ろう付け方法及びろう付け構造
【課題】冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を向上させること。
【解決手段】HVインバータの冷却器を構成する天板と絶縁基板をろう付けするろう付け方法であって、(1)天板の上にろう材層を介して絶縁基板を配置し、その後、レーザを照射することにより、天板と絶縁基板との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して絶縁基板を天板に仮固定する。(4)その後、ろう材層を加熱溶融させることにより複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として絶縁基板を天板の上にろう付けする。(5)ろう付け後、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分に対応して、絶縁基板の上にパワー半導体を接合する。
【解決手段】HVインバータの冷却器を構成する天板と絶縁基板をろう付けするろう付け方法であって、(1)天板の上にろう材層を介して絶縁基板を配置し、その後、レーザを照射することにより、天板と絶縁基板との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して絶縁基板を天板に仮固定する。(4)その後、ろう材層を加熱溶融させることにより複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として絶縁基板を天板の上にろう付けする。(5)ろう付け後、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分に対応して、絶縁基板の上にパワー半導体を接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッドインバータ(HVインバータ)の冷却器を構成する2つの部材をろう付けするためのろう付け方法及びろう付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される技術が知られている。この技術では、冷却器の端面に、多数条をなすスリット、格子又はディンプルを形成し、その端面に対して半導体をろう付けするようにしている。これにより、冷却器と半導体との間のろう付け部分にボイドが発生するのを防止し、併せて、ろう材に働く応力を分散させ、ろう付け部分に剥離やクラックが発生するのを防止するようにしている。
【0003】
ここで、「スリット」は、ろう材の流れを阻害することがあることから、すべてのスリット面にろう付けの起点が必要となり、未接合部分(ボイド)が発生するおそれがあった。また、「格子」も、ろう材の流れを阻害することがあることから、すべての格子面にろう付けの起点が必要となり、未接合部分(ボイド)が発生するおそれがあった。更に、「ディンプル」は、面ろう付けとなるため、部品に高い平面度が要求されることとなり、コスト高となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−275170号公報
【特許文献2】特開2002−137974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ろう付け時に、高温によって部品に反りが発生し、接合部分の隙間が増大し、ろう材流れを阻害するおそれがあった。特に、窒素雰囲気下での非腐食性フラックスろう付け法(NB法)によるろう付けでは、フラックスを使用することから、フラックスの残り滓がボイドとなって分散し、部品の接合率を低下させるおそれがあった。また、接合部にボイドが不規則に生じると、その接合部の上に発熱部品を固定した場合に、その発熱部品を効率良く冷却することができず、冷却器の機能低下を招く懸念があった。
【0006】
また、冷却器の端面にスリットを成形する方法として、プレス成形及びエッチングが考えられる。しかし、プレス成形では、成形時に溝部の材料が平面部に移動することとなり、部品の平面度を確保できず、隙間が発生してろう材が流れず、未接合となる懸念があった。また、エッチングでは、部品の平面度は確保できるものの、コストが増大する傾向があった。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を向上させることを可能としたろう付け方法及びろう付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けするろう付け方法であって、第1の部材の上にろう材層を介して第2の部材を配置し、その後、レーザを照射することにより、第1の部材と第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して第2の部材を第1の部材に仮固定し、その後、ろう材層を加熱溶融させることにより複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として第2の部材を第1の部材の上にろう付けすることを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として第2の部材が第1の部材の上にろう付けされるので、ろう付け起点の配置、すなわちレーザの照射位置を任意に設定することにより、ろう材層の中のボイドの発生位置を制御することが可能となる。すなわち、ボイドは、隣接する2つのろう付け起点の中間位置に集中する傾向があるので、ろう付け起点の配置を設定することにより、ボイドの発生位置を分散させることなく制御することが可能となる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ろう付け後、複数のろう付け起点で囲まれる領域内であってその領域内に含まれる別のろう付け起点の上に対応して、第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、複数のろう付け起点で囲まれる領域内であってその領域内に含まれる別のろう付け起点の上に対応したろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ろう付け後、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分から、ろう付け起点へ向けて、又は、複数のろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分から、ろう付け起点へ向けて、又は、複数のろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるようにしたろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けしたろう付け構造であって、第1の部材の上にろう材層を介して第2の部材がろう付けされ、第1の部材と第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接による溶接痕が残存し、隣り合う溶接痕の間のろう材層の中に集中的にボイドが残存することを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、第1の部材と第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接による溶接痕が残存し、隣り合う溶接痕の間のろう材層の中に集中的にボイドが残存するので、ボイドの分散が少なくなる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、複数の溶接痕で囲まれる領域内であって領域内に含まれる別の溶接痕の上に対応して、第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明の作用に加え、複数の溶接痕で囲まれる領域内であって領域内に含まれる別の溶接痕の上に対応するろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、複数の溶接痕で囲まれる領域の中央部分から、溶接痕へ向けて、又は、複数の溶接痕のうち隣り合う二つの溶接痕の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを趣旨とする。
