説明

アズレン誘導体及びそれを有効成分とする血清コレステロール低下剤

【課題】優れた血清コレステロール低下作用を有し、血清コレステロール低下剤として有用な新規アズレン誘導体を提供する。
【解決手段】次式の一般式(I):
【化1】


[式中、R1、R2、R3 は同一又は異なってもよく、置換基を有してもよいアズレン環又は置換基を有してもいベンゼン環である(但し、R1、R2、R3 のうち必ず1つは、置換基を有してもよいアズレン環である)。Aは−(CH)m−、―O−(CH)n−、−CH=CH−(CH)n−、−CH(OH)−(CH)n−又は−C(=O)−(CH)n−である(但し、mは1〜5の整数、nは1〜4の整数)。] で示される化合物又はその医薬上許容される塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アズレン誘導体及びその製造方法、並びにこのアズレン誘導体を有効成分とする血清コレステロール低下剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高コレステロール血症は、動脈硬化性疾患の大きなリスクファクターであることが知られており、現在の死因の上位を占める心疾患との関連性も報告されている。近年、HMG-CoA 還元酵素阻害剤が血清コレステロール低下剤として臨床に使用されている。HMG-CoA 還元酵素阻害剤は、強力な血清コレステロール低下作用を有しているが、安全性に問題があるとも報告されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Mevacor in Physician's Desk Reference, 49th ED, Medical Economics Date Production Company, 1995, 1584
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、 上記の事情に鑑みなされたもので、高い活性を有し、かつ安全性に優れた血清コレステロール低下作用を有する新規な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、下記の一般式(I)で示される化合物が優れた血清コレステロール低下作用を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は一般式(I):
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、R1、R2、R3 は同一又は異なってもよく、置換基を有してもよいアズレン環又は置換基を有してもいベンゼン環である(但し、R1、R2、R3 のうち必ず1つは、置換基を有してもよいアズレン環である)。Aは−(CH)m−、―O−(CH)n−、−CH=CH−(CH)n−、−CH(OH)−(CH)n−又は−C(=O)−(CH)n−である(但し、mは1〜5の整数、nは1〜4の整数)。] で示される化合物又はその医薬上許容される塩である。
また、本発明は、次式の一般式 (II)、(III)又は(IV)で示される化合物又はその医薬上許容される塩である。
【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
【化4】

【0010】
[各式中、A は前述と同意である。R4、R5、R6 は同一又は異なってもよく、水素原子、低級アルキル基(炭素数1−5)、低級ハロアルキル基(炭素数1−5)、低級アルコキシ基(炭素数1−5)、低級ハロアルコキシ基(炭素数1−5)、低級アルカノイル基(炭素数1−5)、低級アルキルチオ基(炭素数1−5)、低級アルキルスルホニル基(炭素数1−5)、ハロゲン原子、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基(炭素数1−5)、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アミノスルホニル基、水酸基、置換されてもよいアミノ基、置換基を有してもよい芳香環又は複素環を示す。]
【0011】
また,本発明は、上記の化合物又はその医薬上許容される塩を有効成分とする血清コレステロール低下剤である。更に、本発明は、上記の化合物又はその医薬上許容されるとβ−ラクタマ−ゼ阻害剤とを併用した血清コレステロール低下剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一般式(I)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、優れた血清コレステロール低下作用を有し、血清コレステロール低下剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一般式(I)で示される本発明化合物につき詳述する。
R1、R2、R3 は同一又は異なってもよく、置換基を有してもよいアズレン環又は置換基を有してもよいベンゼン環である(但し、R1、R2、R3 のうち必ず1つは、置換基を有してもよいアズレン環である)。アズレン環及びベンゼン環の置換基としては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基等)、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基,シクロペンチルオキシ基等)、ハロアルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基等)、アルカノイル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基等)、ハロゲン原子(例えば、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基等)、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アミノスルホニル基、水酸基、置換されてもよいアミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、アセチルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基等)、芳香環(例えば、フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、アミノフェニル基、シアノフェニル基、チオメチルフェニル基、メチルスルホニルフェニル基、ナフタレン環、アズレン環等)あるいは複素環(例えば、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、チアゾ−ル環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾ−ル環等)が挙げられる。
