説明

アクリルエマルジョンの製造方法

【課題】
ポリプロピレンに代表されるポリオレフィンや、ナイロンに代表されるポリアミドなどの種々素材に対して、良好なヌレ性、相溶性、接着性を有するアクリルエマルジョンの製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、ジチオエステル化合物1.0モルに対し、重合開始剤を0.020〜0.400モル使用してアクリル単量体が塊状重合し、得られたアクリルプレポリマーの存在下で、アクリル単量体を乳化重合するアクリルエマルジョンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々素材に対して良好なヌレ性、相溶性、接着性を有するアクリルエマルジョンの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、その原料となるアクリル単量体の種類が豊富で付着性、接着性、硬度、透明性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の物理的性質、化学的性質を随意にコントロールできることから、ディスプレイ、レンズなどの光学用塗、光学フィルム用途、これらに使用する粘・接着剤用途、塗料、シーリング材、紙力増強剤、歯科材料、航空機や自動車部材の接着剤等、幅広く応用され、用いられている。
【0003】
アクリル樹脂は、一般に重合時の発熱が大きく、また重合が進むにつれ高粘度となるため、工業的には水や有機溶媒を媒体とする溶液重合や乳化重合、懸濁重合などの除熱が比較的容易な方法で製造されることが多い。また、鋳込み等特殊な用途で使用される場合には部分重合したシロップとして使用されることもある。
【0004】
アクリル単量体のラジカル重合を利用してABCまたはABAブロック共重合体を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示されている技術は、メタクリル酸アルキルエステル、および、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、3級アミノ基などを有するメタクリル単量体が共重合されるものであり、例えば、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、ノリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PPS樹脂などの有機高分子材料市場で主要な位置を占めるプラスチック類、あるいは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂などとの相溶性、ヌレ性、接着性などの機能向上は考慮されていないと思われる。
【0006】
特許文献1が提案する技術では、アクリル単量体に対する2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンおよび重合開始剤の使用量が示されているが、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマー)に対する重合開始剤の使用量は規定されていない。したがって、ラジカル重合でアクリルマクロモノマー、およびアクリル共重合体を製造する際の除熱が大きい課題となり、アクリルマクロモノマーおよびアクリル共重合体の製造方法が限定される。すなわち、除熱が容易な有機溶剤を媒体とする溶液重合または水を媒体とする乳化重合などの製造方法でアクリルマクロモノマーおよびアクリル共重合体を製造する場合に限定される。
【0007】
特許文献1に提案されている技術に従いアクリルマクロモノマーおよびアクリル共重合体を溶液重合で製造する場合には、製造中の攪拌、除熱の懸念から低分子量で、有機溶剤を多量に含む低濃度のアクリルマクロモノマーおよびアクリル共重合体のみが製造可能であり、用途限定されるばかりでなく、工業的にメリットが少ない。多量の有機溶剤を含有することは、環境負荷の観点からも好ましくない。
【0008】
可逆的付加開列型連鎖移動剤としてのジチオエステル誘導体および連鎖移動剤ならびにこれを用いたラジカル重合性重合体の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2によれば、分子中にペンタフルオロフェニル基またはペンタフルオロベンジル基を有する、例えば、1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテートなどのジチオエステル誘導体を使用することで、ジチオエステル誘導体そのものの不快臭および重合体の臭気が抑制され、分子量調整が容易で、低多分散性の重合体が製造されるというものである。
【0009】
特許文献2が提案する技術は、工業的な見地からは、製造中の攪拌、重合熱の除熱には何らの考慮も払われておらず、製造現場では攪拌や除熱の困難さを回避するため、有機溶媒中での製造が必須条件となることは自明である。有機溶媒中で製造されたポリマーを脱溶媒し、ポリマーを取り出すには多大なエネルギーと労力を必要とするため、現実的な手法としては推奨されない。また、環境負荷低減の観点からも、有機溶媒を多量に使用して製造する技術は望ましくない。
【0010】
連載移動定数が0.1よりも大きい連鎖移動剤(CTA)、ビニル単量体、重合開始剤を使用するリビング特性を有する重合体の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3によれば、種々条件下で、低多分散性のポリマー末端にCTA遊離基残基および重合開始剤残基を有するビニルポリマーが生成されるとしている。しかしながら、特許文献3では、工業的な見地に立った攪拌、除熱といった議論は一切なされておらず、安全に安定して、大量生産することが困難であると思われる。
【0011】
ジチオエステル化合物は可逆的付加開裂型連鎖移動剤として広く知られている。可逆的付加開裂型連鎖移動剤は一般にRAFT剤(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer;RAFT)といわれ、精密重合技術の主要な1手法であるRAFT重合によりリビングラジカル重合を行うための原料である。RAFT重合では、ラジカル重合反応が制御され、ラジカル重合反応がリビングラジカル重合で進行し、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した分子量分布(Mw/Mn)(多分散性とも言う)が小さいポリマーを製造できる。
【0012】
RAFT重合の特徴は、重合初期から分子量分布の小さいポリマーが製造でき、使用するアクリル単量体などのビニルモノマーの種類、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基の影響を受けにくい点が上げられる。この特長を活かし、刺激応答性高分子、薬剤搬送ポリマーなど先端科学技術分野で盛んに研究、検討が進められている。RAFT剤としては、2,2−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマー)、ジチオエステル化合物などがよく知られているが、分子量などの重合制御が容易であること、分子量分布が小さくなることからチオエステル化合物が多く研究対象となっている。
【0013】
RAFT剤の製造方法、RAFT重合挙動については、(1)株式会社エヌ・ティー・エス発行の「ラジカル重合ハンドブック」、p152−p153(1999)、(2)特開2003−128712、(3)W098/01478、(4)W099/31144、(5)W000/75207、(6)特開2003−012719、(7)特開2002−265523、(8)特開2003−041224、(9)特表2000−515181などの成書、特許文献に詳述されている。これらの成書、特許文献に見られるとおり、RAFT剤の製造方法やRAFT重合挙動、あるいはRAFT重合を利用した溶液重合でのポリマー製造に関する研究、検討はさかんに行われているが、純粋なポリマーが製造でき、効率のよい生産方法である塊状重合に言及したものはない。
【0014】
現在のところ、安全、安定に生産するという工業的な観点からの重合温度制御、製造方法に関する検討や提案は見られない。現在、一般には、大きい重合熱の除熱という観点から、重合温度制御が容易である溶液重合での検討が行われている。
【特許文献1】特開2000−169531号公報
【特許文献2】特開2007−238646号公報
【特許文献3】特表2000−515181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
難接着性とされる無極性プラスチックであるポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、極性を有しエンジニアリングプラスチックとして広く使用されているナイロンに代表されるポリアミドなどの種々素材に対して、良好なヌレ性、相溶性、接着性を有するアクリルエマルジョンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ジチオエステル化合物1.0モルに対し、重合開始剤を0.020〜0.400モル使用してアクリル単量体が塊状重合し、得られたアクリルプレポリマーの存在下で、アクリル単量体を乳化重合するアクリルエマルジョンの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、難接着性とされる無極性プラスチックであるポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、極性を有しエンジニアリングプラスチックとして広く使用されているナイロンに代表されるポリアミドなどの種々素材に対して良好なヌレ性、相溶性、接着性を有するアクリルエマルジョンの製造方法を提供する。
【0018】
本発明で製造されるアクリルエマルジョンは、例えば、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂などの異種高分子材料の相溶化ポリマーとして有用である。また、本発明で製造されるアクリルエマルジョンは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタンウイスカーなどの機能性補強材とマトリックス樹脂との分散安定化や相溶性、接着性を高めてより高強度な複合材料を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ジチオエステル化合物1.0モルに対し、重合開始剤を0.020〜0.400モル使用してアクリル単量体が塊状重合し、得られたアクリルプレポリマーの存在下で、アクリル単量体を乳化重合するアクリルエマルジョンの製造方法である。
【0020】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ジチオエステル化合物として、2−プロピル−ジチオアセテート、2−t−ブチル−ジチオアセテート、2−フェニル−ジチオアセテート、2−フェニル−ジチオベンゾエート、1−フェニルエチル−フェニルジチオアセテート、2−フェニルプロピル−フェニルジチオアセテート、ジチオ安息香酸ベンジル、1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、2−フェニルプロピル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、ジチオ安息香酸ペンタフルオロベンジルなどが例示される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ジチオエステル化合物は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0021】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ジチオエステル化合物が、下記構造式で示される
【0022】
【化1】

