説明

アクチュエータ

【課題】 上端から上方に延出したステム(94)が配設されている形態の容器(92)の上端に装着される合成樹脂製本体(4)とこの本体に装着される合成樹脂製操作部材(6)とを具備し、本体にはステムの排出路に対向して位置せしめられる導入口(33)から吐出口(42)まで延在する吐出路(36)が形成されているアクチュエータにおいて、吐出路に残留せしめられた内容物が漸次発泡して吐出口から漏出することを充分確実に回避する。
【解決手段】 本体の吸引室(50)内に昇降自在に収容された昇降板部(68)を操作部材(6)に配設すると共に、かかる昇降板部を吸引室の底面から上方に離隔した上昇位置に弾性的に偏倚する偏倚手段(64)を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器から吐き出されると発泡するジェルの如き内容物を収容した容器に適用されるアクチュエータ、更に詳しくは容器の上端から上方に延出したステムが配設されており、このステムを初期位置から下方に押し下げることによって内容物がステムに形成されている排出路を通して排出される形態の容器に適用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシェービングフォームとして使用される物質は、周知の如く、ジェル状或いは泡状内容物として容器内に加圧状態で収容されて販売されている。容器にはその上端から上方に延出するステムが配設されており、このステムを初期位置から下方に押し下げることによって内容物がステムに形成されている排出路を通して排出され、ステムに加えられていた押し下げ力が開放されるとステムが初期位置に戻されて内容物の排出が停止される。かような容器には、容器の上端に装着される合成樹脂製本体とこの本体に装着される合成樹脂製操作部材とを具備するアクチュエータが適用されている。アクチュエータの本体にはステムの排出路に対向して位置せしめられる導入口から吐出口まで延在する吐出路が形成されている。吐出路の導入口の周縁領域にはステムの上端周縁領域に対向して位置し且つ下降せしめられることによってステムを押し下げるステム押し下げ面が規定されている。操作部材を下方に強制することによってステム押し下げ面が下降せしめられてステムが押し下げられ、ステムの排出路を通して排出された内容物がアクチュエータの本体に形成されている吐出路を通して吐き出される。操作部材の強制を解除すると、ステムが初期位置に戻されて内容物の吐き出しが停止される。
【0003】
而して、上記のとおりの形態の従来のアクチュエータには、ステムが初期位置に戻された後にアクチュエータの本体に形成されている吐出路から吐き出されることなく吐出路内に残留する内容物が漸次発泡し、これによる体積の増加に伴って吐出口から漏出してしまう(かかる漏出は一般に「アフタードロー」と称されている)、という問題がある。かかる問題を解決するために、下記特許文献1に開示されているアクチュエータにおいては、上面が開放され且つ底面には吐出路に連通された連通孔が形成された吸引室を本体に形成し、かかる吸引室を操作部材の上面壁で覆うことが提案されている。ステムを初期位置から下降せしめて内容物を吐き出すために操作部材の上面壁を下方に強制すると、上面壁が凹状に弾性変形せしめられて吸引室の容積が低減される。ステムを初期位置に戻して内容物の吐き出しを停止するために操作部材の上面壁の下方への強制を解除すると、上面壁が元の状態に弾性的に復元され、吸引室の容積が増大即ち復帰せしめられる。吸引室の容積の増大に起因して、吐出路から吐き出されることなく吐出路内に残留する内容物が吸引室に吸引され、それ故に残留内容物が漸次発泡しても吐出口からの漏出が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−141147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているアクチュエータにおいては、吸引室の容積の増減は操作部材の上面壁の弾性変形のみに依存している故に、吸引室の容積の増減を充分なものにせしめることが困難であり、漸次発泡する残留内容物が吐出口から漏出することを充分確実に回避することができない。