説明

アセチル化合物、該アセチル化合物の製造方法、および該アセチル化合物を使用したナフトール化合物の製造方法

【課題】多くの工程を経て得られるナフトール化合物、およびクロメン化合物を、保存安定性の高い前駆体を原料として合成することにより、これらナフトール化合物、およびクロメン化合物の製造条件を改善する方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)


(式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基等、R5、及びR6は、それぞれ、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基等を示す。)で示される、保存安定性の高いアセチル化合物、および該アセチル化合物を酸、又は塩基により脱アセチル化してナフトール化合物を製造し、得られたナフトール化合物とプロパルギルアルコール化合物とを反応させることにより、クロメン化合物を合成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアセチル化合物、及び該アセチル化合物の製造方法に関するものである。また、本発明は、該アセチル化合物を使用したナフトール化合物の新規な製造方法、および該ナフトール化合物を使用した新規なクロメン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのベンゾピラン化合物(該化合物はクロメン骨格を有するのでクロメン化合物と呼ばれることもある。)は、太陽光のような紫外線を含む光を照射することによってその化学構造を変え着色し、また光の照射を止めると元の化学構造に戻り着色が消えることが知られており、現在市販されているフォトクロミックレンズの主要構成成分となっている。
【0003】
通常、このクロメン化合物は、ナフトール化合物とプロパルギル化合物とを反応させて製造することができる。優れたフォトクロミック特性を有するクロメン化合物の原料となるナフトール化合物は、例えば、以下の方法によって製造することができる(特許文献1参照)。
【0004】
【化1】

【0005】
上記反応式について説明すると、先ず、前記式(A)で示されるグリニヤ試薬とα−テトラロンとを反応させて前記式(B)で示される化合物を合成し、該化合物のカルボン酸保護基の脱保護を行い、前記式(C)で示されるカルボン酸化合物とする。次いで、ポリリン酸中、加熱条件下にて該カルボン酸化合物の環化を行い、前記式(D)で示されるナフトール化合物を製造する。この方法により得られるナフトール化合物は、特許文献1に記載された通り、フォトクロミック特性の優れたクロメン化合物の原料として使用することができる。
【0006】
しかしながら、従来法は、上記の通り、ナフトール化合物の製造において、取り扱い難いポリリン酸を使用しており、操作性の点で改善の余地があった。
【0007】
また、上記方法においては、前記式(A)で示されるグリニヤ試薬由来のカルボン酸化合物が副生するが、かかる副生物は、前記式(C)で示されるカルボン酸化合物と非常に類似している。そのため、該カルボン酸化合物と副生物との分離が困難であり、通常は、該副生物とカルボン酸化合物とを含む混合物を反応させた後、得られた前記式(D)で示されるナフトール化合物と該副生物を分離する必要があった。この際、弱塩基性条件下での分液操作で副生物を分離することができるが、ナフトール化合物の一部が副生物と共に分離され、ナフトール化合物の収率が低下するといった点でも、上記方法は改善の余地があった。
【0008】
さらに、本発明者等の検討によれば、生成したナフトール化合物は、酸化劣化しやすいために保存することが困難であり、直ぐに次反応、例えば、プロパルギル化合物と反応させなければ、クロメン化合物の生産性が低下することが分かった。
【0009】
以上の通り、従来法においては、操作性や物質の安定性、ナフトール化合物の収率等の点から工業的な製法として改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0246692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ナフトール化合物の原料として、副生物との分離が容易であり、保存安定性に優れ、さらに容易にナフトール化合物へと変換できる化合物があれば、ナフトール化合物の生産性を改善できるだけでなく、該ナフトール化合物を原料とするクロメン化合物の生産性をも改善できると考えられる。特に、ナフトール化合物、およびクロメン化合物は、多くの工程を経て得られるため、前駆体(原料)の保存安定性が高ければ、それらの工業的生産に非常に有利になると考えられる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、上記のようなナフトール化合物の原料化合物を提供し、操作性、及び収率の改善されたナフトール化合物の製造方法を提供することにある。さらには、得られたナフトール化合物とプロパルギル化合物とを反応させることにより、クロメン化合物の収率、製造条件の改善された製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定の構造を有するアセチル化合物が、副生物との分離が容易であり、保存安定性に優れ、さらに容易にナフトール化合物へと変換できる化合物であることを見出し、さらに、該アセチル化合物を使用してナフトール化合物、及びクロメン化合物を製造することにより、ナフトール化合物、及びクロメン化合物の生産性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記式(1)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中 R、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、また、R、R、R、及びRの中から選ばれる2つの基が一緒になって脂肪族炭化水素環を形成してもよく、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
a、及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるアセチル化合物である。
【0017】
上記アセチル化合物は、下記式(2)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるカルボン酸化合物を無水酢酸、及び酢酸塩存在下にて加熱することにより製造することができる。
【0020】
また、本発明は、前記アセチル化合物を、酸、又は塩基により脱アセチル化を行い、
下記式(3)
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるナフトール化合物を製造する方法である。
【0023】
さらに、本発明は、前記方法により前記式(3)で示されるナフトール化合物を製造した後、得られたナフトール化合物と下記式(4)
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、R、及びRは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アラルコシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
c、及びdは、それぞれ、0〜3の整数であり、c、及びdが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。)で示されるプロパルギル化合物と反応させることにより、
下記式(5)
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義であり、
、R、c、及びdは、前記式(4)におけるものと同義である。)
で示されるクロメン化合物を製造する方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のアセチル化合物(前記式(1)で示されるアセチル化合物)は、無水酢酸、及び酢酸塩存在下で容易に製造することができる。また、得られたアセチル化合物は、弱塩基性条件での分液操作、又は再結晶により副生物の除去が可能であり、その結果、高純度の化合物を容易に得ることができる。さらに、該アセチル化合物は、保存安定性にも優れ、酸または塩基条件下の加水分解により、容易にナフトール化合物とすることができる。
【0029】
そのため、本発明のアセチル化合物を使用することにより、ナフトール化合物、及びクロメン化合物の収率、製造条件を改善することができる。特に、該アセチル化合物は、数多くの生産工程を経て得られるナフトール化合物、およびクロメン化合物を生産する際の前駆体(原料)として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(アセチル化合物)
本発明は、下記式(1)
【0031】
【化7】

