説明

アクリル共重合体の製造方法

【課題】工業的な見地に立った攪拌、除熱を含む製造上の課題を解決し、最重要課題である安全、防災上の懸念を払拭するアクリル共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記構造式のα−メチルスチレンダイマー


1.0モルに対し0.02〜1.00モルの重合開始剤を使用し、アクリル単量体のラジカル重合を行う。アクリル単量体として、ベンジルメタクリレート及びアルコール残基がC1〜8のアルキル基からなる(メタ)アクリレートを有するアクリル共重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時の温度制御が容易で、比較的短時間でアクリル樹脂が製造可能なアクリル共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、その原料となるアクリル単量体の種類が豊富で、付着性、接着性、硬度、透明性、耐光性、耐候性、耐薬品性等の物理的性質、化学的性質を随意にコントロールできることから、ディスプレイ、レンズなどの光学用塗、光学フィルム用途、これらに使用する粘・接着剤用途、塗料、シーリング材、紙力増強剤、歯科材料、航空機や自動車部材の接着剤等、幅広く応用され、用いられている。
【0003】
アクリル樹脂は、一般に重合時の発熱が大きく、また重合が進むにつれ高粘度となるため、工業的には水や有機溶媒を媒体とする溶液重合や乳化重合、懸濁重合などの除熱が比較的容易な方法で製造されることが多い。また、鋳込み等特殊な用途で使用される場合には部分重合したシロップとして使用されることもある。
【0004】
アクリル単量体を、無溶剤下に、熱によるラジカル重合の場合でも、反応系内の除熱を容易に制御できるアクリル部分重合体の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。無溶剤下にラジカル重合を行うといいながらも、特許文献1に提案されている技術は、アクリル単量体と相溶し、かつ重合阻害性の少ない、例えば、アルコール変性ジシクロペンタジエン樹脂の水素化物、テトラヒドロアビエチン酸型骨格を持つロジン成分を40重量%以上含有するロジン、当該ロジンの誘導体、粘着付与樹脂の存在下にアクリル単量体を重合するものであり、純粋なアクリル樹脂、部分重合アクリル樹脂を得るという目的にはふさわしくない技術である。したがって、製造されたアクリル樹脂も粘着剤等に用途が限定される。
【0005】
また、特許文献1では、アクリル単量体の種類は特に限定せずとしているが、実質上は前記粘着付与樹脂との相溶性で制約を受けるのは必至であり、かつ製造されるアクリル樹脂も物理的性質、化学的性質をよりレベルアップしていく段階では同様に粘着付与樹脂の存在がブレーキをかけることは容易に推察される。
【0006】
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(=α−メチルスチレンダイマー)、ラジカル重合開始剤の存在下にメタクリロイル基を有するエチレン性不飽和化合物(=アクリル単量体)をラジカル重合しブロック共重合体を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2で提案されている技術では、アクリル単量体に対する2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン量(重量比)、重合開始剤量(重量比)は限定されているが、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン量(モル数)と重合開始剤量(モル数)との関係は定められていない。特許文献2で提案されている技術は、アクリル樹脂を製造する上でもっと重要で、安全上の根本的な課題である攪拌、重合熱の除熱についてはいっさい考慮が払われていない。特許文献2では、アクリル樹脂を攪拌や除熱が容易な溶液重合で製造することが提案されている。例えブロック共重合体が製造されたとしても、有機溶媒の溶液状で製造されたアクリル樹脂から有機溶媒を取り除きアクリル樹脂だけを取り出すのは大変なエネルギーと手間を必要とする。同時に収率の大幅な低下を招く。LCA(ライフサイクルアセスメント)やPRTR(ポリュータント リリース アンド トランスファー レジスター(化学物質排出移動量届制度または環境汚染物質排出移動登録制度);日本では、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)法の観点からも実用的な手段とは言い難い。
【特許文献1】特開2003−128714号公報
【特許文献2】特開2000−169531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工業的な見地に立った攪拌、除熱を含む製造上の課題を解決し、最重要課題である安全、防災上の課題を解決するアクリル共重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0009】
【化1】

【0010】
1.0モルに対し0.02〜1.00モルの重合開始剤を使用し、アクリル単量体のラジカル重合を行って、分子中に下記構造式で示される化学構造
【0011】
【化2】

