説明

ろ過浄化装置

【課題】
本発明の目的は、特に処理水中に残存するバクテリア等の微生物の残存数を低減可能な、ろ過浄化装置を提供することにある。
【解決手段】
前記課題を解決するために、原水中のバクテリアを前処理工程にて紫外線や薬剤等で効率よく滅菌し、処理水中のバクテリアの残存数を大幅に低減しかつ、バクテリアの栄養物となるプランクトンや有機物を凝集ろ過処理で処理水中の残存を低減することで、バクテリア増殖による処理水の経時劣化の問題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化や固液分離等を目的としたろ過分離浄化装置に関し、特に処理水中に残存するバクテリア等の微生物の残存数を低減可能な、ろ過浄化装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固液分離等を目的として、細めの金網や高分子繊維で編んだ網を通水分離膜として使用し、被分離物質である汚濁粒子を有する原水に凝集剤と磁性粉を添加して磁性フロックを生成し、前記で磁性フロックを膜で分離し、膜で捕集した磁性フロックを磁場発生手段で磁気分離、除去して高濃度スラッジを回収する磁気分離浄化装置がある。
【0003】
本構造は、例えば特開2002−273261号公報に記載されている。本ろ過分離浄化装置はステンレス鋼の細線やポリエステル繊維等で網を構成し、例えばその数十ミクロンメートルの目開きの開口部を有した膜分子部を有する。開口部の投影面積や投影直径よりも小さい微細な汚濁物質を分離するため、予め原水に例えば凝集剤の硫酸バン土やポリ塩化アルミニウムやポリ硫酸鉄と磁性粉を加えて撹絆し、原水中の微細な固形浮遊物や藻類、菌類、微生物を、凝縮剤によって数百ミクロンメートル程度の大きさに結合させた磁性フロックを形成させる。この磁性フロックは数十ミクロンメートルの目開きを有した開口部を通過できず高い除去率で捕捉分離され、膜を透過した水はさらに水質が高い浄化水となり、原水中の微細な固形浮遊物や藻類、菌類、微生物の残存量、及び残存数は数%となる。
【0004】
膜上に捕集された磁性フロックは、洗浄水で膜から洗い流された後、水面近傍に停留する磁性フロックは、前記水面近傍に静止配置された磁石の磁気力で吸引して磁気分離され、スラッジ移送手段でスラッジ回収槽に移送され排除される。スラッジは最終的には、陸上や海上で焼却処分されたりコンポスト化されたりする。
【0005】
【特許文献1】特開2002−273261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、特に適切な環境条件下では繁殖力が旺盛なバクテリア、例えば大腸菌等の微生物が処理水中に原水中の数%が残留することになり、適切な環境条件下においては短時間のうちに大腸菌が増殖する。処理水を一定期間保存する例えば船内の生活排水の浄化処理システムにおいては、船舶の航海中に生活排水の排出水質基準を満たすために浄化し、その後処理水を生活排水タンク中に停留する間、航海期間中に処理水中の大腸菌が増殖し、生活排水処理水の水質が悪化して排出基準を超えて排出できなくなる問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、可能栄養物の残存濃度を低減してバクテリアの増殖機能を大幅に低減できるろ過浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を化学的に捕捉結合した生成物を生成する生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、前記生成手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことにより達成される。
【0009】
また、上記目的は、被処理流体を保留する被処理流体保留手段と、前記被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、前記被処理流体保留手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことにより達成される。
【0010】
また、上記目的は、被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段と、前記ろ過手段でろ過された処理水を保留する処理水保留手段とを有するろ過浄化装置において、前記処理水保留手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことにより達成される。
【0011】
また、上記目的は、被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、