【0032】
(式中 R、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
また、R、R、R、及びRの中から選ばれる2つの基が一緒になって脂肪族炭化水素環を形成していてよく、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
a、及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)で示されるアセチル化合物である。
先ず、このアセチル化合物の置換基について説明する。
【0033】
(基R、R、R、及びR
基R、R、R、及びRにおいて、アルキル基としては、特に限定されないが、一般的には炭素数1〜6のアルキル基が好ましい、好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル、n−へキシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0034】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を挙げることができる。
【0035】
アラルキル基としては、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。また、該アラルキル基は、置換基を有していてもよく、この置換基を有するアラルキル基としては、上記アラルキル基の1若しくは2以上の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基で置換されたものを挙げることができる。
【0036】
アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好適なアリール基を例示すると、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、該アリール基は、置換基を有していてもよく、この置換基を有するアリール基としては、上記アリール基の1若しくは2以上の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、アリール基で置換されたものを挙げることができる。
【0037】
また、R、R、R、及びRの中から選ばれる2つの基が一緒になって脂肪族炭化水素環を形成してもよい。好適な環を例示すると、炭素数4〜8の脂肪族炭化水素環であることが好ましく、炭素数4〜8のシクロアルキル環であることが好ましい。なお、該脂肪族炭化水素環は、R、R、R、及びRが結合している基本骨格の炭素原子を含むものである。具体的には、シクロブチル環、シクロペンチル環、シクロへキシル環、シクロへプチル環、又はシクロオクチル環等を挙げることができる。中でも、Rと、R又はRが一緒になるか、Rと、R又はRが一緒になって脂肪族炭化水素環を形成することが望ましく、特に好ましくは、Rと、R又はRが一緒になるか、Rと、R又はRが一緒になって炭素数4〜8のシクロアルキル環を形成することが望ましい。
【0038】
中でも、上記の基R、R、R、及びRは、下記に詳述するカルボン酸化合物が副生物と類似の化合物となり、上記アセチル化合物が副生物の分離に特に効果を発揮し、さらに最終的に得られるクロメン化合物が優れた効果を発揮するためには、水素原子、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。また、上記効果を発揮するためには、R、及びRが水素原子であり、RとRとが一緒になって炭素数4〜8のシクロアルキル環(ただし、RとRが結合している基本骨格の炭素原子を含むシクロアルキル環)を形成することが好ましい。これらの中でも、基R、R、R、及びRは、特に、水素原子、或いはアルキル基であるか、又は上記シクロアルキル環を形成することが好ましい。
【0039】
(基R、及びR
前記式(1)において、基R、及びRは、それぞれ、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基である。
【0040】
ここでアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、及びアリール基は、前述の基R、R、R、及びRで説明した基と同様の基が好適な例として挙げられる。
【0041】
ハロゲノアルキル基としては、前記アルキル基の1、或いは2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子で置換されたものが挙げられる。これらの中でもフッ素原子で置換されたものが好適である。ハロゲノアルキル基として好適なものとして、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0042】
ハロゲノアルコシ基としては、前記アルコキシ基の1、或いは2以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子で置換されたものが挙げられる。これらの中でもフッ素原子で置換されたものが好適である。ハロゲノアルコキシ基として特に好適なものとして、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等を挙げることができる。
【0043】
中でも、前記基R、及びRは、下記に詳述するカルボン酸化合物が副生物と類似の化合物となり、上記アセチル化合物が副生物の分離に特に効果を発揮し、さらに最終的に得られるクロメン化合物が優れた効果を発揮するためには、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、アラルコキシ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。これらの中でも、基R、及びRは、特に、水素原子、アルキル基、ハロゲノアルキル基、又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0044】
(基R及びRの数a、b)
a、及びbは、RとRの置換基の数を表し、a、及びbは、0から3の整数である。a、及びbが2から3の整数である場合、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。中でも、a、及びbは、本発明の効果を特に発揮するためには、0〜2の整数となることが好ましく、0〜1の整数となることが好ましい。
【0045】
(好適なアセチル化合物)
このようなアセチル化合物は、弱塩基性条件での分液操作、又は再結晶により副生物の除去が可能であり、その結果、高純度のものを容易に得ることができる。また、該アセチル化合物は、保存安定性にも優れ、酸または塩基条件下の加水分解により、容易にナフトール化合物とすることができる。
【0046】
そのため、本発明のアセチル化合物を使用することにより、生産工程の多いナフトール化合物、及びクロメン化合物の収率、製造条件を改善することができる。これらアセチル化合物の中でも、特に上記効果が発揮されるものとして、以下のアセチル化合物が挙げられる。
【0047】
【化8】

