説明

アクチュエータ、および駆動装置

【課題】熱効率の改善によって駆動力の発生における応答性を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】固定部と、一端が該固定部に固設され、且つ一方向に延設される板状の可動部と、を備えるアクチュエータにおいて、該可動部が、一端が固定部に固設され、且つ上記一方向に延設される板状の支持層と、加熱に応じて上記一方向に膨張または収縮する駆動部層とを含む複数層が積層されて形成される。そして、該可動部が、上記一端とは反対側の他端近傍に断熱部材を有するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ズーム機能やオートフォーカス(AF)機能を有するカメラモジュールが搭載された携帯電話機が市販されている。このカメラモジュールでは、光学レンズを移動させるための小型のアクチュエータが必要とされる。そして、カメラモジュールの更なる小型化が指向される中、アクチュエータについても更なる小型化が要求されている。
【0003】
このアクチュエータについては、熱膨張率の異なる2種類の金属材料を薄膜化して貼り合わせたアクチュエータ(薄膜バイメタルアクチュエータ)や、シリコン(Si)や金属などの基板上に薄膜化した形状記憶合金(SMA)を形成したアクチュエータ(薄膜形状記憶合金アクチュエータ)などがある(例えば、特許文献1など)。そして、これらのアクチュエータは、熱を付与することで薄板状の可動部が曲がることで駆動力を発生させるタイプのアクチュエータ(熱駆動型のベント型薄膜アクチュエータ)であり、アクチュエータ素子の大幅な薄膜化および小型化が可能であるという点で近年注目されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−81231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記熱駆動型のベント型薄膜アクチュエータについては、被駆動体への熱伝達によって、駆動力を発生させる際の熱効率が低下し、応答性の低下や消費電力の増大を招いていた。特に、カメラモジュールなどに採用することを想定すると、アクチュエータには高い応答性が要求される。このため、熱効率の悪さに起因した応答性の低さが大きな障害となって、熱駆動型のベント型薄膜アクチュエータを、カメラモジュールに適用することができなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱効率の改善によって駆動力の発生における応答性を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、固定部と、一端が前記固定部に固設され、且つ一方向に延設される板状の可動部と、を備え、前記可動部が、一端が前記固定部に固設され、且つ前記一方向に延設される板状の支持層と、加熱に応じて前記一方向に膨張または収縮する駆動部層とを含む複数層が積層されて形成されるとともに、前記一端とは反対側の他端近傍に断熱部材を有することを特徴とするアクチュエータである。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のアクチュエータであって、前記複数層が、前記駆動部層を加熱する加熱部層を含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のアクチュエータであって、前記支持層が、シリコンを用いて構成されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載のアクチュエータであって、前記支持層が、金属材料を用いて構成されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れかに記載のアクチュエータであって、前記駆動部層が、前記支持層を構成する素材とは熱膨張率が異なる金属材料を用いて構成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載のアクチュエータであって、前記駆動部層が、形状記憶合金を用いて構成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6の何れかに記載のアクチュエータであって、前記断熱部材が、発泡材料を用いて構成されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項6の何れかに記載のアクチュエータであって、前記断熱部材が、内部に空気層を含む多層膜を用いて構成されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9の発明は、請求項1から請求項8の何れかに記載のアクチュエータと、前記断熱部材において前記可動部と当接する被駆動体とを備え、前記可動部の前記他端の変位によって前記被駆動体を移動させることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10の発明は、アクチュエータと、被駆動体とを備え、前記アクチュエータが、固定部と、一端が前記固定部に固設され、且つ一方向に延設される板状の可動部と、を有し、前記可動部が、一端が前記固定部に固設され、且つ前記一方向に延設される板状の支持層と、加熱に応じて前記一方向に膨張または収縮する駆動部層と、を含む複数層が積層されて形成されるとともに、前記一端とは反対側の他端近傍において断熱部材を介して前記被駆動体に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項10の何れに記載の発明によっても、加熱による駆動部層の膨張または収縮に応じて変位する可動部の他端近傍を、断熱部材を介して被駆動体に当接させることで、熱効率の改善によって駆動力の発生における応答性を向上させることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、加熱部層で発せられた熱が被駆動体側に逃げないため、熱効率の改善が図られる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、微細な加工技術が確立されているシリコンを素材として用いることで、微細かつ高精度の支持層の製造が容易となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、金属材料の圧延などの工程によって薄型の支持層を容易に製造することができる。
【0021】
請求項5および請求項6の何れに記載の発明によっても、駆動部層と支持層との間における熱膨張の差を利用して、可動部の曲げによる変位を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
<1.携帯電話機の概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係るカメラモジュール400を搭載した携帯電話機100の概略構成を例示する模式図である。なお、図1および図1以降の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付されている。
【0024】
図1(a)で示すように、携帯電話機100は、画像取得再生部200と本体部300とを備える。画像取得再生部200は、カメラモジュール400や表示ディスプレイ(不図示)を有し、本体部300は、携帯電話機100の全体を制御する制御部とテンキーなどの各種ボタン(不図示)とを有する。なお、画像取得再生部200と本体部300とが、回動可能なヒンジ部によって連結され、携帯電話機100が折り畳み可能となっている。
【0025】
図1(b)は、携帯電話機100のうちの画像取得再生部200に着目した断面模式図である。図1(a),(b)で示すように、カメラモジュール400は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が約3mm程度である小型の撮像装置、すなわち所謂マイクロカメラユニット(MCU)となっている。
【0026】
<2.カメラモジュールの構成>
図2は、カメラモジュール400の構成例を模式的に示す分解斜視図である。図2で示すように、カメラモジュール400は、撮像素子層10、撮像センサホルダ層20、赤外カットフィルタ層30、第1レンズ層40、第2レンズ層50、アクチュエータ層60、平行バネ下層70、第3レンズ層80、平行バネ上層90、および保護層CBの10層がこの順番で積層されて形成されている。そして、該10層に含まれる相互に隣接する各2層の間が、エポキシ樹脂などの樹脂によって接合されており、各層間に樹脂が介在している。また、各層10〜90,CBは、±Z方向の面において略同一の矩形状(ここでは、一辺が約5mmの正方形)の外形を有する。なお、後述するが、第3レンズ層80については、カメラモジュール400の製造途中で、連結部が図中の太破線で描かれた部分84a,84bで切断され、枠部F8とレンズ部81とが分離された状態となる(図4(b)参照)。
