説明

アクロレインの製造方法およびアクリル酸の製造方法

【課題】グリセリンとグリセリドを含むグリセリン混合物からアクロレインを少ないエネルギー消費量で製造できるアクロレインおよびアクリル酸の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のアクロレインの製造方法は、グリセリンとグリセリドを含むグリセリン混合物を脱水反応させて、アクロレインとグリセリドとを含むアクロレイン混合物を得る工程と、該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程とを有する。本発明のアクリル酸の製造方法は、上述したアクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンを主成分として含むグリセリン混合物を用いて、アクロレインまたはアクリル酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アクロレインおよびアクリル酸は、化石資源であるプロピレンの酸化により製造されているが、化石資源に依存した製造方法では、大気中の二酸化炭素の増加が懸念される。また、化石資源は将来的に枯渇することが懸念されている。
そこで、植物性油脂または動物性油脂からバイオディーゼル燃料を製造する際に、または、石鹸を製造する際に副生物として生成するグリセリンを利用することが検討されている。すなわち、副生したグリセリンを脱水してアクロレインを製造する方法が検討されている。
ここで、植物性油脂から生成したグリセリンは、植物由来であることから資源の枯渇の懸念がなく、その炭素源は大気中の二酸化炭素であることから、実質的に大気中の二酸化炭素の増加に寄与しないといった利点を有する。また、動物性油脂は、家畜が植物性油脂などの飼料を摂食することで作り出された資源で、その炭素源は大気中の二酸化炭素とみなすことができる。
【0003】
グリセリンからのアクロレインの製造方法としては、グリセリンを液相または気相で固体触媒の存在下に脱水反応させてアクロレインを製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献2には、グリセリンの脱水により得たアクロレインを気相酸化させて、アクリル酸を製造する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。これらの反応で使用するグリセリンとしては、通常、純度の高いものが使用されていた。
【特許文献1】特開平6−211724号公報
【特許文献2】特開2005−213225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、植物性油脂または動物性油脂からバイオディーゼル燃料を製造する際に、または、石鹸を製造する際に得られるグリセリンには、グリセリド等の不純物が混ざっている。そのため、純度の高いグリセリンを得るためには蒸留する必要があるが、グリセリンは沸点が高いために蒸留の際に多量のエネルギーを要する。副生したグリセリンを活用するためにエネルギーを多量に消費してしまうのであれば、副生したグリセリンを用いる意味が薄れる。
このようなことから、バイオディーゼル燃料製造の際または石鹸製造の際に副生したグリセリンを、少ないエネルギー消費量で活用することが求められている。
【0005】
本発明の課題は、グリセリンとグリセリドを含むグリセリン混合物からアクロレインを少ないエネルギー消費量で製造できるアクロレインの製造方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、グリセリンとグリセリドを含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できるアクリル酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが調べたところ、グリセリドの共存下でグリセリンを脱水反応させても、グリセリドが共存していない場合と同等の収率でアクロレインが得られることを見出した。そして、その知見に基づいて、以下のアクロレインの製造方法およびアクリル酸の製造方法を発明した。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0007】
[1] グリセリンとグリセリドとを含むグリセリン混合物を脱水反応させて、アクロレインとグリセリドとを含むアクロレイン混合物を得る工程と、
該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程とを同時にまたは逐次に行うことを特徴とするアクロレインの製造方法。
[2] 前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル、グリセリンおよびグリセリドを含む脂肪酸エステル混合物を得る工程と、
該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する[1]に記載のアクロレインの製造方法。
[3] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する[2]に記載のアクロレインの製造方法。