前記生成手段内に前記被処理流体を攪拌する被処理流体攪拌手段を有し、前記被処理流体攪拌手段中に被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことにより達成される。
【0012】
また、上記目的は、被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、
前記生成手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する複数の処理手段と、前記処理手段の殺菌もしくは酸化処機能の低下を回復させる回復手段を設け、
少なくとも殺菌もしくは酸化処機能が回復した1個以上の前記処理手段が浄化運転時に連続的に機能することにより達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可能栄養物の残存濃度を低減してバクテリアの増殖機能を大幅に低減できるろ過浄化装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の一実施例を図1、図2および図3により説明する。図2は図1の膜分離装置14の拡大断面図、図3は図2のA−A断面図である。
例えば船内生活排水タンク等の原水貯槽1内に数ミリメートルの大きなゴミを取り除いた、例えば寄港先で船内に取り込んだ生活排水等の被処理水である原水2を貯留し、ポンプ3でこの原水2を、配管4に所定の量を送水する。シーディング剤調整装置5から四酸酸化鉄等の磁性粉とpH調整剤、ポリ塩化アルミニウムや塩化鉄や硫酸第二鉄等の水溶液等のアルミニュウムイオンや鉄イオンを提供する凝集剤や高分子補強剤等を、導管6を通じて配管4内に加え、撹絆槽7において、モータ8で回転駆動される攪拌翼9により高速度で撹絆し、数百ミクロンメートルの磁性マイクロフロックを生成する。
【0016】
その後、高分子剤調整装置11から高分子補強剤等を、導管12を通じて配管10内に加え、撹絆槽13のモータ14で回転駆動される攪拌翼15によって低速度でゆっくりと撹絆し、前記磁性マイクロフロック群をを高分子補強剤で絡めて集合合体させ、数ミリメートル程度の大きさの磁性フロック16(図1には示さず)を含む前処理水17を生成する。
【0017】
撹絆槽13内に大気側から紫外線を通過させる透明な例えばガラス管71を前処理水中に挿入し、その内部に電源72と配線73で連結した滅菌用紫外線ランプ74を挿入し、処理水中に紫外線を照射する。撹絆槽13内では前処理水が攪拌翼15で満遍なく混合されるので、紫外線ランプ側から見て生成されるフロックの裏側のバクテリア例えば大腸菌にも、フロックが移動することで紫外線が照射されて殺菌される。ここで、前処理水は数分間のあいだ混合されるので絶えず紫外線が照射される。撹絆槽13内では、汚濁粒子物が磁性フロック中に取り込まれることによって前処理水の透明度は増し、紫外線ランプが前処理水中全域を透過できる。このため、フロック中に取り込めなかった前処理水中のほとんどの大腸菌が殺菌され、処理水中の生きた大腸菌は激減する。前処理水が攪拌翼によって満遍なく紫外線ランプ近傍に移動するので、照度の弱い、消費電力が小さな紫外線ランプを使用でき、ランプコストの低減及び殺菌の運転コスト低減ができる効果がある。
【0018】
このように生成した前処理水17を、導管18を通じて膜分離装置19に通水する。図2、図3により膜磁気分離装置19の構造を説明する。図3に示した回転ドラム20の外周面にステンレス鋼の細線や銅の細線やポリエステル繊維等で数ミクロンメートルから数十ミクロンメートルの目開きを有した開口部を有する膜となる網21を設ける。水槽22に流入した前処理水17は、網21を通過しドラム20内に流入する。この時、前処理水中の磁性フロック16は網21内面に捕捉され、網21を通過し磁性フロック16を分離された水は浄化水となって図1に示した開口部23から排出され、配管24を通り浄化水槽25に溜り、系外に放流されたり、船内の生活排水タンク内の停留される。前処理水17が網21を通過する動力は、前処理水17とドラム20内の浄化水との液面位差である。
【0019】
処理水中には、網21でろ過できなかった前処理水中の大腸菌が通過するがほとんどの大腸菌は死滅している。また、処理水中には生活排水中の0.1μm以上のバクテリアや有機物は磁性フロック内に取り込まれているので、網21でろ過され処理水中にはほとんど残存しない。このため、処理水中の生きた大腸菌はほとんど残留せず、処理水中の栄養物が激減しているので処理水の保留期間内に生きた大腸菌が増殖することを大幅に防止することができ、これによって生活排水の水質は劣化せず、処理時に満たしていた排水水質基準を維持できるので、処理水を保留後船外に放流することができる。
【0020】
