルサイズは各ケースで22.6mmであった。使用したフロー媒質は生理学的リンゲル溶液(注射用水1L中に8.6g AsCl + 0.3g KCl + 0.25g CaCl2)で、流量は0.3mL/分とした。温度は実験を通して37℃であった。
【0152】
Sartorius社のガラスビーズ(直径:0.4〜0.6mm)を用いた。フローセルは層の下から上へと各ケースで、直径5mmのガラス球、約2cmの吸収性コットン、ガラスフリット(直径:2.5cm)、約6gのガラスビーズの層で作成し、そのなかで皮下針(φ0.90×40mm)付2mL使い捨てシリンジで復元した配合物をそれぞれ均一に分布させ、ガラスビーズ1〜2gで追加の層を作成した。
【0153】
下記のエンボン酸セトロレリクス配合物30mgを個々の2連の測定で使用した。(i)P85P002A(本発明に基づく懸濁液)、(ii)DJ5 [ドイツ特許4342092号およびFelberbaumら(1998)に基づくエンボン酸セトロレリクス(1:1.6)微粒子配合物]、(iii)9612−002/05−g(ドイツ特許10040700号に基づき得ることのできる懸濁液)。
【0154】
P85P002Aおよび9612−002/05−gはそれぞれ凍結乾燥物として注射用水2mLで復元し、1〜2分間旋回させた後、ガラスビーズの層に注入した。DJ5はSM1媒質[マンニトール176.5mg、ポリソルベート80 21.1mg、カルボキシメチルセルロースナトリウム83.9mg、水酸化ナトリウム31.4〜52.5mg(0.1N溶液)および注射用水4.3gまで)]2mLで復元し、同様に1〜2分間旋回させた後、注入した。すでにフローセルシステムを流していたフロー媒質の分画を191時間かけて回収し、各ケースで放出されたセトロレリクスの量をセトロレリクス外部標準物質を用いてHPLCで測定した。HPLC測定の結果を、191時間全体で放出された活性成分のそれぞれの累積量として図6に示す。本発明に基づく懸濁液の活性成分の放出が明らかに優れていることは明白である。
【0155】
実施例13:男性におけるテストステロン抑制の比較
ドイツ特許10040700号に従って製造したエンボン酸セトロレリクス(2:1)の凍結乾燥物60mgをよび本発明に基づき製造したエンボン酸セトロレリクス(2:1)の凍結乾燥物60mgをそれぞれ注射用水4mLで復元し、筋肉内投与量として男性に非経口投与した。到達したセトロレリクス血漿濃度およびテストステロンの抑制状態を、いずれの配合物でも1週間および2週間後に測定し、投与時の初期値(0週)と比較した(試験3107:ドイツ特許10040700号に基づき製造および投与した懸濁液、試験JAP:本発明に基づき製造および投与した懸濁液)。
【0156】
図7は正規化した測定したテストステロンの抑制状態を示した(投与時の各ケースの初期値(0週)=100%)。
【0157】
本発明に基づき製造した懸濁液により有益にホルモンを抑制できることは、図7から明らかである。このように、本発明に基づく懸濁液は、1週間後も2週間後も著明なホルモン抑制をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、本発明に基づく濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の縦断面を示している
【図2】図2は、本発明に基づく遠心分離の手段による減少のための生産系の縦断面を示している
【図3】図3は、本発明に基づく3次元濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の縦断面を示している
【図4】図4は、本発明に基づく中空ファイバーメンブレン濾過分離の手段による減少のための閉鎖生産系の図式を示している
【図5】図5は、エンボン酸セトロレリクスの懸濁液の粒子の粒径分布(2:1)を示すグラフである
【図6】図6は、種々のエンボン酸セトロレリクス配合物からのインビトロの活性成分の放出を示すグラフである
【図7】図7は、テストステロン抑制の比較を示すグラフである
【符号の説明】
【0159】
1 容器、 2a、2b 冷却系、 3 撹拌機、 4 フィルター、 5 吸気口、 6 加圧、 7 懸濁液出口、 8 液体出口、 9 吸い上げ管、 10 ヒンジ、 11 ローラー、 12 回転軸、 13 留め金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液の製造方法において、滅菌条件下で
a)i)塩基性ペプチドの塩または複合体および脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩を含む滅菌溶液を溶媒または溶媒混合物中で、任意には溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤を添加しつつ混合するか、または
ii)溶媒または溶媒混合物中の塩基性ペプチドの塩または複合体の滅菌溶液と溶媒または溶媒混合物中の脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩の滅菌溶液を、任意には溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤を添加しつつ合わせて混合し、
b)1つ以上の段階における希釈剤または希釈剤混合物の混合及び添加をしつつ、希釈剤または希釈剤混合物の添加後に最終的に沈殿する、塩基性ペプチドとカルボン酸との溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液を製造し、
c)持続的または段階的な分離方法において混合しつつ、得られた懸濁液を、溶媒または溶媒混合物、遊離型非ペプチドイオン、過剰なカルボン酸および任意に添加した溶解性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤について減少させ、懸濁液の液体成分を低減させ、任意には1つ以上の段階でさらに希釈剤または希釈剤混合物を添加し、かつ
d)上記で得られる溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を混合しつつ、任意には製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、段階a) ii)において、塩基性ペプチドの塩または複合体の滅菌溶液および脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩の滅菌溶液が同じ溶媒または溶媒混合物中に存在することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、段階a)において、塩基性ペプチドの塩または複合体および脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩を含む溶媒または溶媒混合物中の滅菌溶液を混合し、任意には可溶性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤添加しつつ混合することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、段階a)の滅菌溶液を、
a)塩基性ペプチドの塩または複合体を溶媒または溶媒混合物に溶解し、
b)固形、懸濁物または溶解物の形態をとる脂肪族または芳香族の有機カルボン酸および/またはその塩を、混合しつつ、段階a)で得られた塩基性ペプチドの塩または複合体の溶液に添加し、溶解させ、
c)上記で得られた溶液を濾過滅菌することによって製造することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法において、段階c)における分離方法で混合しつつ、1つ以上、好ましくはそれ以上の段階で希釈剤または希釈剤混合物を添加することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法において、段階b)および段階c)において、同じ希釈剤または希釈剤混合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物の製造方法において、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法の段階c)またはd)において、得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を凍結乾燥させ、任意にはその得られた凍結乾燥物に製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項8】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の非経口投与に好ましい滅菌懸濁液の製造方法において、請求項7に記載の方法によって得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物を、生理学的に認容可能な復元用の媒質で復元することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法において、塩基性ペプチドが、2〜50個、好ましくは5〜20個、特に好ましくは9〜10個の天然産生および/または合成のアミノ酸からなり、1つ以上の塩基性アミノ酸および/または少なくとも1つの塩基性基を含み、全体的に塩基性の特徴を有するペプチドであり、好ましくは塩基性ペプチドはLHRH類似体であり、特に好ましくはいわゆるLHRHスーパーアゴニストであるゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリンおよびLHRHアンタゴニストであるアバレリクス、アンチド、アザリンB、A−75998、セトロレリクス、デガレリクス、デチレリクス、オザレリクス(D−63153)、ガニレリクス、Nal−Gluアンタゴニスト、ラモレリクス、RS−68439、テベレリクスおよび一般式(I)
【化1】

