説明

アクリル酸のC3前駆体化合物のガス状生成混合物から主生成物として含有されるアクリル酸および副生成物として含有されるグリオキサールを分離する方法

本発明は、アクリル酸のC3前駆体化合物の部分的気相酸化によるガス状生成混合物から、主成分として含有されるアクリル酸および副生成物として含有されるグリオキサールを分離する方法に関する。当該方法により、総質量の70%がアクリル酸から成り、含有されるアクリル酸のモル量に対して少なくとも200モルppmのグリオキサールを含有する液相Pが作り出される。当該グリオキサールは、液相Pからの結晶化によって、アクリル酸から分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物中に、主生成物として含まれるアクリル酸および副生成物として含まれるグリオキサールを分離する方法であって、その少なくとも70質量%程度までがアクリル酸から成り、かつ含有されるアクリル酸のモル量に対して少なくとも200モルppmのグリオキサールとを含む液相Pが得られる方法に関する。
【0002】
アクリル酸は、衛生分野において使用されるポリマー(例えば、超吸水性ポリマーなど)を得るために、そのままにおいて、および/またはそのアルキルエステルの形態において使用される重要なモノマーである(例えば、国際公開第02/055469号および同第03/078378号を参照のこと)。
【0003】
アクリル酸は、例えば、C3前駆体化合物(例えば、プロピレン、プロパン、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、プロピオン酸、プロパノール、および/またはグリセロール)の不均一系触媒による部分酸化により、気相において製造することができる(例えば、欧州特許出願公開第990636号、米国特許第5,198,578号、欧州特許出願公開第1015410号、同第1484303号、同第1484308号、同第1484309号、米国特許第2004/0242826号、および国際公開第2006/136336号を参照のこと)。
【0004】
原則として、そのような不均一系触媒による部分気相酸化の過程においては、純粋なアクリル酸は得られず、むしろアクリル酸を含む生成物ガス混合物は、アクリル酸と同様にアクリル酸以外の成分も含むため、そこからアクリル酸を分離しなければならない。
【0005】
生成物ガス混合物中のアクリル酸以外の成分の種類および量的割合の両方は、原材料として使用されるC3前駆体化合物の純度、並びに当該不均一系触媒による部分気相酸化が実施される反応条件などの要因によって影響を及ぼされ得る(例えば、独国特許出願公開第10131297号および同第102005052917号を参照のこと)。
【0006】
欧州特許出願公開第770592号では、そのような不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物が、いくつかある化合物の中でも特に、アクリル酸以外の成分として様々なアルデヒドを含み得ることが開示されている。欧州特許出願公開第770592号においても、アクリル酸中に残存する非常に少量のアルデヒド性不純物が、当該アクリル酸の特性を著しく損ない得るということが開示されている。例えば、欧州特許出願公開第770592号の教示によれば、そのようなアクリル酸の使用の際に、特に、例えば超吸収性ポリマーを製造するための、あるいは石油掘削泥に対する分散剤としてまたは凝集剤として有効なポリマーを製造するためのラジカル重合反応において、最適な生成物品質を達成するためには、アクリル酸中の個々のアルデヒドの量は、1ppm未満であるべきであるとのことである。これらの分離を達成するために、欧州特許出願公開第770592号では、アルデヒド捕捉剤の追加的使用を推薦している。しかしながら、同時に、そのための追加的要件が、欧州特許出願公開第770592号において推奨される手法の欠点でもある。
【0007】
欧州特許出願公開第1298120号では、C3前駆体の不均一系触媒による部分気相酸化において、特定の条件下において形成される可能性のある副生成物が、アルデヒドグリオキサールでもあることを開示されている。グリオキサールによってアクリル酸の望ましくないラジカル重合が促進されるという事実などを理由として、欧州特許出願公開第1298120号では、グリオキサール副生成物の形成が最小となるようにアクリル酸の製造を構成することを推奨している(欧州特許出願公開第1298120号において言及されたアクリル酸のC3前駆体の不均一系触媒による部分気相酸化の際のグリオキサール副生成物の形成に対して可能な供給源1つは、C3前駆体中に存在する可能性の高いC2不純物エチレンである)。
【0008】
欧州特許出願公開第1298120号によれば、逆浸透分離法の追加的使用により、吸収剤を循環させる場合でさえ、100質量ppm未満のグリオキサールを含む液相へアクリル酸を移動させることができる生成物ガス混合物を得ることが可能である。欧州特許出願公開第1298120号の教示によれば、その後に、蒸留分離方法により比較的問題のない方法において、そのような液相からアクリル酸を分離することが可能である。しかしながら、この手法の欠点は、逆浸透のための要件であり、これにより、空時収率が低下する。
【0009】
欧州特許出願公開第1396484号では、アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物中に主生成物として含まれるアクリル酸および副生成物として含まれるグリオキサールを分離するために、欧州特許出願公開第1298120号において推奨されている方法とは異なる手法が開示されており、この手法では、副生成物としてのグリオキサールの含有量が高くても許容される(いくつかのある理由の中でも特に、経済的により魅力的な、不純物含有量が高いC3前駆体化合物の使用が可能となる点において有利である)。
【0010】
この手法では、アクリル酸およびグリオキサールは、最初に、生成物ガス混合物から水性溶液中へ吸収される。続いて、この溶液から水が共沸蒸留によって除去される(精留)。望ましくないポリマーの形成を実質的に抑制するためには、当該手法では、還流液体がある特定の含水量を有し、還流比がある特定の値を下回らないようにすべきである。さらに、特定の温度条件が維持されなければならない。これらの境界条件の下において、グリオキサールは、高沸点水和物の形態において、アクリル酸と一緒に精留塔の底部に蓄積する。
【0011】
続いて、前述の底部の液体中のグリオキサール水和物から、蒸留によってアクリル酸を分離することができ、この場合、当該グリオキサール水和物は、アクリル酸の望ましくないラジカル重合を促進するようなモノマー性グリオキサールの特性を、極めて明白に全く有していないか、もしくは最悪の場合でも、かなり少ない程度しか有していない。
【0012】
出願人による組織内研究において、アクリル酸による望ましくないラジカル重合の傾向を促進する、アクリル酸中における不純物としてのグリオキサールの能力は、等モルの不純物含有量であれば、C3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の他の可能な副生成物のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン)と比較して、かなり顕著であることが示されている。このことに対する理由は、おそらく、解離エネルギーの量子力学的計算の結果として見出されるように、第一に、モノマー性グリオキサールを2つのホルミルラジカルに解離させるための熱的要件が特に低く、第二に、結果として得られるホルミルラジカルが、例えば水素ラジカルまたはメチルラジカルよりもはるかに反応性であることである(CCSD(T)法(一電子、二電子(および三電子)励起を含む結合クラスター)。
【0013】
文献の研究(例えば、L’actualite chimique,1982年5月号,p23〜31、およびこの記事内で引用されている文献)に関する実験により、グリオキサールの水和物は、モノマー性(分子)グリオキサールの、前述の顕著な重合促進作用を有していないことが確認された。
【0014】
グリオキサール水和物は、2種類の水和物の群を形成する。以下の図のように、第一の群は、モノマー性グリオキサール一水和物から成り、第二の群は、モノマー性グリオキサール二水和物から成る。
【0015】
【化1】

【0016】
上記のグリオキサール水和物は両方とも、比較的穏やかな条件下でさえ形成される(比較的低い温度、限定的な含水率で十分である)。
【0017】
しかしながら、モノマー性グリオキサール一水和物の生成反応およびモノマー性グリオキサール二水和物の生成反応は両方とも、著しく可逆的な反応である。換言すれば、上記の2つの水和物のどちらも、もはやモノマー性グリオキサールの著しい重合促進作用を有していないが、モノマー性グリオキサールは、これらの水和物のどちらからも再形成され得、例えば、中程度の温度の場合、増加して、それ自体公知の方法において、アクリル酸の望ましくないラジカル重合を促進し得る。したがって、本明細書の以下において、並びに本明細書において(その序文は別として)全く一般的に、単独の用語「グリオキサール」は、モノマー性グリオキサール、モノマー性グリオキサール一水和物、およびモノマー性グリオキサール二水和物の総量を含むとして常に理解されるべきである。
【0018】
したがって、上記を背景として、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物は、通常、高い沸点を有しており、通常、アクリル酸と共に共沸蒸留の精留塔の底部において富化されるが、精留塔におけるこれらの水和物の生成は、欧州特許出願公開第1396484号において与えられた教示が首尾良く実現されるためには不十分である。
【0019】
欧州特許出願公開第1396484号において推奨された手法を首尾良く実現するためには、組織内研究によれば、代わりに「ポリグリオキサール」または「オリゴグリオキサール」の水和物の形成が必要である。これらは、グリオキサール水和物の第二の群を形成する。ジグリオキサール水和物およびトリグリオキサール水和物の一例を以下に示す。
【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
ポリグリオキサール水和物の形成は、モノマー性グリオキサール二水和物を中間体として介して進行することが推察される。
【0023】
モノマー性グリオキサール水和物の形成とは対照的に、ポリグリオキサール水和物の形成は、高温(それらは、一般的に、50℃を超える温度においてのみ、十分な程度に形成される)および/またはより長い反応時間を必要とする。ちょうどモノマー性グリオキサール水和物と同様に、ポリグリオキサール水和物も、モノマー性グリオキサールに典型的な、アクリル酸に対する重合促進傾向をもはや有していないか、または、最悪の場合でも、モノマー性グリオキサールよりかなり少ない程度しか有していない。しかしながら、ポリグリオキサール水和物は、モノマー性グリオキサール水和物の形成とは対照的に、(少なくとも、通常、アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物からアクリル酸を分離するために採用される条件下において)実質的に不可逆的に形成される。
【0024】
したがって、欧州特許出願公開第1396484号において推奨される手法を首尾良く適用するには、ポリグリオキサール水和物の形成に基づいてしか考えられない。しかしながら、これは、不利な形において、高温および長い滞留時間の両方を必要とする。
【0025】