磁性フロック16は図2で反時計回りに回転する網21の外面にろ過されて付着し、堆積物となって液面上の大気部に露出する。図1の浄化水槽25内の浄化水をポンプ26で加圧され導管27からシャワー管28に送り、孔からシャワー水を、網21内表面から外面側に吹き付ける。網21の外表面に蓄積した磁性フロック16はシャワー水で剥がれ網21面は再生される。洗い流された磁性フロック16は、水槽22内の前処理水17の水面上に停留する。
【0021】
磁気分離の磁場発生手段として使用する回転式の磁石29(図1)は、非磁性体の材料で製作した回転体30(図2)の外面に複数条の溝に永久磁石体31を接着剤等で固定し、前記回転体30は、モータ32(図3)で回転数を制御されて回転する構造となっている。
【0022】
いっぽう、図3に示すように磁気分離した磁性フロックを移送するために使用する非磁性体の材料で製作した汚泥移送用の回転体33は、軸34を介してモータ35で回転数を制御されて回転する。端部では、軸34を水蜜性を有した回転支持体36により水槽22の壁で支持し、他端部では、回転体33外周部を、水蜜性を有した回転支持体36を介して水槽22の壁で支持し、回転支持体36の内部は大気に開放されている。図1の前記磁石29は、前記回転体33の大気開放面から回転体33の内部に挿入され、洗浄水で洗い流された磁性フロック16群が停留する、すなわち回転ドラム側の位置に接近するように設置される。
【0023】
ここで、本実施例では、回転体33の軸心と回転体30の軸心とはずれて配置されている。図に示していないが、磁石29は所定の場所に位置するように、水槽22の一部にボルト等で固定される。回転体33と回転体30の回転方向は、同一方向で、磁気吸引した磁性フロック16群を大気側に移動させる方向に回転する。両者の回転数は、同一でも、異なっても良い。本実施例の場合は、磁石側の回転体30側の回転数が回転体33の回転数より多い。
【0024】
洗い落ちて水面近傍に停留する磁性フロック16群は、磁石29の磁場により磁石側に吸引されて移動し、磁場29の外側を回転する回転体33の外表面に付着したのち、回転体33の回転にともなって、大気中に露出する。大気中において、磁性フロック16群中の余分な水分は重力により回転体33面上を流下し、磁性フロック16群は更に濃縮される。ここで、磁性フロックの含水率は97%程度まで低下する。
【0025】
回転体33面上の濃縮された磁性フロック16群は、回転体33の回転により移動する。このとき、回転体33の軸心と回転体30の軸心とは、ずれて配置されているため、磁石29から次第に遠ざかり、これによって、磁気吸引力は磁石から離れるに従って急激に低減する。磁性フロック16群は、掻き取りように水槽22に一部に支持されたへら38によって、回転体33面上でから剥離され、スラッジ回収槽39に重力で落下し、スラッジとして分離捕集される。
【0026】
排出されたスラッジは、配管40の通じて遠心分離機やベルトプレス等の脱水装置41に導入され、運搬時にスラッジから水が漏れないように含水率を約85%以下に、またコンポスト時の有機物を分解する微生物の活性化を図れる含水率を約75%に濃縮された高濃度スラッジは、配管42の通じてスラッジ槽43に貯められる。
【0027】
脱水装置で脱水された処理汚水は、配管44を通じて処理汚水槽45に入り、ポンプ46で加圧された後、配管47を通って原水槽1に戻り、再び前処理工程に導入される。
運転制御装置48では、原水の液面、濁度、温度pH値等をセンサー49で計測し、その情報を運転制御装置48に信号線50で送信する。その情報を基に、良好な磁性フロックを生成するに最適な、薬剤(pH調整剤、磁性粉、凝集剤)の添加量、を、前もって入力した最適量算出プログラムで計算し、その制御情報を薬剤槽5に信号線51を経由して送信し、最適量を添加する。
【0028】
また、攪拌モータの回転数、攪拌槽での停留時間を運転制御装置48内で算出し、その制御情報をモータ8に信号線52を経由して送信し、最適回転数で攪拌翼9を回転させ、信号線53を経由して送信し、攪拌槽での停留時間を確定するポンプ3の吐出量を制御する。また、良好な磁性フロックを生成するに最適な薬剤(高分子ポリマー)の添加量、を、前もって入力した最適量算出プログラムで計算し、その制御情報を薬剤槽11に信号線54を経由して送信し、最適量を添加する。また、同時に、攪拌モータの回転数を運転制御装置48内で算出し、その制御情報をモータ14に信号線55を経由して送信し、最適回転数で攪拌翼15を回転させる。
【0029】
いっぽう、膜分離装置19では、水槽22内の前処理水17の液面をセンサー56で計測し、その情報を運転制御装置48に信号線57で送信する。その情報を基に、前処理水の液面位置が、磁石29の設置位置のほぼ中央部、すなわち磁石29が発生する磁場の平均値が最大の位置に来るように、回転ドラム20の最適な回転数および磁性フロック16群の回収速度の適正速度を、前もって入力した最適量算出プログラムで計算し、その制御信号を回転ドラムの回転モータ(図示せず)に信号線58を経由して送信し、また、信号線59を経由してモータ35に送信し、それぞれ最適の回転数に制御する。