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、吐出路に残留せしめられた内容物が漸次発泡して吐出口から漏出することが充分確実に回避される、新規且つ改良されたアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、本体の吸引室内に昇降自在に収容された昇降板部を操作部材に配設すると共に、かかる昇降板部を吸引室の底面から上方に離隔した上昇位置に弾性的に偏倚する偏倚手段を配設することによって、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決するアクチュエータとして、容器の上端から上方に延出したステムが配設されており、該ステムを初期位置から下方に押し下げることによって内容物が該ステムに形成されている排出路を通して排出される形態の容器に適用されるアクチュエータにして、該容器の上端に装着される合成樹脂製本体と該本体に装着される合成樹脂製操作部材とを具備し、該本体には該ステムの該排出路に対向して位置せしめられる導入口から吐出口まで延在する吐出路が形成されており、該吐出路の該導入口の周縁領域には該ステムの上端周縁領域に対向して位置し且つ下降せしめられることによって該ステムを押し下げるステム押し下げ面が規定されているアクチュエータにおいて、
該本体には、上面が開放され且つ底面には該吐出路に連通された連通孔が形成されている吸引室が配設されており、該操作部材は該吸引室内に昇降自在に収容された昇降板部を有し、該操作部材の該昇降板部を該吸引室の該底面から上方に離間した上昇位置に弾性的に偏倚する弾性部材が配設されており、該弾性部材の弾性偏倚に抗して該昇降板部を該上昇位置から下降せしめて該吸引室の底面に当接せしめ、更に該昇降板部を下降せしめることによって、該本体の該ステム押し下げ面が下降せしめられて該ステムが該初期位置から押し下げられ、該ステムの該排出路及び該本体の該吐出路を通して内容物が吐き出され、該弾性手段の弾性偏倚によって該昇降板部が該上昇位置に戻されると、該ステムが該初期位置に戻されると共に、該本体の該吐出路内に残留する内容物が該吸引室内に吸引される、ことを特徴とするアクチュエータが提供される。
【0009】
好ましくは、該弾性部材は該操作部材と一体成形されている。該本体の該吐出路は、該導入口から上方に延びる第一の部分と該第一の部分に続いて横方向に該吐出口まで延びる第二の部分とを有し、該吸引室の該連通孔は該吐出路の該第一の部分と該第二の部分との接続部位に連通せしめられているのが好適である。該本体には直径方向に間隔をおいて上方に延びる一対の案内壁が形成されており、該操作部材には、夫々、該一対の案内壁の内面に対向して位置する一対の被案内壁が形成されており、該一対の案内壁の各々の内面と該一対の被案内壁の各々の外面との一方には上下方向に延びる少なくとも1個のスリット又は溝が形成されており、該一対の案内壁の各々の内面と該一対の被案内壁の各々の外面との他方には該スリット又は該溝に係合せしめられる少なくとも1個の突起が形成されているのが好ましい。該操作部材は、該本体の該吐出路の該吐出口を覆う閉位置と該吐出口を露呈せしめる開位置との間を旋回自在であるカバー部を有し、該昇降板部が該上昇位置に位置せしめられると該カバー部は該閉位置に位置せしめられ、該昇降板部が該吸引室の該底面に当接する位置まで下降されると該カバー部材は該開位置に位置せしめられるのが望ましい。該操作部材は該昇降板部の上方に配設された上壁を有し、該カバー部は弾性変形自在な薄肉片を介して該上壁に一体に接続されていると共に、該本体に旋回自在に連結されているのが好適である。好適には、該本体は該吐出口を密閉する密閉位置と該吐出口を開放する開放位置との間を旋回自在に一体形成された閉塞蓋を有し、該操作部材の該カバー部には、該カバー部が該閉位置に位置せしめられると該閉塞蓋を該閉塞位置に強制する強制片と該カバー部が該閉位置から該開位置に旋回せしめられる際に該閉塞蓋に当接して該閉塞蓋を該閉塞位置から該開放位置に旋回せしめる開動片が一体形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアクチュエータにおいては、本体の吸引室内に昇降自在に収容され且つ上昇位置に弾性的に偏倚せしめられる昇降板部の昇降によって吸引室の容積が増減せしめられる故に、吸引室の容積の増減を充分なものにせしめることができ、かくして漸次発泡した内容物が吐出口から漏出することが充分確実に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成されたアクチュエータの好適実施形態の斜面図。
【図2】図1に示すアクチュエータにおける本体を、その一部を切り欠いて示す斜面図。
【図3】図1に示すアクチュエータにおける操作部材を、その下方から見た斜面図。
【図4】図1に示すアクチュエータを示す断面図。
【図5】図1に示すアクチュエータを、操作部材を操作してその昇降板部を下降せしめて本体の吸引室の底面に当接せしめた状態で示す断面図。
