説明

アウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQ

【課題】前の送信の失敗理由に対して適合を行い、次の再送の受信および復号が成功する確率を高める方法を提供する。
【解決手段】第1の数のシンボルで符号化された第1の数のビットを含むデータパケットをレシーバに送信する。レシーバがデータパケットの復号に成功しなかった場合に、送信用のメトリックの情報とともに負の受領確認メッセージを受信する。第1の送信のメトリックの情報の関数である可変数のシンボルで符号化されたデータパケットをレシーバに対して送信する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
無線通信システムでは、ハイブリッド自動繰り返し要求(H−ARQ)を再送信プロトコルとして利用して、トランスミッタおよびレシーバの間の正確な送信を保証し、不成功に終わった送信を繰り返したり、送信データにエラーが含まれていたりした場合に送信を繰り返している。H−ARQを利用することで、パケットの再送信時に、前に不成功に終わったパケットの送信に含まれる情報が再送信データと組み合わせられる。組み合わせられたデータパケットはレシーバにより復号が試みられる。H−ARQの1バージョンでは、レシーバがパケットの復号に成功したと通知するまで、または、最大再送信可能数に達するまで、各繰り返しにおいて同量の情報が再送信される。
【0002】
H―ARQ処理の一変形例に、アダプティブH−ARQと称されるものがあり、この方法では、レシーバがトランスミッタに対してパケットミスを報告するとき、レシーバは更なる情報をフィードバックする。レシーバは、負の受領確認(NACK)メッセージによってパケットミスを報告する。トランスミッタがNACKメッセージをレシーバから受信すると、NACKメッセージとともに受信したさらなる情報に基づいて再送信パラメータを調節することができる。通常これらさらなる情報は、レシーバからトランスミッタへフィードバックされる信号対雑音比(SNR)情報を含む。そしてトランスミッタは、前の送信のSNR情報に基づいて再送信パラメータを調節して、パケットの再送信の成功確率を前に試みられた送信よりも高めようとする。しかし、OFDM(orthogonal frequency-division multiplexing)方式では、SNR情報は無線システムのパフォーマンスの指標として不十分である場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
請求される主題は、明細書の終結部で特に指摘および明確に請求されている。これら主題は、以下の詳細な説明を添付図面とともに読むことでよりよく理解されるであろう。
【図1】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQのブロック図である。
【図2】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQを実装することのできる無線ワイドエリアネットワークのブロック図である。
【図3】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQ処理のフロー図である。
【図4】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムの平均スループットを示すグラフである。
【図5】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムの相対的なパフォーマンスの向上を示すグラフである。
【図6】1以上の実施形態において、再送信のシンボル数を、アウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムの前の送信の容量の関数として示すグラフである。
【図7】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムを実装することのできるデバイスの一例のブロック図である。
【図8】1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムを実装することのできる情報処理システムのブロック図である。簡潔さおよび/または明瞭性を期すべく、図面に示すエレメントは必ずしも原寸に比例して描かれてはいない。例えばエレメントのなかには他のエレメントよりも強調して描くことで明瞭性を期しているものもある。さらにそうすることが適切である場合には、図面間で参照番号を繰り返すことで対応する、および/または、類似したエレメントであることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の詳細な説明において、多くの特定の詳細を述べて、請求される主題の完全な理解を促す。しかし当業者であれば、請求される主題が、これら特定の詳細なしに実行可能であることを理解する。また、公知の方法、手順、コンポーネント、および/または、回路については詳述していない場合もある。
【0005】