【0030】
以上の説明から明らかなように、本実施例の浄化装置で生活排水等の原水を浄化することにより、浄化した処理水中にはフィルターでろ過できなかった前処理水中の大腸菌は通過するがほとんどの大腸菌は死滅しており、また、処理水中には生活排水中の0.1μm以上のバクテリアや有機物は磁性フロック内に取り込まれているので、フィルターでろ過され処理水中にはほとんど残存しない。このため、浄化した処理水中の生きた大腸菌はほとんど残留せず、処理水中の栄養物が激減しているので処理水の保留期間内に生きた大腸菌が増殖することを大幅に防止することができ、これによって生活排水処理水の水質は劣化せず、処理時に満たしていた排水水質基準を維持できるので、処理水を保留後船外に放流することができる効果がある。
【0031】
また、本実施例では撹絆槽13内に大気から紫外線を通過させる透明なガラス管71が前処理水中に挿入され、その内部に滅菌用紫外線ランプ74を挿入し、処理水中に紫外線を照射できる。撹絆槽13内では前処理水が攪拌翼15で満遍なく混合される。このため、紫外線ランプ側から見て生成されるフロックの裏側の大腸菌にも、フロックが移動することで紫外線が照射され殺菌される。撹絆槽13内では数分間の混合時間があり、絶えず前処理水に紫外線が照射されるので、殺菌時間が十分あり、照度が小さな紫外線ランプでも十分に殺菌効果が生じ、フロック中に取り込めなかった前処理水中の大腸菌のほとんどが殺菌され、処理水中の生きた大腸菌は激減する効果がある。
【0032】
本実施例では、紫外線ランプ74を撹絆槽13内に配置したが、紫外線ランプを撹絆槽7や原水貯槽1、膜分離装置19、浄化水槽25内に配置しても同様な効果が生じる。
【0033】
また、本実施例では、ガラス管71外面が処理水で汚れ、紫外線の透過率が低減した場合には、ガラス管71を攪拌槽13から取り出し汚れを洗浄除去することで、透過率を回復することができる。なお、本洗浄除去は、図示しないが自動的に攪拌槽13の中で実施されても良い。
【0034】
また、ガラス管71及び紫外線ランプの配置は、攪拌翼の回転を阻害しない配置であれば良く、図示しないが攪拌翼の間に複数個配置されても良い。また、図示しないが紫外線ランプの種類は、複数の微生物にそれぞれ有効な異なる周波数、波長の紫外線ランプを複数個配置しても良い。
【実施例2】
【0035】
図4に本発明になる他の実施例を示す。この図が図1と異なる点は、大腸菌殺菌のために配置した紫外線ランプ74の代わりに、薬剤タンク75の中の例えば過酸化水素水を精製する薬剤等を、配管76を介して撹絆槽13内に所定の量添加し、撹絆槽13内の前処理水中に過酸化水素水を生成し、その活性酸化力で前処理水の磁性フロックに取り込めなかった大腸菌を殺菌し、微細な有機物を酸化分解するようにした点にある。
【0036】
本実施例によれば、撹絆槽13内では数分間の混合時間があり、絶えず前処理水が混合されるので前処理水内に過酸化水素水が濃度にむらが無い様に行き渡り、かつ殺菌時間が十分にあるので、薬剤の添加量を最小限に抑えられても十分に殺菌効果が生じ、フロック中に取り込めなかった前処理水中の大腸菌のほとんどが殺菌され、処理水中の生きた大腸菌は激減する効果がある。
【0037】
また、本実施例では、過酸化水素水の酸化力により前処理水中の磁性フロックに取り込めなかった微細な有機物の一部が酸化分解されるので、バクテリアの栄養分となる処理水中の有機物の残存量が更に低減し、さらに、処理水中の生きた大腸菌の増殖を防止できる効果がある。
【0038】
本実施例では、殺菌用薬剤を撹絆槽13内で処理水中に添加したが、原水貯槽1の原水中や、撹絆槽7の前処理水中や、膜分離装置19中の前処理水、処理水や、浄化水槽25の処理水中に添加しても同様な効果が生じる。
【0039】
以上の実施例では紫外線ランプの設置や、殺菌薬剤タンクからの薬剤の注入によって、バクテリアの殺菌処理や有機物の酸化処理を行う場合について説明したが、紫外線ランプのほかにオゾン発生装置や、電気分解による次亜塩素酸発生装置や、超音波発信装置を配置しそれぞれの殺菌、酸化機能物質を生成、添加する場合であっても、同様な効果が生じる。
【実施例3】
【0040】
図5に本発明になる他の実施例を示す。この図が図1の攪拌槽13の構造と異なる点は、大腸菌殺菌用の紫外線ランプ74を内蔵したガラス管71を複数個設け、水中と水面上間を昇降させる昇降機ををれぞれのガラス管71に設けた構成にある。
【0041】
図中の撹絆槽13内には、大腸菌殺菌用の紫外線ランプ74を内蔵したガラス管77、78を設ける。ガラス管77、78は、それぞれロッド79、80で支持され、ロッド79、80はそれぞれ昇降器81、82により、撹絆槽13内の前処理水内と水面上の大気側との間を移動できる。ロッド79、80の移動制御は、昇降器81、82内の例えば歯車83、84の正逆回転の制御で行われる。
