説明

アクリル系ポリマーの水性分散液で被膜した放出制御型製剤及びその方法

【課題】中に含まれる活性剤の放出速度を抑制することができ、加速化された貯蔵条件下に曝した後でも安定した活性剤の溶出が可能である固体の放出抑制型製剤の提供。
【解決手段】 全身活性治療剤、局所活性治療剤、消毒及び衛生剤、清浄剤、芳香剤及び肥料から選択される活性剤を含有する基質を、有効量の可塑化された疎水性アクリル系ポリマーの水性分散液で被覆した後、該分散液のガラス転移点より高い温度で上記被覆を硬化させることから成る固体の放出制御型製剤の製法及びその放出制御型製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出抑制型の製剤としてその中に含まれる活性剤の安定した溶出速度を所定の貯蔵期間後も可能とする製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
全ての製剤の製造、規定検査及び承認の重要な点は、それらの長時間の安定性にある。特殊な投与製剤について得られた安定性のデータは、その保存期間に直接影響する。医薬投与製剤の安定性は、貯蔵した場合、すなわち、特別の容器及び環境で貯蔵した場合に、その物理的、化学的、微生物学的、治療的、及び毒物学的性質を維持することに関係する。安定性試験の要件は、たとえば、グッド・マニュファクチュアリング・プラクティスイズ(Good manufacturing Practices(GMPs))、ユー・エス・ピー(the U.S.P.)並びに、投与製剤の市場の承認が求められている国での規定要件で取り扱われている。米国においては、試験及び最終的には市場の請求、薬物または薬物製剤は、ニュー・ドラッグ・アプリケーション(New Drug Application(NDA)) 、簡易ニュー・ドラッグ・アプリケーション(Abbreviated New Drug Application(ANDA))、またはインヴェスチゲーショナル・ニュー・ドラッグ・アプリケーション(Investigational New Drug Application(IND)) をとおしてなされる。
【0003】
持続放出投与製剤に使用される薬剤は、その貯蔵中の物理的安定性に関して、しばしば特別の問題がある。たとえば、そのような製剤に使用されるワックスは、長期間放置することにより物理的な変質が起こることが知られており、従って、それらを安定化させるために、または変質が起こることを防止するために予防策を講じなければならない。脂肪及びワックス状物質は、精製した状態で使用した場合に、不安定な状態で結晶化することが知られており、製造時及び後の貯蔵中の安定性試験の間に有効性の度合いが予測不能な変動を引き起こしている。
【0004】
多くの場合、安定化された放出制御型製剤を得るためにある戦略が取られることが知られており、個々の試薬がそれらが製品中に導入される前に安定な形態にされたり、処理がこの状態を変化させないものであったり、追加の添加剤を加えて不安定さを減少したり、製品が最終的に完全になる前に安定な状態に到達させるために投与製剤の個々の薬剤を誘導したりすることによる等の方法がある。
【0005】
生成物の水分含量が生成物の安定性に影響することもまた認識されている。エチルセルロース等の重合性フィルムの水和レベルでの変化が、水の透過性及び薬剤の有効性を変えることができる。また、アラビアゴムのような結合剤は、水分及び熱にさらされた場合に溶解性が低くなることが知られている。しかしながら、生成物の水分含量は、処理方法における制御及び生成物の適正な包装により、かなり好結果に制御することができる。
【0006】
ある種のセルロース誘導体、ゼイン、アクリル樹脂、ワックス、高級脂肪酸アルコール及びポリ乳酸及びポリグリコール酸のような疎水性ポリマーは、放出制御型投与製剤を開発するために先行技術において使用されている。錠剤、カプセル、座剤、球剤、ビーズ、または小球剤のような放出制御型投与製剤を開発するためのそれらのポリマーを使用する方法は、それらの薬剤を放出制御マトリックス中に導入するか、或いは投与製剤の放出制御型被膜中にそれら薬剤のあるものを使用すること等がある。疎水性被膜は溶液、懸濁液または乾燥状態からそれぞれ塗布することが従来技術で知られている。放出制御型被膜に使用されている多くのポリマーは、水に対する溶解性が低いために、それらは通常、ポリマーを有機溶媒に溶解し、溶液を個々の薬品製剤(たとえば、ビーズまたは錠剤)に塗布し、そして溶媒を蒸発除去することにより適用される。
【0007】
疎水性ポリマーの水性分散液は、従来技術において、錠剤またはビーズの膜被覆のような審美的な理由でまたは味付けをする目的で医薬投与製剤を被覆するために使用されている。しかしながら、それらの投与製剤は、投与製剤中に含まれる活性薬剤の速放性投与剤に使用されている。
【0008】
疎水性被覆を調製する際に有機溶剤を使用することは、一般に、引火性、発癌性、環境問題、価格及び安全性に関する本来的な問題のために、好ましくないと考えられる。当業界においては、しかしながら、アクリル系ポリマーのような疎水性物質の水性分散液から誘導される放出制御型被覆を与えることが非常に望ましいと考えられている。
【0009】
活性剤の放出制御する為に、水性分散液から誘導される疎水性被覆に基づく多くの製剤が実験的に調製されているが、そのような製剤は、安定性の問題のために商業的に実用化できることが証明されていない。水性重合性分散液は、安定な放出制御型投与製剤を製造するために使用されるが、この製剤の製造は、むしろ水性重合性分散液の被膜を使用することにより遅延性能を得るよりも、製剤のマトリックス中にそれを導入する等の他の方法によってのみ可能である。
【0010】
数時間またはそれ以上に亘って活性剤の所望の放出パターンを得るために水性重合性分散液を使用して被覆した場合、当業界においては、溶解放出パターンが加齢(aging )により変化することが知られており、たとえば、最終被覆生成物は一定期間貯蔵され、その間、雰囲気条件を超える、上昇した温度及び/または湿度にさらされる。
【0011】
これは、最近、マンディ等(Munday 、 et al. 、 Drug Devel. and Indus. Phar. 、17 (15) 2135-2143 (1991)) に記載されており、それには温度及び相対湿度を変化させることによる、薬剤の放出速度についての、エチルセルロース及びPEG(2:1の比;総被覆量=3重量/重量%)、エチルセルロース及びオイドラギットL(Eudragit L 、商品名)(2:1の比;総被覆=3重量/重量%)及びオイドラギットRL(Eudragit RL、商品名)(被覆量=1.5 重量/重量%)で被覆したテオフィリン小錠剤フィルムの貯蔵の効果を報告されている。試料は、28℃、35℃及び45℃で、55〜60%の間に維持された相対湿度(RH)で等温貯蔵され、45℃、55%RHで24時間、次いで28℃及び20%RHで24時間、そして5℃及び10%RHで24時間のサイクル条件下で、そしてそのサイクルを繰り返した後、条件をそれぞれ24時間で、45℃及び55%RH並びに28℃及び0%RHに変更して行われる。上記した強制条件下における貯蔵によりもたらされる加齢処理は、重合性フィルムの性質に関係なく、溶解を妨げた。放出速度の最も大きな減少は塗装した後、最初の21日(等温貯蔵)に起こると言われている。
【0012】
この不安定性の問題は、ポリマーを有機溶媒溶液で適用した場合には存在しないことが知られているが、種々の貯蔵条件において安定であるそのような水性アクリル系ポリマー分散液から調製された塗膜を利用した放出制御型製剤を得ることは不可能であった。
【0013】
特に、ローム・ファーマ(Rohm Pharma GmbH)からオイドラギット(Eudragit)の商品名で市販されているもののような商業的に入手可能なアクリル系ポリマーの放出制御型塗膜は、推奨される硬化条件である、45℃で2時間の条件で硬化した場合に、安定ではないことが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故、本発明の目的は、活性剤、たとえば、治療活性剤、殺菌剤、清浄剤、消毒剤及び肥沃剤から成る基質を、疎水性アクリル系ポリマーの水性分散液で被覆することにより、加速化された(accelerated )貯蔵条件を含む種々の貯蔵条件にさらされたとしても、使用環境に置かれた場合に活性剤の安定な溶解または他の放出パターンとなるような、放出制御型製剤を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、活性剤から成る複数の不活性ビーズ、及び活性剤を含有する核から成る放出制御型錠剤から成り、ビーズまたは錠剤核は疎水性ポリマーの水性分散液で被覆されており、加速化された貯蔵条件にさらされたとしても再現可能で、安定な溶解を与える放出制御型製剤、並びにその製造方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、「強制した」または加速化された貯蔵条件を含む様々な貯蔵条件にさらされた後の製剤の溶解パターンを比較した場合に、溶解中の如何なる時点においても、放出する活性剤の総量の約15%超えない、生体外(in-vitro)の溶解におけるバンド領域(band range)を与える疎水性ポリマーの水性分散液を塗布した活性剤を含有する基質から成る放出制御型製剤を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、加速化された貯蔵条件にさらしたとしても、溶解の有効期限が米国食品医薬品局(FDA) のような政府規制機関に認可されるような放出制御が、製剤中に含有される活性剤の安定な溶解を与える被覆であるアクリル系ポリマーのような疎水性ポリマーの水性分散液を製剤に被覆することによって得られるような放出制御型製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
それらの及び他の目的は、その一部は、使用環境下において、所望の効果を与えるに十分な量の活性剤から成る基質から成り、該基質は、該製剤が雰囲気液体にさらされた場合に、該活性剤の放出制御が得られるような十分な量の可塑化された医薬的に許容可能な疎水性ポリマーの水性分散液で被覆されており、加速化された貯蔵条件にさらされた後にも変化しない活性剤の安定な溶解を与える被覆基質に到達する硬化の終点に達するまでの十分な時間、可塑化されたアクリル系ポリマーの水性分散液のガラス転移点よりも高い温度で硬化させたものである、放出制御型製剤に関する本発明により達成される。終点は、たとえば、硬化直後の製剤の溶解パターンと、37℃の温度及び80%の相対湿度で、または40℃の温度及び75%の相対湿度で1〜3カ月の加速化された貯蔵条件にさらした後の製剤の溶解パターンとを比較することにより決定される。好ましい実施態様において、基質は約2%〜約25%の付着重量で被覆される。
【0019】
他の好ましい実施態様において、被覆基質は、生体外(in-vitro)の溶解を行った場合、硬化後の該被覆基質の生体外(in-vitro)溶解と比較して、如何なる時間においても、放出する活性剤の総量の約15%を超える溶解曲線に沿って、変動しない量で活性剤を放出するものである。
【0020】
更なる他の実施態様において、硬化製剤は、加速化された貯蔵条件にさらした後に、変化せずに該活性剤の安定した溶解を与え、安定した溶解は、該製剤の有効期限についての米国食品医薬品局(the United States Food & Drug Administration)により適当と見なされるものである。
【0021】
他の好ましい実施態様は、活性剤の放出制御が得られるアクリル系ポリマーの水性分散液の有効量で被覆した基質から成る放出制御型投与製剤に関し、その製剤は加速化された貯蔵条件にさらした後に、貯蔵前に行った生体外(in-vitro)溶解と比較して、如何なる時間においても、放出する治療活性剤の総量の約20%を超えるまでの、変動しない量で治療活性剤を放出するものである。アクリル系ポリマーは、好ましくは胃腸管に行き渡っているpH条件によっても影響されない透過性を有している。
【0022】
他の実施態様において、被覆基質は、生体外(in-vitro)の溶解試験において、加速化された貯蔵条件にさらす前の溶解パターンと比較した場合に、如何なる時間においても加速化された貯蔵条件にさらした後に約20%よりも広くはないバンド領域を与えるものである。
【0023】
活性剤は全身活性治療剤、局所活性治療剤、消毒剤、清浄剤、芳香剤、肥料、消臭剤、染料、動物忌避剤、昆虫忌避剤、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、及び植物成長刺激剤を含む広い範囲の用途に用いられるが、これらには限定されない。
【0024】
本発明はさらに、該製剤を経口投与した場合に所望の治療効果を与えるに十分な量で、全身性活性治療剤を含有する基質から成る、固体の放出制御型経口投与製剤に関する。基質は可塑化アクリル系ポリマーの水性分散液で被覆されており、USPのパドル(Paddle)法またはバスケット(Basket)法で37℃において900mlの水性緩衝液(pHが1.6 〜7.2 の間)により100 rpmで測定した場合に、1時間後に約0%〜約42.5%(重量)の活性剤を放出し、2時間後に約5%〜約60%(重量)の活性剤を放出し、4時間後に約15%〜約75%(重量)の活性剤を放出し、8時間後に20%〜約90%(重量)の活性剤を放出するような、該活性剤の放出制御が得られるのに十分な時間、可塑化アクリル系ポリマーの水性分散液のガラス転移温度より高い温度で効果されるものである。被覆基質は、被覆基質を加速化された条件にさらした後に活性剤を放出する速度を、硬化直後に得られた放出速度と比較した場合に、安定な放出をする。投与製剤は、好ましくは、約24時間の治療硬化を与えるものである。本発明は、さらに、投与製剤の製造方法に関する。
【0025】
本発明は、また、活性剤から成る固体基質を調製し、該被覆基質を雰囲気液体にさらした場合に、該活性剤の所定の放出制御を得られるように、該基質を、可塑化アクリル系ポリマーの水性分散液の十分な量で被覆し、そして該被覆基質を、加速化された貯蔵条件にさらした後でも、該活性剤の溶解性が安定で、変わらない状態を与える、硬化の終点まで、可塑化アクリル系ポリマーの水性分散液のガラス転移温度よりも高い温度で該被覆基質を硬化することから成る活性剤の放出制御製剤を得る方法に関する。
【0026】
本発明は、さらに、上記した経口固体投与製剤で患者を治療する方法に関する。この方法において、本発明は、さらに、約12〜約24時間の間、所望の治療効果を得るために、硬化した被覆基質から成る経口固体投与製剤を患者に治療のために投与することから成る。特に好ましい実施態様において、本発明の経口固体投与製剤は、所望の治療効果を約24時間与える。
【0027】
本発明のある好ましい実施態様において、疎水性アクリル系ポリマーは、胃腸管に行き渡っているpH条件によっても影響されない透過性を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸のエステルの共重合物から成る。好ましくは、これらの共重合物は、さらに、塩として生じ、そしてラッカー物質の透過性に関係する、少量の第4級アンモニウム基を含有する。
【0028】
本発明は、固有の安全性の問題(引火性、発癌性、環境問題、費用、一般的な安全性)を有する有機溶媒の使用を避けられること、及び保存期間及び有効期限の延長を引き起こすであろう安全性が延長されることを含む、先行技術の被膜を超える多くの利益を提供するが、これらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明において、被膜として使用される疎水性アクリル系ポリマーの水性分散液は、活性剤の所望の放出制御を得るために、錠剤、球剤(またはビーズ)、小球剤、種剤、ペレット、イオン交換樹脂ビーズ、及び他の多種粒状系のような被覆基質が使用される。本発明により製造された粒剤、球剤、またはペレット等は、カプセル中、または他の適当な投与製剤中に存在することができる。本発明の錠剤は、球形、長円形、両凹形、半球形、正方形、長方形、五角形等の多角形等の、如何なる適当な形であってもよい。
【0030】
放出制御型製剤を得るために、約2〜約25%の付着重量レベルが得られるように、活性剤から成る基質を、疎水性アクリル系ポリマーの水性分散液の十分な量でオーバーコートすることが一般に必要であり、オーバーコートは、たとえば、活性剤の物理的性質及び所望の放出速度、水性分散液中への可塑化剤の添加及びその導入方法により、少なくても多くてもよい。発明のある実施態様において、放出制御型被膜は、たとえば、50%までの付着重量で基質に適用してもよい。
【0031】
本発明の硬化した、被覆基質は、室温において雰囲気湿度(たとえば、長期間(実際の時間)の試験)で長時間貯蔵した場合、及び加速化された貯蔵条件において試験した場合に安定な溶解パターン(たとえば、使用環境中への活性剤の放出)を与える。
【0032】
「安定な溶解パターン」及び「硬化の終点」という語は、本発明の目的のために、硬化した被覆基質を加速化された貯蔵条件下にさらした後でさえ、使用環境下に置かれた場合、硬化した被覆基質が活性剤の変化しない放出を再現性よく与える意味であると定義される。当業者は、「変化しない」(unchanged )という語により、それが所望の効果に関し、硬化した被覆基質製剤からの活性剤の放出について、意味のないと見なされる如何なる変化をも意味することが認識されている。薬学製剤については、安定性は、製剤の有効期限について、たとえば、米国の食品医薬品局(theFood & Drug Administration (FDA)) 等の規格機関により検査される。
【0033】
「加速化された(acceleraled )貯蔵条件」という句については、たとえば、上昇した温度及び/または上昇した湿度の貯蔵条件を意味する。好ましくは、「加速化された貯蔵条件」という語は、最終薬物製剤の規定の承認(たとえば、米国のFDAの承認)及び有効期限を得るために行われる、貯蔵条件を言う。
【0034】
「有効期限」という語は、製造物(たとえば、硬化した被覆基質)の包装されたバッチを、記載された条件下に貯蔵した場合に、仕様書の範囲内に止まると考えられる期限として示されるものであり、その期限の後は使用されるべきではないものである。
【0035】
「雰囲気流体」という語は、製剤を水溶液(たとえば、生体外(in-vitro)溶解)、模擬胃液(たとえば、USPバスケット法(すなわち、37℃、 100RPM、最初の時間は700 mlの胃液、酵素存在または不存在、pH1.2 、次いで、900 mlでpH7.5 に変更))または胃腸管流体(生体内(in-vivo))に置かれたことを意味する。
【0036】
本発明における「バンド領域」(band range)または「バンド幅」という語は、被覆生成物(貯蔵前)の製造終了時の製剤により得られた溶解パターンと、被覆生成物を加速化された貯蔵条件にさらした後に得られた溶解パターンとを比較した場合に、溶解曲線に沿った何れかの溶解時点における被覆生成物から放出される活性剤の百分率での総(絶対)変化として示した、放出制御型製剤の生体外(in-vitro)溶解測定での差として定義される。
【0037】
一般に、医薬製剤についての、研究の長さ及びFDA等の規格機関により要求される貯蔵試験条件は、貯蔵、出荷、及びそれに続く使用をカバーするに十分である。許可され得る貯蔵試験条件は、生成物の特色により異なっていてもよい。たとえば、温度感受性の薬剤物質は、それが長期間の試験貯蔵温度と見なされる、代わりの、低温度条件の下で貯蔵されるべきである。そのような場合、加速化された試験が、少なくとも15℃の温度でこの指定された長期間の貯蔵温度を超え、同時にその温度での適当な相対湿度条件において行われるべきであることが、一般に受け入れられている。
【0038】
FDAガイドラインで採用されている一般に受け入れられている加速化された試験は、薬剤生成物(たとえば、その容器及び包装内で)を80%の相対湿度(RH)で37℃(1985 FDAガイドライン)で貯蔵するものである。もし、生成物が、たとえば、それらの条件(化学的安定性、溶解、及び物理的特性)の下で3カ月持ちこたえると、次いで、薬剤生成物は、たとえば、2年間の有効期限が与えられる。この加速化された試験は、また、現在、75%RHで40℃(FDA 1987ガイドライン)で行うと、許容し得ると考えられる。最近、医薬製剤について、長期間の貯蔵試験を、25℃±2℃で60%RH±5%を超えず、12カ月の最少時間期限で行うことが提案されている。さらに、加速化された試験を、医薬製剤について、40℃±2℃及び75%RH±5%で、6カ月の最少時間期限で行うことも提案されている。上記した全ての加速化された試験基準及びその他は、安定性の測定及び硬化の終点の測定に関し、本発明の目的のために等価であると見なされる。上記した全ての加速化された試験条件及び当業者に知られている他の事は、本発明の放出制御型製剤の硬化(安定性)の終点を決定するための許容し得る基礎を提供する。
【0039】
本発明の放出制御型被覆は疎水性(水不溶性)アクリル系ポリマーの水性分散液から成る。ある好ましい実施態様において、本発明の疎水性アクリル系ポリマー被覆は、使用環境中に存在する流体のpHとは独立の溶解性及び透過性を有する。経口固体投与製剤の場合には、本発明の疎水性アクリル系ポリマーは、生理的pH値とは独立の溶解性及び透過性を有する。本発明の製剤において使用される疎水性アクリル系ポリマーは、アクリル酸またはその誘導体から誘導される。アクリル酸誘導体としては、たとえば、アクリル酸及びメタクリル酸のそれぞれのエステル、及びアクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。ある好ましい実施態様において、アクリル酸及びメタクリル酸のそれぞれアルキルエステルは、アルキル基中に約1〜約8個の炭素原子を有する。本発明のポリマー被覆に使用されるモノマーとしては、また、スチレン及びその同族体、酢酸ビニル、及び塩化ビニル等のビニルエステルが挙げられる。一般に、疎水性の水不溶性ポリマーを形成するモノマーは非イオン性である。本発明における「非イオン性モノマー」という語は、分子中にイオン性の基(アルカリ金属カルボキシレートまたはスルホネートまたは第4級アンモニウム基等)を有していないモノマーのみならず、塩基または酸等の基を形成することができないモノマーも含まれる。多くの場合、疎水性アクリル系ポリマー被覆の組成物には、他のモノマーが含まれていてもよい。
【0040】
当業者は、塗装被膜の硬度及び伸長性及び水性分散液からの被膜形成が可能な最も低い温度は、本発明において使用される疎水性アクリル系ポリマーに含まれる特有のモノマーにより影響されることを理解している。メタクリル酸の低級アルキルエステルは、相対的に固いホモポリマーを形成し、アクリル酸エステル及びメタクリル酸の高級アルキルエステルは、相対的に柔らかいホモポリマーを与えることが知られている。炭素原子が4を超えるアルキル基またはアリール基は、疎水性化効果を有しており、それにより、膨潤容量及び拡散透過性が減ぜられる。
【0041】
本発明のある好ましい実施態様において、アルリルポリマーは、また、優勢なpH値に関係することなく、所望の拡散速度で被膜内に包含される活性剤の放出を許容する一種またはそれ以上の重合性で透過性を増大する化合物を含有する。経口固体投与製剤の場合において、透過性を増大する化合物は、活性剤を、投与製剤が通路を通る間に、消化(胃腸)管(pHに関係なしに)のそれぞれの領域で同一の拡散速度での放出を許容し、実質的に完全に抽出された後に、本発明の被膜は分解することなく排泄される。
【0042】
ある好ましい実施態様において、透過性を増大する化合物は、少なくとも一種の重合性第4級アンモニウム化合物から成る。そのような化合物は、広いpH領域において、たとえば、全ての生理的pH領域を通して、安定な塩として存在する強い塩基であり、容易に水に溶解する。共重合性試薬中に存在する第4級アンモニウム化合物の性質及び、特にその量は、拡散性に影響する重要な因子である。
【0043】
本発明の被膜(塗料)に使用される適当な重合性第4級アンモニウム化合物は、一般に、次記一般式:
【0044】
【化1】