【0048】
次に、このアセチル化合物の製造方法について説明する。
【0049】
(アセチル化合物の製造方法)
本発明のアセチル化合物は、下記式(2)
【0050】
【化9】

【0051】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるカルボン酸化合物を無水酢酸、及び酢酸塩存在下にて反応させることにより製造することができる。
先ず、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物について説明する。
【0052】
(アセチル化合物原料であるカルボン酸化合物、及び副生物)
前記式(2)で示されるカルボン酸化合物は、特許文献1に記載されている通り、公知の化合物である。そのため、このカルボン酸化合物は、公知の方法、例えば、特許文献1に記載のグリニヤ法で製造することができる。ただし、以下にこのカルボン酸化合物の製造方法を説明するが、このカルボン酸化合物を製造する際には、類似の構造を有する副生物が生じる。
【0053】
(カルボン酸化合物の製造1 グリニヤ法)
このグリニヤ法により前記式(2)で示されるカルボン酸化合物を製造する方法をより詳細に説明する。
【0054】
2−ブロモフェニル酢酸誘導体を、公知の方法により下記式(6)で示されるオルトエステル誘導体へと変換した後、金属マグネシウムと反応させて下記式(7)で示されるグリニヤ試薬(7)とする。このグリニヤ試薬(7)を、50〜70℃にてテトラロン誘導体と反応させた後、酸、及び塩基を加えてオルトエステル体(8)を加水分解し、下記式(2)で示されるカルボン酸化合物を製造する。この際、副生物としてフェニル酢酸(下記式(9)の化合物)が生成される。
【0055】
【化10】

【0056】
以上のような反応によりカルボン酸化合物を製造することができる。ただし、本発明者等の検討によれば、上記方法においては、副生されるグリニヤ試薬由来の副生物(フェニル酢酸)が、全体の中、60〜70%程度生じる。この副生物は、カルボン酸化合物と構造が類似しており、また生成量も多いため、この時点での分離が困難である。
【0057】
このような副生物をより低減するためには、以下に示す金属ハロゲン交換反応を利用する方法を採用することが好ましい。次に、この方法について説明する。
【0058】
(カルボン酸化合物の製造方法2 金属ハロゲン交換反応)
前記副生物をより低減し、アセチル化合物の収率を向上するためには、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物は、金属ハロゲン交換反応を利用する方法で製造することが好ましい。具体的には、以下の方法でカルボン酸化合物を製造することができる。
【0059】
先ず、2−ブロモフェニル酢酸誘導体を、公知の方法により下記式(6)で示されるオルトエステル化合物へと変換する。これに、塩基(例えば、n−ブチルリチウム)存在下、0〜5℃にてテトラロン誘導体を反応させ、次いで、酸、及び塩基を加えてオルトエステル体(8)を加水分解することにより、下記式(2)で示されるカルボン酸体を製造することができる。この際、フェニル酢酸(下記式(9)で示される化合物)が副生物として生成する。
【0060】
【化11】

【0061】
上記反応によれば、副生物の生成が少なく(ただし、40〜50%程度副生物が生成する)、収率良く、カルボン酸化合物を製造することができる。この反応について詳細に説明する。
【0062】
(金属ハロゲン交換反応 塩基)
この金属ハロゲン交換反応に用いる塩基としては、特に限定されず、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、またはt−ブチルリチウムを用いることができる。ブチルリチウムの使用量は、特に制限されないが、原料であるオルトエステル体1モルに対して、1〜10モルとすることが好ましく、さらに1〜5モルとすることが好ましく、特に1〜3モルとすることが好ましい。
【0063】
また、この反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。反応溶媒としては、反応に対して不活性で、原料を溶解するものであれば特に限定されず、例えばエーテル類、具体的にはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、又は芳香族炭素類、具体的には、トルエン、ベンゼン等の溶媒を使用することができる。反応溶媒の使用量も、特に制限されないが、釜収率を考慮すると、オルトエステル化合物の1質量部に対して、3〜200質量とすることが好ましく、さらに5〜100質量部とすることが好ましく、特に10〜50質量部とすることが好ましい。
【0064】
反応温度は、−100℃〜室温とすることが好ましく、特に−80〜10℃とすることが好ましい。また、反応時間は、目的とする化合物の収量を確認して適宜決定すればよいが、通常、0.1〜10時間とすることが好ましく、さらに0.5〜5時間とすることが好ましい。
【0065】
(オルトエステル部分の加水分解)
上記反応後、オルトエステル体を加水分解するために、金属ハロゲン交換反応により得られた反応溶液と酸、及び塩基とを混合する。酸、及び塩基は、酸を混合した後、次いで、塩基を混合することが好ましい。使用する酸としては、特に制限されるものではなく、無機の酸、例えば塩酸、硫酸等を使用することができ、酸の使用量は、オルトエステル1モルに対して、5〜50倍程度である。また、使用する塩基としては、特に制限されるものではなく、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムを使用することでき、塩基の使用量は、オルトエステル1モルに対して、5〜50倍程度である。
【0066】
以上の通り、グリニヤ法、又は金属ハロゲン交換反応の何れの方法を使用しても、上記副生物(フェニル酢酸)がカルボン酸化合物と同時に生成し、これら(カルボン酸化合物と副生物)を分離するのは構造が類似しているため困難である。精製の度合いにもよるが、前記グリニヤ法では、副生物(フェニル酢酸)が60〜70%含まれ、前記金属ハロゲン交換反応法では、副生物が40〜50%含まれる。
【0067】
本発明においては、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物からアセチル化合物を製造するが、該カルボン酸化合物と前記副生物とが混在している状態でアセチル化合物を製造することができる。
次に、このカルボン酸化合物からアセチル化合物を製造する方法を説明する。
【0068】
(カルボン酸化合物からアセチル化合物を製造する方法)
【0069】
【化12】

