アキュムレータシステム
【課題】封入ガスの圧縮圧力によって液体を放出するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムにおいて、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する液体の圧力をほぼ一定にする。
【解決手段】封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータ10と、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材11と、一端が固定系に接続され他端が移動部材11に接続され、移動部材11の移動方向に沿って配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構12と、一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構14と、を備える。
【解決手段】封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータ10と、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材11と、一端が固定系に接続され他端が移動部材11に接続され、移動部材11の移動方向に沿って配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構12と、一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構14と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体(油や水等)の圧力エネルギーを気体の圧力エネルギーに変換して貯蔵し、液体を気体が膨張する力で放出する装置としてアキュムレータが知られている。
【0003】
アキュムレータとしては、ハウジング内にブラダと呼ばれる弾性体の袋等を配設し、そのブラダ内に窒素等の不活性ガスを封入したブラダ型アキュムレータ(例えば特許文献1)や、ハウジング内に摺動可能に収容され気室と液室を区画するフリーピストンを有し、そのフリーピストンで区画された気室内に窒素等の不活性ガスを封入したピストン型アキュムレータ(例えば特許文献2)等がある。
【0004】
このようなアキュムレータにおいては、加圧された液体のハウジング内への流入に応じて封入ガス(上記の気室内或いはブラダ内に封入された窒素等の不活性ガス)が圧縮され、封入ガスの圧縮による圧力上昇分が圧力エネルギーとして蓄えられ、その後、封入ガスの圧縮圧力を受ける液体をハウジングから放出することによって、貯蔵したエネルギーの再利用を可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−108001号公報
【特許文献2】特開2006−226343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなアキュムレータは圧力エネルギーの貯蔵、放出(再利用)を可能とする優れた機能を発揮するが、アキュムレータにおいては、その原理上、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化によって、出力機器へ供給する液体の圧力変動が必然的に生じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、封入ガスの圧縮圧力によって液体を放出するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムにおいて、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する液体の圧力をほぼ一定にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、一端が固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えたものである。
【0009】
上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、それら第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置しても良い。
【0010】
また、本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えたものである。
【0011】
上記第一ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、それら第一ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置しても良い。
【0012】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えても良い。
【0013】
また、本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えたものである。
【0014】
一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記第二ピストン・シリンダ機構に連通された第三ピストン・シリンダ機構をさらに備えても良い。
【0015】
上記第一ピストン・シリンダ機構及び上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、それら第一ピストン・シリンダ機構及び第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置しても良い。
【0016】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封入ガスの圧縮圧力によって液体を放出するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムにおいて、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する液体の圧力をほぼ一定にすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るアキュムレータシステム1は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータ10と、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材11と、一端が固定系に接続され他端が移動部材11に接続され、移動部材11の移動方向に沿って配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構12と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構14とを備える。
【0021】
本実施形態に係るアキュムレータ10及び出力機器13は液体として油を用いる。アキュムレータ10としては、ハウジング内にブラダと呼ばれる弾性体の袋等を配設し、そのブラダ内に窒素等の不活性ガスを封入したブラダ型アキュムレータや、ハウジング内に摺動可能に収容され気室と液室を区画するフリーピストンを有し、そのフリーピストンで区画された気室内に窒素等の不活性ガスを封入したピストン型アキュムレータ等を用いることができる。
【0022】
本実施形態の移動部材11は固定系に配置された軸受15にスライド可能に支持されており、第一ピストン・シリンダ機構12及び第二ピストン・シリンダ機構14から受ける力によって移動軸線Cに沿って移動されるようになっている。
【0023】
本実施形態の第一ピストン・シリンダ機構12は、固定系に接続された有底筒状のシリンダ16と、移動部材11に接続されたピストン17とから構成されている。ピストン17は、シリンダ16に摺動可能に装着されており、ピストン17の頂部18とシリンダ16との間に油室19が区画形成されている。油室19は、油流路(配管)20を介してアキュムレータ10内の油室に接続されている。なお、シリンダ16を移動部材11に接続し、ピストン17を固定系に接続するようにしても良い。
【0024】
本実施形態の第二ピストン・シリンダ機構14は、固定系に設けられた支点21に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ22と、移動部材11に設けられた支点23に回動可能に接続されたピストン24とから構成されている。ピストン24は、シリンダ22に摺動可能に装着されており、ピストン24の頂部25とシリンダ22との間に油室26が区画形成されている。油室26は、油流路(配管)27を介して出力機器13に接続されている。本実施形態では、配管27は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ22を移動部材11側の支点23に回動可能に接続し、ピストン24を固定系側の支点21に回動可能に接続するようにしても良い。
【0025】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0026】
出力機器13からの油が第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内に流入すると、その油の圧力に応じた推力Faが第二ピストン・シリンダ機構14に生じ、その推力Faにおける移動部材11の移動軸線Cと直交する直交軸線CTに対する第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θに応じた分力Faxが、移動軸線Cに沿って移動部材11に作用する。
【0027】
