説明

アクチュエータケースおよび超音波モータ

【課題】トラス型圧電アクチュエータの保持が極めて容易であり、しかもトラスアクチュエータにぶれが発生しにくいアクチュエータケースを提供する。
【解決手段】トラス型圧電アクチュエータ10とこれを保持するケース20を具備する超音波モータ100において、ケース20は、圧電アクチュエータ10を把持する凹型の第1ケース部21と、第1ケース部21を嵌挿保持する凹型の第2ケース部22と、第1ケース部21の側壁部21bを圧電アクチュエータ10に押し付ける第1コイルバネ24と、第1ケース部21の底壁部21cを圧電アクチュエータ10に押し付ける第2コイルバネ25と、円柱形状を有し、その中心軸が圧電アクチュエータ10の変位面と直交し、かつ、その側面の一部が第1ケース部21の側壁部21aと対向する第2ケース部22の面を押圧するように第1ケース部21の側壁部21aに保持されたコマ23を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X−Yステージや回転ステージ等の駆動に好適な圧電アクチュエータを保持するためのアクチュエータケースと、このアクチュエータケースを用いて構成された超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
X−Yステージやリニアモータ、回転ステージ等の駆動機構として利用されている圧電アクチュエータとして、電圧を印加することにより伸縮変位を生じる積層型の圧電素子2個を、その変位方向が一定角度で交差するように被駆動体に当接させるためのヘッドに接着し、さらにこれら2個の圧電素子を略L字型のベース部材に接着した構造を有するもの(以下、「トラス型圧電アクチュエータ」という)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
このトラス型圧電アクチュエータでは、例えば、位相が90度ずれた正弦波電圧を2個の圧電素子に印加して、これらの伸縮のタイミングをずらすことによりヘッドに楕円運動を生じさせ、ヘッドに当接した被駆動体をヘッドと被駆動体との間に作用する摩擦力を利用して所望の方向に動かす。
【0004】
ヘッドを被駆動体に一定の力で押し当てるようにトラス型圧電アクチュエータを保持する方法として、特許文献1には、ベース部材の屈折部にバネ等の付勢部材を取り付けて、ヘッドを被駆動体に押し付ける方法が開示されている。また、引用文献2には、1個の圧電素子をその伸縮方向において押圧する付勢部材をベース部材の端部の一方に取り付けると同時に、ベース部材の他端を係止することにより、ヘッドを被駆動体に押し当てる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、付勢部材によってヘッドを被駆動体に押し当てる力の向きを、2個の圧電素子の変位方向のなす角を2等分する線の長さ方向に確実に合わせなければ、ヘッドが被駆動体に与える推力が小さくなってしまう。また、ベース部材を安定に保持することが難しく、ヘッドが描く楕円軌道面内においてベース部材がぶれやすくなる。このベース部材のぶれは、ヘッドが被駆動体に与える推力を変化させてしまうため、被駆動体の動作の制御精度を低下させてしまう。
【0006】
また、特許文献2に開示された方法では、付勢部材を保持するための部品とベース部材を係止するための部品の2つの部品とトラス型圧電アクチュエータの相対的な位置決めに高い精度が要求されるために、その組立工程では細心の注意が必要とされる。
【0007】
さらにこれらの方法に共通して、ヘッドが描く楕円軌道面と直交する方向にアクチュエータがぶれてしまうおそれがあり、このようなぶれが発生すると、被駆動体の動作制御の精度が低下してしまい、また、被駆動体へ与える推力も低下してしまう。
【特許文献1】特開2000−228885号公報(図1、段落[0002],[0003]等)