【0014】
Aは−(CH)m−、―O−(CH)n−、−CH=CH−(CH)n−、−CH(OH)−(CH)n−又は−C(=O)−(CH)n−である(但し、mは1〜5の整数、nは1〜4の整数)。Aは、例えば、-CH2-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-O-CH2-、-O-(CH2)2-、-O-(CH2)3-、-O -(CH2)4-、-CH=CHCH2-、-CH=CH(CH2) 2-、-CH=CH(CH2) 3- 、-CH=CH(CH2) 4 - 、-CH(OH)CH2-、-CH(OH)CH2CH2-、-CH(OH)CH2 (CH2) 2-、-CH(OH)CH2 (CH2) 3- 、-CO-CH2-、-CO-(CH2)2-、-CO-(CH2)3-、-CO-(CH2)4- などが挙げられる。
【0015】
本発明化合物は、いかなる立体異性体、光学異性体、互変異性体及びそれらの任意の混合物等を含有するものである。また、本発明化合物には、生体内において代謝されて一般式(I)に変換される化合物及び塩に変換される化合物、いわゆるプロドラッグもすべて含むものである。本発明化合物のプロドラッグを形成する基としては、Prog.Med.,5,2157,1985に記載されている基や広川書店1990年刊「医薬品開発」第7巻分子設計163頁に記載されている基が挙げられる。例えば、分岐してもよいアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基等)、分岐してもよいアルカノイル基(アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基等)、分岐してもよいアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基等)、メトキシメチル基、メトキシエトキシ基、(5−メチル−2−オキソ1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基、メチルピバロエート基等である
【0016】
本発明において、「医薬上許容される塩」の語は、本発明の一般式(I)で示される化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的又はその他の面においても不都合ではない該化合物の塩をいう。本発明化合物の付加塩を形成するものとしては、WILEY-VCH 出版「Handbook of Pharmaceutical Salts」に記載されているものが挙げられる。例えば、酸付加塩は塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸,硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、酒石酸、こはく酸、マンデル酸、リンゴ酸、パントテン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等から誘導される。塩基付加塩は水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、トリス(ヒドロキシエチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、コリン等から誘導される。
【0017】
上記一般式(I)で示される化合物を具体的に以下に例示する。
(1)Rel-(3R,4S)-4−(アズレン−1−イル)−1−(4−フルオロフェニル)−3−[3−(4−フルオロフェニル)プロピル]アゼチジン−2−オン
(2)Rel-(3R,4S)-4−(アズレン−1−イル)−1−(4−フルオロフェニル)−3−[3−(4−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル]アゼチジン−2−オン
(3)Rel-(3R,4S)-4−(アズレン−1−イル)−1−(4−フルオロフェニル)−3−[3−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]アゼチジン−2−オン
(4)Rel-(3R,4S)-4−(アズレン−1−イル)−1−(4−フルオロフェニル)−3−[3−(4−フルオロフェニル)オキシエチル]アゼチジン−2−オン
(5)Rel-(3R,4S)-1−(アズレン−2−イル)−3−[3−(4−フルオロフェニル)−(3S)−ヒドロキシプロピル]−4−(4−ヒドロキシフェニル)アゼチジン−2−オン
(6)Rel-(3R,4S)-3−[3−(アズレン−1−イル)プロピル]−1−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)アゼチジン−2−オン
(7)Rel-(3R,4S)-3−[3−(アズレン−1−イル)−3−オキソプロピル]−1−(4−フルオロフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)アゼチジン−2−オン
【0018】
上記(1)、(2)−−−(7)の化合物は以下においてそれぞれ化合物(1)、化合物(2)−−−化合物(7)として引用する。
本発明化合物は、以下の方法で製造することができる。製造に使用する保護基は、WILEY-Interscience出版「Protective Groups in Organic Synthesis」に記載されている保護基等が挙げられる。
【0019】
一般式 (I)における R1 がアズレン環、R2 及び R3 がベンゼン環、A が -(CH2)3- である化合物の製造方法をスキーム1に示す。1−ホルミルアズレン (V) は文献記載の方法に従って製造できる(例えば、Angew. Chem, 1958, 70, 419)。
[スキーム1]
【0020】
【化5】

【0021】
第1工程:化合物 (V) とアニリンとの反応により化合物 (VI) を得る工程である。反応は通常、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸一水和物、カンファースルホン酸等を添加しても良い。反応は通常、室温から溶媒還流温度で行われる。
第2工程:化合物 (VI) と化合物 (VII) とのスタウジンガ−反応により化合物 (VIII) を得る工程である。反応は通常、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等の塩基存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。反応は通常、室温から溶媒還流温度で行われる。
【0022】