第二ピストン・シリンダ機構14による分力Faxを受けて、移動部材11及び第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17が移動して、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位に応じた容積の油が第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から押し出されてアキュムレータ10の油室内に流入する。
【0028】
第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から押し出されてアキュムレータ10の油室内に流入した油によって、アキュムレータ10内の封入ガスが圧縮されることとなる。この封入ガスの圧縮によって、圧力エネルギーの貯蔵を可能とする。また、アキュムレータ10内の封入ガスの圧縮圧力により油をアキュムレータ10の油室内から押し出すことで、この油の圧力で第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17、移動部材11、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24を移動させる。第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の移動に伴い油を第二ピストン・シリンダ機構14の油室26から流出させることによって、圧力エネルギーの放出(再利用)を可能とする。
【0029】
ここで、本実施形態のアキュムレータシステム1では、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータ10(ブラダ型アキュムレータやピストン型アキュムレータ等)を最終的なエネルギー貯蔵装置として用い、アキュムレータ10内の封入ガスの指数級数的な圧力変動を受けてストローク動作する第一ピストン・シリンダ機構12と、出力機器13からの油を受けてストローク動作する第二ピストン・シリンダ機構14とを対抗させて、それらピストン・シリンダ機構(第一ピストン・シリンダ機構12、第二ピストン・シリンダ機構14)による移動部材11の移動軸線Cに沿った力の釣り合いによって、アキュムレータ10内の封入ガスの圧縮圧力に対する第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内の油の圧力(出力機器13へ供給する油の圧力)を決める構成としている。
【0030】
本実施形態のアキュムレータシステム1では、第二ピストン・シリンダ機構14を移動部材11の移動軸線Cに対して角度をもって配置しているので、アキュムレータ10の油室内への油の出入りによる指数級数的な封入ガスの圧縮圧力の変動特性を、第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θの変化による非線形な分力Faxの変化特性によって相殺して、第二ピストン・シリンダ機構14内の油室26の油の圧力Paの変動を小さくすることができ、アキュムレータ10のハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器13へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図2参照)。即ち、後述のようにハウジング内に出入りする油の容積に応じて指数級数的に変化する封入ガスの圧縮圧力と、後述のように第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θに応じて非線形に変化する分力Faxによる圧力とが相殺されるので、第二ピストン・シリンダ機構14内の油室26の油の圧力Paの変動を小さくすることができる。
【0031】
以下、本実施形態に係るアキュムレータシステム1の緒元設定方法を説明する。
【0032】
移動部材11の移動軸線Cに沿った方向に対する第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の偏差をX〔mm〕とし、移動軸線Cに直交する直交軸線CTに沿った方向に対する第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の偏差をH〔mm〕とすると、直交軸線CTに対する第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θ〔°〕、第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の支点間距離L〔mm〕は各々以下の式(1)、(2)で表される。なお、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の変位によって、Xの値は変化するが、Hの値は不変である。
【0033】
θ=tan-1(X/H) ・・・(1)
L=H/cosθ ・・・(2)
次いで、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の受圧面積をSa〔cm2〕とし、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24への作用油圧をPa〔kg/cm2〕とすると、第二ピストン・シリンダ機構14に発生する推力Fa〔kg〕は以下の式(3)で表され、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の受圧面積をSb〔cm2〕とし、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17への作用油圧をPb〔kg/cm2〕とすると、第一ピストン・シリンダ機構12に発生する推力Fb〔kg〕は以下の式(4)で表される。
【0034】
Fa=Pa×Sa ・・・(3)
Fb=Pb×Sb ・・・(4)
第二ピストン・シリンダ機構14による推力Faが移動部材11の移動軸線Cに沿った方向に及ぼす分力Fax〔kg〕は、以下の式(5)で表される。
【0035】
Fax=Fa×sinθ ・・・(5)
第二ピストン・シリンダ機構14による分力Faxが第一ピストン・シリンダ機構12による推力Fbと対抗するのでので、式(3)〜(5)より、FaxとFbとの釣り合いの式は以下の式(6)で表される。
【0036】
Pa×Sa×sinθ=Pb×Sb ・・・(6)
式(6)より、Paは以下の式(7)で表される。
【0037】
Pa=(Pb×Sb)/(Sa×sinθ) ・・・(7)
本実施形態に係るアキュムレータシステム1において、偏差X、傾角θ、支点間距離L、作用油圧Pa、Pbの初期状態の状態値を各々、X0、θ0、L0、Pa0、Pb0とすると、初期状態の傾角θ0、支点間距離L0、作用油圧Pa0は各々以下の式(8)〜(10)で表される。
【0038】
θ0=tan-1(X0/H) ・・・(8)
L0=H/cosθ0 ・・・(9)
Pa0=(Pb0×Sb)/(Sa×sinθ0) ・・・(10)
初期状態から第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内に油がdVa〔cc〕流入して第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17がδ1〔mm〕だけ移動し、第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から油がdVb〔cc〕流出したとすると、そのときの偏差X、傾角θ、支点間距離L、第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内へ流入した油の容量dVa〔cc〕、第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から流出した油の容量dVb〔cc〕は各々、以下の式(11)〜(15)で表される。
【0039】
X=(X0+δ1) ・・・(11)
θ=tan-1((X0+δ1)/H) ・・・(12)
L=H/cosθ ・・・(13)
dVa=(L−L0)×Sa/10 ・・・(14)
dVb=δ1×Sb/10 ・・・(15)
ここで、ガスの圧力P〔kg/cm2〕とガスの容積〔cc〕との関係は、周囲との熱移動を無視した概略特性として可逆断熱変化とみなせば、「P×Vκ=const」の関係になる。ちなみに、κはガスの種類毎の固有値である比熱比で、ガスがアキュムレータの封入ガスとして一般的に用いられる窒素ガスである場合、κ=1.4である。
【0040】
また、本実施形態に係るアキュムレータシステム1において、アキュムレータ10内の封入ガスの初期容積をVgmax〔cc〕とし、封入ガスの初期圧力をPgmin〔kg/cm2〕とし、封入ガスの比熱比をκとし、アキュムレータ10内に流入する油の容積をdVb〔cc〕とすると、アキュムレータ10内の封入ガスの圧力Pg〔kg/cm2〕は、以下の式(16)で表される。
【0041】
Pg=Pgmin×(Vgmax/(Vgmax−dVb))κ
=Pgmin/(1−dVb/Vgmax)κ ・・・(16)
アキュムレータ10内に流入する油の最大容積をdVbmax〔cc〕とすると、式(16)より、使用レンジにおけるアキュムレータ10内の封入ガスの最大圧力Pgmaxは以下の式(17)で表される。
【0042】
Pgmax=Pgmin/(1−dVbmax/Vgmax)κ ・・・(17) 式(17)より、アキュムレータ10内に流入する油の最大容積dVbmaxは以下の式(18)で表される。
【0043】
dVbmax=(1−(Pgmin/Pgmax)(1/κ))×Vgmax ・・・(18)
式(15)、(18)より、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の最大変位δ1max〔mm〕は以下の式(19)で表される。
【0044】
δ1max=dVbmax×10/Sb
=(1−(Pgmin/Pgmax)(1/κ))×Vgmax×10/Sb ・・・(19)