【0070】
本発明において、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物から前記式(1)で示されるアセチル化合物を製造するには、酢酸塩、及び無水酢酸存在下にて該カルボン酸化合物を反応させればよい。この反応は攪拌下で行うことが好ましい。なお、この際、反応系には前記副生物が含まれていてもよい。この反応においては、該副生物は反応に関与しないため、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物のみが前記式(1)で示されるアセチル化合物となる。
【0071】
本発明において、無水酢酸の使用量は、特に制限されないが、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物1モルに対して、1〜100モルであることが好ましく、さらに1〜70モルであることが好ましく、特に2〜50モルであることが好ましい。
【0072】
また、酢酸塩としては、特に制限されないが、酢酸のアルカリ金属塩、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、又は酢酸セシウム等を挙げることができる。その中でも、製造費用の面から、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムを使用することが好ましい。酢酸塩の使用量も、特に制限されないが、攪拌効率の点から、カルボン酸化合物1モルに対して、0.1〜10モルとすることが好ましく、さらに0.5〜5モルとすることが好ましく、特に0.8〜1.5モルとすることが好ましい。
【0073】
この反応は、無溶媒、あるいは反応溶媒を用いても行うことができる。反応溶媒を使用する場合には、反応に対して不活性であり、前記式(2)で示されるカルボン酸化合物を溶解するものであれば特に限定されず、芳香族炭化水素系の溶媒、具体的にはトルエン、キシレン、ベンゼン、また ハロゲン系の溶媒、具体的にはクロロホルム、ジクロロメタン等の溶媒を使用することができる。反応溶媒の使用量も、特に制限されないが、釜収率を考慮すると、カルボン酸化合物1質量部に対して、3〜1000質量部とすることが好ましく、さらに5〜300質量部とすることが好ましく、特に10〜100質量部とすることが好ましい。
【0074】
また、この反応は、加熱して行うことが好ましい。その際の反応温度は、室温以上となるように加熱すればよく、具体的には室温以上200℃以下とすることが好ましく、さらに50℃以上150℃以下とすることが好ましい。また、反応時間は、目的とする化合物の収量に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.01〜48時間とすることが好ましく、さらに0.1〜24時間とすることが好ましい。
【0075】
また、カルボン酸化合物からアセチル化合物を合成する反応は、カルボン酸化合物、酢酸塩、無水酢酸、及び反応溶媒の全てを反応容器に仕込んでから攪拌混合する方法、カルボン酸化合物、無水酢酸、及び反応溶媒の混合液に、酢酸塩を加えて攪拌混合する方法、 酢酸塩、及び無水酢酸の混合溶液に、カルボン酸化合物(反応溶媒に溶解したものでもよい)を加える方法等、公知の固液反応方法が特に制限なく採用できる。
【0076】
(アセチル化合物の精製、および保存安定性)
上記のような反応条件により前記式(1)で示されるアセチル化合物を製造することができる。反応終了後は、過剰の無水酢酸を留去したのち、水に相溶し難い有機溶媒、及び塩基性水溶液を加えて分液することにより、目的物(アセチル化合物)を単離することができる。また、この時、分液した有機層(水に相溶し難い有機溶媒)を弱塩基性の水溶液で洗浄することで、不純物として含まれている副生物を容易に除去できる。
【0077】
具体的にこのアセチル化合物の精製について説明する。過剰の無水酢酸を留去した後、水と相溶し難い溶媒、具体的には、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム等を無水酢酸留去後の釜残重量に対して、好ましくは10〜100倍、さらに好ましくは20〜40倍加える。次いで、塩基性の無機塩水溶液、具体的には5〜20質量%の重曹水、又は5〜20質量%の炭酸カリウム水溶液を該釜残重量に対して、好ましくは5〜50倍、さらに好ましくは10〜20倍加えて分液操作を行う。このような操作をおこなうことにより、フェニル酢酸(前記式(8)で示される副生物)を1%以下にまで低減することができる。
【0078】
さらに、カラムクロマトグラフ法(展開溶媒としては、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素系の溶媒、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素系の溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンのようなハロゲン系の溶媒、又は酢酸エチル、メタノールのような極性溶媒を使用することができ、これらの混合溶媒を使用することもできる。)や、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系の溶媒で再結晶する方法により、目的物であるアセチル化合物を純度98%以上で得ることができる。
【0079】
このように、副生物(フェニル酢酸)と構造が類似している前記式(2)で示されるカルボン酸化合物を前記式(1)で示されるアセチル化合物とすることにより、分離が困難であった副生物の除去を簡単に行うことが可能となる。さらに、得られたアセチル化合物は、化合物の種類にもよるが、非常に安定な化合物であり、室温で1ヶ月以上保存しても、着色、分解は見られない。本発明者等の検討によれば、室温で3ヶ月保存しても、着色、分解は見られなかった。一方、下記の実施例にて詳述するが、前記式(3)で示されるナフトール化合物は、化合物の種類にもよるが、室温で6日放置すると着色が見られた。
【0080】
なお、前記方法で精製されたアセチル化合物は、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)、質量分析、13C−核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定することにより、その構造を同定することができる。
次に、このアセチル化合物からナフトール化合物を製造する方法について説明する。
【0081】
(ナフトール化合物の製造方法)
前記方法で精製されたアセチル化合物は、酸、又は塩基により脱アセチル化を行い、下記式(3)
【0082】
【化13】