以下の説明および/または請求項において、連結および/または接続、およびそれらの派生語が利用されることがある。特定の実施形態では、接続とは、2以上のエレメントが互いに直接物理的および/または電気的な接触状態にあることを示す場合がある。連結も、2以上のエレメントが直接物理的および/または電気的な接触状態にあることを示す場合がある。しかし連結はさらに、2以上のエレメントが互いに直接接触状態にはないが、互いと協働および/または相互作用できる状態を示す場合もある。一例としては、「連結」は、2以上のエレメントが互いに接触はしていないが、別のエレメントまたは仲介エレメントを介して間接的にジョイントされている場合がある。最後に、「on」「overlying」「over」といった用語が以下の説明および請求項で利用される場合がある。これらの用語は、2以上のエレメントが互いに直接接触していることを示す場合もあるが、「over」は、1以上のエレメントが互いに直接接触していないことを示す場合もある。例えば、「over」は、あるエレメントが他のエレメントの上にあるが、互いに接触していないことを示していてもよいし、2つのエレメントの間に別のエレメント(1または複数)が介在していてもよい。さらに、「および/または」という用語は、「および」と「または」の意味を兼ね備えるということであり、「排他的論理和」のことであってよく、「1」のことであってよく、「いくらかであるが全てではない」意味であってよく、「そのいずれでもない」、および/または、「両方である」であってよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。以下の説明および/または請求項において、「備える」および「含む」およびこれらの派生語が利用されている場合、これらの用語は互いに類義語として意図されている場合がある。
【0006】
図1は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQのブロック図である。図1に示すアダプティブH−ARQシステム100は、1以上のトランスミッタ110および1以上のレシーバ114を含んでよい。トランスミッタ110は、例えばSISO(single-input, single-output)またはMIMO(multiple-input, multiple-output)システムを実装するための1以上のアンテナ112を含んでよい。同様にして、レシーバ114もSISOまたはMIMOシステムを実装するための1以上のアンテナ116を含んでよい。他の種類のアンテナシステムも同様に実装可能である(例えばSIMO(single-input, multiple-output)またはMISO(multiple-input, single-output))。請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。1以上の実施形態では、トランスミッタ110は1以上のパケット118をレシーバ114に送信する。トランスミッタ114がパケットを受信すると、または受信を試みると、レシーバ114は、フィードバックループでトランスミッタ110に返信メッセージ120を送り、送信されたパケット118の受信および復号にレシーバ114が成功したか否かをトランスミッタ110に対して示す。パケット118の送信が成功に終わった場合には、レシーバ114は、受領確認(ACK)メッセージを返信メッセージ120としてトランスミッタ110にフィードバックして、この場合、トランスミッタ110は、次のパケット118をレシーバ114に送ることができる。パケット118の送信が不成功に終わった場合には、レシーバ114は負の受領確認(NACK)メッセージを返信120としてトランスミッタ110へフィードバックする。NACKメッセージを返信メッセージ120として受信すると、トランスミッタ110は、さらに1以上の回数失敗した同じパケット118を再送信することができる。パケット118は、レシーバ114が再送信されたパケット118の受信および復号に成功するまで、または最大再送信可能数に達するまで、さらに数回繰り返し再送信することができる。トランスミッタ114が再送信されたパケット118の受信および復号に成功した場合には、レシーバ114はACKメッセージを返信メッセージ120としてトランスミッタ110にフィードバックすることができ、トランスミッタ110は1以上の新たなパケット118の送信を続けることができる。レシーバ114が復号に成功しないままに最大再送信可能数に達すると、再送信を終了することができる。
【0007】
1以上の実施形態では、返信メッセージ120は、NACKメッセージに加えてレシーバ114がトランスミッタ110にフィードバックした情報を含んでよい。トランスミッタ110は、フィードバックされた情報を利用して、失敗したパケット118の次の1以上の再送信の送信パラメータを調節することができる。さらなる情報は、パケット118の前の送信および前の送信が失敗したかの理由等に関していてよく、これによりトランスミッタ110は、失敗を引き起こす条件を訂正またはこれに対して適合を行い、次の送信が受信および復号される確率を高めることができる。1以上の実施形態では、さらなる情報は、1以上の前の送信のチャネル容量を含んでよい。そしてトランスミッタ110は、パケット118の1以上の再送信の際に再送信のスループットを最適化するように容量をパケット118を送信するシンボル数の関数としてよい。1以上の実施形態では、スループットはターゲットアウテージ値で計測することができる。例えば、SISOアンテナシステムでは、ターゲットアウテージ値は、約1%として選択されてよく、これは、送信されたパケット118の1%が失敗に終わり、送信されたパケット118の99%が成功することを意味している。しかしこれはあくまでターゲットアウテージパラメータ値の一例であり、他のターゲットアウテージ値も利用可能である。さらに、MIMOアンテナシステム等の他の種類のアンテナシステムは、対応するターゲットアウテージ値に関していてよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定されない。加えて、ターゲットアウテージ値は、経時的な平均値を表してよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定されない。図1のアダプティブH−ARQシステム100を利用する無線ワイドエリアネットワーク(WWAN)の一例を図2に示し、以下これについて説明する。