【0019】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明の作用に加え、複数の溶接痕で囲まれる領域の中央部分から、溶接痕へ向けて、又は、複数の溶接痕のうち隣り合う二つの溶接痕の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるようにしたろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係り、HVインバータの冷却器を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係り、冷却器の概略を示す図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】同実施形態に係り、冷却器を示す平面図。
【図4】同実施形態に係り、天板と絶縁基板の接合関係を示す図3のB−B線断面図。
【図5】同実施形態に係り、ろう付け方法の手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態に係り、天板への複数の絶縁基板の配置の工程を示す斜視図。
【図7】同実施形態に係り、天板への絶縁基板のレーザ溶接の工程を示す断面図。
【図8】同実施形態に係り、レーザ出力と照射時間の関係を示すグラフ。
【図9】同実施形態に係り、ケースへの冷却フィン及び天板等の配置の工程を示す斜視図。
【図10】同実施形態に係り、天板とケースのレーザ溶接の工程を示す斜視図。
【図11】同実施形態に係り、天板の上に接合された絶縁基板と、その絶縁基板の上に接合されたパワー半導体を示す平面図。
【図12】同実施形態に係り、ろう付け前における天板と絶縁基板との関係を示す断面図。
【図13】同実施形態に係り、ろう付け後における天板と絶縁基板との関係を示す断面図。
【図14】第2実施形態に係り、天板の上に接合された絶縁基板と、その絶縁基板の上に接合されたパワー半導体を示す平面図。
【図15】別の実施形態に係り、天板の上に接合された絶縁基板と、その絶縁基板の上に接合されたパワー半導体を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明における「ろう付け方法及びろう付け構造」をHVインバータの冷却器に具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1に、HVインバータの冷却器1を斜視図により示す。図2に、この冷却器1の概略を、図1のA−A線に沿った断面図により示す。冷却器1は、箱形に形成されたケース2と、ケース2の中に設けられた冷却フィン3と、冷却フィン3の上に設けられた第1の部材としての天板4と、天板4の上に設けられた第2の部材としての複数の絶縁基板5とを備える。ケース2は、その外周にフランジ2aを含む。天板4は、冷却フィン3の上を覆うように配置され、その外周にフランジ4aを含む。各絶縁基板5の上には、それぞれ発熱体としての半導体素子9(図4参照)が固定されるようになっている。
【0029】
図2に示すように、天板4のフランジ4aは、ケース2のフランジ2aに整合して配置され、ろう付けされる。すなわち、天板4のフランジ4aと、ケース2のフランジ2aとは、ろう材層6を介して接合される。また、天板4のフランジ4aとケース2のフランジ2aとの接合面には、所々にレーザ溶接による溶接痕7が残存する。この溶接痕7は、ろう付けする前に、天板4をケース2に仮固定するためのレーザ溶接による痕跡である。この実施形態では、ケース2のフランジ2aの厚みが「3.0(mm)」、天板4のフランジ4aの厚みが「0.6(mm)」、ろう材層6の厚みが「0.15(mm)」、溶接痕7の直径が「1〜2(mm)」となっている。
【0030】
図3に、冷却器1を平面図により示す。図4に、天板4と絶縁基板5との接合関係を、図3のB−B線断面図により示す。図3に示すように、各絶縁基板5は、天板4の凹部4bに配置され、ろう付けされる。すなわち、図4に示すように、天板4の凹部4bと、絶縁基板5とは、ろう材層6を介して接合される。また、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間の接合部には、所定の位置にレーザ溶接による溶接痕7が残存する。この溶接痕7は、ろう付けする前に、絶縁基板5を天板4の凹部4bに仮固定するためのレーザ溶接による痕跡である。また、その溶接痕7に隣接して、ろう材層6の中には、ボイド8が残存する。この実施形態では、上記した冷却器1につき、本発明のろう付け構造が構成される。
【0031】
ここで、上記した冷却器1に関するろう付け方法について説明する。図5に、この実施形態のろう付け方法の手順をフローチャートにより示す。
【0032】
先ず、図5(1)に示すように、天板4に複数の絶縁基板5をレーザ溶接により仮固定する。すなわち、図6に斜視図で示すように、天板4の凹部4bに複数の絶縁基板5をろう材層6(図2,4参照)を介して配置し、図7に断面図で示すように、天板4の裏側から絶縁基板5を天板4に対し、例えば、ファイバレーザ装置21によりレーザ溶接することにより仮固定する。この実施形態では、ファイバレーザ装置21によってレーザのパルス数及び出力のうち少なくとも一方を調整することにより、レーザを照射するようにしている。この実施形態では、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点及び対角線の交点に対応してレーザ溶接が行われ、合計5つの溶接痕7を、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間に形成している(図11参照)。
【0033】
図8に、そのレーザ出力と照射時間の関係をグラフにより示す。図8に示すように、この実施形態では、レーザを3回のパルスに分けて照射するようになっている。各パルス出力は、立ち上がり時間Tu1,Tu2,Tu3が一律で、その後、ピーク時間Tp1,Tp2,Tp3が制御され、立ち下がり時間Td1,Td2,Td3が制御される。従って、各パルス出力の照射時間は、立ち上がり時間Tu1〜Tu3に、可変なピーク時間Tp1〜Tp3と、可変な立ち下がり時間Td1〜Td3をそれぞれ加算することで決定される。この実施形態では、レーザのパルス数、各パルス出力の照射時間、或いは、レーザのピーク出力を制御することで、ある一点に対するトータルのレーザ出力を調整するようになっている。この出力調整により、レーザを照射するようになっている。
【0034】
次に、図5(2)に示すように、絶縁基板5を仮固定した天板4、冷却フィン3及びケース4等を互いに組み付ける。すなわち、図9に斜視図で示すように、ケース2の凹部2bに冷却フィン3を配置し、その冷却フィン3の上に天板4を配置するなどする。このとき、図2に示すように、ケース2のフランジ2aと天板4のフランジ4aとを合わせるのであるが、その間に所定の厚みを有するろう材層6を設けておく。
【0035】
