説明

アクリル系粘着テープ又はシート、およびその製造方法

【課題】表面調整剤がブリードしている塗膜などの難接着性の被着体に対して、高接着力を発揮するアクリル系粘着テープ又はシートを提供する。
【解決手段】 本発明のアクリル系粘着テープ又はシートは、微小球状体及び、ベースポリマーとしてアルキル(メタ)アクリレートを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、アクリル系モノマー混合物又はその予備重合物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)が設けられているアクリル系粘着テープ又はシートであって、前記粘着剤層(Y)を形成するアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中のアクリル酸の量が全モノマー成分に対して6〜12重量%、n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面調整剤が表面にブリードしている自動車用塗膜などの難接着性の被着体に対して、良好な接着性を発揮するアクリル系粘着テープ又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の外装、ボディーの保護や装飾のために、モール、プレートなどを、発泡体を基材とした感圧性接着テープ(以下、「テープ又はシート」を、単に「テープ」あるいは「シート」と称する場合がある)で固定することが、通常行われている。このような用途に用いられる感圧性接着剤は、塗料に対して接着性が良好であるとともに、耐候性、耐水性、耐ガソリン性、耐久性が要求される。このため、アクリル系の感圧接着剤が用いられ、さらに、接着性維持のために官能基、とくにカルボキシル基を導入したものが一般的に用いられている。
【0003】
最近の自動車塗膜では、ベース層が水系化していることもあり、用いられる表面調整剤の種類やその使用量が変化してきている。本発明者らは、鋭意研究を重ねる中で、前記の接着不良の問題は、塗布時のはじきを防止するために塗料に配合された表面調整剤(レベリング剤)(例えば、楠本化成株式会社製の表面調整剤;特許文献1参照)が塗膜表面にブリードすることにもよることを究明した。そして、塗膜表面にブリードしている表面調整剤の影響により、従来のアクリル系粘着シートでは十分な接着力を得られない塗膜も出てきている(特許文献2参照)。すなわち、かかるブリードのために塗膜表面に凝集力の弱い層が形成され、それが接着力の発現を阻害する。
【0004】
表面調整剤には、シリコーン系、アクリルオリゴマー系、シリコーン/アクリル共重合体系など多種あり、高極性のものから低極性のものまである。高極性の表面調整剤のブリードが生じている塗膜に対しては、従来のアクリル系粘着剤で高い接着力(粘着力;粘着性)が得られるが、低極性の表面調整剤がブリードしている塗膜に対しては、粘着剤が表面調整剤を吸収せず、塗膜表面に凝集力の弱い層が形成され、接着力が得られない。また、従来の塩基性モノマーが用いられている粘着剤では、粘着剤が低極性であるため、高極性の表面調整剤を吸収できず、一つの粘着剤で高極性から低極性の表面調整剤を吸収することはできない。さらに、特許文献3には、フッ素樹脂表面及び塗料塗膜面用の、2−エチルヘキシルアクリレート/n−ブチルアクリレート/α,β−エチレン系不飽和カルボン酸からなるアクリル系共重合体を有するアクリル系粘着剤が開示されているが、高極性から低極性の表面調整剤を吸収して、接着力を向上しうるものではない。
【0005】
そこで、表面調整剤がブリードしている塗膜などの難接着性の被着体に対して、高接着力を得られる手法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−66206号公報
【特許文献2】特開2003−226834号公報
【特許文献3】特許第2732411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、表面調整剤がブリードしている塗膜などの難接着性の被着体に対して、高接着力を発揮するアクリル系粘着シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、表面調整剤が高極性、あるいは低極性のどちらであっても、表面調整剤がブリードしている塗膜に対して高接着力を発揮するアクリル系粘着シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、自動車用塗膜に貼着する用途に好適に用いることができるアクリル系粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、表面調整剤のブリードが生じている塗膜などの難接着性の被着体に対して、粘着シートにおいて高接着力を発揮させるためには、高極性、低極性の両方の表面調整剤を吸収することが必要であり、アクリル酸モノマーに対応する単位で高極性の表面調整剤を、n−ブチルアクリレートモノマー及び2−へチルヘキシルアクリレートモノマーに対応する単位で低極性の表面調整剤を、吸収できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、微小球状体及び、ベースポリマーとしてアルキル(メタ)アクリレートを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸を含むアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)が設けられているアクリル系粘着テープ又はシートであって、前記粘着剤層(Y)を形成するアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中のアクリル酸の量が全モノマー成分に対して6〜12重量%、n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%であることを特徴とするアクリル系粘着テープ又はシートを提供する。
【0010】
前記アクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中の光重合開始剤の量は、全モノマー成分100重量部に対して0.001〜5重量部であることが好ましい。
【0011】
前記微小球状体は、中空ガラスバルーンが好ましい。また、粘弾性体層(X)は、微小球状体、主モノマー成分としての(メタ)アクリル酸エステル及び、光重合開始剤を含む粘弾性体組成物に、活性エネルギー光線を照射することにより得られる層であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、微小球状体及び、ベースポリマーとして(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分するアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸を含むアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)であって、前記粘着剤層(Y)を形成するアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中のアクリル酸の量が全モノマー成分に対して6〜12重量%、n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%である粘着剤層(Y)を設けることを特徴とするアクリル系粘着テープ又はシートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクリル系粘着シートによれば、前記構成を有しているので、表面調整剤のブリードが生じている塗膜などの難接着性の被着体に対して、高接着力を発揮することができる。また、表面調整剤が高極性、あるいは低極性のどちらであっても、高接着力を発揮することができる。さらに、自動車用塗膜に貼着する用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[アクリル系粘着シート]
本発明のアクリル系粘着シート(アクリル系感圧性接着シート)は、微小球状体及び、ベースポリマーとしてアルキル(メタ)アクリレートを単量体主成分するアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、アクリル系粘着剤組成物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)[感圧性接着剤層(Y)]が設けられているアクリル系粘着シートである。つまり、本発明のアクリル系粘着シートは、粘弾性体層(X)の片面又は両面に粘着剤層(Y)が設けられている限り、その形態等が制限されることはない。また、粘弾性体層(X)は、粘着性(接着性)を有していてもよいし、粘着性を有していなくてもよい。なお、アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系モノマー混合物又はその予備重合物を含む組成物のことをいう。
【0015】
アクリル系粘着剤組成物は、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、アクリル酸及び光重合開始剤から構成されており、さらにアクリル酸をアクリル系粘着剤組成物の全モノマー成分に対して6〜12重量%、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートをアクリル系粘着剤組成物の全モノマー成分に対して20〜94重量%、n−ブチルアクリレートを前記2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%に相当する量を含んでいる。また、アクリル系粘着剤組成物は、通常、光重合開始剤をアクリル系粘着剤組成物の全モノマー成分100重量部に対して0.001〜5重量部含んでいる。
【0016】
このようなアクリル系粘着シートは、両面が粘着面(接着面)となっている両面粘着シート(両面感圧性接着シート)の形態を有していてもよく、片面のみが粘着面となっている片面粘着シート(片面感圧性接着シート)の形態を有していてもよい。
【0017】
具体的には、本発明のアクリル系粘着シートの形態としては、例えば、(1)粘着性を有する粘弾性体層(X)の一方の面に、粘着剤層(Y)が形成された構成の両面粘着シート(両面感圧性接着シート)、(2)粘弾性体層(X)の両面に、粘着剤層(Y)が形成された構成の両面粘着シート、(3)粘弾性体層(X)の一方の面に粘着剤層(Y)が形成され、他方の面に粘着剤層(Y)以外の粘着剤層が形成された構成の両面粘着シート、(4)粘着性を有しない粘弾性体層(X)の一方の面に、粘着剤層(Y)が形成された構成の片面粘着シートなどが挙げられる。
【0018】
なお、本発明のアクリル系粘着シートが両面粘着シートの形態である場合、粘着面を提供する層を形成する組成物のモノマー成分は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
粘着剤層(Y)以外の粘着剤層は、例えば、公知の粘着剤(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)を用いて、公知の粘着剤層の形成方法を利用して形成することができる。なお、粘着剤層(Y)以外の粘着剤層の厚みは、特に制限されず、目的や使用方法などに応じて適宜選択することができる。