[4] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す前に、前記残存物の一部または全部を酸で処理する[3]に記載のアクロレインの製造方法。
[5] 前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩、グリセリンおよびグリセリドを含む脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程と、
該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する[1]に記載のアクロレインの製造方法。
[6] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する[5]に記載のアクロレインの製造方法。
[7] アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記アクロレイン混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する[1]または[2]に記載のアクロレインの製造方法。
[8] 前記アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程では、アクロレイン混合物を蒸留する[1]〜[7]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
[9] グリセリドを構成する脂肪酸は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である[1]〜[8]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
[1] [1]〜[9]のいずれかに記載のアクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアクロレインの製造方法によれば、グリセリンとグリセリドを含むグリセリン混合物からアクロレインを少ないエネルギー消費量で製造できる。
本発明のアクリル酸の製造方法によれば、グリセリンとグリセリドを含むグリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「アクロレインの製造方法」
<第1の実施形態例>
本発明のアクロレインの製造方法の第1の実施形態例について説明する。
本実施形態例のアクロレインの製造方法は、油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル混合物を得る工程(以下、第1の工程という。)と、該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程(以下、第2の工程という。)と、該グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程(以下、第3の工程という。)、該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程(以下、第4の工程という。)と、該第4の工程後に残った残存物の一部または全部を第1の工程に戻す工程(以下、第5の工程という。)とを有する。
【0010】
(第1の工程)
第1の工程における油脂としては、例えば、植物性油脂、動物性油脂、廃食用油脂などが挙げられる。
植物性油脂としては、例えば、アマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、コメ油、ナタネ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヒマシ油、米ぬか油、クルミ油、ツバキ油、ピーナッツ油などが挙げられる。
動物性油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、羊脂、牛脚脂、鳥油、鶏油、魚油、鯨油、バターなどが挙げられる。
廃食用油脂としては、家庭、レストラン、ファーストフード店、弁当製造工場、給食工場などにおいて調理に用いた使用済みの動植物性油脂が挙げられる。
【0011】
ここで、油脂とは、脂肪酸とグリセリンとのエステルのことである。また、脂肪酸とは、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸のことである。長鎖炭化水素は二重結合を含んでも構わない。脂肪酸としては、本発明に適している点では、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
炭素数4〜24の脂肪酸の具体例としては、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコセン酸、リシノール酸などが挙げられる。
【0012】
第1の工程におけるアルコールとしては、本発明に適している点では、炭素数が1〜10のアルコールの群から選ばれる1種以上であることが好ましい。炭素数1〜10のアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−へプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール等が挙げられる。