【0083】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるナフトール化合物とすることができる。
先ず酸を使用した脱アセチル化の反応について説明する。
【0084】
(酸を使用した脱アセチル化の反応)
使用する酸の種類は、特に制限されないが、塩酸、硫酸、燐酸、トリフルオロ酢酸等を使用することができる。中でも、経済性の理由から、塩酸を使用することが好ましい。また、酸の使用量は、特に制限されないが、アセチルナフトール体(アセチル化合物)1モルに対して、0.01〜10モルとすることが好ましく、さらに0.05〜5モルとすることが好ましい。反応の性質上、触媒量の酸で反応することから、特に0.08〜1モルとすることが好ましい。
【0085】
また、酸を用いて脱アセチル化を行う場合、有機溶媒が存在しない状態で実施することもできるが、得られるナフトール化合物の分解等を考慮すると、有機溶媒中で実施することが好ましい。有機溶媒を使用する場合、該溶媒としては、反応に対して不活性で、原料を溶解するものであれば特に限定されず、アルコール系の溶媒を用いるのが好適であり、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール等の溶媒を使用することができる。この有機溶媒の使用量も、特に制限されないが、アセチルナフトール体(アセチル化合物)1質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、さらに2〜50質量部とすることが好ましい。
【0086】
また、反応温度は、酸を使用する場合には、室温以上200℃以下とすることが好ましく、さらに50℃以上150℃以下とすることが好ましい。反応時間は、目的とする化合物の収量に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜72時間とすることが好ましく、さらに1〜48時間とすることが好ましい。
【0087】
なお、得られるナフトール化合物の着色を低減するためには、下記に詳述する塩基を使用するよりも、前記酸を使用する方が好ましい。
次に塩基を使用した脱アセチル化の反応について説明する。
【0088】
(塩基を使用した脱アセチル化の反応)
使用する塩基は、特に制限はされないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、又はナトリウムメトキシド等を使用することができる。中でも、経済性を考慮すると、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。塩基の使用量も、特に制限されないが、アセチルナフトール体(アセチル化合物)1モルに対して、0.1〜50モルとすることが好ましく、さらに1〜30モルとすることが好ましい。中でも、反応時間の短縮および副反応の抑制の点から、特に1〜10モルとすることが好ましい。
【0089】
また、塩基を用いて脱アセチル化を行う場合、有機溶媒が存在しない状態で実施することもできるが、得られるナフトール化合物の分解等を考慮すると、有機溶媒中で実施することが好ましい。有機溶媒を使用する場合、該溶媒としては、反応に対して不活性で、原料を溶解するものであれば特に限定されず、水に対し親和性の高い溶媒を用いるのが好適である。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン等の溶媒を使用することができる。この有機溶媒の使用量も、特に制限されないが、アセチルナフトール体(アセチル化合物)1質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、さらに2〜50質量部とすることが好ましい。
【0090】
塩基を使用する場合、反応温度は、特に制限はされないが、−30℃以上100℃以下とすることが好ましく、さらに−10℃以上50℃以下とすることが好ましい。また、反応時間は、目的とする化合物の収量に応じて適宜決定すればよいが、0.01〜48時間とすることが好ましく、さらに0.1〜24時間とすることが好ましい。
【0091】
(ナフトール化合物の精製)
前記の通り、酸、又は塩基を用いて脱アセチル化の反応を終了した後は、反応系を中和し、使用した溶媒を留去し、さらに、水に相溶し難い有機溶媒、例えば、トルエン、酢酸エチル、ジクロロメタン、及び水を加えて分液することにより、目的物(ナフトール化合物)を単離する。本発明においては、前記アセチル化合物の時点で副生物を除去することができるため、このナフトール化合物の単離においては、塩基性溶液を使用する必要がない。そのため、ナフトール化合物を高収率で得ることができる。また、得られたナフトール化合物は必要に応じて、カラムクロマトグラフ法や再結晶等の方法を用いることで、より精製を行うことも可能である。
【0092】
このように本発明のアセチル化合物を使用すれば、容易に高純度のナフトール化合物を収率よく製造することができる。このナフトール化合物は、化合物の性質上、酸化劣化し易いため保存安定性が低い。そのため、本発明の保存安定性の高いアセチル化合物を経てナフトール化合物を製造する方法は、工業的に非常に有利な方法である。
次に、得られたナフトール化合物からクロメン化合物を合成する方法について説明する。
【0093】
(クロメン化合物の製造)
本発明においては、前記方法によりナフトール化合物を製造した後、次いで、得られたナフトール化合物と下記式(4)
【0094】
【化14】

【0095】
(式中、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アラルコシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
c、及びdは、それぞれ、0〜3の整数であり、c、及びdが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。)で示されるプロパルギル化合物を反応させることにより、下記式(5)
【0096】
【化15】