【0042】
図中の撹絆槽13内に配置したガラス管78の外面は、長時間の運転後前処理水で汚れ紫外線の透過率が低減し、ガラス管78外周部の前処理水内のバクテリア殺菌性能が低下する。したがって、紫外線の透過率の低下を検知する紫外線透過センサー85、86をガラス管77、78の外周部にガラス管から少し離して設ける。
【0043】
ガラス管外面の汚れを紫外線透過センサー85、86で検知すると、信号線87、88で制御装置(図示せず)に伝達され、昇降器81、82で汚れたガラス管を水面上の大気側に移動する。図5では、ガラス管78が移動した場合を示している。
【0044】
ここで、紫外線透過センサー85、86の外面は小型ワイパー(図示せず)等で受光面の汚れは、自動的に除去される。
【0045】
ガラス管78の外面は、移動中に例えば水や酸性の洗浄液とブラシ等でガラス管外面を洗浄する洗浄器88で自動的に洗浄され、洗浄廃液は配管90をとおり、原水槽1に戻される。移動中には紫外線ランプ74は消灯される。
【0046】
洗浄されたガラス管78はこのまま待機し、ガラス管77の外面が汚れ、紫外線透過センサー85が所定の汚れを検知した後、ガラス管77と交代して撹絆槽13内に挿入され、紫外線ランプが点灯される。
【0047】
いっぽう、ガラス管77は大気側に上昇し、ガラス管77の外面は、移動する際に洗浄器89で自動的に洗浄され、洗浄廃液は配管91を通り、原水槽1に戻される。
【0048】
本実施例によれば、ガラス管内の紫外線ランプ74のいずれかを使用し、前処理水17内のバクテリアを連続的に殺菌することができるので、攪拌槽13の混合運転を停止せずに前処理水を殺菌処理できる効果がある。
【実施例4】
【0049】
図6に本発明になる他の実施例を示す。この図が図1の攪拌槽7、13の構造と異なる点は、翼型の攪拌槽7の代わりに、流路内にリボン状の乱流促進板92を設けた混合管93と配管94、混合管95で構成し、翼型の攪拌槽13の代わりに、流路内にドーナツ型でリボン状の乱流促進板96、紫外線ランプ74を内臓したガラス管97、98を設置した混合管99、100を配管101で連通した構成にある。
【0050】
また、ガラス管洗浄時の予備用として、流路内にドーナツ型でリボン状の乱流促進板96、紫外線ランプ74を内臓したガラス管102を設置した混合管103を平行して設け、これを配管104、弁105、106、および配管107、弁108で連通し、更に、配管109、弁110および弁111、配管112で、配管10、配管18で連結した構成にある。
【0051】
混合管内の乱流促進板92、96は、混合槽内の攪拌翼と同様な効果で前処理水を混合管内で混合攪拌し、混合管99、100、103内の紫外線ランプ74の照射により、前処理水内のバクテリアは混合槽13内と同様に殺菌される。混合管99、100、103に内蔵した乱流促進板96は静止しており、リボン状の乱流促進板によって流動する流体が乱されることにより攪拌混合される。
【0052】
運転とともに各混合管内に設置した混合管99、100、103内に設置したガラス管97、98、102の外面は汚れ、外面を洗浄する必要が生じる。図6の場合では、混合管100内のガラス管98を洗浄する場合を示している。
【0053】
この場合では、配管10の弁113が開、弁105が閉となり、弁108が開、弁106が閉、弁110が閉、弁111が開である。この場合、前処理は混合管99と混合管103で構成される。洗浄する混合管100のガラス管98は、昇降器(図示しない)で移動され、気密性を有する洗浄器113でガラス管98の外面を自動洗浄する。それぞれの混合管99、103には洗浄器114、115が設けられている。洗浄水はそれぞれ配管116、117、118、119を通り、原水槽1に戻る。
【0054】
ガラス管98の外面の洗浄後は、昇降器(図示しない)で混合管100内に移動し、紫外線ランプが点灯し、弁108、110、111が閉、弁106を開として、混合管103内の紫外線ランプ74を消灯する。
【0055】
混合管99内のガラス管97を洗浄する場合には、弁113、111を閉じ、弁105、110を開き、混合管103の紫外線ランプ74を点灯、混合管99の紫外線ランプ74を消灯し、昇降器(図示しない)で移動され、気密性を有する洗浄器114でガラス管98の外面を自動洗浄する。
【0056】
ガラス管99の外面の洗浄後は、昇降器(図示しない)で混合管99内に移動し、紫外線ランプが点灯し、弁113、111を開き、弁105、110を閉じ、混合管99内の紫外線ランプ74を消灯する。予備の混合管103内のガラス管97を洗浄する場合には、弁105、108、110、111を閉じ、混合管103の紫外線ランプ74を消灯し、昇降器(図示しない)で移動され、気密性を有する洗浄器115でガラス管102の外面を自動洗浄し、洗浄後昇降器(図示しない)で混合管103内に移動する。
