説明

らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法

【課題】鋼繊維は使用せずにコンクリート製らせん状突起を有するプレストレス導入コンクリート杭を容易に製造できるらせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法を提供すること。
【解決手段】緊張されたPC鋼棒または鉄筋が配置された型枠にコンクリートを投入して遠心成型し、所定時間養生した後、プレストレス導入時または脱型時にコンクリート製らせん状突起及びその周辺に亀裂が生じない程度のプレストレス量を与え、続いて脱型することを特徴とするコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレボーリング回転埋設工法に使用するコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを鋼繊維で補強した連続したらせん羽根を有するねじり貫入式PCらせん杭(特公昭58−54211号)が提案されており、昭和50年代からは実際にAJパイルの商品名で製造されていた。
しかしながら、上記のPCらせん杭は、羽根の強度を高めるためにコンクリート用原料としては高価な鋼繊維を使用しており、またこの材を計量・投入する設備も必要となり、コンクリートの製造コストが大幅にアップしてしまう。
【特許文献1】特公昭58−54211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、らせん状突起の強度を高めるために鋼繊維は使用せずにプレストレス導入コンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭を容易に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、有効プレストレス量を2.0N/mm以下にすることが、プレストレス導入時や脱型時におけるコンクリート製らせん状突起やその周辺部での亀裂や欠けの発生を抑え、杭本体に対するコンクリート製らせん状突起側面角度の鋭角化に効果的であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0005】
すなわち本発明は、下記の通りである。
(1)ほぼ一回転から数回転分のコンクリート製らせん状突起を杭先端付近に少なくとも一個以上有するコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法において、緊張されたPC鋼棒または鉄筋が配置された型枠にコンクリートを投入して遠心成型し、所定時間養生した後、プレストレス導入時にコンクリート製らせん状突起及びその周辺に亀裂が生じない程度の有効プレストレス量を与え、続いて脱型することを特徴とするコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
(2)有効プレストレス量を0.3から2.0N/mmとすることを特徴とする(1)記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
(3)脱型後オートクレーブ養生することを特徴とする(1)乃至(2)記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
(4)コンクリート製らせん状突起側面の角度が、杭本体長さ方向側面に対して90度以上130度以下であることを特徴とする(1)乃至(3)記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
(5)コンクリート製らせん状突起の間隔が、5m以下であることを特徴とする(1)乃至(4)記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
(6)(1)乃至(5)記載の製造方法により得られることを特徴とするコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鋼繊維は使用せずに杭本体に対する突起側面の角度が鋭角なコンクリート製らせん状突起を有するプレストレス導入コンクリート杭を容易に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
該遠心成型によるコンクリート杭の製造工程では、緊張されたPC鋼棒または鉄筋が配置された横置きして回転させる型枠内にコンクリートを投入し、高速回転によって締固めを行い、その後、所定時間蒸気養生を行なった後に脱型を行なう。養生を行なった後にプレストレスの導入を行なうが、応力を開放された型枠は伸びる方向、逆に製品の方はストレスを導入されて縮む方向となる。杭に突起が有るとそこに応力が集中し、欠けや亀裂が発生し易くなる。従って、プレストレス導入時にコンクリート製らせん状突起及びその周辺に亀裂が生じない程度の有効プレストレス量を与えるようにしてプレストレスを導入する。特に、有効プレストレス量を2.0N/mm以下にすることが、プレストレス導入時や脱型時におけるコンクリート製らせん状突起やその周辺部での亀裂や欠けの発生を抑え、杭本体に対するコンクリート製らせん状突起側面角度の鋭角化に効果的である。 本発明のコンクリート製突起付杭の製造に使用されるセメントは特に限定しないが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメントなどが好ましい。
【0008】
また、減水剤の種類は特に限定しないが、一般にコンクリート用として市販されているナフタレンスルホン酸系の減水剤(例えば商品名「マイティ150」)、ポリカルボン酸系の減水剤(例えば商品名「レオビルドSP8HU」)などを使用することができる。
さらに骨材としては、従来のコンクリートに使用されている砕砂、砂のような細骨材、砕石、砂利のような粗骨材を使用することができる。
本発明で使用するコンクリートにおけるセメントの配合量は、コンクリート1mあたり300〜1200kgが好ましく、さらに好ましくは350〜800kgである。セメントに対する水の重量割合は、10%から50%が好ましく、さらに好ましくは15%から40%である。セメントに対する減水剤の重量割合は、0.5%〜8%が好ましく、さらに好ましくは0.8%〜5%である。また、細骨材率は20〜100容積%が好ましく、さらに好ましくは35〜60容積%である。