【0013】
エステル交換反応の際には、生産性の点から、エステル交換反応用の触媒を用いることが好ましい。エステル交換反応用触媒としては、酸性触媒と塩基性触媒が挙げられる。酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、強酸性イオン交換樹脂、ケイタングステン酸、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、硫酸ジルコニアなどが挙げられる。塩基性触媒としては、ナトリム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミンなどが挙げられる。
油脂とアルコールとをエステル交換反応させることにより、脂肪酸エステル、グリセリンおよびグリセリドを含む脂肪酸エステル混合物が得られる。ここで生成する脂肪酸エステルは、使用した油脂とアルコールに対応したものであり、いわゆるバイオディーゼル燃料と呼ばれ、ディーゼルエンジンの燃料として使用することができる。
【0014】
グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれであってもよい。グリセリドを構成する脂肪酸は上記油脂を構成する脂肪酸と同様である。
【0015】
(第2の工程)
第2の工程において、脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する方法としては、例えば、脂肪酸エステル混合物を蒸留する方法、液液分離方法、カラムにより分離する方法などが挙げられる。
脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して得たグリセリン混合物において、グリセリン含有量は5〜95質量%であることが好ましく、10〜95質量%であることがより好ましく、15〜95質量%であることが特に好ましい。アクロレインの収量を充分に確保するという観点では、グリセリンの含有量は5質量%以上が好ましく、95質量%以下であれば、本発明の有用性がより高まる。
グリセリン混合物におけるグリセリドの含有量は、グリセリンの含有量(質量)を1とした際に、質量比で0.001〜1であることが好ましく、0.01〜0.5であることがより好ましい。グリセリドの含有量が、グリセリン含有量を1とした際の0.001以下であると、本発明の有用性が低下する傾向にあり、1を超えるとアクロレインの収量が小さく効率が低下する傾向にある。
また、グリセリン混合物には、グリセリンおよびグリセリド以外の成分、例えば、水、塩基、酸、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸塩、アルコールなどが含まれてもよい。また、グリセリン混合物は、第3の工程以降の反応を阻害しない溶媒(例えば、水等)によって希釈されたものでもよい。
【0016】
(第3の工程)
第3の工程におけるグリセリン混合物の脱水反応では、具体的には、グリセリン混合物中のグリセリンが脱水してアクロレインを生成する。
該脱水反応では、反応速度を高める点で、脱水反応用触媒を用いることが好ましい。脱水反応用触媒としては、例えば、酸性触媒、塩基性触媒を使用することができる。酸性触媒としては、例えば、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライトなどの天然物あるいは合成粘土化合物、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。
また、ヘテロポリ酸、硫酸塩、硫酸酸性塩、炭酸塩、炭酸酸性塩、硝酸塩、硝酸酸性塩、リン酸塩、リン酸酸性塩、硫酸、リン酸などを担体に担持した担持型触媒を使用することもできる。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナなどの酸化物、複合酸化物などが挙げられる。
触媒の形状については、特に限定はされない。例えば、粉体状、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
【0017】
脱水反応は液相反応、気相反応のいずれであってもよく、反応形式は、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
脱水反応の温度は、0〜600℃にすることができる。反応の効率が高いことから、100〜500℃であることが好ましく、150〜400℃であることがより好ましい。
グリセリンの脱水反応はモル数が増加する反応であるため、圧力が低い程、グリセリンの収率が高くなる。具体的には、圧力は0.01〜10.0MPaであることが好ましく、0.05〜5MPaであることがより好ましい。
ただし、液相反応の場合には、グリセリンおよびグリセリドが液体として存在できる温度および圧力を選択し、気相反応の場合には、グリセリンおよびグリセリドが気体として存在できる温度および圧力を選択する。
【0018】
液相反応の場合には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、反応温度で安定であるものが好ましく、そのような溶媒としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の飽和炭化水素、ジベンジル等の芳香族炭化水素、ジフェニルエーテル、スルホラン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0019】