一般式 (I)における R1 がアズレン環、R2 及び R3 がベンゼン環、A が -CO-(CH2)2- 及び-CH(OH)-(CH2)2-である化合物の製造方法をスキーム2に示す。
[スキーム2]
【0023】
【化6】

【0024】
第1工程:化合物 (VI) と化合物 (IX) とのスタウジンガ−反応により化合物 (X) を得る工程である。反応は通常、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等の塩基存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。反応は通常、室温から溶媒還流温度で行われる。
第2工程:化合物 (X) のエステル加水分解により化合物 (XI) を得る工程である。反応は通常、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ水溶液存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、水等が挙げられる。反応は通常、0 ℃から溶媒還流温度で行われる。
【0025】
第3工程:化合物 (XI) とN,O-ジメチルヒドロキシルアミンとの反応により化合物 (XIII) を得る工程である。反応は通常、1,3-ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)等の縮合剤存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。反応は通常、0℃から溶媒還流温度で行われる。
第4工程:化合物 (XIII) と臭化フェニルマグネシウムとの反応により化合物 (XIV) を得る工程である。反応は通常、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。
【0026】
第5工程:化合物 (XIV) の還元により化合物 (XV) を得る工程である。還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、テトラヒドロ-1-メチル-3,3-ジフェニル-1H,3H-ピロロ(1,2-c)(1,2,3)-オキサザボロリジン-ボラン還元剤等が使用できる。反応は通常、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。
【0027】
一般式(I)における R2 がアズレン環、R1 及び R3 がベンゼン環、A が -CH(OH)-(CH2)2-である化合物の製造方法をスキーム3に示す。化合物 (XVI) は、文献既知の方法により合成した2−ホルミルアズレン(例えば、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1980, 53, 3689)より、スキーム2と同様の操作により製造できる。
[スキーム3]
【0028】
【化7】

【0029】
第1工程:化合物 (XVI) と臭化フェニルマグネシウムとの反応により化合物 (XVII) を得る工程である。反応は通常、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。
第2工程:化合物 (XVII) の脱ベンジル化反応により化合物 (XVII) を得る工程である。反応は通常、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素等のルイス酸存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。また、反応にはペンタメチルベンゼン等を添加しても良い。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。また、塩化アルミニウム−アニソール、塩化アルミニウム−エタンチオール等の反応系を使用することができる。更に、パラジウム炭素等の触媒を使用する接触水素化分解反応によっても化合物 (XVII) を得ることができる。
【0030】
第3工程:化合物 (XVII) の還元により化合物 (XIX) を得る工程である。還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、テトラヒドロ-1-メチル-3,3-ジフェニル-1H,3H-ピロロ(1,2-c)(1,2,3)-オキサザボロリジン-ボラン還元剤等が使用できる。反応は通常、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。
【0031】
一般式(I)における R3 がアズレン環、R1 及び R2 がベンゼン環、A が -(CH2)3- である化合物の製造方法をスキーム4に示す。化合物 (XX) はは文献記載の方法に従って製造できる(例えば、Bull. Chem. Soc. Jpn., 66, 892, 1993. Tetrahedron 27, 3357, 1971.)。
[スキーム4]
【0032】
【化8】

【0033】
第1工程:化合物 (XX) と化合物 (XXI) とのスタウジンガ−反応により化合物 (XXII) を得る工程である。反応は通常、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等の塩基存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。反応は通常、室温から溶媒還流温度で行われる。
第2工程:化合物 (XXII) の脱メトキシカルボニル化反応により化合物 (XXIII) を得る工程である。反応は通常、ヨウ化リチウム存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはピリジン、コリジン、ルチジン等が挙げられる。反応は通常、室温から溶媒還流温度で行われる。
【0034】
第3工程:化合物 (XXIII) の脱ベンジル化反応により化合物 (XXIV) を得る工程である。反応は通常、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素等のルイス酸存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。また、反応にはペンタメチルベンゼンを添加しても良い。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。また、塩化アルミニウム−アニソール、塩化アルミニウム−エタンチオール等の反応系を使用することができる。更に、パラジウム炭素等の触媒を使用する接触水素化分解反応によっても化合物 (XVII) を得ることができる。
【0035】
一般式(I)における R3 がアズレン環、R1 及び R2 がベンゼン環、A が CO-(CH2)2- である化合物の製造方法をスキーム5に示す。
