説明

ろう付合金固着済みダイヤモンド工具インサートおよびその製造方法

【解決手段】 炭化物側面が適切なろう付け用合金で添加されている高研磨材工具素材であって、次にその工具素材を望ましい工具形状に形削りし、誘導加熱によるろう付けで切削工具を成形する。切削工具成形用の工具素材に、ろう付け用合金を事前コーティングして使用することにより、高研磨材素材を直接工具インサートにろう付けすることが可能になり、それにより、先行技術の工程、すなわち前記高研磨材工具素材、ろう付け用合金、および工具インサートのアセンブリをろう付けする工程において、ろう付け基板を形削りし、取り扱うために必要とされた作業時間および労働時間を最小限にするものである。前記ろう付け済み素材は、切削工具を成形するための自動ろう付け作業で便利に使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年2月7日付け米国仮出願番号第60/445613号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、ろう付合金塗被済みダイヤモンド工具素材およびそのような工具素材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
機械加工、フライス削り、旋削、切削、または掘削用の切削工具は、多くの場合例えば高研磨材物質などの硬質切削物質のインサートと共に提供される。多結晶ダイヤモンド(PCD)および多結晶立方窒化ホウ素(PCBN)は、非鉄金属および鉄金属それぞれの機械加工または切削を用途とする工具インサートに幅広く使用されている高研磨材である。前記工具は、前記PCD/PCBN素材(ブランク)を工具インサートまたは工具本体(例えば、鉄鋼軸など)にろう付けし、次にダイヤモンド砥石で最終的な形状に研磨あるいは成形加工して製造するのが一般的である。
【0004】
製造用途において、PCD素材またはPCBN素材を用いた工具は、通常、機能性において多くの一般的な工具より優れている。しかし、PCD素材またはPCBN素材から切削工具を製造する工程は労働集約的な工程であり、特に、融合プロセスによって高研磨材素材と工具インサートを接合または接着するろう付け作業は労働集約的である。結合強度(接着強さ)は、前記部品間の隙間、使用するろう付け材料、接合面、およびろう付け状態などを含むさまざまな要因の作用を受ける。ろう付け作業においては、前記高研磨材素材と前記工具接合面の良好な接着を確保するための注意が必要である。加熱の前に、ろう付け材料が、接合面に適用または配置される。ろう付け材料は、スラリー、ペースト、粉末、成形リング、ワッシャー、円板、テープ、ホイルなどの多様な形状のうちの1つであり得、それは接触する炭化物表面の内部の溝またはポケットにはめ込まれるものである。
【0005】
合金ホイル状のろう付け材料は、これに限定されるものではないが、良好な接着を促進する優れた流動特性(2001年6月付け「Advanced Materials & Processes」の「アモルファスホイルによるろう付けの有効性(Brazing with amorphous foil performs)」を参照)を含む多くの理由から、他の形状よりも一般に好ましい。しかしながら、ろう付けホイルを使用すると、ホイルの小片や工具素材部分に要求される注意を細心に払って取り扱い、精確に配置する必要があるばかりでなく、切削工具素材に合致する形状にろう付け用合金ホイルの断片をうんざりほど単調に切削するという付加労働を必要とするため、工具の製造コストが著しく増大する。
【0006】
ろう付けの工程においては、ろう付け材料を工具素材と工具インサート(または、前記素材をろう付けする他の工具)との間に配置し、酸化防止のために溶剤(フラックス)素材を適用して、そのアセンブリをろう付け素材の融点より高い温度に加熱する。この加熱処理も、作業者が、接合面の良好な接着を確保するために、その接合面、つまり工具インサート、ろう付けの接合面層、および工具素材に細心の注意を払い、必要に応じて前記素材を再配置しなければならないため、労働集約的である。工具素材をポケットの中に精確に配置し、ろう付けが接合面全体に十分に広がった後、前記アセンブリを室温まで冷却し、ろう付け作業を完了する。最終段階では、アセンブリの先端を望ましい工具形状に研磨して仕上げる。
【0007】
ワークショップ用精密ルータ工具、形削り工具、切削工具のトップメーカーであるCarb−I−Toolが指摘するように、「高品質のビットを製造する秘訣の1つは、気泡を完全に排除して、炭化物の先端を本体にろう付けすることである。熟練工による製造が現在もなお、(高品質のビット)を保障する最良の方法である。」(http://www.aptoolparts.com/html/about_us.html)。
