説明

アクリル樹脂組成物

アクリル樹脂並びに、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む組成物。該組成物は、シートを形成するのに使用するか、または接着剤としての、特には感圧接着剤、嫌気性接着剤および反応性熱溶融性接着剤として使用するのに適切である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリル樹脂および衝撃改質剤を含む組成物に関し、そして特にシートの形態での、または接着剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は広い範囲の用途に用いられているが、構造材料、被覆および接着剤としてのアクリル系樹脂の直接の使用は、その低い耐衝撃性のために制限されてきた。
【0003】
しかしながら、ゴム弾性体または衝撃改質剤をアクリルポリマーのマトリックスに組み込むことが、ポリマーの機械的な性能を高めることが示されてきた。特に、コアシェル物質の導入が、強化アクリルポリマーの製造に用いられてきた。この形のポリマー混合物では、荷重はその構造のガラス質の部分によって負担され、そして破壊エネルギーは分散したゴム相で吸収および分散され、エネルギーが分散する間にゴム相はひび割れそして変形する。強化アクリルポリマーを開発するために更なる技術がまた用いられている。これらの系は、ゴム強化アクリル網目構造(networks)を製造するのに相分離現象を用いている。この方法は、従来のコアシェルに、強化された特性を与えることが示されており、それは特に網目構造をアクリル相中に共有結合でグラフトするように作ることができるからである。
【0004】
不幸にも、合成ゴムの成分は毒性である可能性があり、そして環境上の理由から、これらの物質を使用しないことが好ましい。合成ゴムはまた、高粘性を有しており、そのことがアクリル樹脂の取扱いや成形において困難をもたらす可能性がある。更に、合成ゴムを含むアクリル樹脂の水分の吸収は、熱的不安定をもたらす可能性のある問題となる場合がある。これらの物質は、アルカリ金属や塩化物イオンによるイオン性の汚染を被る可能性があり、例えば、アクリル樹脂が電気部品に用いられる場合には、それは腐食をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、アクリル樹脂には、強化された靱性、柔軟性および/または耐湿性を示すことが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
我々はここに、驚くべきことに、前記の課題の少なくとも1つを軽減するか、または実質的に解決するアクリル樹脂組成物を見出した。
【0007】
その結果、本発明は、アクリル樹脂並びに少なくも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、アクリル樹脂並びに少なくも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む接着剤を提供する。
【0009】
本発明は更に、アクリル樹脂並びに少なくも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む組成物の接着剤としての使用を提供する。
【0010】
本発明は更に、アクリル樹脂並びに少なくも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含むシートを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
アクリル樹脂は、好ましくは1種またはそれ以上のアクリル単量体単位を含む組成物である。適切なアクリル単量体としては、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルが挙げられ、特にアルキル基が10以下の、より好ましくは6以下の炭素原子を含む、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、へキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチルおよびn−オクチルであるアルキルエステルである。特に好ましい実施態様では、前記の単量体のいずれか2種またはそれ以上の混合物が用いられる。好ましい混合物は、アクリル酸アルキル、好ましくはアクリル酸エチルおよび/またはアクリル酸ブチルを、メタクリル酸アルキル、好ましくはメタクリル酸メチルと共に含んでいる。アクリル酸エステル単量体、好ましくはアクリル酸アルキルは、0〜100モル%、より好ましくは10〜90モル%、特には20〜80モル%、そしてとりわけ30〜70モル%の範囲で存在する。同様に、メタクリル酸エステル単量体、好ましくはメタクリル酸アルキルは、0〜100モル%、より好ましくは10〜90モル%、特には20〜80モル%、そしてとりわけ30〜70モル%の範囲で存在する。存在するメタクリル酸エステル単量体の量は、好ましくはアクリル酸エステル単量体の量を、通常10モル%超、より好ましくは15モル%超、そして特に好ましくは20モル%超上回っている。