また、式(12)より、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位δ1=δ1maxでの第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θmaxは、以下の式(20)で表される。
【0045】
θmax=tan-1((X0+δ1max)/H) ・・・(20)
第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位δ1が0〜δ1maxまで変化すると、アキュムレータ10内の封入ガスの圧力PgがPgmin〜Pgmaxまで変化することとなる。
【0046】
従って、初期状態においてPb0=Pgminの関係にあるので、式(7)或いは式(10)より、初期状態(δ1=0)での第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24への作用油圧Pa0は以下の式(21)で表され、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位δ1=δ1maxでの第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24への作用油圧Pamaxは以下の式(22)で表される。
【0047】
Pa0=(Pgmin×Sb)/(Sa×sinθ0) ・・・(21)
Pamax=(Pgmax×Sb)/(Sa×sinθmax) ・・・(22) 従って、Pamax=Pa0となる条件は、式(21)、式(22)より、以下の式(23)で表される。
【0048】
(Pgmin×Sb)/(Sa×sinθ0)=(Pgmax×Sb)/(Sa×sinθmax) ・・・(23)
式(23)より、以下の式(24)が得られる。
【0049】
(X0+δ1max)×((1+(X0/H)2)/(1+((X0+δ1max)/H)2))1/2/((X0−Pgmax)×Pgmin)=0 ・・・(24)
まず、式(19)によって適度なδ1maxとなる第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の受圧面積Sbを指定すると共に、レイアウト上望ましい第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の偏差Hを指定すれば、式(24)を条件式とする収束演算解としてPamax=Pa0となるX0の値が得られる。次いで、式(21)によって、適度なPa0となる第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の受圧面積Saを決定すれば良い。
【0050】
この緒元設定方法によって決定した諸元により、アキュムレータ10内の封入ガスの圧力PgがPgmin〜Pgmaxへと大きく変化する動作領域において、第二ピストン・シリンダ機構14内の油室26の油の圧力Paの変動を小さくすることができる(図2参照)。
【0051】
なお、図1に示す実施形態とは逆に、アキュムレータシステムが、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材に回動可能に接続され、移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部がアキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が固定系に接続され他端が移動部材に接続され、移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えても良い。
【0052】
このようにしても、図2の場合と同様に、第二ピストン・シリンダ機構内の油室の油の圧力の変動を小さくすることができ、アキュムレータの油室内への油の出入りによる指数級数的な封入ガスの圧縮圧力の変動特性を、第一ピストン・シリンダ機構の傾角θの変化による非線形な分力Faxの変化特性によって相殺して、第二ピストン・シリンダ機構内の油室の油の圧力の変動を小さくすることができ、アキュムレータのハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図3参照)。
【0053】
次に、別の実施形態を図4により説明する。図1の実施形態と同一構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、本実施形態に係るアキュムレータシステム2は、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構30と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構31とを備える。
【0055】
本実施形態の第一ピストン・シリンダ機構30は、固定系に設けられた支点32に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ33と、移動部材11に設けられた支点34に回動可能に接続されたピストン35とから構成されている。ピストン35は、シリンダ33に摺動可能に装着されており、ピストン35の頂部36とシリンダ33との間に油室37が区画形成されている。油室37は、油流路(配管)38を介してアキュムレータ10内の油室に接続されている。本実施形態では、配管38は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ33を移動部材11側の支点34に回動可能に接続し、ピストン35を固定系側の支点32に回動可能に接続するようにしても良い。
【0056】
本実施形態の第二ピストン・シリンダ機構31は、固定系に設けられた支点39に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ40と、移動部材11に設けられた支点41に回動可能に接続されたピストン42とから構成されている。ピストン42は、シリンダ40に摺動可能に装着されており、ピストン42の頂部43とシリンダ40との間に油室44が区画形成されている。油室44は、油流路(配管)45を介して出力機器13に接続されている。本実施形態では、配管45は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ40を移動部材11側の支点41に回動可能に接続し、ピストン42を固定系側の支点39に回動可能に接続するようにしても良い。
【0057】
本実施形態では、第一ピストン・シリンダ機構30及び第二ピストン・シリンダ機構31を直交軸線CTに対して互いに異なる方向に傾斜させている。
【0058】
本実施形態に係るアキュムレータシステム2によっても、図1に係る実施形態と同様に、第二ピストン・シリンダ機構31内の油室44の油の圧力Paの変動を小さくすることができ、アキュムレータ10のハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器13へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図5参照)。
【0059】
次に、別の実施形態を図6により説明する。図1の実施形態と同一構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係るアキュムレータシステム3は、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構50と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構51と、一端が固定系に接続され他端が移動部材11に接続され、移動部材11の移動方向に沿って配置され且つ内部が第二ピストン・シリンダ機構51に連通された第三ピストン・シリンダ機構52とを備える。
【0061】
本実施形態の第一ピストン・シリンダ機構50は、固定系に設けられた支点53に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ54と、移動部材11に設けられた支点55に回動可能に接続されたピストン56とから構成されている。ピストン56は、シリンダ54に摺動可能に装着されており、ピストン56の頂部57とシリンダ54との間に油室58が区画形成されている。油室58は、油流路(配管)59を介してアキュムレータ10内の油室に接続されている。本実施形態では、配管59は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ54を移動部材11側の支点55に回動可能に接続し、ピストン56を固定系側の支点53に回動可能に接続するようにしても良い。
【0062】
本実施形態の第二ピストン・シリンダ機構51は、固定系に設けられた支点60に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ61と、移動部材11に設けられた支点62に回動可能に接続されたピストン63とから構成されている。ピストン63は、シリンダ61に摺動可能に装着されており、ピストン63の頂部64とシリンダ61との間に油室65が区画形成されている。油室65は、油流路(配管)66を介して出力機器13に接続されている。本実施形態では、配管66は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ61を移動部材11側の支点62に回動可能に接続し、ピストン63を固定系側の支点60に回動可能に接続するようにしても良い。
【0063】
本実施形態の第三ピストン・シリンダ機構52は、固定系に接続された有底筒状のシリンダ67と、移動部材11に接続されたピストン68とから構成されている。ピストン68は、シリンダ67に摺動可能に装着されており、ピストン68の頂部69とシリンダ67との間に油室70が区画形成されている。油室70は、油流路(配管)71を介して第二ピストン・シリンダ機構51内の油室65に接続されている。なお、シリンダ67を移動部材11に接続し、ピストン68を固定系に接続するようにしても良い。