【0027】
<2−1.各層の構成>
図3および図4は、撮像素子層10、撮像センサホルダ層20、赤外カットフィルタ層30、第1レンズ層40、第2レンズ層50、アクチュエータ層60、平行バネ下層70、第3レンズ層80、平行バネ上層90、および保護層CBの構成例をそれぞれ示す平面図である。
【0028】
○撮像素子層10:
図3(a)で示すように、撮像素子層10は、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサなどで形成される撮像素子部11、その周辺回路、および撮像素子部11を囲む外周部F1を備えるチップである。なお、ここでは図示を省略しているが、撮像素子層10の裏面(−Z側の面)には、撮像素子部11に対する信号の付与、および撮像素子部11からの信号の読み出しを行うための配線を接続するための各種端子が設けられる。更に、撮像素子部11の+Z側の面は、被写体からの光を受光する面(撮像面)として機能し、外周部F1が、撮像素子層10の+Z側に隣接する撮像センサホルダ層20に対して接合される。
【0029】
○撮像センサホルダ層20:
図3(b)で示すように、撮像センサホルダ層20は、例えば、樹脂などの素材によって形成され、接合によって取り付けられる撮像素子層10を保持するチップである。具体的には、撮像センサホルダ層20の略中央には、断面が略正方形の開口21がZ方向に沿って設けられ、該開口21の断面は+Z側に行くに従って小さくなる。なお、図3(b)の破線で描かれた四角形は、−Z側の面における開口21の外縁を示す。更に、撮像センサホルダ層20の外周部の−Z側の面が隣接する撮像素子層10と接合され、該外周部の+Z側の面が隣接する赤外カットフィルタ層30と接合される。
【0030】
○赤外カットフィルタ層30:
図3(c)で示すように、赤外カットフィルタ層30は、透明基板上に屈折率の異なる透明薄膜が多層化されて構成された赤外線をカットするフィルタのチップである。具体的には、赤外カットフィルタ層30は、例えば、ガラスまたは透明樹脂で構成される基板の上面に屈折率の異なる多数の透明薄膜をスパッタリングなどで形成したもので、薄膜の厚みおよび屈折率の組合せにより、透過する光の波長帯が制御される。例えば、赤外カットフィルタ層30としては、600nm以上の波長帯の光を遮断するものが好ましい。更に、赤外カットフィルタ層30の外周部の−Z側の面が隣接する撮像センサホルダ層20と接合され、該外周部の+Z側の面が隣接する第1レンズ層40と接合される。
【0031】
○第1レンズ層40:
図3(d)で示すように、第1レンズ層40は、正のレンズパワーを有する光学レンズからなるレンズ部41と、該レンズ部41を囲み且つ該第1レンズ層40の外周部を構成する枠部F4とが同一の素材で一体成型されて形成されたチップである。そして、第1レンズ層40を構成する素材としては、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂、あるいはガラスなどが挙げられる。なお、レンズ部41は、第1〜3レンズ層40,50,80による焦点が撮像素子部11に対応したものとなるように光を屈折させる光学レンズとなっている。更に、枠部F4の−Z側の面が隣接する赤外カットフィルタ層30と接合され、該枠部F4の+Z側の面が隣接する第2レンズ層50と接合される。
【0032】
○第2レンズ層50:
図3(e)で示すように、第2レンズ層50は、負のレンズパワーを有する光学レンズからなるレンズ部51と、該レンズ部51を囲み且つ該第2レンズ層50の外周部を構成する枠部F5とが同一の素材で一体成型されて形成されたチップである。そして、第2レンズ層50を構成する素材としては、第1レンズ層40と同様に、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂、あるいはガラスなどが挙げられる。なお、レンズ部51は、レンズ部41と同様に、第1〜3レンズ層40,50,80による焦点が撮像素子部11に対応したものとなるように光を屈折させる光学レンズとなっている。更に、枠部F5の−Z側の面が隣接する第1レンズ層40(具体的には、枠部F4)と接合され、該枠部F5の+Z側の面が隣接するアクチュエータ層60と接合される。
【0033】
○アクチュエータ層60:
図3(f)で示すように、アクチュエータ層60は、撮像素子層10の撮像面側に配置されるとともに、第3レンズ層80のレンズ部81を移動させる薄板状の第1および第2可動部61,62を備えるチップである。また、アクチュエータ層60は、外周部を構成する枠部F6を備え、該枠部F6の内側の中空部分に対して該枠部F6から2枚の板状の第1および第2可動部61,62が突設されている。ここでは、2枚の第1および第2可動部61,62は、一端がそれぞれ枠部F6に固設され、且つY方向に延設されており、枠部F6が2枚の第1および第2可動部61,62を囲むように形成されている。そして、枠部F6は、携帯電話機100の画像取得再生部200の筐体に対してカメラモジュール400が固定されている部分(本発明の「固定部」に相当する)を構成する。
【0034】
より具体的には、枠部F6は、X軸に対して平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材と、Y軸に対して平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材とからなる4枚の板状部材がロの字型に配置されて形成される。また、該4枚の板状部材のうちの1枚の板状部材(ここでは、−Y側の板状部材)が形成する枠部F6の内縁のうち、−X側の端部(一端)近傍の所定部(一方所定部)に第1可動部61の一端が固設され、+X側の端部(他端)近傍の所定部(他方所定部)に第2可動部62の一端が固設される。つまり、2枚の第1および第2可動部61,62の各一端が枠部F6に対して固定された端部(固定端)となり、2枚の第1および第2可動部61,62の各他端が枠部F6に対する相対的な位置が自由に変更される端部(自由端)となっている。更に、枠部F6の−Z側の面が隣接する第2レンズ層50(具体的には、枠部F5)と接合され、該枠部F6の+Z側の面が隣接する平行バネ下層70と接合される。
【0035】
また、第1および第2可動部61,62は、それぞれアクチュエータ素子として構成されている。第1および第2可動部61,62の詳細な構成ならびに動作については後述する。
【0036】
○平行バネ下層70:
図4(a)で示すように、平行バネ下層70は、りん青銅などの金属材料で構成され、枠部F7と、弾性部71とを有するチップであり、バネ機構を形成する層(弾性層)となっている。枠部F7は、平行バネ下層70の外周部を構成する。そして、枠部F7の−Z側の面が隣接するアクチュエータ層60(具体的には、枠部F6)と接合され、該枠部F7の+Z側の面が隣接する第3レンズ層80と接合される。弾性部71は、3つの略直線状に伸びる板状部材71a,71b,71cがコの字型に連結されて形成され、3つの板状部材71a,71b,71cのうちの両側の2本の板状部材71a,71cの各一端、すなわち弾性部71の両端が、枠部F7の2箇所に固設される。ここでは、弾性部71は、枠部F7の内側の中空部分に配置されるため、枠部F7が、弾性部71を囲むように形成される。
【0037】
より具体的には、枠部F7は、枠部F6と同様に、X軸に対して平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材と、Y軸に対して平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材とからなる4枚の板状部材がロの字型に配置されて形成される。また、該4枚の板状部材のうちの1枚の板状部材(ここでは、−Y側の板状部材)が形成する枠部F7の内縁のうち、−X側の端部(一端)近傍の所定部(一方所定部)に弾性部71の一端(具体的には、板状部材71aの一端)が固設され、+X側の端部(他端)近傍の所定部(他方所定部)に弾性部71の他端(具体的には、板状部材71cの一端)が固設される。
【0038】
また、弾性部71を構成する3つの板状部材71a,71b,71cのうち、両側の2つの板状部材71a,71cの下面(−Z側の面)が、第1および第2可動部61,62の上面(+Z側の面)に当接する。
【0039】
○第3レンズ層80:
図4(b)で示すように、第3レンズ層80は、枠部F8と、レンズ部81と、レンズ保持部83とを有するチップである。この第3レンズ層80を構成する素材としては、第1および第2レンズ層40,50と同様に、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂、あるいはガラスなどが挙げられる。
【0040】