【0023】
(ここで、Zは、フェニル基、ベンジル基、下記構造式で示される化学構造
【0024】
【化2】

【0025】
(ペンタフルオロベンジル基)
【0026】
【化3】

【0027】
(ペンタフルオロフェニル基)
のいずれかを表し、
は、水素原子、ニトリル基、または、炭素原子数1〜4個のアルキル基を表し、Rは、水素原子、ニトリル基、または、炭素原子数1〜4個のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキル基、または、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシルエチル基、カルボキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、フェニル基、または、置換基を有するフェニル基、(ただし、置換基は、ニトリル基、炭素原子数1〜4個のアルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホニル基および塩、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基を表す。)
を表す。)
ジチオエステル化合物であるのが望ましい。
【0028】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、下記構造式で示される
【0029】
【化4】

【0030】
(ここで、Zは、フェニル基、ベンジル基、下記構造式で示される化学構造
【0031】
【化5】

【0032】
(ペンタフルオロベンジル基)
【0033】
【化6】

【0034】
(ペンタフルオロフェニル基)
のいずれかを表し、
は、水素原子、ニトリル基、または、炭素原子数1〜4個のアルキル基を表し、Rは、水素原子、ニトリル基、または、炭素原子数1〜4個のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキル基、または、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシルエチル基、カルボキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、フェニル基、または、置換基を有するフェニル基、(ただし、置換基は、ニトリル基、炭素原子数1〜4個のアルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホニル基)および塩、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基を表す。)
を表す。)
ジチオエステル化合物は、Rが水素原子、Rがメチル基、Rがフェニル基、Zがベンジル基の場合、1−フェニルエチル−フェニルジチオアセテート、Rがメチル基、Rがメチル基、Rがフェニル基、Zがベンジル基の場合、2−フェニルプロピル−フェニルジチオアセテート、Rが、水素原子、Rがメチル基、Rがフェニル基、Zがペンタフルオロベンジル基の場合、1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、Rがメチル基、Rがメチル基、Rがフェニル基、Zがペンタフルオロベンジル基の場合、2−フェニルプロピル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、Rが水素原子、Rが水素原子、Rがフェニル基、Zがペンタフルオロフェニル基の場合、ジチオ安息香酸ペンタフルオロベンジル、Rが水素原子、Rがメチル基、Rがp−アミノプロピルフェニル基、Zがベンジル基の場合、1−p−アミノプロピルフェニルエチル−フェニルジチオアセテート、Rがシアノ基、Rがメチル基、Rがヒドロキシプロピル基、Zがフェニル基の場合、2−シアノ−5−ヒドロキシペンチル−フェニルジチオアセテート、Rがシアノ基、Rがメチル基、Rがカルボキシエチル基、Zがフェニル基の場合、2−シアノ−4−カルボキシブチル−フェニルジチオアセテートなどが例示される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらのジチオエステル化合物は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0035】
本発明のアクリルエマルジョン製造方法では、これらのジチオエステル化合物のなかでは、重合速度が速く生産効率のよい、および、製造されるアクリルプレポリマーの臭気が少ない、1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、2−フェニルプロピル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、ジチオ安息香酸ペンタフルオロベンジルなどの分子中にペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロベンジル基を有するジチオエステル化合物が推奨される。
【0036】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらのジチオエステル化合物が使用されるとき、ジチオエステル化合物特有の臭気が少なく、ポリマーへの着色が緩和される傾向が見られる。また、これらのジチオエステル化合物は、好ましくは、RAFT剤として、分子量分布の小さいポリマーが、効率よく製造できる傾向が見られる。
【0037】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造時の重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などの有機アゾ系重合開始剤などが例示できる。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらの重合開始剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0038】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらの重合開始剤のなかでは、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などの有機アゾ系重合開始剤が推奨され、アクリルプレポリマー製造時の安全性が確保され、プレポリマーとしてのラジカル重合性が良好となり、制御された狭い分子量分布のアクリルプレポリマーが製造される傾向が見られる。
【0039】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ジチオエステル化合物1.0モルに対し、重合開始剤を0.020〜0.400モル、好ましくは、0.040〜0.350モル、より好ましくは、0.020〜0.300モル使用するのが望ましい。本発明のアクリルアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造時の重合開始剤の使用量が0.020モル未満の場合には、重合速度が遅く、アクリルプレポリマーの重合率を実用的に十分なレベルまで引き上げることができない。重合開始剤の使用量が0.400モルを超える場合には、アクリルプレポリマーを塊状重合で製造する際の発熱が激しく、攪拌、除熱が不完全となり、安全、防災上好ましくない。
【0040】
ここで、本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの実用レベルの重合率は、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上、さらに好ましくは、88%以上であるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの重合率が80%以上であれば、アクリルプレポリマーを使用し、ラジカル重合によりさらに高分子量化、あるいは、ブロック共重合体を製造する場合、より効率的に高分子量化が可能であり、より機能発現ができるブロック共重合体を製造できる傾向が見られ、望ましい。
【0041】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、重合温度制御をより安全に行うために、アクリルプレポリマー製造に使用する重合開始剤は、アクリルプレポリマーに使用するアクリル単量体100重量部に対して、好ましくは、0.02〜2重量部、より好ましくは、0.2〜2重量部、さらに好ましくは、0.2〜1.5重量部使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造に使用する重合開始剤の使用量が0.02〜2重量部のとき、異常な重合反応や急激な発熱が起こりにくくなる傾向が見られる。
【0042】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーは塊状重合で製造される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、塊状重合とは、アクリルプレポリマー製造容器に、ジチオエステル化合物、ジチオエステル化合物1.0モルに対し0.020〜0.400モルの重合開始剤、アクリル単量体を仕込み、所定の重合温度に加熱してラジカル重合を行う方法である。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造時には、好ましくは、有機溶媒、水などの希釈媒体は含まれない。
【0043】
一般的な塊状重合の場合には、急激に発生する大きい重合熱と、重合率の上昇に伴い急激に高くなる粘度のため、攪拌動力が不足し、重合温度が制御不能となって暴走反応に至る場合が多い。爆発や破裂などの重大災害に繋がる危険性をはらんでおり、設備にいくら手を加えても、工業的には限界がある。
【0044】
また、攪拌、除熱不足により、局部加熱が起こりやすくなり、ポリマーの焼け、高重合度化など品質の悪化が起こりやすい。
【0045】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの製造が、ジチオエステル化合物1.0モルに対して0.020〜0.400モルの重合開始剤を使用し、塊状重合が実施されるため、アクリルプレポリマー製造時の攪拌、除熱不足による暴走反応、局部加熱による品質の悪化などの懸念が払拭され、安全に、安定してアクリルプレポリマーを製造できる。また、工業的に適正な製造時間内で、アクリルプレポリマーの重合率を実用的に必要十分なレベルまで高めることができる。