【0008】
出願人は、高研磨材工具素材を工具インサートに融合するためのろう付け作業以前および作業中に、熟練工がうんざりするほど単調にろう付け基板の形削り、切削、および取り扱いをしなければならないという、先行技術の手順における時間のかかる作業工程の一部を最小限または排除する方法を発見した。本発明の方法では、ろう付け工程の一部を「オフライン」、すなわち、ろう付け用合金を予め工具素材に固着する方法で処理するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炭化物側面が適切なろう付け用合金でコーティングされている高研磨材工具素材(ブランク)に関し、更にその工具素材を望ましい工具形状に形削りし、誘導加熱によるろう付けの切削工具成形に関する。
【0010】
また、本発明は切削工具を成形する方法に関し、この方法は、支持高研磨材工具素材の炭化物側面を適切なろう付け用合金でコーティングし、選択的に前記ろう付け用合金でコーティングされた工具素材を望ましい形状にまたは精確な寸法に切削または形削りして、工具インサートのポケットまたは工具本体の中へ前記ろう付け用合金でコーティングされた工具素材をろう付けする工程を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次項で説明するように、工具素材(ブランク)が工具インサートまたは工具本体に直接ろう付けされる前に、支持高研磨材工具素材の炭化物側面は、適切なろう付け用合金で事前にコーティング、または固着される。工具素材の炭化物側面をろう付け用合金で事前に固着またはコーティングすることによって、ろう付け工程における、ろう付け用合金の接合面の取り扱いが省略される。本発明の工程では、高研磨材工具素材は、適切なろうづけ用合金で固着され、次に、ろう付け用合金でコーティングされた工具素材は、ポケットのある工具インサートまたは工具本体の中へろう付けされる。
【0012】
高研磨材工具素材の提供
本明細書では、「高研磨材工具素材」は、焼結金属炭化物支持体に接着されたPCD(多結晶ダイヤモンド)またはPCBN(多結晶立方窒化ホウ素)成形体の構成要素を指す。一般的には、成形体はダイヤモンドまたは立方窒化ホウ素(CBN)などの研磨材粒子の焼結された多結晶塊状体から成る一体接着構造物として特徴付けることができる。成形体は自己接着できるか、または約5容量%〜75容量%を占める適切な接着母材を含む。前記接着母材は、通常は、コバルト、鉄、ニッケル、プラチナ、チタン、クロム、タンタル、銅、またはそれらの合金若しくは混合物などの金属、または窒化物、炭化物、ホウ化物、遷移金属の酸化物若しくはそれらの混合物などのセラミックである。また、前記接着母材は、再結晶または成長のための触媒(例えば、CBN用のアルミニウムまたはダイヤモンド用のコバルトをなど)を含有することもある。
【0013】
焼結金属炭化物支持体は、タングステン、チタン、炭化タンタル粒子、またはそれらの混合物を有し、例えばコバルト、ニッケル、鉄、またはそれらの混合物若しくは合金などの約6重量%〜約25重量%の結合剤と共に接着される。
【0014】
高研磨材工具素材の成形加工は、高圧/高温(HP/HT)法によって行われる。前記加工は、HP/HT装置の反応セル内に配置される保護遮蔽筐体の内部に、研磨結晶粒子(例えば、ダイヤモンド、CBN、またはそれらの混合物など)の非焼結塊状体を配置することを含む。前記研磨材粒子を支持するために焼結金属炭化物の予備的形成の塊を形成し、それにより成形体の支持体を形成するのと同様に、もしダイヤモンド粒子の焼結が意図されている場合、前記筐体に前記研磨材粒子と共に追加的に配置され得るものは、金属触媒である。次に、前記セルの中身は、研磨材粒子の近接した粒の間の粒間接着を生じさせるのに十分な処理条件、および選択的に、焼結粒子が焼結金属炭化物支持体と接着するのに十分な処理条件に曝される。通常、そのようなHP/HT処理条件では、少なくとも1000℃の温度で、少なくとも20Kbarの圧力で約3〜120分間置かれるものである。
【0015】
高研磨材素材は、General Electric CompanyからCOMPAX、BZNおよびStratapaxの商品名で商業的に入手可能である。1実施形態において、炭化物支持工具素材は、直径約10mm〜74mmの範囲の円板の形状である。
【0016】
高研磨材工具素材のろう付け用合金による事前固着
本発明の1実施形態において、工具素材は、望ましい形状に成形または形削りされる前に、ろう付け用合金で事前にコーティングあるいは固着される。
【0017】
本発明では、多様なろう付け用合金の組成物、例えば、Kirk−Othmerの化学工業百科事典(第3版、第21巻、342頁以下参照)に記述されているようなろう付け用合金組成物が使用することができる。ろう付け用合金組成物は、融点反応抑制物質として作用するケイ素やホウ素を含有することもある。