枠部F8は、第3レンズ層80の外周部を構成する。具体的には、枠部F8は、X軸に対して平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材と、Y軸に対して平行に延設され且つ相互に対向する2辺を成す2枚の板状部材とからなる4枚の板状部材がロの字型に配置されて形成される。そして、枠部F8の内側に形成される中空部分に、レンズ部81およびレンズ保持部83が配置され、レンズ部81およびレンズ保持部83が枠部F8に囲まれた状態となっている。また、枠部F8の−Z側の面が隣接する平行バネ下層70(具体的には、枠部F7)と接合され、該枠部F8の+Z側の面が隣接する平行バネ上層90と接合される。
【0041】
レンズ部81は、撮像素子部11からの距離が変更可能な光学レンズであり、ここでは、正のレンズパワーを有する。レンズ保持部83は、レンズ部81を保持し、平行バネ下層70の弾性部71と、後述する平行バネ上層90の弾性部91とによって挟持される。具体的には、例えば、レンズ保持部83は、レンズ部81と一体的に成型され、レンズ保持部83の+Y側の端部のうち、−Z側の面に弾性部71が接合され、+Z側の面に弾性部91が接合される。
【0042】
なお、第3レンズ層80については、カメラモジュール400の製造途中で、図4(b)で示すように、連結部が図中の太破線で描かれた部分84a,84bで切断されて、枠部F8と、レンズ部81およびレンズ保持部83とが分離された状態となり、第3レンズ層80が形成される。
【0043】
○平行バネ上層90:
図4(c)で示すように、平行バネ上層90は、平行バネ下層70と同様な構成を有し、りん青銅などの金属材料で構成され、枠部F9と、弾性部91とを有するチップであり、バネ機構を形成する層(弾性層)となっている。枠部F9は、平行バネ上層90の外周部を構成する。そして、枠部F9の−Z側の面が隣接する第3レンズ層80(具体的には、枠部F8)と接合され、該枠部F9の+Z側の面が隣接する保護層CBと接合される。弾性部91は、弾性部71と同様に、3つの略直線状に伸びる板状部材91a,91b,91cがコの字型に連結されて形成され、3つの板状部材91a,91b,91cのうちの両側の2本の板状部材91a,91cの各一端、すなわち弾性部91の両端が、枠部F9の2箇所に固設される。ここでは、弾性部91は、枠部F9の内側の中空部分に配置されるため、枠部F9が、弾性部91を囲むように形成されている。枠部F9のより具体的な構成については、上述した枠部F7と同様となるため、ここでは、説明を省略する。
【0044】
なお、弾性部91を構成する3つの板状部材91a,91b,91cのうち、中央の1つの板状部材91bの下面(−Z側の面)が、レンズ保持部83に接合されることで、レンズ保持部83が、弾性部71と弾性部91とによって挟持される。
【0045】
○保護層CB:
図4(d)で示すように、保護層CBは、盤面が略正方形の板状の透明部材であり、例えば、樹脂やガラスなどによって構成される。そして、保護層CBの外周部の−Z側の面が隣接する平行バネ上層90(具体的には、枠部F9)と接合される。保護層CBの外周部は、例えば、外周に沿って凸形状を持つ構造にして、凸形状の上端面で平行バネ上層90と接合するようにしても良い。
【0046】
<2−2.アクチュエータ層の詳細な構成>
図5は、図3(f)の切断面線V−Vから見た断面模式図である。図5で示すように、アクチュエータ層60は、−Z側から+Z側に向けて、支持基板層601、加熱部層602、駆動部層603、および、断熱部材層604がこの順番で積層されて構成される。
【0047】
図6は、断熱部材層604の具体的な構成例を示す模式図である。図6(a)では、内部に微細な空房が多数分散されている発泡材料によって断熱部材層604が構成されている例が示されている。また、図6(b)では、Z軸に沿った方向(Z軸方向)に複数の層状の空房(空気層)が適度な間隔を有して配置されて断熱部材層604が構成されている例が示されている。つまり、断熱部材層604が、内部に空気層を含む多層膜を用いて構成されている。
【0048】
図7から図10は、アクチュエータ層60の詳細な構成を説明するための図である。図7から図10では、アクチュエータ層60を構成する各部を+Z方向から見た平面図が示されている。
【0049】
図7で示すように、支持基板層601は、枠部F61と、第1および第2突設部611,612とを有する板状の部材によって構成され、例えば、適度な剛性を有する素材(例えば、シリコンなど)で構成される。枠部F61は、枠部F6に対応する部分であり、第2レンズ層50に対して接合されて固定される。第1突設部611は、枠部F61の一方所定部から+Y方向に突設される板状の部分であり、第2突設部612は、枠部F61の他方所定部から+Y方向に突設される板状の部分である。つまり、この支持基板層601では、第1および第2突設部611,612の各一端(具体的には、短辺の一方)が枠部F61に固設されて固定端となり、第1および第2突設部611,612がそれぞれY軸に沿って延設され、第1および第2突設部611,612の各他端(具体的には、短辺の他方)が自由端となっている。なお、第1および第2突設部611,612は、本発明の「支持層」に相当する。また、枠部F61が第1および第2突設部611,612を囲むように形成されている。
【0050】
図8で示すように、加熱部層602は、支持基板層601上に薄膜状に形成されており、第1および第2加熱ヒータ部621,622と、導電部623とを備える。
【0051】
具体的には、第1加熱ヒータ部621は、枠部F61上および第1突設部611上の一端から他端近傍を経て再度一端側の枠部F61上に至るまで設けられている線状の部分である。また、第2加熱ヒータ部622も、第1加熱ヒータ部621と同様に、枠部F61上および第2突設部612上の一端から他端近傍を経て再度一端側の枠部F61上に至るまで設けられている線状の部分である。つまり、第1および第2加熱ヒータ部621,622は、第1および第2突設部611,612上のほぼ全域に渡って配設されている。そして、第1および第2加熱ヒータ部621,622は、抵抗が比較的高い導電体である金属、例えば、白金(Pt)やタングステン(W)などの素材で構成される。
【0052】
また、導電部623は、電気伝導性が良好な銅などの金属によって構成され、第1〜3導電部623a〜623cを有する。第1〜3導電部623a〜623cは、それぞれ枠部F61上に配設される。そして、第1導電部623aは、第1加熱ヒータ部621の一端に対して電気的に接続され、且つカメラモジュール400の外部から配線が電気的に接続される電極である。また、第3導電部623cは、第2加熱ヒータ部622の一端に対して電気的に接続され、且つカメラモジュール400の外部から配線が電気的に接続される電極である。さらに、第2導電部623bは、第1加熱ヒータ部621の他端と、第2加熱ヒータ部622の他端とを電気的に接続するものである。
【0053】
図9で示すように、駆動部層603は、加熱部層602上に薄膜状に形成されており、第1および第2駆動部631,632を備える。具体的には、第1駆動部631は、第1導電部623a、第1加熱ヒータ部621、および第2導電部623bの第1加熱ヒータ部621側の部分を覆うように形成されており、枠部F61上から第1突設部611上の全域を覆うように形成されている。つまり、第1加熱ヒータ部621の大部分が、第1突設部611と第1駆動部631とに挟まれる。また、第2駆動部632は、第3導電部623c、第2加熱ヒータ部622、および第2導電部623bの第2加熱ヒータ部622側の部分を覆うように形成されており、枠部F61上から第2突設部612上の全域を覆うように形成されている。つまり、第2加熱ヒータ部622の大部分が、第2突設部612と第2駆動部632とに挟まれる。
【0054】
また、第1および第2駆動部631,632は、第1および第2突設部611,612を構成する素材とは熱膨張率が異なる金属材料を用いて構成されている。ここでは、第1および第2駆動部631,632を構成する金属材料として、所定温度(変態点)以下で変形しても、該所定温度以上で加熱すると元の形状に回復する性質を持った合金(形状記憶合金)が採用されている。つまり、第1および第2駆動部631,632は、加熱されると、Y軸に略平行な延設方向に収縮変形を起こす。そして、この形状記憶合金は、一般的には、温度変化に対する収縮変形の度合いを熱膨張率に換算すると、通常の金属材料の熱膨張率よりも数100倍程度の収縮率を有する。
【0055】