の化合物に基づくLHRHアンタゴニストであって、式中、nは3または4であり、R1はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、アラルキルオキシ基またはヘテロアラルキルオキシ基の非置換型または置換型であり、R2およびR3はそれぞれ互いに無関係に水素原子、アルキル基、アラルキル基またはヘテロアラルキル基の非置換型または置換型であって、そのうち置換型はここでもアリール基またはヘテロアリール基からなってよく、または−NR23はアミノ酸基であり、R4は式(II)
【化2】

を有する基であって、式中、pは1〜4の整数であり、R5は水素またはアルキル基であり、R6は非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基であるか、R4は一般式(III)
【化3】

の環であって、式中、qは1または2であり、R7は水素原子またはアルキル基であり、R8は水素原子またはアルキル基であり、Xは酸素または硫黄原子であって、そのうち芳香族またはヘテロ芳香族の基が部分的または完全に水素化されていてよく、キラル炭素原子がRまたはSの立体配置を有していてよいLHRHアンタゴニスト、
一般式(IV)
Ac−D−Nal(2)−D−(pCl)Phe−D−Pal(3)−Ser−Tyr−D−Xxx−Leu−Arg−Pro−D−Ala−NH2 (IV)
の化合物に従うLHRHアンタゴニストであって、式中、D−Xxxは一般式(V)
【化4】

のアミノ基であって、式中、nは3または4であり、R4は式(VI)
【化5】

を有する基であって、式中、pは1〜4の整数であり、R5は水素またはアルキル基であり、R6は非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基であるか、R4は一般式(VII)
【化6】

の環であって、式中、qは1または2であり、R7は水素原子またはアルキル基であり、R8は水素原子またはアルキル基であり、Xは酸素または硫黄原子であるLHRHアンタゴニスト、および
以下の一般式(VIII)
A−Xxx1−Xxx2−Xxx3−Xxx4−Xxx5−Xxx6−Xxx7−Xxx8−Xxx9−Xxx10−NH2 (VIII)
の化合物に基づくLHRHアンタゴニストであって、式中、Aはアセチルまたは3−(4−フルオロフェニル)プロピオニル基であり、Xxx1はD−Nal(1)またはD−Nal(2)であって、Xxx2−Xxx3はD−Cpa−D−Pal(3)または単結合であり、Xxx4はSerであり、Xxx5はN−Me−Tyrであり、Xxx6はD−Cit、D−Hciまたは一般式(IX)
【化7】