次に、図5(3)に示すように、天板4をケース2にレーザ溶接により仮固定する。すなわち、図10に斜視図で示すように、天板4のフランジ4a上の複数の箇所に対し、例えば、ファイバレーザ装置21によりレーザ溶接を施す。この実施形態では、上記と同様、ファイバレーザ装置21によってレーザを複数回のパルスに分けて1点に照射するようになっている。
【0036】
次に、図5(4)に示すように、各部品をろう付けする。すなわち、天板4のフランジ4aをケース2のフランジ2aにろう付けすると共に、各絶縁基板5を天板4にろう付けする。ここで、既に仮固定され、組み付けられたケース2、冷却フィン3、天板4及び絶縁基板5(冷却器1のアッシィ)を溶接炉に投入することで、天板4のフランジ4aとケース2のフランジ2aとをろう付けすると共に、各絶縁基板5と天板4とをろう付けする。これにより、図1,3に示すような、ろう付けされた冷却器1が得られる。
【0037】
その後、図5(5)に示すように、各絶縁基板5の上に発熱体としての半導体素子を固定する。すなわち、図4の断面図に2点鎖線で示すように、絶縁基板5の上にパワー半導体9を固定する。
【0038】
この実施形態では、図5(4)で各部品をろう付けした後、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分に対応して、絶縁基板5の上に発熱体であるパワー半導体9を接合して固定する。すなわち、この実施形態では、図11に示すように、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点及び対角線の交点に対応して、レーザ溶接による5つの溶接痕7が、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間のろう材層の中に残存する。そして、各頂点に対応する4つの溶接痕7により囲まれる領域内であってその領域内の中央部分に含まれる別の1つの溶接痕7の上に対応して、絶縁基板5の上にパワー半導体9が接合される。
【0039】
上記したこの実施形態のろう付け方法では、HVインバータの冷却器1を構成する天板4と絶縁基板5をろう付けするに際して、天板4の凹部4bの上にろう材層6を介して複数の絶縁基板5を配置し、その後、レーザを照射することにより、天板4と各絶縁基板5との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して各絶縁基板5を天板4に仮固定し、その後、ろう材層6を加熱溶融させることにより、複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として各絶縁基板5を天板4の上にろう付けするようにしている。
【0040】
また、前記ろう付け後には、4つのろう付け起点で囲まれる領域内であってその領域内の中央部分に含まれる別の1つのろう付け起点の上に対応して、絶縁基板5の上に発熱体であるパワー半導体9を接合するようにしている。
【0041】
以上説明したこの実施形態のろう付け方法によれば、図11に示すように、4つのレーザ溶接の位置(溶接痕7)をろう付け起点として、絶縁基板5が天板4の上にろう付けされるので、ろう付け起点の配置、すなわちレーザの照射位置を任意に設定することにより、ろう材層6中のボイド8の発生位置を制御することが可能となる。すなわち、ボイド8は、隣接する2つのろう付け起点(溶接痕7)のそれぞれを中心に、両起点間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集中して発生する傾向がある。そして、ろう付け起点の配置を、本実施形態のように設定することにより、ボイド8の発生位置を分散させることなく制御することが可能となる。このため、冷却器1を構成する天板4と各絶縁基板5のろう付けに係り、ボイド8の発生位置を制御することで、それら天板4と絶縁基板5の接合効率を安定させ、向上させることができる。すなわち、ボイド8を、隣接する2つのろう付け起点(溶接痕7)のそれぞれを中心に、両起点間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集中させるので、ボイド8が分散することがなく、天板4と各絶縁基板5とのろう付けによる接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0042】
また、この実施形態では、絶縁基板5を天板4に対し、レーザ溶接により仮固定するので、ろう付けに際して、絶縁基板5が高温により反ることを防止することができる。この結果、天板4と絶縁基板5との間の隙間を管理することができる。
【0043】
ここで、図12に、ろう付け前における天板4と絶縁基板5との関係を断面図により示す。図13に、ろう付け後における天板4と絶縁基板5との関係を断面図により示す。図12に示すように、ろう付け前には、天板4と絶縁基板5との間が、レーザ溶接による溶接痕7及びろう材層6を介して仮接合されている。このとき、天板4と絶縁基板5との間には、複数の溶接痕7が残存しており、それら溶接痕7の間に、複数のボイド8と空間10が存在する。そして、ろう材層6は、天板4の心材11と一体をなすろう材12と、そのろう材12の上に形成された酸化膜13とを含む。ボイド8と空間10は、酸化膜13と絶縁基板5との間に不規則に散らばって存在する。
【0044】
これに対し、図13に示すように、ろう付け後には、天板4と絶縁基板5とが、ろう材層6を介して仮接合されている。天板4と絶縁基板5との間には、溶接痕7の間に挟まれるように、ボイド8が集中的に存在する。ここで、ろう材層6は、天板4と一体をなしていたろう材12と酸化膜13とが融合して一体化している。また、溶接痕7が起点となり、ろう材12が流動し、ボイド8が、隣接する2つの溶接痕7のそれぞれを中心に、両溶接痕7の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集まっている。
【0045】
この実施形態では、図11に示すように、複数のろう付け起点(溶接痕7)で囲まれる領域内であってその領域内の中央部分に含まれる別の1つのろう付け起点(溶接痕7)の上に対応するろう材層6の中では、残存するボイド8が少ない。従って、パワー半導体9が、ボイド8の上を避けて絶縁基板5の上に接合されることとなる。すなわち、図11に示すように、平面視で四角形状をなす絶縁基板5に対し、その4つの頂点と対角線の交点とに対応して合計5つの溶接痕7を形成したとする。このとき、ボイド8は、隣接する2つの溶接痕7のそれぞれを中心に、両溶接痕7の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集中することとなる。よって、各頂点に対応する4つの溶接痕7で囲まれる範囲内であってその中央部分に位置する1つの溶接痕7の上に対応して、絶縁基板5の上に発熱体であるパワー半導体9を固定する。この場合、パワー半導体9とボイド8が上下に重なり難くなり、パワー半導体9からの放熱が、ボイド8により阻害されることが少なくなる。このため、パワー半導体9を効率良く冷却することができ、冷却器1としての機能を向上させることができる。
【0046】
更に、この実施形態では、ファイバレーザ装置21によってレーザのパルス数及び出力のうち少なくとも一方を調整することにより、レーザを照射している。従って、レーザのエネルギー密度を高めることができ、短周期かつ高精度にレーザエネルギーを被照射位置に供給することができる。
【0047】