【0020】
また、本発明のアクリル系粘着シートは、粘着面を保護する目的などで、剥離フィルム(セパレータ)を有していてもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0021】
中間層としては、例えば粘弾性体層(X)と粘着剤層(Y)の間などに設ける1層又は2層以上の中間層が挙げられる。このような中間層としては、例えば、剥離性の付与を目的とした剥離剤のコーティング層、密着力の向上を目的とした下塗り剤のコーティング層、良好な変形性の付与を目的とした層、被着体への接着面積の増大を目的とした層、被着体への接着力の向上を目的とした層、被着体への表面形状に良好も追従させることを目的とした層、加熱による接着力低減の処理性の向上を目的とした層、加熱後の剥離性向上を目的とした層などが挙げられる。
【0022】
本発明のアクリル系粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明のアクリル系粘着シートは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。なお、ロール状に巻回された状態又は形態のアクリル系粘着シートとしては、粘着面を剥離フィルム(セパレータ)により保護した状態でロール状に巻回された状態又は形態を有していてもよく、粘着面を支持体の他方の面に形成された剥離処理層(背面処理層)により保護した状態でロール状に巻回された状態又は形態を有していてもよい。なお、支持体の面に剥離処理層(背面処理層)を形成させる際に用いられる剥離処理剤(剥離剤)としては、例えば、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤などが挙げられる。
【0023】
[粘着剤層(Y)]
粘着剤層(Y)は、アクリル系粘着剤組成物に活性エネルギー光線を照射して光硬化(光重合)させることにより得られる層であり、該粘着剤層は、表面調整剤がブリードしている塗膜などの難接着性の被着体に対して、高接着性を発揮する。
【0024】
粘着剤層(Y)の提供する粘着面において、表面調整剤が表面にブリードしていても、高い接着力を得ることができる作用効果の発現機構は、高極性の表面調整剤はアクリル酸モノマーに対応する単位と相溶性がよく、また低極性の表面調整剤はn−ブチルアクリレートモノマー及び2−エチルヘキシルアクリレートモノマーに対応する単位と相溶性がよいため、表面調整剤が粘着剤層(Y)に吸収され、塗膜表面の凝集力の弱い層の形成が防止され、それにより接着力が発現する接着状態の形成が可能となり、その接着状態が持続することであると推測される。
【0025】
なお、高極性の表面調整剤は、フェドーズ法により求められる溶解度パラメーターであるSP値で20.5(MPa)1/2以上[例えば、20.5以上〜30.7(MPa)1/2未満、好ましくは20.5以上〜26.6(MPa)1/2未満]の値を有する表面調整剤のことをいい、一方、低極性の表面調整剤は、フェドーズ法により求められる溶解度パラメーターであるSP値で20.5(MPa)1/2未満[例えば、16.4以上〜20.5(MPa)1/2未満、好ましくは18.4以上〜20.5(MPa)1/2未満]の値を有する表面調整剤のことをいう。
【0026】
アクリル系粘着剤組成物は、アクリル酸を全モノマー成分に対して6〜12重量%(好ましくは、8〜12重量%)に相当する量、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートを全モノマー成分に対して20〜94重量%(好ましくは、60〜94重量%)に相当する量を有する。アクリル酸が6重量%より少ないと、極性基が少ないことによって粘着力が低下する場合があり、一方12重量%を超えると、粘着剤が硬くなりすぎて「スティック・スリップ」現象を生じる場合がある。また、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量が、20重量%より少ないと、低極性の表面調整剤を吸収することが低下するために、接着力が高くならない場合があり、一方、94重量%を超えると、アクリル酸が全モノマー成分に対して6重量%より少なくなり、極性基が少ないことによって接着力が低下する場合がある。
【0027】
なお、「スティック・スリップ」現象とは、粘着力測定時にある速度(高速の剥離時)に達すると、急に剥がれたり、また元の接着力に戻ったりをすることを繰り返すことをいう。
【0028】
また、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートは、アクリル系粘着剤組成物において前記割合で含まれるが、n−ブチルアクリレートは、アクリル系粘着剤組成物において、2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%となる量(好ましくは、45〜55重量%となる量)含まれている。n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45重量%より少ないと、低極性の表面調整剤の吸収能力が低下する場合があり、一方2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して65重量%を超えると、n−ブチルアクリレートはガラス転移温度が高いために、室温の弾性率が高くなり、粘着剤が硬くなりすぎて「スティック・スリップ」現象を生じる場合がある。
【0029】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤などを用いることができる。
【0030】
具体的には、ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)などが挙げられる。α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)などが挙げられる。α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア907」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名「イルガキュア369」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)などが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「ルシリン TPO」BASF社製)などが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0031】
光重合開始剤は、通常、アクリル系粘着剤組成物の全モノマー成分100重量部に対して、0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜4重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部の割合で用いられる。また、光重合開始剤は、1種又は2種以上が用いられる。
【0032】
アクリル系粘着剤組成物には、粘着剤層(Y)に適度なゲル分率を付与するために、多官能(メタ)アクリレートが配合されていてもよい。多官能(メタ)アクリレートとしては、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を特に制限なく使用できる。
【0033】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、多官能(メタ)アクリレートは、単独で使用されていてもよいし、2種以上組み合わせて使用されていてもよい。
【0034】
多官能(メタ)アクリレートは、アクリル系粘着剤組成物により形成される粘着剤層(Y)のゲル分率が45重量%以上となるように配合するのが好ましく、さらに50重量%以上となるように配合するのがより好ましい。ゲル分率が45重量%未満であると粘着剤層(Y)の凝集力が不足し、保持力やせん断方向への接着強さが不足する場合がある。一方、ゲル分率が高くなりすぎると粘着剤層(Y)のタックが低下し、粘着性能や外観に悪影響を及ぼす場合があることから、多官能(メタ)アクリレートは、粘着剤層(Y)のゲル分率が99重量以下、好ましくは97重量%以下となるように、配合するのが好ましい。
【0035】
粘着剤層(Y)のゲル分率は、以下のようにして求められる。粘着剤層(Y)を約1g採取し、これを精秤して浸漬前の粘着剤層(Y)の重量を求める。次に、これを酢酸エチル約40gに7日間浸漬した後、酢酸エチルに不溶解部分を全て回収し、130℃で2時間乾燥させて、その不溶解部分の乾燥重量を求める。そして、得られた数値を以下の式に代入して算出する。
粘着剤層(Y)のゲル分率(%)=(不溶解部分の乾燥重量/浸漬前の粘着剤層(Y)の重量)×100
【0036】
多官能(メタ)アクリレートの使用量は、前述のように、粘着剤層(Y)のゲル分率が上記範囲内となるような量であるが、具体的な例としては、その分子量や官能基数などにより異なるが、通常、アクリル系粘着剤組成物に含まれる全モノマー成分100重量部に対して、0.001〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部である。
【0037】
アクリル系モノマー混合物は、その取り扱い上、塗工に適した粘度(通常、B型粘度計における粘度測定において、測定温度:25℃の条件で測定された粘度として、0.3〜40Pa・s)に、調整されることが好ましい。このため、アクリル系モノマー混合物では、モノマー成分を予備重合(部分重合)して、その予備重合物(部分重合物)としておくことができる。
【0038】
アクリル系モノマー混合物の予備重合物は、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、アクリル酸の3成分を全て混合して予備重合させることにより形成される予備重合物であってもよいし、前記3成分のうち2成分を混合して予備重合させることにより形成される予備重合物であってもよいし、前記3成分のうち1成分を予備重合させることにより形成される予備重合物であってもよい。また、アクリル系粘着剤組成物は、前記予備重合物のうち、複数の種類の予備重合物を有していてもよい。本発明では、高極性及び低極性の表面調整剤の両方を粘着剤層(Y)に吸収させるために、2−エチルヘキシルアクリレートとn−ブチルアクリレートとは別々に予備重合させることが好ましい。
【0039】
アクリル系粘着剤組成物の予備重合物において、その重合率は、その予備重合物中のポリマー分子量にもよるが、2〜40重量%程度であり、好ましくは5〜20重量%程度である。なお、部分重合は、通常、酸素との接触を避けて活性エネルギー光線(特に紫外線)を照射することにより行われる。
【0040】
予備重合物の重合率は、予備重合物約0.5gを精秤し、これを130℃で2時間乾燥した後の重量を精秤して重量減少量[揮発分(未反応モノマー重量)]を求め、得られた数値を以下の式に代入して算出した。
予備重合物の重合率(%)=[1−(重量減少量)/(乾燥前の予備重合物の重量)]×100
【0041】