【0064】
本実施形態では、第一ピストン・シリンダ機構50及び第二ピストン・シリンダ機構51を直交軸線CTに対して互いに同一の方向に傾斜させている。
【0065】
本実施形態に係るアキュムレータシステム3によっても、図1に係る実施形態と同様に、第二ピストン・シリンダ機構51内の油室65の油の圧力Pb及び第三ピストン・シリンダ機構52内の油室70の圧力Paの変動を小さくすることができ、アキュムレータ10のハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器13へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図7参照)。なお、図7においては、第二ピストン・シリンダ機構51のピストン63の受圧面積と、第三ピストン・シリンダ機構52のピストン68の受圧面積とが等しい条件で、圧力等を算出している。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0067】
例えば、図8及び図9に示すように、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置したピストン・シリンダ機構(図示例では、第二ピストン・シリンダ機構14)を複数備え、それら第二ピストン・シリンダ機構14を、移動部材11の移動方向と直交する方向の分力Fayが互いに相殺されるように配置しても良い。図8では、直交軸線CTを挟んで配置する第二ピストン・シリンダ機構14を、移動部材11の移動軸線Cを挟んで対称となるように一対配置している。また、図9に示すように、複数のピストン・シリンダ機構(図示例では、第二ピストン・シリンダ機構14)を、移動部材11の周方向に間隔を隔てて配置しても、移動部材11の移動方向と直交する方向の分力Fayを相殺することが可能であり、その場合、分力Fayを相殺することができれば良く、第二ピストン・シリンダ機構14を等ピッチで配置しても良く、第二ピストン・シリンダ機構14を不等ピッチで配置するようにしても良い。移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置したピストン・シリンダ機構を、移動部材11の移動方向と直交する方向の分力Fayが互いに相殺されるように配置することで、移動部材11の移動軸線Cを挟んで分力Fayが相殺されるので、移動部材11にラジアル負荷が作用することを抑制することが可能となる。
【0068】
また、図10及び図11に示すように、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置したピストン・シリンダ機構(図示例では、第二ピストン・シリンダ機構14)を複数備え、それら第二ピストン・シリンダ機構14を支点位置が同じである並列配置にしても良い。第二ピストン・シリンダ機構14を並列配置した場合、並列配置した第二ピストン・シリンダ機構14同士の挙動は常に一体的な動きになるので、これら第二ピストン・シリンダ機構14の油室同士を接続する油流路(配管)をホースのような可撓性のあるものに頼らず堅いもので連結することが可能となり、また並列配置した第二ピストン・シリンダ機構14のシリンダ24を一体で形成することも可能である。
【0069】
また、図12に示すように、図4及び図6に示す実施形態において、アキュムレータ10に接続される第一ピストン・シリンダ機構30の油流路(配管)38に、アキュムレータ10からの液体(油)の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力の油を第一ピストン・シリンダ機構30に供給する油圧比変換機構80を配設しても良い。図示例は、図4に係る実施形態に適用したものである。油圧比変換機構80としては、互いに異なる受圧面積で対向させたフリーピストン81、82の対向油室83、84間の釣り合い油圧の比が、そのフリーピストン81、82の受圧面積の逆比となることを利用する油圧ピストン型の変換機構等を用いることができる。
【0070】
支点32、34に回動可能に接続した第一ピストン・シリンダ機構30に油圧を作用させるには、配管38が可撓性のある材料からなることが求められるが、それは通常、あまりに高圧力に耐える仕様にすることが困難であることが多い。従って、圧力変動が大きく且つその最高圧力が高いアキュムレータ10からの油を第一ピストン・シリンダ機構30の油室37に供給するには、第一ピストン・シリンダ機構30の配管38に、アキュムレータ10からの油の圧力を一定比率で減圧する油圧比変換機構80を配設し、油圧比変換機構80によって減圧された油を第一ピストン・シリンダ機構30の油室37に供給するようにすることにより、可撓性が求められる配管38の作用油圧を抑えることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【図2】図2(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図2(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図3】図3(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図3(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図4】図4は、別の実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【図5】図5(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図5(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図6】図6は、別の実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【図7】図7(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図7(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図8】図8は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示すアキュムレータシステムの概略図である。
【図9】図9は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示す移動部材の断面図である。
【図10】図10は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示す移動部材の断面図である。
【図11】図11は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示す移動部材の断面図である。
【図12】図12は、別の実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1、2、3 アキュムレータシステム
10 アキュムレータ
11 移動部材
12、30、50 第一ピストン・シリンダ機構
13 出力機器
14、31、51 第二ピストン・シリンダ機構
52 第三ピストン・シリンダ機構
80 油圧比変換機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体(油や水等)の圧力エネルギーを気体の圧力エネルギーに変換して貯蔵し、液体を気体が膨張する力で放出する装置としてアキュムレータが知られている。
【0003】
アキュムレータとしては、ハウジング内にブラダと呼ばれる弾性体の袋等を配設し、そのブラダ内に窒素等の不活性ガスを封入したブラダ型アキュムレータ(例えば特許文献1)や、ハウジング内に摺動可能に収容され気室と液室を区画するフリーピストンを有し、そのフリーピストンで区画された気室内に窒素等の不活性ガスを封入したピストン型アキュムレータ(例えば特許文献2)等がある。
【0004】
このようなアキュムレータにおいては、加圧された液体のハウジング内への流入に応じて封入ガス(上記の気室内或いはブラダ内に封入された窒素等の不活性ガス)が圧縮され、封入ガスの圧縮による圧力上昇分が圧力エネルギーとして蓄えられ、その後、封入ガスの圧縮圧力を受ける液体をハウジングから放出することによって、貯蔵したエネルギーの再利用を可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−108001号公報
【特許文献2】特開2006−226343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなアキュムレータは圧力エネルギーの貯蔵、放出(再利用)を可能とする優れた機能を発揮するが、アキュムレータにおいては、その原理上、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化によって、出力機器へ供給する液体の圧力変動が必然的に生じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、封入ガスの圧縮圧力によって液体を放出するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムにおいて、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する液体の圧力をほぼ一定にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、一端が固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えたものである。
【0009】
上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、それら第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置しても良い。