【0046】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーを製造する際、製造容器の不活性ガス置換された気相部酸素濃度が、好ましくは、0.0vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%、より好ましくは、0.02vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%、さらにより好ましくは0.02vol%≦気相部酸素濃度≦6.0vol%の雰囲気下に実施されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造時の気相部酸素濃度が0.0vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%であれば、気相部でアクリル単量体が重合反応を起こすことがなく、安全に、効率よくアクリルプレポリマーを製造することができる。
【0047】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー重合系中の酸素濃度は、「デジタル酸素濃度計 XO−326ALB」(新コスモス電機(株)の酸素濃度測定器)を使用し測定した。また、本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、本発明で使用される不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガスなど市販されているもののなかから任意に選択することができる。
【0048】
さらに、本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスの吹き込みを行って気相部酸素濃度を制御する場合には、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスがアクリル単量体のラジカル重合が開始されない程度に十分低い温度であることが推奨される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、この観点から、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスの温度は低ければ低いほど望ましいが、好ましくは、40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下であることが推奨される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、不活性ガスまたは不活性ガス/空気の混合ガスの温度が好ましくは40℃以下であれば、アクリルプレポリマー製造容器気相部に存在するアクリル単量体蒸気が冷却され、アクリル単量体がアクリルプレポリマー製造容器気相部、器壁、コンデンサー等でラジカル重合を起こしにくくなる傾向が見られ、アクリルプレポリマー製造がより安全に実施できる傾向が見られる。
【0049】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの重合温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは65〜95℃、さらに好ましくは70〜90℃が望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造時の重合温度が50〜100℃のとき、攪拌、除熱が定量的に実施できる傾向が見られ、防災上の懸念が払拭されて、安全、安心にアクリルプレポリマーの製造が可能となる傾向が見られる。また、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルのような比較的低沸点のアクリル単量体を共重合する場合であっても、製造中にモノマー蒸気が大量に発生することがなくより安全に製造が可能となる傾向が見られる。
【0050】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの製造は、所定重合温度まで、好ましくは60〜300分、より好ましくは90〜300分、さらに好ましくは90〜180分かけて昇温し、塊状重合を行うのが推奨される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー製造時において、所定重合温度までの昇温時間が好ましくは60〜300分のとき、ラジカル重合反応が定量的に、より速く進み、攪拌、除熱がいっそう容易となり、より安全に製造作業が実施できる傾向が見られる。また、重合速度が速くなることで、製造時間の短縮が計れ、アクリルプレポリマーの分子量分布がより小さくなり、アクリルプレポリマーとしての機能発現がより期待される。
【0051】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体は、好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリフルオロエチルなどの(メタ)アクリル酸(フルオロ)アルキルエステル単量体、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有アクリルル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレートなどの水酸基含有アクリル単量体、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの3級アミノ基含有アクリル単量体、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのヒンダードアミノ基含有アクリル単量体、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、ダイアセトンアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、4−メタクリルアミドエチルエチレンウレアなどのアミド基含有アクリル単量体、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアなどのウレア基含有アクリル単量体、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、o,p,m−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリル単量体、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートなどのジシクロペンタジエン誘導体アクリル単量体、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン基含有アクリル単量体などが例示される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0052】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらのアクリル単量体のなかでは製造時間短縮が可能で、分子量調節が容易なメタクリレート単量体が推奨される。
【0053】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体が、下記構造式で示される
【0054】
【化7】

【0055】
(ここで、Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを含むことが推奨される。
【0056】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリル単量体のなかでは、メタクリレート単量体が望ましく、また、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが製造時間短縮、共重合性、分子量分布が小さくなることから望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートは、「QM−657」(ロームアンドハース社の製品)、「FANCRYL FA−512M」(日立化成工業社の製品)など、市販はされているもののなかから任意に選択できる。
【0057】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーにジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが使用されるとき、難接着性とされる無極性プラスチックであるポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、極性を有しエンジニアリングプラスチックとして広く使用されているナイロンに代表されるポリアミドなどの種々素材に対して良好なヌレ性、相溶性、接着性を有する傾向が見られる。
【0058】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートは、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは25〜98重量%、さらに好ましくは25〜95重量%使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーに使用されるジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートの使用量が20〜100重量%のとき、難接着性とされる無極性プラスチックであるポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、極性を有しエンジニアリングプラスチックとして広く使用されているナイロンに代表されるポリアミドなどの種々素材に対して良好なヌレ性、相溶性、接着性を有する傾向が見られる。
【0059】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリル単量体のなかでは、メメタクリル酸アルキルエステル単量体として、下記構造式で示される
【0060】
【化8】