【0045】
式中、Rは水素またはメチルであり、Aは酸素またはNHであり、Bは直鎖または分岐のアルキルまたは脂環式炭化水素であり、好ましくは約2〜約8の炭素原子を有しており、R1 、R2 及びR3 は、単独で、同一又は異なったアルキルまたはアラルキルであり、より特別には約1〜約4の炭素原子を有する低級アルキルであり、またはベンジルであり、または第4級窒素原子と一緒になったR1 及びR2 はピペリジニウムまたはモルホリニウムであり、そしてXΘ はカチオンであり、好ましくは無機酸、特には塩化物、硫酸塩またはメト硫酸塩のカチオンである。
【0046】
重合性第4級アンモニウム化合物の特に好ましい例としては、アクリル酸及びメタクリル酸の第4級化されたアミノアルキルエステル及びアミノアルキルアミドが挙げられ、たとえば、メト硫酸β−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム、塩化β−アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、及びメト硫酸トリメチルアミノメチルメタクリルアミド等である。第4級アンモニウム原子は、塩化メタクリロキシエチルメチルモルホリニウムまたはそれに対応するピペリジニウム塩におけるように、複素環の一部を形成することができ、またはポリグリコールエーテル基のように、ヘテロ原子を含む基としてアクリル酸基またはメタクリル酸基に結合することができる。さらに適当な重合性第4級アンモニウム化合物としては、メチルビニルピリジニウム塩、第4級化アミノカルボン酸のビニルエステル、スチリルトリアルキルアンモニウム塩等の第4級化ビニル置換窒素ヘテロ環が含まれる。
【0047】
本発明に有用な他の重合性第4級アンモニウム化合物としては、アクリル−及びメタクリル−オキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド及びメトサルフェート、ベンジルジメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、ジエチルメチルアンモニウムエチル−アクリレート及びメタクリレートメトサルフェート、N−トリメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミドクロリド、及びN−トリメチルアンモニウム‐2、2‐ジメチルプロピル‐1‐メタクリレートクロリドが挙げられる。
【0048】
適当な疎水性アクリルポリマーに関する更なる情報は、米国特許第3,520,970号及び第4,737,357 号(共にローム社(Rohm G.m.b.H)に譲渡されている)により得られ、共にここに参照として導入される。
【0049】
当業者は、他の重合性の透過性を増大する化合物は、本発明において、上記した第4級アンモニウム化合物で置換してもよい。そのような追加の重合性の透過性を増大する化合物は、上記した請求の範囲の範囲内であることを意図している。
【0050】
ある好ましい実施態様において、本発明の被膜に使用される疎水性アクリル系ポリマーは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸のエステルと少量の第4級アンモニウム基との共重合物から成る。そのような共重合物は、しばしば、アンモニオメタクリレート共重合体として言及されており、ローム・ファーマ社(RohmPharma AG)から、たとえば、オイドラギット(Eudragit)の商品名のもとに市販されている。アンモニオメタクリレート共重合体は、NF XVII に、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルと小量の第4 級アンモニウム基との十分に重合した共重合体として記載されている。
【0051】
本発明のある特に好ましい実施態様において、アクリル被膜は、それぞれ、オイドラギットRL 30 D(Eudragit RL 30 D)及びオイドラギットRS 30 D(Eudragit RS 30 D)の商品名のもとにローム・ファーマ社(Rohm Pharma )から市販されている、水性分散液の形態で使用される2種類のアクリル樹脂ラッカーの混合物から誘導される。オイドラギットRL 30 D及びオイドラギットRS30 Dは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルと少量の第4級アンモニウム基との共重合体であり、アンモニウム基の残りの中性(メタ)アクリル酸エステルに対するモル比は、オイドラギットRL 30 Dにおいて1:20であり、オイドラギットRS 30 Dにおいて1:40である。平均分子量は、約150,000 である。コード表示は、それらの試薬の透過性能を表わすものであり、RLは高透過性で、RSは低透過性である。オイドラギットRL/RS混合物は水に不溶であり、消化性の流体である。しかしながら、これから形成される被膜は、膨潤性であり、そして水性溶液及び消化性流体を透過する。
【0052】
本発明のオイドラギットRL/RS分散液は、最終的に、所望の溶解パターンを有する放出制御型製剤を得るために、所望の如何なる比率で一緒に混合してもよい。所望の放出制御型製剤は、たとえば、100 %のオイドラギットRL、50%のオイドラギットRLと50%のオイドラギットRS、及び10%のオイドラギットRLと90%のオイドラギットRS並びに100 %のオイドラギットRSから誘導される遅延財被膜から得られる。
【0053】
本発明において使用される疎水性アクリル系ポリマーは、当業界において知られている如何なる方法によっても製造することができるが、モノマー混合物中に溶解した遊離ラジカルを形成する開始剤の存在下におけるバルク重合、または、有機溶媒中において溶液または沈殿重合を行い、このように形成した重合体を次いで溶媒から単離することによる方法等が挙げられる。
【0054】
本発明の疎水性アクリル系ポリマー被膜は、その溶解性がpHに依存しない親水性モノマーを含有していてもよい。その例としては、アクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル酸及びメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、及びビニルピロリドンが挙げられる。そのような材料を使用する場合には、その量は共重合体の20重量%までの少量である。また、アクリル酸若しくはメタクリル酸、または第4級化モノマーの基礎となるアミノモノマーのような少量のイオン性モノマーを含有していてもよい。
【0055】
本発明の他の実施態様において、疎水性アクリル系ポリマー被覆は、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルから合成されるアニオン性ポリマーのような、その透過性がpH依存性であるポリマーをさらに含有していてもよい。そのようなポリマーは、オイドラギットL(Eudragit L)及びオイドラギットS(Eudragit S)の商品名のもとにローム・ファーマ社(Rohm Pharma GmbH)から市販されている。遊離カルボキシル基のエステルに対する比率は、オイドラギットLにおいて1:1であり、オイドラギットSにおいて1:2である。オイドラギットLは、酸及び純水に不溶であるが、pH5.0 を超えると透過性が増大する。オイドラギットSも、pH7を超えると透過性が増大するようになること以外は同様である。疎水性アクリル系ポリマー被覆は、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及び中性メタクリル酸エステル(ローム・ファーマ社から市販されているオイドラギットE(Eudragit E)等)に基づくその性質がカチオン性であるポリマーを含有していてもよい。本発明における疎水性アクリル系ポリマー被膜は、さらに、ローム・ファーマ社から市販されているオイドラギットNE(Eudragit NE )(NE=中性エステル)等の、ポリ(メタ)アクリル酸に基づく中性ポリマーを含有していてもよい。オイドラギットNE 30 D(Eudragit NE 30D )ラッカー被膜は水に不溶な消化性の流体であるが、透過性で膨潤性である。
【0056】
本発明により与えられる如何なる製剤の溶解パターンも、被覆中に含有される異なるアクリル樹脂ラッカーの相対量を変更することにより変えることができる。また、重合性の透過性を増大する化合物(たとえば、第4級アンモニウム化合物)の中性(メタ)アクリル酸エステルのモル比を変更することにより、得られる被膜の透過性能(及び溶解パターン)も変えることができる。
【0057】
本発明の放出制御型製剤からの活性剤の放出は、無機または有機であってもよく、使用する環境中において被膜から溶解し、抽出し、またはロ過することができる物質を含有する一種または二種以上の気孔形成剤によって、さらに影響される、すなわち、所望の速度に調節される。使用環境下に流体をさらすことにより、気孔形成剤は、たとえば、溶解され、環境流体で満たされる溝または孔が形成される。
【0058】
たとえば、気孔形成剤は、製剤の放出特性を変更するために、一種またはそれ以上の水溶性親水性ポリマーから成っていてもよい。適当な親水性ポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースエステル、及びたんぱく質誘導物質が挙げられる。それらのポリマーの内、セルロースエステルとしては、特にヒドロキシアルキルセルロース及びカルボキシアルキルセルロースが好ましい。また、合成水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド等が使用され、プルラン、デキストラン、ショ糖、グリコース、果糖、マンニトール、乳糖、マンノース、ガラクトース、ソルビトール等の水溶性ポリデキスローズ、サッカライド、及びポリサッカライド等も使用される。本発明のある好ましい実施態様において、親水性ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0059】
気孔形成剤の他の例としては、炭酸リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。気孔形成固体は、カーボワックス(商品名、Carbowaxes)、カーボポール(商品名、Carbopol)等のような使用環境に於いて溶解するポリマーである。気孔形成剤は、ジオール、ポリオール、多価アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリ(α−ω)アルキレンジオール等が含有される。
【0060】
半透過性ポリマーは、製剤の放出特性を変更するために、気孔形成剤として放出制御型被膜中に導入してもよい。そのような半透過性ポリマーとしては、たとえば、アクリル酸セルロース、酢酸塩、及び米国特許第4,285,987 号(ここに参照として導入される)に開示されているような他の半透過性ポリマー、並びに米国特許第3,173,876 号、第3,276,586 号、第3,541,005 号、第3,541,006 号及び第3,546,142 号(ここに参照として導入される)に開示されているポリカチオンとポリアニオンの共沈法により形成される選択的透過性ポリマーが挙げられる。
【0061】
本発明の製剤に有用である他の気孔形成剤としては、デンプン、変性デンプン、及びデンプン誘導体;キサンタンゴム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、ベントナイト、ビーガム、寒天、グア(guar)、イナゴマメゴム、アラビアゴム、マルメロシリウム(psyllium)、亜麻仁、オクラゴム、アラビノグラクチン、ペクチン、トラガカント、スクレログルカン、デキストラン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン等のゴム;架橋ポリビニルピロリドン;ポリメタクリル酸カリウム、カラギーナン、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、カラヤゴム、生合成ゴム等のイオン交換樹脂等が挙げられる。他の気孔形成剤としては、使用環境下において微小孔のある薄膜を形成するのに有用な物質が含まれ、たとえば、ポリマー鎖中においてカーボネート基が繰り返される炭酸の直鎖ポリエステルから成るポリカーボネート;ビスフェノール、微小孔ポリ(塩化ビニル)、微小孔ポリアミド、微小孔モダクリル共重合体、微小孔スチレン−アクリル及びその共重合体、多孔性ポリスルホン、ハロゲン化ポリ(ビニリデン)、ポリクロロエーテル、アセタールポリマー、ジカルボン酸または無水物とアルキレンポリオールとのエステル化により製造されたポリエーテル、ポリ(アルキレンサルファイド)、フェノール樹脂、ポリエステル、不斉多孔性ポリマー、架橋オレフィンポリマー、親水性微小孔ホモポリマー、嵩密度が減少した共重合体または相互共重合体、及び他の同様の物質、ポリ(ウレタン)、架橋された連鎖延長型ポリ(ウレタン)、ポリ(イミド)、ポリ(ベンズイミダゾール)、コロジオン、再生タンパク質、半固体の架橋化ポリ(ビニルピロリドン)等の微小孔物質が挙げられるが、これらに限定されはしない。
【0062】
一般に、本発明の放出制御型被膜に含有される気孔形成剤の量は、疎水性アクリル系ポリマーと気孔形成剤の総量に対し、重量で約0.1 %〜約80%である。
【0063】
本発明の放出制御型被膜は、少なくとも一つの通路、孔等から成る出口手段を含んでいてもよい。通路は、米国特許第3,845,770 号、第3,916,889 号、第4,063,064 号及び第4,088,864 号(これらは全てここに参照として導入される)に開示されているような方法で形成される。通路は、円形、三角形、四角形、楕円形、不規則形等の如何なる形状をも取り得る。通路は、透過性を増大する化合物、親水性モノマー、pH−感受性ポリマー、及び/または気孔形成剤を含む代わりに、またはそれに加えて、製剤中に含有される活性剤の放出を得るために、含まれていてもよい。
【0064】
本発明のある実施態様において、水性ポリマー被覆分散液に含まれる疎水性ポリマーは、水不溶性(第4級アンモニウム化合物を含有していないアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの共重合体のように)であり、活性剤の放出は、被膜を通しての一若しくはそれ以上の通路の存在を通してのみ、実質的に制御される。
【0065】
