説明

アクリル系感圧接着テープ又はシート

【課題】初期低温接着力において高い接着力を発揮し、さらに剥離ライナーのライナー浮き抑止性に優れるアクリル系感圧接着テープ又はシートを提供する。
【解決手段】本発明のアクリル系感圧接着テープ又はシートは、感圧接着剤層及び剥離ライナーを有し、感圧接着剤層が、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとを含んでいるアクリル系モノマー混合物から形成されるアクリル系ポリマー、無機充填材、及び気泡を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層であり、また剥離ライナーが、一方の表層として低密度ポリエチレンからなる層を有し、他方の表層として低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層を有し、さらに中間層として高密度ポリエチレンからなる層を有する、剥離ライナーであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系感圧接着テープ又はシートに関し、さらに詳細には、自動車外装部品の自動車塗装板への固定、特にウェザーストリップの固定に使用されるアクリル系感圧接着テープ又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外装部材を自動車塗装板に固定するため、アクリル系感圧接着テープ又はシート(以下、「テープ又はシート」を、単に「テープ」あるいは「シート」と称する場合がある)が広く用いられている。このような用途に用いられる感圧接着テープは、部材の自重および反撥に耐え得るような高い凝集力ならびに高い剪断強度を付与するため、加工性を向上させるため、あるいは軽量化させるため、無機充填材あるいは有機充填材を添加することができる。
【0003】
このような無機充填材としては、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、ガラス微小球、アルミナ微小球などが挙げられる(特許文献1、特許文献2参照)。また、有機充填材としては、ポリエステルビーズ、塩化ビニリデン微小球、アクリル微小球などが挙げられる(特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、一般的な外装用感圧接着テープの配合系において、充填材として用いられる無機充填材の添加量は比較的多く、シート表面に非接着性粒子が混入することより接着性が減少し、低温下での低圧着力条件下では接着性の減少は顕著となる。さらに、ドアウェザーストリップのように柔軟なゴム製でありさらに中空である部材では、部材にかけられた圧着力は部材により分散、緩和されるため充分な力が接着界面に加わらないために固定不良が生じることがある。
【0005】
ところで、感圧接着テープは、例えば両面接着層を有する場合などには、片面を被着体に接着させ、もう片面には剥離ライナーを設けた状態で、切断、加工され、その後は使用時まである程度の期間保管されることがある。特に、ドアウェザーストリップのような長い部材や柔軟な部材の場合には、省スペースの観点から、これらは巻いた状態で保管される場合がある。このように、剥離ライナーを設けた感圧接着テープを湾曲した状態で保管する場合には、剥離ライナーが感圧接着剤層から部分的に剥離して、いわゆる「ライナー浮き」が生じ、感圧接着剤層が汚染されることがある。
【0006】
上記、剥離ライナー浮きを抑制するために、剥離力を高めた剥離ライナーを用いることが可能であるが、この場合、ライナー浮きは改善されるものの剥離性能が低下する。すなわち、ライナー浮き抑制と剥離機能は二律背反(トレードオフ)の関係となっていた。また、ライナー浮き抑制のためには、極性基を含有した材料を剥離層として用いる手法が知られているが(例えば、特許文献4参照)、これらはリサイクルが困難であるという問題点を有していた。剥離ライナーは使用後廃棄されるため、環境負荷の観点から、リサイクル性に優れたものが求められているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平4−248820号公報
【特許文献2】特公平2−50145号公報
【特許文献3】特公平8−32435号公報
【特許文献4】特許第3179516号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、初期低温接着力において高い接着力を発揮し、さらに剥離ライナーの感圧接着剤層からのライナー浮き抑止性に優れるアクリル系感圧接着テープ又はシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意検討した結果、感圧接着剤層として、(a)炭素数が1〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと(b)極性基を有するビニルモノマーとを、(a)と(b)との成分割合[(a)/(b)](重量比)で95/5〜91/9の割合となるように含んでいるアクリル系モノマー混合物から形成されるアクリル系ポリマー、該アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して0.1重量部以上2重量部未満の割合となるような量の無機充填材、及び気泡を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を用いれば、初期低温接着力において高い接着力を得ることができ、同時に剥離ライナーとして、特定の樹脂組成及び特定の積層構成からなる剥離ライナーを用いれば、剥離力と、感圧接着剤層からのライナー浮き抑止性との両立を達成しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、感圧接着剤層及び剥離ライナーを有するアクリル系感圧接着テープ又はシートであって、感圧接着剤層が、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとを、(a)と(b)との成分割合[(a)/(b)](重量比)で95/5〜91/9の割合となるように含んでいるアクリル系モノマー混合物から形成されるアクリル系ポリマー、該アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して0.1重量部以上2重量部未満の割合となるような量の無機充填材、及び気泡を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層であり、また剥離ライナーが、一方の表層として低密度ポリエチレンからなる層を有し、他方の表層として低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層を有し、さらに中間層として高密度ポリエチレンからなる層を有する、少なくとも3層の層構造を有する剥離ライナーであることを特徴とするアクリル系感圧接着テープ又はシートを提供する。
【0011】
前記無機充填材は、疎水性シリカ、中空ガラス微小球からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の無機充填材であることが好ましい。
【0012】
前記(b)極性基を有する少なくとも1種以上のビニルモノマーは、アクリル酸であることが好ましい。
【0013】
前記剥離ライナーにおいて、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層は、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレンが重量比で10/90〜90/10の割合となるように含有していることが好ましい。また、剥離ライナーの厚みは、10〜500μmであることが好ましい。
【0014】
前記アクリル系感圧接着テープ又はシートは、自動車外装部品の自動車塗装板への固定に使用されることが好ましい。特に、自動車外装部品は、ウェザーストリップであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアクリル系感圧接着テープ又はシートによれば、前記構成を有しているので、初期低温接着力において高い接着力を得ることができ、さらに剥離ライナーの感圧接着剤層からのライナー浮き抑止性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のアクリル系感圧接着テープは、(a)炭素数が1〜14のアルキル(メタ)アクリレートと(b)極性基を有するビニルモノマーとを、前者(a)/後者(b)が重量比で95/5〜91/9の割合となるように含んでいるアクリル系モノマー混合物から形成されるアクリル系ポリマー、このようなアクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して0.1重量部以上2重量部未満の割合となるような量の無機充填材、及び気泡を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層、及び一方の表層として低密度ポリエチレンからなる層を有し、他方の表層として低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層を有し、さらに中間層として高密度ポリエチレンからなる層を有する、少なくとも3層の層構造を有する剥離ライナーを少なくとも有している。なお、本発明のアクリル系感圧接着テープでは、通常、使用する際に剥離ライナーは剥がされる。