【特許文献2】特開2004−187372号公報(図1、段落[0025],[0026]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、トラス型圧電アクチュエータの保持が極めて容易であり、しかもトラス型圧電アクチュエータにぶれが発生しにくいアクチュエータケースを提供することを目的とする。また、本発明は、このようなアクチュエータケースを用いてなる超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアクチュエータケースは、被駆動体に当接させるヘッドと、所定の電圧が印加された際の伸縮方向が所定角度で交差するように前記ヘッドに接着された2個の圧電素子と、これら2つの圧電素子を保持する凹型形状の素子保持部材とを備えた圧電アクチュエータ、所謂、トラス型圧電アクチュエータを保持するものであり、第1ケース部と円柱部材を備えている。第1ケース部は凹型形状を有しており、素子保持部材の底壁の一部を把持する底壁部と、素子保持部材の2つの側壁の一部をそれぞれ把持する2つの側壁部とを有している。第1ケース部の一方の側壁部を圧電アクチュエータに所定の力で押圧することによってこの圧電アクチュエータが第1ケース部の他方の側壁部を押圧している状態において、円柱部材は、その中心軸が前記圧電アクチュエータの変位面と直交し、かつ、その側面の一部が所定の固定面を押圧するように、第1ケース部の他方の側壁部に保持される。
【0010】
この円柱部材の側面と固定面との摩擦が、ヘッドの運動を阻害することなく、アクチュエータのぶれを抑制する。
【0011】
円柱部材を第1ケース部に保持させる好ましい方法としては、円柱部材の端面の中心に円柱状の突起部を設け、この突起部を挿入させる孔部を第1ケース部に設ける方法が挙げられる。
【0012】
このアクチュエータケースは、さらに、第1ケース部を嵌挿保持する凹型の第2ケース部と、第1ケース部の一方の側壁部を圧電アクチュエータに押し付けるようにこの一方の側壁部と第2ケース部との間に設けられた第1付勢部材と、第1ケース部の底壁部を第1ケース部に把持された圧電アクチュエータに押し付けるように、当該底壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第2付勢部材とをさらに具備する構成とすることができる。この構成では、円柱部材の側面の一部は、第2ケース部において第1ケース部の他方の側壁部と対向する面を押圧していることになる。
【0013】
第1ケース部には樹脂材料が好適に用いられ、第2ケース部には金属材料が好適に用いられ、円柱部材には金属材料が好適に用いられる。
【0014】
本発明によれば、上述した圧電アクチュエータとアクチュエータケースとを具備する超音波モータが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアクチュエータケースは、トラス型圧電アクチュエータを容易に収容して、安定に保持することができる。そして、このアクチュエータケースに収容されたトラス型圧電アクチュエータは、その駆動時に不要なぶれが生じ難いために、被駆動体の動作制御を高精度に行うことが可能になり、被駆動体へ与える推力を安定して維持することができる。また、本発明に係るアクチュエータケースを用いた超音波モータは、組み立てが容易であり、しかもコンパクトな構成を容易に実現することができ、さらにX−Yステージ等の装置への設置も簡単に行うことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に超音波モータ100の概略側面図を、図2に超音波モータ100の概略断面図を、図3に図1中の矢視A−A断面図をそれぞれ示す。なお、図1,図2には、図3に示した側面カバー22dが取り付けられていない形態が示されている。また、図1から図3に示すように、3次元直交座標(X軸,Y軸,Z軸)を規定することとする。
【0017】
超音波モータ100は、所謂、トラス型圧電アクチュエータ10(以下「圧電アクチュエータ10」という)と、この圧電アクチュエータ10を保持するアクチュエータケース(以下「ケース」という)20とを有している。超音波モータ100により駆動されるスライダ50はガイド(図示せず)によりX軸方向にスライド自在であり、ケース20は図示しない固定物(例えば、ガイド等を保持するための装置フレーム等)に固定することができる。
【0018】
圧電アクチュエータ10は、スライダ50に当接させるヘッド11と、所定の電圧が印加された際の伸縮方向が所定角度で交差するようにヘッド11に接着された2個の積層型の圧電素子12a,12bと、これら2つの圧電素子12a,12bを保持する凹型形状の素子保持部材13とを備えている。