[スキーム5]
【0036】
【化9】

【0037】
第1工程:化合物 (XXV) の2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)酸化により化合物 (XXVI) を得る工程である。反応は通常、不活性溶媒中で行われ、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、アセト二トリル等と水との混合溶媒が適している。反応は通常、0 ℃から溶媒還流温度で行われる。
第2工程:化合物 (XXVI) の脱ベンジル化反応により化合物 (XXVII) を得る工程である。反応は通常、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素等のルイス酸存在下、不活性溶媒中で行われ、好適な溶媒としてはジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。また、反応にはペンタメチルベンゼンを添加しても良い。反応は通常、-78 ℃から溶媒還流温度で行われる。また、塩化アルミニウム−アニソール、塩化アルミニウム−エタンチオール等の反応系を使用することができる。更に、パラジウム炭素等の触媒を使用する接触水素化分解反応によっても化合物 (XVII) を得ることができる。
【0038】
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離のままあるいは付加塩として単離され、精製される。塩は、通常の造塩反応に付すことにより製造できる。単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、ろ過、再結晶、各種クロマトグラフィー等の化学操作を適用して行われる。
【0039】
本発明の一般式(I)で示される化合物又はその医薬上許容される塩は、優れた血清コレステロール低下作用を有し、血清コレステロール低下剤として有用である。本発明の一般式(I)で示される化合物又はその医薬上許容される塩を医薬品として用いる場合、適宜の薬理学的に許容される担体、賦形剤(例えば、デンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等)、結合剤(例えば、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピリドン等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、タルク等)、希釈剤(例えば、生理食塩水等)等と混合し、常法により散剤、細粒剤、カプセル剤、錠剤、外用剤又は注射剤等の形態で経口的又は非経口的に投与することができる。
【0040】
本発明の前記組成物の投与量は投与ルート、対象疾患、患者の症状、体重あるいは年齢、用いる化合物によっても異なり、投与目的に応じて適宜設定することができる。通常、成人に経口投与する場合、0.01から1000 mg/kg 体重/日、好ましくは 0.05 から 500 mg/kg 体重/日を、一日1から数回に分けて投与するのが好ましい。これらは、単なる例であってこれらに限定されるものではないことは勿論である。
【0041】
〔血清コレステロール低下作用の評価−コレステロール食負加ハムスターにおける脂質低下作用〕
ハムスターを3匹ずつの群分けをし、0.5% コレステロールを含む試料(CE-2、日本クレア(株))を4日間与えた。コレステロール食負加開始と共にハムスターに本発明の一般式(I)で示される化合物を1日1回投与した。投与はハムスターの体重 100 g 当たり 0.2 mL のコーン油(対照群)又は本発明の一般式(I)で示される化合物のコーン油懸濁液を経口投与した。最終投与から 20 時間後にエーテル軽麻酔下、腹部大静脈より採血し、血清を分離した。血清総コレステロール量はコレステロール E-テストワコー(和光純薬工業(株))を用いて測定した。本発明の一般式(I)で示される化合物の効果は対照群に対する血清総コレステロールの変化率として示した。その結果を表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
これらの結果より、本発明の一般式(I)で示される化合物が優れた血清コレステロール低下作用を有することがわかる。
【0044】
〔実施例〕
本発明を、下記の実施例で更に詳しく説明する。プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR) データの記載には次の略号を用いた。すなわち、s はシングレット、d はダブレット、t はトリプレット、q はカルテット、m はマルチプレット、b はブロードである。
【実施例1】
【0045】
Rel-(3R,4S)-4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)プロピル]アゼチジン-2-オン(化合物1)
1-ホルミルアズレン 0.97 g のエタノール 20.0 mL 溶液に4-フルオロアニリン 0.69 g を加え、16 時間還流した。反応液を室温まで放冷した後、減圧留去した。得られたアズレン-1-イルメチレン-(4-フルオロフェニル)アミンのトルエン 25.0 mL 溶液にトリブチルアミン 2.53 g (13.68 mmol)を加え、80 ℃で加熱攪拌した。5-(4-フルオロフェニル)バレリルクロリド 1.47 g のトルエン 13.0 mL 溶液を滴下した後、22 時間 30 分間攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、10% 塩酸水溶液中に注いだ。トルエン抽出し、抽出液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.25 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 1.66-2.10 (m, 4H), 2.60 (t, J=7 Hz, 2H), 3.30-3.39 (m, 1H), 5.28 (d, J=2 Hz, 1H), 6.84 (t, J=9 Hz, 2H), 6.93 (d, J=8 Hz, 2H), 7.03-7.04 (m, 2H), 7.19-7.26 (m, 4H), 7.37 (d, J=4 Hz, 1H), 7.85 (d, J=4 Hz, 1H), 8.34 (d, J=10 Hz, 1H), 8.38 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 427 [M+], 290, 248, 167, 137, 109 [Base peak], 82.