図10で示すように、断熱部材層604は、第1駆動部631の+Z側に設けられる第1断熱部材641と、第2駆動部632の+Z側に設けられる第2断熱部材642とを備えて構成される。別の観点から言えば、第1断熱部材641が第1可動部61の自由端近傍に設けられるとともに、第2断熱部材642が第2可動部62の自由端近傍に設けられ、第1および第2断熱部材641,642が、弾性部71を構成する2つの板状部材71a,71cの下面に対して当接する。この第1および第2断熱部材641,642は、例えば、ある程度薄い形状を有し、内部に微細な空房を有するように樹脂またはセラミックスなどで構成される。第1および第2断熱部材641,642の熱伝導率は、駆動部層603の熱伝導率よりも低く設定されている。具体的には、第1および第2断熱部材641,642の熱伝導率は、熱伝導率が約4.0W/(m・K)であるジルコニア(ZrO2)などのセラミックスや、熱伝導率が約0.035W/(m・K)である発泡ポリイミドなどの発泡性の樹脂材料などによって構成される。
【0056】
<2−3.アクチュエータ層の動作>
図11は、アクチュエータ層60に電圧を印加するための電気回路を例示する図である。図11で示すように、第1導電部623aには配線Caの一端が電気的に接続され、該配線Caの他端が電源Psの負極に対して電気的に接続される。そして、配線Cbの一端が電源Psの正極に対して電気的に接続され、該配線Cbの他端がスイッチSwの第1端子Taに対して電気的に接続される。また、第3導電部623cには配線Ccの一端が電気的に接続され、該配線Ccの他端がスイッチSwの第2端子Tbに対して電気的に接続される。
【0057】
ここで、第1および第2可動部61,62の動作について説明する。図12は、第1および第2可動部61,62の動作を説明するための図であり、図5と同様に、図3(f)の切断面線V−Vから見た断面模式図である。
【0058】
図5では、第1および第2可動部61,62が変形していない状態(初期状態)が示されている。初期状態では、スイッチSwの第1端子Taと第2端子Tbとが電気的に接続されておらず、第1および第2突設部611,612の弾性力によって、第1および第2加熱ヒータ部621,622と、第1および第2駆動部631,632とがほぼ平坦な状態とされ、第1および第2可動部61,62がほぼ平坦な形状を呈する。なお、このとき、第1および第2可動部61,62は、第1および第2断熱部材641,642が弾性部71の−Z側の面に当接する。
【0059】
図5で示した初期状態から、スイッチSwの第1端子Taと第2端子Tbとが電気的に接続されると、第1および第2加熱ヒータ部621,622に電圧が印加され、第1および第2加熱ヒータ部621,622に電流が流れて、第1および第2加熱ヒータ部621,622が自身のジュール熱によって加熱される。このとき、第1および第2突設部611,612が延設方向に若干熱膨張するのに対して、第1および第2駆動部631,632が延設方向(Y方向)に収縮する。その結果、図12で示すように、枠部F6に対する第1および第2可動部61,62の自由端の相対的な位置が、上方(+Z方向)にシフトするように、第1および第2可動部61,62が変形する。なお、このとき、第1および第2断熱部材641,642によって弾性部71の−Z側の面が押されるため、弾性部71,91とレンズ部81とが、第1および第2可動部61,62によって+Z方向に押される。
【0060】
一方、スイッチSwの第1端子Taと第2端子Tbとが電気的に接続された状態から、第1端子Taと第2端子Tbとが電気的に接続されていない状態に移行した場合には、第1および第2突設部611,612と、第1および第2加熱ヒータ部621,622と、第1および第2駆動部631,632とが自然冷却される。このとき、第1および第2突設部611,612などの弾性力によって、第1および第2駆動部631,632が、延設方向(Y方向)に伸ばされる。つまり、第1および第2突設部611,612と第1および第2駆動部631,632とが、平坦な状態へと戻っていく。その結果、図5で示すように、第1および第2可動部61,62が変形していない状態(初期状態)となる。
【0061】
このような第1および第2可動部61,62の自由端が、第1および第2加熱ヒータ部621,622の加熱に応じて変位することと、第1および第2加熱ヒータ部621,622の冷却に応じて初期状態へ戻ることとが、適宜繰り返されることで、アクチュエータ層60が、レンズ部81をZ軸に対して略平行に移動させるアクチュエータとして機能する。
【0062】
<2−4.カメラモジュールの完成型の構造>
図13および図14は、カメラモジュール400の構造を例示する図である。具体的には、図13は、カメラモジュール400を保護層CB側(上方)から見た平面図であり、図14は、図13の切断面線XIV−XIVから見た断面模式図である。なお、図13および図14では、アクチュエータ層60の第1,3導電部623a,623cに対して外部から電気的に接続される配線Ca〜Cc、スイッチSw、および電源Psについては図示が省略されている。
【0063】
図14で示すように、撮像素子層10、撮像センサホルダ層20、赤外カットフィルタ層30、第1レンズ層40、第2レンズ層50、アクチュエータ層60、平行バネ下層70、第3レンズ層80、平行バネ上層90、および保護層CBの10層がこの順番で積層されてカメラモジュール400が形成されている。なお、このカメラモジュール400は、例えば、微細装置の集積化のために使用されるマイクロマシニング(micromachining)技法により製作される。この技法は、半導体加工技術の一種として、一般にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と称される。なお、MEMSという加工技術の名称が使用される分野としては、半導体工程、特に、集積回路技術を応用したマイクロマシニング技術を利用してサイズがμmオーダーのマイクロセンサ、アクチュエータ、および電気機械的構造物を製作する分野が含まれる。
【0064】
<2−5.レンズ部の駆動の態様>
図15および図16は、第3レンズ層80に含まれるレンズ部81の駆動態様を説明するための図である。図15および図16では、レンズ部81と弾性部71,91の状態を側方から見た模式図が示されている。なお、実際にはレンズ保持部83を弾性部71,91が挟持しているが、図15および図16では、説明の簡略化のために、弾性部71,91がレンズ部81を点Pu,Pdで保持しているように示されている。また、図15では、弾性部71,91が変形していない状態(初期状態)が示され、図16では、弾性部71,91が変形している状態(変形状態)が示されている。さらに、図15および図16では、アクチュエータ層60の変位状態についても併せて模式的に示されている。
【0065】
上述したように、弾性部71,91は、ともに同様な構成を有し、それぞれ同様に枠部F7,F9に対して2箇所で固設される。そして、第1および第2可動部61,62の変形により、板状部材71bが上昇するように弾性部71が変形する際には、レンズ部81を介して弾性部91も同様に変形する。このとき、レンズ部81が、所定距離離隔して並設される板状部材71a,91aおよび板状部材71c,91cによって挟持された状態と同視することができ、板状部材71a,91aおよび板状部材71c,91cが略同一のタイミングで略同一の変形を行う。このため、レンズ部81は、光軸が傾くことなく、上下方向(ここでは、Z軸方向)に移動する。すなわち、レンズ部81の光軸の方向がずれることなく、レンズ部81と撮像素子部11との距離が変更される。その結果、撮像素子部11とレンズ部81との距離が変更され、焦点調整が実行される。
【0066】
このように、第1および第2可動部61,62の自由端の変位によって移動される被駆動体には、弾性部71,91およびレンズ部81が含まれる。そして、ここでは、第1および第2加熱ヒータ部621,622への通電量が制御されることで、第1および第2加熱ヒータ部621,622の加熱状態が制御され、第1および第2可動部61,62の自由端の変位量も制御される。
【0067】
また、第1および第2可動部61,62の曲げに応じて、第1および第2加熱ヒータ部621,622も曲がり、この変形に応じて、第1および第2加熱ヒータ部621,622の抵抗値が変化する。これは、第1および第2加熱ヒータ部621,622の温度と自由端の変位量とが対応し、第1および第2加熱ヒータ部621,622の温度と抵抗値とが対応するためである。そこで、例えば、配線Ca〜Ccの少なくとも何れか1つの配線を流れる電流を検出する電流計を設ける。そして、該電流計による検出値によって、第1および第2加熱ヒータ部621,622の抵抗値をモニタリングすることで、間接的に、第1および第2可動部61,62の自由端の変位、すなわちレンズ部81の移動状態(位置情報)を検出することができる。したがって、この位置情報に応じて、第1および第2加熱ヒータ部621,622への通電量が制御されるフィードバック制御も可能である。
【0068】
なお、第1および第2可動部61,62の自由端の変位を、レンズ部81の移動に対して正確に反映させるためには、第1および第2断熱部材641,642は、硬く、変形し難いものであることが好ましい。