本発明による適当な放出制御型製剤の例としては、USPのパドル法またはバスケット法で37℃において900ml の水性緩衝液(pHが1.6 〜7.2 の間)中において100 rpmで測定した場合に、投与製剤の生体外(in vitro)での溶解速度が、たとえば、12時間製剤(1日2回投与)については、1時間後に約0%〜約42.5%(重量)の治療活性剤を放出し、2時間後に約25%〜約55%(重量)を放出し、4時間後に約45%〜約75%(重量)を放出し、そして6時間後に約55%(重量)より多くを放出するという値を与えるものである。本発明による適当な放出制御型製剤の他の例としては、USPのパドル法またはバスケット法で37℃において900ml の水性緩衝液(pHが1.6 〜7.2 の間)中において100 rpmで測定した場合に、投与製剤の生体外(in virto)での溶解速度が、たとえば、24時間製剤(1日1回投与)については、1時間後に約0%〜約42.5(重量)の活性剤を放出し、2時間後に約5%〜約60%(重量)の活性剤を放出し、4時間後に約15%〜約75%(重量)の活性剤を放出し、そして8時間後に約20%〜約90%(重量)の活性剤を放出するものである。許容可能な溶解速度のこれらの例は、製剤が経口固体投与製剤である、本発明のある好ましい実施態様に関するものであり、そして如何なる方法によっても限定することを意図していないものである。
【0066】
本発明の被覆製剤は、平滑で精密であり、顔料及び他の被覆添加剤を支持することが可能であり、無毒性で、不活性でそしてべとつきがない。強靱で連続的な膜を製造することが可能なものである。
【0067】
本発明において使用されるアクリル被膜は、有効量の適当な可塑化剤を含有することが好ましい。何故なら、可塑剤を使用すると、被膜の物理的生活がさらに改良されるからである。たとえば、可塑剤を使用すると、被膜の弾性が改良され、そして分散液の膜形成温度を低下させる。アクリル樹脂の可塑化は、所謂、「内部可塑化」及び「外部可塑化」の何れかにより達成される。
【0068】
内部可塑化は、通常、たとえば、共重合等の、その製造工程におけるポリマーの分子変性に直接関係し、官能基の変更及び/または置換、側鎖の数の調節、またはポリマーの長さの調節等である。そのような技術は、通常、被覆溶液の配合物によっては行うことができない。
【0069】
外部可塑化は、物質を膜溶液に添加するものであり、それにより乾燥被膜の膜性能に要求される変化が達成される。
【0070】
可塑剤が適当かどうかは、ポリマーに対する親和性または溶解力及びポリマーとポリマーの付着を阻害する影響力に依存する。そのような活性は、分子の剛性を和らげることにより所望の柔軟性を付与する。一般に、被覆溶液に含有される可塑剤の量は、膜形成剤の濃度に基づいており、たとえば、最も多くは、約1〜約50重量%の膜形成剤である。可塑剤の濃度は、しかしながら、特別な被覆溶剤及び適用の方法についての注意深い実験の後にのみ、適正に決定することができる。
【0071】
最も好ましくは、約20%の可塑剤がアクリル系ポリマーの水性分散液に含有される。
【0072】
ポリマーについての適当な可塑剤を決定するための重要なパラメーターは、ポリマーのガラス転移点(Tg)である。ガラス転移点は、ポリマーの物理的性質における基本的な変化がある温度または温度領域である。この変化は、状態の変化を示さず、むしろ、ポリマーの高分子移動度の変化である。Tgより低温だと、ポリマー鎖の移動度は厳しく制限される。したがって、与えられたポリマーについて、もしそのTgが室温を超えている場合、ポリマーはガラスのように振る舞い、硬く、柔軟ではなく、むしろ脆く、性質は、被膜塗装において、幾分限定的である。何故なら、被覆した投与製剤は、ある量の外部応力をかけてもよいからである。
【0073】
ポリマーマトリックスへ適当な可塑剤を導入すると、Tgを効果的に減少することができ、その結果、雰囲気条件下において、被膜は柔らかくなり、より柔軟になり、そしてしばしば強靱で、機械的応力に抵抗することがより可能になる。
【0074】
適当な可塑剤の他の側面には、アクリル樹脂に対する良好な「膨潤剤」として機能する可塑剤の能力が含まれる。
【0075】
本発明のアクリル系ポリマーに対する適当な可塑剤の例としては、クエン酸トリエチルNF XVI、クエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル、及びおそらくは1,2‐プロピレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。オイドラギットRL/RS(商品名)ラッカー溶液のようなアクリル膜から形成される被膜の可撓性を増大するために適当であることが証明されている他の可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ヒマシ油、及びトリアセチンが挙げられる。クエン酸トリエチルは、本発明のアクリル系ポリマーの水性分散液に対する特に好ましい可塑剤である。
【0076】
少量のタルクを添加すると、水性分散液が処理中に粘着する傾向を減じ、そして艶出し剤として機能することがさらに知られている。
【0077】
最終生成物の溶解パターンは、たとえば、遅延剤被膜の厚さを増加させるか、減少させることにより、アクリル系樹脂への可塑剤の添加方法を変更することにより、及び/または、たとえば、製造方法の他の側面を変えることにより、変更することができる。
【0078】
本発明のある好ましい実施態様において、放出制御型投与製剤は、放出制御型被膜で被覆した活性成分を含有する薬学的に許容可能なビーズ(たとえば、球状)から成る。球状という語は、薬学の分野で公知であり、そして、たとえば、0.2mm 〜2.5mm の間の、特には0.5mm 〜2mmの間の粒径を有する球状粒子を意味する。そのようなビーズの市販されている適当なものは、ヌ・パリエル(nu pariel )18/20 ビーズがある。
【0079】
複数の硬化した被覆(安定化)放出制御ビーズは、その後、摂取され、そして胃液に接触した場合に、有効量の放出制御を行うに十分な量でゼラチンカプセル中に入れられてもよい。
【0080】
アクリル樹脂の分散液が、ヌ・パリエル(nu parei)18/20 メッシュビーズのような不活性薬学ビーズの被覆に使用された場合、複数の得られる安定化された固体放出制御ビーズは、その後、摂取され、そして胃液に接触した場合に、有効量の放出制御を行うに十分な量でゼラチンカプセル中に入れられてもよい。この実施態様において、治療活性剤で被覆されたビーズは、たとえば、治療活性剤を水に溶解し、次いで溶液を、たとえば、ヌ・パリエル18/20 メッシュビーズのような基質にウルスター・インサート(Wurster insert)を使用して噴霧することにより製造される。所望により、活性剤がビーズに付着するのを助けるために、及び/または溶液を着色する等のために、追加成分をビーズの被覆に先立って添加してもよい。たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を、着色剤と共にまたは無しで、含有する生成物を溶液に加え、そして溶液をビーズへ塗布する前に混合(たとえば、約1時間)する。得られた被覆基質は、この実施例のビーズにおいて、アクリル被膜から治療活性剤を分離するために、次いで、任意に遮断層をオーバーコートしてもよい。適当な遮断層の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから成るものが挙げられる。しかしながら、当業界で知られている如何なる被膜形成剤を使用してもよい。遮断試薬は最終生成物の溶解速度に影響を与えないものであることが好ましい。
【0081】
活性剤(及び所望の保護被膜)から成るビーズは、次いで、アクリル系ポリマーでオーバーコートしてもよい。アクリル系ポリマーの分散液は、好ましくは、さらに、たとえば、クエン酸トリエチル等の可塑剤を有効量含有する。オイドラギットの種々の市販品の形態のような、アクリル樹脂の予め調製された分散液としては、オイドラギットRS30S及びオイドラギットRL30Dが挙げられる。
【0082】
本発明の塗布溶液は、好ましくは、被膜形成剤、可塑剤及び溶媒系(すなわち、水)に加えて、優雅さと生成物の区別のために、着色剤を含有する。代わりに、またはオーバーコートに加えて、治療活性剤の溶液を着色してもよい。製剤に色を与える適当な成分としては、二酸化チタン及び酸化鉄顔料等の着色顔料が挙げられる。顔料の導入は、しかしながら、被覆するのを妨害する影響が増大する。代わりに、本発明の製剤を着色する如何なる適当な方法を使用してもよい。
【0083】
アクリル系ポリマー(及び任意の透過性を増大する化合物及び/または気孔形成剤と共に)の可塑化被覆は、治療活性剤から成る基質の上に、当業界において公知の如何なる適当なスプレー装置を用いて噴霧することにより塗布されてもよい。好ましい方法において、ウルスター流動床システムが使用され、これは、下方から注入されるエアジェットが核になる材料を流動化し、そしてアクリル系ポリマー被覆が噴霧されている間に乾燥を行う。該被覆基質が、たとえば、胃液のような水性溶液にさらされた場合に、治療活性剤の予め定められた放出制御を得るために十分な量の被覆は、治療活性剤の物理的特性、可塑剤の導入方法等を考慮に入れて、好ましくは塗布される。アクリル樹脂で塗布した後に、オパドライ(Opadry,商品名)等の被膜形成剤の更なるオーバーコートをビーズに任意に塗布してもよい。このオーバーコートは、たとえ少しは凝集するにしても、ビーズの凝集を実質的に減少させるためになされる。
【0084】
次に、被覆したビーズ、錠剤等は、治療活性剤の安定化された放出速度を得るために硬化される。
【0085】
伝統的には、硬化は、オイドラギットを被覆した製剤について、塗布後、流動床により45℃で2時間、行われる。そのような標準の硬化は、ローム・ファーマ社から薦められている。何故なら、20%のレベルの固形分の、クエン酸トリエチルで可塑化されたオイドラギットRS 30 Dのガラス転移点を超えているからである。この推薦された硬化は、実施例において記載されるように、貯蔵による製剤の溶解パターンを安定化するものではない。
【0086】
本発明により硬化工程は、被覆基質、たとえばビーズを、被覆製剤のTgよりも高い温度で行い、そして被覆製剤が、上昇した温度及び/または湿度の貯蔵条件にさらしても実質的に影響されない溶解パターンを与える、終点に到達するまで硬化を続ける。一般に、硬化時間は、約24時間以上であり、そして硬化温度は、たとえば、約45℃である。本発明においては、さらに、安定化された最終生成物を達成するために、硬化工程の間に雰囲気条件を超える湿度レベルに被覆基質を置く必要がないことが発見されている。
【0087】
標準の方法により硬化された先行技術の生成物の溶解パターンが変化する一つの考えられる機構は、それらの生成物が貯蔵中に硬化を続けることであり、生成物が実質的に一定の溶解パターンを与える安定化された終点に決して到達しないことである。それに対し、本発明の硬化生成物は、温度及び湿度を上昇させることによる貯蔵の間に実質的に影響されない治療活性剤の放出速度を与えるものである。
【0088】
本発明の好ましい実施態様において、安定化された生成物は、被覆された基質を可塑化したアクリル系ポリマーのTgを超える温度で、必要とされる時間、オーブンで硬化させることにより得られ、特別の製剤のための温度及び時間の最適値は実験的に決定される。
【0089】
本発明のある実施態様において、安定化された生成物は、約45℃の温度で、約24〜約48時間の間、オーブンでの硬化を行うことによって得られる。ある実施態様において、生成物は、たとえば、約36時間硬化されることが好ましい。ある好ましい実施態様において、生成物は、約48時間硬化される。本発明の放出制御型被膜で被覆されたある生成物は、48時間より長い、たとえば、60時間またはそれ以上の硬化時間を必要とすることが考えられる。当業者は、硬化条件が、製剤中に導入される特別な薬剤により、並びに放出制御型被膜の膜厚により、及び基質の大きさ(たとえば、ビーズと比較した錠剤等)により影響されることを認識している。
【0090】
上記した終点まで硬化をするために必要とされる時間は、実際には上記した時間よりも長いか或いは短いかもしれないことは、特に考えられる。安定化した製剤の意図した結果を達成するそのような硬化時間は、上記した請求の範囲に包含されている。さらに、当業者にとって、被覆基質の安定な溶解パターンを与える終点に到達するために、他の方法により本発明の水性分散液被覆基質を硬化させることも可能であるということも理解できるであろう。安定化された製剤の意図した結果を達成する追加の硬化方法(音波処理等)も、上記した請求の範囲に包含されることが考えられる。
【0091】
硬化の終点は、硬化直後の、硬化した被覆基質(たとえば、「基質」)の溶解パターン(以後、「初期溶解パターン」と言う)と、加速化された貯蔵条件にさらした後の製剤の溶解パターンとを比較することにより決定される。一般に、硬化の終点は、たとえば、37℃/80%RHまたは40℃/75%RHで1カ月の期間、加速化された貯蔵条件にさらした後の製剤の溶解パターンを初期溶解パターンと比較することにより決定される。しかしながら、硬化の終点は、硬化した被覆製剤を加速化された貯蔵条件に更なる期間、さらすことを続け、そして、さらに、たとえば、2カ月及び/または3カ月間さらした後の製剤の溶解パターンを得られている初期溶解パターンと比較することによりさらに確認してもよい。
【0092】
硬化した被覆基質が薬学製剤である本発明のある好ましい実施態様において、硬化の終点は、データの点を、たとえば、加速化された条件で1〜3カ月さらした後に得られる溶解曲線のグラフに沿って描いた場合に得られ、貯蔵に先立って行われた生体外(in-virto)での溶解と比較した場合に、放出される活性剤の総量の約15%を超えるまで、与えられた如何なる時間においても変わらずに活性剤の放出を示すものである。そのような生体外(in-vitro)での溶解曲線の差は、業界において、たとえば、15%の「バンド領域」または「バンド幅」と呼ばれている。一般に、貯蔵前の生体外(in-vitro)での溶解と加速化された条件にさらした後で、たとえば、約20%よりも多くはない量で放出される活性剤の総量が変化する場合、製剤は、米国FDAのような政府規定機関により、安定性の問題及び有効期日等を考慮された場合、許可し得ると考えられる。許容できるバンド領域は、FDAにより一件一件毎に決定され、そして、そのような政府の規定機関に許可しうると見なされるであう特別の薬剤についての如何なるバンド領域も、上記した請求の範囲の中に入ると考えられる。好ましい実施態様において、上記したバンド領域は、放出される活性剤の総量の10%より多くはないものである。より好ましい実施態様において、バンド領域は放出される活性剤の総量の7%より多くはないものである。後述する実施例において、バンド領域はしばしば5%未満である。
【0093】
本発明の放出制御型被膜が錠剤に塗布される場合、錠剤の核(たとえば、基質)は、薬学的に許容される不活性薬学的充填剤(稀釈剤)物質の如何なるものに沿った活性剤から成り、ショ糖、デキストロース、乳糖、微結晶セルロース、キシリトール、果糖、ソルビトール、それらの混合物等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。また、カルシウムまたはマグネシウム石鹸を含む一般に受容可能な薬学的潤滑剤の有効量を、上記した試薬の賦形剤とて、錠剤核試薬の圧縮に先立って添加してもよい。最も好ましいものは、固体投与形態で約0.2〜5重量%の量のステアリン酸マグネシウムである。