【0019】
ヘッド11は、耐摩耗性に優れる材料、例えば、アルミナ(Al)や炭化珪素(SiC),窒化珪素(Si)等のセラミックス材料、金属材料の表面にこれらのセラミックス材料のコーティング被膜を形成したものが好適に用いられる。
【0020】
ヘッド11と圧電素子12a,12bとの接着には、エポキシ樹脂接着剤等の接合強度が大きく、耐熱性にも優れた硬質の樹脂接着剤が好適に用いられる。圧電素子12a,12bには、低電圧で大きな変位量を得ることができる、所謂、一体焼成型の積層型圧電素子が好適に用いられる。
【0021】
素子保持部材13は、X方向端に位置する側部(以下「素子接着部」という)13a,13bとこれらの素子接着部13a,13bを結ぶ底部(以下「連結部」という)13cからなる一体構造物であり、一般的に、金属材料で構成されている。
【0022】
圧電素子12a,12bに位相が90度ずれた電圧を印加すると、ヘッド11にZ−X面内での楕円運動が生じ、ヘッド11とスライダ50との間の摩擦力を利用して、スライダ50をX方向で移動させることができる。スライダ50の移動方向は、一方の圧電素子12aの駆動電圧に対する他方の圧電素子12bの駆動電圧の位相を90度進めるのか遅らせるのかで決めることができる。
【0023】
圧電素子12a,12bの伸縮方向の交差角度θは、ヘッド11の楕円運動の軌跡を変化させるパラメータであり、スライダ50を動かすために必要な推力と送り速度が得られやすくなるように、適宜、決定される。ヘッド11における圧電素子12a,12b接着のための面の角度と、素子保持部材13の素子接着部13a,13bそれぞれにおける圧電素子12a,12b接着のための面の傾斜角度は、この交差角度θに対応させて、決定すればよい。
【0024】
圧電アクチュエータ10を保持するケース20は、圧電アクチュエータ10を直接に保持する第1ケース部21と、この第1ケース部21を嵌挿保持する第2ケース部22と、円柱部材(以下「コマ」という)23と、第1付勢部材たる第1コイルバネ24と、第2付勢部材たる第2コイルバネ25を備えている。
【0025】
第1ケース部21は凹型形状を有しており、素子保持部材13を構成する素子接着部13aの外側の一部を把持するための爪部31aが設けられた側壁部21aと、素子保持部材13を構成する素子接着部13bの外側の一部を把持するための爪部31bが設けられた側壁部21bと、素子保持部材13を構成する連結部13cの一部を把持する爪部31cが設けられた底壁部21cから構成されている。これら側壁部21a,21bおよび底壁部21cは一体構造物であることが、機械的強度を高く維持する観点から、好ましい。
【0026】
「把持」とは、素子保持部材13を挟み込んで保持することをいう。但し、挟み込んだ状態において、その接触面を接着剤で接着することを除外するものではない。
【0027】
爪部31aを例に挙げて説明すれば、図1および図2に示されるように、爪部31aを構成する2個の突起間に形成された間隙部の底の高さは、これら2個の突起が形成されている側壁部21aの基底面よりも高くなっている。つまり、素子保持部材13を構成する素子接着部13aのX方向端面(X軸と直交する面)は、爪部31aを構成する2個の突起間の底においてのみ、側壁部21aと接触している。爪部31b,31cについても同様である。
【0028】
爪部31a〜31cの形状(寸法)は、素子保持部材13を第1ケース部21上側の開口側から挿入することで、爪部31a〜31cをそれぞれ構成する2つの突起の間に素子保持部材13を挿入した後には、圧電アクチュエータ10がX,Y,Z方向において簡単に外れることがないように、設定される。
【0029】
なお、素子保持部材13を爪部31a〜31cに樹脂接着剤等で接着することは必要ではないが、圧電アクチュエータ10の振動が阻害されないか或いは阻害されてもそれが許容される程度に抑えられているのであれば、素子保持部材13と爪部31a〜31cの接触部は接着されていてもよい。その場合、素子保持部材13は爪部31a〜31cをそれぞれ構成する2つの突起の間の内面でのみ接着されていることが好ましい。
【0030】