【0069】
<3.カメラモジュールの製造工程>
図17は、カメラモジュール400の製造工程の手順を例示するフローチャートである。図17で示すように、(工程A)複数のシートの準備(ステップS1)、(工程B)複数のシートの接合(ステップS2)、(工程C)ダイシング(ステップS3)、(工程D)光軸の偏芯の検査(ステップS4)、および(工程E)撮像素子層の結合(ステップS5)が順次に行われることで、カメラモジュール400が製造される。以下、各工程について簡単に説明する。
【0070】
○複数のシートの準備(工程A):
図18および図19は、準備する9枚のシートU2〜U9,UCBの構成例を示す平面図である。ここでは、各シートU2〜U9,UCBが、円盤状である例を示して説明する。
【0071】
図18(a)は、図3(b)で示した撮像センサホルダ層20に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(撮像センサホルダシート)U2を例示する図である。この撮像センサホルダシートU2は、例えば、樹脂材料を素材として、金属金型を用いたプレス加工によって製作される。
【0072】
図18(b)は、図3(c)で示した赤外カットフィルタ層30に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数配列されたシート(赤外カットフィルタシート)U3を例示する図である。この赤外カットフィルタシートU3は、例えば、透明基板上に屈折率の異なる透明薄膜を多層化することで製作される。具体的には、まず、フィルタの基板となるガラスあるいは透明樹脂の基板を用意し、該基板の上面に屈折率の異なる透明薄膜をスパッタリングや蒸着などの手法によって多数積層させることで製作される。なお、透明薄膜の厚みや屈折率の組合せを適宜変更することで、透過する光の波長帯が設定される。ここでは、例えば、600nm以上の波長帯の光を透過させないように設定することで、赤外光が遮断される。
【0073】
図18(c)は、図3(d)で示した第1レンズ層40に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(第1レンズシート)U4を例示する図であり、図18(d)は、図3(e)で示した第2レンズ層50に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(第2レンズシート)U5を例示する図である。第1および第2レンズシートU4,U5は、例えば、フェノール系の樹脂、アクリル系の樹脂、または光学ガラスを素材として、成型またはエッチングなどの手法で製作される。なお、カメラモジュール400に絞りを形成する場合は、例えば、第2レンズ層50などに、シャドウマスクを用いて遮光材料の薄膜を形成したり、別途黒色に色づけされた樹脂材料などで絞りを形成すれば良い。
【0074】
図18(e)は、図3(f)で示したアクチュエータ層60に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(アクチュエータシート)U6を例示する図である。アクチュエータシートU6は、例えば、マイクロマシニング技術を利用した以下の工程(I)〜(V)によって製作される。なお、ここでは、アクチュエータシートU6の各アクチュエータ層60の製作に着目した説明を行う。
【0075】
(I)第1および第2突設部611,612の厚みの設計値と同じ厚みの活性層が形成されたSOI(Silicon on Insulator)ウエハを準備する。このSOIウエハは、基板ウエハ上に、分離酸化層(BOX層:BuriedOxide層)、および活性層(SOI層)がこの順番で積層したものである。そして、SOIウエハの活性層側にフォトリソグラフィによって所望パターンのレジストを形成し、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などを用いて、活性層を枠部F61と第1および第2突設部611,612の形状に加工する。なお、このとき、分離酸化層、および基板ウエハも、枠部F61と第1および第2突設部611,612の形状に加工しても良い。
【0076】
(II)フォトリソグラフィによって、工程(I)で形成された枠部F61と第1および第2突設部611,612の上面においてレジストを第1および第2加熱ヒータ部621,622のパターンに形成する。そして、レジストのパターンの上から、第1および第2加熱ヒータ部621,622の素材となる抵抗が比較的大きな金属である白金(Pt)やタングステン(W)を、スパッタリングや蒸着などの手法で膜状に堆積させることで、第1および第2加熱ヒータ部621,622を形成する。レジストは、酸素プラズマアッシングなどの手法で除去される。また、フォトリソグラフィによって、第1および第2加熱ヒータ部621,622が形成された枠部F61と第1および第2突設部611,612の上面においてレジストを第1〜3導電部623a〜623cのパターンに形成する。そして、レジストのパターンの上から、第1〜3導電部623a〜623cの素材となる金属(例えば、銅)を、スパッタリングや蒸着などの手法で膜状に堆積させることで、第1〜3導電部623a〜623cを形成する。レジストは、酸素プラズマアッシングなどの手法で除去される。この工程により、加熱部層602が形成される。
【0077】
(III)フォトリソグラフィによって、加熱部層602が形成された枠部F61と第1および第2突設部611,612の上面においてレジストを第1および第2駆動部631,632のパターンで形成する。そして、レジストのパターンの上から、第1および第2駆動部631,632の素材となる金属(ここでは、アルミニウムや亜鉛など)を、スパッタリングや蒸着などの手法で膜状に堆積させることで、第1および第2駆動部631,632を形成する。レジストは、酸素プラズマアッシングなどの手法で除去される。この工程により、駆動部層603が形成される。
【0078】
(IV)第1および第2駆動部631,632の上面のうち、自由端となる端部側に、第1および第2断熱部材641,642をそれぞれ貼り付ける。ここでは、上述したように、第1および第2断熱部材641,642は、発泡性の樹脂材料やセラミックスなどといった熱伝導率の低い素材で構成される。
【0079】
(V)フォトリソグラフィによって、第1および第2駆動部631,632の上面側から表面保護用のフォトレジストを塗布した後に、フッ酸(HF)を用いて分離酸化層のエッチングを行う。このとき、第1および第2突設部611,612と、第1および第2加熱ヒータ部621,622と、第1および第2駆動部631,632と、第1および第2断熱部材641,642とが積層した部分が、分離酸化層を介した基板ウエハの表面による保持から解放されて、第1および第2可動部61,62が形成される。
【0080】
なお、第1,3導電部623a,623cに対して、配線Ca,Ccを電気的に接続し易くするために、第1,3導電部623a,623cの端部に適宜端子部を設けることが好ましい。
【0081】
図18(f)は、図4(a)で示した平行バネ下層70に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(平行バネ下シート)U7を例示する図であり、図19(b)は、図4(c)で示した平行バネ上層90に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(平行バネ上シート)U9を例示する図である。平行バネ下シートU7および平行バネ上シートU9は、りん青銅などの金属材料の薄板に対して、例えばエッチングなどを施すことで製作される。
【0082】
図19(a)は、図4(b)で示した第3レンズ層80に相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(第3レンズシート)U8を例示する図である。第3レンズシートU8は、例えば、フェノール系の樹脂、アクリル系の樹脂、または光学ガラスを素材として、成型およびエッチングなどの手法で製作される。第3レンズシートU8では、各チップにおいて、枠部F8と、レンズ部81と、レンズ保持部83とが樹脂などの同一素材によって一体的に形成される。また、図4(b)で示したように、2本の連結部により、レンズ部81を保持するレンズ保持部83と、枠部F8とが連結されて、レンズ部81が支持された状態となっている。なお、第3レンズ層80がカメラモジュール400に適用されることを考慮すると、第3レンズ層80のうちのレンズ部81以外の部分は、光を遮断することが好ましい。
【0083】
図19(c)は、図4(d)で示した保護層CBに相当するチップが所定配列(ここでは、マトリックス状の所定配列)で多数形成されたシート(保護シート)UCBを例示する図である。保護シートUCBは、例えば、透明の材料である樹脂(またはガラス)を所望の厚みとし、適宜エッチングを施すことで製作された平板状のシートである。