【0094】
本発明のある実施態様において、被覆基質は、疎水性ポリマーの水性分散液から成る放出制御型被膜または放出制御型被覆の外表面上に被覆されている追加のオーバーコート内に、追加量の活性剤を含有する。これは、たとえば、製剤が最初に胃液にさらされた場合に活性剤の治療的に有効な血液レベルを与えるために、治療活性剤の負荷量が必要とされる場合に、望ましい。そのような場合には、更なる保護被膜(たとえば、HPMC)が、放出制御型被覆層から速放性被覆層を分離するために含まれてもよい。
【0095】
本発明の放出制御型製剤に含有される活性剤としては、全身活性治療剤、局所活性治療剤、消毒剤、化学的含浸剤、清浄剤、消臭剤、芳香剤、染料、動物忌避剤、昆虫忌避剤、肥料、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、及び植物成長刺激剤等が挙げられる。
【0096】
広い範囲の治療活性剤を、本発明と共に使用することができる。本発明の組成物において使用可能な治療活性剤(たとえば、薬学製剤)としては、水溶性及び水不溶性薬剤の両者が含まれる。そのような治療活性剤の例としては、抗ヒスタミン剤(たとえば、ジメンヒドリネート、ジフェンヒドリネート、クロルフェニラミン及びd‐マレイン酸クロルフェニラミン)、鎮痛剤(たとえば、アスピリン、コデイン、モルヒネ、ジヒドロモルヒネ、オキシコドン等)、非ステロイド抗炎症剤(たとえば、ナプロキシン、ジクロフェナック、インドメタシン、イブプロフェン、スリンダック)、制吐剤(たとえば、メトクロプラミド)、抗てんかん剤(たとえば、フェニトイン、メプロバメート及びニトレゼパム)、血管拡張剤(たとえば、ニフェジピン、パパベリン、ジルチアゼム及びニカルジリン)、鎮咳剤及び去啖剤(たとえば、リン酸コデイン)、抗喘息剤(たとえば、テオフィリン)、制酸剤、抗痙攣剤(たとえば、アトロピン、スコポラミン)、抗糖尿病剤(たとえば、インスリン)、利尿剤(たとえば、エタクリン酸、ベンドロフルアザイド)、抗降圧剤(たとえば、プロプラノロール、クロニジン)、抗高血圧薬(たとえば、クロニジン、メチルドーパ)、気官支拡張剤(たとえば、アルブテロール)、ステロイド剤(たとえば、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、プレドニゾン)、抗生物質(たとえば、テトラサイクリン)、抗痔疾剤、睡眠剤、向精神剤、下痢止め剤、粘液溶解剤、鎮痛剤、うっ血除去剤、緩下剤、ビタミン剤、興奮剤(フェニルプロパノールアミン剤の食欲抑制剤を含む)、並びにそれらの塩、水和物及び溶媒和物が挙げられる。上記のリストは限定を意図するものではない。
【0097】
ある好ましい実施態様において、治療活性剤は、ヒドロモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルフィネ、モルヒネ、ブプレノルフィン、上記の何れかの塩、水和物及び溶媒和物、上記の何れかの混合物等から成る。
【0098】
本発明の他の好ましい実施態様において、活性剤は局所活性治療剤であり、そして使用環境は、たとえば、胃腸管、または口腔、歯周ポケット、外科的創傷、直腸または膣等の体腔部である。
【0099】
局所活性薬剤としては、抗菌剤(たとえば、アンフォテリシンB、クロトリマゾール、ニスタチン、ケトコナゾール、ミコナゾール等)、抗生物質(ペニシリン、セファロスポリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド等)、抗ウィルス剤(たとえば、アシクロビア、イドクスウリジン等)、呼気新鮮剤(たとえば、クロロフィル)、鎮咳剤(たとえば、塩酸デキストロメトルファン)、抗カリエス剤(たとえば、フッ化物の金属塩、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化錫、フッ化アミン)、鎮痛剤(たとえば、メチルサリチル酸塩、サリチル酸等)、局所麻酔剤(たとえば、ベンゾカイン)、経口防腐剤(たとえば、クロロヘキシジン、及びその塩、ヘキシルレゾルシノール、塩化デクアリニウム、塩化セチルピリジニウム)、抗炎症剤(たとえば、デキサメタゾン、β−メタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン等)、ホルモン性剤(エストリオール)、抗斑剤(クロロヘキシジン及びその塩、オクテニジン、及びチモール、メントール、メチサリチル酸塩、ユーカリプトール)、酸性度減少剤(たとえば、二塩基性リン酸カリウムのような緩衝剤、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及びカリウム等)、及び歯脱感作剤(たとえば、硝酸カリウム)が挙げられる。このリストは限定を意図したものではない。
【0100】
本発明の他の好ましい実施態様において、活性剤は、たとえば、次亜塩素酸カルシウム等の塩素化合物のような消毒剤であり、使用環境は、たとえば、レクリエーションのプールのような人体を取り囲む水である。
【0101】
本発明のさらに他の好ましい実施態様は、活性剤が少なくとも一つの清浄剤、殺菌剤、消臭剤、界面活性剤、芳香剤、香料、消毒剤、及び/または染料から成り、そして使用環境は、たとえば、小便所または便所等である。
【0102】
本発明のさらに他の好ましい実施態様としては、活性剤が、たとえば、肥料、動物忌避剤、昆虫忌避剤、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、植物成長刺激剤等の化学含浸剤であり、そして、使用環境が、たとえば、地面、木等の家の回りの何れかの場所である。肥料は、たとえば、尿素、尿素・ホルムアルデヒド複合物、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸モノアンモニウム、第二リン酸アンモニウム、アンモニア化過リン酸;鉄、亜鉛、マンガン、銅、ホウ素、モリブデン等の微量元素等の微量要素、及び上記した何れかの混合物等である。肥料は、たとえば、粒状の形態でもよい。それらの実施態様において、放出制御型被膜の膜厚は、他の事柄の中で、活性剤の有効量を放出する所望の速度及び総時間に依存するであろう。比較的長時間の硬化が望まれる幾つかの環境において、基質は比較的高い付着重量で、たとえば、50%以上で被覆されてもよい。他の状況において、異なる付着重量で被覆した被覆基質を利用することにより、または被覆に異なる成分を含有せしめることにより、所望の硬化を得ることが望ましく、その結果、被覆基質の所望の割合が、他の被覆基質と比較してより早い活性剤の放出を与え、それにより、延長された長い期間であっても、所望の有効レベル内の活性剤の総放出量を与えるものである。
【0103】
たとえば、被覆基質が、水泳プール等のバクテリア及び殺藻性汚染物と戦うための被覆塩素錠剤である場合、基質は、市販品の次亜塩素酸カリシウムから、並びにトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロシアヌル酸ナトリウム、次亜塩素酸リチウム、粉末石灰、及び/またはその他が存在しまたは存在しないものから成っていてもよい。
【0104】
たとえば、基質は、重量で約98.5%の市販品の次亜塩素酸カルシウム及び約1.5 %の粉末石灰から成っていてもよい。基質は、また、市販粒状次亜塩素酸カルシウム、20重量%までの石灰の塩化物、及びここに参照として導入される、米国特許第4,192,763 号に記載されているような、約69%の有効塩素パーセント及び約57gの質量並びに約40mmの直径を有する1%のステアリン酸亜鉛から成っていてもよい。基質は、次いで、可塑化疎水性ポリマーの水性分散液を、所望の付着重量で被覆し、そして被覆錠剤は、次いで、本発明により、再現性よく安定な溶解パターンを与える硬化被覆錠剤となる終点に到達するまで、硬化される。
【0105】
活性剤がトイレの便器の汚れを洗浄及び防止するのに適した組成物から成る場合、基質は次亜塩素酸カルシウム及び/またはトリクロロイソシアヌル酸等の公知の消毒剤を含有してもよい。活性剤は、一方、ここに参照として導入される、米国特許第4,654,341 号に記載されているように、ジクロロシアヌル酸のアルカリ金属塩及び塩化カルシウム及び塩化バリウム等の塩化物の塩から成っていてもよい。
【0106】
そのような生成物のある考えられる例としては、0.5 〜5%の芳香剤、1〜10%の染料、10〜40%の界面活性剤(それは、ノニオン性、カチオン性、アニオン性または双イオン性界面活性剤であってよい)、及び殺菌剤、消毒剤、処理助剤、及び当業者に公知のその他の一般に含有される成分等の他の任意の成分から成る基質を含有していてもよい。そのような活性剤は、遅延剤、界面活性剤、香料、染料、及び必要とされる如何なる充填剤等の他の公知の成分と共に、錠剤から成る基質に導入されてもよい。
【0107】
基質は、一方、たとえば、1gアズール・ブルー(azure blue)染料65%(ヒルトン・デービット社(Hilton David)から市販されている染料)、1gのプルロニック(Pluronic)F-127(エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応により得られる生成物との縮合生成物から成る非イオン性界面活性剤;バスフ・ワイアンドート・ケミカルズ(BASF-Wyandote Chemicals)から市販されている)、38gのカーボワッスク8000(固体のポリエチレングリコール、分子量8000;ユニオン・カーバイド社(Union Carbide )から市販されている)、40gのケムアミド(Kemamide)U(オレイルアミド界面活性剤;ヴィトコ(Witco )社から市販されている)及び任意の芳香剤(たとえば、0.5 重量%のシトラス・パイン芳香剤)を一緒に均一に混合し、次いで、上記成分の塊を、ペレットを形成するためのヌードル化、圧出、押し出し及び切断並びに打ち型等の従来の方法により、ペレットとすることにより製造される、ペレットから成っていてもよい。所望により、ペレットは、タンクの底にペレットを据えるために、無機塩の適当量、及びグアーゴム等の一若しくはそれ以上の結合剤を含有していてもよい。ペレットは、次いで、所望の溶解速度に応じて、約2〜約30%の付着重量で、可塑化疎水性ポリマーの水性分散液で被覆され、そして被覆ペレットは、次いで、本発明により再現性よく安定な溶解パターンを与える硬化被覆ペレットとなる終点に到達するまで、硬化される。
【0108】
トイレの流し水の処理に有用な基質の他の例としては、ここに参照として導入される、米国特許第5,043,090 号に記載されているような、ポビドンヨウ素等のようなヨードホールから成るものである。
【0109】
基質が芳香剤から成る場合、芳香剤は、たとえば、エステル、エーテル、アルデヒド、アルコール、不飽和炭化水素、テルペン、及び当業界で公知の他の成分を含む揮発性化合物等の、市販されている如何なる香料油であってもよい。
【0110】
活性剤が肥料として適当な組成物から成る場合、活性剤は、可塑化疎水性ポリマーの水性分散液で、付着重量が約2〜約30%となるように被覆され、次いで、本発明により硬化された、粒状尿素から成っていてもよい。尿素粒剤の製造において、水中、70%の固体濃度の尿素を加熱して、実質的に全ての水を除去する。溶融尿素は、次いで、空気冷却塔に液滴として注入し、そこで結晶尿素が硬質粒剤またはビーズとして形成され、それらは、次いで、本発明により被覆され硬化される。
【0111】
基質が植物性食物製剤から成る場合、基質は、ペレット状、球状、粒子状または棒状の形態にすることができ、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒド等のような土壌の制カビ剤と共に、ジベレリン酸のような成長加速化された物質をさらに含有していてもよい。
【0112】
図1は、本発明により被覆したテオフィリンビーズの硬化前の、スプリットスクリーン走査電子顕微鏡写真(SEM)である。左側の倍率は、77倍であり、右側の倍率は540 倍である。被覆はオイドラギットの水性分散液である。SEMは、塗膜のアクリル系ポリマーの明瞭な粒子を示している。たとえば、被膜中の割れ目または孔により、被膜は、活性剤を含んでおり下に位置する核から、活性剤を環境液体中に通過させる。
【0113】
図2は、図1に示したビームを、45℃のオーブン中で48時間の間、ビーズを硬化させた後の、SEMである。左側の倍率は、77倍であり、右側の倍率は1100倍である。図2のSEMは、ビーズ表面の被膜の明らかな形態上の変化をしっ召している。この硬化は、被覆基質の溶解パターンの安定化に重要な役割を担っていると考えられる。
【0114】
本発明の放出制御型被膜が錠剤に適用された場合、錠剤の核(たとえば、基質)は、活性剤と、これらに限定されないが、ショ糖、デキストロース、乳糖、微結晶セルロース、キシリトール、果糖、ソルビトール、それらの混合物等の、薬学的に許容可能な、如何なる不活性な薬学的充填剤(希釈剤)物質とから成っていてもよい。また、カルシウムまたはマグネシウム石鹸を含む、如何なる一般に受容れられる薬学的潤滑剤の有効量を、上記した成分の賦形剤として、錠剤核成分の圧縮に先立って添加してもよい。最も好ましいのは、ステアリン酸マグネシウムを固体投与製剤に対し、約0.2 〜5%の重量で添加することである。
【0115】
本発明による放出制御型製剤を達成するためのアクリル樹脂の被膜の十分な量を被覆した錠剤は、ビーズの製造に関して上に説明したのと同様の方法で製造し、硬化してもよい。当業者は、安定化生成物を得るための、特別の、上昇された温度、上昇された湿度及び時間の範囲が必要とされる硬化条件が、特別な製剤に依存するであろうことを認識するであろう。
【実施例】
【0116】
以下の実施例は本発明の種々の側面を記載する。それらは、如何なる方法によっても本発明の請求の範囲を限定するものではない。
【0117】
実施例1
ヒドロモルホンビーズの製造
ヒドロモルホンビーズを、塩酸ヒドロモルホンを水に溶解し、オパドライ(Opadry〕Y-5-1442 ,ライトピンク(カラーオン、ウエストポイント、ペンシルバニア(Coloron, Westpoint, Pennsylvania)から市販されている製造物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化チタン、ポリエチレングリコール及びD&CレッドNo.30アルミニウムレーキを含む)を20%w/w で加え、約1時間混合し、次いで、ヌ・パリエル(nu pariel )18/20 メッシュのビーズ上にウルスター・インサート(Wurster insert)を用いてスプレーした。得られた製造物は、下記表1に示した配合であった。
【0118】
【表1】