したがって、本発明の目的は、アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物中に主生成物として含まれるアクリル酸および副生成物として含まれるグリオキサールを分離するために、最も近い先行技術の方法を改善した、実質的に先行技術の方法において説明される欠点を有せず、特にポリグリオキサール水和物の形成を必要としない方法を提供することである。
【0026】
したがって、アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物に主生成物として含まれるアクリル酸および副生成物として存在グリオキサールを分離する方法であって、少なくとも70質量%がアクリル酸から成り、含有されるアクリル酸の量に対して少なくとも200モルppmのグリオキサール(これは、既に言及されているように、本明細書において、モノマー性グリオキサール、モノマー性グリオキサール一水和物、およびモノマー性グリオキサール二水和物の総量を意味するとして理解される)を含む液相Pが得られ、かつ結晶化によって当該液相P中のアクリル酸からグリオキサールを分離する工程であって、形成される結晶中にアクリル酸が富化され、結晶化の際に残留する母液中にグリオキサールが富化される工程を含む、方法として提供される。
【0027】
本発明による方法が有利である理由の1つは、グリオキサール副生成物の形成においていかなる量的制限をも必要としないことであり、別の理由は、ポリグリオキサール水和物の形成を必要としないことである。
【0028】
さらに驚くべきことに、本発明の結晶化分離に関連するグリオキサールの減少係数AGlyは、概して、1万を超える値(≫10,000)を達成する。
【0029】
一般的に、減少係数Aは、結晶中に残存する不純物に対する母液中に残存する不純物の量的比率を意味するとして理解される(各場合において、これらの量は、母液の総量または結晶の総量に対して質量%で表される;例えば、遠心分離法あるいは遠心分離法および/または洗浄により、母液および結晶を、実質的に完全に互いを分離し、その後の分析により減少係数Aを特定する;このためには、概して、それらの総量の90質量%を超える程度まで、好ましくは95質量%を超える程度まで、または97、98、もしくは99質量%を超える程度までの母液の除去で十分である)。
【0030】
気相においてアクリル酸のC3前駆体化合物から不均一系触媒による部分酸化によってアクリル酸を製造する場合の、他の望ましくない可能な副生成物で、対応する結晶化分離の際に、AGlyに匹敵するほどのA値を達成するものはない。この事実は、AGlyが、モノマー性グリオキサールの結晶化分離だけでなく、モノマー性グリオキサール、モノマー性グリオキサール一水和物、およびモノマー性グリオキサール二水和物も含む点において、まったく驚くべきことである(単独の用語「グリオキサール」の定義を参照のこと)。
【0031】
上記の発見は、例えば、超吸収性グレードの精製アクリル酸のための経路に関して、満足できる方法において液相Pから、単一の分離工程、すなわち単一の結晶化工程において、そのような使用を阻むグリオキサール不純物の分離に対する可能性を開くものである。
【0032】
単位「モルppm」は、特定の量の液相Pが、例えば1モルのアクリル酸を含み、かつ同じ量の液相Pが、同時に10・10-6モルのグリオキサールを含む場合、この量の液相P中に存在するアクリル酸のモル量に対して10モルppmのグリオキサールがこの液相P中に存在する、というように理解されるべきである。
【0033】
換言すれば、本発明による方法は、その少なくとも70質量%がアクリル酸から成る液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、≧250モルppm、または≧300モルppm、または≧400モルppm、または≧500モルppm、または≧750モルppm、または≧1000のモルppm、または≧1250のモルppm、または≧1500のモルppmのグリオキサール(本明細書において、これは、モノマー性グリオキサール、モノマー性グリオキサール一水和物、およびモノマー性グリオキサール二水和物の総量である)を含む場合にも首尾よく用いることができる。
【0034】
一般的に、その少なくとも70質量%がアクリル酸から成る液相Pは、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、≦5モル%、頻繁には≦2モル%、または≦1モル%のグリオキサールを含むであろう。当然のことながら、本発明による方法は、上記のグリオキサール含有量の場合にも首尾よく用いることができる。
【0035】
しかしながら、本発明による方法は、液相Pが、(各場合において液相Pの質量の)≧75質量%程度まで、または≧80質量%程度まで、または≧85質量%程度まで、または≧90質量%程度まで、または≧95質量%程度まで、または≧96質量%程度まで、または≧97質量%程度まで、または≧98質量%程度まで、または≧99質量%程度まで、アクリル酸から成る場合、本明細書において個別に指定された液相Pの(各場合において、液相P中に存在するアクリル酸のモル量に対して、モルppmにおいて表された)すべてのグリオキサール含有量(すなわち、上記において言及されたものを含む個々のグリオキサール含有量のそれぞれ)に対して首尾良く用いることができる。
【0036】
本発明に従って処理されるべき液相P中(または他の液相中)のグリオキサール含有量(すなわち、モノマー性グリオキサール、モノマー性グリオキサール一水和物、およびモノマー性グリオキサール二水和物の液相P中における総含有量)は、本明細書において以下のようにして特定される。
【0037】
最初に、誘導体化溶液Dを製造する。このために、2.0gの2,4−ジニトロフェニルヒドラジンの50質量%溶液(製造業者:Aldrich社、純度:≧97%)を、25℃の温度で、62mlの37.0質量%の塩酸水溶液(製造業者:Aldrich社、純度:≧99.999%)に溶解させる。続いて、結果として得られる溶液を(同様に25℃の温度において)335gの蒸留水中へ撹拌しながら加える。25℃で1時間撹拌した後、濾過により、それによって得られる濾液として、誘導体化溶液Dを得る。
【0038】
液相P中のグリオキサールの含有量を特定するために、1gの誘導体化溶液D(この量は、必要に応じて増やすことができる)を、10mlの容量のねじ蓋式管に量り取る。続いて、液相Pの試料を、0.15〜2.0gの範囲の量を量り取り、当該ねじ蓋式管を満たす。
【0039】
次いで、ネジ蓋式管の全内容物を、振盪することによって混合し、次に、25℃において10分間静置する。この間に、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンとの化学反応によって、当該ねじ蓋式管中に存在するモノマー性グリオキサールから、当該モノマー性グリオキサールに対応するヒドラゾンHが形成される。しかしながら、ねじ蓋式管中に存在する、モノマー性グリオキサール一水和物およびグリオキサール二水和物において結合した形態で存在するモノマー性グリオキサールも、この間に、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンによって、ヒドラゾンHの形態においてそこから除去される(対照的に、ねじ蓋式管中に存在するポリグリオキサール水和物からは、モノマー性グリオキサールのそのような除去は実質的に生じない)。
【0040】
0.5gの氷酢酸(製造業者:Aldrich社、純度:≧99.8%)をネジ蓋式管に加え、続いて、形成されたヒドラゾン形成を凍結する。酢酸の添加により固体沈殿物が形成される場合、さらなる酢酸を徐々に加え、形成された沈殿物を再溶解させる(しかし、加えた酢酸の総量は1.0gを超えてはならない)。許容される酢酸の添加の総量が制限(1.0g)に到達してもなお、形成された沈殿物が溶液に再溶解しない場合、0.5gのフタル酸ジメチルを量り入れる。それでも、形成された沈殿物を溶解させることができないのであれば、フタル酸ジメチルの添加量を徐々に増やして溶解させる(しかし、加えるフタル酸ジメチルの総量は1.0gを超えてはならない)。許容されるフタル酸ジメチルの添加の総量が制限(1.0g)に到達してもなお、形成された沈殿物が溶液に再溶解しない場合、9gのアセトニトリルと1gのフタル酸ジメチルとの混合物Gの2gを加える。この添加でも、沈殿物を溶解させることができないのであれば、加える混合物Gの量を徐々に増やして、溶解させる。通常、沈殿物を溶解させるために加えられる混合物Gの総量は、5gを超えない(すべての上記の溶出試験は、25℃において実施される)。
【0041】
続いて、説明したようにネジ蓋式管において得られたヒドラゾンHの溶液のヒドラゾン含有量を、HPLC(高圧液体クロマトグラフィ:igh ressure iquid hromatography)により、以下の操作条件を用いて分析する(それらのモル量が、結果として直接的に、液相P中に存在するグリオキサールのモル量となる)。
【0042】
使用するクロマトグラフィーカラム:Waters Symmetry C18、150×4.6mm、5μm(Waters Associates社製、ミルフォード、マサチューセッツ州、米国);
分析する溶液の注入量:50μl(時間t=0);
温度:40℃;
溶出流速:1.5ml/分;
分析時間:17分;
均衡時間:8分;
溶出剤:
>0分〜15分の期間tにおいては、30質量%のアセトニトリルと50質量%の水と20質量%のテトラヒドロフラン(それぞれ、HPLC用グレード)との混合物;
>15分〜17分の期間においては、65質量%のアセトニトリルと30質量%の水と5質量%のテトラヒドロフランとの混合物;
>17分〜25分の期間においては、30質量%のアセトニトリルと50質量%の水と20質量%のテトラヒドロフランとの混合物(次に、カラムを均衡化して次の分析のために再び使える状態にする)
ヒドラゾンHとしてのグリオキサールの保持時間は、上記の条件下において7.613分である。
【0043】
当該分析は、波長365nmの単色光照射によって行う。用いた分析方法は、吸光分光法である。溶出時間に対して溶出剤を変えることにより、確実に分離作用を向上させる(一般的に、液相Pは、グリオキサールと同様に、他の副生成物のアルデヒドおよび/または副生成物のケトンも含み、これらは、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンと共に特定の対応するヒドラゾンを形成する)。
【0044】
HPLC法を較正するために、適切な適用期間において、50質量ppmのモノマー性グリオキサールを含むモノマー性グリオキサールのメタノール溶液が用いられるであろう。
【0045】
このために、上記において説明したような誘導体化溶液Dによって処理し、次いで、説明したHPLC分析を行う。
【0046】
本発明による方法の注目に値する特徴の1つは、既に言及しているように、アクリル酸を製造するための不均一系触媒による部分気相酸化に対して、アクリル酸の高純度のC3前駆体化合物の使用を当てにしていないということである。
【0047】
例えば、アクリル酸を製造するための不均一系触媒による部分気相酸化に対して、その中に含まれるC3前駆体化合物(例えば、プロパン、プロピレン、アクロレイン、プロピオン酸、プロピオンアルデヒド、プロパノール、および/またはグリセロール)のモル量に対して、≧200モルppm、または、≧250モルppm、または、≧300モルppm、または、≧400モルppm、または、≧500モルppm、または、≧750モルppm、または、≧1000モルppm、または、≧1250のモルppm、または、≧1500のモルppmの総モル量のC2化合物(例えば、エタン、エチレン、アセチレン、アセトアルデヒド、酢酸、および/またはエタノール)を含有する、出発反応ガス混合物を使用することが可能である。