【0018】
1実施形態において、ろう付け用合金は、銅、マンガン、ニッケル、クロム、ケイ素およびホウ素などの他の金属と組み合わせて、銀、金およびパラジウムなどの貴重金属を含有する。別の実施形態において、ろう付け用合金は、その総重量を基準として、約78重量%〜約99.97重量%の第1の金属(例えば銀など)、約0.01重量%〜約12重量%の第2の金属(例えば銅など)、約0.01重量%〜約5重量%の第3の金属(例えばニッケルなど)、約0重量%〜約5重量%のケイ素を有する。さらに別の実施形態において、ろう付け用合金は、78%〜99.97%の銀、0.01%〜12%の銅、0.01%〜5%のニッケルおよび選択的に、0.01%〜5.0%のケイ素を有する。
【0019】
ろう付け用合金は、これに限定されるものではないが、a)Wesgo、Allied Signal、およびVittaなどの各種供給業者から商業的に入手可能な、厚さ0.0005インチ〜0.003インチまたはそれ以上の範囲のホイル状、b)ワイヤ状、c)粉末、d)ペースト、e)スラリー(金属粉末、ポリエチレン・オキシドおよび各種アクリルなどの結合剤、または溶剤を基とする結合剤、および選択的に溶剤を含有する)、を含む、多様な形状で適用することが可能である。
【0020】
支持高研磨材工具素材の炭化物側面にろう付け用合金を適用、または添加する方法は、これに限定されるものではないが、以下を含むものである:(a)融解塗装(メルトコーティング)、すなわち、液状のろう付け用合金を適用し、所定の位置に均一的な層として凝固させる方法、b)無電解メッキ、c)電気メッキ、d)スパッタコーティングまたは他の物理蒸着法、e)化学蒸着法、f)ホイル状のろう付け用合金のレーザー溶接、タック溶接またはスポット溶接、g)適切な結合剤と共に塗料またはペーストとして刷毛塗りまたは適用する方法、h)ホイル状のろう付け用合金を適切な結合剤、または本技術分野で良く知られている、Sulzer−METCO,Inc.などの供給業者から商業的に入手可能な粘着テープで添加する方法、i)フレーム溶射、j)加熱圧縮(ホットプレス)または熱間圧延、k)常温圧縮(コールドプレス)または冷間圧延、およびl)スズメッキまたは融解したろう付け用合金での浸漬コーティング。
【0021】
1実施形態において、ろう付け作業中に前記素材と工具インサートの良好な接着を確保するために、前記高研磨材素材の前記炭化物側面に十分な量のろう付け用合金が適用または添加される。別の実施形態においては、適用されるろう付け用合金の厚さは、ろう付け材料として使用される混合物から成るホイルの厚さで、例えば30〜150μmである。
【0022】
望ましい工具素材の形状の成形
ろう付け用合金が高研磨材素材に適用された後、ろう付け用合金塗被素材は、ポケットのあるインサートまたは工具本体に配置されるために、選択的に、最終的に望ましい形状、例えば、5.0mmの刃長を有する80°の三角形に機械加工されることもある。
【0023】
前記形状の成形は、放電加工(EDM)、放電研削加工(EDG)、レーザ、プラズマおよびウォーター・ジェットなどを含む技術で知られている様々な方法で行うことができる。1実施形態において、ろう付け用合金で事前に固着された素材は、アブレシブ・ウォーター・ジェット法によって形状が成形される。別の実施形態においては、前記素材の表面は、最終的に望ましい形状を成形するために、表面上の所定の位置で、または、コンピュータによって制御された規定の型に従ってレーザエッチングされる。
【0024】
工具インサートへのろう付け
本明細書で使用されている、「工具インサート」または単に「工具」は、前記高研磨材素材がろう付けされる工具本体、工具ブロックまたは他の工具を示すために使用される。各工具インサートは、選択的に、ろう付け済みの高研磨材素材を受けるポケットを有する。本発明の最終工程で、形削りされた素材が、ポケットのある工具インサート、例えば鉄鋼軸など、に直接ろう付けされる。
【0025】
ろう付けは、浸漬ろう付け、炉内ろう付け、トーチ加熱によるろう付け、誘導加熱によるろう付け、および抵抗加熱によるろう付けを含む様々な技術的方法で行うことができる。ろう付け温度は、いくぶん使用されるろう付け用合金の種類にもよるが、通常は、約525°C〜約1650°Cの範囲である。
【0026】
1実施形態において、ろう付けは、急速加熱(工具の寸法にもよるが、ろう付けを完了するのに数秒しかかからない場合もある。)、均一的な仕上がり、誘導コイルを使用した接合面の局部加熱のために、誘導加熱によって行われる。
【0027】
ろう付け用合金で事前に固着された素材をポケットのあるインサートまたは、工具にろう付けをする最終工程では、表面にできる酸化物を溶解するためにろう付け溶剤(フラックス)が使用されることがある。この溶剤は、ペーストまたは粉末の形状である場合がある。