【0012】
アクリル樹脂はまた、他の単量体を、好ましくは必要に応じて、より好ましくは前記のアクリル酸またはメタクリル酸またはそれらのエステルに加えて含んでいてもよい。適切な物質としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロゲン置換アクリロニトリル、ハロゲン置換メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N‐メチロールメタクリルアミド、N−エタノールメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ターシャリブチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、イタコン酸、イタコン酸無水物およびイタコン酸の半エステルが挙げられる。
【0013】
他の単量体としては、好ましくは必要に応じて酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニルおよび安息香酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルピリジン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、マレイン酸、無水マレイン酸、ブタジエン、スチレンおよびスチレンの誘導体、例えばクロロスチレン、ヒドロキシスチレンおよびアルキル基が1〜10の炭素原子を含むアルキル化スチレン、が挙げられる。
【0014】
アクリル樹脂は、少なくとも1種のアクリル酸エステル単量体から形成された、ホモオリゴマーもしくはコオリゴマーまたは単独重合体もしくは共重合体またはそれらの混合物であることができる。
【0015】
ポリメチルメタクリレートは、シートを、特に熱可塑性シートを、そしてとりわけキャストシートの形態で、形成するのに好ましい。シートは好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは1〜20mm、特には2〜10mm、そしてとりわけ3〜7mmの範囲の厚さを有している。
【0016】
接着剤の用途では、用いられるオリゴマーの、もしくはポリマーのアクリル樹脂は、好ましくは500〜200000、より好ましくは2000〜50000、特には5000〜25000、そしてとりわけ8000〜15000の範囲の数平均分子量を有している。
【0017】
シートの用途では、用いられるポリマーのアクリル樹脂は、好ましくは5000〜500000、より好ましくは10000〜100000、特には20000〜50000、そしてとりわけ30000〜40000の範囲の数平均分子量を有している。
【0018】
本発明で用いられる衝撃改質剤は、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/もしく二量体脂肪族ジオールなどを含むか、またはそれらから形成される。用語の二量体脂肪酸は、当技術分野においてよく知られており、一価もしくは多価不飽和脂肪酸および/またはそれらのエステルの二量化生成物を表している。好ましい二量体脂肪酸は、C10〜C30、より好ましくはC12〜C24、特にはC14〜C22、そしてとりわけC18アルキル鎖の二量体である。最適な二量体脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、およびエライジン酸の二量化生成物が挙げられる。天然脂肪および天然油、例えばひまわり油、大豆油、オリーブ油、菜種油、綿実油およびトールオイルの加水分解で得られる不飽和脂肪酸混合物の二量化生成物もまた用いることができる。例えばニッケル触媒を用いて水素化された二量体脂肪酸もまた用いることができる。
【0019】
二量体脂肪酸に加えて、二量化は通常、さまざまな量のオリゴマー脂肪酸(いわゆる三量体)および単量体脂肪酸(いわゆる単量体)の残渣、またはそれらのエステルの存在をもたらす。単量体の量は、例えば蒸留によって低減することができる。本発明で用いられる特に好ましい二量体脂肪酸は、50質量%よりも多い、より好ましくは70質量%よりも多い、特には85質量%よりも多い、そしてとりわけ94質量%よりも多いジカルボン酸(もしくは二量体)含量を有している。三量体含量は、好ましくは50質量%未満、より好ましくは1〜20質量%、特には2〜10質量%、そしてとりわけ3〜6質量%の範囲である。単量体含量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは0.1〜3質量%、特には0.3〜2質量%、そしてとりわけ0.5〜1質量%の範囲である。
【0020】
二量体脂肪族ジオールは、対応する二量体脂肪酸の水素化によって生成することができる。上記の二量体脂肪酸についてと同様の選好を、衝撃改質剤の対応する二量体脂肪族ジオール成分にも適用する。
【0021】