気相反応の場合には、不活性ガスで希釈してもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、水蒸気等を用いることができる。
【0020】
第3の工程によって得られるアクロレイン混合物に含まれるアクロレインの含有量は、グリセリン混合物に含まれるグリセリン含有量、脱水反応の収率等に応じて決まるが、具体的には、5〜60質量%であることが好ましい。
【0021】
(第4の工程)
アクロレイン混合物からアクロレインを回収する方法としては、公知の分離・回収方法を適用することができるが、工業的に回収するためには、アクロレイン混合物を蒸留する方法が好ましい。
蒸留の具体例としては、単蒸留、多段蒸留、水蒸気蒸留、フラッシュ蒸留などが挙げられる。蒸留の方式は、回分式、半回分式、連続式のいずれであってもよい。
多段蒸留を適用した場合には、例えば、アクロレインより低沸点の成分を塔頂部から留出させ、中間部からアクロレインを留出させ、塔底部からグリセリドを留出させることができる。
【0022】
多段蒸留で使用される蒸留塔としては、棚段式蒸留塔、充填蒸留塔などの公知の蒸留塔を使用することができる。
棚段式蒸留塔の棚段の構造としては、例えば、泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクトレイなどが挙げられる。
充填蒸留塔の充填物としては、規則充填物や不規則充填物が挙げられる。規則充填物としては、例えば、金属板型、金網型、グリッド型などが挙げられる。不規則充填物としては、例えば、ラシヒリング、レッシングリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、テラレット、ポールリング、フレキシリング、カスケードリングなどが挙げられる。
【0023】
蒸留における条件としては、塔底部の温度を0〜600℃にすることができる。なかでも、0〜100℃とすることが好ましく、5〜80℃とすることがより好ましく、10〜60℃とすることがさらに好ましい。塔底部の温度が100℃より高いと、アクロレインが重合することがあり、塔底部の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギー量が増えてしまう傾向にある。なお、蒸留の圧力は、温度との関係で決まる。
【0024】
アクロレイン混合物を蒸留する際には、アクロレインの重合を防止するために、重合防止剤をあらかじめ添加することが好ましい。重合防止剤としては、例えば、フェノチアジン、フェノール、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール、クレゾール等のフェノール化合物が挙げられる。重合防止剤を添加する場合の重合防止剤添加量は、アクロレインを100質量%とした際の1質量ppm〜1質量%であることが好ましい。
【0025】
第4の工程は第3の工程の後に行ってもよいし、第3の工程と同時に行ってもよい。
第4の工程を第3の工程と同時に行う具体的態様としては、例えば、液相反応で、蒸留塔を備えた反応器にグリセリン混合物を供給し、脱水反応を行ってアクロレインを製造すると共に、生成したアクロレインを蒸留塔の塔頂部または側塔部から回収してもよい。
第4の工程を第3の工程と同時に行う際には、第3の工程の反応における反応温度を第4の工程の蒸留における塔底温度とすることができる。例えば、塔底部の温度は、高い反応効率を維持するという観点から、100〜500℃であることが好ましく、150〜400℃であることがより好ましい。なお、蒸留時の圧力は、温度との関係で決まる。
【0026】
第4の工程によって得られたアクロレインは、例えば、アクリル酸、メチオニン、1,3−プロパンジオールの原料として用いることができる。
【0027】
(第5の工程)
第4の工程後に残った残存物には、グリセリドが含まれる。残存物の一部を戻す場合には、グリセリドを含む混合物の一部を戻してもよいし、グリセリドのみを戻してもよい。
残存物の全部または一部を第1の工程に戻した場合には、グリセリドとアルコールとがエステル交換反応して、脂肪酸エステルを生成する。
【0028】
<第2の実施形態例>
本発明のアクロレインの製造方法の第2の実施形態例について説明する。
本実施形態例のアクロレインの製造方法は、油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程(以下、第1’の工程という。)と、該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程(以下、第2’の工程という。)と、該グリセリン混合物を脱水反応させてアクロレイン混合物を得る工程(第3の工程)、該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程(第4の工程)と、該第4の工程後に残った残存物の一部または全部を第1’の工程に戻す工程(以下、第5’の工程という。)とを有する。
【0029】
(第1’の工程)