【0017】
本発明のアクリル系感圧接着テープとしては、両面が感圧接着面(粘着面)となっている両面感圧接着テープの形態であってもよいし、片面のみが感圧接着面(粘着面)となっている片面感圧接着テープの形態であってもよい。
【0018】
本発明のアクリル系感圧接着テープが両面感圧接着テープの形態である場合、例えば、少なくとも気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を有する感圧接着剤層のみから形成された構成のアクリル系両面感圧接着テープ(「基材レスアクリル系両面感圧接着テープ」と称する場合がある)であってもよく、基材の少なくとも一方の面に気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が形成された構成のアクリル系両面感圧接着テープ(「基材付きアクリル系両面感圧接着テープ」と称する場合がある)であってもよい。
【0019】
基材レスアクリル系両面感圧接着テープとしては、例えば、感圧接着剤層が気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層のみから形成された構成の基材レスアクリル系両面感圧接着テープ、感圧接着剤層が気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層と気泡を含有しない感圧接着剤層(「気泡非含有感圧接着剤層」と称する場合がある)との積層体から形成された構成の基材レスアクリル系両面感圧接着テープなどが挙げられる。また、基材付きアクリル系両面感圧接着テープとしては、例えば、基材の両面に気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が形成された構成の基材付きアクリル系両面感圧接着テープ、基材の一方の面に気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が形成され、且つ基材の他方の面に気泡非含有感圧接着剤層が形成された構成の基材付きアクリル系両面感圧接着テープなどが挙げられる。
【0020】
なお、本発明のアクリル系感圧接着テープは、一枚の剥離ライナーのみにより、感圧接着面が保護された構成を有するシングルセパレータタイプであってもよく、二枚の剥離ライナーにより、感圧接着面が保護された構成を有するダブルセパレータタイプであってもよい。
【0021】
また、アクリル系感圧接着テープは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明のアクリル系感圧接着テープは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。なお、アクリル系感圧接着テープがロール状に巻回された形態を有している場合、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層などの感圧接着剤層を、剥離ライナーや基材の背面側に形成された剥離処理層により保護した状態でロール状に巻回することにより作製することができる。
【0022】
本発明のアクリル系感圧接着テープは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0023】
(気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層)
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層(気泡混合無機充填材含有アクリル系粘着剤層)は、気泡を含有することにより、気泡構造を有しているので、曲面や凸凹面及び被着体の屈曲に対して追従し接着に十分な接着面積を確保することができ、また応力分散性に優れているために高剪断力性や耐反撥力性を発現することができる。
【0024】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層に含まれている気泡は、基本的には、独立気泡タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と連続気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0025】
また、このような気泡としては、通常、球状(特に真球状)の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。前記気泡において、その平均気泡径(直径)としては、特に制限されず、例えば、1〜1000μm(好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm)の範囲から選択することができる。
【0026】
気泡中に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分;「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に制限されず、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分を用いることができる。気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスが含まれた状態で、重合反応等の反応を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが重要である。気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことや、コスト的な観点などから、窒素が好適である。
【0027】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層中における気泡量は、特に制限されず、アクリル系感圧接着テープの使用用途などに応じて適宜選択することができ、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の全体積に対して10%以上(好ましくは11%以上、さらに好ましくは12%以上)とすることができる。なお、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層中の気泡量の上限としては、特に制限されず、例えば、50%以下(好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下)とすることができる。
【0028】
このような気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層において、気泡が形成される形態は特に制限されない。気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層としては、例えば、(1)予め、気泡を形成するガス成分(気泡形成ガス)が混合されたアクリル系モノマー混合物(「気泡混合アクリル系モノマー混合物」と称する場合がある)を用いることにより、気泡が形成された形態の気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層や、(2)発泡剤を含有するアクリル系モノマー混合物を用いることにより、気泡が形成された形態の気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層などが挙げられる。本発明では、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層としては、気泡混合アクリル系モノマー混合物を用いることにより、気泡が形成された形態の気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が好適である。なお、気泡混合アクリル系モノマー混合物中の気泡量は、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層中の気泡量に対応した範囲から適宜選択することができる。
【0029】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層は、通常、ベースポリマーとして、モノマー主成分としての(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、共重合性モノマーとしての少なくとも1種以上の(b)極性基を有するビニルモノマーからなるアクリル系モノマー混合物から形成されるアクリル系ポリマーを含有している。
【0030】
アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー混合物における、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとの成分割合[(a)/(b)]は、重量比で、(a)/(b)=95/5〜91/9(好ましくは94/6〜91/9、より好ましくは94/6〜92/8)である。アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー混合物における、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとの割合において、重量比で、(a)/(b)=91/9を超えるような割合となるように(b)極性基を有するビニルモノマーを使用すると(つまり、(b)極性基を有するビニルモノマーの割合を多くして上記範囲外とすると)、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が硬くなって、低温接着性が悪化する場合がある。また、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー混合物における、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとの割合において、重量比で、(a)/(b)=95/5未満となるような割合となるように(b)極性基を有するビニルモノマーを使用すると(つまり、(b)極性基を有するビニルモノマーの割合を少なくして上記範囲外とすると)、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の凝集力が低下して、常態接着性が悪化する場合がある。
【0031】
また、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量において、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとを合わせた割合は、90重量%以上(好ましくは95重量%以上)である。
【0032】
このような(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常、炭素数1〜14の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。中でも炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましい。また、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。
【0033】
また(b)極性基を有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有モノマー;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマーなどが挙げられる。(b)極性基を有するビニルモノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物が好ましく、特にアクリル酸などが好ましい。なお、(b)極性基を有するビニルモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、上記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、多官能性モノマーなどの共重合性モノマーが用いられていてもよい。
【0035】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0036】
多官能性モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であり、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性モノマーの使用量が、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して2重量%を超えると、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤の凝集力が高くなりすぎ、感圧接着性が低下するおそれがある。なお、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤の凝集力が低下する。
【0037】
また、多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの前述の(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0038】
アクリル系ポリマーは、公知乃至慣用の重合方法により調製することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、光重合法などが挙げられる。中でも、本発明では、作業性や安定した気泡構造を得る観点から、アクリル系ポリマーの調製に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いた熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することが好ましい。すなわち、本発明では、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)極性基を有するビニルモノマー、及び重合開始剤を少なくとも含むアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物に、活性エネルギー線を照射して、硬化・重合させることにより、アクリル系ポリマーを形成することが好ましい。
【0039】
このように、重合開始剤(熱重合開始剤や光重合開始剤など)が含まれていると、熱や活性エネルギー線により硬化が可能となり、そのため、アクリル系モノマー混合物に気泡が混合された状態で硬化させて気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を形成させることにより、気泡が安定して含有された構造を有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を容易に形成することができる。
【0040】
特に重合時間を短くすることができる利点などから、重合開始剤として光重合開始剤を用いる光重合法が好ましい。すなわち、活性エネルギー線を用いた重合を利用して、安定した気泡構造を有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を形成することが好ましい。なお、重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などを用いることができる。
【0042】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。
【0043】
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが含まれる。
【0044】
光重合開始剤の使用量としては、光重合によってアクリル系ポリマーを形成することができる限り特に制限されないが、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部)の範囲から選択することができる。
【0045】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー線をアクリル系モノマー混合物に照射することが重要である。このような活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0046】
なお、前記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤[例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなど]、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0047】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層は、さらに無機充填材を含有する。これにより、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層における凝集力を高めることができ、また耐熱性を向上させることができる。
【0048】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層に無機系充填材を含有させる方法としては、特に制限されないが、例えば気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を構成する感圧接着剤を形成後に、当該感圧接着剤に無機充填材を配合・混合する方法や、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物に配合・混合する方法などが挙げられる。中でも、作業性の点から、アクリル系ポリマーを形成するアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物に配合・混合する方法が好ましい。
【0049】