【図6】図1に示すアクチュエータを、操作部材を操作してその昇降板部を図5に示す位置から更に下降せしめて容器のステムを初期位置から下方に押し下げた状態で示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたアクチュエータを図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1乃至図3を参照して説明すると、全体を番号2で示す、本発明に従って構成されたアクチュエータは、本体4と操作部材6とから構成されている。本体4は、その全体を一体としてポリプロピレン又はポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することができる。同様に、操作部材6も、その全体を一体としてポリプロピレン又はポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することができる。
【0014】
図2と共に図4を参照して説明を続けると、図示の実施形態における本体4は、円筒形状のスカート壁8を備えている。このスカート壁8の内周面下部には環状係止突条10(図4)が形成されている。また、スカート壁8の内周面上半部には周方向に適宜の間隔をおいて上下方向に延びる複数個の突条12(図4)が形成されている。
【0015】
スカート壁8には直径方向に間隔をおいて上方に突出する一対の中空突出部14が付設されている。中空突出部14の各々は、スカート壁8に続いて上方に延出し且つ断面が弧状である外側壁16、外側壁16の周方向両側縁間を直線状に接続し且つ実質上鉛直に延びる案内壁18、及び外側壁16の上端縁と案内壁18の上端縁とを接続する上面壁20を有する。相互に平行に延在せしめられている案内壁18の各々には、実質上鉛直に上下方向に延びる2個の案内スリット22が形成されている。案内壁18の各々には、更に、その片側縁近傍に実質上水平に突出し且つ横断面形状は半円弧状である突起24も形成されている。案内壁18の各々の下端縁には半径方向内方に延出する張出片26が付設されている。
【0016】
スカート壁8には、その上端縁から半径方向内側に半径状に延出する片持ち支持片28も付設されている。この支持片28は上記一対の中空突出部14の中間に位置し、案内壁18と平行に延在せしめられている。支持片28の先端(半径方向内側端)には、小径円筒30が配設されている。この小径円筒30はスカート壁8と同心状に位置せしめられている。図4を参照することによって明確に理解される如く、小径円筒30の内周面には下方を向いた環状肩面32が形成されており、環状肩面32よりも下方の部分の内径に比べて環状肩面32よりも上方の部分の内径は幾分小さい(後に更に言及する如く、小径円筒30の環状肩面32に囲繞された部位はステムの排出路に対向して位置せしめられる導入口33を規定し、環状肩面32はステム押し下げ面を構成する)。小径円筒30の上端部には上記支持片28の上方を上記支持片28と平行に実質上水平に延出する角筒34が付設されている。角筒34の内側空間の半径方向内側端は小径円筒30の内側空間に連通せしめられている。角筒34の半径方向外側部分は肉厚が幾分低減せしめられており、内側空間の断面積が幾分拡大せしめられている。小径円筒30の環状肩面32よりも上方の部分(即ち上記導入口33よりも上方の部分)及び角筒34の内側空間は吐出路36を規定しており、この吐出路36は小径円筒30内を上下方向に実質上鉛直に延びる第一の部分と角筒34内を横方向即ち半径方向に実質上水平に延びる第二の部分とから構成されている。吐出路36の先端即ち第二の部分の先端には吐出口42が規定されている。角筒34の先端部上面には、薄肉ヒンジ片44を介して閉塞蓋46が図2に示す開放位置と図4に示す閉塞位置との間を旋回自在に連結されている。閉塞蓋46の両側には角筒34の両側面を超えて幅方向に突出する突出片47が形成されている。閉塞蓋46の内面には略矩形状の係合突条48が形成されている。この係合突条48の外側寸法は角筒34の先端内側寸法に対応せしめられており、閉塞蓋46が図4に示す閉塞位置に位置せしめられると、係合突条48が角筒34の先端部内に進入して吐出口42を閉塞する。閉塞蓋46が図2に示す開放位置に旋回せしめられると、吐出口42が開放される。
【0017】
図2及び図4を参照して説明を続けると、上記小径円筒30の上端には吸引室50が配設されている。この吸引室50は、角筒34の上側壁の半径方向内側端からに後方(図4において右方)に延在する底壁52と、この底壁52の周縁から上方に実質上鉛直に延びる側壁54とから構成されている。底壁52の4角部及び側壁54の4角部は小径円弧形状にせしめられている。底壁52には小径円筒30と同心状である円形孔でよい連通孔56が形成されており、吸引室50は上記吐出路36に連通、更に詳しくは上記吐出路36の上記第一の部分と上記第二の部分との接続部に連通せしめられている。