【実施例2】
【0046】
Rel-(3R,4S)-4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]アゼチジン-2-オン(化合物2)
(1)Rel-(3R,4S)-3-[4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピオン酸
1-ホルミルアズレン 5.00 g のエタノール 100.0 mL 溶液に4-フルオロアニリン 3.56 g を加え、14 時間還流した。反応液を室温まで放冷した後、減圧留去した。得られたアズレン-1-イルメチレン-(4-フルオロフェニル)アミンのトルエン 100.0 mL 溶液にトリブチルアミン 13.00 g を加え、80 ℃で加熱攪拌した。エチルグルタリルクロリド 6.30 g のトルエン 50.0 mL 溶液を滴下した後、48 時間攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、10% 塩酸水溶液中に注いだ。トルエン抽出し、抽出液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製した。
得られた 3-[4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピオン酸エチルエステルにメタノール 20.0 mL、テトラヒドロフラン 20.0 mL、水 5.0 mL、水酸化リチウム一水和物 0.54 g を加え、室温で1 時間攪拌した。反応液を氷冷し、10% 塩酸水溶液にて中和した。酢酸エチルにて抽出し、抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (1.91 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.28-2.32 (m, 2H), 2.28-2.50 (m, 1H), 2.63-2.69 (m, 1H), 3.35 (m, 1H), 3.66 (s, 1H), 5.36 (d, J=2 Hz, 1H), 6.81-6.85 (m, 2H), 7.20-7.27 (m, 4H), 7.34 (d, J=4 Hz, 1H), 7.65 (t, J=10 Hz, 1H), 7.83 (d, J=4 Hz, 1H), 8.32 (d, J=10 Hz, 1H), 8.43 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 363 [M+], 253, 211, 165, 128, 111, 84 [Base peak], 57.
【0047】
(2)Rel-(3R,4S)-3-[4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピオン酸 N-メチル-N-メトキシアミド
Rel-(3R,4S)-3-[4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピオン酸 1.91 g の N,N-ジメチルホルムアミド 75.0 mL 溶液に氷冷下、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物 0.96 g、4-エチルモルホリン 1.65 g、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩 0.61 g、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩 1.20 g を加え、室温で 12 時間攪拌した。反応液を氷水中に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を10% 塩酸水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (1.98 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.29-2.40 (m, 2H), 2.63-2.66 (m, 1H), 2.70-2.72 (m, 1H), 3.11 (s, 3H), 3.31-3.35 (m, 1H), 3.54 (s, 3H), 5.41 (d, J=2 Hz, 1H), 6.83-6.87 (m, 2H), 7.21-7.29 (m, 3H), 7.35 (d, J=4 Hz, 1H), 7.67 (t, J=10 Hz, 1H), 7.83 (d, J=4 Hz, 1H), 8.34 (d, J=9 Hz, 1H), 8.48 (d, J=9 Hz, 1H).
MS m/z= 406 [M+], 378, 345, 290, 269, 248, 238, 207, 179 [Base peak], 165, 152, 137, 109.
【0048】
(3)Rel-(3R,4S)-4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-3-[4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピオン酸 N-メチル-N-メトキシアミド 1.98 g のテトラヒドロフラン 40.0 mL 溶液に氷冷下、1.0M 4-フルオロフェニルマグネシウムブロミド/テトラヒドロフラン溶液 6.0 mL を滴下した後、室温で 4 時間攪拌した。反応液を10% 塩酸水溶液中に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (1.16 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.41-2.49 (m, 2H), 3.17-3.18 (m, 1H), 3.32-3.39 (m, 2H), 5.41 (d, J=2 Hz, 1H), 6.86 (t, J=9 Hz, 2H), 7.08 (t, J=9 Hz, 3H), 7.21-7.28 (m, 4H), 7.35 (d, J=4 Hz, 1H), 7.66 (t, J=10 Hz, 1H), 7.94-7.97 (m, 1H), 8.30 (d, J=4 Hz, 1H), 8.34 (d, J=10 Hz, 1H), 8.46 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 441 [M+], 304, 248, 219, 193, 167, 123 [Base peak], 95.
【実施例3】
【0049】
Rel-(3R,4S)-4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシプロピル]アゼチジン-2-オン(化合物3)
Rel-(3R,4S)-4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]アゼチジン-2-オン 0.50 g のメタノール 10.0 mL 溶液に氷冷下で水素化ホウ素ナトリウム 0.043 g を加え、30 分間攪拌した。反応液にアセトン、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.48 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 1.89-2.12 (m, 4H), 2.33 (s, 1H), 3.31-3.36 (m, 1H), 4.68-4.91 (m, 1H), 5.30 (d, J=3 Hz, 1H), 6.82-6.87 (m, 2H), 6.95-7.03 (m, 2H), 7.19-7.30 (m, 6H), 7.37 (d, J=4 Hz, 1H), 7.68 (t, J=10 Hz, 1H), 7.85 (d, J=4 Hz, 1H), 8.35 (d, J=10 Hz, 1H), 8.42 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 443 [M+], 306, 248, 165, 141 [Base peak], 109, 82, 57.