【0084】
なお、ここで準備される9枚のシートU2〜U9,UCBには、シートの接合工程における位置合わせのためのマーク(アライメントマーク)が、略同一の位置に付される。アライメントマークとしては、例えば、十字のマークなどが挙げられ、各シートU2〜U9,UCBの上面の外周部近傍であって比較的離隔した2箇所以上の位置に設けられることが好ましい。
【0085】
○複数のシートの接合(工程B):
図20は、複数のシートU2〜U9,UCBを順次に積層させて接合する工程を模式的に示す図である。
【0086】
まず、撮像センサホルダシートU2、赤外カットフィルタシートU3、第1レンズシートU4、および第2レンズシートU5について、シートU2〜U5の各チップが、それぞれ直上に積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。なお、レンズ部41,51,81によって形成される光学系の精度を保つためには、3つのレンズ部41,51,81の光軸のズレ量(すなわち偏芯精度)が5μm以内であることが望ましい。
【0087】
具体的には、公知のアライナー装置に、まず、撮像センサホルダシートU2および赤外カットフィルタシートU3がセットされ、予め形成しておいたアライメントマークを用いたアライメントが行われる。この際、事前に、撮像センサホルダシートU2と赤外カットフィルタシートU3とが接合される面(接合面)に、いわゆるエポキシ樹脂系の接着剤、または紫外線硬化接着剤が塗布されており、両シートU2,U3が接合される。なお、接合面にO2プラズマを照射することで、接合面を活性化して、両シートU2,U3を直接接合する方法を用いても良い。但し、複数層を短時間で簡単に接合して、カメラモジュール400の生産性の向上と製造コストの低減とを図ることを考慮すれば、上記樹脂の接着剤を用いる方が好ましい。
【0088】
続いて、上記と同様なアライメントならびに接合方法により、赤外カットフィルタシートU3上に第1レンズシートU4が接合され、更に、第1レンズシートU4上に第2レンズシートU5が接合される。
【0089】
次に、4つのシートU2〜U5が積層されて形成された積層体の上面に対して、アクチュエータシートU6、平行バネ下シートU7、第3レンズシートU8、および平行バネ上シートU9がこの順番で積層および接合される。アライメントならびに接合方法については、上述したシートU2,U3に係る手法と同様であり、このとき、シートU2〜U9の各チップが、それぞれ直上に積層される。ここでは、例えば、第3レンズシートU8の枠部F8に相当する部分が、平行バネ下シートU7および平行バネ上シートU9と接合される。
【0090】
また、この際、第3レンズシートU8のレンズ部81が、平行バネ下シートU7の弾性部71を介して、アクチュエータシートU6の第1および第2可動部61,62によって支持された状態となる。また、シートU7〜U9が積層されて結合されることで、レンズ保持部83が上下面から弾性部71,91によって挟持され、弾性部71,91によってレンズ部81が支持された状態となる。このとき、第3レンズシートU8の各チップにおいて、枠部F8とレンズ部81とをレンズ保持部83を介して連結する連結部がいわゆるフェムト秒レーザなどによって切断され、枠部F8とレンズ部81とが分離される。なお、ここでは、各連結部が枠部F8側の一部分84a,84b(図4(b)の太破線部)で切断される。
【0091】
このように、複数のチップが形成されたシートの状態で、各チップのレンズ部81が弾性部71,91によって支持された後に、レンズ部81が移動可能な状態とされる。このため、レンズ部81と第1および第2可動部61,62との位置合わせを精度良く行うことができる。すなわち、例えば、各光学ユニット(後述)におけるレンズ部の光軸の偏芯などを防ぐことが可能となる。
【0092】
最後に、平行バネ上シートU9の上面に対して、保護シートUCBが、上述した手法と同様な方法で、アライメントされて接合される。このとき、9つのシートU2〜U9,UCBが積層した部材(積層部材)が形成される。
【0093】
○ダイシング(工程C):
9つのシートU2〜U9,UCBが積層されて形成された積層部材が、ダイシング装置によってチップ毎に切り離されて、9つの層20〜90,CBが積層された光学系のユニット(光学ユニット)が多数生成される。
【0094】
○光軸の偏芯の検査(工程D):
上記ダイシングによって生成された多数の光学ユニットについて、レンズ偏芯測定機によって、3つのレンズ部41,51,81の光軸のズレ量(すなわち偏芯)が所定の許容値域範囲(例えば、5μm以内)に入っているのか否か検査される。一般に、カメラモジュール400を構成する部品のうち、最も高価となるのは撮像素子層10である。そして、光軸の偏芯が所定の許容値域範囲から外れたカメラモジュール400は、不良品として扱われる。このため、光学ユニットの段階で不良品と良品とが選別され、良品に対してのみ撮像素子層10を取り付けることで、カメラモジュール400の製造コストならびに資源の無駄使いの低減が図られる。
【0095】
○撮像素子層の結合(工程E):
光軸の偏芯の検査によって良品であると判別された各光学ユニットの下面(具体的には、撮像センサホルダ層20の裏面)に対して、撮像素子層10のチップが、いわゆるエポキシ樹脂系の接着剤、または紫外線硬化接着剤を用いた接合によって取り付けられて、カメラモジュール400が完成される。このとき、各カメラモジュール400のアクチュエータ層60の第1および第3導電部623a,623cに対して、配線Ca〜Cb、スイッチSw、および電源Psが外部から電気的に接続される。
【0096】
以上のように、本発明の実施形態に係るカメラモジュール400では、加熱による駆動部層603の収縮に応じて変位する第1および第2可動部61,62の自由端近傍が、第1および第2断熱部材641,642を介して被駆動体に当接される。このため、第1および第2可動部61,62の自由端の変位を生じさせるために加熱部層602で発せられた熱が第1および第2可動部61,62から被駆動体へ伝達されることが抑制される。その結果、熱効率の改善が図られ、比較的短時間で第1および第2駆動部631,632が熱せられることで、駆動力の発生の指示から実際に駆動力が発生するまでの時間が短縮される。すなわち、駆動力の発生における応答性が向上する。
【0097】
<変形例>
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0098】
◎例えば、上記実施形態では、アクチュエータ層60が、支持基板層601、加熱部層602、駆動部層603、および断熱部材層604の複数層が順に積層されて形成されたが、これに限られない。例えば、駆動部層603の熱膨張率を、支持基板層601の熱膨張率よりも大きくして、複数層の順番を異ならせても良い。以下、具体例を示して説明する。
【0099】
図21および図22は、複数層の積層順を異ならせた具体例(ここでは、アクチュエータ層60A)を説明するための図である。なお、本明細書では、上記実施形態に係るカメラモジュール400のうち、アクチュエータ層60をアクチュエータ層60Aに変更したものをカメラモジュール400Aとし、携帯電話機100のうち、画像取得再生部200をカメラモジュール400Aを搭載する画像取得再生部200Aに変更したものを携帯電話機100Aとする。図21および図22では、図5および図12と同様に、図3(f)の切断面線V−Vから見たアクチュエータ層60Aの断面模式図が示されている。
【0100】
アクチュエータ層60Aは、駆動部層603A、加熱部層602A、支持基板層601A、および断熱部材層604Aがこの順番で積層されて構成される。駆動部層603A、加熱部層602A、および支持基板層601Aが積層されて形成される構造は、上記実施形態に係る支持基板層601、加熱部層602、および駆動部層603が積層されて形成される構造が上下反転されたものとなっている。そして、断熱部材層604Aが、支持基板層601Aの+Z側の面の自由端近傍に設けられて、第1および第2可動部61A,62Aが構成される。
【0101】
また、支持基板層601A、加熱部層602A、および断熱部材層604Aについては、上記実施形態に係る支持基板層601、加熱部層602、および断熱部材層604と同様な構造および素材でそれぞれ構成されている。但し、駆動部層603Aについては、駆動部層603の第1および第2駆動部631,632と構造は同様であるものの、素材が変更された第1および第2駆動部631A,632Aによって構成されている。具体的には、第1および第2駆動部631A,632Aは、第1および第2突設部611,612を構成する素材とは熱膨張率が異なる金属材料を用いて構成されている。例えば、第1および第2突設部611,612が、シリコンによって形成されている場合には、第1および第2駆動部631A,632Aの素材としては、シリコンと比較して熱膨張率が大きなアルミニウムや亜鉛などが挙げられる。