【0119】
実施例2
遅延剤の被覆−硬化工程なし
実施例2においては、実施例1において製造したヒドロモルホンビーズを、第2表に示したように5%の付着重量となるようオイドラギットRS 30 Dでオーバーコートした。終点までの乾燥は行わなかった。
【0120】
【表2】

【0121】
ヒドロモルホンビーズの初期溶解性を試験し、次いで、37℃/80%RH(RH=相対湿度)の加速化された条件下に1カ月間貯蔵した。1カ月後、ビーズは凝集していた。
【0122】
溶解試験は、USPのバスケット法により、37℃において、100 RPMで、最初の時間は700ml の胃液にpH1.2 で、次いで900ml 、pH7.5 に変更して行った。溶解は、容器の中に適当量のビーズを含有している開放型カプセルに入れて行った。結果を以下の表3に記載する。
【0123】
【表3】

【0124】
上記の結果は、ビーズを加速化された貯蔵条件下に置いた場合に、被覆ビーズからの塩酸ヒドロモルホンの溶解が緩やかであることを示している。
【0125】
実施例3
遅延剤被覆の保護
実施例2のヒドロモルホンビーズのゆっくりとした溶解が、ヒドロモルホンと遅延剤の間の安定性の問題によるものかどうかを検討するために、実施例3において、ヌ・パリエルヒドロモルホンビーズを実施例1と同様にして調製し、次いで、5%のHPMCでオーバーコートし、遅延剤層を形成せずに試験を行った。溶解試験を、最初と、そして、37℃乾燥及び37℃/80%RHの加速化された条件で貯蔵後に行った。
【0126】
実施例3の溶解試験の結果を以下の表4に示す。
【0127】
【表4】