無機充填材としては、例えば、疎水性シリカなどのシリカ、アルミナ、シリコーン(シリコーンパウダー)、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、タルク、層状ケイ酸塩、粘土鉱物、ガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン、チタン白、チタニア、ジルコニア、カーボン(例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、金属粒子(例えばマグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、コバルト、ニッケル、銅、ゲルマニウム、モリブテン、ロジウム、銀、インジウム、スズ、タングステン、イリジウム、白金、鉄、金等)、金属酸化物粒子(例えば鉄酸化物、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化カルシウム、酸化カドミウム等)などが挙げられる。また、金属酸化物(例えば上記金属酸化物、特に酸化チタンなど)が担持したシリカゲルを用いてもよい。さらに、中空の無機系微小球状体(中空無機系微小球状体)を用いてもよい。なお、無機充填材は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
中でも、軽量化の観点から疎水性シリカなどのシリカや、中空ガラスバルーン等の中空ガラス微小球(ガラス製の中空バルーン);中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製中空バルーンなど中空無機系微小球状体が好ましく、特に中空ガラス微小球が好ましい。このようなシリカや中空無機系微小球状体によれば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層において、感圧接着剤としての最低限の強度を容易に確保することができる。
【0051】
中空無機系微小球状体の粒径(平均粒子径)としては、特に制限されないが、例えば、1〜500μm(好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm)の範囲から選択することができる。
【0052】
中空無機系微小球状体の比重としては、特に制限されないが、例えば、0.1〜0.8g/cm3(好ましくは0.12〜0.5g/cm3)の範囲から選択することができる。中空微小球状体の比重が0.1g/cm3よりも小さいと、感圧接着剤やアクリル系混合物又はその部分重合組成物に中空無機系微小球状体を配合して混合する際に、中空無機系微小球状体の浮き上がりが大きくなるため、中空無機系微小球状体を均一に分散させることができ難くなり、一方、0.8g/cm3よりも大きいと、高価になり、コストが高くなる。
【0053】
なお、中空無機系微小球状体の表面には、各種表面処理(例えば、シリコーン系化合物やフッ素系化合物等による低表面張力化処理など)が施されていてもよい。
【0054】
無機充填材の使用量としては、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0.1重量部以上2重量部未満、好ましくは0.1重量部以上0.7重量部未満となるような範囲から選択することができる。無機充填材の使用量が、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0.1重量部未満となるような使用量であると、気泡が微分散化されにくくなる。一方、2重量部以上となるような使用量であると、アクリル系感圧接着テープの使用時に、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層と被着体との界面に凹凸が生じて、接着面積が減少し、接着力が低下するおそれがある。
【0055】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層には、アクリル系感圧接着テープの用途などに応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。
【0056】
無機充填材とポリマーとの間の密着性や摩擦抵抗の低減、気泡等の混合性や安定性の観点から、本発明では、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層には界面活性剤を添加することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。中でも、フッ素系界面活性剤が好ましく、特に分子中にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が好ましく用いられる。さらに、中でも、ベースポリマーに対する分散性の観点から、非イオン型界面活性剤が好ましい。また、フッ素系界面活性剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記フッ素系界面活性剤としては、特開2006−022189号記載のフッ素系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0057】
上記フッ素系界面活性剤としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、商品名「サーフロンS−393」セイケミカル(株)製などが好適に用いられる。
【0058】
その他の添加剤としては、例えば架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体あるいは液状のもの)、可塑剤、上記無機充填材以外の充填材、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などが挙げられる。
【0059】
例えば、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(b)極性基を有するビニルモノマー、及び光重合開始剤を少なくとも含むアクリル系モノマー混合物又はその部分重合物に、活性エネルギー線を照射して、硬化・重合させることにより、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成する場合、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を着色させるために、光重合反応を阻害しない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の着色として、黒色が望まれる場合には、着色顔料として、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの使用量としては、着色度合いや上記光重合反応を阻害しない観点から、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層のベースポリマーであるアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分100重量部に対して0.15重量部以下(例えば、0.001〜0.15重量部)、好ましくは0.02〜0.1重量部の範囲から選択することが望ましい。
【0060】
なお、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が、発泡剤を含有するアクリル系モノマー混合物を用いることにより、気泡が形成された形態の気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層である場合、該発泡剤としては、特に制限されず、例えば、公知の発泡剤から適宜選択することができる。発泡剤としては、例えば、熱膨張性微小球などを用いることができる。
【0061】
なお、本発明では、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が気泡混合アクリル系モノマー混合物を用いることにより、気泡が形成された形態の気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層である場合、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層中に気泡を安定的に混合して存在させるために、気泡を、気泡混合アクリル系モノマー混合物中に配合する最後の成分として配合して混合させることが好ましく、特に、気泡を混合する前のアクリル系モノマー混合物の粘度を高くすることが好ましい。粘度としては、混合された気泡を安定的に保持することが可能な粘度であれば特に制限されないが、例えば、粘度計としてBH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数:10rpm、測定温度:30℃の条件で測定された粘度としては、5〜50Pa・s(好ましくは10〜40Pa・s)であることが望ましい。粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、30℃)が、5Pa・sより小さいと、粘度が低すぎるため、混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、一方、50Pa・sを超えていると、粘度が高すぎて、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の形成が困難となる。
【0062】