【0048】
当該出発反応ガス混合物は、その中に含まれるC3前駆体化合物をアクリル酸へと部分酸化するために触媒床に供給されるガス混合物である。当該出発反応ガス混合物は、一般的に、C3前駆体化合物、望ましくない不純物、および酸化剤としての分子状の酸素、並びに不活性ガス、例えば、N、CO2、H2O、希ガス、分子状水素なども含む。通常、いずれの不活性ガスも、不均一系触媒による部分酸化の際に、その出発量の少なくとも95モル%程度までが、変化しないままである。
【0049】
出発反応ガス混合物中のC3前駆体化合物の割合は、例えば、4〜20体積%、または5〜15体積%、または6〜12体積%の範囲であり得る。
【0050】
通常、当該出発反応ガス混合物は、概して酸化物触媒を再酸化するために、アクリル酸へのC3前駆体化合物の部分酸化反応の化学量論に基づいて、過剰な分子状酸素を含む。
【0051】
その後に本発明の手法を適用する場合、酸素の過剰量の増加は、概して、グリオキサールの望ましくない二次成分形成の増加も伴うために、この過剰量は、特に高いレベルにおいて選択され得る。
【0052】
同様に、アクリル酸へのC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化において、本発明の方法が当該部分酸化の後に用いられる場合、触媒床における最高反応温度は、比較的高いレベルにおいて選択され得る。これについての理由の1つは、最高温度の上昇は、概して、グリオキサールの望ましくない二次成分形成の増加も伴うということである。しかしながら、高い最高温度を用いることで、概して、反応性の低い触媒の使用が可能となり、触媒の有効寿命を延ばす可能性が開ける。しかしながら、C3前駆体化合物の転化の増加に伴ってより低い活性の触媒を使用する場合、それらの望ましくない完全燃焼も、多くの場合、温度を高めた分だけ進行する。形成された副生成物は、場合によって、同様に、グリオキサールであり得る。
【0053】
本発明の手法に関係して、C3前駆体化合物による触媒床の負荷を選択することにより、より穏やかに進行させることも同様に可能である。さらに、グリオキサール副生成物の形成は、反応ガス混合物中の水蒸気量が多い場合に促進されることが見出された。したがって、本発明による方法は、特に、C3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化に使用された出発反応ガス混合物が、≧1質量%、または≧2質量%、または≧3質量%、または≧4質量%、または≧5質量%、または≧7質量%、または≧9質量%、または≧15質量%、または≧20質量%の水蒸気を含む場合に関連している。しかしながら、一般的に、出発反応ガス混合物中の水蒸気の含有量は、40質量%以下であり、多くの場合、30質量%以下であろう。
【0054】
そうでなければ、アクリル酸を製造するための不均一系触媒による部分気相酸化のための当該方法は、先行技術において説明されているように、それ自体公知の方式において実施することができる。
【0055】
3前駆体化合物が、例えば、プロピレンおよび/またはアクロレインの場合、不均一系触媒による部分気相酸化は、例えば、文献国際公開第2005/042459号、同第2005/047224号、および同第2005/047226号に記載されているように実施することができる。
【0056】
3前駆体化合物が、例えば、プロパンの場合、アクリル酸を製造するための不均一系触媒による部分気相酸化は、例えば、欧州特許出願公開第608838号、独国特許出願公開第19835247号、同第10245585号、および同第10246119号といった文献に記載されているように実施することができる。
【0057】
3前駆体化合物が、例えば、グリセロールの場合、アクリル酸を製造するための不均一系触媒による部分気相酸化は、例えば、国際公開第2007/090991号、同第2006/114506号、同第2005/073160号、同第2006/114506号、同第2006/092272号、または同第2005/073160号といった文献に記載されているように実施することができる。
【0058】
部分気相酸化に先立って、プロパンの部分脱水素化および/またはオキシ脱水素化によって、C3前駆体化合物としてのプロピレンを得ることも既に提案されている(例えば、国際公開第076370号、同第01/96271号、欧州特許出願公開第117146号、国際公開第03/011804号、および同第01/96270号)。
【0059】
3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物からアクリル酸を分離するためには、非常に経済的に実行可能な方法において、その後の最終用途のための適切なアクリル酸の純度を達成するために、通常、原則として、異なる分離方法を組み合わせて用いる。個々の場合において用いられた組み合わせは、特に、生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸以外の成分の種類および量に依存する。したがって、本発明により処理可能な液相Pは、幅広い様々な方法において得ることができる。
【0060】
分離方法のそのような組み合わせにおいて必要不可欠な要素は、通常、非結晶化熱的分離方法である。非結晶化熱的分離方法は、気体流(上昇)および液体流(下降)、あるいは2つの液体流が、分離性内容物を含む分離塔内を向流において移動する分離方法であり、流れの間に存在する勾配によって熱および物質の移動が生じ、それによって、最終的に分離塔内において所望の分離が得られる。
【0061】
そのような非結晶化熱的分離方法の例は、(部分)凝縮、分別凝縮(独国特許出願公開第19924532号を参照のこと)、および精留である。
【0062】
この場合、結果として得られる分離作用は、特に、アクリル酸とアクリル酸以外の二次成分との沸点の違いに基づいている。さらなる例は、吸収によるものである。この場合、分離作用は、特に、吸収液体におけるアクリル酸とアクリル酸以外の二次成分との溶解性の違いに基づいている。上記は、ストリッピング(ストリッピングガスは、異なる親和性により、液体中に溶解している成分をそこから取り出す)および脱離(吸収の逆の処理;分圧を下げることによって液相中に溶解している物質が分離される)の非結晶化熱的分離方法に適用される。しかしながら、用語「熱的分離方法」は、共沸蒸留および精留(それらは、アクリル酸および二次成分(部分酸化の反応ガス混合物中におけるアクリル酸以外の成分)が、添加された共沸剤と共沸混合物を形成する傾向の程度が異なることを利用する)も含む。さらに、用語「非結晶化熱的分離方法」は、抽出を含む。
【0063】
3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物からアクリル酸を分離するための、熱的分離方法の実質的にすべての可能な組み合わせに対する共通の特徴は、適切であれば、前述の生成物ガス混合物の直接冷却および/または間接冷却の後に、当該生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸が、基本分離工程において、凝縮相(特に液相)に転化されるということである(適用目的に対して適切に、例えば基本分離においてガス状形態で残存する残留ガスの少なくとも一部は、「サイクルガス」として、C3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化(例えば、それらの出発反応ガス混合物)へ返送される(サイクルガス法);一般的に、残留ガス(サイクルガス)は、主として、C3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化に追加的に使用される不活性希釈ガス、並びに、通常、部分酸化において副生成物として形成される水蒸気、およびC3前駆体化合物の望ましくない完全酸化の際に形成される副生成物(例えば、炭素酸化物)から成り、当該副生成物にはグリオキサールも含まれる;基本分離が吸収の場合、サイクルガスも吸収剤を含み得、場合によって、さらに、部分酸化において消費されなかった少量の分子状酸素(残留酸素)および/または転化されていない少量の有機C3前駆体化合物を含む(例えば、国際公開第2004/007405号および独国特許出願公開第102007019597号を参照のこと))。
【0064】
これは、例えば、好適な溶媒(例えば、水、高沸点有機溶媒、水性溶液)中に吸収させることによって、および/または部分的または実質的に完全な凝縮(例えば、分別凝縮)によって為され得る(この主題に関して、例えば、欧州特許出願公開第1388533号、同第1388532号、独国特許出願公開第10235847号、欧州特許出願公開第792867号、国際公開第98/01415号、欧州特許出願公開第1015411号、同第1015410号、国際公開第99/50219号、同第00/53560号、同第02/09839号、独国特許出願公開第10235847号、国際公開第03/041833号、独国特許出願公開第10223058号、同第10243625号、同第10336386号、欧州特許出願公開第854129号、米国特許第4,317,926号、独国特許出願公開第19837520号、同第19606877号、同第190501325号、同第10247240号、同第19740253号、欧州特許出願公開第695736号、同第982287号、同第1041062号、同第117146号、独国特許出願公開第4308087号、同第4335172号、同第4436243号、同第19924532号、同第10332758号、および同第19924533号といった文献を参照のこと)。アクリル酸の分離は、欧州特許出願公開第982287号、同第982289号、独国特許出願公開第10336386号、同第10115277号、同第19606877号、同第19740252号、同第19627847号、欧州特許出願公開第920408号、同第1068174号、同第1066239号、同第1066240号、国際公開第00/53560号、同第00/53561号、独国特許出願公開第10053086号および欧州特許出願公開第982288号に記載されているように実施され得る。国際公開第2004/063138号、同第2004/035514号、独国特許出願公開第10243625号、および同第10235847号といった文献に記載されている方法も、好ましい分離方法である。
【0065】
説明した基本分離において目的生成物であるアクリル酸を含む液相(または、概して凝縮された相)から、所望の純度においてアクリル酸を分離するために用いられるさらなる分離工程は、目的に応じて、吸着による方法、抽出による方法、脱着による方法、蒸留による方法、ストリッピングによる方法、精留による方法、共沸蒸留による方法、共沸精留による方法、および結晶化による方法の様々な異なる組み合わせであり得る。
【0066】
液相Pが通されるか、または目的生成物であるアクリル酸を含みかつ説明した基本分離の際に得られる液相が既に液相Pである場合、本発明による方法は、液相P中に存在するグリオキサールを分離するために有利に用いることができる。本発明の手法を液相Pに適用する場合(すなわち、液相Pを冷却する場合)、通常、アクリル酸が結晶化するが、この事実は、当該方法に必要なアクリル酸の最小含有量が高いためである。当該最小含有量は、既に言及したように、例えば、≧70〜≦99.5質量%、または≧80〜≦99.5質量%、または≧85〜≦99質量%、または≧90〜≦98質量%、または≧93〜≦97質量%であり得る。
【0067】