【0010】
また、本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えたものである。
【0011】
上記第一ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、それら第一ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置しても良い。
【0012】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えても良い。
【0013】
また、本発明は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えたものである。
【0014】
一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記第二ピストン・シリンダ機構に連通された第三ピストン・シリンダ機構をさらに備えても良い。
【0015】
上記第一ピストン・シリンダ機構及び上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、それら第一ピストン・シリンダ機構及び第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置しても良い。
【0016】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封入ガスの圧縮圧力によって液体を放出するアキュムレータを備えたアキュムレータシステムにおいて、アキュムレータのハウジング内に出入りする液体の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する液体の圧力をほぼ一定にすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るアキュムレータシステム1は、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータ10と、所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材11と、一端が固定系に接続され他端が移動部材11に接続され、移動部材11の移動方向に沿って配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構12と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構14とを備える。
【0021】
本実施形態に係るアキュムレータ10及び出力機器13は液体として油を用いる。アキュムレータ10としては、ハウジング内にブラダと呼ばれる弾性体の袋等を配設し、そのブラダ内に窒素等の不活性ガスを封入したブラダ型アキュムレータや、ハウジング内に摺動可能に収容され気室と液室を区画するフリーピストンを有し、そのフリーピストンで区画された気室内に窒素等の不活性ガスを封入したピストン型アキュムレータ等を用いることができる。
【0022】
本実施形態の移動部材11は固定系に配置された軸受15にスライド可能に支持されており、第一ピストン・シリンダ機構12及び第二ピストン・シリンダ機構14から受ける力によって移動軸線Cに沿って移動されるようになっている。
【0023】
本実施形態の第一ピストン・シリンダ機構12は、固定系に接続された有底筒状のシリンダ16と、移動部材11に接続されたピストン17とから構成されている。ピストン17は、シリンダ16に摺動可能に装着されており、ピストン17の頂部18とシリンダ16との間に油室19が区画形成されている。油室19は、油流路(配管)20を介してアキュムレータ10内の油室に接続されている。なお、シリンダ16を移動部材11に接続し、ピストン17を固定系に接続するようにしても良い。
【0024】
本実施形態の第二ピストン・シリンダ機構14は、固定系に設けられた支点21に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ22と、移動部材11に設けられた支点23に回動可能に接続されたピストン24とから構成されている。ピストン24は、シリンダ22に摺動可能に装着されており、ピストン24の頂部25とシリンダ22との間に油室26が区画形成されている。油室26は、油流路(配管)27を介して出力機器13に接続されている。本実施形態では、配管27は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ22を移動部材11側の支点23に回動可能に接続し、ピストン24を固定系側の支点21に回動可能に接続するようにしても良い。
【0025】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0026】
出力機器13からの油が第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内に流入すると、その油の圧力に応じた推力Faが第二ピストン・シリンダ機構14に生じ、その推力Faにおける移動部材11の移動軸線Cと直交する直交軸線CTに対する第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θに応じた分力Faxが、移動軸線Cに沿って移動部材11に作用する。
【0027】
第二ピストン・シリンダ機構14による分力Faxを受けて、移動部材11及び第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17が移動して、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位に応じた容積の油が第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から押し出されてアキュムレータ10の油室内に流入する。
【0028】
第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から押し出されてアキュムレータ10の油室内に流入した油によって、アキュムレータ10内の封入ガスが圧縮されることとなる。この封入ガスの圧縮によって、圧力エネルギーの貯蔵を可能とする。また、アキュムレータ10内の封入ガスの圧縮圧力により油をアキュムレータ10の油室内から押し出すことで、この油の圧力で第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17、移動部材11、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24を移動させる。第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の移動に伴い油を第二ピストン・シリンダ機構14の油室26から流出させることによって、圧力エネルギーの放出(再利用)を可能とする。
【0029】
ここで、本実施形態のアキュムレータシステム1では、封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータ10(ブラダ型アキュムレータやピストン型アキュムレータ等)を最終的なエネルギー貯蔵装置として用い、アキュムレータ10内の封入ガスの指数級数的な圧力変動を受けてストローク動作する第一ピストン・シリンダ機構12と、出力機器13からの油を受けてストローク動作する第二ピストン・シリンダ機構14とを対抗させて、それらピストン・シリンダ機構(第一ピストン・シリンダ機構12、第二ピストン・シリンダ機構14)による移動部材11の移動軸線Cに沿った力の釣り合いによって、アキュムレータ10内の封入ガスの圧縮圧力に対する第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内の油の圧力(出力機器13へ供給する油の圧力)を決める構成としている。
【0030】
本実施形態のアキュムレータシステム1では、第二ピストン・シリンダ機構14を移動部材11の移動軸線Cに対して角度をもって配置しているので、アキュムレータ10の油室内への油の出入りによる指数級数的な封入ガスの圧縮圧力の変動特性を、第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θの変化による非線形な分力Faxの変化特性によって相殺して、第二ピストン・シリンダ機構14内の油室26の油の圧力Paの変動を小さくすることができ、アキュムレータ10のハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器13へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図2参照)。即ち、後述のようにハウジング内に出入りする油の容積に応じて指数級数的に変化する封入ガスの圧縮圧力と、後述のように第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θに応じて非線形に変化する分力Faxによる圧力とが相殺されるので、第二ピストン・シリンダ機構14内の油室26の油の圧力Paの変動を小さくすることができる。
【0031】
以下、本実施形態に係るアキュムレータシステム1の緒元設定方法を説明する。
【0032】
移動部材11の移動軸線Cに沿った方向に対する第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の偏差をX〔mm〕とし、移動軸線Cに直交する直交軸線CTに沿った方向に対する第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の偏差をH〔mm〕とすると、直交軸線CTに対する第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θ〔°〕、第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の支点間距離L〔mm〕は各々以下の式(1)、(2)で表される。なお、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の変位によって、Xの値は変化するが、Hの値は不変である。