なお、気泡を混合する前のアクリル系モノマー混合物の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分等を配合する方法、感圧接着剤におけるベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーを形成するためのモノマー成分を一部重合させる方法などにより、調整することができる。具体的には、例えば、(a)炭素数が1〜14のアルキル(メタ)アクリレートと(b)極性基を有するビニルモノマーとを少なくとも含んでいるアクリル系モノマー混合物に、重合開始剤(例えば光重合開始剤など)を配合してから、該モノマー混合物に対して重合開始剤の種類に応じた重合反応を行って、一部のモノマー成分のみが重合した組成物(シロップ)を調製することがあげられる。
【0063】
本発明では、該シロップに、無機充填材や必要に応じて各種添加剤などを配合して、気泡を安定的に含有することが可能な適度な粘度を有する無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を調製することができる。そして、この無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物に、気泡を導入して混合させることにより、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を得ることができる。
【0064】
気泡を混合させる方法としては、特に制限されず、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータと対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているロータとを備えた装置などが挙げられる。この装置におけるステータ上の歯と、ロータ上の歯との間に、例えば無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を導入し、ロータを高速回転させながら、貫通孔を通して気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物に導入させることにより、気泡形成ガスが無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物に細かく分散され混合され、気泡及び無機充填材を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を得ることができる。
【0065】
なお、気泡の合一を抑制又は防止するためには、気泡の混合から、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の形成までの工程を一連の工程として連続的に行うことが好ましい。すなわち、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層は、前述のようにして気泡を混合させて気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を調製した後、続いて、該気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を用いて、公知の感圧接着剤層の形成方法を利用して形成されることが好ましい。具体的には、例えば、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を、所定の面上に塗布し、必要に応じて乾燥や硬化等を行うことにより、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を形成することができる。なお、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の形成に際しては、前述のように、加熱や活性エネルギー線の照射により、硬化させることが好ましい。すなわち、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を用い、該気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を、所定の面上に塗布した後、加熱や、活性エネルギー線の照射を行って、気泡を安定的に保持した状態で硬化させることにより、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を好適に形成することができる。
【0066】
気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層は、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。また、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、200〜5000μm(好ましくは300〜4000μm、さらに好ましくは400〜3000μm)の範囲から選択することができる。気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層の厚みが200μmよりも小さいと、クッション性が低下して、曲面や凹凸面に対する接着性が低下し、一方、5000μmよりも大きいと、均一な厚みの層が得られにくくなる。
【0067】
(基材)
本発明のアクリル系感圧接着テープが基材付きアクリル系感圧接着テープである場合、基材としては、特に制限されず、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材(その原料としては、特に制限されず、例えば、マニラ麻、レーヨン、ポリエステル、パルプ繊維などを適宜選択することができる);金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(例えば、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
なお、基材として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率などの変形性を制御していてもよい。また、基材としては、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層が活性エネルギー線による硬化により形成される場合は、活性エネルギー線の透過を阻害しないものを使用することが好ましい。
【0069】
基材の表面は、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層等との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0070】
基材の厚みは、強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1〜1000μm)、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは3〜300μm程度であるが、これらに限定されない。なお、基材は単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0071】
(気泡非含有感圧接着剤層)
気泡非含有感圧接着剤層としては、例えば、公知の感圧接着剤(例えば、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤、ビニルアルキルエーテル系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤、ポリエステル系感圧接着剤、ポリアミド系感圧接着剤、ウレタン系感圧接着剤、フッ素系感圧接着剤、エポキシ系感圧接着剤など)を用いて、公知の感圧接着剤層の形成方法を利用して形成することができる。なお、気泡非含有感圧接着剤層の厚みは、特に制限されず、目的や使用方法などに応じて適宜選択することができる。
【0072】
(剥離ライナー)
本発明のアクリル系感圧接着テープでは、接着面を保護するために、剥離ライナーが用いられている。このような剥離ライナーとしては、接着面からの剥離性に優れ、且つライナー浮き(保存中に剥離ライナーが感圧接着剤層から部分的に剥離すること)を抑制できる観点から、「少なくとも3層の層構造を有する剥離ライナーであって、一方の表層として低密度ポリエチレンからなる層を有し、他方の表層として低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層を有し、さらに中間層として高密度ポリエチレンからなる層を有する剥離ライナー」(「特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナー」と称する場合がある)が使用される。
【0073】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーは、前述の特定組成からなる感圧接着剤層と組み合わすことで剥離性が良好であり、なおかつ、アクリル系感圧接着テープを湾曲した状態で保管した場合であっても、ライナー浮きが生じることはない。また、各層がポリエチレンからなっているシンプルな構成であるため、リサイクル性にもすぐれている。
【0074】