【0012】
および、下記構造式で示される化学構造
【0013】
【化3】

【0014】
(ここで、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を有するアクリル共重合体を製造するアクリル共重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアクリル共重合体の製造方法は、新規なコンセプトに基づき、比較的短時間の製造工程、単純な製造方法で製造されるアクリルプレポリマーを、効率的な高分子反応により変性し機能性アクリル共重合体を製造することができる。
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリルプレポリマーの製造工程でも、機能性アクリル共重合体の製造工程でも、急激な重合反応の進行と暴走反応に至る過程の回避とこれの制御、攪拌、除熱を含む安全、防災上の課題を解決できる。
【0016】
本発明のアクリル共重合体の製造方法は、ガラス繊維、炭素繊維、チタンウイスカー等の繊維で強化されるポリプロピレンアロイ(PPアロイ)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアミド(PA)、ABS樹脂、ポリカーボネート等の各種熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に相溶し、よりいっそうの強度向上を可能とする機能性アクリル共重合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0018】
【化4】

【0019】
1.0モルに対し0.02〜1.00モルの重合開始剤を使用し、アクリル単量体のラジカル重合を行って、分子中に下記構造式で示される化学構造
【0020】
【化5】

【0021】
および、下記構造式で示される化学構造
【0022】
【化6】

【0023】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を有するアクリル共重合体を製造するアクリル共重合体の製造方法である。
【0024】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0025】
【化7】

【0026】
すなわち、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを用いる。
【0027】
α−メチルスチレンダイマー、すなわち、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンとしては、例えば、五井化成(株)、本州化学工業(株)、旭化成ファインケム(株)などで製造され、上市されているものを任意に選択し、使用することができる。
【0028】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などの有機アゾ系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などが例示できる。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらの重合開始剤は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用しても良い。
【0029】
本発明のアクリル共重合体では、これらの重合開始剤のなかでは、好ましくは、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等の有機アゾ系重合開始剤が好ましく推奨され、アクリル共重合体製造時の安全性と、アクリル共重合体の安定性が両立できる。
【0030】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対し、重合開始剤を0.02〜1.00モル使用する。
【0031】
重合開始剤は、好ましくは、α−メチルスチレンダイマーの1モルに対して、0.05〜0.50モル、より好ましくは、0.10〜0.25モル使用されるのが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合開始剤の使用量が0.02モル未満の場合には、重合率が上がらず、工業的な観点から現実的な手法ではない。重合開始剤の使用量が1.00モルを超える場合には、アクリルプレポリマーおよびアクリル共重合体製造時の発熱が大きく暴走反応が起こりやすいので安全上問題である。
【0032】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式で示される化学構造
【0033】
【化8】

【0034】
は、好ましくは、下記構造式で示される
【0035】
【化9】

【0036】
ベンジルメタクリレートの共重合により導入することができる。
【0037】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式で示される化学構造
【0038】
【化10】

【0039】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
は、好ましくは、下記構造式で示される
【0040】
【化11】

【0041】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体の共重合により導入することができる。下記構造式で示される
【0042】
【化12】