このように、爪部31a〜31cによって、素子保持部材13の周囲全体を保持することなく、その一部を保持することにより、圧電アクチュエータ10を駆動したときに、素子保持部材13に生じる共振振動が阻害されることがない。
【0031】
圧電素子12a,12bを駆動すると圧電素子12a,12bが発熱する。その駆動時間が長い場合には、圧電素子12a,12bから素子保持部材13への熱伝導により、素子保持部材13の温度が上昇する。第1ケース部21はこの素子保持部材13の温度上昇に耐える樹脂材料であって、しかも圧電アクチュエータ10の振動に対して耐久性のある樹脂材料が好適に用いられ、具体的には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のエンジニアリングプラスチックが用いられる。
【0032】
第2ケース部22は、第1ケース部21と同様に、凹型形状を有している。この第2ケース部材22は、X方向端において側壁部21a,21bとそれぞれ対向する外壁部22a,22bと、これらの外壁部22a,22bを連結する外底壁部22cから構成されている。これら外壁部22a,22bおよび外底壁部22cは、一体構造物であってもよいし、外壁部22a,22bと外底壁部22cとがボルト等で連結された構造であってもよい。
【0033】
第2ケース部22には、金属材料、例えば、アルミニウムやステンレス等が好適に用いられる。第2ケース部22のY方向側面を被うように、図3に示されるように、側面カバー22dを設けてもよい。また、圧電アクチュエータ10のヘッド11が露出するように、第2ケース部22の上面にカバーを設けてもよい。
【0034】
第1コイルバネ24は、第1ケース部21の側壁部21bを圧電アクチュエータ10に押し付けるように、側壁部21bと第2ケース部22の外壁部22bとの間に配設される。この第1コイルバネ24は、爪部31bと背中合わせとなる位置に設けることが好ましく、これにより確実に圧電アクチュエータ10(素子保持部材13)をX方向に押圧することができる。外壁部22bの内面には、この第1コイルバネ24を設置するための凹部が形成されている。なお、第1ケース部21の側壁部21bの外側には、この第1コイルバネ24のZ方向での位置ずれを防止するための突起部32が設けられている。
【0035】
第2コイルバネ25は、第1ケース部21の底壁部21cを圧電アクチュエータ10(素子保持部材13)に押し付けるように、底壁部21cと第2ケース部22の外底壁部22cとの間に配設されている。外底壁部22cには、この第2コイルバネ25を設置するための凹部が形成されている。
【0036】
この第2コイルバネ25は、爪部31cと背中合わせとなる位置に設けることが好ましく、これにより確実に圧電アクチュエータ10をZ方向に押圧して、ヘッド11をスライダ50に押し当てることができる。ヘッド11をスライダ50に押し当てる力を調整するために、外底壁部22cに、例えば、第2コイルバネ25の伸縮を調節するための止めネジ等を設けることも好ましい。
【0037】
コマ23は、その中心軸(コマ23の長さ方向に平行で、この方向に垂直な断面円の中心を通る軸を指す)が圧電アクチュエータ10の変位面であるZ−X面と直交するY軸に平行となるように、第1ケース部21の側壁部21aに配設される。コマ23は、好適には、ステンレス,真鍮,アルミニウム,鋳鉄等の金属材料からなる。
【0038】
コマ23は、円柱状の本体部23aと、本体部23aの端面の中心に設けられた円柱状の突起部23bから構成されている。第1ケース部21の側壁部21aにおいて爪部31aが形成されている面の反対側の面には、この側壁部21aから本体部23aの曲面の一部が露出するようにコマ23を配設するための凹部33が形成されている。そして、この凹部33を形成しているZ−X面に平行な壁には、コマ23を回転自在に保持することができるように、突起部23bを嵌挿させるための切り欠き孔部34が形成されている。
【0039】
超音波モータ100は、2個のコマ23がZ方向に並べて配設された構造を有している。この場合には、2個のコマ23は爪部31aから等距離にある位置に設けることが好ましい。このような構成に代えて、コマを1個のみ設けた構造としてもよい。その場合には、このコマは爪部31aと背中合わせになる位置に設けることが好ましい。