【0102】
なお、シリコンの熱膨張率は、3.4×10-6/Kであり、アルミニウムの熱膨張率は、23×10-6/Kであり、亜鉛の熱膨張率は、26×10-6/Kである。また、インバーなどの熱膨張率が他の金属と比較して小さな素材を用いて第1および第2突設部611,612が構成されている場合には、第1および第2駆動部631A,632Aを構成する素材としては、種々の金属の採用が可能であり、例えば、アルミニウムや亜鉛などを採用すれば良い。
【0103】
ここで、上記の如く構成されたアクチュエータ層60Aの動作について、図21および図22を参照しつつ説明する。但し、上記実施形態と同様な構成については、同じ符号を使用して説明する。
【0104】
図21では、第1および第2可動部61A,62Aが変形していない状態(初期状態)が示されている。初期状態では、第1および第2突設部611,612の弾性力によって、第1および第2加熱ヒータ部621,622と、第1および第2駆動部631A,632Aとがほぼ平坦な状態とされ、第1および第2可動部61A,62Aがほぼ平坦な形状を呈する。なお、このとき、第1および第2可動部61A,62Aは、第1および第2断熱部材641,642が弾性部71の−Z側の面に当接する。
【0105】
図21で示した初期状態から、第1および第2加熱ヒータ部621,622に電圧が印加され、第1および第2加熱ヒータ部621,622に電流が流れて、第1および第2加熱ヒータ部621,622が自身のジュール熱によって加熱される。このとき、第1および第2突設部611,612と、第1および第2駆動部631A,632Aとが略均一に加熱され、素材の熱膨張率の差に起因して、第1および第2突設部611,612よりも、第1および第2駆動部631A,632Aの方が延設方向(Y方向)に大きく膨張する。つまり、第1および第2突設部611,612の延設距離と、第1および第2駆動部631A,632Aの延設距離との差が大きくなる。その結果、図22で示すように、枠部F6に対する第1および第2可動部61A,62Aの自由端の相対的な位置が、上方(+Z方向)にシフトするように、第1および第2可動部61A,62Aが変形する。
【0106】
一方、第1および第2加熱ヒータ部621,622による加熱が終了されると、第1および第2突設部611,612と、第1および第2加熱ヒータ部621,622と、第1および第2駆動部631A,632Aとが自然冷却される。このとき、第1および第2突設部611,612と、第1および第2駆動部631A,632Aとが略均一に冷却され、第1および第2突設部611,612の延設距離と、第1および第2駆動部631A,632Aの延設距離との差が小さくなる。その結果、図21で示すように、第1および第2可動部61A,62Aが変形していない状態(初期状態)となる。
【0107】
このような構成によっても、駆動部層603Aと支持基板層601Aとの間における熱膨張の差を利用して、第1および第2可動部61A,62Aの曲げによる変位を発生させることができる。したがって、駆動部層603,603Aは、加熱に応じて一方向に膨張または収縮するものであれば良い。
【0108】
なお、第1および第2突設部611,612の素材と、第1および第2駆動部631A,632Aの素材との間で、熱膨張率の差を大きくすることで、印加する熱量当たりの変位量を大きくするようにしても良い。また、上記実施形態と同様に、第1および第2加熱ヒータ部621,622の抵抗値をモニタリングすることで、第1および第2可動部61A,62Aの変位量について、フィードバック制御を行っても良い。
【0109】
◎また、上記実施形態では、第1および第2突設部611,612が、シリコンを用いて構成されたが、これに限られず、例えば、熱膨張率が比較的小さな金属を用いて構成されても良い。但し、上記実施形態のように、第1および第2突設部611,612の素材として、微細な加工技術が確立されているシリコンを素材として用いることで、微細かつ高精度の支持基板層の製造が容易となる。その一方で、第1および第2突設部611,612の素材として、金属材料を用いた場合には、金属材料の圧延などの工程によって薄型の第1および第2突設部611,612を容易に製造することができる。
【0110】
◎また、上記実施形態では、第1および第2断熱部材641,642が、発泡性の樹脂材料やセラミックスなどといった熱伝導率の低い素材で構成されたが、これに限られない。例えば、熱伝導を阻害する介在物(例えば、シリコンなど)を母材中に分散させた素材によって構成されても、第1および第2断熱部材641,642の熱伝導率を低下させることができる。
【0111】
◎また、上記実施形態では、加熱部層602が通電に応じて発熱することで、駆動部層603が加熱されて収縮したが、これに限られない。例えば、加熱部層602を設ける代わりに、形状記憶合金で構成された駆動部層603を加熱部層602の機能を併せ持つものとしても良い。すなわち、第1および第2突設部と、形状記憶合金で構成された第1および第2駆動部と、第1および第2断熱部材とが積層されて第1および第2可動部が構成されても良い。このような構成では、第1および第2駆動部自身が通電に応じて発熱して収縮することで、第1および第2可動部の自由端の変位が生じる。
【0112】
◎また、上記実施形態では、第1および第2可動部61,62の内部に熱を発生させる加熱部層602を含んでいたが、これに限られない。例えば、アクチュエータ層60に隣接する第2レンズ層50など、その他の層に熱を発生させる部分が形成されても良い。但し、熱効率の向上を図るためには、第1および第2可動部61,62の内部に熱を発生させる加熱部層602が含まれることが好ましい。
【0113】
◎また、上記実施形態では、アクチュエータ層60において、2枚の第1および第2可動部61,62が設けられたが、これに限られず、少なくとも、第1および第2可動部61,62のうちの一方が設けられれば良い。
【0114】
◎また、上記実施形態では、弾性部71,91がそれぞれ枠部F7,F9の2箇所に固設されたが、これに限られず、種々の構成を採用しても良い。但し、上述の如くレンズ部81の光軸を傾けることなく、レンズ部81を移動させるためには、弾性部71,91がそれぞれ枠部F7,F9の2箇所以上で固設されることが好ましい。また、弾性部71,91の態様としては、例えば、弾性部71,91をそれぞれ中央部分で2分割して、2分割された弾性部71の一方および他方の一端を枠部F7にそれぞれ固設することで合計2箇所に固設するとともに、2分割された弾性部91の一方および他方の一端を枠部F9にそれぞれ固設することで合計2箇所に固設するような構成も考えられる。
【0115】
◎また、上記実施形態では、第1および第2可動部61,62によって移動される対象物(被駆動体)が、携帯電話機100に搭載されるカメラモジュール400のオートフォーカス装置を構成する光学レンズであったが、これに限られない。例えば、デジタルカメラ(撮像装置)に搭載されるオートフォーカス装置を構成する各部であっても良い。
【0116】
具体例としては、図23で示すように、撮像素子11aがデジタルカメラ800の筐体に対して光軸Axに沿って前後に摺動可能に構成され、撮像素子11aの背面に断熱部材が当接するように上記実施形態に係るアクチュエータ層60と同様な構成を有するアクチュエータ650が設けられる構成が考えられる。このような構成では、アクチュエータ650の動作に応じて撮像素子11aが光軸Axに沿って前後に移動されて、光学レンズLzと撮像素子11aとの距離が変更されることで、オートフォーカス制御が実現される。
【0117】
また、図24で示すように、デジタルカメラ900に固設された撮像レンズの筐体に対して光学レンズLzが光軸Axに沿って前後に摺動可能に構成され、光学レンズLzの背面に断熱部材が当接するように上記実施形態に係るアクチュエータ層60と同様な構成を有するアクチュエータ660が設けられる構成が考えられる。このような構成では、アクチュエータ660の動作に応じて、光学レンズLzが光軸Axに沿って前後に移動されて、光学レンズLzと撮像素子11aとの距離が変更されることで、オートフォーカス制御が実現される。
【0118】
◎また、上記実施形態では、第1および第2可動部61,62によって移動される対象物(被駆動体)が、オートフォーカス装置を構成する光学レンズであったが、これに限られない。例えば、被駆動体は、手振れ補正機構を構成する光学レンズや光ピックアップ装置を構成する光学レンズなど、その他の光学レンズであっても良いし、更に、光学レンズ以外の種々の小型の被駆動体であっても良い。つまり、本発明は、被駆動体を移動させるアクチュエータ一般に適用することができる。なお、手振れ補正機構としては、例えば、第1および第2可動部の動きにより、被駆動体である光学レンズが上下左右に2次元的に駆動する構成を挙げることができる。