【0097】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義であり、
、R、c、及びdは、前記式(4)におけるものと同義である。)
で示されるクロメン化合物を製造することができる。
先ず、プロパルギル化合物について説明する。
【0098】
(プロパルギル化合物)
前記ナフトール化合物は、前記式(4)で示されるプロパルギル化合物と反応させることにより、フトクロミック特性に優れたクロメン化合物を製造することができる。このプロパルギル化合物は、対応する構造のケトン誘導体とリチウムアセチリド等の金属アセチレン化合物とを反応させることにより合成することができる。
【0099】
(基R、及び基R
前記式(4)において、基R、及びRは、アルキル基、アルコキシ基、アラルコシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基である。具体的なこれらの基は、前述の基R、R、R、及びRで説明した基と同様の基が好適な例として挙げられる。
【0100】
中でも、上記の基R、及びRは、前記ナフトール化合物と反応させて得られるクロメン化合物が優れた効果を発揮するためには、水素原子、メチル基、プロピル基、メトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ジメチルアミノ基、又はモルホリノ基であることが好ましい。その中でも、上記の基R、及びRは、特に、メチル基、又はメトキシ基であることが好ましい。
【0101】
(基R、及びRの数c、d)
c、及びdは、RとRの置換基の数を表し、それぞれ、0〜3の整数であり、c、及びdが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。
【0102】
(ナフトール化合物とプロパルギル化合物との反応)
前記ナフトール化合物とプロパルギル化合物とは、公知の方法、例えば、酸触媒存在下に両化合物を混合すればよい。このとき、ナフトール化合物、及びプロパルギル化合物を酸触媒に効果的に接触させるためには、有機溶媒を使用するのが好ましい。
【0103】
この反応において使用する酸触媒としては、特に限定されないが、有機及び無機の酸であればよく、具体的にはp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、シリカゲル、酸性アルミナ等が使用できるが、反応収率の観点よりシリカゲルが好適である。
【0104】
また、反応に使用する有機溶媒としては、反応に対して不活性で、原料を溶解するものであれば特に限定されず、芳香族炭化水素系の溶媒、具体的にはトルエン、キシレン、二トリル系の溶媒、具体的にはアセトニトリル、ハロゲン系の溶媒、具体的にはクロロホルム、ケトン系の溶媒、具体的にはメチルイソブチルケトン等の溶媒を使用することができる。反応溶媒の使用量も、特に制限されないが、釜収率を考慮すると、ナフトール化合物1質量部に対して、3〜1000質量部とすることが好ましく、さらに5〜300質量部とすることが好ましく、特に10〜100質量部とすることが好ましい。
【0105】
ナフトール化合物とプロパルギル化合物の使用量は、特に制限されないが、製造コストを考慮するとナフトール化合物1モルに対して、プロパルギル化合物を0.1〜5モル使用することが好ましく、さらに0.8〜2モル使用することが好ましく、特に0.9〜1.3モル使用することが好ましい。
【0106】
また、ナフトール化合物とプロパルギル化合物との反応は、ナフトール化合物、プロパルギル化合物、酸触媒、及び有機溶媒の全てを反応容器に仕込んでから攪拌混合する方法、ナフトール化合物、プロパルギル化合物、及び有機溶媒の混合液に、酸触媒を加えて攪拌混合する方法、 酸触媒、反応溶媒の混合溶液に、ナフトール化合物とプロパルギル化合物(有機溶媒に溶解したものでもよい)を加える方法等、公知の固液反応方法が特に制限なく採用できる。
【0107】
また、反応温度は、室温以上200℃以下とすることが好ましく さらに70℃以上130℃以下とすることが好ましい。反応時間は、目的とする化合物の収量に応じて適宜決定することができるが、通常、0.01〜50時間とすることが好ましく、さらに0.1〜15時間とすることが好ましい。
【0108】
反応終了後は、適当な有機溶媒、及び水を加えて分液することにより目的物を単離することができる。さらに、続いてカラムクロマトグラフ法や再結晶等の方法により、クロメン化合物を純度99 %以上で得ることができる。
【0109】
このようにして得られるクロメン化合物は、下記式(5)
【0110】
【化16】

【0111】
(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義であり、
、R、c、及びdは、前記式(4)におけるものと同義である。)
で示され、フォトクロミック特性に優れた化合物となる。
【0112】
本発明によれば、ナフトール化合物の前駆体であるアセチル化合物を使用することにより、クロメン化合物の製造条件も改善できる。該アセチル化合物は、長期間保存でき、さらに、容易にナフトール化合物に変換できる。そのため、該アセチル化合物は、数多くの生産工程を有するクロメン化合物の工業的な生産に非常に適している。
【実施例】
【0113】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0114】
製造例1(カルボン酸化合物の合成)
【0115】
【化17】

【0116】
オルトエステル体I(238.0g、795.6 mmol)を無水トルエン(1190 ml)に溶解させた後、氷浴にて攪拌した。窒素雰囲気下、内温0℃にて1.6M n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(373.8 ml、875 mmol)を滴下し、30分間攪拌した。α−テトラロン−トルエン溶液(210.0g 重量比1:1)を滴下した後、氷浴を外して2時間攪拌した。反応終了後、5質量%塩化アンモニウム水溶液(400ml)を加えて1時間攪拌し、水層をトルエンにて抽出した。得られたトルエン溶液を減圧下、濃縮した。(化合物IIとIIIの選択率を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定したところ、化合物II:化合物III = 81:19であった。)
得られた化合物IIとIIIを含む反応残渣に対し、THF(680ml)を加えた後、18質量%塩酸(566ml)を加えて、60℃で2時間攪拌した。反応終了後、有機層を15質量%食塩水(500ml)で3回洗浄した。続いてトルエン(266ml)、水(268ml)および水酸化カリウム(53.4g、954.6mmol)を加えて50℃で2時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却した反応液に水(270ml)を加えて分液した。有機層を除去した後、水層に新たにトルエン(250ml)を加えて水層を洗浄した。水層に36質量%塩酸(136ml)を加えて水層のpHを1とした後、トルエン(250ml)を加えて、水層よりカルボン酸体IV(カルボン酸化合物)と化合物IIIを抽出した。 水(240ml)で2回洗浄し、カルボン酸体IV(カルボン酸化合物)と化合物IIIを含むトルエン溶液(480ml)を得た(化合物IVとIIIの選択率をHPLCにて測定したところ、化合物IV : 化合物III = 81 : 19であった)。
【0117】
実施例1(アセチル化合物の合成)
【0118】
【化18】