【0008】
図2は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQを実装することのできる無線ワイドエリアネットワークのブロック図である。図2に示すように、ネットワーク200は、インターネット210へのモバイル無線アクセスおよび/または固定無線アクセスをサポートする機能を有するインターネット210タイプのネットワークを含むインターネットプロトコル(IP)タイプのネットワークであってよい。1以上の実施形態では、ネットワーク200は、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)規格または次世代のXiMAXに準拠したものであってよく、特定の実施形態では、IEEE802.16m規格に準拠していてよい。1以上の代替的な実施形態におけるネットワーク200は、3GPP LTE(Third Generation Partnership Project Long Term Evolution)または3GPP2 AIE(3GGP Air Interface Evolution)規格、および/または、これ以降の世代のセルラーネットワーク(4G(Fourth Generation)ネットワーク等)に準拠していてよい。一般的には、ネットワーク100は、任意の種類のOFDMA(orthogonal frequency division multiple access)ベースの無線ネットワークを含んでよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定されない。モバイル無線アクセスの一例としては、アクセスサービスネットワーク(ASN)212が基地局(BS)214と連結することができ、これにより、モバイルサブスクライバステーション(SS)216とインターネット210との間の無線通信が提供される。サブスクライバステーション216は、ネットワーク200経由で無線通信することのできるモバイルタイプのデバイスまたは情報処理システムを含むことができる(例えば、ノートブック型のコンピュータ、ネットブック、携帯電話機、PDA等)。ASN212は、ネットワーク200上の1以上の物理的実体へのネットワーク機能のマッピングを定義することのできるプロフィールを実装することができる。基地局214は、サブスクライバステーション216と無線周波数(RF)通信するための無線機器を含んでよく、例えば、IEEE802.16m規格に準拠した物理層(PHY)および媒体アクセス制御(MAC)層機器を含んでよい。基地局214はさらにASN212経由でインターネット210に連結するためにIPバックプレーンを含むこともできるが、請求される主題はこの点に限定はされない。
【0009】
ネットワーク200はさらに、プロキシおよび/または中継タイプの機能(例えばAAA(authentication, authorization and accounting)機能、DHCP(dynamic host configuration protocol)機能、または、ドメインネームサービス制御等、PSTN(public switched telephone network)ゲートウェイ、またはVOIP(voice over internet protocol)ゲートウェイ等のドメインゲートウェイ、および/または、インターネットプロトコル(IP)タイプのサービス機能等)を含むがこれらに限定はされない1以上のネットワーク機能を提供することのできる、ビジターのCSN(connectivity service network)224を含んでよい。しかしこれらはあくまでビジターのCSNまたはホームCSN226が提供することのできる機能のタイプの一例であって、請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。ビジターのCSN224は、例えばビジターのCSN224がサブスクライバステーション216の正規のサービスプロバイダを構成していないCSNのことであり、例えば、サブスクライバステーション216がホームCSN226等のホームCSNから離れてローイングを行っているような例、または、ネットワーク200はサブスクライバステーションの正規のサービスプロバイダの一部ではあるが、ネットワーク200がサブスクライバステーション216の主要位置またはホーム位置ではない別の位置または状態にあるような例が挙げられる。固定された無線構成においては、WiMAXタイプのCPE(customer premises equipment)222は、ホームまたはビジネスに位置して、基地局220、ASN218、およびホームCSN226を介してインターネット210へのホームまたはビジネスカスタマブロードバンドアクセスを提供してよく、その方法は、WiMAX CPE222が通常は静止した位置に置かれており、適宜異なる位置に移動させることもできる点を除いては、基地局214、ASN212、およびビジターのCSN224を介したサブスクライバステーション216によるアクセスと同様の方法であってよく、例えばサブスクライバステーション216が基地局214の範囲内にある場合には、サブスクライバステーション216は1以上の位置で利用可能である。1以上の実施形態では、OSS(operation support system)228は、ネットワーク200に管理機能を提供し、ネットワーク200の機能実体間にインタフェースを提供するネットワーク200の一部であってよい。図2のネットワーク200はネットワーク200の一定の数のコンポーネントを示す一種の無線ネットワークであり、請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。アダプティブH−ARQ処理の動作のフロー図を図3に示し、以下これについて説明する。