【実施例4】
【0050】
Rel-(3R,4S)-4-(アズレン-1-イル)-1-(4-フルオロフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)オキシエチル]アゼチジン-2-オン(化合物4)
1-ホルミルアズレン 2.00 g のエタノール 40.0 mL 溶液に4-フルオロアニリン 1.42 g を加え、12 時間還流した。反応液を室温まで放冷した後、減圧留去した。得られたアズレン-1-イルメチレン-(4-フルオロフェニル)アミンのトルエン 50.0 mL 溶液にトリブチルアミン 5.22 g を加え、80 ℃で加熱攪拌した。4-(4-フルオロフェニル)オキシブチリルクロリド 3.04 g のトルエン 25.0 mL 溶液を滴下した後、23 時間攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、10% 塩酸水溶液中に注いだ。トルエン抽出し、抽出液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.31 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.44-2.48 (m, 2H), 3.50-3.52 (m, 1H), 4.08-4.18 (m, 2H), 5.53 (d, J=2 Hz, 1H), 6.68-6.71 (m, 4H), 6.83-6.90 (m, 2H), 7.16 (t, J=10 Hz, 1H), 7.21-7.25 (m, 3H), 7.36 (d, J=4 Hz, 1H), 7.65 (t, J=10 Hz, 1H), 7.87 (d, J=4 Hz, 1H), 8.34 (d, J=10 Hz, 1H), 8.47 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 429 [M+], 292, 248, 167 [Base peak], 137, 95.
【実施例5】
【0051】
Rel-(3R,4S)-1-(アズレン-2-イル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-ヒドロキシプロピル]-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン(化合物5)
(1)Rel-(3R,4S)-1-(アズレン-2-イル) -4-(ベンジルオキシフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-3-[1-(アズレン-2-イル)-4-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピオン酸 N-メチル-N-メトキシアミド 0.43 g のテトラヒドロフラン 8.7 mL 溶液に氷冷下で 0.5M 4-フルオロフェニルマグネシウムブロミド/テトラヒドロフラン溶液 2.6 mL を滴下した後、2 時間攪拌した。反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液中に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.16 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.31-2.36 (m, 1H), 2.42-2.48 (m, 1H), 3.17-3.23 (m, 1H), 3.28-3.34 (m, 2H), 4.83 (d, J=3 Hz, 1H), 5.04 (s, 2H), 6.97 (dd, J=2 Hz, 7 Hz, 2H), 7.06 (s, 2H), 7.09-7.19 (m, 4H), 7.30-7.48 (m, 6H), 7.98-8.01 (m, 2H), 8.11 (d, J=10 Hz, 2H).
MS m/z= 529 [M+], 438, 360, 263, 217, 169, 127, 91 [Base peak].
【0052】
(2)Rel-(3R,4S)-1-(アズレン-2-イル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-1-(アズレン-2-イル) -4-(ベンジルオキシフェニル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]アゼチジン-2-オン 0.16 g のジクロロメタン 16.0 mL 溶液に 78 ℃でペンタメチルベンゼン 0.18 g を加えた後、1.0M 三塩化ホウ素/ヘプタン溶液 1.2 mL を滴下した。30 分間攪拌した後、反応液に水を加え、室温に戻した。ジクロロメタンにて抽出した後、抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.10 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.31-2.45 (m, 2H), 3.16-3.28 (m, 1H), 3.29-3.35 (m, 2H), 4.82 (d, J=2 Hz, 1H), 6.81-6.84 (m, 2H), 7.06 (s, 2H), 7.10-7.27 (m, 6H), 7.46 (t, J=10 Hz, 1H), 7.98-8.02 (m, 2H), 8.11 (d, J=9 Hz, 2H).
MS m/z= 439 [M+], 288 [Base peak], 246, 208, 169, 123, 95.
【0053】
(3)Rel-(3R,4S)-1-(アズレン-2-イル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-(3S)-ヒドロキシプロピル]-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-1-(アズレン-2-イル)-3-[3-(4-フルオロフェニル)-3-オキソプロピル]-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン 0.050 g のジクロロメタン 5.0 mL 験濁液に N,N'-ビス(トリメチルシリル)ウレア 0.012 g を加え、室温で 2 時間攪拌した。不溶物をろ過にて除き、ろ液を 20 ℃に冷却し、(R)-テトラヒドロ-1-メチル-3,3-ジフェニル-1H,3H-ピロロ(1,2-c)(1,2,3)-オキサザボロリジン−ボラン複合体 0.035 gを加えた後、30 分間攪拌した。反応液にメタノール 1.0 mL を、室温に戻し、10% 塩酸水溶液中に注いだ。酢酸エチルにて抽出し、抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.022 g) を得た。
1H-NMR (CD3COCD3) δ= 1.90-2.07 (m, 4H), 3.24-3.27 (m, 1H), 4.10, 4.40 (2d, J=4 Hz, 1H), 4.70-4.76 (m, 1H), 4.90 (d, J=2 Hz, 1H), 6.84-6.87 (m, 2H), 7.04 (s, 2H), 7.02-7.07 (m, 2H), 7.20 (t, J=10 Hz, 2H), 7.33 (d, J=8 Hz, 2H), 7.36-7.42 (m, 2H), 7.48 (t, J=10 Hz, 1H), 8.15 (d, J=10 Hz, 2H), 8.50 (s, 1H).