なお、本発明における「高密度ポリエチレン」とは、JIS K 6922−2に基づく密度が930(kg/m3)以上であるポリエチレンをいい、「低密度ポリエチレン」とは、JIS K 6922−2に基づく密度が865(kg/m3)以上930(kg/m3)未満であるポリエチレンをいう。本発明のおける「低密度ポリエチレン」とは、エチレンモノマーを高圧法により重合して得られる、長鎖分岐(分岐鎖長は特に限定されない)を有するもの、いわゆる「低密度ポリエチレン」や「超低密度ポリエチレン」と称するもの、及びエチレンと炭素数が3〜8のα−オレフィンモノマーとを低圧法により重合して得られる「直鎖状低密度ポリエチレン」(この場合の短鎖分岐の長さは炭素数1〜6)と称するもの、さらには上記密度範囲に包含される「エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー」の総称として定義される。
【0075】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーにおける、表層として低密度ポリエチレンからなる層は、実質的に低密度ポリエチレンのみを必須成分とする。具体的には、該表層を構成する樹脂成分中、低密度ポリエチレンが95重量%以上占めていることが必要であり、好ましくは99重量%以上である。また、ここでの「低密度ポリエチレン」は単独、あるいは複数のブレンドでもよく、上述の含有量は複数の低密度ポリエチレンの総量に対して適用される。上記低密度ポリエチレンには直鎖状低密度ポリエチレンが含まれる。特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーにおいては、一方の表層として低密度ポリエチレンからなる層を用いることにより、他方の表層との関係において良好な剥離差(剥離力の差)を実現できる。
【0076】
上記低密度ポリエチレンとしては、密度が890(kg/m3)以上、930未満(kg/m3)であることが好ましい。
【0077】
表層として低密度ポリエチレンからなる層には、樹脂成分以外の顔料、充填材、滑剤、老化防止剤などの各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
【0078】
表層としての、低密度ポリエチレンからなる層の厚みとしては、剥離機能発現の観点から、2.5〜250μmが好ましく、より好ましくは5〜100μmである。
【0079】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーにおいては、他方の表層として低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層が用いられている。従って、ライナー浮き抑止性と剥離性を調製することができる。
【0080】
低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層は、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレンが、重量比で、10/90〜90/10(好ましくは、30/70〜90/10)の割合となるように含んでいる。低密度ポリエチレンの混合割合が低い場合、ライナー浮き抑止効果は高くなり、一方低密度ポリエチレンの混合割合が高い場合、剥離性は良好となる傾向があり、混合割合は各特性と本発明のシート全体の柔軟性の観点から適量選択することができる。
【0081】
上記高密度ポリエチレンとしては、密度が942(kg/m3)以上、960未満(kg/m3)であることが好ましい。
【0082】
表層としての、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層の厚みとしては、剥離性機能発現の観点から、25〜250μmが好ましく、より好ましくは5〜100μmである。
【0083】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーにおける、中間層として高密度ポリエチレンからなる層は、実質的に高密度ポリエチレンのみを必須成分とする。具体的には、該中間層を構成する樹脂成分中、高密度ポリエチレンが95重量%以上占めていることが必要であり、好ましくは99重量%以上である。また、ここでの「高密度ポリエチレン」は単独、あるいは複数のブレンドでもよく、上述の含有量は複数の高密度ポリエチレンの総量に対して適用される。特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーにおいては、中間層として高密度ポリエチレンのみを使用した層を用いることにより、剥離ライナー全体の剛性を高めることができ、取扱性や作業性を向上させることができる。
【0084】
なお、特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーは、本発明の効果を損なわない範囲内で上記高密度ポリエチレンからなる層以外の中間層(他の中間層)を有していてもよい。中間層としては、例えば各層の層間接着力を向上させるための接着層や、着色層、その他機能を付与する層などが挙げられる。
【0085】
中間層としての高密度ポリエチレンからなる層には、樹脂成分以外の顔料、充填材、滑剤、老化防止剤などの各種添加剤が、本発明の効果を損なわない範囲内で配合されていてもよい。
【0086】
中間層としての高密度ポリエチレンからなる層の厚みとしては、剛性を制御する観点から5〜480μmが好ましく、より好ましくは10〜180μmである。
【0087】
なお、特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーでは、表層と中間層とを別個に設けることにより、表層と中間層のバランスを適宜コントロールして、剥離性と強度の関係を適切な範囲に保つことができる。
【0088】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーでは、両方の表層を剥離層として使用することができる。特に低密度ポリエチレンからなる層を低剥離力側面として、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層を高剥離力側面として使用することが好ましい。本発明のアクリル系感圧接着テープでは、通常、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層上に気泡混合無機充填材含有アクリル系粘着剤層が設けられ、低密度ポリエチレンからなる層は、例えば、アクリル系感圧接着テープを巻回した場合、背面層としてスムーズな巻き戻し性を発現するための役割を担う。
【0089】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーは樹脂成分として、実質的に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのみから構成される場合に、リサイクル性が向上するため好ましい。剥離ライナーの全樹脂成分に対して、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン以外の樹脂成分は20重量%未満が好ましく、より好ましくは10重量%未満である。
【0090】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーの厚みは、ライナーがロール状に巻かれて保管される際等には柔軟性を要する観点から、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。また、ハンドリング性の観点から、厚みは10μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上、最も好ましくは100μm以上である。
【0091】
特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーは、溶融製膜法(Tダイ法、インフレーション法)、溶液製膜法などの公知慣用のシート形成手法によって製造することができる。特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーの積層方法としても、特に限定されず、共押出法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法など公知慣用の方法を用いることができる。中でも、生産性の観点から、共押出法が好ましい。
【0092】
上記の中でも、特にTダイ製膜法を用いる場合には、耐熱性が良好となる傾向にあるため好ましい。耐熱性が良好となると、例えば、アクリル系感圧接着テープを、特定積層構造ポリエチレン製剥離ライナーにより一方の接着面が保護されている状態で、他方の気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層による接着面により、被着体に貼り付けて、被着体(例えば、ウェザーストリップゴム)にシリコーン塗布、シリコーン焼き付け工程(例えば、120℃×3分)を行う場合でも、剥離ライナーの浮きや剥がれが生じることはない。
【0093】
[アクリル系感圧接着テープ]