衝撃改質剤は、好ましくは、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールなどから形成されたオリゴマーまたはポリマー(これ以降ポリマーと表記する)であり、すなわちその反応残渣を含んでいる。適切なポリマーとしては、ポリエステル、ポリエステルアミドおよびポリウレタンが挙げられる。ポリマー衝撃改質剤は、好ましくはアクリル酸エステル末端のものである。衝撃改質剤の機能は、耐湿性を与え、そしてアクリル樹脂組成物の柔軟性および/または靱性を向上させることである。
【0022】
衝撃改質剤の数平均分子量は、ここで記載した方法で測定したもので、好ましくは500〜10000、より好ましくは700〜5000、特に1000〜3000、そしてとりわけ1500〜2500の範囲である。
【0023】
衝撃改質剤は、ここで記載した方法で測定したもので、好ましくは200000mPa・s未満、より好ましくは5000〜100000mPa・s、特に10000〜50000mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0024】
本発明の好ましい実施態様では、衝撃改質剤はオリゴエステルまたはポリエステル(これ以降ポリエステルと表示する)を含んでいる。ポリエステルは通常は、少なくとも1種のポリカルボン酸および少なくとも1種のポリオールの間の縮合反応で生成される。ジカルボン酸およびジオールが好ましい。本発明で用いられるポリエステル衝撃改質剤の好ましいジカルボン酸成分は、上記のように少なくとも1種の二量体脂肪酸を含んでいる。
【0025】
ポリエステル衝撃改質剤のジカルボン酸成分はまた、二量体でない脂肪酸を含んでいてもよい。二量体でない脂肪酸は脂肪族でも芳香族でもよく、そしてジカルボン酸およびそのエステル、好ましくはそれらのアルキルエステル、好ましくは線状ジカルボン酸で、2〜20、より好ましくは6〜12の範囲の炭素数の炭素鎖を有するカルボキシル基を末端に有するもの、例えばアジピン酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼアリン酸、セバシン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸およびそれらの更に高級の同属体である。アジピン酸が特に好ましい。単量体のジカルボン酸無水物、例えば無水フタル酸、無水イソフタル酸および無水テレフタル酸をまた、二量体でない脂肪酸成分として、またはその一部として用いることができる。
【0026】
ポリエステルのポリオール成分は、適切には低分子量のものであり、好ましくは50〜650、より好ましくは70〜200、そして特には100〜150の範囲である。
【0027】
ポリオール成分は、ペンタエリスリトールなどのポリオール、グリセロールおよびトリメチロールプロパンなどのトリオール、そして好ましくはジオールを含んでいてもよい。適切なジオールとしては、直鎖脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、分岐ジオール、例えばネオペンチルグリコール、3−メチルペンタングリコール、1,2−プロピレングリコール、および環状ジオール、例えば1,4−ビス(ヒドロキシルメチル)シクロヘキサンおよび(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール)が挙げられる。1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコールおよびネオペンチルグリコールが好ましく、そしてネオペンチルグリコールが特に好ましいジオールである。
【0028】
ポリオール成分もまた、上記のように二量体脂肪族ジオールを含んでいてもよい。上記の二量体脂肪酸についてと同様の選好を、ポリエステルの対応する二量体脂肪族ジオール成分に適用する。
【0029】
ポリエステル衝撃改質剤は、好ましくはジカルボン酸とジオールのモル比で1:1.0〜5.0、より好ましくは1:1.2〜3.0、特には1:1.4〜2.0、そしてとりわけ1:1.5〜1.7の範囲の出発物質から形成される。このようにして、両末端がOH基であるポリエステルが得られるように、ジオールは好ましくはモル過剰で存在する。
【0030】
ポリエステルは、好ましくは500〜3500、より好ましくは1600〜2400、特には1800〜2200、そしてとりわけ1900〜2100の範囲の数平均分子量を有する。
【0031】
ポリエステルは好ましくは、−60〜0℃、より好ましくは−50〜−5℃、特には−40〜−10℃、そしてとりわけ−35〜−15℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有している。
【0032】
ポリエステルは適切には、10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜80mgKOH/g、より好ましくは30〜70mgKOH/g、特には35〜55mgKOH/g、そしてとりわけ40〜50mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価(ここで記載したように測定した値)を有している。更に、ポリエステルは好ましくは、2未満、より好ましくは1.5未満、特に好ましくは1.0未満、そしてとりわけ0.6未満の酸価(ここで記載したように測定した値)を有している。