また、アクリル系粘着剤組成物の粘度は、増粘用ポリマーを適宜に配合することにより、調整されてもよい。増粘用ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにアクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等を共重合したアクリル系ポリマー;スチレンブタジエンゴム(SBR);イソプレンゴム;スチレンブタジエンブロック共重合体(SBS);エチレン−酢酸ビニル共重合体;アクリルゴム;ポリウレタン;ポリエステル等が挙げられる。
【0042】
これらの増粘用ポリマーは、アクリル系粘着剤組成物中40重量%以下(例えば5〜40重量%)の範囲で用いられる。また、増粘用ポリマーは、1種または2種以上が組み合わせて用いられていてもよい。
【0043】
アクリル系粘着剤組成物には、各種添加剤が、光重合性を阻害しない範囲で配合されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料などの従来公知の各種添加剤が挙げられる。
【0044】
なお、粘着剤層(Y)及び粘着剤層(Y)以外の粘着剤層は、気泡を含有していてもよい。つまり、粘着剤層(Y)及び粘着剤層(Y)以外の粘着剤層は、気泡を含有する粘着剤層(「気泡含有粘着剤層」あるいは「気泡含有感圧性接着剤層」と称する場合がある)であってもよく、気泡を含有しない粘着剤層(「気泡非含有粘着剤層」あるいは「気泡非含有感圧性接着剤層」と称する場合がある)であってもよい。従って、例えば、本発明のアクリル系粘着シートが粘弾性体層(X)の片面に粘着剤層を有している粘着シートの形態である場合、粘弾性体層(X)の片面に気泡含有粘着剤層を有している構成、粘弾性体層(X)の一方の面に気泡非含有粘着剤層を有している構成のいずれであってもよく、また、本発明のアクリル系粘着シートが粘弾性体層(X)の両面に粘着剤層を有している粘着シートの形態である場合、粘弾性体層(X)の両面に気泡含有粘着剤層を有している構成、粘弾性体層(X)の一方の面に気泡含有粘着剤層を有し、他方の面に気泡非含有粘着剤層を有している構成、粘弾性体層(X)の両面に気泡非含有粘着剤層を有している構成のいずれの構成であってもよい。
【0045】
粘着剤層(Y)に気泡が形成される形態は、特に制限されず、例えば、(1)予め、気泡を形成するガス成分(「気泡形成ガス」と称する場合がある)(例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガス、空気など)が混合されたアクリル系粘着剤組成物(「気泡混合アクリル系粘着剤組成物」と称する場合がある)を用いて粘着剤層(Y)を形成させることにより、粘着剤層(Y)に気泡が形成される形態、(2)発泡剤を含有するアクリル系粘着剤組成物を用いて粘着剤層(Y)を形成させることにより、粘着剤層(Y)に気泡が形成される形態などが挙げられる。本発明では、上記(1)の形態で気泡が形成されることが好ましい。なお、発泡剤としては、特に制限されず、例えば、熱膨張性微小球など公知の発泡剤から適宜選択することができる。
【0046】
気泡混合アクリル系粘着剤組成物に、気泡を安定的に混合して存在させるために、気泡は、最後の成分としてアクリル系粘着剤組成物に配合し混合させることが好ましい。また、アクリル系粘着剤組成物に気泡を混合させる際、気泡を混合する前のアクリル系粘着剤組成物は、粘度を高くしておくことが好ましい(例えば、前記の塗工に適した粘度など)。なお、アクリル系粘着剤組成物に気泡を混合する方法としては、特に制限されず、公知の気泡混合方法を用いることができる。
【0047】
粘着剤層(Y)の形成方法は、特に制限されないが、例えば、剥離フィルムや基材等の適当な支持体上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布し、アクリル系粘着剤組成物の層を形成させ、該層を、活性エネルギー光線(特に、紫外線)を用いて硬化させることにより形成させる方法が挙げられる。また、該形成方法では、必要に応じて、乾燥工程があってもよい。さらに、活性エネルギー光線による硬化(光硬化)を行う際には、光重合反応は空気中の酸素に阻害されるため、アクリル系粘着剤組成物の層上に剥離フィルム(セパレータ)等を貼り合わせたり、また窒素雰囲気下で光硬化を行うこと等により、酸素を遮断することが好ましい。粘着剤層(Y)の形成の際に用いられる剥離フィルム(セパレータ)等は、本発明のアクリル系粘着シートを作製する際、適宜な時期に剥離されてもよいし、作製後のアクリル系粘着シートを利用する際に剥離されてもよい。
【0048】
活性エネルギー光線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好適である。活性エネルギー光線の照射エネルギーやその照射時間などは、特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。このような活性エネルギー光線の照射としては、例えば、波長300〜400nmにおける照度が1〜200mW/cm2である紫外線の光量400〜4000mJ/cm2程度の照射が挙げられる。
【0049】
また、アクリル系粘着剤組成物に、活性エネルギー光線を照射して、粘着剤層(Y)を形成させる際、粘着剤層(Y)の重合率は90重量%以上とすることが好ましい。また、未反応モノマーは、通常の乾燥工程により除去することもできる。なお、粘着剤層(Y)の重合率は、前述の部分重合物の重合率の算出方法と同様の方法により算出できる。
【0050】
粘着剤層(Y)の厚さは、必要に応じて適宜選択されるが、良好な接着強度を確保する点から、例えば、10μm〜5mm、好ましくは50μm〜3mm、さらに好ましくは100μm〜2mm程度である。なお、粘着剤層(Y)は、単層の形態を有していてもよいし、積層の形態を有していてもよい。
【0051】
[粘弾性体層(X)]
粘弾性体層(X)は、微小球状体、及びベースポリマーとしての(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分するアクリル系ポリマーから、少なくとも構成されている。粘弾性体層(X)は、通常ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーを構成するアクリル系モノマーと微小球状体とを少なくとも含む組成物(「粘弾性体組成物」と称する場合がある)を、重合させることにより形成される。なお、粘弾性体層(X)のベースポリマーは、粘着剤層(Y)のベースポリマーと同一であってもよい。
【0052】
粘弾性体層(X)は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを有するが、本発明の効果を阻害しない範囲で、アクリル系ポリマー以外の公知の各種粘着剤におけるベースポリマー(例えば、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマーなど)を有していてもよい。
【0053】
前記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートをモノマー主成分とするポリマーである。前記アクリル系ポリマーにおいて、モノマー主成分として用いられるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[好ましくは炭素数2〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくは炭素数2〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート]が挙げられる。また、アルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0054】
また、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
なお、アルキル(メタ)アクリレートは、アクリル系ポリマーのモノマー主成分として用いられているので、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分全量に対して、60重量%以上、好ましくは80重量%以上含まれていることが好ましい。
【0056】
前記アクリル系ポリマーでは、モノマー成分として、極性基含有モノマーや多官能性モノマーなどの各種共重合性モノマーが用いられていてもよい。モノマー成分として共重合性単量体を用いることにより、粘弾性体層(X)において、弾性や柔軟性などの基材としての特性を改良することができる。なお、共重合性モノマーは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
前記極性基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(無水マレイン酸など);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルアクリレート等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートアミノ基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリルやメタアクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリンの他、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール等の複素環含有ビニル系モノマーなどが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー又はその無水物が好適である。このような極性基含有モノマーは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
極性基含有モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、30重量%以下(例えば、1〜30重量%)であり、好ましくは3〜20重量%である。極性基含有モノマーの使用量が30重量%を超えると、例えば、粘着シートおいて、粘弾性体層(X)の柔軟性が損なわれ、凹凸を有する被着体に対する接着性の低下を生じるおそれがある。一方、極性基含有モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して1重量%未満であると)、粘弾性体層(X)の凝集力が低下し、粘着シートとしての保持性能が低下するおそれがあり、また、粘着シートを加工(例えば、切断や打ち抜きなど)する際に、加工性が低下するおそれがある。
【0059】
前記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジブチル(メタ)アクリレート、ヘキシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0060】
多官能性モノマーの使用量としては、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量に対して、2重量%以下(例えば、0.01〜2重量%)であり、好ましくは0.02〜1重量%である。多官能性モノマーの使用量が2重量%を超えると、例えば、粘着シートおいて、粘弾性体層(X)の柔軟性が損なわれ、凹凸を有する被着体に対する接着性の低下を生じるおそれがある。一方、多官能性モノマーの使用量が少なすぎると(例えば、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して0.01重量%未満であると)、粘弾性体層(X)の凝集力が低下し、粘着シートとしての保持性能が低下するおそれがあり、また、粘着シートを加工(例えば、切断や打ち抜きなど)する際に、加工性が低下するおそれがある。
