説明

アクリル樹脂成型品の製造方法

【課題】多様な筒形状のアクリル樹脂成型品を製造できる方法を提供する。
【解決手段】アクリル樹脂成型品の製造方法は、円筒状のアクリル樹脂パイプ10を加熱炉に入れて加熱する加熱ステップと、加熱ステップで加熱したアクリル樹脂パイプ10を、所定形状のキャビティ45を有する成形型40に、両端部12が保持された状態にセットする型セットステップと、型セットステップで成形型40にセットしたアクリル樹脂パイプ10にガスを注入して、成形型40のキャビティ45の形状に沿うように膨張させるガス注入ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル樹脂成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金型を用いた樹脂成型品の製造方法の改良について種々の提案がなされている(例えば、特許文献1及び2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−162198号公報
【特許文献2】特開2008−93241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、多様な筒形状のアクリル樹脂成型品を製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアクリル樹脂成型品の製造方法は、
円筒状のアクリル樹脂パイプを加熱炉に入れて加熱する加熱ステップと、
上記加熱ステップで加熱したアクリル樹脂パイプを、所定形状のキャビティを有する成形型に、両端部が保持された状態にセットする型セットステップと、
上記型セットステップで成形型にセットしたアクリル樹脂パイプにガスを注入して、該成形型のキャビティの形状に沿うように膨張させるガス注入ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予め加熱したアクリル樹脂パイプを成形型にセットしてガスを注入することにより、多様な筒形状のアクリル樹脂成型品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】アクリル樹脂パイプの斜視図である。
【図2】加熱ステップの説明図である。
【図3】型セットステップの説明図である。
【図4】(a)及び(b)はガス注入ステップの説明図である。
【図5】アクリル樹脂パイプの開口を封じる方法を示す説明図である。
【図6】アクリル樹脂成型品の斜視図である。
【図7】アクリル樹脂成型品の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法は、例えば、筒形状のランプシェード等を製造するものである。
【0010】
<準備工程>
本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法では、成形材料として、図1に示すような円筒状のアクリル樹脂パイプ10を用いる。
【0011】
ここで、アクリル樹脂パイプ10は、例えば、長さが500〜1000mm、外径が50〜200mm、内径が44〜194mm、及び肉厚が2〜5mmである。具体的には、市販のアクリル樹脂パイプ10としては、瑞穂化成社製やナック・ケイ・エス社のアクリルパイプ等が挙げられる。
【0012】
<加熱ステップ>
本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法では、図2に示すように、アクリル樹脂パイプ10を加熱炉20に入れ、支持部材で両端部12を支持して加熱する。このとき、アクリル樹脂パイプ10が成型可能となるように可塑化する。
【0013】
ここで、加熱炉20の炉内設定温度は240〜260℃とすることが好ましく、250℃とすることがより好ましい。また、このときの加熱炉20内でのアクリル樹脂パイプ10の温度は100〜130℃とすることが好ましく、120℃とすることがより好ましい。
【0014】
加熱炉20内でのアクリル樹脂パイプ10の保持時間は4〜8分とすることが好ましく、5分とすることがより好ましい。
【0015】
また、この加熱ステップにおいてアクリル樹脂パイプ10の中央の成型予定部分11以外の両端部12が熱により変形するのを規制する観点からは、加熱炉20に入れる前に、アクリル樹脂パイプ10の両端部12にそれぞれ放熱用マスキング31を設けておくことが好ましい。放熱用マスキング31としては、例えば、不燃性繊維(例えば帝人社製のメタアラミド繊維、商品名:コーネックス)等の帯状布が挙げられる。放熱用マスキング31を設ける幅は例えば40〜50mmである。
【0016】
アクリル樹脂パイプ10の形状を保持すると共に均一に加熱する観点からは、アクリル樹脂パイプ10を、加熱炉20内で水平に保持して軸回転させることが好ましい。その回転速度は毎分10〜20回転とすることが好ましい。
【0017】
<型セットステップ>
本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法では、図3に示すように、加熱ステップで加熱したアクリル樹脂パイプ10を速やかに成形型40にセットする。
【0018】
ここで、成形型40は、例えば、上型41及び下型42に分割可能に構成されており、一方端に、アクリル樹脂パイプ10の一端を外部に露出させるように保持する一端保持部43が構成されていると共に、他方端に、アクリル樹脂パイプ10の他端を保持する他端保持部44が構成されている。また、成形型40は、アクリル樹脂パイプ10の中央の成型予定部分11に対応して、所定形状のキャビティ45が形成されている。従って、このとき、アクリル樹脂パイプ10は、成形型40内において、一端が外部に露出した状態で一端保持部43に保持され、また、他端が他端保持部44に保持され、そして、それらの間の成型予定部分11がキャビティ45の中央に位置付けられた状態となる。