【0128】
実施例3の結果は、遅延剤の被覆がない被覆ビーズは安定であることを示している。
【0129】
オーブン中での「乾燥条件」下での相対湿度を定量するために、水を満たしたデシケーター中の60℃オーブン中での相対湿度を以下のようにして定量した。先ず、約500 グラムの精製水をプラスチック製デシケーターに注ぎ、金属製ガードを挿入した。湿度計/温度指示計をガードの一番上に置き、デシケーターを覆い、60℃のオーブンに24時間放置した。24時間後、デシケーター中の相対湿度は85%であったが、温度は依然として60℃であった。湿度計のみを60℃のオーブン中に24時間置いた場合、相対湿度は60℃で9%であった。
【0130】
実施例4
先行技術の硬化(文献で薦められているもの)
実施例4においては、実施例3によって製造したヒドロモルホンビーズを5%の付着重量となるようにオイドラギットRSで被覆した。被覆を塗布後、ビーズを流動床乾燥器中で、45℃において2時間乾燥(硬化)した。この温度は、クエン酸トリエチルで20%レベルの固形分で可塑化した、オイドラギットRS 30 DのTgを超える温度である。溶解試験を、最初と、そして、37℃乾燥及び37℃/80%RHで貯蔵後に行った。結果を以下の表5に示す。
【0131】
【表5】

【0132】
上記した結果から、試験を行ったビーズからのヒドロモルホンの溶解は、貯蔵により激しく変化し、文献により薦められ、実施例4において利用された短縮された硬化工程は、安定性/硬化の問題の手助けとはならないことが見出された。
【0133】
実施例5〜7
硬化の最適化及び遅延被覆の成分
実施例2〜4から得られた結果は、遅延剤被膜でオーバーコートしたビーズの溶解は、ある点までは減速するが、それ以上は変わらないように思われる。しかしながら、達成された終点での溶解は遅すぎるものであった。
【0134】
実施例5〜7においては、その終点の溶解まで生成物を硬化するための、製造中に要求される処理条件を決定するために、追加の試験を行った。
【0135】
より適当な溶解曲線を有する製剤を得るために、そして、被膜を5%の付着重量よりも少なくするよりも、より溶解性あるオイドラギットRL(メタクリル酸エステル 1:20 第4級アンモニウム基)を遅延被覆中に含有させた。
【0136】
実施例5〜7において、ヒドロモルホンビーズは、環境から遅延剤被膜を保護するために5%のHPMCでオーバーコートした以外は実施例4と同様にして製造したものを使用した。実施例5において、遅延剤被膜は100 %のオイドラギットRLから成る。実施例6において、遅延剤被膜は50%のオイドラギットRL及び50%のオイドラギットRSから成る。最後に、実施例7において、遅延剤被膜は10%のオイドラギットRL及び90%のオイドラギットRSから成る。実施例5〜7のそれぞれは5%の付着総重量となるように被覆した。
【0137】
実施例5〜7のHPMC−保護被膜のそれぞれは、45℃乾燥環境下、1,2,7,10、21及び30日間硬化し、実施例2に記載したように、それぞれの時間の溶解試験を行った。
【0138】
実施例7のみが所望の放出パターンを示し、硬化も1日後で完全であった。実施例5及び6の生成物の溶解性の研究は、速放性生成物で得られたものと同等であり、製剤を硬化した後でさえ、使用した遅延剤の量/種類は薬剤の速放性を防止するのに十分ではない(すなわち、約100 %の薬剤が約1時間で放出されている)。実施例7は、加速化された条件下において、下記のようにしてさらに試験をした。21日間硬化した後、実施例7の試料を37℃/80%RHのオーブン中に置き、実施例2に記載したのと同様にして溶解試験を7及び30日後に行った。実施例7の代表的な溶解パターン(3試料の平均の結果)を下記表6に示す。
【0139】
【表6】

【0140】
表6に示した結果は、1カ月後の溶解パターンが、たとえ試料を加速化された条件下で試験した後でも、初期の硬化試料と比較して遜色がないことを示している。従って、45℃で24時間硬化後に、メタクリル酸エステルによる放出制御型被膜は、実質的に安定化されていた。
【0141】
実施例8〜10
遅延剤被膜の膜厚の最適化
実施例8〜10においては、所望の放出パターンで使用するためのメタクリル酸エステルポリマーの最適重量を決定するため、並びに45℃の乾燥環境下48時間の硬化工程での再現性及び有効性を決定するために追加の試験を行った。メタクリル酸エステル量の異なるレベルで3バッチを製造し、45℃の乾燥オーブン中で硬化させた。
【0142】
実施例8において、ヒドロモルホンビーズは、下記表7に記載したように、実施例3と同様にして調製した。
【0143】
【表7】

【0144】
ヒドロモルホンビーズを、次いで、実施例5と同様にしてさらに処理した。実施例7において、遅延剤被膜は、オイドラギットRSとオイドラギットRLが90:10(5%w/w 被膜) から成る。実施例7の配合は、下記表8に記載した。
【0145】
【表8】

【0146】
実施例9及び10は、実施例7と同様の操作で調製した。実施例9において、遅延剤被膜は、オイドラギットRSとオイドラギットRLが90:10(8%w/w 被膜) から成る。実施例10において、遅延剤被膜は、オイドラギットRSとオイドラギットRLが90:10(12%w/w 被膜) から成る。実施例9及び10の配合は、下記表9及び表10にそれぞれ記載した。
【0147】
【表9】

【0148】
【表10】

【0149】
実施例9及び10は、それぞれ、オイドラギット放出制御型被覆及びHPMC5%のオーバーコートを塗布後、45℃のオーブン中、紙を貼り合わせた皿の上で2日間硬化させた。実施例8〜10について溶解度の研究を行った。
【0150】
実施例8の初期溶解パターン(硬化後)は、実施例7のそれと似ていることが示された(双方の実施例の生成物は共に5%w/w のオイドラギット被膜でオーバーコートされている)。2日間硬化後、実施例8の試料を室温、並びに37℃/80%RH、37℃乾燥及び50℃乾燥の加速化された条件下での更なる試験に供した。実施例8の代表的な溶解パターン(3つの試料についての平均の結果)を下記表11に示す。
【0151】
【表11】

【0152】
実施例8により与えられ溶解結果から明らかなように、硬化1日後の試料の溶解パターンは取らなかったが、硬化2日後に得られた結果は、実施例7の1日及び2日間硬化後に得られた結果と実質的に同一であった。それ故、実施例8の生成物は硬化1日後でも安定であると仮定される。
【0153】
2日間の硬化後、実施例9の試料の溶解性を試験し、次いで、実施例9の試料を37℃/80%RHの加速化された条件下に1カ月さらした。実施例9についての代表的な初期溶解パターン(3試料の平均の結果)を下記表12に示す。
【0154】
【表12】

【0155】
上記実施例9により与えられる溶解度の結果から明らかなように、硬化2日後に得られた結果は、37℃/80%RHの加速化された貯蔵条件下で得られた結果と実質的に同一であり、それ故、硬化2日後において実施例9は安定であることを示している。さらに、実施例9により得られた溶解性の結果は、ヒドロモルホンのゆっくりとした放出を示しており、それは、より厚い遅延剤被覆を与えることが予測される。
【0156】
2日間の硬化後、実施例10の試料の溶解性を試験し、次いで、実施例10の試料を室温、及び37℃/80%RH、37℃乾燥及び50℃乾燥の加速化された条件下で貯蔵した後、さらに試験を行った。実施例10についての代表的な溶解パターン(3試料の平均の結果)を下記表13に示す。
【0157】
【表13】