【0033】
θ=tan-1(X/H) ・・・(1)
L=H/cosθ ・・・(2)
次いで、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の受圧面積をSa〔cm2〕とし、第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24への作用油圧をPa〔kg/cm2〕とすると、第二ピストン・シリンダ機構14に発生する推力Fa〔kg〕は以下の式(3)で表され、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の受圧面積をSb〔cm2〕とし、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17への作用油圧をPb〔kg/cm2〕とすると、第一ピストン・シリンダ機構12に発生する推力Fb〔kg〕は以下の式(4)で表される。
【0034】
Fa=Pa×Sa ・・・(3)
Fb=Pb×Sb ・・・(4)
第二ピストン・シリンダ機構14による推力Faが移動部材11の移動軸線Cに沿った方向に及ぼす分力Fax〔kg〕は、以下の式(5)で表される。
【0035】
Fax=Fa×sinθ ・・・(5)
第二ピストン・シリンダ機構14による分力Faxが第一ピストン・シリンダ機構12による推力Fbと対抗するのでので、式(3)〜(5)より、FaxとFbとの釣り合いの式は以下の式(6)で表される。
【0036】
Pa×Sa×sinθ=Pb×Sb ・・・(6)
式(6)より、Paは以下の式(7)で表される。
【0037】
Pa=(Pb×Sb)/(Sa×sinθ) ・・・(7)
本実施形態に係るアキュムレータシステム1において、偏差X、傾角θ、支点間距離L、作用油圧Pa、Pbの初期状態の状態値を各々、X0、θ0、L0、Pa0、Pb0とすると、初期状態の傾角θ0、支点間距離L0、作用油圧Pa0は各々以下の式(8)〜(10)で表される。
【0038】
θ0=tan-1(X0/H) ・・・(8)
L0=H/cosθ0 ・・・(9)
Pa0=(Pb0×Sb)/(Sa×sinθ0) ・・・(10)
初期状態から第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内に油がdVa〔cc〕流入して第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17がδ1〔mm〕だけ移動し、第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から油がdVb〔cc〕流出したとすると、そのときの偏差X、傾角θ、支点間距離L、第二ピストン・シリンダ機構14の油室26内へ流入した油の容量dVa〔cc〕、第一ピストン・シリンダ機構12の油室19から流出した油の容量dVb〔cc〕は各々、以下の式(11)〜(15)で表される。
【0039】
X=(X0+δ1) ・・・(11)
θ=tan-1((X0+δ1)/H) ・・・(12)
L=H/cosθ ・・・(13)
dVa=(L−L0)×Sa/10 ・・・(14)
dVb=δ1×Sb/10 ・・・(15)
ここで、ガスの圧力P〔kg/cm2〕とガスの容積〔cc〕との関係は、周囲との熱移動を無視した概略特性として可逆断熱変化とみなせば、「P×Vκ=const」の関係になる。ちなみに、κはガスの種類毎の固有値である比熱比で、ガスがアキュムレータの封入ガスとして一般的に用いられる窒素ガスである場合、κ=1.4である。
【0040】
また、本実施形態に係るアキュムレータシステム1において、アキュムレータ10内の封入ガスの初期容積をVgmax〔cc〕とし、封入ガスの初期圧力をPgmin〔kg/cm2〕とし、封入ガスの比熱比をκとし、アキュムレータ10内に流入する油の容積をdVb〔cc〕とすると、アキュムレータ10内の封入ガスの圧力Pg〔kg/cm2〕は、以下の式(16)で表される。
【0041】
Pg=Pgmin×(Vgmax/(Vgmax−dVb))κ
=Pgmin/(1−dVb/Vgmax)κ ・・・(16)
アキュムレータ10内に流入する油の最大容積をdVbmax〔cc〕とすると、式(16)より、使用レンジにおけるアキュムレータ10内の封入ガスの最大圧力Pgmaxは以下の式(17)で表される。
【0042】
Pgmax=Pgmin/(1−dVbmax/Vgmax)κ ・・・(17) 式(17)より、アキュムレータ10内に流入する油の最大容積dVbmaxは以下の式(18)で表される。
【0043】
dVbmax=(1−(Pgmin/Pgmax)(1/κ))×Vgmax ・・・(18)
式(15)、(18)より、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の最大変位δ1max〔mm〕は以下の式(19)で表される。
【0044】
δ1max=dVbmax×10/Sb
=(1−(Pgmin/Pgmax)(1/κ))×Vgmax×10/Sb ・・・(19)
また、式(12)より、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位δ1=δ1maxでの第二ピストン・シリンダ機構14の傾角θmaxは、以下の式(20)で表される。
【0045】
θmax=tan-1((X0+δ1max)/H) ・・・(20)
第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位δ1が0〜δ1maxまで変化すると、アキュムレータ10内の封入ガスの圧力PgがPgmin〜Pgmaxまで変化することとなる。
【0046】
従って、初期状態においてPb0=Pgminの関係にあるので、式(7)或いは式(10)より、初期状態(δ1=0)での第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24への作用油圧Pa0は以下の式(21)で表され、第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の変位δ1=δ1maxでの第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24への作用油圧Pamaxは以下の式(22)で表される。
【0047】
Pa0=(Pgmin×Sb)/(Sa×sinθ0) ・・・(21)
Pamax=(Pgmax×Sb)/(Sa×sinθmax) ・・・(22) 従って、Pamax=Pa0となる条件は、式(21)、式(22)より、以下の式(23)で表される。
【0048】
(Pgmin×Sb)/(Sa×sinθ0)=(Pgmax×Sb)/(Sa×sinθmax) ・・・(23)
式(23)より、以下の式(24)が得られる。
【0049】
(X0+δ1max)×((1+(X0/H)2)/(1+((X0+δ1max)/H)2))1/2/((X0−Pgmax)×Pgmin)=0 ・・・(24)
まず、式(19)によって適度なδ1maxとなる第一ピストン・シリンダ機構12のピストン17の受圧面積Sbを指定すると共に、レイアウト上望ましい第二ピストン・シリンダ機構14の両支点21、23間の偏差Hを指定すれば、式(24)を条件式とする収束演算解としてPamax=Pa0となるX0の値が得られる。次いで、式(21)によって、適度なPa0となる第二ピストン・シリンダ機構14のピストン24の受圧面積Saを決定すれば良い。
【0050】
この緒元設定方法によって決定した諸元により、アキュムレータ10内の封入ガスの圧力PgがPgmin〜Pgmaxへと大きく変化する動作領域において、第二ピストン・シリンダ機構14内の油室26の油の圧力Paの変動を小さくすることができる(図2参照)。
【0051】
なお、図1に示す実施形態とは逆に、アキュムレータシステムが、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材に回動可能に接続され、移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部がアキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、一端が固定系に接続され他端が移動部材に接続され、移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構とを備えても良い。
【0052】
このようにしても、図2の場合と同様に、第二ピストン・シリンダ機構内の油室の油の圧力の変動を小さくすることができ、アキュムレータの油室内への油の出入りによる指数級数的な封入ガスの圧縮圧力の変動特性を、第一ピストン・シリンダ機構の傾角θの変化による非線形な分力Faxの変化特性によって相殺して、第二ピストン・シリンダ機構内の油室の油の圧力の変動を小さくすることができ、アキュムレータのハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図3参照)。
【0053】
次に、別の実施形態を図4により説明する。図1の実施形態と同一構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、本実施形態に係るアキュムレータシステム2は、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構30と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構31とを備える。
【0055】