【0043】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
アクリル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが例示される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0044】
本発明のアクリル共重合体では、これらのアクリル単量体以外にも、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有アクリル単量体、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリル単量体、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有アクリル単量体、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどの3級アミノ基含有アクリル単量体、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどのアミド基含有アクリル単量体、3−メタクリロイルオキシエチルエチレンウレアなどのウレア基含有アクリル単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有アクリル単量体、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートなどのジシクロペンタジエンから誘導されるアクリル単量体などのアクリル単量体が例示される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、これらのアクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0045】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体の数平均分子量は、好ましくは、1000〜20万、より好ましくは、2000〜10万であることが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体の数平均分子量が1000〜20万のとき、アクリル共重合体製造時の重合温度制御、攪拌が容易であり、安全にアクリル共重合体を製造できる本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体などの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCとも言う)「HLC−8220GPC」(東ソー(株)の試験装置)を使用し、キャリアーをテトラヒドロフラン、分子量スタンダードとしてポリメタクリル酸メチルを用い測定した。
【0046】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などいずれの製造方法で製造してもよい。
【0047】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、後工程での使い勝手を考慮すれば、アクリル共重合体が塊状ラジカル共重合で製造されるのが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体の製造が塊状ラジカル共重合で行われるとき、アクリル共重合体の製造時間短縮が可能となって生産効率がよくなり、また、アクリル共重合体の分子量分布が小さくなる傾向が見られ、アクリル共重合体の機械的性質、化学的性質が向上する傾向が見られる。ここで、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、分子量分布とは、GPCで測定される重量平均分子量(以下、Mwとも言う)と数平均分子量(以下、Mnとも言う)の比Mw/Mnを表す。
【0048】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、塊状ラジカル共重合とは、アクリル単量体やスチレンモノマーなどのビニル基を有するモノマーのラジカル共重合を行う際に用いられる方法の一つである。溶媒を使用しないで、アクリル単量体やスチレンモノマーなどのビニル基を有するモノマーだけをそのまま、あるいはアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤を加えて、加熱して重合を行う方法である。
【0049】
塊状ラジカル共重合の特徴は、重合速度が大きく、比較的純粋なポリマーが塊状で製造されることである。周知の通り、製造スケールに係わらず、塊状ラジカル共重合では、重合熱を取り除くことが難しく(除熱が困難)、局部加熱が生じる(局部的に暴走反応が起こる)など重合温度の制御がはなはだ困難である。
【0050】
一方、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、α−メチルスチレンダイマーの1モルに対して、重合開始剤を0.02〜1.00モル使用することにより、アクリル共重合体の製造を塊状ラジカル共重合で行う場合でも、製造時の攪拌、除熱が容易であり、重合温度の制御が工業的見地から見て十分に可能となる。
【0051】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、本発明に従い製造されるアクリルプレポリマーおよびアクリル共重合体が、特に、塊状ラジカル共重合で製造される場合には、不活性ガス置換された気相部の酸素濃度が、好ましくは、0.02vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%、より好ましくは、0.5vol%≦気相部酸素濃度≦7.0vol%、さらにより好ましくは0.5vol%≦気相部酸素濃度≦6.0vol%の雰囲気下に実施されるのが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、気相部酸素濃度が0.02vol%≦気相部酸素濃度≦8.0vol%であれば、気相部でアクリル単量体が重合反応を起こすことがなく、安全に、効率よくアクリルプレポリマーおよびアクリル共重合体を製造することができる。
【0052】
ここで、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合系中の酸素濃度は、「デジタル酸素濃度計 XO−326ALB」(新コスモス電機(株)の酸素濃度測定器)を使用し測定した。また、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、本発明で使用される不活性ガスは、窒素ガス、ヘリウムガスなど市販されているもののなかから任意に選択することができる。
【0053】
撹拌装置、温度計、不活性ガス導入管、コンデンサー、モノマー滴下装置を備えた重合容器に、アクリル単量体、α−メチルスチレンダイマー、α−メチルスチレンダイマーの使用モル数に対し0.02〜1.00モルに相当する重合開始剤を仕込み、所定の重合温度に昇温する。所定の重合温度に達すれば、目的の重合率に達するまで重合反応を行うことでアクリル共重合体が製造できる。
【0054】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、重合温度制御が容易であり、例示した溶液重合、塊状重合のいずれの製造方法でも、また他の乳化重合や懸濁重合であっても、制御困難な異常な重合反応や急激な発熱は見られず、通常の制御範囲内で安全にアクリル共重合体を製造できる。
【0055】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0056】
【化13】