第1’の工程における油脂としては、第1の工程における油脂と同様のものを挙げることができる。
第1’の工程において、油脂と反応させるアルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミン等が挙げられる。
油脂とアルカリとの反応は、公知のいかなる方法で行うことができる。この反応によって得られた脂肪酸アルカリ塩混合物は、アルカリに対応した脂肪酸アルカリ塩、グリセリン、グリセリドを含む。
脂肪酸アルカリ塩としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウム等が挙げられる。これらの脂肪酸アルカリ塩は、石鹸として使用することが可能である。
【0030】
(第2’の工程)
第2’の工程において、脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去する方法としては、例えば、第1の実施形態例における脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去する方法と同様である。
脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して得たグリセリン混合物において、グリセリン含有量の好ましい範囲、グリセリン混合物におけるグリセリドの含有量は、第1の実施形態例と同等である。
また、本実施形態例におけるグリセリン混合物にも、グリセリン、グリセリド以外の成分、例えば、水、塩基、酸、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸塩、アルコールなどが含まれてもよい。また、グリセリン混合物は、第3の工程以降の反応を阻害しない溶媒(例えば、水等)によって希釈されたものでもよい。
【0031】
(第3の工程、第4の工程)
第3の工程および第4の工程は、第1の実施形態例と同様である。
【0032】
(第5’の工程)
第4の工程後に残った残存物の全部または一部、とりわけグリセリドを第1’の工程に戻した場合には、アルカリとのケン化反応をさらに生じさせることができる。
【0033】
以上説明したアクロレインの製造方法では、グリセリン混合物を蒸留しないで、脱水反応に供するため、グリセリン混合物を利用する際のエネルギー消費量が少ない。その上、沸点が高いグリセリン(0.1MPaにおける沸点:290℃)とグリセリドとを蒸留等により分離する場合には複雑な工程を経なければならずエネルギー消費量が多くなるが、沸点が低い(0.1MPaにおける沸点:53℃)アクロレインとグリセリドとを分離する際にはアクロレインを留出させればよいから、エネルギー消費量が少ない。
したがって、上記製造方法によれば、グリセリン混合物からアクロレインを少ないエネルギー消費量で製造できる。
さらに、上記実施形態例では、第5の工程あるいは第5’の工程にて、第4の工程後に残った残存物を第1の工程に戻すため、油脂基準の脂肪酸エステルの収率を高めることができる。
【0034】
なお、本発明のアクロレインの製造方法は、上述した第1の実施形態例および第2の実施形態例に限定されない。上記実施形態例では、第4の工程後に残った残存物の一部または全部を第1の工程に戻したが、第3の工程に戻してもよい。第4の工程後に残った残存物を第3の工程に戻した場合には、まず、グリセリドのエステル交換反応が起こってグリセリンを生じ、このグリセリンの脱水反応によりアクロレインを生成する。
【0035】
また、第4の工程後に残ったグリセリドを第1の工程に戻さずにアルコールと反応させて、脂肪酸エステルを製造してもよい。
アルコールとしては、上記第1の工程で挙げたものと同様のものを使用できる。
グリセリドにアルコールを反応させる際には、エステル化反応用触媒を用いることが好ましい。エステル化用触媒としては、酸性触媒と塩基性触媒が挙げられる。酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、強酸性イオン交換樹脂、ケイタングステン酸、リンタングステン酸などのヘテロポリ酸、硫酸ジルコニアなどが挙げられる。塩基性触媒としては、ナトリム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩またはアルコキサイド、強塩基性イオン交換樹脂、アミンなどが挙げられる。
【0036】
また、第4の工程後に残ったグリセリドにアルカリを反応させて、脂肪酸アルカリ塩およびグリセリンを製造してもよい。
脂肪酸アルカリ塩を製造する際に使用するアルカリとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩等が挙げられる。
得られた脂肪酸アルカリ塩は、石鹸として使用することができる。
【0037】
「アクリル酸の製造方法」
次に、本発明のアクリル酸の製造方法の一実施形態例について説明する。
本実施形態例のアクリル酸の製造方法は、上記アクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させて、アクリル酸を得る方法である。
【0038】