この場合、本発明による結晶化方法は、同じ方式において実施することができ、並びに特に、以下の先行技術の文献:国際公開第02/055469号、同第03/078378号、同第01/77056号、同第03/041833号、独国特許出願公開第19606877号、同第10336386号、国際公開第98/01414号、同第01/77056号、欧州特許出願公開第1484308号、同第1484309号、米国特許第2004/0242826号、独国特許出願公開第10243625号、同第19606877号、欧州特許出願公開第792867号、同第1015410号、同第920408号、同第1189861号、同第1015411号、同第1068174号、国際公開第2004/035514号、欧州特許出願公開第1066293号、同第1163201号、同第1159249号、国際公開第02/090310号、独国特許出願公開第10122787号、国際公開第03/041832号、独国特許出願公開第10235847号、欧州特許出願公開第1252129号、同第616998号、同第1388533号、同第1125912号、および同第1116709号によって教示されているように、C3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物から(氷)アクリル酸を分離するための方法全体に、同じ方式において統合することができる。
【0068】
主成分としてのアクリル酸および副生成物としてのグリオキサールを含み、本発明に従って処理される液相Pが、少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法を用いて、アクリル酸の少なくとも1種のC3前駆体の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物から得られる場合、本発明による方法は、非常に特に重要である。このことは、本発明による結晶化分離において液相P中に存在するグリオキサールがその中に残留する母液(当該母液は、富化された形態においてグリオキサールを含む)が、液相Pを製造するために用いられる少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法へと返送される場合に、特に当てはまる。
【0069】
非結晶化熱的分離方法および結晶化分離方法のそのような統合された適用の基本構造は、例えば、独国特許出願公開第19606877号、欧州特許出願公開第792867号および同第1484308号、同第1484309号、同第1116709号、並びに特に同第1015410号によって教示される。
【0070】
本発明による方法は、そのような組み合わせの場合、そのような手順の連続的な運転では、母液の返送により、(既に言及されているように)母液がグリオキサールを富化された形態において含むために、本発明によって処理されるべき液相P中にグリオキサールが蓄積される、という点において、その重要性が高まる。したがって、換言すれば、気相酸化の生成物ガス混合物中における比較的小さいグリオキサール含有量でさえ、深刻な問題と成り得る(本発明により処理されるべき液相P(それらは、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも200モルppmのグリオキサールを含む)は、どのような状況下においても、初期の非液相P(これらは、初期に、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して200モルppm未満のグリオキサールを含む)から連続稼働時間の間に、実際に生じ得る)。良好な処理性能のためには、これらの場合において、平均を超える減少係数AGlyが不可欠である。
【0071】
しかしながら、例えば、アクリル酸を含みかつ比較的に低いグリオキサール含有量を有する液相を結晶化する際に得られる母液が、収率を高めるためにさらに結晶化される場合や、または本発明の方法において混濁され得る二次流であって、純粋なアクリル酸を製造する過程において非結晶化熱的分離方法において得られる二次流が、収率を高めるために本発明に従って処理される場合などにおいて、本発明により必要とされるグリオキサールは、高い含有量において液相P中に存在し得る。
【0072】
水は、通常、副生成物として否応なく形成され、並びにC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化における反応ガス混合物において不活性希釈ガスとして追加的に使用される場合もあるので、本発明に従って処理されるべき液相Pは、多くの場合、水を含むが、水だけでなく、モノマー性グリオキサールと同様に、モノマー性グリオキサール一水和物およびモノマー性グリオキサール二水和物の両方も同時に含む。しかしながら、場合によって、モノマー性グリオキサールのみが、本発明に従って処理されるべき液相P中に存在する場合もある(本発明の手法の利点の1つは、両方の場合において有効であるという点である)。
【0073】
換言すれば、本発明による方法は、特に、液相P中に存在するグリオキサールが、少なくとも30モル%程度まで、または少なくとも50モル%程度まで、または少なくとも70モル%程度まで、または少なくとも90モル%程度まで、または少なくとも95モル%程度まで、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において液相P中に存在する場合にも用いることができる。
【0074】
頻繁には、液相Pは、その中に含まれるアクリル酸の量に対して、0.20〜30質量%、または0.20〜20質量%、または0.20〜10質量%の水を含む(水和物の水(例えば、グリオキサール水和物の水)も、この水の量に含まれている)。多くの場合、前述の、液相P中の含水量は、その中に含まれるアクリル酸の量に対して、0.50〜30質量%、または0.50〜20質量%、または0.50〜10質量%である。
【0075】
アクリル酸のC3前駆体の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物から、本発明に従って処理されるべき液相Pを得るために用いられる少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法(その後の、液相P中に存在するグリオキサールの本発明の結晶化分離の際に残留する(富化された形態においてグリオキサールを含む)母液が、液相P中へと少なくとも部分的に返送される)は、概して、精留、共沸精留、吸収、吸着、抽出、脱離、超臨界流体抽出、部分的凝縮、ストリッピング、分別凝縮、または、これらの複数の方法の組合せであるだろう。頻繁には、本発明に従って処理されるべき液相Pは、前述の処理を2回以上用いることによって得られるであろう。
【0076】
最も単純な場合では、本発明に従って処理されるべき液相Pは、本明細書において列挙された少なくとも1種のC3前駆体の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物からの、アクリル酸の吸収分離および/または凝縮分離の分取によって得られる被吸収剤および/または部分的凝縮物であり得る。本発明によれば、富化されたグリオキサールを含む母液は、吸収および/または(任意により、分取)凝縮へと返送される。適切には、本発明に従って処理されるべき液相Pを得るための少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法と、結果として得られた液相Pからのグリオキサールの本発明による結晶化分離とで構成される、説明されたように用いられるべき操作のネットワーク化された様式であって、富化されたグリオキサールを含み、かつグリオキサールの結晶化分離において得られる母液が、少なくとも部分的に、本発明に従って処理されるべき液相Pを得るために用いられる少なくとも1つの非結晶化熱的分離工程へと返送される当該様式は、富化されたグリオキサールを含む少なくとも1つの流れのための出口を有する。
【0077】
有利なことに、この出口は、非結晶化熱的分離方法の側にある。一般的に、分離塔の底部液体は、本発明に従って処理されるべき液相P自体、または後で本発明に従って処理されるべき液相Pに転化される流れが、例えば、側方抜き出し口を介して、そこから抜き出される出口として使用されるであろう(概して、そのような出口は、前述の側方抜き出し口の下にあるべきである)。本発明に従って処理されるべき液相Pが、例えば、国際出願PCT/EP2008/050785号、独国特許出願公開第102007055086号、および欧州特許出願公開第1554234号といった文献に記載されているようなC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物から、側方抜き出し口を介して得られる凝縮物の分画である場合、マイケル付加体であるアクリル酸オリゴマーのための再解離装置(開裂装置)からの出口も、上記において対処されたグリオキサールの出口として機能し得る。この場合、これは、グリオキサールが(特定の再解離触媒の不在下で)高温において、主に、言及されたポリグリオキサールまたはそれらの水和物に転化される有利な方式において顕著となる。
【0078】
一般的に、頂部から下方へ分離塔内を移動する水性吸収剤および/または水性還流液体の存在下において非結晶化熱的分離プロセスが実施される分離塔から、本発明に従って処理されるべき液相Pが、例えば、側方抜き出し口を介して引き出される場合、抜き出し位置が分離塔の下方であるほど、引き出された液相P中のグリオキサール含有量はより多いであろう。
【0079】
しかしながら、グリオキサールの出口は、本発明の分離側、すなわち、結晶化側にも存在し得るか、結晶化側にのみ存在し得る。この場合、当該出口は、通常、富化されたグリオキサールを含む母液から成るであろう。
【0080】
本発明の分離が、例えば、欧州特許出願公開第616998号による動的結晶化と静的結晶化との組み合わせによって実施される場合、富化されたグリオキサールを含むグリオキサールの出口は、概して、(適切に、応用的見地から)静的結晶化の領域にあるであろう。
【0081】
後者は、特に、本発明の方法を用いる場合に、富化されたグリオキサールを含む母液が少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法へ返送されない場合に実施される。
【0082】
本発明による方法は、特に、本発明に従って(例えば、上記において説明した手法のうちの1つにより)処理されるべき液相Pが、アクリル酸のC3前駆体の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物中に存在するアクリル酸のモル量に対して、少なくとも200モルppmのグリオキサール、または≧250モルppmのグリオキサール、または≧300モルppmのグリオキサール、または≧400モルppmのグリオキサール、または≧500モルppmのグリオキサール、または≧750モルppmのグリオキサール、または≧1000モルppmのグリオキサール、または≧1250モルppmのグリオキサール、または≧1500モルppmのグリオキサールを含む当該生成物ガス混合物から誘導される場合に好ましい。
【0083】
通常、当該生成物ガス混合物の前述のグリオキサール含有量は、(同じ基準において)≦5モル%であろう。多くの場合、前述の生成物ガス混合物のアクリル酸含有量は、1〜30体積%であろう。
【0084】