【0158】
実施例10により与えられる上記溶解性の結果から明らかなように、実施例10により得られる溶解性の結果は、予測されたように、実施例8及び9のより薄い遅延剤被膜と比較して、ヒドロモルホンのよりゆっくりとした放出速度を示した。硬化2日後に得られた全結果は、37℃/80%RHの加速化された条件下で得られた結果と、比べて8時間及び12時間の時点での溶解した薬剤の量(%)以外は実質的に同一である。それらの結果は、遅延剤被膜の付着量が多い場合には、安定化された製剤を得るためには、被膜を硬化するために長い時間が必要であろうことを示している。
【0159】
実施例11
硫酸モルヒネ被覆ビーズ
実施例11においては、本発明の硬化工程を、硫酸モルヒネを薬剤として置換した製剤に適用した。
【0160】
硫酸モルヒネ及びHPMC(オパドライ・クリアーY-5-7095)の懸濁液を18/20 メッシュのヌ・パリエルビーズ上に、流動床乾燥器中にて導入温度が60℃で、ウルスター・インサートを用いて塗布した。オパドライ・ラベンダーYS-1-4729HPMC基の膜塗装用懸濁液を、次いで、薬剤塗布後、保護被膜として5%の付着重量で塗布した。
【0161】
オーバーコート工程が終了した後、硫酸モルヒネビーズを、次いで、オイドラギットRS 30DとオイドラギットRL 30 Dの遅延剤混合物で、RLに対するRSの比が90:10で5重量%の付着レベルでオーバーコートした。このオイドラギットRS 30 DとオイドラギットRL 30 Dの混合物をタルク(粘着防止剤として含有される)及びクエン酸トリエチル(可塑剤)と共に、35℃の導入温度で、ウルスター・インサート中において行なった。
【0162】
遅延剤のオーバーコートがひとたび終了すると、硫酸モルヒネビーズはオパドライ・ラベンダーYS-1-4729 を5重量%の付着レベルで最終オーバーコートを行った。
【0163】
最終膜被覆工程が終了した後に、硫酸モルヒネビーズは、紙を貼り合わせた皿の上で45℃で2日間硬化させた。硬化終了後、ビーズは、30mgの硫酸モルヒネの強度でゼラチンカプセル中に充填した。最終組成は下記表14に示す。
【0164】
【表14】

【0165】
次いで、実施例11の試料について、溶解性の安定性試験を、上記した硬化工程の後、室温、37℃/80%RH、37℃乾燥及び50℃乾燥の加速化された条件下で貯蔵した後、1カ月後、及び2カ月後に行った。結果を下記表15に示す。
【0166】
【表15】

【0167】
表15に記載した結果は、硬化工程が、硫酸モルヒネの溶解パターンを、試料を加速化された条件下で貯蔵しても、安定化し、終点までの溶解速度を実質的に一定に維持することを示している。
【0168】
実施例12
放出制御塩酸ヒドロモルホン8mg製剤−アクリル系ポリマー被覆実施例12は以下のように製造した。
【0169】
1.薬剤配合:ヒドロモルホンビーズを、塩酸ヒドロモルホンを水に溶解し、オパドライY-5-1442、ライトピンク(カラーコン、ウエストポイント、ペンシルバニア(Color on 、Westpoint 、PA) から市販されている製造物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化チタン、ポリエチレングリコール及びD&CレッドNo.30アルミニウムレーキを含む)を加え、約1時間混合して20%w/w の懸濁液を得た。この懸濁液を、次いで、ヌ・パリエル18/20 メッシュのビーズ上にウルスター・インサートを用いて噴霧した。
【0170】
2.第一のオーバーコート:被覆したヒドロモルホンビーズは、次いで、オパドライ・ライト・ピンクを5% w/wの付着となるように、ウルスター・インサートを用いてオーバーコートした。このオーバーコートは保護被膜として適用した。
【0171】
3.遅延剤被覆:第一のオーバーコートを形成後、ヒドロモルホンビーズに、次いで、5重量%付着するように、オイドラギットRS 30 D及びオイドラギットRL 30 DのRS対RLの量が90:10の比となる遅延剤被覆混合物を被覆した。クエン酸トリエチル(可塑剤)及びタルク(抗粘着剤)もまた、オイドラギット懸濁液に添加した。塗料懸濁液を塗布するのにウルスター・インサートを使用した。
【0172】
4.第二のオーバーコート:遅延剤被覆が終了した後、ヒドロモルホンビーズに最後のオーバーコートとして、オパドライ・ライト・ピンクを5重量%の付着となるように、ウルスター・インサートを用いて塗布した。このオーバーコートもまた、保護被膜として適用した。
【0173】
5.硬化:最終オーバーコートが終了した後、ヒドロモルホンビーズを45℃オーブン中で2日間硬化させた。硬化したビーズは、次いで、ゼラチンカプセル中に8mgのヒドロモルホン強度となるように充填した。実施例12のビーズの完全な配合は下記表16に記載した。
【0174】
【表16】

【0175】
実施例12のオイドラギット被覆ヒドロモルホンビーズについて、溶解性の研究を初期及び28日後のそれぞれについて行った。結果を下記表17に示す。
【0176】
【表17】

【0177】
上記表17に記載したオイドラギット被覆ヒドロモルホンビーズの溶解性の研究は、初期の溶解性が、試料を37℃/80%RHの条件下に置いて行った溶解性と同等であることを示している。
【0178】
実施例13
実施例13においては、12人の患者について、単一の投与量で6種の方法を無作為化した交錯試験(1週間でウオッシュアウト)を行い、速放性製剤の等しい投与量で得られた結果と比較した。血液試料は血漿レベルを定量するために、投与後、初期、0.25、 0.5、 0.75 、1、1.5 、2、2.5 、3、3.5 、4、6、8、10、12、18、24、30、36及び48時間で採取した。比較例13Aは8mgのヒドロモルホン速放性製剤(ジラウジット(Dilaudid)4mg錠剤2錠、ノール(Knoll) 社から市販)である。実施例13は、8mg投与量の実施例12のカプセル封入ヒドロモルホンビーズである。
【0179】
比較例13Aにより得られた結果を図3に記載する。実施例13により得られた結果を図4に記載する。図5は、実施例13の血漿レベルを比較例13Aの結果に対してプロットしたものを示す。実施例13についての結果を、さらに下記表18に記載する。そのデータは曲線(生物学的有用性;bioavailability )の下の面積、最大血漿濃度(Cmax )及び最大血漿濃度に到達するまでの時間(Tmax )に関する。
【0180】
【表18】

【0181】
実施例13について得られた結果は、投与後12時間目に、ヒドロモルホンの血液レベルが、500pg/mlヒドロモルホンを超えるものであり、そして投与後24時間目の血漿レベルが十分に300pg/mlを超えている。それ故、この生成物は1日1回の投与に適していると考えられる。
【0182】
実施例14〜15
実施例14〜15において、10人の対象に対し、単一の投与量で4種の無作為化した交錯試験を行った。実施例14は、実施例13のヒドロモルホンビーズ8mg−絶食で試験し、実施例15は、実施例13のヒドロモルホンビーズ8mg−食餌で試験した。比較例14Aにおいて、8mgの速放性ヒドロモルホン(ジラウジッド(Dilaudid)4mg錠剤を2錠)を絶食した者に投与した。比較例15Aにおいて、8mgの速放性ヒドロモルホン(ジラウジッド(Dilaudid)4mg錠剤を2錠)を食事を与えた者に投与した。
【0183】
比較例14A及び比較例15Aの血漿レベルを図6に記載し、実施例14及び15の血漿レベルは図7に記載した。実施例14〜15及び比較例14A及び15Aの結果はさらに表19に記載した。これは、曲線下の面積及び速放性のものと比較した吸収百分率(生物学的有用性)、最大血漿濃度(Cmax )、及び最大血漿濃度に到達するまでの時間(Tmax )についてのデータを提供する。
【0184】
【表19】

【0185】
実施例14〜15及び比較例14A及び15Aにより得られる結果から確認できるように、速放性錠剤及び実施例14及び15の放出制御ビーズの両者共、食物の影響は殆んどなく、実施例14及び15の放出制御ビーズの生物学的有用性が若干増大している。血漿レベルからは、この製造物が1日1回の投与に適していることが、再度確認された。24時間内に、この放出制御生成物は600pg/mlに近い血漿レベルを与え、12時間では700pg/mlを超える血漿レベルを与えた。
【0186】
実施例16〜17
実施例16〜17において、定常状態で3種の交錯試験を4日間行った。比較例16Aにおいては、対象に6時間毎に速放性ヒドロモルホン(ジラウジッド4mg錠剤を2錠)8mgを投与した。実施例16では、実施例15のヒドロモルホンビーズ8mgを12時間毎に投与した。実施例17では、実施例13のヒドロモルホンビーズ8mgを24時間毎に投与した。4日目に血液試料を採取した。
【0187】
比較例16Aの血漿レベルに対する実施例16及び17の血漿レベルを図8に記載した。比較例16Aの谷のレベルに対する実施例16及び17の血漿レベルを図9に記載した(実施例17の値は図9において2倍した)。実施例16〜17及び比較例16Aについての結果をさらに表20に記載した。それは、曲線下の面積及び速放性のものと比較した吸収百分率(生物学的有用性)、最大血漿濃度(Cmax )、及び最大血漿濃度に到達するまでの時間(Tmax )についてのデータを提供する。
【0188】
【表20】

【0189】
生物学的活性についての指標としての曲線の下の面積(AUC) について、表20に示されたデータから、比較例16A及び実施例16及び17は全て、投与間隔を超えて増加した、ほぼ等価のAUCを有しており、全ての投与方法が生物学的に有用であることを示していることが確認できる。
【0190】
さらに、この研究において、24時間毎に8mg投与しただけの実施例17は、この製剤が、ビーズの量を2倍にして、速放性製剤(6時間毎に4mg)により投与されるヒドロモルホンと同量である、16mgの投与量を1日に1回与えるならば、優れた24時間の調合剤を提供する。実施例17について、図9に示した最少または谷の濃度は、この生成物が4mgの速放性製剤(6時間毎に投与)と同等であろうし、それ故、これは優れた1日1回の生成物を与えるであろうことを示している。
【0191】
実施例18
放出制御硫酸モルヒネ30mg製剤−アクリル系ポリマー被覆実施例18は上記実施例と同様の方法で調製した。実施例18のビーズの完全な配合は、下記表21に記載する。
【0192】
【表21】

【0193】
オイドラギットRS 30 D対オイドラギットRL 30 Dの比は98:2である。最終オーバーコートの終了後、モルヒネビーズを45℃のオーブンで2日間硬化した。硬化ビーズを、次いで、ゼラチンカプセルに30mgの強度で充填した。
【0194】
最終生成物を、初期;室温で3カ月及び6カ月貯蔵した後;及び加速化された貯蔵条件(40℃/75%RH) で1カ月間、2カ月間及び3カ月間さらした後に行った。結果を下記表22に示す。
【0195】
【表22】

【0196】
表22に記載した溶解度は、実施例18のビーズが安定であることを示している。
【0197】
二重盲検で単一投与量の交錯試験を、次いで、12人の対象に対し、実施例18の投与製剤に関して、標準の市販されている放出制御硫酸モルヒネ錠剤(比較例18A,MSコンチン(商品名)、パーデュー・フレデリック(Purdue Fredrick) 社製)に対して行った。結果を表23に示す。
【0198】
【表23】

【0199】
実施例18から得られたデータから、生成物は1日1回の投与に適していることがわかる。
【0200】
実施例19〜20
実施例19〜20においては、硫酸モルヒネの配合量が多いように製造された高配合基ビーズであり、それ故、多い投与量が1日1回容易に投与できる。高配合ビーズは、グラット・ローター処理器(Glatt Rotor Processor) 中で粉末を層化することにより製造される。実施例19〜20の製剤は、下記表24に記載した。
【0201】
【表24】

【0202】
基ビーズが、実施例18で使用された低配合ビーズと比較して異なるので、より多くの、比較的溶解性のオイドラギットRLが配合中に含有され、オイドラギット層とモルヒネ速放性層の間に余剰のHPMC保護被膜を設けることにより、安定性がさらに高められる。
【0203】
69mgの投与用の配合を表25に記載する。
【0204】
【表25】