該酸化反応では、反応速度を高める点で、酸化反応用触媒を用いることが好ましい。酸化反応用触媒としては、例えば、金属酸化物およびそれらの混合物や複合酸化物などを含む固体触媒が挙げられる。金属酸化物を構成する金属としては、鉄、モリブデン、チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン、錫、銅からなる群から選ばれる1種以上の金属が挙げられる。
酸化触媒は、上記酸化物を担体に担持した担持型触媒であってもよい。担体としては、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよびこられの混合物または複合酸化物、炭化珪素などが挙げられる。
触媒の形状としては、例えば、球状、円柱状、鞍状、ハニカム状などが挙げられる。
触媒の調製方法としては、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などが挙げられる。
また、触媒は、予めその目的に応じた気体中で焼成することも可能である。気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、空気などが挙げられる。
【0039】
酸化反応は、例えば、固定床の気相反応、流動床の気相反応など適用される。
酸化反応の温度は、反応の効率が高いことから、150〜400℃であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。
圧力は0.01〜10MPaであることが好ましく、0.05〜10MPaであることがより好ましい。
【0040】
酸化反応における分子状酸素としては、酸素ガスそのものを供給してもよく、空気として供給してもよい。
酸化反応の際には、不活性ガスを添加することもできる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン等)、水蒸気などが挙げられる。
酸化反応におけるガス組成は爆発範囲内にならないように調整する必要がある。そのような組成としては、例えば、アクロレイン1〜15体積%、酸素0.5〜25体積%、水蒸気0〜50体積%、窒素20〜80体積%の組成が挙げられる。
【0041】
酸化反応においては、通常、第4の工程で得たアクロレインが用いられるが、第3の工程で得たガス状のアクロレインをそのまま、分子状酸素及び水蒸気などの不活性ガスと混合して反応に供してもよい。この場合には、プロピレンからの二段気相酸化によるアクリル酸の製造で用いられているようなタンデムあるいはシングル反応器を用いることができる。
【0042】
酸化反応により得たアクリル酸には、重合を防止するために、重合防止剤を添加することが好ましい。重合防止剤としては、アクロレインに添加するものと同様のものが使用される。重合防止剤を添加する場合の重合防止剤添加量は、アクリル酸を100質量%とした際の1質量ppm〜1質量%であることが好ましい。
【0043】
また、酸化反応により得たアクリル酸は、各種化成品やポリマーの原料として用いられるから、精製することが好ましい。精製方法としては、アクロレインの精製方法と同様であり、蒸留が好ましい。蒸留方法も、アクロレインの蒸留と同様の方法が適用される。
【0044】
アクリル酸を多段蒸留する場合、蒸留条件としては、塔底部の温度を0〜120℃とすることが好ましく、5〜100℃とすることがより好ましく、10〜80℃とすることがさらに好ましい。塔底部の温度が120℃より高いと、アクリル酸が重合することがあり、塔底部の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギー量が増えてしまう傾向にある。なお、蒸留の圧力は、温度との関係で決まる。
【0045】
以上説明したアクリル酸の製造方法によれば、アクロレインの製造方法と同様に、グリセリン混合物からアクリル酸を少ないエネルギー消費量で製造できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
(比較例1)
グリセリンを60質量%、パルミチン酸モノグリセリドを2.4質量%、オレイン酸モノグリセリドを2.1質量%、その他の成分を35.5質量%含むグリセリン混合物500gを、精留塔を具備する1000mlフラスコに仕込み、減圧下で蒸留して、グリセリン留分を得た。留出液の回収量は291gであった。この留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン組成比は98質量%であり、パルミチン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリドとも確認されなかった。仕込みのグリセリンに対する留分中のグリセリンの回収率は95%であった。
上記グリセリン留出液204gと、脱水反応用触媒である硫酸水素カリウム(KHSO)15gとを単蒸留管を備えた500mlフラスコに仕込んだ。次いで、攪拌しながら280℃に加熱し、3時間脱水反応させながら、単蒸留管により蒸留し、留出管から留出液を回収した。
これにより得られた留出液は166gであった。この留出液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アクロレインを73g含んでいた。グリセリン転化率は100%、グリセリン基準のアクロレイン収率は60%であった。