【0018】
図3と共に図4を参照して説明すると、図示の操作部材6は、実質上水平に延在する平板状の上壁58とこの上壁58の両側縁の各々から実質上鉛直に垂下している被案内壁60とを含んでいる。上壁58の後端部(図4において右端部)は被案内壁60の後端縁を越えて後方に突出しており、上壁58の後端縁中央部は凹円弧形状にせしめられている。被案内壁60の各々の外側面には一対の突起62が形成されている。一対の突起62は相互に間隔をおいて実質上鉛直に延びる細長形状であり、一対の突起62の幅は上記本体4の案内壁18に形成されている案内スリット22の幅に対応している。被案内壁60の各々の下端縁には弾性部材64が配設されている。弾性部材64の各々は凹状半円形状部と凸状半円形状とを夫々の中心部で接続した形態であり、その一端64aが被案内壁60の下端縁に接続されている。弾性部材64の他の3個の端64b、64c及び64dは自由端を構成している。図4を参照することによって明確に理解される如く、上壁58の下面には実質上鉛直に垂下する一対の垂下壁66が形成されており、かかる一対の垂下壁66の下端には実質上水平に延在する平板状の昇降板部68が接続されている。昇降板部68の外周縁には薄肉シール突状70が形成されている。後に更に言及する如く、昇降板部68の外形は上記本体4に配設されている吸引室50の横断面形状に対応せしめられており、薄肉シール突状70は吸引室50の側壁54の内面に密接せしめられる。
【0019】
図3及び図4を参照して説明を続けると、上述した上壁58の前方(図4において左方)にはカバー部72が配設されている。このカバー部材72は実質上水平に延在する天面壁74、天面壁74の先端縁から実質上鉛直に垂下する前壁76及び天面壁74の両側縁から実質上鉛直に垂下する両側壁78を有する。カバー部72の天面壁74の後縁は弾性変形自在な薄肉片80を介して上壁58の前縁に接続されている。上壁58の両側縁から垂下する被案内壁60の各々の前縁部には弾性変形自在な薄肉帯片82が延出しており、かかる薄肉帯片82の先端はカバー部72の側壁78の各々の後端部に形成されている切欠84内に係合せしめられている。側壁78の各々には切欠84の上方に位置する円形孔86も形成されている。円形孔86の内径は上記本体4の案内壁18に形成されている突起24の外径に対応している。カバー部72の前壁76の内面には、幅方向に間隔をおいて後方(図4において右方)に突出し且つ実質上鉛直に延びる3個の強制片88が形成され、そしてまた前壁76の内面下端と側壁78の各々の下端前部との間の角領域には、実質上水平に延出する開動片90が形成されている。
【0020】
上記本体4と操作部材6とは次のとおりに組み合わされる。図1乃至図4を参照して説明すると、操作部材6は本体4の中空突出部14間に位置せしめられる。操作部材6の昇降板部68は本体4の吸引室50内に昇降自在に収容される。操作部材6の被案内壁60の各々に形成されている一対の突起62は本体4の案内壁18の各々に形成されている一対のスリット22内に昇降自在に係合される。所望ならば、案内壁18に突起を形成し被案内壁60にスリットを形成することもでき、そしてまた鉛直方向に延びるスリットに代えて鉛直方向に延びる溝を形成し、かかる溝に突起を昇降自在に係合することもできる。操作部材6におけるカバー部72の両側壁78に形成されている円形孔86には本体4の案内壁18の各々に形成されている突起24が挿入され、これによってカバー部72は突起24を中心として旋回自在に本体4に連結される。図4に図示する状態においては、操作部材6におけるカバー部72の前壁76の内面に形成されている強制片88の突出端縁が本体4の閉塞蓋46の外面に当接することによって閉塞蓋46は吐出路36の吐出口42を閉塞する閉塞位置に強制されている。操作部材6における弾性部材64の自由端64c及び64dは本体4の張出片26の上面に当接せしめられ、本体4に対して操作部材6を図4に図示する上昇位置に弾性的に偏倚する。
【0021】
図4にはアクチュエータ2が適用される容器の一部も二点鎖線で図示されている。それ自体は当業者には周知の形態でよい容器92は、その中心部上端から上方に延出するステム94を備えており、かかるステム94を下方に押圧して押し下げるとステム94内に規定されている排出路(図示していない)を通して内容物が排出される。ステム94の押圧を解除すると、容器92内に配設されている弾性偏倚手段(図示していない)によってステム94は弾性的に元の位置に上昇せしめられ、これによって内容物の排出が停止される。容器92の上端外周部には環状係止ビード96が配設されている。