【0061】
イソボルニルメタクリレートの使用が推奨される。
【0062】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、嵩高い分子構造を有するイソボルニルメタクリレートが使用されることで、ヌレ性、相溶性がいっそう向上する傾向が見られる。特に、ポリプロピレン、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン類とのヌレ性、相溶性、接着性が向上する傾向が見られる。
【0063】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、イソボルニルメタクリレートは、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは2〜60重量%、より好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは3〜30重量%使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、イソボルニルメタクリレートの使用量が2〜60重量%のとき、ヌレ性、相溶性、接着性がいっそう向上する傾向が見られる。
【0064】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーに使用される官能基を有するアクリル単量体としては、メタクリル酸(カルボキシル基)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(水酸基)、メタクリル酸グリシジル(エポキシ基)、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(アミノ基)、N−(2−メタクリロリルオキシエチル)エチレンウレア(ウレア基)などのアクリル単量体が望ましい。これらのアクリル単量体が使用されるとき、相溶性、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる。また、アクリルプレポリマーに架橋性が発現されるようになり、化学的性質や機械的強度が改善されたアクリルエマルジョンとなる傾向が見られる。
【0065】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸は、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1.0〜15重量%、さらに好ましくは1.2〜15重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸の使用量が0.5〜20重量%のとき、アクリルプレポリマーの凝集力が向上して、接着性が向上する傾向が見られる。
【0066】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルは、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルの使用量が3〜30重量%のとき、相溶性、ヌレ性が向上し、接着性が向上する傾向が見られる。
【0067】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸グリシジルは、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸の使用量が3〜30重量%のとき、相溶性、ヌレ性が向上し、またアクリルプレポリマーに架橋性が発現して、接着性が向上する傾向が見られる。
【0068】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンは、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1.0〜15重量%、さらに好ましくは1.2〜15重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの使用量が0.5〜20重量%のとき、相溶性、ヌレ性が向上し、アクリルエマルジョンの接着性が向上する傾向が見られる。また、耐候性が優れたものとなる傾向が見られる。
【0069】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアは、アクリルプレポリマーに使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1.0〜15重量%、さらに好ましくは1.2〜15重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアの使用量が0.5〜20重量%のとき、アクリルプレポリマーの凝集力が向上して、接着性が向上する傾向が見られる。また、アクリルエマルジョンの相溶性、ヌレ性が飛躍的に向上し、架橋性の発現と相まって、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ナイロンなどの極性ポリマー、アルミニウム合金、鉄などの金属など素材を選ばず、優れた相溶性、ヌレ性、接着性を発現する傾向が見られる。
【0070】
本発明のアクリルエマルジョンは、アクリルプレポリマーの存在下で、アクリル単量体を乳化重合して製造する。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルエマルジョンはモノマー滴下法、エマルジョン滴下法、シード乳化重合法などいずれの乳化重合法で製造してもよい。
【0071】
乳化重合は、通常、アクリル単量体を水中に安定に乳化、分散するためにドデシルベンゼンスルホン酸などの陰イオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの非イオン性乳化剤を使用し、あるいは陽イオン性乳化剤を使用し、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの水溶性過硫酸塩を重合開始剤とし、重合温度30〜100℃で行われている。
【0072】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、重合開始剤として水溶性有機アゾ系重合開始剤を使用し、乳化剤として分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤を使用して乳化重合を行うのが望ましい。
【0073】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、乳化重合に使用される重合開始剤として、水溶性有機アゾ系重合開始剤が望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、乳化重合に水溶性有機アゾ系重合開始剤が使用されるとき、乳化重合中および製造されるアクリルエマルジョンのpHが、好ましくは、4.0〜10.0となり、乳化重合中およびアクリルエマルジョン保存中に、例えばエポキシ基、アルコキシシラン基など機能性ポリマーとして有用な官能基で、高活性な官能基が反応により消失することがなく、製造されるアクリルエマルジョンを高活性で、機能性の高いポリマーとして長期にわたり使用できる。
【0074】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、乳化重合時および製造されるアクリルエマルジョンのpH/25℃は、好ましくは4.0〜10.0、より好ましくは4.5〜9.8、さらに好ましくは4.5〜9.5であることが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、乳化重合時および製造されるアクリルエマルジョンのpH/25℃が好ましくは4.0〜10.0のとき、乳化重合中および製造されたアクリルエマルジョンの保存中に活性で、機能付与に有効な官能基が消失することなく、相溶化ポリマー、接着剤などとして適用されるまで長期にわたり安定に保持される傾向が見られる。
【0075】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、水溶性有機アゾ系重合開始剤として、下記構造式で示される
【0076】
【化9】

【0077】
2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などの分子中にイミダゾリン基を有する水溶性有機アゾ系重合開始剤、下記構造式で示される
【0078】
【化10】

【0079】
2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などの分子中にアミドキを有する水溶性有機アゾ系重合開始剤、下記構造式で示される
【0080】
【化11】

【0081】
2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレートなどの分子中にアミド基−C(O)NH−、アミジン基−C(N)NH−を有する水溶性有機アゾ系重合開始剤などが例示される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらの水溶性有機アゾ系重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0082】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルエマルジョンのpH/25℃を好ましくは4.0〜10.0に調節するために、好ましくは下記構造式で示される
【0083】
【化12】

【0084】
2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]が望ましい。
【0085】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、水溶性有機アゾ系重合開始剤は、乳化重合されるアクリル単量体の合計量を100重量部として、好ましくは0.05〜5.0重量部、より好ましくは0.1〜3.0重量部、さらに好ましくは0.2〜2.5重量部使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、水溶性有機アゾ系重合開始剤の使用量が0.05〜5.0重量部のとき、重合速度が適度に調節されて製造中の発熱が抑制され、凝集物の発生が少なく、未反応モノマー量が少なくなる傾向が見られる。
【0086】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤は、上市されているものの中から任意に選択することができる。上市されている分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤は、「ラテムルPD−104」(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム)(花王の製品)、「アクアロンKH−1025」(第一工業製薬の製品)、「アデカリアソーブSR−1025」((α−スルホ−ω−((1−アルコキシメチル−2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリオキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩の25%水溶液)(旭電化工業の製品)などが例示される。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらの分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0087】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、乳化重合用乳化剤として分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤が使用されるとき、乳化安定性がよく、残存モノマーの少ないアクリルエマルジョンが製造できる。また、本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、製造されるアクリルエマルジョンの化学的性質や機械的性質が改善、向上する。
【0088】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、好ましくは、下記構造式で示される
【0089】
【化13】

【0090】
(ここで、Rは、炭素原子数8〜24個のアルキル基を表す。)
分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤が望ましい。
【0091】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、下記構造式で示される
【0092】
【化14】