次いで、得られた留出液を精密蒸留して、アクロレイン69gを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は57%であった。
【0048】
(実施例1)アクロレインの液相反応
グリセリンを60質量%、パルミチン酸モノグリセリドを2.4質量%、オレイン酸モノグリセリドを2.1質量%、その他の成分を35.5質量%含むグリセリン混合物333gと、脱水反応用触媒として硫酸水素カリウム15gとを、単蒸留管を備えた500mlフラスコに仕込んだ。次いで、攪拌しながら280℃に加熱し、3時間脱水反応させながら、単蒸留管により蒸留し、留出管から留出液を回収した。
これにより得られた留出液は207gで、アクロレインを79g含んでいた。一方、フラスコに残った残存物から固形物を分離して、残存液126gを得た。この残存液は、パルミチン酸モノグリセリドを5.7質量%、オレイン酸モノグリセリドを5.0質量%含んでいた。
留出液および残存液に含まれる成分の質量からグリセリン転化率を求めたところ、100%であり、グリセリン基準のアクロレイン収率を求めたところ、65%であった。
その後、留出液を精密蒸留して、75gのアクロレインを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は62%であった。つまり、グリセリン混合物を蒸留しなかったもかかわらず、グリセリン混合物を蒸留して精製した比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができた。
また、グリセリン混合物を蒸留せずに比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができたことから、アクロレイン単位量当たり少ないエネルギー消費量でアクロレインを製造できることがわかる。
【0049】
(実施例2)アクロレインの気相反応
硫酸水素カリウム6gを水に溶解して硫酸水素カリウム水溶液を調製し、この硫酸水素カリウム水溶液をシリカ14gに含浸させ、乾燥させた後、窒素雰囲気下、300℃にて、3時間焼成して、硫酸水素カリウム/シリカからなる脱水反応用触媒を得た。
この脱水反応用触媒5mlを内径10mm×長さ300mmのステンレス製反応管に充填した。そして、その反応管に、実施例1で使用したグリセリン混合物に、グリセリン混合物と等しい質量の水を加えて、新たにグリセリン20質量%と、パルミチン酸モノグリセリド質量0.8%、オレイン酸0.7質量%と、他の成分78.5質量%を含むグリセリン混合物を得た。このグリセリン混合物を8g/時間で供給し、300℃で脱水反応させた。その際、反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、グリセリン転化率は100%、アクロレイン収率は65%であった。
その後、捕集液を精密蒸留して、精製アクロレインを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は62%であった。この例においても、グリセリン混合物を蒸留しなかったもかかわらず、グリセリン混合物を蒸留して精製した比較例1と同程度の収率でアクロレインを得ることができた。
【0050】
(実施例3)アクリル酸の気相反応
パラモリブデン酸アンモニウム7.0g、メタバナジン酸アンモニウム2.1g、パラタングステン酸アンモニウム0.89g、水50mlをフラスコに仕込み、攪拌しながら90℃に加熱して溶解させた。これにより得た溶解液に、硝酸銅1.8gを水15mlに溶解させてあらかじめ調製した硝酸銅水溶液を添加し、触媒調製用溶液を得た。
この触媒調製用溶液をα−アルミナ20gに含浸させ、次いで、蒸発乾固させた。乾燥後、空気雰囲気下において400℃で3時間焼成して、α−アルミナ担持のモリブデン−バナジウム−タングステン−銅の酸化物からなる酸化反応用触媒を得た。
内径10mm×長さ300mmのステンレス製反応管に、上記酸化反応用触媒5mlを充填した。そして、その反応管に、実施例1で得たアクロレインを用いて、アクロレイン3体積%、酸素3体積%、水蒸気30体積%、窒素64体積%を含む混合ガスを、空間速度3000/時間(STP)で導入した。また、反応管を280℃に電気炉により加熱して、酸化反応させた。その際、反応管出口を冷却し、反応ガスを凝縮させて、捕集した。捕集液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、アクロレイン転化率は98%、アクロレイン基準のアクリル酸収率は90%であった。
【0051】
(実施例4)
実施例1におけるアクロレイン回収後の残存液10g(パルミチン酸モノグリセリド5.7質量%、オレイン酸モノグリセリド5.0質量%)に、メチルアルコール50g、エステル化触媒である95質量%硫酸0.1gを、冷却管を備えた500mlフラスコに仕込み、攪拌しながら、65℃で3時間反応させた。これにより得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、パルミチン酸モノグリセリドの転化率は94%、オレイン酸モノグリセリドの転化率は94%であった。また、パルミチン酸モノグリセリド基準のパルミチン酸メチルの収率は94%、オレイン酸モノグリセリド基準のオレイン酸メチルの収率は93%であった。
【0052】
(実施例5)