【0009】
配合物の混練機もコンクリート二次製品メーカーで通常使われているもので良く、例えば二軸強制練りミキサー、パン型ミキサー、オムニミキサーなどを使用することができる。
有効プレストレス量は0.3から2.0N/mmであるが、杭本体側面長さ方向に対するコンクリート製らせん状突起側面の角度が小さく、そのらせん状突起の間隔が広い場合には1.0N/mm以下とすることが好ましい。有効プレストレス量が、0.3N/mm未満では遠心成型時にPC鋼棒や鉄筋がコンクリートの移動により偏芯してしまうため、0.3N/mm以上が好ましい。
【0010】
コンクリート製らせん状突起はプレボーリング回転埋設工法に使用するには杭先端付近に少なくとも一個以上必要である。らせん状突起はほぼ一回転から数回転分あればよい。
また、コンクリート製らせん状突起側面の角度は、杭本体長さ方向側面に対して90度以上130度以下であることが杭の回転埋設性の観点から好ましい。コンクリート製らせん状突起の間隔は、5m以下であることが杭の脱型性の観点から好ましい。
また、型枠はコンクリート製らせん状突起の形状に合わせたものが用いられる。
遠心締固め方法は、コンクリート二次製品の製造工程で一般に行われている方法と同様で良い。また、脱型後必要に応じてオートクレーブ養生される。
【実施例】
【0011】
本発明を実施例、比較例に基づいてさらに説明する。
[実施例1]
図2に示すほぼ一回転のコンクリート製らせん状突起を2個有するコンクリート杭を下記のようにして製造した。杭本体径φ450mm 羽根径φ765mm 杭長L5000mm、コンクリート製らせん状突起側面の角度が、杭本体長さ方向側面に対して120度、コンクリート製らせん状突起の間隔が1500mmとした。
PC鋼棒の仕様、本数を表1に示す。
有効プレストレス量を2.0N/mmとした。
コンクリートには、次のセメント、骨材、高性能減水剤を使用した。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント
(2)骨材:JIS A 5005に規定されているコンクリート用2005砕石及び砕砂。
(3)高性能減水剤:花王株式会社製のマイティー150。
【0012】
コンクリート配合を表2に示す。砕石、砕砂、セメント、水、高性能減水剤を二軸強制練りミキサーに投入し4分30秒間混練した後排出し、図1に示す予めPC鋼棒を有効プレストレス量を2.0N/mmなるように所定量緊張してある型枠内へ投入した。
遠心成型は、0.3Gで2分、2Gで2分、10Gで3分、30Gで6分の各遠心成型工程を連続して行った。
養生は、常温で2時間の前置き、75℃で5時間の蒸気養生をした。その後杭にプレストレスを導入し、続いて脱型した。脱型は型枠内にコンクリートを投入した翌日に行なった。
上側型枠をクレーンにより引き上げる方法で脱型可能で、らせん羽根やその周囲に亀裂や欠けの発生は特に見られなかった。
【0013】
[実施例2]
有効プレストレス量を0.3N/mmとした。その他の条件は、実施例1と同様にして行った。
実施例1と同様に、上側型枠をクレーンにより引き上げる方法で脱型可能で、らせん羽根やその周囲に亀裂や欠けの発生は特に見られなかった。
【0014】
[比較例1]
有効プレストレス量を3.0N/mmとした。その他の条件は、実施例1と同様にして行った。
脱型は困難となり、上側型枠のクレーンによる引き上げただけでは離型せず、バール等により強引に離型させた。らせん羽根部には亀裂が発生していた。
[比較例2]
有効プレストレス量を0.1N/mmとした。その他の条件は、実施例1と同様にして行った。
遠心成型時にPC鋼棒が偏芯してしまい、PC鋼棒が一部内面に露出してしまった。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、基礎杭の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の型枠の模式図。
【図2】実施例1の杭の模式図。
【符号の説明】
【0019】
1 継手金具
2 PC鋼棒
3 遠心成型タイヤ
4 二重構造型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ一回転から数回転分のコンクリート製らせん状突起を杭先端付近に少なくとも一個以上有するコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法において、緊張されたPC鋼棒または鉄筋が配置された型枠にコンクリートを投入して遠心成型し、所定時間養生した後、プレストレス導入時にコンクリート製らせん状突起及びその周辺に亀裂が生じない程度の有効プレストレス量を与え、続いて脱型することを特徴とするコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
【請求項2】
有効プレストレス量を0.3から2.0N/mmとすることを特徴とする請求項1記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
【請求項3】
脱型後オートクレーブ養生することを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
【請求項4】
コンクリート製らせん状突起側面の角度が、杭本体長さ方向側面に対して90度以上130度以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
【請求項5】
コンクリート製らせん状突起の間隔が、5m以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4記載のコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載の製造方法により得られることを特徴とするコンクリート製らせん状突起を有するコンクリート杭。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−116740(P2006−116740A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304486(P2004−304486)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】