【0061】
また、極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマーとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;フッ素原子含有(メタ)アクリレート;ケイ素原子含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0062】
粘弾性体層(X)のベースポリマーとしてアクリル系ポリマーの調製に際して、従来公知の重合方法(例えば溶液重合や乳化重合、塊状重合など)によりアクリル系ポリマーを調製することができるが、光重合開始剤(光開始剤)を用いた、活性エネルギー光線による硬化反応を利用することが好ましい。すなわち、本発明における粘弾性体層(X)を構成する粘弾性体組成物には光重合開始剤が含まれていてもよい。このように、光重合開始剤が含まれていると活性エネルギー光線による硬化が可能となり、粘着剤層(Y)と同時に粘弾性体(X)を製造することが可能となる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
光重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤などを用いることができる。
【0064】
具体的には、ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)などが挙げられる。α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)などが挙げられる。α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア907」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名「イルガキュア369」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)などが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「ルシリン TPO」BASF社製)などが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0065】
光重合開始剤の使用量は、粘弾性体層(X)を形成する粘弾性体組成物の全モノマー成分100重量部に対して、0.01〜5重量部(好ましくは、0.05〜3重量部)である。
【0066】
光重合開始剤の活性化に際しては、活性エネルギー光線を粘弾性体組成物に照射にすることが重要である。このような活性エネルギー光線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に、紫外線が好適である。また、活性エネルギー光線の照射エネルギーや、その照射時間などは特に制限されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0067】
また、本発明における粘弾性体(X)を構成する粘弾性体組成物には、熱重合開始剤が含まれていてもよい。熱重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドなどのアゾ系熱重合開始剤;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなどの過酸化物系熱重合開始剤;レドックス系熱重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されず、従来、熱重合開始剤として利用可能な範囲であればよい。
【0068】
微小球状体は、粘弾性体層(X)を構成する成分の一つであり、本発明のアクリル系粘着シートは、粘弾性体層(X)中に微小球状体を含むことにより、例えばせん断接着力の向上を図ることができ、また加工性の向上も図ることができる。なお、微小球状体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0069】
微小球状体は、その形状が球状である微粒子であれば特に制限されず、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレスなどの金属粒子やその金属酸化物粒子;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素などの炭化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物粒子;アルミナ、ジルコニウムなどの酸化物に代表されるセラミック粒子;炭化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカなどの無機微粒子;火山シラス、砂などの天然原料粒子;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミドなどのポリマー粒子などが挙げられる。
【0070】
また、微小球状体として、中空の微小球状体や中実の微小球状体が用いられていてもよい。具体的には、中空の無機系微小球状体としては、例えば、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン;中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製中空バルーンなどが挙げられる。中空の有機系微小球状体としては、例えば、中空のアクリルバルーン、中空の塩化ビニリデンバルーン等の樹脂製の中空バルーンなどが挙げられる。
【0071】
中空ガラスバルーンの市販品としては、例えば、商品名「ガラスマイクロバルーン」(富士シリシア株式会社製);商品名「セルスターZ−25」「セルスターZ−27」「セルスターCZ−31T」「セルスターZ−36」「セルスターZ−39」「セルスターT‐36」「セルスターSX−39」「セルスターPZ‐6000」(東海工業株式会社製);商品名「サイラックス・ファインバルーン」(有限会社ファインバルーン製)などが挙げられる。
【0072】
中実ガラスバルーンの市販品としては、例えば、商品名「サンスフィアNP−100」(旭硝子株式会社製);商品名「マイクロガラスビーズEMB−20」「ガラスビーズEGB−210」(ポッターズ・バロティーニ株式会社製)などが挙げられる。
【0073】
前記微小球状体の中でも、活性エネルギー光線(特に、紫外線)による重合の効率や重みなどの観点から、中空無機微小球状体を用いることが好ましく、さらに中空ガラスバルーンを用いることがより好ましい。中空ガラスバルーンを用いれば、せん断力、保持力などの他の特性を損なうことなく、高温接着力を向上させることができる。
【0074】
微小球状体の粒径(平均粒子径)としては、特に制限されないが、例えば1〜500μm(好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜100μmの範囲から選択することができる。
【0075】
微小球状体の比重としては、特に制限されないが、例えば、0.1〜0.8g/cm3(好ましくは0.12〜0.5g/cm3)の範囲から選択することができる。微小球状体の比重が0.1g/cm3より小さいと、微小球状体を粘弾性体組成物に配合して混合する際に、微小球状体の浮き上がりが大きくなり、微小球状体を均一に分散させることが難しい場合があり、一方、0.8g/cm3より大きいと、高価になり、コストが高くなる。
【0076】
微小球状体の使用量としては、特に制限されず、例えば粘弾性体組成物により形成される粘弾性体層(X)の全体積に対して5〜50容積%(体積%)、好ましくは10〜45容積%、さらに好ましくは15〜40容積%となるような範囲から選択することができる。微小球状体の使用量が5容積%未満となるような使用量であると、微小球状体を添加することによる効果が低下する場合があり、一方、50容積%を超えるような使用量であると、粘弾性体層(X)の粘着力が低下する場合がある。
【0077】
本発明のアクリル系粘着シートにおける粘弾性体層(X)は、前述の微小球状体などの他に、気泡を含有していてもよい。粘弾性体層(X)に気泡を含有することで、クッション性や密着性が向上するという利点がある。
【0078】
粘弾性体層(X)に気泡が形成される形態は、特に制限されず、例えば、(1)予め、気泡形成ガスが混合された粘弾性体組成物(「気泡混合粘弾性体組成物」と称する場合がある)を用いて粘弾性体層(X)を形成することにより、気泡が形成された形態、(2)発泡剤を含有する粘弾性体組成物を用いて粘弾性体層(X)を形成することにより、気泡が形成された形態などが挙げられる。本発明では、気泡が混合された粘弾性体層(X)(「気泡混合粘弾性体層(X)」と称する場合がある)は、上記(1)の形態で気泡が形成されることが好ましい。なお、発泡剤としては、特に制限されず、例えば、熱膨張性微小球など公知の発泡剤から適宜選択することができる。
【0079】
粘弾性体層(X)において混合可能な気泡量としては、弾性や柔軟性などの特性等を損なわない範囲で適宜選択することができるが、例えば、粘弾性体層(X)の体積に対して5〜50体積%、好ましくは10〜40体積%、さらに好ましくは12〜30体積%である。混合量が5体積%未満であると応力緩和性が得られにくく、耐反発性に劣ることが多い。また、50体積%より多くなると、粘弾性体層(X)を貫通する気泡が形成される場合が生じ、接着性能や外観が悪くなるおそれがあり、さらに、粘弾性体層(X)が軟らかくなりすぎ、せん断力が低下するおそれがある。
【0080】
粘弾性体層(X)に混合される気泡は、基本的には、独立タイプの気泡であることが望ましいが、独立気泡タイプの気泡と半独立気泡タイプの気泡とが混在していてもよい。
【0081】
また、このような気泡としては、通常、球状の形状を有しているが、いびつな形状の球状を有していてもよい。前記気泡において、その平均気泡径(直径)としては、特に制限されず、例えば、1〜1000μm(好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm)の範囲から選択することができる。
【0082】
なお、気泡中に含まれる気泡成分(気泡を形成するガス成分;「気泡形成ガス」と称する場合がある)としては、特に制限されず、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガスの他、空気などの各種気体成分を用いることができる。気泡形成ガスとしては、気泡形成ガスを混合した後に、重合反応等を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが重要である。気泡形成ガスとしては、反応を阻害しないことや、コスト的な観点などから、窒素が好適である。
【0083】