【0040】
なお、コマとしては単純な円柱形状のものを用いることもできる。その場合には、このコマの曲面の一部が側壁部21aの外側に露出するように、側壁部21aにY軸方向にコマを挿入することができる貫通孔を設ければよい。この場合には、コマの外径と孔部の内径との公差をできるだけ小さくすることが好ましい。
【0041】
第1コイルバネ24が第1ケース部21の側壁部21bを圧電アクチュエータ10側に押圧すると、側壁部21bが圧電アクチュエータ10を構成する素子保持部材13をX方向に押圧し、さらにこの素子保持部材13が第1ケース部21の側壁部21aを第2ケース部22の外壁部22a側に押圧する。
【0042】
こうして、側壁部21から露出しているコマ23の曲面の一部が外壁部22aに接触し、その接触領域をX方向に押圧する。この接触領域はY方向に長く幅の狭い帯状となるので、コマ23と外壁部22aとの間のY方向での摩擦力が大きくなる。この摩擦力によりコマ23はY方向に滑り難くなるので、圧電アクチュエータ10のY方向におけるぶれの発生が抑制される。
【0043】
また、圧電アクチュエータ10の素子保持部材13は、第1コイルバネ24によってX方向において安定に保持されているので、圧電アクチュエータ10のX方向におけるぶれの発生も抑制される。結果的に、圧電アクチュエータ10のX方向とY方向におけるぶれの発生が抑制されるために、圧電アクチュエータ10を駆動したときにヘッド11はZ−X面内で安定した楕円軌跡を描く運動を行うことができる。
【0044】
このようにして、超音波モータ100では、スライダ50に与える推力の大きさにばらつきが生じ難く、スライダ50の駆動を高い精度で安定して行うことができる。また、第1ケース部21と第2ケース部22を用いることにより、超音波モータ100の組み立ては、極めて容易に行うことができる。
【0045】
なお、上述の通り、圧電アクチュエータ10のY方向のぶれは、コマ23と外壁部22aとの間の摩擦力により抑制されるが、さらにコマ23の構造と凹部33および切り欠き孔部34によるコマ23の保持形態により、コマ23のY方向でのずれが抑制されているので、これによっても圧電アクチュエータ10にY方向でぶれが発生することは抑制される。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、第1付勢部材,第2付勢部材として第1コイルバネ24,第2コイルバネ25を用いた形態について説明したが、これらに代えて、板バネを用いることもできる。また、コマは金属材料からなるものに限定されるものではなく、ゴム等の弾性体からなるものを用いることもできる。さらに、コマに代えてリニアガイドを用いることもできる。
【0047】
上記実施の形態では、第1ケース部21を第2ケース部22に嵌挿保持させた構造について説明したが、リニアステージやX−Yテーブルではその装置フレームに第2ケース部と同等な形状の窪みを設けることも可能であるので、そのような窪みに、直接に圧電アクチュエータ10を保持した第1ケース部21,コマ23,第1コイルバネ24,第2コイルバネ25を装着してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、超音波モータ100を固定してスライダ50をX方向に動かす構成について説明したが、例えば、固定されたガイドレールをベアリングと圧電アクチュエータ10のヘッド11とで挟み込むように、超音波モータ100とベアリングとを同一基板に配置した構造とすれば、超音波モータ100を自走させるリニアモータの構成へと変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】超音波モータ素子の概略側面図。
【図2】超音波モータ素子の概略断面図。
【図3】図1中の矢視A−A断面図。
【符号の説明】
【0050】