【0057】
1.0モルに対し0.02〜1.00モルの重合開始剤を使用し、下記構造式で示されるアクリル単量体(a)
【0058】
【化14】

【0059】
を含むアクリル単量体がラジカル共重合したアクリルプレポリマー(1)の存在下で、下記構造式で示されるアクリル単量体(b)
【0060】
【化15】

【0061】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を含むアクリル単量体のラジカル共重合を行い、アクリル共重合体を製造するのが望ましい。
【0062】
本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(1)では、アクリルプレポリマー(1)は、数平均分子量が、好ましくは500〜5万、より好ましくは、1000〜5万であることが推奨される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリルプレポリマーの数平均分子量が500〜5万であるとき、アクリルプレポリマー製造時の重合温度制御、攪拌が容易であり、安全にアクリル共重合体を製造でき、好ましい。
【0063】
さらに、本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(1)では、好ましくは、「アクリル共重合体の数平均分子量/アクリルプレポリマーの数平均分子量」≧1.2、より好ましくは、「アクリル共重合体の数平均分子量/アクリルプレポリマーの数平均分子量」≧1.5、さらに好ましくは、「アクリル共重合体の数平均分子量/アクリルプレポリマーの数平均分子量」≧2.0であることが推奨される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、「アクリル共重合体の数平均分子量/アクリルプレポリマーの数平均分子量」≧1.2のとき、アクリル共重合体の機械的性質が改善され、強靱で耐衝撃性に優れたアクリル共重合体が製造される傾向が見られる。
【0064】
本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(1)では、アクリルプレポリマー、アクリル共重合体などの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCとも言う)「HLC−8220GPC」(東ソー(株)の試験装置)を使用し、キャリアーをテトラヒドロフラン、分子量スタンダードとしてポリメタクリル酸メチルを用い測定した。
【0065】
さらに、本発明のアクリル共重合体の製造方法では、下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【0066】
【化16】

【0067】
1.0モルに対し0.02〜1.00モルの重合開始剤を使用し、下記構造式で示されるアクリル単量体(a)
【0068】
【化17】

【0069】
を含むアクリル単量体がラジカル共重合したアクリルプレポリマー(1)の存在下で、下記構造式で示されるアクリル単量体(b)
【0070】
【化18】

【0071】
(ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を含むアクリル単量体がラジカル共重合してアクリルプレポリマー(2)を製造し、アクリルプレポリマー(2)の存在下で、さらに、下記構造式で示されるアクリル単量体(a)
【0072】
【化19】