【0205】
ビーズは、次いで、45℃のオーブン中で2日間硬化し、その後、二つに分割した。第一の部分は硬質ゼラチンカプセル中に60mgと等価の強度で充填し、第二の部分は硬質ゼラチンカプセル中に30mgと等価の強度で充填した。
【0206】
二つの強度のカプセルについて、溶解度の検討を行った。データは、溶解したモルヒネの百分率が二つの強度とも同一であることを示している。安定性の試験を60mgのカプセルについて行なった。60mgのカプセルについての結果を下記表26に記載する。
【0207】
【表26】

【0208】
次いで、生物学的有用性の試験を、30mg強度のカプセル(実施例19=絶食、実施例20=食餌)を30mgのMSコンチンと共に、絶食した(実施例19A)を対照として使用して行なった。
【0209】
結果を表27に記載する。
【0210】
【表27】

【0211】
図10は、実施例19〜20(共に食餌及び絶食)の血漿レベルに対する比較例19Aにより得られた血漿レベルを示すグラフである。得られたデータから、製造物は1日1回投与に適していることが判る。
【0212】
実施例21
放出制御アセトアミノフェン(APAP)錠剤を本発明に従い、以下のようにして製造した。
【0213】
第一に、速放性APAP核を、コンパップ・コースL(Compap coarse L) を圧縮することにより、核が555.6mg の重量の錠剤として製造した。コンパップ・コースLは、約90%のAPAP及び結合剤、崩壊剤及び潤滑剤を含む薬学的グレードの賦形剤を含有し、マリンクロット社 (Mallinckrodt、Inc.、St.Louis、MO)から市販されている直接圧縮しうる材料である。APAP錠剤核は、約500mg のAPAPを含有する。コンパップ・コースLは、7/16″の円形の標準凹面蓋で平滑な成形用具を備えた回転式錠剤圧縮機を用いて圧縮される。核は理論重量が555.6mg 及び硬度が約8〜9Kpで圧縮される。
【0214】
次に、上記の如く製造されたAPAP錠剤核は、以下のようにして本発明の放出制御型被覆で塗装される。
【0215】
おおよその量のオイドラギットRS-30 D及びオイドラギットRL-30 Dを混合し、精製水を添加する。精製水の量は、最終被覆懸濁液が固体ポリマー、可塑剤及びタルクを約20%の濃度で有するように計算される。次いで、クエン酸トリエチルを添加し、15分間混合した。その後、タルクを加え、さらに15分間混合した。APAP錠剤核の適当量をアクセラ・コータ・コーティング・パン(Accela Cota coat-ing pan)中に配合した。被覆懸濁液を、ポリマーの被覆が、錠剤当たり4%の付着重量となるようになるまで、適当な噴霧装置(スプレー・ガン)を用いて噴霧した。
【0216】
機能被膜の噴霧が終了した後、錠剤は、オパドライの膜被覆で噴霧される。この被覆は、機能性被覆と同様の方法により噴霧される。
【0217】
制御被覆APAP錠剤に関する更なる情報を、下記表28に記載する。
【0218】
【表28】

【0219】
被覆工程が終了した後、機能性被覆錠剤は、硬化トレイ中に排出され、室内において45℃で48時間硬化させた。硬化錠剤についての溶解性試験の結果を下記表29に示す。
【0220】
【表29】

【0221】
実施例22
実施例22においては、放出制御アセトアミノフェン(APAP)錠剤を製造した。迅速な溶解を与えることが要求される場合には、オイドラギットRL-30 Dの量を増加し、オイドラギットRS-30 Dの量を減少する。かくして、オイドラギットRL-30 Dのみを含有し、オイドラギットRS-30 Dを含有しない放出制御型APAP錠剤を製造した。APAP核は実施例4と同様にして製造した。次に、上記のように製造したAPAP錠剤核を、以下のようにして本発明の放出制型御被膜で被覆した:精製水をオイドラギットRL-30 Dに加えた。精製水の量は、最終被覆懸濁液の濃度が、固体ポリマー、可塑剤及びタルクで約20%となるように計算した。次いで、クエン酸トリエチルを添加し、15分間攪拌した。次いで、タルクを添加し、15分間攪拌した。適当量のAPAP錠剤核をアクセラ・コータ(Accela Cota) 塗装槽に添加した。被覆懸濁液を、適当なスプレーガンから、ポリマーが錠剤当たり4%の付着重量が得られるまで噴霧した。
【0222】
機能性被覆の噴霧が終了した後、錠剤の粘着を防止するために、錠剤にオパドライの被膜塗料を噴霧した。この被覆は、機能性塗装と同様の方法で噴霧させた。
【0223】
放出制御型被覆APAP錠剤に関する更なる情報を下記表30に記載する。
【0224】
【表30】

【0225】
塗布工程が終了後、機能性被覆錠剤を硬化トレイに入れ、槽内で45℃の温度で48時間硬化した。被覆錠剤の溶解度試験を行い、下記表31に記載したデータを得た。
【0226】
【表31】

【0227】
上記した実施例は、排他的であることを意味するものではない。本発明の多くの他の変形も、当業者には自明であろうし、上記した請求の範囲内にあることが予期されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の治療活性剤を含む固体基材を含む放出制御型製剤であって、該固体基材は、この基材が被覆された後に胃液にさらされたときに該治療活性剤を制御して放出するのに有効な量であって、かつ、1日1回の投与に適した製剤を提供する量の、可塑化されたアクリル系ポリマーおよび透過性を増大させる化合物を含む水性分散液で被覆されており、該被覆された基材は、硬化後40℃、75%の相対湿度で少なくとも1カ月の加速化された貯蔵条件下にさらした後に生体外溶解を行ったとき、所定の溶解時間のいかなる時点においても、貯蔵前に行った生体外での溶解と比較して、放出される治療活性剤の総量の約20%より大きく変わることのない量の該治療活性剤を放出するという終点に達するまで、前記水性分散液のガラス転移温度より高い温度で硬化させられており、該被覆が少なくとも24時間の間、治療に有効な血中レベルを与えることを特徴とする、放出制御型製剤。
【請求項2】
経口投与されたときに所望の治療効果を提供するのに充分な量の全身的に活性な治療剤を含有する基材を含む固体の放出制御型経口投与製剤であって、該基材が約2%〜約25%の付着重量で、可塑化されたアクリル系ポリマーおよび透過性を増大させる化合物を含む水性分散液で被覆されており、該被覆が、USPのバドル法で37℃において900mlの水性緩衝液(pHが1.6 〜7.2)により100rpmで測定したとき、1時間後に12.5〜42.5%(重量)の活性剤を放出し、2時間後に25%〜55%(重量)の活性剤を放出し、4時間後に45%〜75%(重量)の活性剤を放出し、8時間後に55%〜85%(重量)の活性剤を放出するという該活性剤の制御された放出を得るのに充分であり、該被覆された基材が、硬化後40℃、75%の相対湿度で少なくとも1カ月の加速された貯蔵条件にさらしたとき、生体外溶解の際いかなる時点においても、貯蔵前に行った生体外での溶解と比較して、放出される治療活性剤の総量の約20%より大きく変わることのない量の該治療活性剤を放出するという終点に達するまで、前記水性分散液のガラス転移温度より高い温度で硬化させられており、該被覆が少なくとも24時間の間、治療に有効な血中レベルを与えることを特徴とする、固体の放出制御型経口投与製剤。
【請求項3】
使用環境下において所望の効果を与えるのに充分な量の活性剤を含有する基材を含む放出制御型製剤であって、該活性剤は、消毒剤、清浄剤、芳香剤、肥料、消臭剤、染料、動物忌避剤、昆虫忌避剤、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、及び植物成長刺激剤から成る群より選択され、該基材は、該製剤が周囲の液体にさらされたときに、該活性剤の制御された放出を得るのに充分な量で、可塑化されたアクリル系ポリマーおよび透過性を増大させる化合物を含む水性分散液で被覆されており、該被覆された基材は、加速された貯蔵条件にさらした後にも変化しない該活性剤の安定した溶解性を与えるという硬化の終点に到達するまで、少なくとも24時間の間、前記水性分散液のガラス転移温度よりも高い温度で硬化させられており、該終点は、硬化直後の製剤の溶解パターンと、37℃の温度、80%の相対湿度で少なくとも1カ月の加速された貯蔵条件にさらした後の製剤の溶解パターンとを比較することにより決定され、該被覆が少なくとも24時間の間、治療に有効な血中レベルを与えることを特徴とする、放出制御型製剤。
【請求項4】
該被覆された基材が、生体外溶解試験の際に、40℃の温度及び75%の相対湿度で少なくとも1カ月の加速された貯蔵条件にさらされた後の溶解パターンを該加速された条件にさらされる前の溶解パターンと比較した場合に、いかなる時点においても放出される総活性剤の約15%より広くないバンド領域を与えることを特徴とする、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項5】
該被覆された基材が、該バンド領域が得られるまで、該被覆中の個々のアクリル系ポリマー粒子を合体させ、周囲の液体にさらされたとき該活性剤の放出を徐々に遅くするように、前記水性分散液のガラス転移温度より高い温度で硬化させられていることを特徴とする、請求項3または4に記載の製剤。
【請求項6】
該基材が約2%〜約25%の付着重量で被覆されていることを特徴とする、請求項1または3に記載の製剤。
【請求項7】
該治療活性剤が、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、非ステロイド抗炎症剤、胃腸剤、制吐剤、抗てんかん剤、血管拡張剤、鎮咳剤、去啖剤、抗喘息剤、ホルモン剤、利尿剤、抗低血圧薬、抗高血圧薬、気管支拡張剤、抗生物質、抗ウィルス剤、抗痔疾剤、ステロイド剤、睡眠剤、向精神剤、下痢止め剤、粘液溶解剤、鎮静剤、うっ血除去剤、緩下剤、ビタミン剤及び興奮剤から成る群より選ばれたものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
該基材が医薬的に許容可能なビーズであり、複数の該被覆され硬化したビーズが、水性溶液に接触したときに、放出が制御された有効薬量を与えるのに充分な量でカプセル中に入れられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
該基材が錠剤の核であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
該治療活性剤が、ヒドロモルホン、オキシコドン、モルヒネ、レボルファノール、メタドン、メペリジン、ヘロイン、ジヒドロコデイン、コデイン、ジヒドロモルヒネ、ブプレノルフィン、それらのいずれかの塩、及びこれらの混合物から成る群より選ばれたオピオイド鎮痛剤であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
該被覆が、約24〜約48時間の間、硬化させられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
該透過性を増大させる化合物が、該硬化された被覆基質からの該治療活性剤の放出速度を調節するのに有効な量で含有されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
該透過性を増大させる化合物が、遊離ラジカル重合が可能なモノエチレン性不飽和第4級アンモニウム化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
該被覆された基材が、該全身的に活性な治療剤の放出を変化させる、該被膜を貫通する少なくとも一つの通路を含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
40℃の温度および75%の相対湿度の加速された貯蔵条件に3カ月間さらした後にも変化しない該活性剤の安定した溶解を提供することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
製剤中に含有される該活性剤の量の一部が該基材の被覆中に配合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
40℃の温度で75%の相対湿度で少なくとも1カ月間の加速化された貯蔵条件にさらした後の溶解パターンを、上述の加速化された条件にさらす前の溶解パターンと比較した場合に、バンド領域が約7%以上は変化しないことを特徴とする、請求項5記載の製剤。
【請求項18】
該基材が約2%〜約50%の付着重量で被覆されていることを特徴とする、請求項1または3に記載の製剤。
【請求項19】
該アクリル系ポリマーが、アンモニウム基と(メタ)アクリル酸エステルのモル比が約1:20〜約1:40であるアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの共重合体の混合物からなることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
更に、pH依存性の可塑化されたアクリル系ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
前記可塑化されたアクリル系ポリマーは、pH依存性でない可塑化されたアクリル系ポリマー、pH依存性の可塑化されたアクリル系ポリマー、およびpH依存性でない可塑化されたアクリル系ポリマーとpH依存性の可塑化されたアクリル系ポリマーとの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。

【公開番号】特開2008−24708(P2008−24708A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213400(P2007−213400)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【分割の表示】特願平6−221510の分割
【原出願日】平成6年9月16日(1994.9.16)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】