【0057】
本実施例では、混合管の中の乱流促進板によって発生する蛇行流により、前処理水は満遍なく混合される。したがって、中心部のガラス管内の紫外線ランプの紫外線が混合攪拌時間中に満遍なく前処理水中に放射され、前処理水中のバクテリアは確実に死滅する。
【0058】
本実施例では、乱流促進板にドウーナツ型のリボン状の板を使用した場合について説明したが、乱流促進板として多孔平板を前処理水の流れ方向に所定の間隔で設置しても同様な効果が生じる。
【0059】
本実施例によれば、混合管内に紫外線ランプを設置することで、紫外線ランプ74を使用し、前処理水17内のバクテリアを連続的に殺菌することができるので、混合管を使用し赤外線ランプを内臓するガラス管の外表面が汚れる場合においても、混合管内での混合運転を停止せずに前処理水を殺菌処理できる効果がある。また、以上の実施例では被浄化水の対象が船内の生活排水である場合について説明したが、被浄化水の対象が、植物プランクトンや動物プランクトンやコレラ菌、大腸菌や腸球菌等のバクテリアを含むバラスト水である場合においても同様な効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の一実施例のろ過浄化装置のフロ−図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例の磁気分離部の断面図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例のろ過浄化装置のフロ−図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
1…原水貯槽、7、13…攪拌槽、16…磁性フロック、17…前処理水、21…網、22…水槽、31…永久磁石、33…回転体、38…へら、39…汚泥回収槽、61…汚水回収槽、74…紫外線ランプ、75…薬剤槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を化学的に捕捉結合した生成物を生成する生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、
前記生成手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことを特徴とするろ過浄化装置。
【請求項2】
被処理流体を保留する被処理流体保留手段と、前記被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、
前記被処理流体保留手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことを特徴とするろ過浄化装置。
【請求項3】
被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段と、前記ろ過手段でろ過された処理水を保留する処理水保留手段とを有するろ過浄化装置において、
前記処理水保留手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことを特徴とするろ過浄化装置。
【請求項4】
被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、
前記生成手段内に前記被処理流体を攪拌する被処理流体攪拌手段を有し、前記被処理流体攪拌手段中に被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する処理手段を設けたことを特徴とするろ過浄化装置。
【請求項5】
被処理流体中の被除去物を凝集、被除去物を捕捉結合した生成物を生成させる生成手段と、前記生成手段により前記生成物のサイズを前記被除物のサイズより大きくし、前記生成物が通過できない目開きを有するろ過手段とを有するろ過浄化装置において、
前記生成手段内に前記被処理流体中の被除去物を少なくとも殺菌もしくは酸化処理する複数の処理手段と、前記処理手段の殺菌もしくは酸化処機能の低下を回復させる回復手段を設け、
少なくとも殺菌もしくは酸化処機能が回復した1個以上の前記処理手段が浄化運転時に連続的に機能することを特徴とするろ過浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−187697(P2006−187697A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20(P2005−20)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】