【0028】
高研磨材工具素材の炭化物支持体に事前にコーティングまたは、固着されたろう付け用合金を使用することによって、前記素材を前記工具インサートまたは工具本体にろう付けする工程が、はるかに少量の溶剤で行えることは、注目すべき点である。さらに、ろう付け用合金を高研磨材に事前に固着させることによって、ろう付けホイルの小片の取り扱いや、精確に配置する必要がなくなるので、ろう付けの処理も著しく簡略化される。
【0029】
ろう付け用合金固着済み高研磨材素材の自動ろう付け作業への使用
出願人は、ろう付け用合金固着済みの高研磨材工具素材を使用することによって、自動ろう付け作業を著しく促進すること、すなわち工具素材および工具本体をろう付けし、またはインサートするための固着物を使用することによって、作業者の介入をほとんど無くすか最小限にすることを発見した。本発明の1実施形態において、事前にろう付けされた高研磨材工具素材は、自動ろう付け機械を用いた作業に使用され、それは米国特許第5,125,555号「感知装置付き自動ろう付け溶接機械(Automatic braze welding machine with sensor)」(ここでは、ろう付けは火炎加熱法で行われる)で開示されている装置に沿ったものである。
【0030】
本発明のろう付け用合金固着済み素材を用いた自動工程の別の実施形態においては、図3で示すように、ろう付けコーティング済み素材2は、望ましい形状(例えば、三角形、ブロックなど)に切削、形削りされた後、複数のポケット1を搭載したトレイ12に配置される。ポケットのある炭化物のインサートは、同様に複数のポケットを搭載した別のトレイ20に配置され、前記インサートを搭載したトレイ20も、ろう付け機械の中に配置される。トレイ12およびトレイ20は、自動的かつ連続的にろう付け機械に送り込むスピンドル上またはコンベヤーシステムに搭載され、トレイがポケットを1回に1つずつ前進させ、ろう付けコーティング済み素材およびそれに対応する炭化物のインサートを誘導加熱した作業台に送り込むものである。
【0031】
トレイがポケットを1回に1つずつ前進させる時、選択的なカバーテープ3が同時にポケットから剥がされ、ろう付けコーティング済み素材2またはそれに対応するインサートを露出する。ろう付け工程において、回転式アームコンベヤー、ロボットアーム、または類似した機械的手段が流れ作業の後続部に設置され、ポケットのある炭化物インサートを誘導加熱した作業台に精確に配置する。回転式アーム(または、第2の回転式アーム)は、ろう付けコーティング済み素材2を掴み、前記素材2を加熱されたインサートのポケット1に配置する。誘導加熱の温度は、所定の時間が経過した後、すなわち、ろう付け用合金が溶解し、回転式アームが自動的にろう付けの完了したインサートを移動した後、自動的に低下し、この工程は、工具インサートがすべてろう付けされるまで繰り返される。
【0032】
ろう付け済み素材(または、ろう付け用合金で事前に固着またはコーティングされた素材)を用いた本発明の自動ろう付け工程の1実施形態において、ろう付け前に、各ポケットのあるインサートに、ろう付け用合金ホイルを手で適用または貼り付ける必要がなく、またインサート−ろう付け−素材を挟んだアセンブリを手で組立てて、ろう付け機械の上に搭載する必要もない。ろう付けされる接合面に合致する形状にろう付けホイルを注意深く切削する必要がないことも注目すべき点である。
【0033】
実施例 以下の実施例、および図1、図2で一般的に図示されている実施例は、本発明の説明を助ける働きをするものに過ぎず、以下の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
例1 この例では、直径58mmの炭化物支持多結晶ダイヤモンド(「PCD」)工具素材を使用する。前記工具素材は、GE Compax 1500の商品名でGE Superabrasives,Inc.(オハイオ州、Worthington)から入手可能である。PCD素材のタングステン炭化物側面を、ガーネットグリット噴射で磨き、イソプロパノールで洗浄する。標準規格のろう付け用合金ホイル(Ag(銀)49%、Cu(銅)16%、Zn(亜鉛)23%、Mn(マンガン)7.5%、Ni(ニッケル)4.5%)を直径58mmの円板に切削し、前記PCD素材の炭化物表面上に配置する。次に、このアセンブリを酸化防止のために、適切な溶媒(フラックス)物質でコーティングし、合金の融点(〜650°C)以上に誘導加熱する。ろう付けが十分に液状化すると、誘導加熱を中止し、前記素材を室温まで冷却する。ろう付け用合金は、凝固の過程で炭化物の表面に十分に接着している。次に、ろう付けコーティング済み工具をガーネットグリット噴射で磨き、ワイヤEDMで前記素材を何種類かの工具素材の形状に切削する。