本発明による方法は、特に、本発明に従って処理されるべき液相Pが、直接的および/または間接的熱交換によってあらかじめ冷却されていてもよい生成物ガス混合物を、水性溶媒または水による、生成物ガス混合物からのアクリル酸の吸収に供することによって得られる場合にも用いることができる(例えば、欧州特許出願公開第1388532号および同第1388533号を参照のこと)。その結果として得られる、アクリル酸を含む水性被吸収剤こそが、本発明に従って処理されるべき液相Pであり得る。
【0085】
しかしながら、水性吸収物のアクリル酸含有量は、被吸収剤の質量に対して、依然として70質量%未満であるべきであるか、または他の理由から、(適切であるなら、被吸収剤中の、アクリル酸より低い沸点を有する成分の先行する脱離および/またはストリッピングの後に)水性被吸収剤を共沸蒸溜(精留)に供して、当該被吸収剤中に存在する水の少なくとも一部を除去することができ、残存する残留物を(液相Pとして)本発明の結晶化分離に供することができる。これとの関係において好適な共沸剤としては、例えば、ヘプタン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、オクタン、クロロベンゼン、キシレン、または混合物(例えば、60質量%のトルエンと40質量%のヘプタンの混合物)が挙げられる。
【0086】
しかしながら、メチルイソブチルケトンまたは酢酸イソプロピルも、代替の共沸剤として使用され得る。
【0087】
さらなる好適な共沸剤が、米国特許第2004/0242826号、欧州特許出願公開第778255号、同第695736号、およびこれらの文献に引用された先行技術によって開示されている。通常、共沸蒸溜または精留は、大気圧より低い作業圧力において有利に実施される。
【0088】
したがって、本出願は、特に、アクリル酸およびグリオキサールが、アクリル酸より低い沸点およびより高い沸点を有する他の成分と一緒に、不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物から水性液相へと移され(例えば、水性溶液による吸収によって)、結果として得られる水性液相から、共沸精留および/または蒸留によって少なくとも水の一部が分離されて液相Pが残り、当該液相Pが、続いて本発明による結晶化によって処理される、本発明による方法を含む。
【0089】
原則として、文献欧州特許出願公開第1298120号および同第1396484号において説明されているように実施することも可能ではあるが、これらの文献において必要とされる特定の方法を採用する必要はない。
【0090】
この点において、当該生成物ガス混合物の分別凝縮では、それは、適用条件において適切に(適切であれば、(例えば、欧州特許出願公開第1066239号または同第1163201号による冷却液体によって)先に生成物ガス混合物を直接的および/または間接的に冷却した後で)、粗アクリル酸の側方引き出し分離により、塔内へと上昇する分離性内部構造物を有する分離塔において分取凝縮を行う(適切であれば、本発明に従って処理されるべき液相Pを形成し、適切であれば、液相Pを得るために粗アクリル酸も精留および/または蒸留によって処理される)(欧州特許出願公開第1015410号、国際公開第2004/035514号、独国特許出願公開第10243625号、欧州特許出願公開第1015411号、独国特許出願公開第10235847号、欧州特許出願公開第1159249号、同第1163201号、同第1066239号、および同第920408号も参照のこと)。分別凝縮の過程において生じるアクリル酸の損失を最小にするために、適切であれば、水および/または水性溶媒による吸収を、追加的に分別凝縮と併用してもよい。
【0091】
このようにして凝縮(および、適切であれば、さらなる精留)によって得られる液相は、それが、本発明の結晶化分離に関して必要とされるアクリル酸含有量、および当該アクリル酸含有量に対して適切なグリオキサール含有量の両方を有する場合、当該結晶化分離に適切に供されるであろう。
【0092】
形成されたグリオキサールを富化して含むこの母液は、例えば、欧州特許出願公開第920408号、または国際公開第2004/035514号、または欧州特許出願公開第1554234号、あるいは国際出願PCT/EP2008/050785号または独国特許出願公開第102007055086号の実施例により、本明細書の様々な箇所において既に言及されているように、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、生成物ガス混合物からアクリル酸の分別凝縮へ返送することができる。
【0093】
その場合、グリオキサールの出口は、粗アクリル酸の側方抜き出し口の下方に位置するであろう。
【0094】
液相P、特に、前述の方法における凝縮および/または吸収および/または精留によって得られる液相Pに対する本発明の結晶化処理は、原則として、結晶から母液を除去する方法を含めて、いかなる制限も受けない(本明細書において引用された先行技術において詳しく述べられているすべての処理を用いることができる)。
【0095】
換言すれば、当該処理は、1段階または多段階において、連続的にまたはバッチ式において実施することができる。特に、当該処理は、分別結晶化として実施することもできる。通常、分別結晶化では、(特に、グリオキサールに関して)供給された液相Pより純度の高いアクリル酸結晶を製造するすべての段階は、精製段階と呼ばれ、他のすべての段階はストリッピング段階と呼ばれる。適切には、向流原理に基づいて多段階法が行われ、当該方法においては、各段階において結晶化の後に結晶が母液から分離され、これらの結晶が、次の最も高い純度において特定の段階に供給され、一方で、結晶化残留物は、次のもっとも低い純度において特定の段階へ供給される。
【0096】
一般的に、本発明による方法の際の液相Pの温度は、−25℃〜+14℃の間、特に+12℃〜−5℃の間である。
【0097】
例えば、本発明による方法は、層状結晶化として実施することができる(独国特許出願公開第2606364号、欧州特許出願公開第616998号、同第648520号、および同第776875号を参照のこと)。この場合、当該結晶は、密着ししっかりと接着した層状に結晶化される。析出した結晶は、残留する残留溶融物(母液)を単に流し出すことによって、当該残留溶融物の効力から分離される。原則として、「静的」層状結晶化法と「動的」層状結晶化法とは区別される。液相Pの動的層状結晶化の特徴は、液相Pの強制対流である。これは、フルフロー式の管を介した液相Pのポンプ循環によって、(例えば、欧州特許出願公開第616998号による)細流膜として液相Pを適用することによって、または液相Pへの不活性ガスの導入によって、または脈動によって実施することができる。
【0098】
静的層状結晶化法の場合、液相Pは、(例えば、管束式またはプレート式熱交換器中において)静置状態にあり、ゆっくりと温度を低下させることにより、二次側において、層状に分離される。その後、残留溶融物(母液)を排出し、温度をゆっくりと高めることによって、比較的高く汚染された分画が結晶層から浸出し、次いで純粋な生成物が溶融する(国際公開第01/77056号を参照のこと)。
【0099】
しかしながら、好ましくは、本発明に従って、本発明による方法は、本明細書において説明されたすべての液相Pの場合において、国際公開第01/77056号、同第02/055469号、欧州特許出願公開第1554234号、国際出願PCT/EP2008/05078号、独国特許出願公開第102007055086号、独国特許出願第102007043759.7号、同第102007043758.9号、同第102007043748.1号、および国際公開第03/078378号の教示による懸濁結晶化として実施されるであろう。
【0100】
一般的に、当該液相Pを冷却することにより、懸濁されたアクリル酸結晶を含む結晶懸濁液が得られ、これらのアクリル酸結晶は、精製されるべき液相Pよりも(特定の総量に対して相対的に)グリオキサール含有量が低く、残った残留溶融物(母液)のグリオキサール含有量は、当該精製されるべき液相Pよりもグリオキサール含有量が高い。これらのアクリル酸結晶は、懸濁液中において急速に成長し得るか、および/または層として冷却された壁上に析出し得、それらは、その後に当該壁から掻き落とされ、残留溶融物(母液)に再懸濁される。
【0101】
国際公開第01/77056号、同第02/055469号、欧州特許出願公開第1554234号、国際出願PCT/EP2008/050785号、独国特許出願公開第102007055086号、独国特許出願第102007043759.7号、同第102007043758.9号、同第102007043748.1号、および国際公開第03/078378号において詳細に説明されているすべての懸濁晶析装置および懸濁結晶化法が、本発明により可能性がある。一般的に、得られるアクリル酸結晶懸濁液は、20〜40質量%の固形分を有する。
【0102】
さらに、形成された懸濁結晶および残留する母液を分離するための、前述の刊行物(特に、前述の国際公開刊行物)において言及されたすべての方法が有用である(例えば、遠心分離などの機械的分離法)。好ましくは、本発明により、当該分離は、洗浄塔において行われる。これは、好ましくは、析出したアクリル酸結晶の強制移送を伴う洗浄塔である。結晶床中における結晶の体積割合は、一般的に、>0.5の値に達する。一般的に、洗浄塔は、0.6〜0.75の値で運転される。有利には、洗浄液として、洗浄塔内であらかじめ精製された(分離された)アクリル酸結晶の溶融物が使用される。洗浄は、通常、向流において行われる。したがって、本発明による方法は、特に、以下の処理工程:
a)液相Pからアクリル酸を結晶化する工程、
b)残留する母液(残留溶融物、残留液相)からアクリル酸結晶を分離する工程、
c)分離されたアクリル酸結晶を少なくとも部分的に溶融させる工程、および
d)溶融されたアクリル酸結晶を、工程b)および/または工程a)へ、少なくとも部分的に返送する工程、
を包含する方法を含む。
【0103】
有利には、工程b)は、先に分離されて工程b)へ返送された溶融アクリル酸結晶による向流洗浄によって行われる。
【0104】
特に、当該結晶化が懸濁結晶化として実施される場合、より詳細には、その後の母液分離が、洗浄塔内において実施される場合、さらに詳細には、洗浄液として、既に先に洗浄塔において精製されているアクリル酸結晶の溶融物が使用される場合、頻繁には、液相Pが水を含むことが好都合であることが見出される。
【0105】
換言すれば、本発明による方法は、特に、精製されるべき液相Pが、低温条件下において、アクリル酸と残留液相(残留溶融物)とからなる結晶懸濁液に転化され、アクリル酸結晶中のグリオキサールの質量割合が、液相Pのグリオキサールの質量割合より小さく、かつ残留液相(母液)中のグリオキサールの質量割合が、液相Pのグリオキサールの質量割合より大きく、適切であれば、当該結晶懸濁液から、残留する母液の一部を機械的に分離し、かつアクリル酸結晶が洗浄塔内において残留する母液から分離される方法(例えば、国際公開第01/77056号、同第03/041832号、同第03/041833号、および同第98/01414号を参照のこと)であって、ただし、以下の条件の方法を包含する:
a)液相P中に存在するアクリル酸に対して、当該液相Pが、0.20〜30質量%、頻繁には、〜20質量%、多くの場合、〜10質量%の水を含み、
b)使用される洗浄液が、洗浄塔内で精製されたアクリル酸結晶体の溶融物である
特に、本発明による方法は、液相Pが、≧80質量%のアクリル酸、または、≧90質量%のアクリル酸、または、≧95質量%のアクリル酸を含有する上記の方法を含む。
【0106】