本発明のアクリル系粘着シートにおける粘弾性体層(X)には、粘弾性を構成するポリマー成分と微小球状体に加え、さらにフッ素系界面活性剤が配合されていることが好ましい。分子中に特定の構造を有する界面活性剤を用いることにより、微小球状体と粘弾性体層(X)中のポリマーとの間の密着性や摩擦が低下し、高い応力分散性が得られ、これにより粘弾性体組成物の凝集強さと凹凸面に対する良好な追従性とが同時に実現し、接着強さと剪断強さのバランスに優れた粘弾性体層(X)を形成することが可能となる。
【0084】
フッ素系界面活性剤としては、分子中にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が用いられる。オキシC2-3アルキレン基は、式:−R−O−(Rは炭素数2又は3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基)で表される。分子中にオキシC2-3アルキレン基を有することにより、微小球状体とベースポリマーとの密着度や摩擦抵抗が低減され、応力分散性が発現する。そのため、フッ素系界面活性剤が含まれている粘弾性体組成物を用いて粘弾性体層(X)を形成した場合は、本発明のアクリル系粘着シートにおける粘弾性体層(X)において高い接着性が得られる。フッ素化炭化水素基を有することにより上記摩擦抵抗等の低減効果に加えて、気泡混合性及び気泡安定性を高める効果も得られる。フッ素系界面活性剤は、オキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有していれば特に限定されないが、ベースポリマーに対する分散性の観点から非イオン型界面活性剤が好ましい。また、分子中にオキシエチレン基(−CH2CH2O−)、オキシプロピレン基[−CH2CH(CH3)O−]等の何れか1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよい。なお、フッ素系界面活性剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0085】
フッ素化炭化水素基としては、特に制限されないがパーフルオロ基が好適であり、該パーフルオロ基は、1価であってもよく、2価以上の多価であっても良い。また、フッ素化炭化水素基は二重結合や三重結合を有していても良く、直鎖でも枝分かれ構造や環式構造を有していても良い。フッ素化炭化水素基の炭素数としては特に限定されず、1又は2以上、好ましくは3〜30、さらに好ましくは4〜20である。これらのフッ素化炭化水素基が界面活性剤分子中に1種又は2種以上導入されている。オキシC2-3アルキレン基としては、末端の酸素原子に水素原子が結合したアルコール、他の炭化水素基と結合したエーテル、カルボニル基を介して他の炭化水素基と結合したエステル等、何れの形態でも良い。また、環式エーテル類やラクトン類等、環状構造の一部に該構造を有する形態でもよい。
【0086】
フッ素系界面活性剤の構造としては特に制限されないが、例えば、オキシC2-3アルキレン基を有する単量体及びフッ素化炭化水素基を有する単量体をモノマー成分として含む共重合体を好適に用いることができる。このような共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体など、様々な構造が考えられるが、何れも好適に用いられる。
【0087】
ブロック共重合体(主鎖にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、例えば、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキレート、ポリオキシプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシイソプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレングリコールパーフルオロアルキレート等である。
【0088】
グラフト共重合体(側鎖にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、モノマー成分として少なくとも、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物及びフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物を含む共重合体、特に、アクリル系共重合体が好適に用いられる。ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。フッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物としては、例えば、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等、フッ素化炭化水素を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0089】
フッ素系界面活性剤は、分子中に上記構造の他に脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などの構造を有していてもよく、ベースポリマーへの分散性を阻害しない範囲内でカルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基等様々な官能基を有していてもよい。例えばフッ素系界面活性剤がビニル系共重合体である場合は、モノマー成分として、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物及びフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物と共重合可能なモノマー成分が用いられてもよい。このようなモノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0090】
上記共重合可能なモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレートなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。その他、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエンなどのオレフィン又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド等のアミド基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。さらにまた、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性共重合性単量体(多官能モノマー)が用いられてもよい。
【0091】
フッ素系界面活性剤の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が20000未満(例えば500以上、20000未満)であると ベースポリマーと微小球状体との間の密着性や摩擦抵抗を低減する効果が高い。さらに重量平均分子量20000以上(例えば20000〜100000、好ましくは22000〜80000、さらに好ましくは24000〜60000)のフッ素系界面活性剤を併用すると、気泡の混合性や、混合された気泡の安定性が高まる。
【0092】
オキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有し、且つ重量平均分子量20000未満のフッ素系界面活性剤の具体例としては、商品名「フタージェント251」(株式会社ネオス製)、商品名「FTX−218」(株式会社ネオス製)、商品名「メガファックF−477」(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「メガファックF−470」(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「サーフロンS−381」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンS−383」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンS−393」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンKH−20」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンKH−40」(セイケミカル株式会社製)などが挙げられる。オキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有し、且つ重量平均分子量20000以上であるフッ素系界面活性剤の具体例としては、商品名「エフトップEF−352」(株式会社ジェムコ製)、商品名「エフトップEF−801」(株式会社ジェムコ製)、商品名「ユニダインTG−656」(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、何れも本発明に好適に用いることができる。
【0093】
フッ素系界面活性剤の使用量(固形分)としては、特に制限されないが、例えば、粘弾性体組成物のベースポリマーを形成するための全モノマー成分[特にアルキル(メタ)アクリレートを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.01〜5重量部(好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.03重量部〜1重量部)の範囲で選択することができる。0.01部未満であると微小球状体と粘弾性体層(X)中のポリマーとの間の密着性や摩擦を低減させる効果が得られない場合があり、5重量部を超えると、高価となりコストが高くなる、あるいは接着性能が低下するという不具合を生じる場合がある。
【0094】
粘弾性体層(X)を形成する粘弾性体組成物には、前記成分(フッ素系界面活性剤、ベースポリマー、中空微小球状体、重合開始剤など)の他に、用途に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などからなる常温で固体、半固体、あるいは液状のもの)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤(顔料や染料など)などの適宜な添加剤を含んでもよい。例えば、光重合開始剤を用いて粘弾性体層(X)を形成する場合、該粘弾性体層(X)を着色するために、光重合を阻害されない程度の顔料(着色顔料)を使用することができる。粘弾性体層(X)の着色として黒色が望まれる場合は、例えば、カーボンブラックを用いることができる。着色顔料としてのカーボンブラックの使用量としては、着色度合いや、光重合反応を阻害しない観点から、例えば、粘弾性体組成物のベースポリマーを形成するための全モノマー[特にアルキル(メタ)アクリレートを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分]100重量部に対して0.15重量部以下(例えば0.001〜0.15重量部)好ましくは0.02〜0.1重量部の範囲から選択することが望ましい。
【0095】