10…圧電アクチュエータ、11…ヘッド、12a・12b…圧電素子、13…素子保持部材、13a・13b…素子接着部、13c…連結部、20…アクチュエータケース、21…第1ケース部、21a・21b…側壁部、21c…底壁部、22…第2ケース部、22a・22b…外壁部、22c…外底壁部、22d…側面カバー、23…コマ(円柱部材)、23a…本体部、23b…突起部、24…第1コイルバネ、25…第2コイルバネ、31a・31b・31c…爪部、32…突起部、33…凹部、34…切り欠き孔部、50…スライダ、100…超音波モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体に当接させるヘッドと、所定の電圧が印加された際の伸縮方向が所定角度で交差するように前記ヘッドに接着された2個の圧電素子と、これら2つの圧電素子を保持する凹型形状の素子保持部材とを備えた圧電アクチュエータを保持するためのアクチュエータケースであって、
凹型形状を有し、前記素子保持部材の底壁の一部を把持する底壁部と、前記素子保持部材の2つの側壁の一部をそれぞれ把持する2つの側壁部とを有する第1ケース部と、
円柱形状を有し、その中心軸が前記圧電アクチュエータの変位面と直交し、かつ、その側面の一部が、前記第1ケース部の一方の側壁部を前記圧電アクチュエータに所定の力で押圧することによってこの圧電アクチュエータが前記第1ケース部の他方の側壁部を押圧している状態において、所定の固定面を押圧するように当該他方の側壁部に保持された円柱部材とを具備することを特徴とするアクチュエータケース。
【請求項2】
前記円柱部材はその端面の中心に円柱状の突起部を備えており、
前記第1ケース部はその突起部を挿入させる孔部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータケース。
【請求項3】
前記第1ケース部を嵌挿保持する凹型の第2ケース部と、
前記第1ケース部の一方の側壁部を前記圧電アクチュエータに押し付けるように、当該一方の側壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第1付勢部材と、
前記第1ケース部の底壁部を前記圧電アクチュエータに押し付けるように、当該底壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第2付勢部材と、をさらに具備し、
前記円柱部材の側面の一部は、前記第2ケース部において前記第1ケース部の他方の側壁部と対向する面を押圧していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータケース。
【請求項4】
前記第1ケース部は樹脂で構成され、前記第2ケース部は金属で構成され、前記円柱部材は金属で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアクチュエータケース。
【請求項5】
被駆動体に当接させるヘッドと、所定の電圧が印加された際の伸縮方向が所定角度で交差するように前記ヘッドに接着された2個の圧電素子と、これら2つの圧電素子を保持する凹型形状の素子保持部材とを備えた圧電アクチュエータと、
この圧電アクチュエータを保持するアクチュエータケースとを具備する超音波モータであって、
前記アクチュエータケースは、
凹型形状を有し、前記素子保持部材の底壁の一部を把持する底壁部および前記素子保持部材の2つの側壁の一部をそれぞれ把持する2つの側壁部とを有する第1ケース部と、
前記第1ケース部を嵌挿保持する凹型の第2ケース部と、
前記第1ケース部の一方の側壁部を前記圧電アクチュエータに押し付けるように、当該一方の側壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第1付勢部材と、
前記第1ケース部の底壁部を前記圧電アクチュエータに押し付けるように、当該底壁部と前記第2ケース部との間に設けられた第2付勢部材と、
円柱形状を有し、その中心軸が前記圧電アクチュエータの変位面と直交し、かつ、その側面の一部が前記第1ケース部の他方の側壁部と対向する前記第2ケース部の面を押圧するように、当該他方の側壁部に保持された円柱部材とを具備することを特徴とする超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−187757(P2008−187757A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16365(P2007−16365)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】