また、この実施形態のろう付け構造によれば、天板4と絶縁基板5との間の接合部における任意の4つの位置と、それらの位置で囲まれる領域の中央部分にレーザ溶接による溶接痕7が残存し、隣接する2つの溶接痕7のそれぞれを中心に、両溶接痕7の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置のろう材層6の中に集中的にボイド8が残存するので、ボイド8の分散が少なくなる。この結果、冷却器1を構成する天板4と各絶縁基板5のろう付けに係り、天板4と絶縁基板5の接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0048】
更に、この実施形態のろう付け構造によれば、4つの溶接痕7で囲まれる領域の中央部分に対応するろう材層6の中では、残存するボイド8が少ない。従って、パワー半導体9が、ボイド8の上を避けて絶縁基板5に接合されることとなる。このため、パワー半導体9を効率良く冷却することができ、冷却器1の機能を向上させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明における「ろう付け方法及びろう付け構造」をHVインバータの冷却器に具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0050】
前記第1実施形態では、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点及び対角線の交点に対応する位置にレーザ溶接を施した、すなわちレーザによる溶接痕7の配置を設定した。これに対し、この実施形態では、上記した対角線の交点に対応する溶接痕7を省略した点で、前記第1実施形態と構成が異なる。
【0051】
すなわち、この実施形態では、「ろう付け方法」において、天板4に複数の絶縁基板5をレーザ溶接により仮固定するに際して、図14に示すように、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点に対応してレーザ溶接が行われ、合計4つの溶接痕7A,7B,7C,7Dを、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間に形成するようにしている。
【0052】
そして、ろう付け後、4つのろう付け起点(溶接痕7A〜7D)で囲まれる領域の中央部分から、4つのろう付け起点の一つへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の4つのパワー半導体9A,9B,9C,9Dを接合するようにしている。
【0053】
この場合、ボイド8は、4つのろう付け起点(溶接痕7A〜7D)のそれぞれを中心に、二つのろう付け起点(例えば、溶接痕7A,7C)の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置(すなわち、4つのろう付け起点で囲まれる領域の中央部分)に集中して発生する傾向がある。このため、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、各溶接痕7A〜7Dへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の上に4つのパワー半導体9A〜9Dがそれぞれ接合される。
【0054】
従って、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、各溶接痕7A〜7Dへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように、ろう材層6の中では、残存するボイド8が少ない。従って、各パワー半導体9A〜9Dが、ボイド8の上を避けて絶縁基板5に接合されることとなる。このため、各パワー半導体9A〜9Dとボイド8が上下に重なり難くなり、各パワー半導体9A〜9Dからの放熱がボイド8により阻害されることが少なくなり、各パワー半導体9A〜9Dを効率良く冷却することができる、冷却器1としての機能を向上させることができる。
【0055】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0056】
例えば、前記各実施形態では、本発明を、冷却器1を構成するケース2と天板4とをろう付けする場合に具体化したが、ケースと冷却フィンをろう付けする場合にも具体化することができる。
【0057】
前記第2実施形態では、図14に示すように、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、各溶接痕7A〜7Dへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の上に4つのパワー半導体9A〜9Dをそれぞれ接合した。これに対し、図15に示すように、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、4つのろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点(溶接痕7A,7B及び溶接痕7C,7D)の間へ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の上に2つのパワー半導体9A,9Bをそれぞれ接合するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、HVインバータの冷却器に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却器
4 天板(第1の部材)
5 絶縁基板(第2の部材)
6 ろう材層
7 溶接痕
7A〜7D 溶接痕
8 ボイド
9 パワー半導体(発熱体)
9A〜9D パワー半導体(発熱体)
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッドインバータ(HVインバータ)の冷却器を構成する2つの部材をろう付けするためのろう付け方法及びろう付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される技術が知られている。この技術では、冷却器の端面に、多数条をなすスリット、格子又はディンプルを形成し、その端面に対して半導体をろう付けするようにしている。これにより、冷却器と半導体との間のろう付け部分にボイドが発生するのを防止し、併せて、ろう材に働く応力を分散させ、ろう付け部分に剥離やクラックが発生するのを防止するようにしている。
【0003】
ここで、「スリット」は、ろう材の流れを阻害することがあることから、すべてのスリット面にろう付けの起点が必要となり、未接合部分(ボイド)が発生するおそれがあった。また、「格子」も、ろう材の流れを阻害することがあることから、すべての格子面にろう付けの起点が必要となり、未接合部分(ボイド)が発生するおそれがあった。更に、「ディンプル」は、面ろう付けとなるため、部品に高い平面度が要求されることとなり、コスト高となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−275170号公報
【特許文献2】特開2002−137974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術では、ろう付け時に、高温によって部品に反りが発生し、接合部分の隙間が増大し、ろう材流れを阻害するおそれがあった。特に、窒素雰囲気下での非腐食性フラックスろう付け法(NB法)によるろう付けでは、フラックスを使用することから、フラックスの残り滓がボイドとなって分散し、部品の接合率を低下させるおそれがあった。また、接合部にボイドが不規則に生じると、その接合部の上に発熱部品を固定した場合に、その発熱部品を効率良く冷却することができず、冷却器の機能低下を招く懸念があった。
【0006】