【0010】
図3は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQ処理のフロー図である。図3のアダプティブH−ARQ処理300のフロー図は、図1に示すアダプティブH−ARQシステム100により実装することができる。ブロック310で、データパケット118がトランスミッタ110により、k・nシンボルで符号化したkビットでトランスミッタ110により送信することができ、nはここで説明する最適化処理の結果決定される値であってよい。インデックスiは、i=1が第1の送信であり、i=2が第2の送信であり、といったように、送信の番号を表していてよい。インデックスi=2以上の送信は、再送信のことであり、一般的に、送信はインデックスiの任意の値(あるいはi番目の送信)であってよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。変調は、コードレートRがR=1/(n・Nbps)と表すことができるように決定されてよい。ここで、Nbpsは、変調のシンボルあたりのビット数である。コードレートRは、変調に少なくとも部分的に基づく予め定められた制限範囲内になるよう選択される。レシーバ114はパケット118を受信して、パケット118内のデータを復号する試みを行い、容量を判断する。レシーバ114がパケット118を復号可能であるということになると、レシーバ114はACKメッセージをトランスミッタ110に送り(ブロック312)、アダプティブH−ARQ処理300が終了する(ブロック318)。同様にして最大再送信可能数に達すると、処理300が終了する(ブロック318)。
【0011】
まだ最大再送信可能数に達しておらず、レシーバ114がパケット118を復号することができない場合には、レシーバ114は、最初に試みられたパケット118の送信からの品質容量情報とともにNACKメッセージをトランスミッタ110に送る(ブロック312)。1以上の実施形態では容量情報をCとして表す場合があり、これは、容量または1以上の前の再送信における累積容量であってよい。
【0012】
1以上の実施形態では、容量という用語は、チャネルのシャノン容量のことであってよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。1以上の実施形態では、容量という用語が一般的に、チャネルの品質を計測するのに利用される1以上のメトリックのことであってよく、一部の実施形態では、相互情報(mutual information)および/またはその概算等の、そのチャネルの最大送信レートを計測するメトリックのことであってよいが、請求される主題の範囲はこれらの点に限定はされない。
【0013】
i=2...から最大再送信可能数までの次の送信については、ブロック314で、トランスミッタ110は、再送信のためにシンボルの数n(C)を、前に取得された容量の関数として計算および設定して、適切なMCS(modulation and coding scheme)を利用してパケット118をk*n個のシンボルで送信する(ブロック316)。レシーバ114がパケットの受信および復号に成功しなかった場合には、パケット118の受信および復号に成功するまで、または最大再送信可能数に達するまで、ブロック312、314、および316を繰り返す。以下に説明する最適化とは、スペクトル効率が最適化されるn(C)関数である。
【0014】
1以上の実施形態では、アウテージ容量を利用して、アダプティブH−ARQ処理300を最適化することができる。これらの実施形態では、SISOシステムのターゲットアウテージ容量は、約1%のターゲットアウテージ値であってよく、これは、レシーバ114によるデータパケットの約1%の受信または復号が失敗に終わることを意味している。アウテージ容量値は、パケットの1以上の前の送信からのチャネル容量をフィードバックすることにより最適化され、ここでは、トランスミッタ110が、例えば再送信のシンボル数を選択することにより、このパケットの1以上の再送信用の送信パラメータを調節することができる。1以上の実施形態では、1以上の再送信におけるシンボル数は、ターゲットアウテージ値を選択された値(例えばSISOシステムの1%のターゲット値)を最適化するべく、少なくとも部分的にヒューリスティックアルゴリズムにより決定することができる。例えば、1以上の前の送信の合計容量を、レシーバ114からトランスミッタ110にフィードバックしてよく、ここでトランスミッタ110は、1以上の再送信の長さを、フィードバックされる容量の減少関数として設定する。フィードバックされる容量は、様々な方法(例えば1再送信あたりの容量、1以上の前の送信の合計容量、またはパケット118の復号に関する剰余容量等)により決定することができる。この容量に加えて、他の品質情報を利用することもできる。例えば概算として、容量の合計ΣC=log(1+SNR)をフィードバックすることができる。ここで、SNRは、レシーバ114で概算されて、1以上の再送信のシンボル数で重み付けされた信号対雑音比(SNR)である。1以上の実施形態では、再送信の長さは、1以上の前の送信からの累積容量の減少関数として設定することができ、例えば、減少リニア関数は、以下のようである。