【0033】
衝撃改質剤はまた、上記で明示しようなポリエステルとポリアミドの、ブロック、ランダムまたはグラフト共重合体であってもよい。本発明の1つの実施態様では、衝撃改質剤は共重合体、より好ましくはランダム共重合体で、共重合体の重量基準で、ポリエステルとポリアミドが10〜95%:5〜90%、より好ましくは40〜90%:10〜60%、特には60〜80%:20〜40%、そしてとりわけ67〜73%:27〜33%の範囲の比率で存在するポリエステルとポリアミドを含んでいる。
【0034】
あるいは、衝撃改質剤はポリウレタンであってもよく、例えば上記で明示したポリエステルから形成され、および/または、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/もしくは二量体脂肪族ジオールを鎖延長剤として用いることによって形成される。
【0035】
衝撃改質剤は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、特には15〜50質量%、そしてとりわけ20〜30質量%の範囲の二量体脂肪酸残渣および/または二量体脂肪族ジオールおよび/またはそれらの均等物の残渣を含んでいる。
【0036】
本組成物中に存在するアクリル樹脂と衝撃改質剤の質量比は、好ましくは0.2〜100:1、より好ましくは1〜50:1、特には1.5〜10:1、そしてとりわけ2〜4:1の範囲である。
【0037】
本発明の好ましい実施態様では、衝撃改質剤は、好ましくはポリエステルであり、アクリル単量体と反応してアクリル酸エステル末端の衝撃改質剤を形成する。
【0038】
衝撃改質剤にアクリル酸エステル末端基を形成するのに用いることができる適切な物質としては、アクリル酸クロリドおよびメタクリル酸クロリドが挙げられ、それらはアクリル酸エステル末端およびメタクリル酸エステル末端の衝撃改質剤をそれぞれもたらす。
【0039】
本発明の組成物は、2包装の形態であることができ、そして最終組成物は、アクリル樹脂と衝撃改質剤との単純な混合によって硬化させることができる。この組成物は、好ましくは適切な触媒を含んでおり、例えばアクリル樹脂の分野で知られているものであって、例えばアゾイソブチロニトリルまたは過酸化物触媒、例えばクメンヒドロパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、およびブタノンパーオキサイドを含んでいる。適切な促進剤もまた用いることができ、例えば過酸化物の作用を加速する。
【0040】
本組成物はまた、他の必要に応じた成分、例えば顔料、充てん剤、例えばヒュームドシリカ、または銀フレークを含んでもよい。
【0041】
あるいは、本組成物は、自由流動性の粘性の固体として現場で適用され、そして熱または光によって直接に硬化されてもよい。
【0042】
本発明の組成物の特別な利点は、硬化にあたって、衝撃改質剤の相分離が起こる可能性があり、それがアクリル樹脂マトリックスの内部に衝撃改質剤のドメインまたは粒子の形成をもたらす。
【0043】
この衝撃改質剤粒子は、好ましくは概ね球形であり、適切には平均アスペクト比d:d(ここでdおよびdはそれぞれ粒子の長さと幅(ここで記載した方法で測定したもの)である)が0.5〜1.5:1、好ましくは0.7〜1.3:1、より好ましくは0.8〜1.2:1、特には0.9〜1.1:1、そしてとりわけ0.95〜1.05:1の範囲の平均アスペクト比を有している。本発明の好ましい実施態様では、適切には粒子数で40%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは70%以上、特には80%以上、そしてとりわけ90%以上が、平均アスペクト比について上記に示した好ましい範囲内のアスペクト比を有している。
【0044】
衝撃改質剤粒子は好ましくは、500nm未満、より好ましくは20〜400nm、特には50〜300nm、そしてとりわけ100〜200nmの範囲の平均粒子径(ここで記載した方法で測定したもの)を有している。
【0045】
衝撃改質剤粒子の粒度分布はまた、本発明による、例えば硬化したアクリル樹脂組成物の最終の特性に重大な影響を及ぼす可能性がある。本発明の好ましい実施態様では、適切には粒子数で50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特には80%以上、そしてとりわけ85%以上が、平均粒径について上記に示した好ましい範囲内の粒径を有している。
【0046】
1つの実施態様では、ここで記載される本組成物は接着剤としての、特には感圧接着剤、嫌気性接着剤および反応性熱溶融性接着剤としての使用に適切である。感圧接着剤は、紙を、特には文房具用途において、接着するために用いることができる。嫌気性接着剤は、金属に、特には金属ボルトに、例えば自動車用途において、用いることができる。