【0073】
を含むアクリル単量体のラジカル共重合を行い、アクリル共重合体を製造するのが望ましい。
【0074】
本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(2)では、アクリルプレポリマー(1)は、数平均分子量が、好ましくは、500〜5万、より好ましくは、1000〜5万であることが推奨される。本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(2)では、アクリルプレポリマー(1)の数平均分子量が500〜5万であるとき、アクリルプレポリマー製造時の重合温度制御、攪拌が容易であり、安全にアクリル共重合体を製造できる。
【0075】
本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(2)では、アクリルプレポリマー(2)の数平均分子量は、好ましくは、1000〜20万、より好ましくは、2000〜10万であることが望ましい。本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(2)では、アクリルプレポリマー(2)の数平均分子量が1000〜20万のとき、アクリルプレポリマー(2)製造時の重合温度制御、攪拌が容易であり、安全にアクリル共重合体を製造できるので、好ましい。
【0076】
本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(2)では、アクリル共重合体の数平均分子量は、好ましくは、2000〜30万、より好ましくは、2000〜25万であることが望ましい。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、アクリル共重合体の数平均分子量が2000〜30万のとき、アクリル共重合体製造時の重合温度制御、攪拌が容易であり、安全にアクリル共重合体を製造できる。
【0077】
本発明の好ましいアクリル共重合体の製造方法(2)では、好ましくは、「アクリルプレポリマー(2)の数平均分子量/アクリルプレポリマー(1)の数平均分子量」≧1.2、より好ましくは、「アクリルプレポリマー(2)の数平均分子量/アクリルプレポリマー(1)の数平均分子量」≧1.5、さらに好ましくは、「アクリルプレポリマー(2)の数平均分子量/アクリルプレポリマー(1)の数平均分子量」≧2.0であることが推奨される。本発明のアクリル共重合体の製造方法では、「アクリルプレポリマー(2)の数平均分子量/アクリルプレポリマー(1)の数平均分子量」≧1.2のとき、アクリル共重合体の機械的性質が改善され、強靱で耐衝撃性に優れたアクリル共重合体が製造される傾向が見られる。
【0078】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、溶液重合の例をあげれば、例えば、以下のように製造できる。
【0079】
撹拌装置、温度計、不活性ガス導入管、コンデンサー、モノマー滴下装置を備えた重合容器に、重合溶媒、例えば、トルエンの所定量、および、α−メチルスチレンダイマーを仕込み、所定の重合温度に昇温する。所定の重合温度に達すれば、アクリル単量体とα−メチルスチレンダイマーの使用モル数に対し0.02〜1.00モルに相当する重合開始剤の溶液を所定時間で重合容器内に滴下し、滴下終了後、目的の重合率に達するまで重合反応を行うことでアクリル共重合体が製造できる。
【0080】
本発明のアクリル共重合体の製造方法では、塊状重合の例をあげれば、例えば、以下のように製造できる。
【0081】
(1)アクリルプレポリマーの製造例
2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル、α−メチルスチレンダイマーの所定量、
α−メチルスチレンダイマー1.0モルに対して例えば0.125モルの重合開始剤、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNとも言う)を計りとり、フラスコに窒素ガスを吹き込んでフラスコ内を窒素ガス置換した後、酸素濃度が5vol%に調節された窒素ガス/酸素の混合気体を吹き込み、フラスコ内気相部の酸素濃度を3〜5vol%となるよう調節する。以後、アクリルプレポリマーの製造中は酸素濃度が5vol%に調節された窒素ガス/酸素の混合気体の吹き込みを継続する。
【0082】
95℃まで30分間で昇温を行い、以後、重合率が95%以上になるまで重合い、アクリルプレポリマーを製造する。
【0083】
(2)アクリル共重合体の製造例
2L四つ口フラスコに、アクリルプレポリマーの所定量を仕込み、フラスコに窒素ガスを吹き込んでフラスコ内を窒素ガス置換した後、酸素濃度が5vol%に調節された窒素ガス/酸素の混合気体を吹き込み、フラスコ内気相部の酸素濃度を3〜5vol%となるよう調節する。以後、アクリル共重合体の製造中は酸素濃度が5vol%に調節された窒素ガス/酸素の混合気体の吹き込みを継続する。
【0084】
95℃に昇温し、例えば、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチルの混合モノマーの所定量と重合開始剤のAIBN混合溶液を3時間で滴下し、滴下終了後、重合率が98%以上になるまで重合を行う。室温に冷却して、アクリル共重合体を製造する。
【実施例】
【0085】
以下に実施例で本発明の詳細を説明する。なお、以下の実施例では、評価方法、測定方法等を次の通りとした。
【0086】
1)酸素濃度(vol%)
デジタル酸素濃度計XO−326ALB(新コスモス電機(株)の測定装置)を使用して測定した。
【0087】
2)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8220GPC」(東ソー(株)の試験装置)を使用し、キャリアーをテトラヒドロフラン、分子量スタンダードとしてポリメタクリル酸メチルを用い測定した。
【0088】
3)重合率(%)
JIS K 5407:1997にしたがって加熱残分(%)を測定し、これを重合率(%)とした。ただし、測定温度は140℃、測定時間は60分とした。
【0089】
実施例1
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル800g、α−メチルスチレンダイマー47.5g(0.201モル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル4.9g(0.03モル)(α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたとき、2,2−アゾビスイソブチロニトリルのモル数は0.149モルである。)を仕込み、30分間で95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリル共重合体AC−1を製造した。
【0090】
アクリル共重合体AC−1は、数平均分子量13000、重量平均分子量16900、分子量分布1.30、重合率98%であった。
【0091】
アクリル共重合体AC−1の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体の製造は何らの問題なく安全であった。
【0092】
実施例2
(アクリルプレポリマーP−1の製造)
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル800g、α−メチルスチレンダイマー190g(0.805モル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル19.7g(0.120モル)(α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたとき、2,2−アゾビスイソブチロニトリルのモル数は0.149モルである。)を仕込み、30分間で95℃に昇温した。この後、重合率が95%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリルプレポリマーP−1を製造した。
【0093】
アクリルプレポリマーP−1は数平均分子量3100、重量平均分子量4340、分子量分布1.40、重合率96%であった。
【0094】
(アクリル共重合体AC−2の製造)
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、アクリルプレポリマーP−1を300g、アクリル酸n−ブチル700gを仕込み、95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリル共重合体AC−2を製造した。
【0095】
アクリル共重合体AC−2は、数平均分子量10200、重量平均分子量17500、分子量分布1.72、重合率98%であった。
【0096】
アクリルプレポリマーP−1およびアクリル共重合体AC−2の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体の製造は何らの問題なく安全であった。
【0097】
実施例3
(アクリルプレポリマーP−2の製造)
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル800g、α−メチルスチレンダイマー190g(0.805モル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル19.7g(0.120モル)(α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたとき、2,2−アゾビスイソブチロニトリルのモル数は0.149モルである。)を仕込み、30分間で95℃に昇温した。この後、重合率が95%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリルプレポリマーP−2を製造した。
【0098】
アクリルプレポリマーP−2は、数平均分子量3100、重量平均分子量4340、分子量分布1.40、重合率96%であった。