本実施形態の第一ピストン・シリンダ機構30は、固定系に設けられた支点32に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ33と、移動部材11に設けられた支点34に回動可能に接続されたピストン35とから構成されている。ピストン35は、シリンダ33に摺動可能に装着されており、ピストン35の頂部36とシリンダ33との間に油室37が区画形成されている。油室37は、油流路(配管)38を介してアキュムレータ10内の油室に接続されている。本実施形態では、配管38は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ33を移動部材11側の支点34に回動可能に接続し、ピストン35を固定系側の支点32に回動可能に接続するようにしても良い。
【0056】
本実施形態の第二ピストン・シリンダ機構31は、固定系に設けられた支点39に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ40と、移動部材11に設けられた支点41に回動可能に接続されたピストン42とから構成されている。ピストン42は、シリンダ40に摺動可能に装着されており、ピストン42の頂部43とシリンダ40との間に油室44が区画形成されている。油室44は、油流路(配管)45を介して出力機器13に接続されている。本実施形態では、配管45は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ40を移動部材11側の支点41に回動可能に接続し、ピストン42を固定系側の支点39に回動可能に接続するようにしても良い。
【0057】
本実施形態では、第一ピストン・シリンダ機構30及び第二ピストン・シリンダ機構31を直交軸線CTに対して互いに異なる方向に傾斜させている。
【0058】
本実施形態に係るアキュムレータシステム2によっても、図1に係る実施形態と同様に、第二ピストン・シリンダ機構31内の油室44の油の圧力Paの変動を小さくすることができ、アキュムレータ10のハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器13へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図5参照)。
【0059】
次に、別の実施形態を図6により説明する。図1の実施形態と同一構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係るアキュムレータシステム3は、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部がアキュムレータ10に連通された第一ピストン・シリンダ機構50と、一端が固定系に回動可能に接続され他端が移動部材11に回動可能に接続され、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器13に連通された第二ピストン・シリンダ機構51と、一端が固定系に接続され他端が移動部材11に接続され、移動部材11の移動方向に沿って配置され且つ内部が第二ピストン・シリンダ機構51に連通された第三ピストン・シリンダ機構52とを備える。
【0061】
本実施形態の第一ピストン・シリンダ機構50は、固定系に設けられた支点53に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ54と、移動部材11に設けられた支点55に回動可能に接続されたピストン56とから構成されている。ピストン56は、シリンダ54に摺動可能に装着されており、ピストン56の頂部57とシリンダ54との間に油室58が区画形成されている。油室58は、油流路(配管)59を介してアキュムレータ10内の油室に接続されている。本実施形態では、配管59は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ54を移動部材11側の支点55に回動可能に接続し、ピストン56を固定系側の支点53に回動可能に接続するようにしても良い。
【0062】
本実施形態の第二ピストン・シリンダ機構51は、固定系に設けられた支点60に回動可能に接続された有底筒状のシリンダ61と、移動部材11に設けられた支点62に回動可能に接続されたピストン63とから構成されている。ピストン63は、シリンダ61に摺動可能に装着されており、ピストン63の頂部64とシリンダ61との間に油室65が区画形成されている。油室65は、油流路(配管)66を介して出力機器13に接続されている。本実施形態では、配管66は可撓性を有する材料からなる。なお、シリンダ61を移動部材11側の支点62に回動可能に接続し、ピストン63を固定系側の支点60に回動可能に接続するようにしても良い。
【0063】
本実施形態の第三ピストン・シリンダ機構52は、固定系に接続された有底筒状のシリンダ67と、移動部材11に接続されたピストン68とから構成されている。ピストン68は、シリンダ67に摺動可能に装着されており、ピストン68の頂部69とシリンダ67との間に油室70が区画形成されている。油室70は、油流路(配管)71を介して第二ピストン・シリンダ機構51内の油室65に接続されている。なお、シリンダ67を移動部材11に接続し、ピストン68を固定系に接続するようにしても良い。
【0064】
本実施形態では、第一ピストン・シリンダ機構50及び第二ピストン・シリンダ機構51を直交軸線CTに対して互いに同一の方向に傾斜させている。
【0065】
本実施形態に係るアキュムレータシステム3によっても、図1に係る実施形態と同様に、第二ピストン・シリンダ機構51内の油室65の油の圧力Pb及び第三ピストン・シリンダ機構52内の油室70の圧力Paの変動を小さくすることができ、アキュムレータ10のハウジング内に出入りする油の容積に応じた封入ガスの圧縮圧力の変化に関わらず、出力機器13へ供給する油の圧力をほぼ一定にすることができる(図7参照)。なお、図7においては、第二ピストン・シリンダ機構51のピストン63の受圧面積と、第三ピストン・シリンダ機構52のピストン68の受圧面積とが等しい条件で、圧力等を算出している。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0067】
例えば、図8及び図9に示すように、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置したピストン・シリンダ機構(図示例では、第二ピストン・シリンダ機構14)を複数備え、それら第二ピストン・シリンダ機構14を、移動部材11の移動方向と直交する方向の分力Fayが互いに相殺されるように配置しても良い。図8では、直交軸線CTを挟んで配置する第二ピストン・シリンダ機構14を、移動部材11の移動軸線Cを挟んで対称となるように一対配置している。また、図9に示すように、複数のピストン・シリンダ機構(図示例では、第二ピストン・シリンダ機構14)を、移動部材11の周方向に間隔を隔てて配置しても、移動部材11の移動方向と直交する方向の分力Fayを相殺することが可能であり、その場合、分力Fayを相殺することができれば良く、第二ピストン・シリンダ機構14を等ピッチで配置しても良く、第二ピストン・シリンダ機構14を不等ピッチで配置するようにしても良い。移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置したピストン・シリンダ機構を、移動部材11の移動方向と直交する方向の分力Fayが互いに相殺されるように配置することで、移動部材11の移動軸線Cを挟んで分力Fayが相殺されるので、移動部材11にラジアル負荷が作用することを抑制することが可能となる。
【0068】
また、図10及び図11に示すように、移動部材11の移動方向に対して角度をもって配置したピストン・シリンダ機構(図示例では、第二ピストン・シリンダ機構14)を複数備え、それら第二ピストン・シリンダ機構14を支点位置が同じである並列配置にしても良い。第二ピストン・シリンダ機構14を並列配置した場合、並列配置した第二ピストン・シリンダ機構14同士の挙動は常に一体的な動きになるので、これら第二ピストン・シリンダ機構14の油室同士を接続する油流路(配管)をホースのような可撓性のあるものに頼らず堅いもので連結することが可能となり、また並列配置した第二ピストン・シリンダ機構14のシリンダ24を一体で形成することも可能である。
【0069】
また、図12に示すように、図4及び図6に示す実施形態において、アキュムレータ10に接続される第一ピストン・シリンダ機構30の油流路(配管)38に、アキュムレータ10からの液体(油)の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力の油を第一ピストン・シリンダ機構30に供給する油圧比変換機構80を配設しても良い。図示例は、図4に係る実施形態に適用したものである。油圧比変換機構80としては、互いに異なる受圧面積で対向させたフリーピストン81、82の対向油室83、84間の釣り合い油圧の比が、そのフリーピストン81、82の受圧面積の逆比となることを利用する油圧ピストン型の変換機構等を用いることができる。
【0070】