本発明では、粘弾性体層(X)に気泡を含有させる場合、粘弾性体層(X)中に気泡を安定的に混合して存在させるために、気泡は粘弾性体組成物中に最後の成分として配合し混合させることが好ましく、特に、気泡を混合する前の気泡混合粘弾性体組成物(「気泡混合粘弾性体前駆体」と称する場合がある)の粘度を高くすることが好ましい。気泡混合粘弾性体前駆体の粘度としては、混合された気泡を安定的に保持することが可能な粘度であれば特に限定されないが、例えば、粘度計としてBH粘度計を用いて、ローター:No.5ローター、回転数:10rpm、測定温度:30℃の条件で測定された粘度としては、5〜50Pa・s(好ましくは10〜40Pa・s)であることが望ましい。気泡混合粘弾性体前駆体の粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、30℃)が、5Pa・s未満であると、粘度が低すぎて、混合した気泡がすぐに合一して系外に抜けてしまう場合があり、一方、50Pa・sを超えていると粘弾性体層(X)を形成する際に粘度が高すぎて困難となる。
【0096】
なお、気泡混合粘弾性体前駆体の粘度は、例えば、アクリルゴム、増粘性添加剤などの各種ポリマー成分を配合する方法、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるためのアルキル(メタ)アクリレートなどのモノマー成分など]を一部重合させる方法などにより、調整することができる。具体的には、例えば、ベースポリマーを形成するためのモノマー成分[例えば、アクリル系ポリマーを形成させるためのアルキル(メタ)アクリレートなどのモノマー成分など]と、重合開始剤(例えば、光重合開始剤など)とを混合してモノマー混合物を調整し、該モノマー混合物に対して重合開始剤の種類に応じた重合反応を行って、一部のモノマー成分のみが重合した組成物(シロップ)を調製した後、該シロップにフッ素系界面活性剤と微小球状体と、必要に応じて各種添加剤とを配合して、気泡を安定的に含有することが可能な適度な粘度を有する気泡混合粘弾性前駆体を調製することができる。そして、この気泡混合粘弾性前駆体に、気泡を導入して混合させることにより、気泡を安定的に含有している気泡混合粘弾性体組成物を得ることができる。なお、前記シロップの調製に際しては、モノマー混合中に、予め、フッ素系界面活性剤や、微小球状体が適宜配合されてもよい。
【0097】
気泡を混合する方法としては特に限定されず、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータとを対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているロータとを備えた装置などが挙げられる。この装置におけるステータ上の歯とロータ上の歯との間に気泡混合粘弾性体前駆体を導入し、ロータを高速回転させながら、貫通孔を通して気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を気泡混合粘弾性体前駆体中に導入させることにより、気泡形成ガスが気泡混合粘弾性体前駆体中に細かく分散され混合された気泡混合粘弾性体組成物を得ることができる。
【0098】
なお、気泡の合一を抑制又は防止するためには、気泡の混合から、粘弾性体層(X)の形成までの行程を一連の工程として連続的に行うことが好ましい。すなわち、前述のようにして気泡を混合させて気泡混合粘弾性体組成物を調製した後、続いて、該気泡混合粘弾性体組成物を用いて、例えば、下記の粘弾性体層(X)の形成方法を利用して粘弾性体層(X)を形成することが好ましい。
【0099】
粘弾性体層(X)の形成は、特に制限されないが、例えば、剥離フィルムや基材等の適当な支持体上に、粘弾性体組成物を塗布し、粘弾性体組成物層を形成させ、該層を、必要に応じて、硬化(例えば、熱による硬化や、活性エネルギー光線による硬化)や乾燥させることにより形成される。なお、活性エネルギー光線による硬化(光硬化)を行う際には、光重合反応は空気中の酸素に阻害されるため、該層上に剥離フィルム(セパレータ)等を貼り合わせたり、また窒素雰囲気下で光硬化を行うこと等により、酸素を遮断することが好ましい。粘弾性体層(X)の形成の際に用いられる剥離フィルム(セパレータ)等は、本発明のアクリル系粘着シートを作製する際、適宜な時期に剥離されてもよいし、作製後のアクリル系粘着シートを利用する際に剥離されてもよい。
【0100】
粘弾性体層(X)の厚みとしては、特に制限されず、例えば、200〜5000μm(好ましくは300〜4000μm、さらに好ましくは400〜3000μm)の範囲から選択することができる。粘弾性体層(X)の厚みが200μmよりも小さいと、クッション性が低下して、曲面や凹凸面に対する接着性が低下し、5000μmよりも大きいと、均一な厚みの層又はシートが得られにくくなる。なお、粘弾性体層(X)は、単層、複層のいずれの形態を有していてもよい。
【0101】
粘弾性体層(X)は、粘弾性体層(X)に含まれるベースポリマーの組成や、添加剤等の種類や量、ポリマーの重合度などを調整することにより、粘着シートとしての必要な接着力を有する粘着シートとしたり、あるいは接着力を有さない支持体としてのシートとすることができる。
【0102】
(剥離フィルム)
剥離フィルム(セパレータ)は、本発明のアクリル系粘着シート作製の際に用いられたり、また、作製後使用されるまでの間における粘着面等の保護材として用いられる。なお、本発明のアクリル系粘着シート作製の際、剥離フィルムは必ずしも用いられなくてもよいが、光重合反応は空気中の酸素等により反応が阻害されるため、剥離フィルムで表面を被覆し酸素との接触を防止するために、用いられることが好ましい。なお、本発明のアクリル系粘着シートを利用する際には、通常、剥離フィルムは、剥がされる。
【0103】
このような剥離フィルムとしては、酸素を遮断し、且つ光透過性を有する限り特に制限されないが、例えば剥離処理剤(離型処理剤)により少なくとも一方の面が剥離処理(離型処理)された基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂など)からなる低接着性基材などが挙げられる。なお、低接着性基材では、両面を剥離面として利用することができ、一方、剥離処理された基材では、剥離処理された面を剥離面として利用することができる。
【0104】
剥離フィルムとして用いられる、少なくとも一方の面が剥離処理(離型処理)された基材において、基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のオレフィン系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;ポリイミドフィルム;ナイロンフィルムなどのポリアミドフィルム;レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)が挙げられる。また、紙製基材(上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙など紙類から構成される基材)が用いられていてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルムが好適に用いられる。
【0105】
剥離処理剤(離型処理剤)としては、特に制限されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。剥離処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。剥離フィルムは、例えば、公知慣用の方法により作製される。
【0106】
剥離フィルムの厚さは、酸素を遮断し、且つ光透過性を有する限り、特に制限されない。また、剥離フィルムは、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0107】
(被着体)
本発明のアクリル系粘着シートが用いられる被着体としては、特に制限されないが、例えば、塗膜(例えば、自動車用塗膜など)、塗料板、樹脂板、鋼板等の金属板などが挙げられる。また、被着体の形状についても特に制限されない。例えば、被着体は、平面状、三次元の曲面状などの形状を有する被着体であってもよいし、あるいは、平面状、三次元の曲面状などの形状を有する成形品に塗装処理を施したものであってもよい。
【0108】
塗膜としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル・メラミン系、アルキド・メラミン系、アクリル・メラミン系、アクリル・ウレタン系、アクリル・多酸硬化剤系などの各種塗膜が挙げられる。
【0109】
さらに、本発明のアクリル系粘着シートは、表面調整剤(例えば、アクリル系、アクリルオリゴマー系、ビニル系、シリコーン系、シリコーン/アクリル共重合体系などの各種表面調整剤)がブリードしている塗膜に対しても好適に用いられる。高極性の表面調整剤[前記のフェドーズ法により求められる溶解度パラメーター(SP値)で20.5(MPa)1/2以上の表面調整剤]は粘着剤層(Y)中のアクリル酸モノマーに対応する単位と相溶性がよく、また、低極性の表面調整剤[前記のフェドーズ法により求められる溶解度パラメーター(SP値)で20.5(MPa)1/2未満の表面調整剤]は粘着剤層(Y)中のn−ブチルアクリレートモノマー及び2−エチルヘキシルアクリレートモノマーに対応する単位と相溶性がよいため、表面調整剤が粘着剤層(Y)に吸収され、粘着剤層(Y)の内部に拡散し、塗膜表面の凝集力の弱い層の形成が防止されるためである。
【0110】
高極性の表面調整剤としては、例えば、変性シリコーン系表面調整剤などのシリコーン系表面調整剤などが挙げられる。また、低極性の表面調整剤としては、例えば、ブチルアクリレート系などのアクリル系表面調整剤などが挙げられる。
【0111】
(アクリル系粘着シートの製造方法)
本発明のアクリル系粘着シートの製造方法は、粘弾性体層(X)の片面又は両面に粘着剤層(Y)を少なくとも備えている構成を有するアクリル系粘着シートを製造することができる限り、特に制限されないが、例えば、微小球状体及びベースポリマーとしてアルキル(メタ)アクリレートをモノマー主成分とするアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、アクリル酸の量が全モノマー成分に対して6〜12重量%、n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して35〜65重量%であるアクリル系粘着剤組成物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)を設けることにより作製する方法が挙げられる。なお、通常、アクリル系粘着剤組成物には、光重合開始剤が全モノマー成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度含まれている。
【0112】
また、粘弾性体層(X)の少なくとも片面に粘着剤層(Y)を設ける方法としては、例えば、粘弾性体層(X)及び粘着剤層(Y)を別々に製造し、それらを貼り合わせる方法;あらかじめ製造した粘弾性体層(X)の片面又は両面にアクリル系粘着剤組成物を塗布し、アクリル系粘着剤組成物の層を設けた後、活性エネルギー光線を照射することにより重合させて粘着剤層(Y)を形成させる方法;あらかじめ製造した粘着剤層(Y)の片面に粘弾性体組成物を塗布し、粘弾性体組成物の層を設けた後、該層を重合させて粘弾性体層(X)を形成させる方法などが挙げられる。
【0113】