【0015】
1以上の実施形態では、累積容量が予め定められた閾値を下回る場合には再送信をアボートして、不成功に終わる可能性の高い送信を行わないようにすることもできる。このような、予め定められた閾値を下回る再送信のアボートは、注水効果(water pouring effect)と称されることもある。1以上の実施形態では、アダプティブH−ARQ方法300で選択的ACKスキームを実装することができる。このような選択的ACKスキームでは、ACKを送信するか否かに基づいて組み合わせを行うことができる。このような選択的ACKスキームは、再送信の長さが前の送信の長さに等しい場合、および/または、第1の、または前の送信の失敗の確率が1または略1である場合等に対応するべく実装されることがある。しかし、ACK/NACKメッセージをフィードバックするか否かに関らず、複数の送信を実装して時間ダイバーシティを達成すると好適な場合もある。1以上の代替的な実施形態では、第2の送信を第1の送信と比して固定された位置に同期させて、第3の送信を動的に割り当てる、といった部分的な同期割り当てスキームを実装することもできる。しかし、これらはアダプティブH−ARQ処理300の実装スキームの一部の例にすぎず、請求される主題の範囲はこれらの点に限定はされない。
【0016】
図4は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムの平均スループットを示すグラフである。図4のグラフ400は、シンボルごとのビットに対する信号対雑音比(SNR)(単位はデシベル(dB))で表されるアダプティブH−ARQシステム100の平均スループットのプロットである。プロット410は、フィードバックを利用しないシステム100を表す。全体的にこのスキームのスループット値は最低となっている。次に、プロット412は、ACKおよびNACKメッセージをレシーバ114からトランスミッタ110にフィードバックするH−ARQシステム100のスキームを表しており、再送信の長さは第1の送信の長さと等しい。このスキームのスループットは、フィードバックを利用しないスキームに比べると僅かに向上している。次に、プロット414は、ACKおよびNACKメッセージをフィードバックするH−ARQシステム100のスキームを表しており、再送信の長さが最適化されている。このスキームのスループットは、固定長の再送信を利用する場合よりも向上している。上述した全てのスキームはアダプティブではない。次に、プロット416は、ACKおよびNACKメッセージをフィードバックするアダプティブH−ARQシステム100のスキームを表しており、再送信におけるシンボル数は、前の送信の容量の関数である。図4から分かるように、プロット416は他のスキームよりもスループットが比較的高い。同様に、プロット418は、プロット416と同じスキームであるが、閾値を下回る容量値(Cの値)の再送信がアボートされる最適化アルゴリズムを利用している。プロット418の全体的なスループットは、プロット416のものと略同じである。実際のところ、これら2つのプロットはグラフ400では略一致している。図4のグラフ400は、シンボルごとのビットのスループットを示しているが、後述するように図5のグラフ500では、典型的なH−ARQスキームに対してスキームの相対的な向上が見られる。
【0017】
図5は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムの相対的なパフォーマンスの向上を示すグラフである。グラフ500では、典型的なH−ARQスキームに対してスキームの相対的な向上が見られる。グラフ500が示すプロットは、図4のグラフ400が示すプロットと同じスキームを表しているが、プロット512として示され、図4のスキーム412に対応する典型的なH−ARQスキームに対するスループットの割合として、相対的なスループットの向上がdB単位でSNRに対するものとしてプロットされている点が異なる。プロット512は、ACKおよびNACKメッセージがフィードバックされ、再送信が元の送信の長さと同じ長さを利用するようなアダプティブH−ARQシステム100を表している。プロット512は、自身に対する割合として計測されており、割合は常に1であり、全てのSNR値について水平線として表されている。プロット510は、フィードバックを実装しないスキームを表し、このケースでは、割合の値が1以下であり、フィードバックを利用しないプロット510のほうが、フィードバックを利用するプロット512よりもスループットが低いことを示している。次に、プロット514は、再送信の長さを可変とし、最適化することができるスキームを表している。これから分かるように、割合は1以上であり、プロット512で表す典型的なのH−ARQスキームよりも向上していることが伺われる。プロット516は、送信を調節するべく容量をフィードバックするスキームを表している。グラフ500から分かるように、プロット516のスキームは常に1を超える割合であり、これは、プロット514のスキームに対するさらなる向上を表している。同様に、プロット518は、フィードバックする容量が閾値を下回る場合には再送信がアボートされる、プロット516に最適化処理を加えたスキームを表している。ここから分かるように、プロット518は、プロット516のスキームに比して僅かに向上を示している。図5のグラフ500のプロットはあくまで例示を目的として示されており、図1のアダプティブH−ARQシステム100のスループットを向上させる目的から他のスキームを実装することも可能であり、請求される主題の範囲がこれらの点に限定はされないことに留意されたい。