【0047】
他の実施態様では、ここで記載される本組成物は、アクリルシート、特にキャストシートの形成における使用に適切である。
【0048】
本明細書では、次の試験方法が用いられている。
(i)数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
(ii)軟化点およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定法(DSC)によって、走査速度20℃/分で、メトラー(Mettler)DSC30を用いて測定した。
(iii)ヒドロキシル価は、試料1グラムの水酸基含量の当量の水酸化カリウムのmg数として定義され、そしてアセチル化とそれに続く過剰の無水酢酸の加水分解によって測定した。形成された酢酸は、続いて水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
(iv)酸価は、試料1グラム中の自由な脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義され、そして標準水酸化カリウム溶液での直接の滴定によって測定した。
(v)衝撃改質剤の粒径は、硬化したアクリルの試料を液体窒素中に浸漬し、ミクロトームによって薄片を調製し、そして走査電子顕微鏡法を実行することによって測定した。写真を適当な倍率、例えば各写真中に約50個の衝撃改質剤粒子が表示されるような倍率で制作した。最小で300個の粒子を、透明の寸法格子を用いて、手作業にて大きさで分類した。粒子の平均粒径、および粒径分布を上記の測定から計算した。更に、50以上の粒子の最大と最小の寸法から粒子のアスペクト比を測定した。あるいは、測定はコンピュータによる画像解析によってもできた。
(vi)粘度を、ブルックフィールド(Brookfield)RV粘度計(viscometer)で、軸(spindle)4番を用いて、20rpmで、25℃の温度において測定した。
(vii)ポリマー板(panel)の機械的特性または靱性を、単一の荷重速度で、23±2℃において、線形弾性破壊力学(LEFM)解析を用いて測定した。4つの材料特性を測定した、すなわちGc(エネルギーの面での破壊靱性)、Kc(強度の面での破壊靱性)、σy(引張りの降伏強度)およびE(曲げの弾性)である。脆い材料では降伏強度の値は引張りでは直接には測定できないので、圧縮で値を得て、そして次いで塑性係数(plasticity factor)1.3で割ることによって引張りの値に変換した。これらの4つの特性は多くの方法で関連付けられ、そしてKcまたはGcのいずれかは靱性を監視するのに用いることができる。しかしながら、Kcはそれだけでほとんど有用でなく、そして靱性を監視する更なる有用な方法は、DF(塑性率)を計算することであり、DFはKcを降伏強度と結びつけ、また塑性域寸法と関係する。これらの用語は下記のように定義される。
【0049】
【数1】

【0050】
【数2】

【0051】
【数3】

【0052】
ここで、
Gcは、新しい亀裂面積の生成(ΔA)における臨界歪エネルギー放出速度、
ΔUは、放出されたエネルギー、
Kcは、亀裂長さ(a)および亀裂応力(σF)をともなう、ノッチ付試験片の破壊の応力場強度因子の臨界値、および
Yは幾何学関数である。
【実施例】
【0053】
本発明は、以下の、限定する目的のものではない実施例によって説明される。
【0054】
例1
(a)メタクリル酸エステル化ポリエステル(methacrylated polyester)衝撃改質剤の調製
100gのプリプラスト(PRIPLAST)3197(登録商標、旧ユニケマ(Uniqema))(二量体脂肪酸および二量体脂肪族ジオールから形成されたOH末端ポリエステル)を圧平衡化(PE)滴下漏斗、磁気撹拌器、熱電対、氷浴および凝縮器を備えた、500mlの反応容器中に仕込んだ。400mlの無水ジクロロメタン及び13.1gのトリエチルアミン(25%モル過剰)を加え、そして混合物を完全に撹拌した。12.6gのメタクリル酸クロリド(25%過剰)、を25mlの無水ジクロロメタンとともに、PE滴下漏斗中に仕込み、またフラスコを窒素で充てんした。次いで、フラスコを0℃に冷却し、その後、30分間にわたってメタクリル酸クロリドを滴下して加えた。混合物が室温になるようし、また撹拌を24時間継続した。未精製の反応混合物の200mlずつの2つ部分を、300mlの重炭酸ナトリウムの飽和溶液でそれぞれ抽出し、その後300mlの蒸留水によって抽出した。次いで、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた生成物の全収率は98%であった。H−NMR測定から、純度は約98.5%と計算された。
(b)重合
単量体混合物を以下の処方を用いて調製した。
上記で生成したメタクリル酸エステル化ポリエステル(衝撃改質剤)30質量%
メタクリル酸イソボルニル(アクリル単量体)70質量%
アゾイソブチロニトリル(AIBN)(触媒)0.2質量%
【0055】