【0099】
(アクリルプレポリマーP−3の製造)
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、アクリルプレポリマーP−2を200g、アクリル酸n−ブチル600gを仕込み、95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリルプレポリマーP−3を製造した。
【0100】
アクリルプレポリマーP−3は数平均分子量9300、重量平均分子量16300、分子量分布1.75、重合率98%であった。
【0101】
(アクリル共重合体AC−3の製造)
アクリルプレポリマーP−3を製造したフラスコにメタクリル酸ベンジル40g、メタクリル酸n−ブチル160gを仕込み、95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリル共重合体AC−3を製造した。
【0102】
アクリル共重合体AC−3は、数平均分子量12300、重量平均分子量19100、分子量分布1.55、重合率98%であった。
【0103】
アクリルプレポリマーP−2、アクリルプレポリマーP−3およびアクリル共重合体AC−3の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体の製造は何らの問題なく安全であった。
【0104】
実施例4
(アクリルプレポリマーP−4の製造)
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル655g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸15g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル80g、α−メチルスチレンダイマー190g(0.805モル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル19.7g(0.120モル)(α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたとき、2,2−アゾビスイソブチロニトリルのモル数は0.149モルである。)を仕込み、30分間で95℃に昇温した。この後、重合率が95%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリルプレポリマーP−4を製造した。
【0105】
アクリルプレポリマーP−4は、数平均分子量3300、重量平均分子量4500、分子量分布1.36、重合率96%であった。
【0106】
(アクリルプレポリマーP−5の製造)
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、アクリルプレポリマーP−4を200g、アクリル酸n−ブチル600gを仕込み、95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリルプレポリマーP−5を製造した。
【0107】
アクリルプレポリマーP−5は、数平均分子量9500、重量平均分子量17100、分子量分布1.80、重合率98%であった。
【0108】
(アクリル共重合体AC−4の製造)
アクリルプレポリマーP−3を製造したフラスコにメタクリル酸ベンジル40g、メタクリル酸n−ブチル131g、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート10g、メタクリル酸3g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル16gを仕込み、95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリル共重合体AC−4を製造した。
【0109】
アクリル共重合体AC−4は、数平均分子量13100、重量平均分子量21600、分子量分布1.65、重合率98%であった。
【0110】
アクリルプレポリマーP−4、アクリルプレポリマーP−5およびアクリル共重合体AC−4の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体の製造は何らの問題なく安全であった。
【0111】
実施例5
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、窒素ガスを吹き込みながら、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル800g、α−メチルスチレンダイマー47.5g(0.201モル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル4.9g(0.03モル)(α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたとき2,2−アゾビスイソブチロニトリルのモル数は0.149モルである。)を仕込み、フラスコ気相部の酸素濃度が0.5vol%以下であることを確認した。窒素ガスの吹き込みを止め、酸素濃度を5vol%に調節した窒素ガス/空気を吹き込み、気相部の酸素濃度が3vol%以上であることを確認した。
【0112】
30分間で95℃に昇温した。この後、重合率が98%以上になるまで(約5時間)重合を行い、アクリル共重合体AC−5を製造した。
【0113】
アクリル共重合体AC−5は、数平均分子量12800、重量平均分子量19200、分子量分布1.50、重合率98%であった。
【0114】
アクリル共重合体AC−5の製造中、異常な重合反応、急激な発熱等は見られなかった。アクリル共重合体の製造は何らの問題なく安全であった。また、製造中、気相部やフラスコ壁での重合も見られず、一段と安全な製造方法であった。
【0115】
比較例1
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル800g、2,2−アゾビスイソブチロニトリル4.9g(0.03モル)を仕込み、30分間で95℃に昇温を行い、アクリル共重合体の製造を試みた。
【0116】
昇温途中(50℃位)から、急激に重合が始まり、制御不可能な発熱のため、アクリル共重合体を製造することができなかった。
【0117】
比較例2
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル40g、メタクリル酸n−ブチル160gを仕込み、95℃に昇温した。メタクリル酸ベンジル160g、メタクリル酸n−ブチル640g、2,2−アゾビスイソブチロニトリル4.9g(0.03モル)の混合溶液を3時間で滴下し、アクリル共重合体の製造を試みた。
滴下開始数分後(5分位)で急激に重合が始まり、制御不可能な発熱のため、アクリル共重合体を製造することができなかった。
【0118】
比較例3
窒素ガス導入管、還流冷却器、撹拌装置、アクリル単量体仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、メタクリル酸ベンジル200g、メタクリル酸n−ブチル800g、α−メチルスチレンダイマー47.5g(0.201モル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル39.6g(0.241モル)(α−メチルスチレンダイマーのモル数を1.0モルとしたとき2,2−アゾビスイソブチロニトリルのモル数は1.20モルである。)を仕込み、
30分間で95℃に昇温した。
【0119】
昇温終了後から、急激な重合反応の進行により、発熱制御、除熱が不能となり、アクリル共重合体を製造することができなかった。
【0120】
参考例
(アクリル共重合体の試験結果)
アクリル共重合体AC−4を使用し、接着剤を作製、試験を行った。接着剤の配合処方は次の通りである。接着剤は、各原料を容器に計量後、「マゼルスター KK−100」(クラボウ製攪拌脱泡装置)で攪拌、混合、脱泡し製造した。
【0121】
(1)接着剤の配合処方
1.主剤
a.アクリル共重合体AC−4 25g
b.ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート 44g
c.エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート 20g
(「NKエステル BPE−200」(新中村化学工業の製品)
d.メタクリル酸 3g
e,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 8g
f.クメンハイドロパーオキサイド 5g
合 計 105g
2.硬化剤
a.アクリル共重合体AC−4 25g
b.ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート 44g
c.エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレート 20g
(「NKエステル BPE−200」(新中村化学工業の製品)
d.メタクリル酸 3g
e,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 8g
f.エチレンチオ尿素 2g
合 計 102g 。
【0122】
(2)試験方法
接着剤の試験は、アルミニウムテストピース(JIS A−2017P:1999)を使用し、JIS K 6850:1999にしたがって引張剪断強度を測定した。
【0123】
接着は、被着体のアルミニウムの一方に主剤を膜厚が約200μmになるよう塗布し、アルミニウムの他方に硬化剤を膜厚が約200μmになるよう塗布した後、接着剤塗布面を貼り合わせ、30℃で30分間接着剤の硬化を行った後、23℃で試験を行った。
【0124】
(3)試験結果
試験を行った結果、引張剪断強度は23MPaであった。構造接着剤として適用できる良好な接着性を発揮した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式のα−メチルスチレンダイマー
【化1】