【0119】
製造例1で得たカルボン酸体IVと化合物III(副生物)を含むトルエン溶液(238ml)を減圧下濃縮して容量100mlとした後、この溶液を無水酢酸(545.2ml、5757.6mmol)、及び酢酸ナトリウム(18.9g、230.7mmol)中に100℃にて滴下し、110℃で2時間攪拌した。反応終了後、内温45℃にて水(244.0kg、13551.6 mmol)を滴下し、15分間攪拌した。その後、分液して水層を除去し、さらに有機層(トルエン層)を水(80ml)、及び5質量%炭酸水素化ナトリウム水溶液(80ml)にて2回洗浄して化合物IIIを除去し、さらに水(80 ml)で加え、再度、有機層を洗浄した。分液して水層を除去した後、減圧下、有機層を濃縮し、次いで、イソプロピルアルコール(333.0 ml)を加えて再結晶を行い、アセチルナフトール体(アセチル化合物)V(収量26.6g、3工程の収率23.2%)を白色固体として得た。得られたアセチルナフトール体V(アセチル化合物)の同定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl):2.39(s,3H), 2.70−2.82(m,4H),7.26−7.50(m,6H),7.79−7.83(m,1H),7.88−7.91(d,1H),8.49−8.54(m,1H)、 HPLC純度98.2%,
液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)による分子質量 289(M+1)。
【0120】
実施例2(ナフトール化合物の合成)
【0121】
【化19】

【0122】
窒素雰囲気下、実施例1で得られたアセチルナフトール体V (26.6g、92.3mmol)をメタノール(266.0 ml)に溶解し、36質量%塩酸(1.9g、 18.5mmol)を加え、還流温度で1時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却し、酢酸エチル(532.2 ml)、及び水(532.2 ml)を加えて分液した。有機層を5質量%塩水で洗浄後、溶媒を留去し、ナフトール体VI(ナフトール化合物)(20.7g、アセチルナフトール体Vからの収率91%、オルトエステル体Iからの収率21.1%)を得た。HPLC純度96.0%であった。
【0123】
実施例3(クロメン化合物の製造)
【0124】
【化20】

【0125】
窒素雰囲気下、実施例2で得られたナフトール体VI(18.6g、75.5 mmol)、およびプロパルギルアルコール体VII(18.7g、75.5 mmol)をトルエン(280ml)中に加えて攪拌し、シリカゲル(19.0g)を加えて、120℃で3時間攪拌した。水(140ml)を加えて計4回有機層を洗浄し、有機層を減圧下留去した。得られた反応残渣を再結晶(イソプロピルアルコール : アセトニトリル、10 : 2)を行って精製し、クロメン化合物VIII(15.4 g、収率44.0 %)を得た。HPLC純度99.4%であった。
【0126】
比較例1(ナフトール化合物の製造)
【0127】
【化21】

【0128】
製造例1で得たカルボン酸体IVと化合物IIIを含むトルエン溶液(238ml、化合物IV : 化合物III = 81 : 19)に対して、トルエン(500ml)、及びポリリン酸(106.2g、596.7 mmol)を加えて、還流温度で7時間反応した。反応終了後、氷水(200ml)を加えて30分間攪拌した後、分液を行い、有機層を水(200ml)で洗浄した。有機層を5質量%炭酸水素化ナトリウム水溶液(200ml)で2回洗浄した後、水(200ml)で再度、有機層を洗浄した。減圧下、有機層を濃縮し、ナフトール体VI(ナフトール化合物)(15.5g、オルトエステル体Iからの収率15.8%)を得た。HPLC純度92.2%であった。
【0129】
比較例2(クロメン化合物の製造)
比較例1で得られたナフトール体VIを用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、クロメン化合物VIIIを得た(11.1g、収率38.1%、HPLC純度99.1%)。
【0130】
製造例2(カルボン酸化合物の製造)
製造例1において、α−テトラロンと同じモル数の4−メチルテトラロンを使用した以外は、製造例1と同様の操作を行った。下記式のカルボン酸体X(カルボン酸化合物)と化合物IIIを含むトルエン溶液(480ml)を得た。下記式の化合物X : 化合物III = 81 : 19であった。
【0131】
【化22】

【0132】
実施例4(アセチル化合物の製造)
【0133】
【化23】

【0134】
製造例2で得られたカルボン酸体Xと化合物IIIとを含むトルエン溶液(238ml)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アセチルナフトール体XI(アセチル化合物)(収量27.4g、3工程の収率22.5%)を白色固体として得た。得られたアセチルナフトール体XI(アセチル化合物)の同定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl):1.40(s,3H),2.39(s,3H), 2.70−2.82(m,3H),7.26−7.50(m,6H),7.79−7.83(m,1H),7.88−7.91(d,1H),8.49−8.54(m,1H)、HPLC純度98.4%、
LCMSによる分子質量 303(M+1)。
【0135】
実施例5(ナフトール化合物の製造)
【0136】
【化24】