【0119】
ここで、本発明を適用して製造されたアクチュエータを含む具体例について簡単に説明する。図25は、対物レンズ705を移動させるアクチュエータを含む光ピックアップ装置700の構成例を示す断面模式図である。
【0120】
光ピックアップ装置700は、光源701から射出される光ビームを光ディスク706の情報記録面707に集光させ、該情報記録面707で反射される光ビームを受光素子708で受光して、情報を読み取るものである。そして、この光ピックアップ装置700では、情報記録面707の形状に合わせて、光ビームのフォーカス位置を調節する必要がある。そこで、本具体例に係る光ピックアップ装置700には、上記実施形態に係るアクチュエータ層60、平行バネ下層70、および平行バネ上層90を用いて対物レンズ705を駆動することで光ビームの焦点を調節する駆動装置が搭載されている。
【0121】
図25で示すように、光源701から射出された光ビームは、ビームスプリッター702を透過し、コリメータレンズ703で略平行光とされ、反射プリズム704にて反射されて、対物レンズ705に入射する。そして、対物レンズ705を保持する部分が、平行バネ下層70の弾性部71と、平行バネ上層90の弾性部91とによって挟持され、弾性部71の下面にアクチュエータ層60の第1および第2可動部61,62が当接されている。このため、第1および第2可動部61,62の変形により、弾性部71の押し上げ、ならびに弾性部71の弾性力による押し下げが生じ、対物レンズ705が光軸に沿って上下に駆動可能とされている。また、対物レンズ705で屈折された光は、光ディスク706に入射し、情報記録面707に集光される。そして、情報記録面707で反射された光は、入射してきた光路を逆に辿り、ビームスプリッター702で反射されて受光素子708に至る。
【0122】
◎また、上記実施形態では、第1および第2断熱部材641,642が第1および第2可動部61,62に含まれていたが、これに限られない。例えば、被駆動体のうち、アクチュエータ層の可動部と当接する箇所に断熱部材が設けられても良い。すなわち、アクチュエータ層の可動部が断熱部材を介して被駆動体に当接すれば良い。換言すれば、アクチュエータ層の可動部と被駆動体との間に断熱部材が介在すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の実施形態に係るカメラモジュールを搭載した携帯電話機の概略構成を例示する模式図である。
【図2】カメラモジュールの構成例を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】カメラモジュールを構成する各層の構成例をそれぞれ示す平面図である。
【図4】カメラモジュールを構成する各層の構成例をそれぞれ示す平面図である。
【図5】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための図である。
【図6】断熱部材の具体例を示す図である。
【図7】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための図である。
【図8】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための図である。
【図9】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための図である。
【図10】アクチュエータ層の詳細な構成を説明するための図である。
【図11】アクチュエータ層に電圧を印加するための電気回路を例示する図である。
【図12】可動部の動作を説明するための図である。
【図13】カメラモジュールの構造を示す図である。
【図14】カメラモジュールの構造を示す図である。
【図15】第3レンズ層に含まれるレンズ部の駆動態様を説明するための図である。
【図16】第3レンズ層に含まれるレンズ部の駆動態様を説明するための図である。
【図17】カメラモジュールの製造工程の手順を例示するフローチャートである。
【図18】準備するシートの構成例を示す平面図である。
【図19】準備するシートの構成例を示す平面図である。
【図20】複数のシートを順次に積層させて接合する工程を模式的に示す図である。
【図21】変形例に係る可動部の構成および動作を説明するための図である。
【図22】変形例に係る可動部の構成および動作を説明するための図である。
【図23】撮像素子を移動させるアクチュエータを含む撮像装置を示す図である。
【図24】光学レンズを移動させるアクチュエータを含む撮像装置を示す図である。
【図25】対物レンズを移動させるアクチュエータを含む光ピックアップ装置の構成例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0124】
10 撮像素子層
11 撮像素子部
11a 撮像素子
20 撮像センサホルダ層
30 赤外カットフィルタ層
40 第1レンズ層
41,51,81 レンズ部
50 第2レンズ層
60 アクチュエータ層
61 第1可動部
62 第2可動部
70 平行バネ下層
80 第3レンズ層
90 平行バネ上層
100,100A 携帯電話機
400,400A カメラモジュール
601,601A 支持基板層
602,602A 加熱部層
603,603A 駆動部層
604,604A 断熱部材層
611 第1突設部
612 第2突設部
621 第1加熱ヒータ部
622 第2加熱ヒータ部
631,631A 第1駆動部
632,632A 第2駆動部
641 第1断熱部材
642 第2断熱部材
650,660 アクチュエータ
700 光ピックアップ装置
800,900 デジタルカメラ
CB 保護層
F6,F61 枠部
Lz 光学レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
一端が前記固定部に固設され、且つ一方向に延設される板状の可動部と、
を備え、
前記可動部が、
一端が前記固定部に固設され、且つ前記一方向に延設される板状の支持層と、加熱に応じて前記一方向に膨張または収縮する駆動部層とを含む複数層が積層されて形成されるとともに、前記一端とは反対側の他端近傍に断熱部材を有することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータであって、
前記複数層が、
前記駆動部層を加熱する加熱部層を含むことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアクチュエータであって、
前記支持層が、
シリコンを用いて構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のアクチュエータであって、
前記支持層が、
金属材料を用いて構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載のアクチュエータであって、
前記駆動部層が、
前記支持層を構成する素材とは熱膨張率が異なる金属材料を用いて構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータであって、
前記駆動部層が、
形状記憶合金を用いて構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載のアクチュエータであって、
前記断熱部材が、
発泡材料を用いて構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1から請求項6の何れかに記載のアクチュエータであって、
前記断熱部材が、
内部に空気層を含む多層膜を用いて構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れかに記載のアクチュエータと、
前記断熱部材において前記可動部と当接する被駆動体と、
を備え、
前記可動部の前記他端の変位によって前記被駆動体を移動させることを特徴とする駆動装置。
【請求項10】
アクチュエータと、
被駆動体と、
を備え、
前記アクチュエータが、
固定部と、一端が前記固定部に固設され、且つ一方向に延設される板状の可動部と、を有し、
前記可動部が、
一端が前記固定部に固設され、且つ前記一方向に延設される板状の支持層と、加熱に応じて前記一方向に膨張または収縮する駆動部層と、を含む複数層が積層されて形成されるとともに、前記一端とは反対側の他端近傍において断熱部材を介して前記被駆動体に当接することを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−66458(P2010−66458A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232058(P2008−232058)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】