【0022】
本体4と操作部材6とから構成されているアクチュエータ2は、図4に図示する如く、本体4のスカート壁8を容器92の上端部に被嵌し、スカート壁8の内周面上半部に形成されている複数個の突条12の下端を容器92の環状係止ビード96の上面に当接せしめ、スカート壁8の内周面下部に形成されている環状係止突条10を容器92の環状係止ビード96の下面側に係止せしめることによって、容器92に装着される。容器92のステム94は本体4の小径円筒30内に挿入され、小径円筒30内に形成されている環状肩面32が囲繞する導入口33はステム94に形成されている排出路(図示していない)に対向して位置し、ステム押し下げ面を構成する環状肩面32はステム94の上端周縁部に対向してその上方に位置する。
【0023】
次に、本発明に従って構成されたアクチュエータの作用について説明する。容器の内容物を使用する際には、操作部材6の上壁58に指を当接せしめて下方に押圧し、弾性部材64の弾性偏倚作用に抗して上壁58及び昇降板部68を下降せしめる。上壁58及び昇降板部68を図5に示す位置まで下降せしめると、昇降板部68の下面が本体4の吸引室50の底壁52の上面に当接せしめられる。一方、操作部材6のカバー部72は、薄肉片80及び薄肉帯片82を介してその後端(図4において右端)に下向きの力が加えられる故に、本体4の突起24を中心として図4及び図5において時計方向に旋回せしめられて、図5に示す開位置にせしめられる。この際には、カバー部72に配設されている強制片88が本体4の閉塞蓋46の外面から離隔せしめられると共に、カバー部72に配設されている開動片90が閉塞蓋46の突出片47に作用して、カバー部72の旋回に応じて閉塞蓋46を図4に示す閉塞位置から図5に示す開放位置に旋回せしめ、かくして吐出路36の吐出口42が開放される。
【0024】
操作部材6の上壁58及び昇降板部68を更に下降せしめると、昇降板部68の下降に応じて本体4における支持片28及びこれに保持されいる部位が下降せしめられ、小径円筒30の環状肩面32が容器92のステム94の上端周縁部に当接せしめられ、しかる後においては操作部材6の上壁58及び昇降板部68の下降に付随してステム94が図6に示す位置まで下降される。従って、ステム94に形成されている排出路(図示していない)を通して内容物が排出され、吐出路36の導入口33から吐出路36内に導入され、吐出路36を通して流動して吐出口42から吐き出される。
【0025】
操作部材6の上壁58から指を離隔して上壁58の押圧を解除すると、ステム94が初期位置まで上昇せしめられ、ステム94に形成されている排出路を通しての内容物の排出が停止される。ステム94の上昇に応じて、アクチュエータ2の本体4も図4及び図5に示す位置まで上昇せしめられる。また、弾性手段64の弾性偏倚作用によって操作部材6が図4に示す位置まで上昇せしめられる。この際には、薄肉片82及び薄肉帯片82を介してカバー部72の後端(図5において右端)に上向きの力が加えられる故に、カバー部72は本体4の突起24を中心として図4及び図5において反時計方向に、図4に示す閉位置まで旋回せしめられる。カバー部72のかかる旋回の際には、カバー部72に配設されている強制片88が本体4の閉塞蓋46に作用して閉塞蓋46を図4に示す閉塞位置まで旋回せしめ、かくして吐出路36の吐出口42が閉塞される。操作部材6の昇降板部68が図5に示す位置から図4に示す位置まで上昇せしめられると、図4及び図5を比較参照することによって明確に理解される如く、吸引室50の容積が実質上零の状態から初期状態まで増大せしめられ、吐出口42から吐き出されることなく吐出路36内に残留していた内容物が吸引室50内に吸引される。かくして、吐出路36内に残留した内容物が発泡して体積が増大することに起因して内容物が吐出口42から漏出することが充分確実に回避される。吸引室50内に吸引された内容物は、次に操作部材6が操作されて昇降板部68が図4に示す位置から図5に示す位置に下降せしめられる際に、吐出路36に排出されて吐出口42から吐き出される。
【符号の説明】
【0026】
2:アクチュエータ
4:本体
6:操作部材
18:案内壁
22:スリット
30:小径円筒
32:環状肩面(ステム押し下げ面)
33:導入口
34:角筒
36:吐出路
42:吐出口
50:吸引室
56:連通孔
58:上壁
60:被案内壁
62:突起
64:弾性部材
68:昇降板部
72:カバ−部
80:薄肉片
82:薄肉帯片