厚さ約3mmのポリマー板を、単量体混合物をガラス板の間で重合させることによって調製した。その手順は次の通りである。
(i)2枚のガラス板(10cm×10cm)の内面を離型フィルムで覆った。(ii)ゴムのガスケット(4mm厚)を1枚の板の外縁の周りに設置し、そして小さなダブルクリップ(fold-back clips)で所定の位置に挟んでとめた。(iii)1つの角に小さな開口を残した。(iv)次いで、この2枚のガラス板を挟んでとめ、その後、液体単量体混合物の注入によって空洞を満たした。(v)次いで、小さな開口を密封し、また挟んでとめ、そしてその後、このセルを60℃の水浴中で20時間硬化させた。(vi)次いで、浴の温度80℃に上げ、そして重合工程が完結するように6時間保持した。(vii)試験に先立って、結果として得られた板をガラス板の間から取り出した。(viii)次いで、ポリマー板を5cm×1cmの試験片に切り出し、それをポリマーの機械的性質を測定するのに用いた。その結果を表1に示した。
【0056】
例2
重合
単量体混合物を以下の処方を用いて調製した。
二量体ジオールジアクリレート(アクリル酸と二量体ジオールのエステル化によって調製した)(衝撃改質剤)30質量%
メタクリル酸イソボルニル(アクリル単量体)70質量%
アゾイソブチロニトリル(AIBN)(触媒)0.2質量%
ポリマー板を例1に記載したのと同様に調製し、測定した機械的性質および結果を表1に示した。
【0057】
例3
これは比較例であり、本発明によるものではない。
重合
単量体混合物を以下の処方を用いて調製した。
メタクリル酸イソボルニル(アクリル単量体)100質量%
アゾイソブチロニトリル(AIBN)(触媒)0.2質量%
ポリマー板を例1に記載したのと同様に調製し、測定した機械的性質および結果を表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
上記の試験は、本発明による組成物の改善された性質を明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂並びに、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂が少なくとも1種のアクリル単量体を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アクリル単量体がアクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルを含む請求項2記載の組成物。
【請求項4】
衝撃改質剤が700〜5000の範囲の分子量を有する請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
衝撃改質剤がポリエステルを含む請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
ポリエステルが1600〜2400の範囲の分子量を有する請求項5記載の組成物。
【請求項7】
衝撃改質剤が10質量%〜70質量%の範囲の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールの残渣を含む請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
衝撃改質剤がアクリル酸エステル末端である請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
衝撃改質剤相がアクリル樹脂マトリックスから硬化によって分離する請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
アクリル樹脂並びに、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む接着剤。
【請求項11】
アクリル樹脂並びに、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含む組成物の接着剤としての使用。
【請求項12】
アクリル樹脂並びに、少なくとも1種の二量体脂肪酸および/または二量体脂肪族ジオールを含む衝撃改質剤を含むシート。
【請求項13】
アクリル樹脂がポリメチルメタクリレートである請求項12記載のシート。

【公表番号】特表2009−513765(P2009−513765A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537186(P2008−537186)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003956
【国際公開番号】WO2007/049028
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(506352278)クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー (24)
【出願人】(500154113)ユニケマ ベスローテン フェンノートシャップ (7)
【Fターム(参考)】