【0035】
図1は、例1のろう付けコーティングされた工具素材の横断面図を示す。図面から分かるように、合金層が均一的に炭化物表面を覆い、接合面は十分に接着し連続的であるように見える。
【実施例2】
【0036】
例2 この例では、例1のろう付け用合金でコーティングされた成形体を真空中で誘導加熱してろう付けし、最終的な切削工具を成形する。このコーティング済み合金が炭化物支持体を容易に湿らせ、使用に適する高強度の切削工具の先端を提供することは注目される点である。さらに、ろう付けの工程が、先行技術の工程、すなわちろう付け用合金基板を接合面用の物質として使用するろう付け工程、で予想されるよりも大幅に簡略化および高速化されていることも注目される点である。
【0037】
図2は、例2の工具、すなわち工具にろう付された後のろう付けコーティング済みPDC素材、の写真である。図面から分かるように、合金層が均一的に炭化物表面を覆い、それにより、優れた接着が確保されている。
【実施例3】
【0038】
例3 例1で使用したろう付けホイルおよびPCD円板と同種のものをコールドプレス法によって、機械的に接合する。ろう付けホイルの機械的な付着を促進するために、ワイヤ放電加工(EDM)によって、PCD素材の炭化物表面に斜交平行線模様を成形する。炭化物の表面に、2組の垂直線を機械加工して斜交平行線模様を成形する。その1組の各線は、深さ0.010インチ、幅0.030インチである。これらの線は、お互いの線に対して平行に走り、お互いの線の中心から中心まで0.035インチの間隔がある。2組目の各線は、ワイヤEDMに対してPDC素材を90度回転させ、同様のパターンを繰り返すことによって成形する。
【0039】
次に、厚さが0.005インチである標準規格のろう付け用合金ホイル(Ag(銀)49%、Cu(銅)16%、Zn(亜鉛)23%、Mn(マンガン)7.5%、Ni(ニッケル)4.5%)を直径58mmの円板に切削し、PCD素材の炭化物表面上に配置する。次に、Carver実験用プレスを使用して、10,000 Ibsの圧力で、前記ホイルを炭化物の表面にプレス加工する。プレス加工後、前記ホイルは、斜交平行線パターンの溝に合致する形に変形し、それにより機械的にPCD素材に付着する。
【0040】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の範囲を逸脱しない範囲でその要素に対して様々な変更が可能であり、等価物に置き換えられることは、当業者は理解するであろう。本明細書で言及する引用はすべて、本明細書で明示的に参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、ろう付け用合金でコーティングした後の、本発明における素材の1実施形態のEDM切断面を示す写真である。
【図2】図2は、工具本体にろう付けした後の、本発明におけるろう付け塗被PCD素材の1実施形態の写真である。
【図3】図3は、供給トレイがろう付け作業に入る一環として、本発明におけるろう付け塗被素材を自動ろう付け工程に使用している図を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具インサートに使用する素材(ブランク)であって、焼結炭化物支持体に接着された多結晶成形体を有し、前記焼結炭化物支持体はろう付け用合金が添加されている素材。
【請求項2】
請求項1の素材において、前記多結晶成形体は、立方窒化ホウ素、ダイヤモンド、またはそれらの混合物を含有する硬質焼結体を有するものである。
【請求項3】
請求項1の素材において、前記焼結炭化物支持体は、以下の内の1つから選択された方法によって、ろう付け用合金で添加されるものである。
a)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に融解塗装(メルトコーティング)する方法、
b)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に無電解メッキする方法、
c)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に電解メッキする方法、
d)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体にスパッタコーティングする方法、
e)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に物理蒸着する方法、
f)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に化学蒸着する方法、
g)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体にスポット溶接する方法、