また、冷却器の端面にスリットを成形する方法として、プレス成形及びエッチングが考えられる。しかし、プレス成形では、成形時に溝部の材料が平面部に移動することとなり、部品の平面度を確保できず、隙間が発生してろう材が流れず、未接合となる懸念があった。また、エッチングでは、部品の平面度は確保できるものの、コストが増大する傾向があった。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を向上させることを可能としたろう付け方法及びろう付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けするろう付け方法であって、第1の部材の上にろう材層を介して第2の部材を配置し、その後、レーザを照射することにより、第1の部材と第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して第2の部材を第1の部材に仮固定し、その後、ろう材層を加熱溶融させることにより複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として第2の部材を第1の部材の上にろう付けすることを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として第2の部材が第1の部材の上にろう付けされるので、ろう付け起点の配置、すなわちレーザの照射位置を任意に設定することにより、ろう材層の中のボイドの発生位置を制御することが可能となる。すなわち、ボイドは、隣接する2つのろう付け起点の中間位置に集中する傾向があるので、ろう付け起点の配置を設定することにより、ボイドの発生位置を分散させることなく制御することが可能となる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ろう付け後、複数のろう付け起点で囲まれる領域内であってその領域内に含まれる別のろう付け起点の上に対応して、第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、複数のろう付け起点で囲まれる領域内であってその領域内に含まれる別のろう付け起点の上に対応したろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ろう付け後、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分から、ろう付け起点へ向けて、又は、複数のろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分から、ろう付け起点へ向けて、又は、複数のろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるようにしたろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けしたろう付け構造であって、第1の部材の上にろう材層を介して第2の部材がろう付けされ、第1の部材と第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接による溶接痕が残存し、隣り合う溶接痕の間のろう材層の中に集中的にボイドが残存することを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、第1の部材と第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接による溶接痕が残存し、隣り合う溶接痕の間のろう材層の中に集中的にボイドが残存するので、ボイドの分散が少なくなる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、複数の溶接痕で囲まれる領域内であって領域内に含まれる別の溶接痕の上に対応して、第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明の作用に加え、複数の溶接痕で囲まれる領域内であって領域内に含まれる別の溶接痕の上に対応するろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、複数の溶接痕で囲まれる領域の中央部分から、溶接痕へ向けて、又は、複数の溶接痕のうち隣り合う二つの溶接痕の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを趣旨とする。
【0019】
上記発明の構成によれば、請求項4に記載の発明の作用に加え、複数の溶接痕で囲まれる領域の中央部分から、溶接痕へ向けて、又は、複数の溶接痕のうち隣り合う二つの溶接痕の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるようにしたろう材層の中では、残存するボイドが少ない。従って、発熱体が、ボイドの上を避けて第2の部材に接合されることとなる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、冷却器を構成する2つの部材のろう付けに係り、ボイドの発生位置を制御することで2つの部材の接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果に加え、発熱体とボイドが上下に重なり難くなり、発熱体からの放熱がボイドにより阻害されることが少なくなり、発熱体を効率良く冷却することができる、冷却器としての機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係り、HVインバータの冷却器を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係り、冷却器の概略を示す図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】同実施形態に係り、冷却器を示す平面図。
【図4】同実施形態に係り、天板と絶縁基板の接合関係を示す図3のB−B線断面図。
【図5】同実施形態に係り、ろう付け方法の手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態に係り、天板への複数の絶縁基板の配置の工程を示す斜視図。
【図7】同実施形態に係り、天板への絶縁基板のレーザ溶接の工程を示す断面図。
【図8】同実施形態に係り、レーザ出力と照射時間の関係を示すグラフ。
【図9】同実施形態に係り、ケースへの冷却フィン及び天板等の配置の工程を示す斜視図。
【図10】同実施形態に係り、天板とケースのレーザ溶接の工程を示す斜視図。
【図11】同実施形態に係り、天板の上に接合された絶縁基板と、その絶縁基板の上に接合されたパワー半導体を示す平面図。
【図12】同実施形態に係り、ろう付け前における天板と絶縁基板との関係を示す断面図。
【図13】同実施形態に係り、ろう付け後における天板と絶縁基板との関係を示す断面図。
【図14】第2実施形態に係り、天板の上に接合された絶縁基板と、その絶縁基板の上に接合されたパワー半導体を示す平面図。
【図15】別の実施形態に係り、天板の上に接合された絶縁基板と、その絶縁基板の上に接合されたパワー半導体を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明における「ろう付け方法及びろう付け構造」をHVインバータの冷却器に具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1に、HVインバータの冷却器1を斜視図により示す。図2に、この冷却器1の概略を、図1のA−A線に沿った断面図により示す。冷却器1は、箱形に形成されたケース2と、ケース2の中に設けられた冷却フィン3と、冷却フィン3の上に設けられた第1の部材としての天板4と、天板4の上に設けられた第2の部材としての複数の絶縁基板5とを備える。ケース2は、その外周にフランジ2aを含む。天板4は、冷却フィン3の上を覆うように配置され、その外周にフランジ4aを含む。各絶縁基板5の上には、それぞれ発熱体としての半導体素子9(図4参照)が固定されるようになっている。