実施例1におけるアクロレイン回収後の残存液10g(パルミチン酸モノグリセリド5.7質量%、オレイン酸モノグリセリド5.0質量%)を、100mlフラスコに仕込み、攪拌しながら、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和を行ったところ、石鹸溶液が得られた。石鹸溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、パルミチン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリドとも確認されず、反応が完了していることがわかった。
【0053】
(実施例6)
実施例1におけるアクロレイン回収後の残存液50g(パルミチン酸モノグリセリド5.7質量%、オレイン酸モノグリセリド5.0質量%)、グリセリン60質量%、パルミチン酸モノグリセリド2.4質量%、オレイン酸モノグリセリド2.1質量%、その他成分を35.5質量%含むグリセリン混合物333g、脱水反応用触媒として硫酸水素カリウム15gとを単蒸留管を備えた500mlフラスコに仕込んだ。次いで、攪拌しながら280℃に加熱し、3時間脱水反応させながら、単蒸留管により蒸留し、留出管から留出液を回収した。
これにより得られた留出液は216gでアクロレイン81gを含んでいた。一方、フラスコに残った残存物から固形物を分離して残存液167gを得た。この残存液は、パルミチン酸モノグリセリド8.6質量%、オレイン酸モノグリセリド7.5質量%を含んでいた。
留出液と残存液に含まれる成分の質量からグリセリン転化率を求めたところ、100%であり、グリセリン基準のアクロレイン収率を求めたところ、67%であった。
その後、留出液を精密蒸留して、77gのアクロレインを得た。グリセリン基準のアクロレイン収率は63%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンとグリセリドとを含むグリセリン混合物を脱水反応させて、アクロレインとグリセリドとを含むアクロレイン混合物を得る工程と、
該アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程とを同時にまたは逐次に行うことを特徴とするアクロレインの製造方法。
【請求項2】
前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルコールとをエステル交換反応させて、脂肪酸エステル、グリセリンおよびグリセリドを含む脂肪酸エステル混合物を得る工程と、
該脂肪酸エステル混合物から脂肪酸エステルを除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する請求項1に記載のアクロレインの製造方法。
【請求項3】
アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する請求項2に記載のアクロレインの製造方法。
【請求項4】
アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸エステル混合物を得る工程に戻す前に、前記残存物の一部または全部を酸で処理する請求項3に記載のアクロレインの製造方法。
【請求項5】
前記アクロレイン混合物を得る工程の前に、
油脂とアルカリとをケン化反応させて、脂肪酸アルカリ塩、グリセリンおよびグリセリドを含む脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程と、
該脂肪酸アルカリ塩混合物から脂肪酸アルカリ塩を除去して、グリセリン混合物を得る工程とを有する請求項1に記載のアクロレインの製造方法。
【請求項6】
アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記脂肪酸アルカリ塩混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する請求項5に記載のアクロレインの製造方法。
【請求項7】
アクロレイン混合物からアクロレインを回収した後に残った残存物の一部または全部を、前記アクロレイン混合物を得る工程に戻す工程をさらに有する請求項1または2に記載のアクロレインの製造方法。
【請求項8】
前記アクロレイン混合物からアクロレインを回収する工程では、アクロレイン混合物を蒸留する請求項1〜7のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
【請求項9】
グリセリドを構成する脂肪酸は、炭素数が4〜24の脂肪酸の群から選ばれる1種以上である請求項1〜8のいずれかに記載のアクロレインの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のアクロレインの製造方法により得たアクロレインと、分子状酸素とを反応させることを特徴とするアクリル酸の製造方法。

【公開番号】特開2009−57288(P2009−57288A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223068(P2007−223068)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】