MS m/z= 441 [M+], 398, 301, 270, 246, 208, 169, 143 [Base peak], 97.
【実施例6】
【0054】
Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)プロピル]-1-(4-フルオロフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン(化合物6)
(1)Rel-(3R,4S)-3-[3-[4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピル]アズレン-1-カルボン酸メチルエステル
Rel-(3R,4S)- (4-ベンジルオキシフェニル)-(4-メトキシベンジリデン)アミン2.13 g のトルエン 14.0 mL 溶液にトリブチルアミン 2.83 g を加え、80 ℃に加熱した。3-(4-クロロ-4-オキソブチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル 2.13 g のトルエン 14.0 mL 溶液を滴下した後、36 時間攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、10% 塩酸水溶液中に注いだ。トルエン抽出し、抽出液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (1.37 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 1.90-2.05 (m, 4H), 3.06 (t, J=7 Hz, 2H), 3.12-3.15 (m, 1H), 3.95 (s, 3H), 4.55 (d, J=2 Hz, 1H), 5.04 (s, 2H), 6.89-6.97 (m, 4H), 7.21-7.25 (m, 5H), 7.33-7.43 (m, 7H), 7.47 (t, J=10 Hz, 1H), 7.75 (t, J=10 Hz, 1H), 8.21 (s, 1H), 8.31 (d, J=10 Hz, 1H), 9.57 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 573 [M+], 542, 483, 436, 387, 344, 251, 199, 142, 91 [Base peak].
【0055】
(2)Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)プロピル]- 4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-3-[3-[4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソアゼチジン-3-イル]プロピル]アズレン-1-カルボン酸メチルエステル 1.00 gのピリジン 24.0 mL 溶液に無水ヨウ化リチウム 4.72 g を加えた後、12 時間還流した。反応液を室温まで放冷し、氷水中に注いだ。10% 塩酸水溶液を加えて酸性にした後、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.67 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 1.90-1.99 (m, 4H), 3.08-3.12 (m, 3H), 4.54 (d, J=2 Hz, 1H), 5.04 (s, 2H), 6.89-6.97 (m, 4H), 7.04-7.09 (m, 2H), 7.20-7.43 (m, 8H), 7.53 (t, J=10 Hz, 1H), 7.76 (d, J=4 Hz, 1H), 8.17 (d, J=10 Hz, 1H), 8.24 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 515 [M+], 425, 377, 318, 259, 207, 141, 91 [Base peak].
【0056】
(3)Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)プロピル]-1-(4-フルオロフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)プロピル]- 4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)アゼチジン-2-オン 0.40 g のアニソール 5.0 mL 溶液に氷冷下で無水塩化アルミニウム 0.31 g を加えた後、室温で 1 時間攪拌した。反応液に氷水を加え、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.28 g) を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ= 1.83-1.86 (m, 4H), 3.02 (t, J=6 Hz, 2H), 3.10-3.18 (m, 1H), 4.83 (d, J=2 Hz, 1H), 6.75 (d, J=9 Hz, 2H), 7.06-7.25 (m, 8H), 7.32 (d, J=4 Hz, 1H), 7.58 (t, J=10 Hz, 1H), 7.78 (d, J=4 Hz, 1H), 8.22 (d, J=10 Hz, 1H), 8.29 (d, J=10 Hz, 1H), 9.51 (s, 1H).
MS m/z= 425 [M+], 314, 287, 167, 141 [Base peak], 115.
【実施例7】
【0057】
Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)-3-オキソプロピル]-1-(4-フルオロフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン(化合物7)
(1)Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)-3-オキソプロピル]-4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)プロピル]- 4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)アゼチジン-2-オン0.40 g のアセトン 10.0 mL 水 1.0 mL 溶液に 2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン 0.26 g を室温で加え、30 分間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.27 g) を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ= 2.33-2.48 (m, 2H), 3.20-3.38 (m, 3H), 4.72 (d, J=2 Hz, 1H), 5.01 (s, 2H), 6.89-6.94 (m, 4H), 7.24-7.51 (m, 10H), 7.61 (t, J=10 Hz, 1H), 7.82 (t, J=10 Hz, 1H), 7.82 (t, J=10 Hz, 1H), 8.31 (d, J=4 Hz, 1H), 8.47 (d, J=10 Hz, 1H), 9.87 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 529 [M+], 305, 215, 155, 138, 110, 91 [Base peak].