さらに、粘弾性体層(X)の少なくとも片面に粘着剤層(Y)を設ける方法として、粘弾性体組成物の層の片面又は両面に、アクリル系粘着剤組成物の層を積層させた構成の積層体に、活性エネルギー光線を照射することにより、粘弾性体層(X)及び粘着剤層(Y)を同時に形成させる方法を用いてもよい。粘弾性体層(X)の少なくとも片面に粘着剤層(Y)を設ける方法として、このような方法を用いた前記アクリル系粘着シートの製造方法は、生産性の点で優れ、さらに該製造方法により製造されたアクリル系粘着シートにおいて、粘弾性体層(X)及び粘着剤層(Y)とが一体化することで接着強さを向上させる利点がある。
【0114】
本発明のアクリル系粘着シートは、表面調整剤のブリードが生じている塗膜などの難接着性の被着体に対して好適に用いることができる。また、本発明のアクリル系粘着シートは、塗膜表面でブリードしている表面調整剤は、高極性、あるいは低極性のどちらであっても、好適に用いることができる。さらに、自動車用塗膜に貼着する用途に対して好適に用いることができる。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0116】
(シロップの調製例1)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート:90重量部及びアクリル酸:10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(「シロップ(A)」と称する場合がある)を得た。
【0117】
(シロップの調製例2)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート:100重量部に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(「シロップ(B)」と称する場合がある)を得た。
【0118】
(シロップの調製例3)
モノマー成分として、n−ブチルアクリレート:100重量部に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(「シロップ(C)」と称する場合がある)を得た。
【0119】
(シロップの調製例4)
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート:70重量部及びジメチルアクリルアミド:30重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(「シロップ(D)」と称する場合がある)を得た。
【0120】
(シロップの調製例5)
モノマー成分として、n−ブチルアクリレート:90重量部及びアクリル酸:10重量部が混合されたモノマー混合物に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部と光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製):0.05重量部とを配合した後、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が15Pa・sになるまで紫外線を照射し、一部が重合した組成物(「シロップ(E)」と称する場合がある)を得た。
【0121】
(粘弾性体組成物の調製例)
シロップ(A):100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加した後、さらに、該シロップの全体積に対して30容積%となるように中空ガラスバルーン(商品名「セルスターZ−27」東海工業株式会社製)を添加した。
中空ガラスバルーン添加後のシロップに、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」セイケミカル株式会社製;側鎖にポリオキシエチレン基及びフッ素化炭化水素基を有するアクリル系共重合体;Mw=8300):1重量部を添加して、気泡混合粘弾性体前駆体を調製した。なお、気泡混合粘弾性体前駆体において、気泡混合粘弾性体前駆体の全体積に占める中空ガラスバルーンの容積は、約23容積%であった。
該気泡混合粘弾性体前駆体を、中央部に貫通孔を持った円盤上に、細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータと対向しており、円盤上にステータと同様の細かい歯がついているロータとを備えた装置におけるステータ上の歯と、ロータ上の歯との間に導入し、ロータを高速回転させながら、貫通孔を通して窒素ガスを気泡混合粘弾性体前駆体に導入することにより、気泡混合粘弾性体前駆体に気泡を混合して、気泡混合粘弾性体組成物を得た。なお、気泡は、気泡混合粘弾性体前駆体の全体積に対して約15容積%となるように混合した。
【0122】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例1)
シロップ(B):45重量部、シロップ(C):45重量部及びアクリル酸モノマー:10重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(A)と称する場合がある」)を調製した。
【0123】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例2)
シロップ(B):36重量部、シロップ(C):54重量部及びアクリル酸モノマー:10重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(B)と称する場合がある」)を調製した。
【0124】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例3)
シロップ(B):54重量部、シロップ(C):36重量部及びアクリル酸モノマー:10重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(C)と称する場合がある」)を調製した。
【0125】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例4)
シロップ(B):35重量部、シロップ(C):53重量部及びアクリル酸モノマー:12重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(D)と称する場合がある」)を調製した。
【0126】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例5)
シロップ(B):53重量部、シロップ(C):35重量部及びアクリル酸モノマー:12重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(E)と称する場合がある」)を調製した。
【0127】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例6)
シロップ(B):38重量部、シロップ(C):56重量部及びアクリル酸モノマー:6重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(F)と称する場合がある」)を調製した。
【0128】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例7)
シロップ(B):56重量部、シロップ(C):38重量部及びアクリル酸モノマー:6重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(G)と称する場合がある」)を調製した。
【0129】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例8)
シロップ(D):100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(H)と称する場合がある」)を調製した。
【0130】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例9)
シロップ(B):47.5重量部、シロップ(C):47.5重量部及びアクリル酸モノマー:5重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(I)と称する場合がある」)を調製した。
【0131】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例10)
シロップ(B):49重量部、シロップ(C):49重量部及びアクリル酸モノマー:2重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(J)と称する場合がある」)を調製した。
【0132】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例11)
シロップ(B):43重量部、シロップ(C):43重量部及びアクリル酸モノマー:14重量部を混合し、さらに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(K)と称する場合がある」)を調製した。
【0133】
(アクリル系粘着剤組成物の調製例12)
シロップ(E):100重量部に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部を添加して、混合撹拌することにより、アクリル系粘着剤組成物(「アクリル系粘着剤組成物(L)と称する場合がある」)を調製した。
【0134】
(剥離フィルムの使用例)
剥離フィルム(カバーフィルム;カバーセパレータ)として、片面が剥離処理されているポリエチレンテレフタレート製基材(商品名「MRF」三菱ポリエステルフィルム株式会社製)を使用した。
【0135】
(実施例1)
前記気泡混合粘弾性体組成物を、チューブ(径:19mm、長さ:1.5m)でウエットラミロールコーターに導入し、ウエットラミロールコーターを用いて、前記剥離フィルムと前記剥離フィルムとの間に、気泡混合粘弾性体組成物を、乾燥及び硬化後の厚さが1.0mmとなるように塗布し、気泡混合粘弾性体組成物層を形成させて、気泡混合粘弾性体組成物層シートを作製した。なお、気泡混合粘弾性体組成物層シートは、気泡混合粘弾性体組成物層を剥離フィルム間に、該層と両剥離フィルムの剥離処理面とが接する形態で、挟み込んだ構成を有する。気泡混合粘弾性体組成物層シートの両面から紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射し、気泡混合粘弾性体組成物層を硬化させて、粘弾性体層の両面が剥離フィルムで保護されているシート(「粘弾性体層シート」と称する場合がある)を作製した。
アクリル系粘着剤組成物(A)を、前記剥離フィルムの剥離処理された面に、硬化後の厚さが50μmとなるようにアプリケーターで塗布し、アクリル系粘着剤組成物層を形成させ、該層上に、剥離処理された面が該層と接する形態で、前記剥離フィルムを貼り合わせた。その後、紫外線(照度:5mW/cm2)を3分間照射して、アクリル系粘着剤組成物層を硬化させることによって、アクリル系粘着剤層を有するシート(「アクリル系粘着剤層シート」と称する場合がある)を作製した。