1.0モルに対し、0.02〜1.00モルの重合開始剤を使用して、アクリル単量体のラジカル重合を行い、分子中に下記構造式で示される化学構造
【化2】

および、下記構造式で示される化学構造
【化3】

(ここで、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を有するアクリル共重合体を製造するアクリル共重合体の製造方法。
【請求項2】
下記構造式で示されるアクリル単量体(a)
【化4】

を含むアクリル単量体がラジカル共重合したアクリルプレポリマーの存在下で、下記構造式で示されるアクリル単量体(b)
【化5】

(ここで、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を含むアクリル単量体のラジカル共重合を行う請求項1に記載のアクリル共重合体の製造方法。
【請求項3】
下記構造式で示されるアクリル単量体(a)
【化6】

を含むアクリル単量体がラジカル共重合したアクリルプレポリマー(1)の存在下で、下記構造式で示されるアクリル単量体(b)
【化7】

(ここで、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、炭素原子数1〜8個のアルキル基を表す。)
を含むアクリル単量体がラジカル共重合してアクリルプレポリマー(2)を製造し、さらに、アクリルプレポリマー(2)の存在下で、下記構造式で示されるアクリル単量体(a)
【化8】

を含むアクリル単量体のラジカル共重合を行う請求項1に記載のアクリル共重合体の製造方法。
【請求項4】
アクリル共重合体が、塊状ラジカル共重合で製造される請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2010−6966(P2010−6966A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168487(P2008−168487)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】