【0058】
(2)Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)-3-オキソプロピル]-1-(4-フルオロフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)アゼチジン-2-オン
Rel-(3R,4S)-3-[3-(アズレン-1-イル)-3-オキソプロピル]-4-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-(4-フルオロフェニル)アゼチジン-2-オン 0.26 g のアニソール 4.0 mL 溶液に氷冷下で無水塩化アルミニウム 0.20 g を加えた後、室温で 30 分間攪拌した。反応液に氷水を加え、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を水、飽和食塩水にて洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。ろ過し、ろ液を減圧留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン)にて精製し、表題化合物 (0.16 g) を得た。
1H-NMR (CDCl6) δ= 2.33-2.46 (m, 2H), 3.20-3.38 (m, 3H), 4.69 (d, J=2 Hz, 1H), 6.52 (s, 1H), 6.81 (d, J=6 Hz, 2H), 6.88-6.93 (m, 2H), 7.14 (d, J=6 Hz, 2H), 7.23-7.25 (m, 3H), 7.49 (t, J=10 Hz, 1H), 7.60 (t, J=10 Hz, 1H), 7.82 (t, J=10 Hz, 1H), 8.31 (d, J=4 Hz, 1H), 8.47 (d, J=10 Hz, 1H), 9.85 (d, J=10 Hz, 1H).
MS m/z= 439 [M+], 329, 185, 155 [Base peak], 111.
【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


[式中、R1、R2、R3 は同一又は異なってもよく、置換基を有してもよいアズレン環又は置換基を有してもいベンゼン環である(但し、R1、R2、R3 のうち必ず1つは、置換基を有してもよいアズレン環である)。Aは−(CH)m−、―O−(CH)n−、−CH=CH−(CH)n−、−CH(OH)−(CH)n−又は−C(=O)−(CH)n−である(但し、mは1〜5の整数、nは1〜4の整数)。] で示される化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項2】
一般式 (II):
【化2】


[式中、A は前述と同意である。R4、R5、R6 は同一又は異なってもよく、水素原子、低級アルキル基(炭素数1−5)、低級ハロアルキル基(炭素数1−5)、低級アルコキシ基(炭素数1−5)、低級ハロアルコキシ基(炭素数1−5)、低級アルカノイル基(炭素数1−5)、低級アルキルチオ基(炭素数1−5)、低級アルキルスルホニル基(炭素数1−5)、ハロゲン原子、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基(炭素数1−5)、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アミノスルホニル基、水酸基、置換されてもよいアミノ基、置換基を有してもよい芳香環又は複素環を示す。] で示される化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項3】
一般式 (III):
【化3】


[式中、A は前述と同意である。R4、R5、R6 は同一又は異なってもよく、水素原子、低級アルキル基(炭素数1−5)、低級ハロアルキル基(炭素数1−5)、低級アルコキシ基(炭素数1−5)、低級ハロアルコキシ基(炭素数1−5)、低級アルカノイル基(炭素数1−5)、低級アルキルチオ基(炭素数1−5)、低級アルキルスルホニル基(炭素数1−5)、ハロゲン原子、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基(炭素数1−5)、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アミノスルホニル基、水酸基、置換されてもよいアミノ基、置換基を有してもよい芳香環又は複素環を示す。] で示される化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項4】
一般式 (IV):
【化4】


[式中、A は前述と同意である。R4、R5、R6 は同一又は異なってもよく、水素原子、低級アルキル基(炭素数1−5)、低級ハロアルキル基(炭素数1−5)、低級アルコキシ基(炭素数1−5)、低級ハロアルコキシ基(炭素数1−5)、低級アルカノイル基(炭素数1−5)、低級アルキルチオ基(炭素数1−5)、低級アルキルスルホニル基(炭素数1−5)、ハロゲン原子、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基(炭素数1−5)、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アミノスルホニル基、水酸基、置換されてもよいアミノ基、置換基を有してもよい芳香環又は複素環を示す。] で示される化合物又はその医薬上許容される塩。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容される塩を有効成分とする血清コレステロール低下剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容されるとβ−ラクタマ−ゼ阻害剤とを併用した血清コレステロール低下剤。

【公開番号】特開2007−291004(P2007−291004A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119984(P2006−119984)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(592086318)壽製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】