【0018】
図6は、1以上の実施形態において、再送信のシンボル数を、アウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムの前の送信の容量の関数として示すグラフである。図6に示すグラフ600は、第2の送信のn個の値のプロットを、図4および図5を参照して上述した様々なフィードバックスキームの第1の送信に対してフィードバックされる容量の値Cの関数として図示している(SNR=30dB)。プロット610は、再送信が全て第1の送信の長さと同じ長さを有するような典型的なH−ARQスキームを表している。このスキームでは、nの値は一定であり、このタイプのH−ARQスキームがアダプティブではないことを示している。プロット612は、割合がアウテージ容量に等しくなるよう第2の送信のシンボル数を第1の送信の容量の関数として決定するようnの値を選択するアダプティブH−ARQスキームを表している。プロット614は、プロット612のスキームと同じスキームであり、ここではCの値が閾値より小さくなる再送信をアボートするよう最適化が行われている。グラフ600に示すように、この閾値は約C=6であり、nは、C1の値が約6未満の場合にゼロの値をとる。このような最適化のことを注水効果(water pouring effect)スキームと称することがある。グラフ600に示す値およびプロットはあくまで例示を目的としたものであり、請求される主題の範囲はこれらの点に限定はされない。アウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQを実装可能なデバイスおよび情報処理システムの一例(例えば、図1のトランスミッタ110またはレシーバ114)は、図7および図8を参照して後述する。
【0019】
図7は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムを実装することのできるデバイスの一例のブロック図である。図7のデバイス700は、多くの例のなかで、例えば図2のサブスクライバステーション216またはWiMAX CPE222を含むことができる。デバイス700は、レシーバ710で受信するRF信号をベースバンド信号に復調するベースバンド復調器714に連結された1以上のアンテナ712を有する無線周波数レシーバ(RF)710を含んでよい。レシーバチャネル品質716は、ベースバンド信号から取得され、トランスミッタ718に提供され、トランスミッタ718が、送信元であるデバイスに対して、ここで説明するアダプティブH−ARQ処理の一環でチャネル品質情報をフィードバックする。例えば、送信元であるデバイスは、多くの例のなかで、図2の基地局214または基地局220を含むことができる。トランスミッタ718は1以上のアンテナ720と連結されてよく、一部の実施形態では、ダイプレクサ等の適切なデバイスを利用してレシーバ710との間で同じアンテナ712を共有することができる。H−ARQコンバイナ722は、メモリ724に連結された回路またはプロセッサを含んでよく、メモリ724に、ここで説明するアダプティブH−ARQ処理を実行させるプログラミングコードを格納することができる。アダプティブH−ARQ処理を実装する一環として、H−ARQコンバイナ722は、受信されたベースバンド信号を順方向誤り訂正(FEC)復号器726に提供して、FEC復号器726がベースバンド信号のデータを復号する。復号されたデータは、巡回冗長検査(CRC)回路728により処理され、検査の結果に基づいてデータの復号に成功したか否かが判断される。CRC回路728は、検査に基づいてACKまたはNACK返信をトランスミッタに提供して、アダプティブH−ARQ処理の一環として、送信元のデバイスに返信をフィードバックする。図7は、アダプティブH−ARQ処理を実装可能なデバイスの一例であるアーキテクチャを示しているにすぎず、1以上の実施形態では、デバイスは様々な配置例に示されているものよりも多い、または少ない数のブロックを含むこともでき、請求されている主題の範囲はこの点に限定はされない。
【0020】
図8は、1以上の実施形態におけるアウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−ARQシステムを実装することのできる情報処理システムのブロック図である。図8の情報処理システム800は、図2で説明するネットワーク200のネットワークエレメントの任意の1以上を具現化することができ、さらに、図1のトランスミッタ110および/またはレシーバ114を含むことができる。例えば、情報処理システム800は、基地局214および/またはサブスクライバステーション216のハードウェアを表してよく、特定のデバイスまたはネットワークエレメントのハードウェアの仕様に応じてこれより多い、または少ない数のコンポーネントを有する。情報処理システム800は、数種類のコンピューティングプラットフォームの一例を表しており、情報処理システム800は、図8に示すものより多い、または少ない数のエレメントおよび/または異なるエレメントの配置を採用することができ、請求される主題の範囲はこれらの点に限定はされない。
【0021】