さらに、本発明により有利なのは、上記において説明した手法(または本発明による方法が用いられる場合に極めて一般的に用いられる手法)における液相Pの含水量は、液相Pの中に存在するアクリル酸に対して、0.2または0.4〜8質量%、もしくは〜10質量%、もしくは〜20質量%、もしくは〜30質量%、または0.6〜5質量%、または0.6〜3質量%である場合である。
【0107】
当然のことながら、本発明による方法は、本明細書において先行技術として引用した文献で言及されているすべての粗アクリル酸に対しても適用することが可能であるが、ただし、それらが、必要とされるアクリル酸含有量と、さらに、必要とされるグリオキサール含有量とを含む場合に限られる。
【0108】
上記のすべての方法は、特に、洗浄塔が、アクリル酸結晶の強制移送を伴う洗浄塔である場合に、並びに、特に、当該洗浄塔が、例えば、国際公開第01/77056号による、水圧式の、または機械的な洗浄塔であって、かつ当該刊行物中において詳細に説明されているように操作される場合に、適用される。
【0109】
上記のすべてのことは、特に、洗浄塔が、国際公開第03/041832号および同第03/041833号の教示に従って設計され操作される場合に当てはまる。
【0110】
したがって、本発明による方法は、一連の、高いグリオキサール含有量を有する生成物ガス混合物を得るための少なくとも1種のC3前駆体の部分酸化と、当該部分酸化による当該生成物ガス混合物からのアクリル酸の分取凝縮と、回収された当該アクリル酸凝縮物の懸濁結晶化と、並びに純粋な結晶の溶融物を洗浄液として使用し、高い効率において、および1つだけの結晶化段階を用いた洗浄塔に残留する母液からの懸濁結晶の分離とによって、グリオキサール不含と見なされ得、したがって超吸収性グレードである、アクリル酸の製造が可能となる(当然のことながら、そのようなアクリル酸は、特に、出発物質が、グリオキサール副生成物の形成を引き起こす、部分酸化のための安価なC3前駆体原料供給源である場合に、国際公開第02/055469号および同第03/078378号において対処されているすべての他の用途にも使用することができる)。
【0111】
本明細書において説明したすべての処理工程が、重合を抑制しながら実施されることは理解されるであろう。それらは、引用された先行技術において説明されるように実施することも可能である。利用できるすべてのアクリル酸処理安定化剤の中で際だった位置を占めているのは、ジベンゾ−1,4−チアジン(PTZ)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−OH−TEMPO)、およびp−メトキシフェノール(MEHQ)であり、これらのそれぞれは、単独において、または二成分混合物として、または三成分混合物として、本発明により処理されるべき液相Pの一部として用いられ得る。通常、液相P中に存在する重合抑制剤の総量は、当該液相P中に存在するアクリル酸の総量に対して、0.001〜2質量%である。
【0112】
静置しておいた場合、液相Pにおいてアクリル酸オリゴマー(マイケル付加体)の望ましくない生成が生じるため、液相Pを得た後は、可能な限りすぐに、本発明による方法を用いる。
【0113】
本発明による有利な方式において、本発明による方法が用いられる場合、液相P、例えば、メタクリル酸、ブチル酸、ブチルアルデヒドなど、に存在する、例えば、C4部分酸化転化生成物(例えば、ブテン−1、ブタジエン、n−ブタンなど)も分離される。それらは、存在するアクリル酸のモル量に対して、液相P中(特に、本明細書において明確に挙げられたすべての液相P中)のグリオキサールと同じ量において存在する。これは、液相P中に存在するアクロレイン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、並びにすべてのC5およびC6部分酸化転化生成物、並びに任意のポリグリオキサールおよびポリグリオキサール水和物にも適用される。
【0114】
したがって、本発明は、特に以下の実施形態を含む。
【0115】
実施形態1.
アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物中に主生成物として含まれるアクリル酸および副生成物として含まれるグリオキサールを分離する方法であって、少なくとも70質量%までがアクリル酸から成り、かつその中に含まれるアクリル酸のモル量に対して少なくとも200モルppmのグリオキサールを含む液相Pが得られる前記方法において、結晶化によって該液相P中の該アクリル酸から該グリオキサールを分離する工程を含み、その際に、形成された該結晶中の該アクリル酸が富化され、該結晶化の際に残留する該母液中に該グリオキサールが富化されることを特徴とする前記方法。
【0116】
実施形態2.
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも300モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0117】
実施形態3.
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも400モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0118】
実施形態4.
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも500モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0119】
実施形態5.
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも1000モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0120】
実施形態6.
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも1500モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0121】
実施形態7.
前記液相Pが、その少なくとも75質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0122】
実施形態8.
前記液相Pが、その少なくとも80質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0123】
実施形態9.
前記液相Pが、その少なくとも85質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0124】
実施形態10.
前記液相Pが、その少なくとも90質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0125】
実施形態11.
前記液相Pが、その少なくとも95質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0126】
実施形態12.
前記液相Pが、その少なくとも96質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0127】
実施形態13.
前記液相Pが、その少なくとも97質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、実施形態1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【0128】
実施形態14.
前記C3前駆体化合物がプロピレンであることを特徴とする、実施形態1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【0129】
実施形態15.
前記C3前駆体化合物がアクロレインであることを特徴とする、実施形態1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【0130】
実施形態16.
前記C3前駆体化合物がプロパンであることを特徴とする、実施形態1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【0131】
実施形態17.
前記C3前駆体化合物がグリセロールであることを特徴とする、実施形態1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【0132】
実施形態18.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧200モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0133】
実施形態19.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧300モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0134】
実施形態20.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧400モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0135】
実施形態21.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧500モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0136】
実施形態22.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧750モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0137】
実施形態23.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧1000モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0138】
実施形態24.
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧1500モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、実施形態1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【0139】
実施形態25.
前記出発反応ガス混合物が、4〜20体積%のC3前駆体化合物を含むことを特徴とする、実施形態18から24までのいずれか1項に記載の方法。
【0140】
実施形態26.
前記出発反応ガス混合物が、≧1質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、実施形態18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【0141】
実施形態27.
前記出発反応ガス混合物が、≧2質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、実施形態18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【0142】
実施形態28.
前記出発反応ガス混合物が、≧3質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、実施形態18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【0143】
実施形態29.