【0029】
図2に示すように、天板4のフランジ4aは、ケース2のフランジ2aに整合して配置され、ろう付けされる。すなわち、天板4のフランジ4aと、ケース2のフランジ2aとは、ろう材層6を介して接合される。また、天板4のフランジ4aとケース2のフランジ2aとの接合面には、所々にレーザ溶接による溶接痕7が残存する。この溶接痕7は、ろう付けする前に、天板4をケース2に仮固定するためのレーザ溶接による痕跡である。この実施形態では、ケース2のフランジ2aの厚みが「3.0(mm)」、天板4のフランジ4aの厚みが「0.6(mm)」、ろう材層6の厚みが「0.15(mm)」、溶接痕7の直径が「1〜2(mm)」となっている。
【0030】
図3に、冷却器1を平面図により示す。図4に、天板4と絶縁基板5との接合関係を、図3のB−B線断面図により示す。図3に示すように、各絶縁基板5は、天板4の凹部4bに配置され、ろう付けされる。すなわち、図4に示すように、天板4の凹部4bと、絶縁基板5とは、ろう材層6を介して接合される。また、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間の接合部には、所定の位置にレーザ溶接による溶接痕7が残存する。この溶接痕7は、ろう付けする前に、絶縁基板5を天板4の凹部4bに仮固定するためのレーザ溶接による痕跡である。また、その溶接痕7に隣接して、ろう材層6の中には、ボイド8が残存する。この実施形態では、上記した冷却器1につき、本発明のろう付け構造が構成される。
【0031】
ここで、上記した冷却器1に関するろう付け方法について説明する。図5に、この実施形態のろう付け方法の手順をフローチャートにより示す。
【0032】
先ず、図5(1)に示すように、天板4に複数の絶縁基板5をレーザ溶接により仮固定する。すなわち、図6に斜視図で示すように、天板4の凹部4bに複数の絶縁基板5をろう材層6(図2,4参照)を介して配置し、図7に断面図で示すように、天板4の裏側から絶縁基板5を天板4に対し、例えば、ファイバレーザ装置21によりレーザ溶接することにより仮固定する。この実施形態では、ファイバレーザ装置21によってレーザのパルス数及び出力のうち少なくとも一方を調整することにより、レーザを照射するようにしている。この実施形態では、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点及び対角線の交点に対応してレーザ溶接が行われ、合計5つの溶接痕7を、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間に形成している(図11参照)。
【0033】
図8に、そのレーザ出力と照射時間の関係をグラフにより示す。図8に示すように、この実施形態では、レーザを3回のパルスに分けて照射するようになっている。各パルス出力は、立ち上がり時間Tu1,Tu2,Tu3が一律で、その後、ピーク時間Tp1,Tp2,Tp3が制御され、立ち下がり時間Td1,Td2,Td3が制御される。従って、各パルス出力の照射時間は、立ち上がり時間Tu1〜Tu3に、可変なピーク時間Tp1〜Tp3と、可変な立ち下がり時間Td1〜Td3をそれぞれ加算することで決定される。この実施形態では、レーザのパルス数、各パルス出力の照射時間、或いは、レーザのピーク出力を制御することで、ある一点に対するトータルのレーザ出力を調整するようになっている。この出力調整により、レーザを照射するようになっている。
【0034】
次に、図5(2)に示すように、絶縁基板5を仮固定した天板4、冷却フィン3及びケース4等を互いに組み付ける。すなわち、図9に斜視図で示すように、ケース2の凹部2bに冷却フィン3を配置し、その冷却フィン3の上に天板4を配置するなどする。このとき、図2に示すように、ケース2のフランジ2aと天板4のフランジ4aとを合わせるのであるが、その間に所定の厚みを有するろう材層6を設けておく。
【0035】
次に、図5(3)に示すように、天板4をケース2にレーザ溶接により仮固定する。すなわち、図10に斜視図で示すように、天板4のフランジ4a上の複数の箇所に対し、例えば、ファイバレーザ装置21によりレーザ溶接を施す。この実施形態では、上記と同様、ファイバレーザ装置21によってレーザを複数回のパルスに分けて1点に照射するようになっている。
【0036】
次に、図5(4)に示すように、各部品をろう付けする。すなわち、天板4のフランジ4aをケース2のフランジ2aにろう付けすると共に、各絶縁基板5を天板4にろう付けする。ここで、既に仮固定され、組み付けられたケース2、冷却フィン3、天板4及び絶縁基板5(冷却器1のアッシィ)を溶接炉に投入することで、天板4のフランジ4aとケース2のフランジ2aとをろう付けすると共に、各絶縁基板5と天板4とをろう付けする。これにより、図1,3に示すような、ろう付けされた冷却器1が得られる。
【0037】
その後、図5(5)に示すように、各絶縁基板5の上に発熱体としての半導体素子を固定する。すなわち、図4の断面図に2点鎖線で示すように、絶縁基板5の上にパワー半導体9を固定する。
【0038】
この実施形態では、図5(4)で各部品をろう付けした後、複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分に対応して、絶縁基板5の上に発熱体であるパワー半導体9を接合して固定する。すなわち、この実施形態では、図11に示すように、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点及び対角線の交点に対応して、レーザ溶接による5つの溶接痕7が、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間のろう材層の中に残存する。そして、各頂点に対応する4つの溶接痕7により囲まれる領域内であってその領域内の中央部分に含まれる別の1つの溶接痕7の上に対応して、絶縁基板5の上にパワー半導体9が接合される。
【0039】
上記したこの実施形態のろう付け方法では、HVインバータの冷却器1を構成する天板4と絶縁基板5をろう付けするに際して、天板4の凹部4bの上にろう材層6を介して複数の絶縁基板5を配置し、その後、レーザを照射することにより、天板4と各絶縁基板5との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して各絶縁基板5を天板4に仮固定し、その後、ろう材層6を加熱溶融させることにより、複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として各絶縁基板5を天板4の上にろう付けするようにしている。
【0040】
また、前記ろう付け後には、4つのろう付け起点で囲まれる領域内であってその領域内の中央部分に含まれる別の1つのろう付け起点の上に対応して、絶縁基板5の上に発熱体であるパワー半導体9を接合するようにしている。
【0041】