のD−アミノ酸基であって、式中、nは3または4であり、R1は一般式(X)
−(CH2)p−CO−NR23 (X)
を有する基であって、式中、pは1〜4の整数であり、R2は水素またはアルキル基であり、R3は非置換または置換のアリール基またはヘテロアリール基であり、R1は3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボニル基であるか、R1は一般式(XI)
【化8】

の環であって、式中、qは1または2であり、R4は水素原子またはアルキル基であり、R5は水素原子またはアルキル基であり、Xは酸素または硫黄原子であり、
Xxx7はLeuまたはNleであり、
Xxx8はArgまたはLys(iPr)であり、
Xxx9はProであり、
Xxx10はAlaまたはSarであるLHRHアンタゴニストからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、塩基性ペプチドがセトロレリクス、オザレリクス(D−63153)およびテベレリクスからなる群から選択されるLHRHアンタゴニストであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法において、脂肪族または芳香族の有機カルボン酸が炭素原子2〜30個からなる分枝鎖または非分枝鎖、飽和または不飽和の脂肪族の有機カルボン酸または芳香族の有機カルボン酸であり、該芳香族のカルボン酸が、1つ以上の芳香環系からなり、縮合または非縮合および、芳香環系で置換または非置換であってよく、好ましくは「アジピン酸、アルギニン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、ベンゼン−スルホン酸、コハク酸、ジブチルリン酸、ジヘキサデシルリン酸、ジオクチルリン酸、酢酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、αリポ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、オクチルリン酸、オレイン酸、酒石酸」からなる群からのカルボン酸、特に好ましくは「エンボン酸、クエン酸、パルミチン酸、サリチル酸、タンニン酸、ステアリン酸、安息香酸、桂皮酸」からなる群からのカルボン酸であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、脂肪族または芳香族の有機カルボン酸が、「エンボン酸、クエン酸、パルミチン酸」からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法において、溶媒として、水、エタノール、酢酸、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、アセトンまたはメチルエチルケトンを使用するか、または溶媒混合物として、前記溶媒の2つ以上の混合物を使用するが、好ましくは水分含有率が1〜90%であり、好ましくは4〜80%である水性溶媒混合物であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、溶媒混合物として、エタノール含有率が10〜99%(m/m)、好ましくは20〜96%(m/m)、好ましくは50〜90%(m/m)、特に好ましくは約70%(m/m)である水−エタノール混合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法において、希釈剤として、水、エタノール、酢酸、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、アセトンまたはメチルエチルケトンを使用するか、または希釈剤混合物として、これらの希釈剤の2つ以上の混合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、希釈剤として水を使用することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の方法において、段階a)で使用される塩基性ペプチドの塩または複合体が、溶解しにくくない塩、または溶解しにくくない複合体であり、好ましくは「酢酸塩、塩酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、アスパラギン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩」からなる群から選択される塩または複合体であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の方法において、溶解しにくい塩基性ペプチド複合体において、塩基性ペプチドとカルボン酸とのモル比が、100:1から1:100の間、好ましくは20:1から1:20の間、さらに好ましくは5:1から1:5の間、特に好ましくは2:1から1:2の間のすべての値をとりうることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項記載の方法において、該方法の段階a)において、可溶性を高めるおよび/または凝集を抑制する作用を有する添加剤を添加しないことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の方法において、方法段階a)からd)の実施を、1つの同じ容器で行い、該容器が任意には取り外し可能な混合用装置を有してよいことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか1項記載の方法において、方法段階a)からd)の実施を、2つ以上の容器で行い、各容器が任意には取り外し可能な混合用装置を有してよく、2つ以上の方法段階を1つの容器で実施してよいことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項記載の方法において、段階c)の分離方法において、減少を、フィルターの使用によって、フィルターの篩過サイズおよび/または保持範囲に基づき行うことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、フィルターとして、保持範囲が1〜250μm、好ましくは2〜100μm、特に好ましくは3〜30μmのステンレス鋼金網を使用することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、フィルターが、「メンブレン、メンブレンフィルター」からなる群から選択され、好ましくは、1つ以上の中空ファイバーメンブレンが「プラスチック、ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、PTFE、PVDF、ポリスルホン」から、好ましくはPVDFおよび/またはポリスルホンからなる群から選択された材料からなり、篩過サイズおよび/または保持範囲が0.1〜250μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは0.1〜30μmであることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22から24までのいずれか1項記載の方法において、減少を、加圧によって実施することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22から25までのいずれか1項記載の方法において、段階c)の分離方法において、混合を、フィルター上に取り付けられた、任意には取り外し可能である混合用装置によって