【0093】
(ここで、Rは、炭素原子数8〜24個のアルキル基を表す。)
分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤として、「アデカリアソーブSR−1025」(旭電化工業の製品)などが例示される。
【0094】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、さらに好ましくはRが−C1123である(α−スルホ−ω−((1−ウンデカンオキシメチル−2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリオキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩が望ましい。
【0095】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、これらの分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤が使用されるとき、乳化安定性がきわめて良好で、残存モノマー量の少ないアクリルエマルジョンが製造される。また、アクリルエマルジョンの粒子径コントロールが容易であり、機能性が高められたアクリルエマルジョンが製造できる。
【0096】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤は、アクリルプレポリマー、乳化重合するアクリル単量体との合計量を100重量%として、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1.5〜20重量%、さらに好ましくは1.8〜16重量%使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤の使用量が1〜20重量%のとき、乳化安定性が良好で、乳化重合がスムースに進行し、凝集物の少ないアクリルエマルジョンが製造できる傾向が見られる。
【0097】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、好ましくは、アクリルプレポリマーを乳化重合するアクリル単量体に溶解した後、これに分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤を添加し、イオン交換水を加えて乳化したプレエマルジョンを作製した後、これをイオン交換水、水溶性有機アゾ系重合開始剤が含まれる重合系に加えて乳化重合を行うエマルジョン法で乳化重合を行うのが望ましい。凝集物の生成が少なく、粒子径のそろったアクリルエマルジョンが製造される傾向が見られる。
【0098】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの存在下で、好ましくは、下記構造式の
【0099】
【化15】

【0100】
メタクリル酸を含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、好ましくは、4.0〜7.0であることが望ましい。
【0101】
メタクリル酸を含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃は、より好ましくは、4.2〜6.5、さらに好ましくは、4.3〜6.3であるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、メタクリル酸が使用され、メタクリル酸を含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が4.0〜7.0であれば、カルボキシル基がアクリルエマルジョン粒子表面に多く配向する傾向が見られ、相溶性、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる。
【0102】
本発明のアクリルエマルジョンでは、メタクリル酸は、乳化重合するアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは、1.0〜10重量%、より好ましくは、1.5〜8.0重量%、さらに好ましくは、3.0〜8.0重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、メタクリル酸の使用量が1.0〜10重量%のとき、アクリルポリマーの凝集力が大きくなり、接着性が改善、向上する傾向が見られる。
【0103】
本発明のアクリルエマルジョンでは、アクリルプレポリマーの存在下で、好ましくは、
下記構造式の
【0104】
【化16】

【0105】
メタクリル酸グリシジルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、好ましくは6.0〜8.0であるのが望ましい。
【0106】
メタクリル酸グリシジルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃は、より好ましくは、6.3〜8.0、さらに好ましくは、6.5〜7.8であるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、メタクリル酸グリシジルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が6.0〜8.0であれば、アクリルエマルジョン貯蔵中にエポキシ基が消失してエポキシ基としての反応性や作用を失うことがなく、機能が継続される傾向が見られる。また、エポキシ基がアクリルエマルジョン粒子表面に多く配向する傾向が見られ、アルミニウム合金、鉄、チタン合金などの金属、ポリプロピレン、ナイロン、ABS、エポキシ樹脂などの有機高分子材料への相溶性、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる。
【0107】
本発明のアクリルエマルジョンでは、メタクリル酸グリシジルは、乳化重合するアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは、3.0〜50重量%、より好ましくは、5〜35重量%、さらに好ましくは、5〜30重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、メタクリル酸グリシジルの使用量が3〜50重量%のとき、アクリルエマルジョンのポリオレフィン、ナイロン、アルミニウム合金、鉄など種々素材に対する相溶性、ヌレ性、接着性が改善、向上する傾向が見られる。また、アクリルエマルジョンの架橋性が向上する傾向が見られ、強靱な相溶化ポリマー、接着剤などが製造される傾向が見られる。
【0108】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの存在下で、好ましくは、下記構造式の
【0109】
【化17】

【0110】
ビニルベンジルグリシジルエーテルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、好ましくは、6.0〜8.0のアクリルエマルジョンであるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ビニルベンジルグリシジルエーテルは、オルソ(o−)ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタ(m−)ビニルベンジルグリシジルエーテル、パラ(p−)ビニルベンジルグリシジルエーテル体のいずれのビニルベンジルグリシジルエーテルでもよく、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0111】
ビニルベンジルグリシジルエーテルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃は、より好ましくは、6.3〜8.0、さらに好ましくは6.5〜7.8であるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、ビニルベンジルグリシジルエーテルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が6.0〜8.0であれば、アクリルエマルジョン貯蔵中にエポキシ基が消失してエポキシ基としての反応性や作用を失うことがなく、機能が継続される傾向が見られる。同時に、グリシジルエステル単量体であるグリシジルメタクリレートよりもエポキシ基の反応性がよく、架橋性や接着性が向上する傾向が見られる。また、エポキシ基がアクリルエマルジョン粒子表面に多く配向する傾向が見られ、アルミニウム合金、鉄、チタン合金などの金属、ポリプロピレン、ナイロン、ABS、エポキシ樹脂などの有機高分子材料への相溶性、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる。
【0112】
本発明のアクリルエマルジョンでは、ビニルベンジルグリシジルエーテルは、乳化重合するアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは3.0〜50重量%、より好ましくは5〜35重量%、さらに好ましくは、5〜30重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、ビニルベンジルグリシジルエーテルの使用量が3〜50重量%のとき、アクリルエマルジョンのポリオレフィン、ナイロン、アルミニウム合金、鉄など種々素材に対する相溶性、ヌレ性、接着性が改善、向上する傾向が見られる。また、アクリルエマルジョンの架橋性が向上する傾向が見られ、強靱な相溶化ポリマー、接着剤などが製造される傾向が見られる。
【0113】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマーの存在下で
下記構造式の
【0114】
【化18】

【0115】
4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、好ましくは、8.0〜10.0のアクリルエマルジョンであるのが望ましい。
【0116】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンは、「FANCRYL FA−712HM」(日立化成工業の製品)、「アデカスタブ LA−87」(旭電化工業の製品)など、上市されているもののなかから任意に選択できる。
【0117】
4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃は、より好ましくは、8.5〜10.0、さらに好ましくは、8.5〜9.8であるのが望ましい。
【0118】
本発明のアクリルエマルジョンでは、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が8.0〜10.0であれば、アクリルエマルジョン貯蔵中もアミノ基が安定に存在し、またアミノ基がアクリルエマルジョン粒子表面に多く配向する傾向が見られ、アルミニウム合金、鉄、チタン合金などの金属、ポリプロピレン、ナイロン、ABS、エポキシ樹脂などの有機高分子材料への相溶性、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる。
【0119】
本発明のアクリルエマルジョンでは、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンは乳化重合するアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは、1〜50重量%、より好ましくは、3〜35重量%、さらに好ましくは、5〜30重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの使用量が1〜50重量%のとき、アクリルエマルジョンの炭素繊維、ガラス繊維、チタンウィスカーなど種々機能素材に対する相溶性、ヌレ性、接着性が改善、向上する傾向が見られる。また、アクリルエマルジョンの架橋性、耐候性が向上する傾向が見られ、機械的強度が改善、向上した繊維強化プラスチック等のコンポジットが製造される傾向が見られる。
【0120】
本発明のアクリルエマルジョンでは、アクリルプレポリマーの存在下で、
下記構造式の
【0121】
【化19】