以上説明したこの実施形態のろう付け方法によれば、図11に示すように、4つのレーザ溶接の位置(溶接痕7)をろう付け起点として、絶縁基板5が天板4の上にろう付けされるので、ろう付け起点の配置、すなわちレーザの照射位置を任意に設定することにより、ろう材層6中のボイド8の発生位置を制御することが可能となる。すなわち、ボイド8は、隣接する2つのろう付け起点(溶接痕7)のそれぞれを中心に、両起点間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集中して発生する傾向がある。そして、ろう付け起点の配置を、本実施形態のように設定することにより、ボイド8の発生位置を分散させることなく制御することが可能となる。このため、冷却器1を構成する天板4と各絶縁基板5のろう付けに係り、ボイド8の発生位置を制御することで、それら天板4と絶縁基板5の接合効率を安定させ、向上させることができる。すなわち、ボイド8を、隣接する2つのろう付け起点(溶接痕7)のそれぞれを中心に、両起点間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集中させるので、ボイド8が分散することがなく、天板4と各絶縁基板5とのろう付けによる接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0042】
また、この実施形態では、絶縁基板5を天板4に対し、レーザ溶接により仮固定するので、ろう付けに際して、絶縁基板5が高温により反ることを防止することができる。この結果、天板4と絶縁基板5との間の隙間を管理することができる。
【0043】
ここで、図12に、ろう付け前における天板4と絶縁基板5との関係を断面図により示す。図13に、ろう付け後における天板4と絶縁基板5との関係を断面図により示す。図12に示すように、ろう付け前には、天板4と絶縁基板5との間が、レーザ溶接による溶接痕7及びろう材層6を介して仮接合されている。このとき、天板4と絶縁基板5との間には、複数の溶接痕7が残存しており、それら溶接痕7の間に、複数のボイド8と空間10が存在する。そして、ろう材層6は、天板4の心材11と一体をなすろう材12と、そのろう材12の上に形成された酸化膜13とを含む。ボイド8と空間10は、酸化膜13と絶縁基板5との間に不規則に散らばって存在する。
【0044】
これに対し、図13に示すように、ろう付け後には、天板4と絶縁基板5とが、ろう材層6を介して仮接合されている。天板4と絶縁基板5との間には、溶接痕7の間に挟まれるように、ボイド8が集中的に存在する。ここで、ろう材層6は、天板4と一体をなしていたろう材12と酸化膜13とが融合して一体化している。また、溶接痕7が起点となり、ろう材12が流動し、ボイド8が、隣接する2つの溶接痕7のそれぞれを中心に、両溶接痕7の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集まっている。
【0045】
この実施形態では、図11に示すように、複数のろう付け起点(溶接痕7)で囲まれる領域内であってその領域内の中央部分に含まれる別の1つのろう付け起点(溶接痕7)の上に対応するろう材層6の中では、残存するボイド8が少ない。従って、パワー半導体9が、ボイド8の上を避けて絶縁基板5の上に接合されることとなる。すなわち、図11に示すように、平面視で四角形状をなす絶縁基板5に対し、その4つの頂点と対角線の交点とに対応して合計5つの溶接痕7を形成したとする。このとき、ボイド8は、隣接する2つの溶接痕7のそれぞれを中心に、両溶接痕7の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置に集中することとなる。よって、各頂点に対応する4つの溶接痕7で囲まれる範囲内であってその中央部分に位置する1つの溶接痕7の上に対応して、絶縁基板5の上に発熱体であるパワー半導体9を固定する。この場合、パワー半導体9とボイド8が上下に重なり難くなり、パワー半導体9からの放熱が、ボイド8により阻害されることが少なくなる。このため、パワー半導体9を効率良く冷却することができ、冷却器1としての機能を向上させることができる。
【0046】
更に、この実施形態では、ファイバレーザ装置21によってレーザのパルス数及び出力のうち少なくとも一方を調整することにより、レーザを照射している。従って、レーザのエネルギー密度を高めることができ、短周期かつ高精度にレーザエネルギーを被照射位置に供給することができる。
【0047】
また、この実施形態のろう付け構造によれば、天板4と絶縁基板5との間の接合部における任意の4つの位置と、それらの位置で囲まれる領域の中央部分にレーザ溶接による溶接痕7が残存し、隣接する2つの溶接痕7のそれぞれを中心に、両溶接痕7の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置のろう材層6の中に集中的にボイド8が残存するので、ボイド8の分散が少なくなる。この結果、冷却器1を構成する天板4と各絶縁基板5のろう付けに係り、天板4と絶縁基板5の接合効率を安定させ、向上させることができる。
【0048】
更に、この実施形態のろう付け構造によれば、4つの溶接痕7で囲まれる領域の中央部分に対応するろう材層6の中では、残存するボイド8が少ない。従って、パワー半導体9が、ボイド8の上を避けて絶縁基板5に接合されることとなる。このため、パワー半導体9を効率良く冷却することができ、冷却器1の機能を向上させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明における「ろう付け方法及びろう付け構造」をHVインバータの冷却器に具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0050】
前記第1実施形態では、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点及び対角線の交点に対応する位置にレーザ溶接を施した、すなわちレーザによる溶接痕7の配置を設定した。これに対し、この実施形態では、上記した対角線の交点に対応する溶接痕7を省略した点で、前記第1実施形態と構成が異なる。
【0051】
すなわち、この実施形態では、「ろう付け方法」において、天板4に複数の絶縁基板5をレーザ溶接により仮固定するに際して、図14に示すように、平面視で四角形状をなす絶縁基板5の各頂点に対応してレーザ溶接が行われ、合計4つの溶接痕7A,7B,7C,7Dを、天板4の凹部4bと絶縁基板5との間に形成するようにしている。
【0052】
そして、ろう付け後、4つのろう付け起点(溶接痕7A〜7D)で囲まれる領域の中央部分から、4つのろう付け起点の一つへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の4つのパワー半導体9A,9B,9C,9Dを接合するようにしている。
【0053】
この場合、ボイド8は、4つのろう付け起点(溶接痕7A〜7D)のそれぞれを中心に、二つのろう付け起点(例えば、溶接痕7A,7C)の間の半分の長さを半径とする円を描いた場合に、それらの円が重ならない位置(すなわち、4つのろう付け起点で囲まれる領域の中央部分)に集中して発生する傾向がある。このため、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、各溶接痕7A〜7Dへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の上に4つのパワー半導体9A〜9Dがそれぞれ接合される。
【0054】
従って、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、各溶接痕7A〜7Dへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように、ろう材層6の中では、残存するボイド8が少ない。従って、各パワー半導体9A〜9Dが、ボイド8の上を避けて絶縁基板5に接合されることとなる。このため、各パワー半導体9A〜9Dとボイド8が上下に重なり難くなり、各パワー半導体9A〜9Dからの放熱がボイド8により阻害されることが少なくなり、各パワー半導体9A〜9Dを効率良く冷却することができる、冷却器1としての機能を向上させることができる。