h)前記ろう付け用合金を塗料またはペーストとして、適切な結合剤と共に前記炭化物支持体に刷毛塗りする方法、
i)ホイル状の前記ろう付け用合金を粘着テープで前記炭化物支持体に粘着する方法、
j)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体にフレーム溶射する方法、
k)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体に加熱圧縮(ホットプレス)する方法、
l)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体に常温圧縮(コールドプレス)する方法、
m)融解した前記ろう付け用合金に前記炭化物支持体を浸漬コーティングする方法。
【請求項4】
請求項1の高研磨材素材において、前記焼結炭化物支持体は、約78〜99.97%の銀、約0.01〜12%の銅、0.01%〜5%のニッケル、および選択的に約0.01〜5.0%のケイ素を有する組成の合金でコーティングすることにより、前記焼結炭化物支持体が前記ろう付け用合金で添加されるものである。
【請求項5】
請求項1の高研磨材素材において、前記焼結炭化物支持体は、スラリー、ペースト、粉末、リング、ワッシャー、円板、テープ、またはホイルの形状のろう付け用合金で添加されたものである。
【請求項6】
請求項5の高研磨材素材において、ろう付け用合金は、厚さが0.0005インチ〜0.003インチの範囲であるホイルである。
【請求項7】
工具インサートに使用する素材であって、ろう付け用合金で添加された焼結炭化物支持体に接着された多結晶成形体を有し、前記素材の前記ろう付け用合金で添加された前記炭化物支持体は、ろう付け工程において工具インサート上に直接ろう付けされる素材。
【請求項8】
請求項7の素材において、前記焼結炭化物支持体は、以下の内の1つから選択された方法によって、ろう付け用合金で添加されるものである。
a)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に融解塗装(メルトコーティング)する方法、
b)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に無電解メッキする方法、
c)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に電解メッキする方法、
d)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体にスパッタコーティングする方法、
e)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に物理蒸着する方法、
f)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に化学蒸着する方法、
g)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体にスポット溶接する方法、
h)前記ろう付け用合金を塗料またはペーストとして、適切な結合剤と共に前記炭化物支持体に刷毛塗りする方法、
i)ホイル状の前記ろう付け用合金を粘着テープで前記炭化物支持体に粘着する方法、
j)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体にフレーム溶射する方法、
k)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体に加熱圧縮(ホットプレス)する方法、
l)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体に常温圧縮(コールドプレス)する方法、
m)融解した前記ろう付け用合金に前記炭化物支持体を浸漬コーティングする方法。
【請求項9】
請求項7の素材において、前記焼結炭化物支持体は、78〜99.97%の銀、0.01〜12%の銅、0.01%〜5%のニッケル、および選択的に、0.01〜5.0%のケイ素を有する組成のろう付けでコーティングすることにより、前記焼結炭化物支持体が前記ろう付け用合金で添加されるものである。
【請求項10】
請求項9の素材において、前記焼結炭化物支持体は、スラリー、ペースト、粉末、リング、ワッシャー、円板、テープ、またはホイルの形状のろう付け用合金で添加されたものである。
【請求項11】
請求項10の素材において、前記ろう付け用合金は、厚さが0.0005インチ〜0.003インチの範囲であるホイルである。
【請求項12】
切削工具の製造方法であって、ろう付け用合金で添加された焼結炭化物支持体に接着された多結晶成形体を有する素材を工具インサートにろう付けする工程を有する製造方法。