本発明のアクリル系感圧接着テープは、公知乃至慣用の感圧接着テープの作製方法を用いて作製することがきる。例えば、基材の片面に気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を有する構成の基材付きアクリル系感圧接着テープは、基材の片面に、前記の気泡及び無機充填材を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を塗布し、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物層を形成してから、該気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物層を重合させて、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を形成し、該気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層上に前記剥離ライナーを貼付することにより作製することができる。また、前記剥離ライナー上に気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を形成してから、基材の片面に、基材と気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層とが接する形態で、貼り合わせることによっても作製することができる。
【0094】
また、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤のみから構成される基材レスアクリル系両面感圧接着テープは、前記剥離ライナー上に、前記気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物を塗布し、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物層を形成してから、該気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤組成物層を重合させて、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を形成することにより作製することができる。
【0095】
このようなアクリル系感圧接着テープは、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を有するので、低温(例えば、−20〜5℃程度の温度)での初期接着性に優れ、また気泡が応力緩和性を向上することにより、高い耐反発性を発揮し、さらに曲面や凸凹面及び被着体の屈曲に対して追従し接着に十分な接着面積を確保することができ、さらにまた応力分散性に優れているために高剪断力性や耐反撥力性を発現することができる。
【0096】
また、本発明のアクリル系感圧接着テープは、湾曲した状態で保管されても、剥離ライナーのライナー浮きが生じず、また、使用時には容易に剥離ライナーを剥離して、気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層を露出させることができる。このため、長い形状や複雑な形状の部材や柔軟な部材に対する接着シートや接着テープ用途として特に好ましく用いられる。
【0097】
本発明のアクリル系感圧接着テープは、塗膜(例えば、耐酸性雨塗膜、自動車用塗膜など)、塗料板、樹脂板、鋼板等の金属板、塗装板(例えば、前記樹脂板、鋼板等の金属板などの表面に前記耐酸性雨塗膜、自動車用塗膜などの塗膜を設けたもの)などの難接着性の被着体に対する初期接着性に優れている。中でも、自動車のボディーなどの自動車塗装板に対する初期接着性に優れている。
【0098】
被着体である塗膜としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル・メラミン系、アルキド・メラミン系、アクリル・メラミン系、アクリル・ウレタン系、アクリル・多酸硬化剤系などの各種塗膜が挙げられる。
【0099】
また、本発明のアクリル系感圧接着テープが用いられる難接着性の被着体の形状についても特に制限されない。例えば、難接着性の被着体は、平面状、三次元の曲面状などの形状を有する被着体であってもよいし、あるいは、平面状、三次元の曲面状などの形状を有する成形品に塗装処理を施したものであってもよい。
【0100】
本発明のアクリル系感圧接着テープは、例えば、自動車塗装板に貼付して、塗装板を保護したり、装飾を付与する方法で用いることができる。また、本発明のアクリル系感圧接着テープを介して、上記自動車塗装板に物品を接合・固定する方法で用いることができる。上記物品としては、例えば、自動車の外装部品、ボディーの保護用部品や装飾部品が挙げられ。
【0101】
本発明のアクリル系感圧接着テープは、部材を介してテープを自動車塗装板等に圧着する際にかけられる力が直接的に作用する硬質の自動車外装用部材(例えばモールディング、エンブレムなど)に加えて、一般に軟質である自動車外装用部材(例えばウェザーストリップなどの柔軟なゴム製中空部材など)にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0103】
(モノマーシロップの調製例1)
2−エチルヘキシルアクリレート:92重量部、及びアクリル酸:8重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・ジャパン社製):0.05重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・ジャパン社製):0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(シロップ)(「部分重合モノマーシロップ(A)」と称する場合がある)を得た。
【0104】
(剥離ライナーの作製例1)
3層共押出しTダイ成形法により、下記組成物をシート状に押し出し成形し、剥離層(厚み:30μm)、中間層(厚み:40μm)、背面層(厚み:30μm)からなる剥離シート(厚み:100μm)(「剥離ライナー(A)」と称する場合がある)を作製した。
剥離層:高密度ポリエチレン樹脂(商品名「ハイゼックス3300F」株式会社プライムポリマー製、密度:950kg/m3)/低密度ポリエチレン樹脂(商品名「OM05B」東ソー株式会社製、密度:924kg/m3)、高密度ポリエチレン樹脂/低密度ポリエチレン樹脂=20/80[混合比(重量比)]
中間層:高密度ポリエチレン樹脂(商品名「ハイゼックス3300F」株式会社プライムポリマー製、密度:950kg/m3
背面層:低密度ポリエチレン樹脂(商品名「OM05B」東ソー株式会社製、密度:924kg/m3
【0105】
(剥離ライナーの作製例2)
高密度ポリエチレン樹脂/低密度ポリエチレン樹脂=40/60[混合比(重量比)]としたこと以外は、剥離ライナーの作製例1と同様にして、剥離シート(「剥離ライナー(B)」と称する場合がある)を作製した。
【0106】
(剥離ライナーの作製例3)
高密度ポリエチレン樹脂/低密度ポリエチレン樹脂=60/40[混合比(重量比)]としたこと以外は、剥離ライナーの作製例1と同様にして、剥離シート(「剥離ライナー(C)」と称する場合がある)を作製した。
【0107】
(剥離ライナーの作製例4)
高密度ポリエチレン樹脂/低密度ポリエチレン樹脂=80/20[混合比(重量比)]としたこと以外は、剥離ライナーの作製例1と同様にして、剥離シート(「剥離ライナー(D)」と称する場合がある)を作製した。
【0108】
(実施例1)
部分重合モノマーシロップ(A):100重量部に、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.08重量部を添加した後、さらに中空ガラス微小球(商品名「セルスターZ−27」東海工業株式会社製)を部分重合モノマーシロップ(A):100重量部に対して0.5重量部となるような割合で添加した。
中空ガラス微小球添加後の部分重合モノマーシロップに、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」セイケミカル株式会社製、側鎖にポリオキシエチレン基及びフッ化炭化水素基を有するアクリル系重合体、Mw=8300)を0.5重量部添加して、微小球含有粘弾性組成物を得た。なお、該微小球含有粘弾性組成物において、全体積に占める中空ガラス微小球の割合は、約1.5容積%であった。
微小球含有粘弾性組成物を、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータと対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯が付いているロータとを備えた装置におけるステータ上の歯と、ロータ上の歯との間に導入し、ロータを高速回転させながら、貫通孔を通して窒素ガスを微小球含有粘弾性組成物に導入することにより、微小球含有粘弾性組成物に気泡を混合して、気泡混合微小球含有粘弾性組成物を得た。なお、気泡は微小球含有粘弾性組成物の全体積に対して約15容積%となるように混合した。
気泡混合微小球含有粘弾性組成物を、工程セパレーター(シート作製用剥離ライナー;片面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレート製基材;商品名「MRF」「MRN」いずれも三菱ポリエステルフィルム株式会社製)の剥離処理面に塗布して、照度5mWの紫外線(東芝社製「ブラックライトランプ」)を両面から3分間照射し[UVチェッカー(商品名「UVR−T1」株式会社トプコン製)、最大感度:350nmで測定)]、気泡混合微小球含有粘弾性組成物を光硬化させて、工程セパレーターの剥離処理面上に気泡混合微小球含有感圧接着剤層(厚さ:800μm)を得た。