実施し、この装置が好ましくは撹拌機であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項22から25までのいずれか1項記載の方法において、段階c)の分離方法において、混合を、ポンプによって、任意には追加的に取り外し可能な混合用装置によって実施し、この装置が好ましくは撹拌機であることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1から21までのいずれか1項記載の方法において、段階c)の分離方法において、減少を、遠心分離によって実施し、この遠心分離を1つ以上の段階で実施してよいことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項1から28までのいずれか1項記載の方法において、懸濁液または凍結乾燥物に「マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、グルコース、可溶デンプン、スクロースおよびサッカロース」からなる群から選択される製剤学的な助剤、担体および/または増量剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項1記載の方法において、
a)「セトロレリクス、テベレリクス、オザレリクス(D−63153)」からなる群から選択されるLHRHアンタゴニストの酢酸塩および「エンボン酸、クエン酸、パルミチン酸」からなる群から選択されるカルボン酸の塩を含有する滅菌溶液を、50〜90%(m/m)、特には約70%(m/m)のエタノール含量を有する水性エタノール溶媒混合物中で混合し、
b)混合し、かつ1つ以上の段階において希釈剤として水を添加しつつ、塩基性ペプチドとカルボン酸との溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の懸濁液を製造し、その溶解しにくい塩基性ペプチド複合体において塩基性ペプチドとカルボン酸とのモル比は2:1〜1:2の間の値をとり、
c)混合し、かつ1つ以上の段階でさらなる希釈剤として水をさらに添加しつつ、任意には加圧しつつ、段階b)で得られた懸濁液を、保持範囲が2〜100μm、好ましくは3〜30μmのステンレス鋼金網フィルターを使用して、エタノール、遊離型非ペプチドイオンおよび過剰なカルボン酸について減少させ、懸濁液の液体含量を低減させ、
d)こうして得られた溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液を混合しつつ、増量剤としてマンニトールを含有する(滅菌)溶液を添加し、そのうち方法段階a)からd)を1つの同じ容器または2つの容器で実施し、混合を好ましい撹拌機によって行うことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、段階c)でフィルターとして、好ましくはPVDFおよび/またはポリスルホンからなり、篩過サイズおよび/または保持範囲が0.1〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特に好ましくは0.2μmである、1つ以上の中空ファイバーメンブレンを使用し、混合をポンプによって、かつ任意には追加的に取り外し可能である混合用装置によって実施し、この装置が好ましくは撹拌機であることを特徴とする方法。
【請求項32】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物の製造方法において、請求項30および31のいずれかに記載の方法の段階d)において、得られた滅菌懸濁液を凍結乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項33】
溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の非経口投与に好ましい滅菌懸濁液の製造方法において、請求項32に記載の方法によって得られる凍結乾燥物を、注射用水で復元することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項1〜6、8〜31および33のいずれかに記載の方法で得られる溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液。
【請求項35】
請求項7、9〜32のいずれかに記載の方法によって得られる溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物。
【請求項36】
請求項34に記載の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の少なくとも1つの滅菌懸濁液または、請求項35に記載の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の少なくとも1つの滅菌凍結乾燥物を含有する、非経口投与用の製剤学的配合物。
【請求項37】
請求項35に記載の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の少なくとも1つの滅菌凍結乾燥物および、少なくとも1つの滅菌された生理学的に認容可能な復元用媒質を含むキット。
【請求項38】
請求項34に記載の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌懸濁液または請求項35に記載の溶解しにくい塩基性ペプチド複合体の滅菌凍結乾燥物または請求項36に記載の非経口投与用の製剤学的配合物を医薬品として用いる使用。
【請求項39】
良性または悪性腫瘍性疾患の治療、男性の生殖能力制御、ホルモン療法、ホルモン依存性腫瘍性疾患、女性の生殖能力の低下または不妊、体外受精、女性の避妊、HIV感染症の治療、神経疾患または神経変性疾患の治療および化学療法による副作用からの保護に用いる、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前立腺癌、良性前立腺肥大症(BPH)、子宮内膜症、子宮線維腫、子宮筋腫、乳癌、閉経前乳癌、子宮癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、卵巣癌、性早熟症、多毛症、多嚢胞性卵巣症候群、AIDS、ARC、カポジ肉腫、脳および/または神経系および/または髄膜を原発とする腫瘍、認知症およびアルツハイマー病の治療のために用いる、請求項38または39のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−524284(P2008−524284A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547293(P2007−547293)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013553
【国際公開番号】WO2006/069641
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.テフロン
【出願人】(503300502)ツェンタリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (25)
【氏名又は名称原語表記】Zentaris GmbH
【住所又は居所原語表記】Weismuellerstrasse 50,D−60314Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】