【0122】
N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、好ましくは、7.0〜10.0であるのが望ましい。
【0123】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアは、「PLEX 6852−0」、「PLEX 6844−0」(以上、エボニック デグサ ジャパンの製品)など、上市されているもののなかから任意に選択できる。
【0124】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃は、より好ましくは、7.2〜10.0、さらに好ましくは、7.3〜9.8であるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアが使用され、アクリルエマルジョンのpH/25℃が7.0〜10.0であれば、アクリルエマルジョン貯蔵中もウレア基が安定に存在し、またウレア基がアクリルエマルジョン粒子表面に多く配向する傾向が見られ、アルミニウム合金、鉄、チタン合金などの金属、ポリプロピレン、ナイロン、ABS、エポキシ樹脂などの有機高分子材料への相溶性、ヌレ性、接着性が向上する傾向が見られる
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアは、乳化重合するアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは、1〜50重量%、より好ましくは、3〜35重量%、さらに好ましくは、5〜30重量%使用するのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアの使用量が1〜50重量%のとき、アクリルエマルジョンの炭素繊維、ガラス繊維、チタンウィスカーなど種々機能素材に対する相溶性、ヌレ性、接着性が改善、向上する傾向が見られる。また、アクリルエマルジョンの架橋性、耐候性が向上する傾向が見られ、機械的強度が改善、向上した繊維強化プラスチック等のコンポジットが製造される傾向が見られる。
【0125】
本発明のアクリルエマルジョンでは、乳化重合するアクリル単量体が、下記構造式で示される
【0126】
【化20】