前記出発反応ガス混合物が、≧5質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、実施形態18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【0144】
実施形態30.
前記出発反応ガス混合物が、≧7質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、実施形態18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【0145】
実施形態31.
前記液相Pが、少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法を用いることによって、前記不均一系触媒による部分気相酸化の前記生成物ガス混合物から得られることを特徴とする、実施形態1から30までのいずれか1項に記載の方法。
【0146】
実施形態32.
前記少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法が、吸収、部分凝縮、分別凝縮、精留、ストリッピング、および脱離を含む群からの少なくとも1つの分離方法を含むことを特徴とする、実施形態31に記載の方法。
【0147】
実施形態33.
富化されたグリオキサールを含む、結晶化の際に残留する母液が、前記非結晶化熱的分離方法の少なくとも1つに返送されることを特徴とする、実施形態31または32に記載の方法。
【0148】
実施形態34.
富化されたグリオキサールを含む、結晶化の際に残留する母液が、前記不均一系触媒による気相酸化の前記生成物ガス混合物の分別凝縮に返送されることを特徴とする、実施形態33に記載の方法。
【0149】
実施形態35.
前記結晶化分離が、懸濁結晶化によって行われることを特徴とする、実施形態1から34までのいずれか1項に記載の方法。
【0150】
実施形態36.
懸濁結晶化の際に形成された懸濁結晶と残留する母液とが、洗浄塔によって互いに分離されることを特徴とする、実施形態35に記載の方法。
【0151】
実施形態37.
前記懸濁結晶が、前記洗浄塔において、該洗浄塔において先に分離されたアクリル酸結晶の溶融物によって洗浄されることを特徴とする、実施形態36に記載の方法。
【0152】
実施形態38.
以下の処理工程:
a)前記液相Pからアクリル酸を晶出させる工程、
b)前記晶出の際に残留する母液から、前記アクリル酸結晶を分離する工程、
c)工程b)において分離された該アクリル酸結晶を、少なくとも部分的に溶融させる工程、
d)工程c)からの該溶融されたアクリル酸結晶を、工程b)および/または工程a)へ、少なくとも部分的に返送させる工程
を含むことを特徴とする、実施形態1から37までのいずれか1項に記載の方法。
【0153】
実施形態39.
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸に対して、0.2〜30質量%の水を含むことを特徴とする、実施形態1から38までのいずれか1項に記載の方法。
【0154】
実施形態40.
前記生成物ガス混合物中に含まれるアクリル酸およびグリオキサールを水性液相に移し、かつ共沸精留により該水性液相から水の少なくとも一部を除去して、該液相Pを残留させることにより、前記液相Pが得られることを特徴とする、実施形態1から39までのいずれか1項に記載の方法。
【0155】
実施形態41.
前記液相Pが、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において、50モル%を超えて前記グリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1から40までのいずれか1項に記載の方法。
【0156】
実施形態42.
前記液相Pが、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において、70モル%を超えて前記グリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1から40までのいずれか1項に記載の方法。
【0157】
実施形態43.
前記液相Pが、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において、90モル%を超えて前記グリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1から40までのいずれか1項に記載の方法。
【0158】
実施形態44.
前記生成物ガス混合物が、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも200モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1から43までのいずれか1項に記載の方法。
【0159】
実施形態45.
前記生成物ガス混合物が、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも400モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1から43までのいずれか1項に記載の方法。
【0160】
実施形態46.
前記生成物ガス混合物が、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも750ppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、実施形態1から43までのいずれか1項に記載の方法。
【0161】
実施形態47.
前記液相Pを得る際に、前記生成物ガス混合物中に含まれるアクリル酸が、凝縮相へ移され、一方で、ガス状において残留する残留ガスが、前記C3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化へ少なくとも部分的に返送されることを特徴とする、実施形態1から46までのいずれか1項に記載の方法。
【0162】
実施形態48.
実施形態1から47までのいずれか1項に記載の方法であって、それに引き続き、アクリル酸結晶を溶融し、少なくとも1種のポリマーへとラジカル重合させる方法を行うことを特徴とする前記方法。
【0163】
実施例
I.アクリル酸中のモノマー性グリオキサールによるアクリル酸の望ましくないラジカル重合に対する著しい促進の検出
1.モノマー性グリオキサールの無水メタノール溶液の調製
2.0gの細かく粉砕したグリオキサール三量体二水和物(Fluka社製、純度>95%)と、5.0gの細かく粉砕したP25(Aldrich社製、純度>98%)とを、均一に混合した。続いて、当該混合物を、<50mbarの圧力において180℃まで加熱し、少量の水蒸気を有するかまたは有しない、モノマー性グリオキサールで構成されたガス流を、(残存する少量の水蒸気を吸着させるために)細かく粉砕されたP25(Aldrich社製、純度>99.8%)を通して無水メタノール中へと連続的に流した。
【0164】
メタノールの出発量に対して0.3質量%のモノマー性グリオキサールを、当該メタノールに導入し溶解させた(Y.Chen、L.Zhuの「Wavelength−Dependent Photolysis of Glyoxal in the 290−420 nm Region」,J.Phys.Chem.A,2003,107,4643−4651を参照のこと)。結果として得られるメタノール性溶液は、本明細書の以下において、溶液Mと呼ぶ(メタノール性溶液中のグリオキサールおよびメタノールから、対応する熱的に不安定なアセタールが形成されるが、適度に上昇した温度においては、再びモノマー性グリオキサールとメタノールとに分解される)。
【0165】
2.可能な少量の様々な副生成物アルデヒドが添加された精製アクリル酸の調製
精製アクリル酸のよる5つの同一試料(それぞれ0.5ml)を調製した。このために、ヒドロキノン(MEHQ)のモノメチルエーテルによって貯蔵安定化された精製アクリル酸を、減圧下において新たに蒸留し、10質量ppmのフェノチアジン(PTZ)によって安定化した。
【0166】
この結果、得られた精製アクリル酸試料の純度は、<10質量ppmのアルデヒドおよびケトンの総量を有し、>99.8質量%であった。当該試料は、凍結状態において貯蔵した。
【0167】
続いて、当該試料を、以下のように適切なアルデヒドを秤量して添加した(グリオキサールの場合は、このために溶液Mを使用し、モルppmは、通常、存在するアクリル酸のモル量に基づいており、当該溶液Mのメタノール含有量のため、グリオキサールではなくアルデヒドを添加する場合には、当該添加のために適切な量のメタノールを追加的に使用した):
試料1:86モルppmのモノマー性グリオキサール
試料2:96モルppmのベンズアルデヒド
試料3:166モルppmのホルムアルデヒド
試料4:104モルppmの2−フルフラール
試料5:113モルppmのアセトアルデヒド
【0168】
各場合において、1.8mlの容量を有する同一のガラス製アンプルを、空気雰囲気下において溶融させることによって密封し、当該アンプルのそれぞれを、完成した直後に、強制空気乾燥キャビネットにおいて、確実に完全に混合させるために回転させながら、120℃で保存した。特定の試料の重合が完了するまでの時間Tは、目視により確認した。
【0169】
一連の試験を3回繰り返し、測定値を算術的に平均した。特定の試料に対して得られた時間Tの平均値は、
試料1:117分
試料2:222分
試料3:197分
試料4:199分
試料5:174分
であった。得られた結果は、モノマー性グリオキサールが例外的位置付けにあることを示している。
【0170】
II.本発明の結晶化分離
1.I.1において得られるようなモノマー性グリオキサールのガス流を、以下の不純物と共にグリオキサール不含のアクリル酸中に導入した(当該データは、ガスクロマトグラフィ分析に基づいており、水分測定は、Karl−Fischer、および湿式における化学的手段によるPTZ分析により実施した)
37質量ppmのアリルアクリレート
3319質量ppmのベンズアルデヒド
3404質量ppmのジアクリル酸
1.94質量%の酢酸
0.91質量%のプロピオン酸
4211質量ppmのフルフラール−2(フラン−2−アルデヒド)
33質量ppmのフルフラール−3(フラン−3−アルデヒド)
348質量ppmの水、および
297質量ppmのフェノチアジン
並びに95.80質量%のアクリル酸含有量、添加されるまでに存在していたアクリル酸の量に対して、1741モルppmのモノマー性グリオキサール(=不純物を混入させたアクリル酸の総質量に対しては、1277質量ppm)。
続いて、それを、17.3℃の温度で、135kg/hの流速において、ワイパーで冷却板が拭き取られる横型多段冷却晶析装置(約95リットルの液体容量)に供給した。
当該晶析装置は、7つの球体状の冷却板が、トラフの中に12cmの等間隔で連続して保持されて整列されている。冷却板の直径は32cmであり、冷却板の厚さは15mmであり、その壁厚は2.5mmである。冷却面は、ステンレス鋼(DIN材料1.4571)から製造されている。冷却液として水−グリコール混合物(353L/h)(55体積%の水、45体積%のグリコール)を、冷却板を通して流した。当該冷却液は、2.5℃の入口温度において第一の冷却板へと流入し、8.6℃の出口温度において最後の冷却板から流出した。添加されたアクリル酸および冷却液は、向流において晶析装置内を移送される。ワイパーで拭き取られない冷却板の端部は、結晶の蓄積を防ぐために、それを囲む中空外形(12mmの外径を有するホース型チューブ)によって追跡加熱した。このために、同じ水−グリコール混合物を、ただし、24℃の入口温度において、冷却板の中空外形内を並行して、51L/hの総量において流した。冷却板のワイパーは、水平シャフトにより、26rpmの速度で回転させた。晶析装置において得られた結晶懸濁液は、10.6℃の温度において流出した。
【0171】
アクリル酸結晶懸濁液は、119kg/hの流量において、粗目スクリーン(メッシュサイズは約3mm、比較的粗い大きさの結晶塊は洗浄塔へ懸濁液を供給するラインを塞いでしまう可能性があるために、当該粗目スクリーンは、晶析装置において形成された粗い大きさの結晶塊を保持する目的のためである)を通して、10.6℃の温度において当該晶析装置から回収され、ポンプにより頂部から水圧式洗浄塔へ送られた。この塔は、円形の円筒型ジャケットをかぶせたガラス容器(高さ:1000mm;内部円筒の外径:100mm;内部円筒の壁厚:9mm;外部円筒は、対応するシール材により内部円筒の周りに密着されている;中間スペースは、空気で満たされている;外部円筒の外径:130mm;外部円筒の壁厚:5mm)から成った。20mmの外径および1.6mmの壁厚を有する金属フィルタ管(ステンレス鋼製(DIN材料1.4571))が、内部円筒内の中心に保持されていた。高さ40mmおよび外径20mmの円筒フィルタが、ガラスジャケットの下端部の上方200mmに当該円筒フィルタの下端部が来るように、当該フィルタ管に挿入されており、アクリル酸結晶懸濁液中に存在する液相を、当該フィルタ管に通して分離した。前述の液相の分離により、ガラスシリンダ内のフィルタ管の周りに、結晶床が得られ、光学的高さ測定を用いて、当該結晶床の長さ(高さ)を、510mm(ガラスジャケットの下端部から測定した)の値に維持した。結晶床の高さを制御するために、当該フィルタ管を介して分離された液相の約95kg/hの制御流を、その頂部において洗浄塔へと返送させた。ガラスシリンダの下端部において、ブレード板を回転させることにより(30rpm)、洗浄された結晶床を分離し、分離された当該結晶をポンプ循環させ、ポンプ、加熱器、阻害剤計量供給点、適切なパイプラインから成る溶融循環路において溶融させた。当該阻害剤は、純粋な溶融物中に溶解したPTZの形態において、溶融循環路のPTZ含有量が約200質量ppmとなるように計量供給した。洗浄塔の下端部へ返送させる、結晶洗浄に必要な純粋な溶融物による、溶融循環路の上昇流の温度は、18℃であった。溶融状態の結晶を、約5.5kg/hのみにおいて、精製された生成物(残留溶融物)として当該溶融循環路から回収した。外部から見てガラスシリンダの下端部の上約90〜110mmのレベルにおいて、洗浄フロントが結晶床において形成されるように、溶融循環路から回収される純粋な生成物の流量を調整した。溶融循環路から回収される純粋な溶融物の流量を調整するために、ガラスシリンダの下端部の上100mmのレベルにおける結晶床の温度を用い、当該温度は、純粋な溶融物を回収するラインのバルブを操作することにより(回収流量の調整)、閉ループ制御によって11.5℃の値に調整した。