工程セパレーターの剥離処理面上に設けた気泡混合微小球含有感圧接着剤層を、剥離ライナー(A)の剥離層上に貼り合わせ感圧接着シートを得た。
【0109】
(実施例2)
剥離ライナーとして、剥離ライナー(A)の代わりに剥離ライナー(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
【0110】
(実施例3)
剥離ライナーとして、剥離ライナー(A)の代わりに剥離ライナー(C)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
【0111】
(実施例4)
剥離ライナーとして、剥離ライナー(A)の代わりに剥離ライナー(D)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
【0112】
(比較例1)
剥離ライナーとして、剥離ライナー(A)の代わりに、低密度ポリエチレン樹脂(商品名「NUC8160」日本ユニカー株式会社製)を原料とする単層押し出し成形フィルム(愛知プラスチック工業株式会社製、厚み:100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
【0113】
(評価)
実施例及び比較例について、「ライナー浮き試験」、「0℃条件下での90°剥離試験」、「ライナー剥離性試験」、及び「耐熱性試験」を行うことにより、「ライナー浮き抑止性」、「低温初期接着性」、「ライナー剥離性」及び「耐熱性」を評価した。その結果を表1に示した。
【0114】
(0℃条件下での90°剥離試験)
工程セパレーターを剥がして露出させた気泡混合微小球含有感圧接着剤層を、厚み50μmのPETフィルムで裏打ちして、気泡混合微小球含有感圧接着剤層が剥離ライナーで保護された基材付き片面感圧接着シートを作製した。
該基材付き片面感圧接着シートを、0℃雰囲気下、30分放置してから、剥離ライナーを剥がして気泡混合微小球含有感圧接着剤層を露出させ、被着体としての酸性雨抵抗性塗料板(商品名「KINO−1200TW」関西ペイント株式会社製)に、2kgローラーで片道圧着させた後、0℃で20分間エージングした。
エージング後、引張試験機(「商品名「TCM−1KNB」ミネベア社製)を用いて、0℃雰囲気下、90℃剥離方向に引張速度300mm/分にて、基材付き片面感圧接着シートを剥離することにより、0℃条件下での90℃剥離力を測定した。
【0115】
(ライナー浮き試験)
7mm幅×100mm(流れ方向)に切断し、短冊状サンプルを作製した。
該短冊状サンプルから工程セパレーターを剥がして気泡混合微小球含有感圧接着剤層を露出させ、ウレタン系下塗り剤を塗布したポリ塩化ビニルシート(45mm幅×150mm長さ×1mm厚み、リケンテクノス株式会社製)に貼り付け、5kgローラー(ローラー幅:65mm)を1往復させて圧着した。これを試験片とした。
24時間保存した後、長さ100mm×幅50mm×高さ30mmの箱状固定台に、試験片を、図1に示すように、剥離ライナーが内側になるように、楕円状に曲げて固定台に固定した。72時間後、ライナー浮き部分の長さを計測し、1試験片中の浮き部分の長さを合計した。なお、試験は、23℃、60%RHの雰囲気下で行った。
浮き部分の合計長さが10mm以下の場合は、ライナー浮き抑止性良好(○)、10mmを超える場合にはライナー浮き抑止性(×)と判断した。
【0116】
(ライナー剥離性試験)
7mm幅に切断し、短冊状サンプルを作製した。なお、長さ方向は、シート流れ(MD)方向である。
短冊状サンプルから工程セパレーターを剥がして気泡混合微小球含有感圧接着剤層を露出させ、厚さ50μmのポリエステルフィルム(商品名「ルミラー S−10」東レ株式会社製)に貼り合わせ、さらにポリエステルフィルムを、剛性を支える板状体(SUS304BA板、50mm×150mm)に両面テープを用いて貼り合わせて固定した。
万能引張試験機(「商品名「TG−1kNB」ミネベア社製)を用いて、剥離ライナーを180°剥離で引っ張り、抵抗を測定し、180°剥離力(N/7mm)とした。なお、試験は、JIS Z0237に準拠して行い、23℃、60%RHの雰囲気下、引張速度(クロスヘッドスピード)300mm/分で行った。また、試験回数は3回(平均値)とした。
【0117】
(耐熱性試験)
7mm幅×100mm(流れ方向)に切断し、短冊状サンプルを作製した。
該短冊状サンプルから工程セパレーターを剥がして気泡混合微小球含有感圧接着剤層を露出させ、ウレタン系下塗り剤を塗布したポリ塩化ビニルシート(45mm幅×150mm長さ×1mm厚み、リケンテクノス株式会社製)に貼り付け、5kgローラー(ローラー幅:65mm)を1往復させて圧着した。これを試験片とした。
24時間保存後、耐熱試験でポリ塩化ビニルシートが変形しないように、ポリ塩化ビニルシートのサンプルと反対側の面を、ポリ塩化ビニルシートと同サイズのステンレス(SUS)板に両面テープ(商品名「No.500」日東電工株式会社製)を用いて貼り合わせてから、オーブンで120℃、3分間熱処理した。熱処理終了後、室温環境下に取り出した直後の試験片を観察し、下記評価基準で耐熱性を評価した。
耐熱性良好(○):剥離ライナーの浮きや剥がれが見られない
耐熱性不良(×):剥離ライナーの浮きや剥がれが見られる
【0118】
【表1】

【0119】
表1において、「2−EHA」は「2−エチルヘキシルアクリレート」を意味し、「AA」は「アクリル酸」を意味する。
【0120】
実施例は、低温での初期接着性は大きくなっており、良好に接着していることが確認できた。また、剥離ライナーのライナー浮き抑止性、耐熱性も良好であることが確認できた。比較例は、剥離ライナーのライナー浮き抑止性や耐熱性が不良であり、良好なアクリル系感圧接着シートとはいえない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】「ライナー浮き」の評価方法における試験片の固定台に対する固定方法を示した概略上面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 箱状固定台
2 試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着剤層及び剥離ライナーを有するアクリル系感圧接着テープ又はシートであって、感圧接着剤層が、(a)炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(b)極性基を有するビニルモノマーとを、(a)と(b)との成分割合[(a)/(b)](重量比)で95/5〜91/9の割合となるように含んでいるアクリル系モノマー混合物から形成されるアクリル系ポリマー、該アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して0.1重量部以上2重量部未満の割合となるような量の無機充填材、及び気泡を含有する気泡混合無機充填材含有アクリル系感圧接着剤層であり、また剥離ライナーが、一方の表層として低密度ポリエチレンからなる層を有し、他方の表層として低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層を有し、さらに中間層として高密度ポリエチレンからなる層を有する、少なくとも3層の層構造を有する剥離ライナーであることを特徴とするアクリル系感圧接着テープ又はシート。
【請求項2】
無機充填材が、疎水性シリカ、中空ガラス微小球からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の無機充填材である請求項1記載のアクリル系感圧接着テープ又はシート。
【請求項3】
(b)極性基を有する少なくとも1種以上のビニルモノマーが、アクリル酸である請求項1又は2記載のアクリル系感圧接着テープ又はシート。
【請求項4】
剥離ライナーにおいて、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを樹脂成分として含む混合樹脂層が、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとを、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレンが重量比で90/10〜10/90の割合となるように含有している請求項1〜4の何れかの項に記載のアクリル系感圧接着テープ又はシート。
【請求項5】
剥離ライナーの厚みが、10〜500μmである請求項1〜4の何れかの項に記載のアクリル系感圧接着テープ又はシート。
【請求項6】
自動車外装部品の自動車塗装板への固定に使用される請求項1〜5の何れかの項に記載のアクリル系感圧接着テープ又はシート。
【請求項7】
自動車外装部品が、ウェザーストリップである請求項6記載のアクリル系感圧接着テープ又はシート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−286882(P2009−286882A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140388(P2008−140388)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】