【0019】
<ガス注入ステップ>
本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法では、図4(a)に示すように、型セットステップで成形型40にセットしたアクリル樹脂パイプ10にガスを注入する。このとき、図4(b)に示すように、アクリル樹脂パイプ10の成型予定部分11が成形型40のキャビティ45の形状に沿うように膨張する。
【0020】
ここで、アクリル樹脂パイプ10に注入するガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスの他、空気も挙げられる。ガスは、単一種のガスであってもよく、また、空気のような混合ガスであってもよい。
【0021】
アクリル樹脂パイプ10に注入するガスの温度は20〜40℃とすることが好ましい。
【0022】
アクリル樹脂パイプ10に注入するガスの圧力は294〜490kPaとすることが好ましい。
【0023】
成形型40の温度は60〜80℃とすることが好ましく、80℃とすることがより好ましい。
【0024】
アクリル樹脂パイプ10内の圧力を容易に高めることができるという観点からは、加熱ステップで加熱炉20に入れる前の段階で、アクリル樹脂パイプ10の一方端の開口をガス注入孔52を有するように封じ、且つ他方端の開口を密封することが好ましい。具体的には、図5に示すように、アクリル樹脂パイプ10の一方端に、ガス注入孔52が形成されたアクリル樹脂円板51を接着剤を介して接着することにより開口を封じ、同様に、アクリル樹脂パイプ10の他方端にアクリル樹脂円板51を接着剤を介して接着することにより開口を封じればよい。アクリル樹脂円板51は、アクリル樹脂パイプ10の外径と同一乃至それよりも大きい外径を有し、そのためアクリル樹脂パイプ10の端面に当接するように設けられてもよく、また、アクリル樹脂パイプ10の内径と同一の外径を有し、そのためアクリル樹脂パイプ10の開口に内嵌めされるように設けられてもよい。アクリル樹脂円板51の厚さは例えば3〜5mmである。ガス注入孔52の孔径は例えば6〜10mmである。接着剤は、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂接着剤等の熱硬化性樹脂接着剤が好ましい。
【0025】
<脱型ステップ>
本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法では、成型予定部分11が成形型40のキャビティ45の形状に沿うように膨張して所定の形状に形成されたアクリル樹脂パイプ10を成形型40から脱型する。なお、脱型前に、成形型40を空冷或いは水冷し、また、アクリル樹脂パイプ10内に冷却ガスを注入することによりアクリル樹脂パイプ10の冷却を行ってもよい。
【0026】
そして、脱型したアクリル樹脂パイプ10から両端部12の余長部を切断して、図6に示すようなアクリル樹脂成型品Aを得る。
【0027】
以上の本実施形態に係るアクリル樹脂成型品Aの製造方法によれば、予め加熱したアクリル樹脂パイプ10を成形型40にセットしてガスを注入することにより、図6に示すような形状の他、図7に示すような断面略矩形の角柱状のもの等、多様な筒形状のアクリル樹脂成型品Aを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明はアクリル樹脂成型品の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0029】
A アクリル樹脂成型品
10 アクリル樹脂パイプ
11 成型予定部分
12 端部
20 加熱炉
21 支持部材
31 放熱用マスキング
40 成形型
41 上型
42 下型
43 一端保持部
44 他端保持部
45 キャビティ
51 アクリル樹脂円板
52 ガス注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のアクリル樹脂パイプを加熱炉に入れて加熱する加熱ステップと、
上記加熱ステップで加熱したアクリル樹脂パイプを、所定形状のキャビティを有する成形型に、両端部が保持された状態にセットする型セットステップと、
上記型セットステップで成形型にセットしたアクリル樹脂パイプにガスを注入して、該成形型のキャビティの形状に沿うように膨張させるガス注入ステップと、
を備えたアクリル樹脂成型品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたアクリル樹脂成型品の製造方法において、
上記加熱ステップで加熱炉に入れる前のアクリル樹脂パイプの両端部にそれぞれ放熱用マスキングを設けるアクリル樹脂成型品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたアクリル樹脂成型品の製造方法において、
上記加熱ステップで加熱炉に入れる前のアクリル樹脂パイプの一方端の開口をガス注入孔を有するように封じ、且つ他方端の−開口を密封するアクリル樹脂成型品の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたアクリル樹脂成型品の製造方法において、
上記加熱ステップで、アクリル樹脂パイプを、加熱炉内で水平に保持して軸回転させるアクリル樹脂成型品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−73397(P2011−73397A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229543(P2009−229543)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509274337)セイショウ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】