88:強制片
90:開動片
92:容器
94:ステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の上端から上方に延出したステムが配設されており、該ステムを初期位置から下方に押し下げることによって内容物が該ステムに形成されている排出路を通して排出される形態の容器に適用されるアクチュエータにして、該容器の上端に装着される合成樹脂製本体と該本体に装着される合成樹脂製操作部材とを具備し、該本体には該ステムの該排出路に対向して位置せしめられる導入口から吐出口まで延在する吐出路が形成されており、該吐出路の該導入口の周縁領域には該ステムの上端周縁領域に対向して位置し且つ下降せしめられることによって該ステムを押し下げるステム押し下げ面が規定されているアクチュエータにおいて、
該本体には、上面が開放され且つ底面には該吐出路に連通された連通孔が形成されている吸引室が配設されており、該操作部材は該吸引室内に昇降自在に収容された昇降板部を有し、該操作部材の該昇降板部を該吸引室の該底面から上方に離間した上昇位置に弾性的に偏倚する弾性部材が配設されており、該弾性部材の弾性偏倚に抗して該昇降板部を該上昇位置から下降せしめて該吸引室の底面に当接せしめ、更に該昇降板部を下降せしめることによって、該本体の該ステム押し下げ面が下降せしめられて該ステムが該初期位置から押し下げられ、該ステムの該排出路及び該本体の該吐出路を通して内容物が吐き出され、該弾性手段の弾性偏倚によって該昇降板部が該上昇位置に戻されると、該ステムが該初期位置に戻されると共に、該本体の該吐出路内に残留する内容物が該吸引室内に吸引される、ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
該弾性部材は該操作部材と一体成形されている、請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
該本体の該吐出路は、該導入口から上方に延びる第一の部分と該第一の部分に続いて横方向に該吐出口まで延びる第二の部分とを有する、請求項1又は2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
該吸引室の該連通孔は該吐出路の該第一の部分と該第二の部分との接続部位に連通せしめられている、請求項3記載のアクチュエータ。
【請求項5】
該本体には直径方向に間隔をおいて上方に延びる一対の案内壁が形成されており、該操作部材には、夫々、該一対の案内壁の内面に対向して位置する一対の被案内壁が形成されており、該一対の案内壁の各々の内面と該一対の被案内壁の各々の外面との一方には上下方向に延びる少なくとも1個のスリット又は溝が形成されており、該一対の案内壁の各々の内面と該一対の被案内壁の各々の外面との他方には該スリット又は該溝に係合せしめられる少なくとも1個の突起が形成されている、請求項1から4までのいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
該操作部材は、該本体の該吐出路の該吐出口を覆う閉位置と該吐出口を露呈せしめる開位置との間を旋回自在であるカバー部を有し、該昇降板部が該上昇位置に位置せしめられると該カバー部は該閉位置に位置せしめられ、該昇降板部が該吸引室の該底面に当接する位置まで下降されると該カバー部材は該開位置に位置せしめられる、請求項1から5までのいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
該操作部材は該昇降板部の上方に配設された上壁を有し、該カバー部は弾性変形自在な薄肉片を介して該上壁に一体に接続されていると共に、該本体に旋回自在に連結されている、請求項6記載のアクチュエータ。
【請求項8】
該本体は該吐出口を密閉する密閉位置と該吐出口を開放する開放位置との間を旋回自在に一体形成された閉塞蓋を有し、該操作部材の該カバー部には、該カバー部が該閉位置に位置せしめられると該閉塞蓋を該閉塞位置に強制する強制片と該カバー部が該閉位置から該開位置に旋回せしめられる際に該閉塞蓋に当接して該閉塞蓋を該閉塞位置から該開放位置に旋回せしめる開動片が一体形成されている、請求項6又は7記載のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45447(P2012−45447A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187109(P2010−187109)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】