【請求項13】
請求項12の方法において、この方法は、さらに、
前記素材を前記工具インサートにろう付けする前に、前記工具インサートの中へ前記素材を精確に位置付けられる形状の中へ前記素材を構成する工程を有するものである。
【請求項14】
請求項13の方法において、前記素材を構成する工程は、放電加工、放電研削加工、レーザ、プラズマ、ウォーター・ジェットのうちの1つ、およびそれらの組み合わせを使用するものである。
【請求項15】
工具インサートおよび素材を有する切削工具において、前記素材は、ろう付け用合金で添加された焼結炭化物支持体に接着された多結晶成形体を有するものである。
【請求項16】
請求項15の切削工具において、前記焼結炭化物支持体は、以下の内の1つから選択された方法によって、ろう付け用合金で添加されるものである。
a)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に融解塗装(メルトコーティング)する方法、
b)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に無電解メッキする方法、
c)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に電解メッキする方法、
d)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体にスパッタコーティングする方法、
e)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に物理蒸着する方法、
f)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体に化学蒸着する方法、
g)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体にスポット溶接する方法、
h)前記ろう付け用合金を塗料またはペーストとして、適切な結合剤と共に前記炭化物支持体に刷毛塗りする方法、
i)ホイル状の前記ろう付け用合金を粘着テープで前記炭化物支持体に粘着する方法、
j)前記ろう付け用合金を前記炭化物支持体にフレーム溶射する方法、
k)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体に加熱圧縮(ホットプレス)する方法、
l)前記ろう付け用合金をろう付けホイルとして前記炭化物支持体に常温圧縮(コールドプレス)する方法、
m)融解した前記ろう付け用合金に前記炭化物支持体を浸漬コーティングする方法。
【請求項17】
切削工具を成形するために自動ろう付け機械で使用されるユニット(設備一式)であって、
a)複数の素材であって、各素材は焼結炭化物支持体に接着された多結晶成形体を有し、前記焼結炭化物支持体がろう付け用合金で添加される、前記複数の素材と、
b)複数のインサートであって、各インサートが前記各素材を受け入れるポケット有する、前記複数のインサートと
を有するユニット(設備一式)。
【請求項18】
請求項17のユニットにおいて、前記焼結炭化物支持体は、スラリー、ペースト、粉末、リング、ワッシャー、円板、テープ、またはホイルの形状のろう付け用合金で添加されたものである。
【請求項19】
切削工具を成形するために工具インサートを連続的にろう付けする方法であって、
a)焼結炭化物支持体に接着された多結晶成形体を有する素材を工具インサート内のポケットに配置する工程であって、前記焼結炭化物支持体がろう付け用合金で添加される、前記配置する工程と、
b)前記ポケットのあるインサート内に配置された前記素材を前記ろう付け用合金を、融解するために、十分な熱エネルギーに曝す工程と、
c)その中にろう付けされた前記素材を回収する工程と、
d)a)〜c)の工程を各工具インサートで繰り返す工程と
を有する方法。
【請求項20】
請求項19の方法において、前記焼結炭化物支持体は、スラリー、ペースト、粉末、リング、ワッシャー、円板、テープ、またはホイルの形状のろう付け用合金で添加されるものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−521214(P2006−521214A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503114(P2006−503114)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/002398
【国際公開番号】WO2004/071710
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(504174825)ダイヤモンド イノベーションズ、インク. (12)
【Fターム(参考)】