【0127】
(ここで、Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを含むのが望ましい。
【0128】
本発明のアクリルエマルジョンの製造方法では、アクリルプレポリマー、乳化重合するアクリル単量体の両方に、好ましくは、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが使用されることにより、アクリルプレポリマーと乳化重合されたアクリルポリマーとの間で、適度な非相溶性と相溶性が形成され、アクリルプレポリマーの存在下でアクリル単量体を乳化重合したポリマーの凝集力が向上し強靱なポリマーが製造される傾向が見られる。また、ポリマーのレオロジーが好ましく制御される傾向があり、相溶化ポリマーとして使用したときマトリックス樹脂の強度を一段と向上する傾向が見られる。
【0129】
本発明のアクリルエマルジョンでは、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートは、乳化重合に使用されるアクリル単量体の合計量を100重量%として、好ましくは、20〜100重量%、より好ましくは、25〜98重量%、さらに好ましくは、25〜95重量%使用されるのが望ましい。本発明のアクリルエマルジョンでは、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートの使用量が20〜100重量%のとき、難接着性とされる無極性プラスチックであるポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、極性を有しエンジニアリングプラスチックとして広く使用されているナイロンに代表されるポリアミドなどの種々素材に対して良好なヌレ性、相溶性、接着性を有する傾向が見られる。
【実施例】
【0130】
以下に実施例で本発明の詳細を説明する。なお、以下の実施例では、評価方法、測定方法等を次の通りとした。
【0131】
1)酸素濃度(vol%)
デジタル酸素濃度計XO−326ALB(新コスモス電機(株)の測定装置)を使用して測定した。
【0132】
2)加熱残分(%)
JIS K 5407:1997にしたがって測定した。加熱残分の測定条件は140℃で60分とした。
【0133】
3)アクリルプレポリマーの重合率
JIS K 5407:1997にしたがって加熱残分を測定し、これを重合率とした。加熱残分の測定条件は140℃で60分とした。
【0134】
4)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー(株)の試験装置)を使用し、キャリアーをテトラヒドロフラン、分子量スタンダードとしてポリスチレンを用い測定した。分子量分布はMw/Mnで算出した。
【0135】
5)pH/25℃
pHメーターを使用して25℃で測定した。
【0136】
6)粒子径
大塚電子製の濃厚粒径アナライザー「FPAR−1000」を使用して測定した。
【0137】
7)付着性
JIS K 5400:1997にしたがって碁盤目試験を行った。アクリルエマルジョンをイオン交換水で濃度が20%になるよう希釈し、「DYNOL406」(エアー・プロダクツ社の塗料添加剤;消泡、ヌレ剤)を1.0%添加した後、ポリプロピレン製テストピースに塗膜厚が10μmになるよう塗布した。140℃で30分間乾燥し、付着性試験を行った。
【0138】
8)耐溶剤性
アクリルエマルジョンをイオン交換水で濃度が20%になるよう希釈し、「DYNOL406」(エアー・プロダクツ社の塗料添加剤;消泡、ヌレ剤)を1.0%添加した後、ポリプロピレン製テストピースに塗膜厚が10μmになるよう塗布した。140℃で30分間乾燥した後、アセトンを含んだ脱脂綿で擦り、塗膜の溶解性を評価した。評価基準は次の通りとした。
○:塗膜はアセトンに溶解せず、耐溶剤性がある。
△:塗膜は簡単には溶解しないが、20回以上擦っていると塗膜が溶解しポリプロピレンの地肌が現れる。
×:塗膜がアセトンに簡単に溶解する。
△以上で、耐溶剤性は良好で、実用性があるとする。
【0139】
実施例1
攪拌機、窒素ガス吹き込み口、還流冷却器、温度センサーを備えた2L四つ口フラスコに窒素ガスを吹き込みフラスコ内の酸素濃度が3.0vol%以下であることを確認した。以後、アクリルプレポリマーP−1製造中は窒素ガスの吹き込みを継続した。フラスコ内気相部温度は25℃であった。
【0140】
フラスコに、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート1000g、1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート22.2g、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5.0gを仕込んだ。このとき、アクリル単量体混合物の液温は22℃、気相部酸素濃度は2.0vol%以下であった。昇温を開始し、30℃から重合温度の85℃まで120分で昇温した。昇温後、6時間重合を行い、アクリルプレポリマーP−1を塊状ラジカル重合で製造した。
【0141】
アクリルプレポリマーP−1製造中は、急激な発熱、粘度上昇は見られず、安全に製造できた。
【0142】
アクリルプレポリマーP−1は、重合率99.2%、数平均分子量4500、重量平均分子量5100、分子量分布1.13であった。
【0143】
重合処方の詳細、アクリルプレポリマーP−1の特性値等を表1に示した。なお、表中、(1)はアクリル単量体、(2)ジチオエステル化合物の1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、(3)は重合開始剤、(4)はアクリルプレポリマーの重合条件、(5)はアクリルプレポリマーの特性値を示した。
【0144】
攪拌機、窒素ガス吹き込み口、還流冷却器、温度センサーを備えた1L四つ口フラスコに窒素ガスの吹き込みを行い、フラスコ内を窒素ガス置換した。この後、アクリルエマルジョンAE−1製造中は窒素ガスの吹き込みを継続した。
【0145】
フラスコに、窒素ガスのバブリングを行いあらかじめ脱酸素したイオン交換水(初期仕込み)(表6(3))105.9gを仕込み、昇温を開始した。60℃で重合開始剤2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]1.0g(表6(5))を添加し、60分間60℃で攪拌を行い、重合開始剤をイオン交換水に溶解した。昇温を開始し、63℃に昇温した。
【0146】
アクリルプレポリマーP−1(表6(1))25g、アクリル単量体混合物(ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(表6(2))65g、イソボルニルメタクリレート5g、メタクリル酸5g)75g、イオン交換水(乳化用)(表6(3))46.3g、「アデカリアソーブSR−1025」(旭電化工業製の分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤)(表6(4))21.1gの混合物を乳化機を使用し、5000回転で10分間乳化し、プレエマルジョンを製造した。
【0147】
プレエマルジョンの30重量%をフラスコに添加し、75℃に昇温した。75℃で60分間乳化重合を行った後、プレエマルジョンの残量70重量%を2時間でフラスコ内にフィードした。フィード終了後、さらに60分間乳化重合を行い、40℃以下に冷却し、イオン交換水(希釈用)(表6(3))114.3gを添加してアクリルエマルジョンAE−1を製造した。
【0148】
アクリルエマルジョンAE−1は、加熱残分は24.2%、pH/25℃は4.6、粒子径は140nmであった。
【0149】
表6に示した通り、アクリルエマルジョンAE−1は、ポリプロピレンへの相溶性、ヌレ性、付着性が良好であった。同時に、耐溶剤性も実用レベルを示した。
【0150】
表6中、(6)はアクリルエマルジョンの特性値、(7)はポリプロピレンに対する付着性、および、耐溶剤性を示した。
【0151】
実施例2〜56
アクリルプレポリマーの組成、製造条件を表1(アクリルプレポリマーP−2〜P−4)、表2(アクリルプレポリマーP−5〜P−8)、表3(アクリルプレポリマーP−9〜P12)、表4(アクリルプレポリマーP−13〜P−16)の通り変える以外は実施例1と同様にしてアクリルプレポリマーP−2〜P−16を製造した。
【0152】
表1〜表4中、(1)はアクリル単量体、(2)ジチオエステル化合物の1−フェニルエチル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテートまたはベンジル−ペンタフルオロフェニルジチオアセテート、(3)は重合開始剤、(4)はアクリルプレポリマーの重合条件、(5)はアクリルプレポリマーの特性値を示した。
【0153】
表1〜表4に示したとおり、アクリルプレポリマーは、攪拌、除熱など製造上の問題、トラブルなく安全に製造できた。
【0154】
アクリルエマルジョンの組成、製造方法を表5(アクリルエマルジョンAE−2〜AE−8)、表6(アクリルエマルジョンAE−9〜AE−16)、表7(アクリルエマルジョンAE−17〜AE−24)、表8(アクリルエマルジョンAE−25〜AE−32)、表9(アクリルエマルジョンAE−33〜AE−36)、表10(アクリルエマルジョンAE−37〜AE−44)、表11(アクリルエマルジョンAE−45〜AE−52)、表12(アクリルエマルジョンAE−53〜AE−56)の通り変える以外は実施例1と同様にしてアクリルエマルジョンAE−2〜AE−56を製造した。実施例2のアクリルエマルジョンの製造方法は、AE−2の欄に記載した。
【0155】
表5〜表12中、(1)はアクリルプレポリマー、(2)はアクリル単量体、(3)はイオン交換水、(4)アデカリアソーブSR−1025は分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤である「アデカリアソーブSR−1025」(旭電化工業製)、(5)は分子中にイミダゾリン結合を有する水溶性有機アゾ系重合開始剤(2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン])、(6)はアクリルエマルジョンの特性値、(7)はポリプロピレンに対する付着性、および、耐溶剤性を示した。
【0156】
表5〜表12に示したとおり、アクリルエマルジョンも何らの問題なく製造できた。また、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが使用されているため、ポリプロピレンへの相溶性、ヌレ性が良好で、付着性に優れていた。
【0157】
カルボキシル基含有アクリル単量体(メタクリル酸)を乳化重合したアクリルエマルジョンはpH/25℃が低くなり酸性サイドとなった。エポキシ基含有アクリル単量体(グリシジルメタクリレート、ビニルベンジルグリシジルエーテル)を乳化重合したアクリルエマルジョンはpH/25℃が中性〜弱アルカリ性になった。アミノ基含有アクリル単量体(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)を乳化重合したアクリルエマルジョンはpH/25℃がアルカリサイドとなった。ウレア基含有アクリル単量体(N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア)を乳化重合したアクリルエマルジョンはpH/25℃が弱アルカリ性〜アルカリ性になった。全てのアクリルエマルジョンが設計通りのpH/25℃を示した。
【0158】
製造したアクリルエマルジョンは良好な耐溶剤性を示した。特に、アミノ基含有アクリル単量体(4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)を乳化重合したアクリルエマルジョン、ウレア基含有アクリル単量体(N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア)を乳化重合したアクリルエマルジョンは耐溶剤性が良好であった。さらに、表7〜表12に示したとおり、アクリルプレポリマーにも官能基が使用されている場合、優れた耐溶剤性を有していた。
【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
【表4】