情報処理システム800は、1以上の実施形態においては、1以上のプロセッサコアを含みうるプロセッサ810および/または812等の1以上のプロセッサを含むことができる。プロセッサ810および/または812の1以上は、メモリブリッジ814を介して1以上のメモリ816および/または818に連結してよく、これらはプロセッサ810および/または812の外部に配置されても、あるいは、少なくとも部分的にプロセッサ810および/または812の1以上内に配置されてもよい。メモリ816および/またはメモリ818は、様々な種類の半導体ベースのメモリ(例えば揮発性のメモリおよび/または不揮発性のメモリ)を含むことができる。メモリブリッジ814は、情報処理システム800に連結される表示デバイス(不図示)を駆動するグラフィックスシステム820に連結されてよい。
【0022】
情報処理システム800はさらに、様々な種類のI/Oシステム824に連結する入出力(I/O)ブリッジ822を含むことができる。I/Oシステム824は、例えば、1以上の周辺デバイスを情報処理システム800に連結させるユニバーサルシリアルバス(USB)タイプのシステム、IEEE1394タイプのシステム等を含むことができる。バスシステム826は、1以上の周辺デバイスを情報処理システム800に連結する1以上のバスシステム(例えばPCI(peripheral component interconnect)エクスプレスタイプのバス等)を含むことができる。ハードディスクドライブ(HDD)コントローラシステム828は、1以上のハードディスクドライブ等(例えば、シリアルATAタイプのドライブ等、または、フラッシュメモリ、相変化、および/または、カルコゲニドタイプのメモリ等の半導体ベースのドライブ)を情報処理システムに連結させることができる。スイッチ830を利用して、1以上のスイッチ対象のデバイス(例えばギガビットイーサネット(登録商標)タイプのデバイス等)をI/Oブリッジ822に連結させることができる。1以上の実施形態では、RFブロック832は、少なくとも部分的に図1のトランスミッタ110および/またはレシーバ114を含むことができる。さらに、トランスミッタ110および/またはレシーバ114の少なくとも一部(例えば、ベースバンドおよび/または直交信号の処理等のトランスミッタ110および/またはレシーバ114のデジタル機能)がプロセッサ810により実装されてよいが、請求される主題の範囲はこの点に限定はされない。
【0023】
請求される主題について、ある程度の具体性をもった説明をしてきたが、説明されたエレメントは、当業者によって、請求される主題の精神および/または範囲を逸脱することなく変更可能である。アウテージ容量最適化を用いるアダプティブH−AQに関する主題および/またはそれに伴う利点の多くは前述の説明により理解されると信じるが、請求される主題の範囲および/または精神を逸脱せずに、または、重要な利点、その例示的な実施形態でしかないここで前述した形状の全てを犠牲することなく、および/または、実質的な変更を加えることなく、形状、構成、および/または、配置に関する様々な変形例が明らかである。請求項はこれらの変形例をカバーし含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の数のシンボルで符号化された第1の数のビットを含むデータパケットをレシーバに送信する段階と、
前記レシーバが前記データパケットの復号に成功しなかった場合に、前記送信用のメトリックとともに負の受領確認メッセージを受信する段階と、
前記送信用の前記メトリックの情報の関数である可変数のシンボルで符号化された前記データパケットを前記レシーバに対して1以上の回数再送信する段階と
を備える方法。
【請求項2】
前記可変数のシンボルは、前記1以上の回数の再送信をターゲットアウテージ値に最適化するよう選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可変数のシンボルは、1以上の前の送信のメトリックの減少リニア関数として決定される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メトリックの情報は、1以上の前の送信の容量、前記データパケットを復号する剰余容量、送信ごとの容量、またはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メトリックは、1以上の送信の前記可変数のシンボルにより重み付けされた信号対雑音比の概算の関数を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記可変数のシンボルは、1以上の前の送信からの累積メトリックの関数である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
i番目の送信の前記可変数のシンボルは、値nにより乗算された前記第1の数のビットに少なくとも部分的に基づいて選択され、

である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記可変数のシンボルは、前記メトリックの情報の値が閾値を下回る場合に前記1以上の回数の再送信をアボートすることにより、前記1以上の回数の再送信をターゲットアウテージ値に最適化するよう選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
送信回数が選択された回数を上回った場合に、前記1以上の回数の再送信を終了する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記データパケットは、1以上の後続する送信について可変数のシンボルで符号化され、前記可変数のシンボルは、前記レシーバから受領確認または負の受領確認メッセージのいずれが受信されようとも、1以上の前の送信のメトリックの情報の関数である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1の送信でレシーバから送信された第1の数のシンボルで符号化された第1の数のビットを含むデータパケットを受信する段階と、