粘弾性体層シート及びアクリル系粘着剤層シートから、一方の剥離フィルムを剥がし、粘弾性体層及びアクリル系粘着剤層を露出させた後、粘弾性体層シート及びアクリル系粘着剤層シートを、粘弾性体層とアクリル系粘着剤層とが接する形態で、貼り合わせて、48時間放置し、粘弾性体層の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0136】
(実施例2)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0137】
(実施例3)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(C)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0138】
(実施例4)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(D)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0139】
(実施例5)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(E)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0140】
(実施例6)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(F)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0141】
(実施例7)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(G)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0142】
(比較例1)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、シロップ(A)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0143】
(比較例2)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(H)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0144】
(比較例3)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(I)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0145】
(比較例4)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(J)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0146】
(比較例5)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(K)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0147】
(比較例6)
アクリル系粘着剤組成物(A)の代わりに、アクリル系粘着剤組成物(L)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘弾性体層(X)の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0148】
(評価)
実施例1〜7、及び比較例1〜6について、下記の(粘着力の測定方法)により、高極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)に対する粘着力、及び低極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)に対する粘着力を、それぞれ測定した。また、下記(評価方法)により、それぞれの粘着シートを評価した。粘着力の測定結果及び評価結果は、表1に示した。
【0149】
なお、高極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)として、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤が塗料成分100重量部に対して0.3重量部添加されており、表面調製剤がブリードしているエポキシ基含有アクリル・多酸系の塗膜を用い、また、低極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)として、ブチルアクリレート系表面調剤が塗料成分100重量部に対して0.3重量部添加されており、表面調整剤がブリードしているエポキシ基含有アクリル・多酸系の塗膜を用いた。
【0150】
(粘着力の測定方法)
実施例及び比較例の粘着シートを、23℃の雰囲気下、それぞれの粘着シートの剥離フィルムを剥がしアクリル系粘着剤層を露出させ、塗膜に5kgローラー片道で圧着させた後、23℃で30分間エージングした。エージング後、23℃の雰囲気下、引張速度50mm/minで、25mm、180°剥離方向に引き剥がした時の応力を測定し、その際の応力の最高値を読み取り、該応力の最高値を塗膜に対する粘着力(N/25mm)とした。
【0151】
(粘着性の評価方法)
それぞれの実施例及び比較例の粘着シートにおける前記塗膜に対する粘着性を、下記評価基準により評価した。
○(粘着性良好):粘着力が20(N/25mm)以上
×(粘着性不良):粘着力が20(N/25mm)未満
【0152】
(両立性の評価方法)
それぞれの実施例及び比較例の粘着シートにおいて、高極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)及び低極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)の両方の塗膜に対して良好な粘着性を発揮するか否かについて、下記評価基準により評価した。
○(両立性良好):高極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)及び低極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)の両方の塗膜に対して、上記粘着性の評価方法による評価で、粘着性良好と評価できるもの
×(両立性不良):高極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)及び低極性表面調整剤がブリードしている塗膜(未洗浄)の両方の塗膜に対して、上記粘着性の評価方法による評価で、粘着性良好と評価できないもの
【0153】
【表1】

【0154】
表1において、2EHAは2−エチルヘキシルアクリレート、BAはn−ブチルアクリレート、AAはアクリル酸 、DMAAはジメチルアクリルアミドを意味する。また、「スティック・スリップ」は、スティック・スリップ現象が生じたことを意味する。
【0155】
実施例の粘着シートは、表面調整剤がブリードしている未洗浄の塗膜に対して、表面調整剤が高極性あるいは低極性のどちらであっても、高い粘着力(粘着性)を得ることができた。この効果は、塗膜表面にブリードしている表面調整剤を粘着剤層が吸収しているからである。
比較例1の粘着シートは、n−ブチルアクリレートが含まれていないため、低極性の表面調整剤がブリードしている塗膜に対して、良好な粘着性を得ることができなかった。
比較例2の粘着シートは、ジメチルアクリルアミドを用いて中極性の粘着剤層を有する粘着シートとしたため、高極性の表面調整剤がブリードしている塗膜に対して、良好な粘着性を得ることができなかった。
比較例3及び4の粘着シートは、アクリル酸の量が少ないため、高極性の表面調整剤がブリードしている塗膜及び低極性の表面調整剤がブリードしている塗膜の両方に対して、良好な粘着性を得ることができなかった。
比較例5の粘着シートは、アクリル酸の量が多いため、粘着剤層が硬くなりすぎ、スティック・スリップ現象が生じた。
比較例6の粘着シートは、n−ブチルアクリレートの量が多いため、粘着剤層が硬くなりすぎ、低極性の表面調整剤がブリードしている塗膜に対して、良好な粘着性を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小球状体及び、ベースポリマーとしてアルキル(メタ)アクリレートを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸を含むアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)が設けられているアクリル系粘着テープ又はシートであって、前記粘着剤層(Y)を形成するアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中のアクリル酸の量が全モノマー成分に対して6〜12重量%、n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%であることを特徴とするアクリル系粘着テープ又はシート。
【請求項2】
アクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中の光重合開始剤の量が、全モノマー成分100重量部に対して0.001〜5重量部である請求項1記載のアクリル系粘着テープ又はシート。
【請求項3】
微小球状体が、中空ガラスバルーンである請求項1又は2記載のアクリル系粘着テープ又はシート。
【請求項4】
粘弾性体層(X)が、微小球状体、主モノマー成分としての(メタ)アクリル酸エステル及び、光重合開始剤を含む粘弾性体組成物に、活性エネルギー光線を照射することにより得られる層である請求項1〜3の何れか1項に記載のアクリル系粘着テープ又はシート。
【請求項5】
微小球状体及び、ベースポリマーとして(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分するアクリル系ポリマーを含有する粘弾性体層(X)の少なくとも片面に、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート及びアクリル酸を含むアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物に活性エネルギー光線を照射することにより得られる粘着剤層(Y)であって、前記粘着剤層(Y)を形成するアクリル系モノマー混合物又はその予備重合物中のアクリル酸の量が全モノマー成分に対して6〜12重量%、n−ブチルアクリレートの量が2−エチルヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの総量に対して45〜65重量%である粘着剤層(Y)を設けることを特徴とするアクリル系粘着テープ又はシートの製造方法。

【公開番号】特開2012−251159(P2012−251159A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183955(P2012−183955)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2007−61258(P2007−61258)の分割
【原出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】