支点32、34に回動可能に接続した第一ピストン・シリンダ機構30に油圧を作用させるには、配管38が可撓性のある材料からなることが求められるが、それは通常、あまりに高圧力に耐える仕様にすることが困難であることが多い。従って、圧力変動が大きく且つその最高圧力が高いアキュムレータ10からの油を第一ピストン・シリンダ機構30の油室37に供給するには、第一ピストン・シリンダ機構30の配管38に、アキュムレータ10からの油の圧力を一定比率で減圧する油圧比変換機構80を配設し、油圧比変換機構80によって減圧された油を第一ピストン・シリンダ機構30の油室37に供給するようにすることにより、可撓性が求められる配管38の作用油圧を抑えることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【図2】図2(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図2(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図3】図3(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図3(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図4】図4は、別の実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【図5】図5(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図5(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図6】図6は、別の実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【図7】図7(a)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する圧力変化を示す図であり、図7(b)は第二ピストン・シリンダ機構内への流入容積に対する油圧推力変化を示す図である。
【図8】図8は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示すアキュムレータシステムの概略図である。
【図9】図9は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示す移動部材の断面図である。
【図10】図10は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示す移動部材の断面図である。
【図11】図11は、第二ピストン・シリンダ機構の変形例を示す移動部材の断面図である。
【図12】図12は、別の実施形態に係るアキュムレータシステムの概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1、2、3 アキュムレータシステム
10 アキュムレータ
11 移動部材
12、30、50 第一ピストン・シリンダ機構
13 出力機器
14、31、51 第二ピストン・シリンダ機構
52 第三ピストン・シリンダ機構
80 油圧比変換機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、
所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、
一端が固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、
一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構と、
を備えたことを特徴とするアキュムレータシステム。
【請求項2】
上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、
それら第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置した請求項1に記載のアキュムレータシステム。
【請求項3】
封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、
所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、
一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、
一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構と、
を備えたことを特徴とするアキュムレータシステム。
【請求項4】
上記第一ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、
それら第一ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置した請求項3に記載のアキュムレータシステム。
【請求項5】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えた請求項3又は4に記載のアキュムレータシステム。
【請求項6】
封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、
所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、
一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、
一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構と、
を備えたことを特徴とするアキュムレータシステム。
【請求項7】
一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記第二ピストン・シリンダ機構に連通された第三ピストン・シリンダ機構をさらに備えた請求項6に記載のアキュムレータシステム。
【請求項8】
上記第一ピストン・シリンダ機構及び上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、
それら第一ピストン・シリンダ機構及び第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置した請求項6又は7に記載のアキュムレータシステム。
【請求項9】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えた請求項6から8のいずれかに記載のアキュムレータシステム。
【請求項1】
封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、
所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、
一端が固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、
一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構と、
を備えたことを特徴とするアキュムレータシステム。
【請求項2】
上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、
それら第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置した請求項1に記載のアキュムレータシステム。
【請求項3】
封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、
所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、
一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、
一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構と、
を備えたことを特徴とするアキュムレータシステム。
【請求項4】
上記第一ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、
それら第一ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置した請求項3に記載のアキュムレータシステム。
【請求項5】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えた請求項3又は4に記載のアキュムレータシステム。
【請求項6】
封入ガスの圧縮力により液体に圧力を付与するアキュムレータと、
所定方向に沿って往復動可能に設けられた移動部材と、
一端が固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が上記アキュムレータに連通された第一ピストン・シリンダ機構と、
一端が上記固定系に回動可能に接続され他端が上記移動部材に回動可能に接続され、上記移動部材の移動方向に対して角度をもって配置され且つ内部が出力機器に連通された第二ピストン・シリンダ機構と、
を備えたことを特徴とするアキュムレータシステム。
【請求項7】
一端が上記固定系に接続され他端が上記移動部材に接続され、上記移動部材の移動方向に沿って配置され且つ内部が上記第二ピストン・シリンダ機構に連通された第三ピストン・シリンダ機構をさらに備えた請求項6に記載のアキュムレータシステム。
【請求項8】
上記第一ピストン・シリンダ機構及び上記第二ピストン・シリンダ機構を複数備え、且つ、
それら第一ピストン・シリンダ機構及び第二ピストン・シリンダ機構を、上記移動部材の移動方向と直交する方向の分力が互いに相殺されるように配置した請求項6又は7に記載のアキュムレータシステム。
【請求項9】
上記アキュムレータと上記第一ピストン・シリンダ機構とを接続する流路に配設され、上記アキュムレータからの液体の圧力を一定比率で減圧し、その減圧した圧力を上記第一ピストン・シリンダ機構に供給する油圧比変換機構を備えた請求項6から8のいずれかに記載のアキュムレータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−156384(P2010−156384A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334081(P2008−334081)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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