データパケットの復号に成功しなかった場合に、前記第1の送信用の容量とともに負の受領確認メッセージを送信する段階と、
1以上の前の送信の前記容量の関数である可変数のシンボルで符号化された前記データパケットを、前記パケットの復号に成功するまで1以上の後続する送信で受信する段階と
を備える方法。
【請求項12】
前記可変数のシンボルは、後続する送信をターゲットアウテージ値に最適化するよう選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記可変数のシンボルは、1以上の前の送信の前記容量の減少リニア関数として決定される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記容量は、前記データパケットを復号する剰余容量、再送信ごとの容量、またはこれらの組み合わせを含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記容量は、1以上の送信の前記可変数のシンボルにより重み付けされた信号対雑音比の概算の関数を含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記可変数のシンボルは、1以上の前の送信からの累積メトリックの関数である請求項11に記載の方法。
【請求項17】
i番目の送信の前記シンボルの数は、値nにより乗算された前記第1の数のビットに少なくとも部分的に基づいて選択され、

である請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記シンボルの数は、メトリックの情報の値が閾値を下回る場合に前記後続する送信をアボートすることにより、前記1以上の後続する送信をターゲットアウテージ値に最適化するよう選択される請求項11に記載の方法。
【請求項19】
後続する送信回数が選択された回数を上回った場合に、前記1以上の後続する送信を終了する請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記データパケットは、トランスミッタに受領確認または負の受領確認メッセージのいずれが送信されようとも、1以上の後続する送信について可変数のシンボルで符号化される請求項11に記載の方法。
【請求項21】
ベースバンドプロセッサと、
前記ベースバンドプロセッサに連結されたトランシーバと
を備え、
前記ベースバンドプロセッサは前記トランシーバに、
第1の数のシンボルで符号化された第1の数のビットを含むデータパケットをレシーバに送信させ、
前記レシーバが前記データパケットの復号に成功しなかった場合に、前記送信用のメトリックとともに負の受領確認メッセージを受信させ、
1以上の前の送信のメトリックの減少リニア関数として決定される可変数のシンボルで符号化された前記データパケットを前記レシーバに対して再送信させる情報処理システム。
【請求項22】
前記可変数のシンボルは、後続する送信をターゲットアウテージ値に最適化するよう選択される請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項23】
前記メトリックは、1以上の前の送信の容量を含む請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項24】
前記容量は、前記データパケットを復号する剰余容量、再送信ごとの容量、またはこれらの組み合わせを含む請求項23に記載の情報処理システム。
【請求項25】
前記メトリックは、1以上の送信の前記可変数のシンボルにより重み付けされた信号対雑音比の概算の関数を含む請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項26】
前記可変数のシンボルは、1以上の前の送信からの累積メトリックの関数である請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項27】
i番目の送信の前記可変数のシンボルは、値nにより乗算された前記第1の数のビットに少なくとも部分的に基づいて選択され、

である請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項28】
前記可変数のシンボルは、前記メトリックの情報の値が閾値を下回る場合に送信をアボートすることにより、後続する送信をターゲットアウテージ値に最適化するよう選択される請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項29】
送信回数が選択された回数を上回った場合に、後続する送信を終了する請求項21に記載の情報処理システム。
【請求項30】
前記データパケットは、1以上の後続する送信について可変数のシンボルで符号化され、前記可変数のシンボルは、前記レシーバから受領確認または負の受領確認メッセージのいずれが受信されようとも、前記1以上の前の送信または再送信のメトリックの情報の関数である請求項21に記載の情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−147115(P2011−147115A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−261187(P2010−261187)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】