【0055】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0056】
例えば、前記各実施形態では、本発明を、冷却器1を構成するケース2と天板4とをろう付けする場合に具体化したが、ケースと冷却フィンをろう付けする場合にも具体化することができる。
【0057】
前記第2実施形態では、図14に示すように、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、各溶接痕7A〜7Dへ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の上に4つのパワー半導体9A〜9Dをそれぞれ接合した。これに対し、図15に示すように、4つの溶接痕7A〜7Dで囲まれる領域の中央部分から、4つのろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点(溶接痕7A,7B及び溶接痕7C,7D)の間へ向けてずれた位置にて、その囲まれる領域と重なるように絶縁基板5の上に2つのパワー半導体9A,9Bをそれぞれ接合するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
この発明は、HVインバータの冷却器に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 冷却器
4 天板(第1の部材)
5 絶縁基板(第2の部材)
6 ろう材層
7 溶接痕
7A〜7D 溶接痕
8 ボイド
9 パワー半導体(発熱体)
9A〜9D パワー半導体(発熱体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けするろう付け方法であって、
前記第1の部材の上にろう材層を介して前記第2の部材を配置し、
その後、レーザを照射することにより、前記第1の部材と前記第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して前記第2の部材を前記第1の部材に仮固定し、
その後、前記ろう材層を加熱溶融させることにより前記複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として前記第2の部材を前記第1の部材の上にろう付けする
ことを特徴とするろう付け方法。
【請求項2】
前記ろう付け後、前記複数のろう付け起点で囲まれる領域内であって前記領域内に含まれる別のろう付け起点の上に対応して、前記第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを特徴とする請求項1に記載のろう付け方法。
【請求項3】
前記ろう付け後、前記複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分から、前記ろう付け起点へ向けて、又は、前記複数のろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように前記第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを特徴とする請求項1に記載のろう付け方法。
【請求項4】
HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けしたろう付け構造であって、
前記第1の部材の上にろう材層を介して前記第2の部材がろう付けされ、前記第1の部材と前記第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接による溶接痕が残存し、隣り合う溶接痕の間の前記ろう材層の中に集中的にボイドが残存することを特徴とするろう付け構造。
【請求項5】
前記複数の溶接痕で囲まれる領域内であって前記領域内に含まれる別の溶接痕の上に対応して、前記第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを特徴とする請求項4に記載のろう付け構造。
【請求項6】
前記複数の溶接痕で囲まれる領域の中央部分から、前記溶接痕へ向けて、又は、前記複数の溶接痕のうち隣り合う二つの溶接痕の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように前記第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを特徴とする請求項4に記載のろう付け構造。
【請求項1】
HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けするろう付け方法であって、
前記第1の部材の上にろう材層を介して前記第2の部材を配置し、
その後、レーザを照射することにより、前記第1の部材と前記第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接を施して前記第2の部材を前記第1の部材に仮固定し、
その後、前記ろう材層を加熱溶融させることにより前記複数のレーザ溶接の位置をろう付け起点として前記第2の部材を前記第1の部材の上にろう付けする
ことを特徴とするろう付け方法。
【請求項2】
前記ろう付け後、前記複数のろう付け起点で囲まれる領域内であって前記領域内に含まれる別のろう付け起点の上に対応して、前記第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを特徴とする請求項1に記載のろう付け方法。
【請求項3】
前記ろう付け後、前記複数のろう付け起点で囲まれる領域の中央部分から、前記ろう付け起点へ向けて、又は、前記複数のろう付け起点のうち隣り合う二つのろう付け起点の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように前記第2の部材の上に少なくとも発熱体を接合することを特徴とする請求項1に記載のろう付け方法。
【請求項4】
HVインバータの冷却器を構成する第1の部材と第2の部材をろう付けしたろう付け構造であって、
前記第1の部材の上にろう材層を介して前記第2の部材がろう付けされ、前記第1の部材と前記第2の部材との間の接合部における任意の複数の位置にレーザ溶接による溶接痕が残存し、隣り合う溶接痕の間の前記ろう材層の中に集中的にボイドが残存することを特徴とするろう付け構造。
【請求項5】
前記複数の溶接痕で囲まれる領域内であって前記領域内に含まれる別の溶接痕の上に対応して、前記第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを特徴とする請求項4に記載のろう付け構造。
【請求項6】
前記複数の溶接痕で囲まれる領域の中央部分から、前記溶接痕へ向けて、又は、前記複数の溶接痕のうち隣り合う二つの溶接痕の間へ向けてずれた位置にて、前記領域と重なるように前記第2の部材の上に少なくとも発熱体が接合されたことを特徴とする請求項4に記載のろう付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−148326(P2012−148326A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9756(P2011−9756)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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