【0172】
フィルタ管から抜き出して実施した液相(母液)の分析では、(母液の質量に対して)1365質量ppmのグリオキサール含有量が示された。
【0173】
溶融循環路から回収された溶融結晶の分析では、(当該結晶質量に対して)0.1質量ppm未満のグリオキサール含有量が示された。したがって、>13650のAGlyの減少係数が上記の2つの値から算出された。
【0174】
2.Aldrich社から購入し、25℃で保存し、組織内分析により40質量%程度(モノマー性グリオキサールとして計算した)であるグリオキサールを含む水溶液によって、グリオキサールの添加を行ったことを除いて、実験II.1と同様に行った。アクリル酸の添加により、わずかに沈殿物が形成されるが、これは、おそらく、当該アクリル酸に対して難溶性の高分子量のポリグリオキサール(またはそれらの水和物)に起因している。したがって、当該混合物を濾過し、得られた濾液は、1877モルppmのグリオキサールが添加されたアクリル酸であった。これを、実験II.1の手順に従うために使用した。その結果、実験により特定した(モノマー性グリオキサールとして計算した)減少係数AGlyは、>14,720であった。
【0175】
2008年7月28日に出願された米国仮特許出願第61/084109号、および2008年8月26日に出願された同第61/091900号は、文献の参照により本特許出願に組み入れられるものとする。上述の教示に関して、本発明の多数の変更および変化が可能である。したがって、本発明は、添付された特許請求の範囲内において、本明細書において明確に記載された方法とは異なる方法において実施することも可能であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸のC3前駆体化合物の不均一系触媒による部分気相酸化の生成物ガス混合物中に主生成物として含まれるアクリル酸および副生成物として含まれるグリオキサールを分離する方法であって、少なくとも70質量%までがアクリル酸から成り、かつその中に含まれるアクリル酸のモル量に対して少なくとも200モルppmのグリオキサールを含む液相Pが得られる前記方法において、結晶化によって該液相P中の該アクリル酸から該グリオキサールを分離する工程を含み、その際に、形成された該結晶中の該アクリル酸が富化され、該結晶化の際に残留する該母液中に該グリオキサールが富化されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも300モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも400モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも500モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも1000モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも1500モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液相Pが、その少なくとも75質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記液相Pが、その少なくとも80質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記液相Pが、その少なくとも85質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記液相Pが、その少なくとも90質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記液相Pが、その少なくとも95質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記液相Pが、その少なくとも96質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記液相Pが、その少なくとも97質量%までアクリル酸から成ることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記C3前駆体化合物がプロピレンであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記C3前駆体化合物がアクロレインであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記C3前駆体化合物がプロパンであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記C3前駆体化合物がグリセロールであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧200モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧300モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧400モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧500モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧750モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧1000モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化のために、含まれるC3前駆体化合物のモル量に対して≧1500モルppmのC2化合物を含む出発反応ガス混合物を使用することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記出発反応ガス混合物が、4〜20体積%のC3前駆体化合物を含むことを特徴とする、請求項18から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記出発反応ガス混合物が、≧1質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、請求項18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記出発反応ガス混合物が、≧2質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、請求項18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記出発反応ガス混合物が、≧3質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、請求項18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記出発反応ガス混合物が、≧5質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、請求項18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記出発反応ガス混合物が、≧7質量%の水蒸気を含むことを特徴とする、請求項18から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記液相Pが、少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法を用いることによって、前記不均一系触媒による部分気相酸化の前記生成物ガス混合物から得られることを特徴とする、請求項1から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの非結晶化熱的分離方法が、吸収、部分凝縮、分別凝縮、精留、ストリッピング、および脱離を含む群からの少なくとも1つの分離方法を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
富化されたグリオキサールを含む、結晶化の際に残留する母液が、前記非結晶化熱的分離方法の少なくとも1つに返送されることを特徴とする、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
富化されたグリオキサールを含む、結晶化の際に残留する母液が、前記不均一系触媒による気相酸化の前記生成物ガス混合物の分別凝縮に返送されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記結晶化分離が、懸濁結晶化によって行われることを特徴とする、請求項1から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
懸濁結晶化の際に形成された懸濁結晶と残留する母液とが、洗浄塔によって互いに分離されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記懸濁結晶が、前記洗浄塔において、該洗浄塔において先に分離されたアクリル酸結晶の溶融物によって洗浄されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
以下の処理工程:
a)前記液相Pからアクリル酸を晶出させる工程、
b)前記晶出の際に残留する母液から、前記アクリル酸結晶を分離する工程、
c)工程b)において分離された該アクリル酸結晶を、少なくとも部分的に溶融させる工程、
d)工程c)からの該溶融されたアクリル酸結晶を、工程b)および/または工程a)へ、少なくとも部分的に返送させる工程
を含むことを特徴とする、請求項1から37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記液相Pが、その中に含まれるアクリル酸に対して、0.2〜30質量%の水を含むことを特徴とする、請求項1から38までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記生成物ガス混合物中に含まれるアクリル酸およびグリオキサールを水性液相に移し、かつ共沸精留により該水性液相から水の少なくとも一部を除去して、該液相Pを残留させることにより、前記液相Pが得られることを特徴とする、請求項1から39までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記液相Pが、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において、50モル%を超えて前記グリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1から40までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記液相Pが、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において、70モル%を超えて前記グリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1から40までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記液相Pが、モノマー性グリオキサール一水和物および/またはモノマー性グリオキサール二水和物の形態において、90モル%を超えて前記グリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1から40までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記生成物ガス混合物が、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも200モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1から43までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記生成物ガス混合物が、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも400モルppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1から43までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記生成物ガス混合物が、その中に含まれるアクリル酸のモル量に対して、少なくとも750ppmのグリオキサールを含むことを特徴とする、請求項1から43までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記液相Pを得る際に、前記生成物ガス混合物中に含まれるアクリル酸が、凝縮相へ移され、一方で、ガス状において残留する残留ガスが、前記C3前駆体化合物の前記不均一系触媒による部分気相酸化へ少なくとも部分的に返送されることを特徴とする、請求項1から46までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1から47までのいずれか1項に記載の方法であって、それに引き続き、アクリル酸結晶を溶融し、少なくとも1種のポリマーへとラジカル重合させる方法を行うことを特徴とする前記方法。

【公表番号】特表2011−529094(P2011−529094A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520415(P2011−520415)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058984
【国際公開番号】WO2010/012586
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】