【0163】
【表5】

【0164】
【表6】

【0165】
【表7】

【0166】
【表8】

【0167】
【表9】

【0168】
【表10】

【0169】
【表11】

【0170】
【表12】

【0171】
比較例1
攪拌機、窒素ガス吹き込み口、還流冷却器、温度センサーを備えた2L四つ口フラスコに窒素ガスを吹き込みフラスコ内の酸素濃度が3.0vol%以下であることを確認した。以後、アクリルプレポリマーP−17製造中は窒素ガスの吹き込みを継続した。フラスコ内気相部温度は25℃であった。
【0172】
フラスコに、メタクリル酸n−ブチル1000g、α−メチルスチレンダイマー95.0g、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10.0gを仕込んだ。このとき、アクリル単量体混合物の液温は22℃、気相部酸素濃度は2.0vol%以下であった。昇温を開始し、30℃から重合温度の85℃まで120分で昇温した。昇温後、6時間重合を行い、アクリルプレポリマーP−17を塊状ラジカル重合で製造した。
【0173】
アクリルプレポリマーP−17製造中は、急激な発熱、粘度上昇は見られず、安全に製造できた。
【0174】
アクリルプレポリマーP−17は、重合率99.0%、数平均分子量8200、重量平均分子量16300、分子量分布1.99であった。
【0175】
重合処方の詳細、アクリルプレポリマーP−17の特性値等を表13に示した。なお、表13中、(1)はアクリル単量体、(2)はα−メチルスチレンダイマー、(3)は重合開始剤、(4)はアクリルプレポリマーの重合条件、(5)はアクリルプレポリマーの特性値を示した。
【0176】
攪拌機、窒素ガス吹き込み口、還流冷却器、温度センサーを備えた1L四つ口フラスコに窒素ガスの吹き込みを行い、フラスコ内を窒素ガス置換した。この後、アクリルエマルジョンAE−57製造中は窒素ガスの吹き込みを継続した。
【0177】
フラスコに、窒素ガスのバブリングを行いあらかじめ脱酸素したイオン交換水(初期仕込み)(表14(3))105.9gを仕込み、昇温を開始した。60℃で重合開始剤2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](表14(5))1.0gを添加し、60分間60℃で攪拌を行い、重合開始剤をイオン交換水に溶解した。昇温を開始し、63℃に昇温した。
【0178】
アクリルプレポリマーP−6(表14(1))125g、アクリル単量体混合物(メタクリル酸n−ブチル65g、イソボルニルメタクリレート5g、メタクリル酸5g)(表14(2))75g、イオン交換水(乳化用)(表14(3))46.3g、「アデカリアソーブSR−1025」(旭電化工業製の分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤)(表14(4))21.1gの混合物を乳化機を使用し、5000回転で10分間乳化し、プレエマルジョンを製造した。
【0179】
プレエマルジョンの30重量%をフラスコに添加し、75℃に昇温した。75℃で60分間乳化重合を行った後、プレエマルジョンの残量70重量%を2時間でフラスコ内にフィードした。フィード終了後、さらに60分間乳化重合を行い、40℃以下に冷却し、イオン交換水(希釈用)(表14(3))114.3gを添加してアクリルエマルジョンAE−57を製造した。
【0180】
アクリルエマルジョンAE−57は、加熱残分は23.3%、pH/25℃は4.5、粒子径は520nmであった。
【0181】
表14中、(6)はアクリルエマルジョンの特性値、(7)はポリプロピレンに対する付着性、および、耐溶剤性を示した。
【0182】
比較例2〜4
アクリルプレポリマーの組成、製造条件を表13(アクリルプレポリマーP−17〜P−21)の通り変える以外は比較例1と同様にしてアクリルプレポリマーP−17〜P−21を製造した。アクリルエマルジョンの組成、製造方法を表14(アクリルエマルジョンAE−58〜AE−60)の通り変える以外は比較例1と同様にしてアクリルエマルジョンAE−56〜AE−60を製造した。
【0183】
表13中、(1)はアクリル単量体、(2)α−メチルスチレンダイマーまたはジチオエステル化合物の1−フェニルエチル−フェニルジチオアセテート、(3)は重合開始剤、(4)はアクリルプレポリマーの重合条件、(5)はアクリルプレポリマーの特性値を示した。
【0184】
表14中、(1)はアクリルプレポリマー、(2)はアクリル単量体、(3)はイオン交換水、(4)アデカリアソーブSR−1025は分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤である「アデカリアソーブSR−1025」(旭電化工業製)、(5)は分子中にイミダゾリン結合を有する水溶性有機アゾ系重合開始剤(2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン])、(6)はアクリルエマルジョンの特性値、(7)はポリプロピレンに対する付着性、および、耐溶剤性を示した。
【0185】
表13のアクリルプレポリマーP−19、P−21の製造に見られるとおり、α−メチルスチレンダイマーまたはジチオエステル化合物の1−フェニルエチル−フェニルジチオアセテートと重合開始剤の使用量比が適切でない場合、急激で大きい重合熱のためアクリルプレポリマーの塊状重合は実施できなかった。また、アクリルプレポリマーP−20に見られるとおり、まったく重合が進行しなかった。
【0186】
アクリルエマルジョンAE−56〜AE−60は、使用されるアクリルプレポリマーP−17、P−18にジチオエステル化合物の1−フェニルエチル−フェニルジチオアセテートが使用されていないため、アクリルエマルジョンの粒子内ポリマーのマクロ相分離を原因とすると思われるが、粒子径が異常に肥大化し、分離、沈殿傾向が観察された。アクリルエマルジョンAE−56〜AE−60は、1週間以内で、エマルジョンのクリア層分離が起こった。
【0187】
表14に示したとおり、アクリルエマルジョンAE−56〜AE−60は、アクリルプレポリマー、エマルジョンともにジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが使用されていないため、ポリプロピレンに対する相溶性、ヌレ性がなく、まったく付着性を示さなかった。また、マクロ相分離のため架橋性が不足し、耐溶剤性を有していなかった。
【0188】
【表13】

【0189】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジチオエステル化合物1.0モルに対し、重合開始剤を0.020〜0.400モル使用してアクリル単量体が塊状重合し、得られたアクリルプレポリマーの存在下で、アクリル単量体を乳化重合するアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項2】
ジチオエステル化合物が、下記構造式で示される
【化1】

(ここで、Zは、フェニル基、ベンジル基、下記構造式で示される化学構造
【化2】

(ペンタフルオロベンジル基)
【化3】

(ペンタフルオロフェニル基)
のいずれかを表し、
は、水素原子、ニトリル基、または、炭素原子数1〜4個のアルキル基を表し、Rは、水素原子、ニトリル基、または、炭素原子数1〜4個のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素原子数1〜4個のアルキル基、または、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシルエチル基、カルボキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、フェニル基、または、置換基を有するフェニル基(ただし、置換基は、ニトリル基、炭素原子数1〜4個のアルキル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、カルボキシル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホニル基および塩、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基を表す。)
を表す。)
ジチオエステル化合物である請求項1に記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項3】
重合開始剤として水溶性有機アゾ系重合開始剤を使用し、乳化剤として分子中にアリル基を有する陰イオン性反応性乳化剤を使用する請求項1または2のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項4】
アクリルプレポリマーの存在下で、下記構造式の
【化4】

メタクリル酸を含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、4.0〜7.0である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項5】
アクリルプレポリマーの存在下で、下記構造式の
【化5】

メタクリル酸グリシジルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、6.0〜8.0である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項6】
アクリルプレポリマーの存在下で、下記構造式の
【化6】

ビニルベンジルグリシジルエーテルを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、6.0〜8.0である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項7】
アクリルプレポリマーの存在下で、下記構造式の
【化7】

4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、8.0〜10.0である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項8】
アクリルプレポリマーの存在下で、下記構造式の
【化8】

N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアを含むアクリル単量体を乳化重合したときのpH/25℃が、7.0〜10.0である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。
【請求項9】
アクリル単量体が、下記構造式で示される
【化9】

(ここで、Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートおよび/またはジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを含む請求項1〜7のいずれかに記載のアクリルエマルジョンの製造方法。

【公開番号】特開2010−100744(P2010−100744A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273854(P2008−273854)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】