【0137】
窒素雰囲気下、実施例4で得たアセチルナフトール体XI(27.4g、 90.6mmol)をメタノール(270.0ml)に溶解し、36質量%塩酸(1.9 g、 18.5 mmol)を加え、還流温度で1時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却し、酢酸エチル(535.0 ml)及び水(535.0 ml)を加えて分液した。有機層を5質量%塩水で洗浄後、溶媒を留去し、ナフトール体XII(ナフトール化合物)(21.5g、アセチルナフトール体XIからの収率88.0%、オルトエステル体Iからの収率19.8%)を得た。HPLCの純度は95.3%であった。
【0138】
実施例6(クロメン化合物の製造)
【0139】
【化25】

【0140】
窒素雰囲気下、実施例5で得られたナフトール体XII(10.0g、38.4mmol)、及びプロパルギルアルコール体XIII(10.3g、38.4mmol)をトルエン(150ml)中に加えて攪拌し、シリカゲル(10.0g)を加えて、110℃で2時間攪拌した。水(120ml)を加えて計4回有機層を洗浄し、有機層を減圧下留去した。得られた反応残渣をシリカゲルカラム(溶媒クロロホルム)にて精製し、クロメン化合物IX(9.4g、収率47.9%)を得た。
【0141】
製造例3(カルボン酸化合物の製造)
製造例1において、α−テトラロンと同じモル数の6−メトキシテトラロンを使用した以外は、製造例1と同様の操作を行った。下記式のカルボン酸体XV(カルボン酸化合物)と化合物IIIを含むトルエン溶液(480ml)を得た。下記式の化合物XV : 化合物III = 79 : 21であった。
【0142】
【化26】

【0143】
実施例7(アセチル化合物の製造)
【0144】
【化27】

【0145】
製造例3で得られたカルボン酸体XVと化合物IIIとを含むトルエン溶液(238ml)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アセチルナフトール体XVI(アセチル化合物)(収量32.1g、3工程収率25.4%)を白色個体として得た。アセチルナフトール体XVI(アセチル化合物)の同定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl):2.40(s,3H),2.70−2.82(m,4H),3.83(s,3H),6.64−6.69(m,2H),7.27−7.40(m,4H),7.69−7.90(m,2H)、HPLC純度98.1%、
LCMSによる分子量 319(M+1)。
【0146】
実施例8(ナフトール化合物の製造)
【0147】
【化28】

【0148】
窒素雰囲気下、アセチルナフトール体XVI(13.8g、47.0 mmol)をメタノール(135.0ml)に溶解し、36質量%塩酸(0.95g、9.3 mmol)を加え、還流温度で1時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却し、酢酸エチル(270.0ml)及び水(270.0ml)を加えて分液した。有機層を5質量%塩水で洗浄後、溶媒を留去し、ナフトール体XVII (ナフトール化合物)(9.4g、アセチルナフトール体XVIからの収率72.3%、オルトエステル体Iからの収率20.4%)を得た。HPLC純度95.3%であった。
【0149】
実施例9(クロメン化合物の製造)
【0150】
【化29】

【0151】
窒素雰囲気下、実施例8で得られたナフトール体XVI( 3.0g、10.8mmol)、及びプロパルギルアルコール体XVII( 3.0g、10.8mmol)をトルエン(50ml)中に加えて攪拌し、シリカゲル(3.0g)を加えて、110℃で2時間攪拌した。水(40ml)を加えて計4回有機層を洗浄し、有機層を減圧下留去した。得られた反応残渣をシリカゲルカラム(溶媒クロロホルム)にて精製し、クロメン化合物XIX( 2.1 g、収率36.0%)を得た。HPLC純度99.4%であった。
【0152】
製造例4(カルボン酸化合物の製造)
製造例1において、α−テトラロンと同じモル数の6−トリフルオロメチルテトラロンを使用した以外は、製造例1と同様の操作を行った。下記式のカルボン酸体XX(カルボン酸化合物)と化合物IIIを含むトルエン溶液(475ml)を得た。下記式の化合物XX : 化合物III = 78 : 22であった。
【0153】
【化30】

【0154】
実施例10(アセチル化合物の製造)
【0155】
【化31】

【0156】
製造例4で得られたカルボン酸体XXと化合物IIIとを含むトルエン溶液(230ml)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アセチルナフトール体XXI(アセチル化合物)(収量31.6g、3工程収率22.3%)を淡黄色固体として得た。アセチルナフトール体XXI(アセチル化合物)の同定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl):2.40(s,3H),2.70−2.83(m,4H),7.27−7.40(m,6H),7.70−7.80(m,2H)、HPLC純度98.1%、
LCMSによる分子量 357(M+1)。
【0157】
実施例11(ナフトール化合物の製造)
【0158】
【化32】

【0159】
窒素雰囲気下、アセチルナフトール体XXI(12.3g、34.5 mmol)をメタノール(130.0ml)に溶解し、36質量%塩酸(0.88g、8.7 mmol)を加え、還流温度で1時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却し、酢酸エチル(260.0ml)及び水(260.0ml)を加えて分液した。有機層を5%塩水で洗浄後、溶媒を留去し、ナフトール体XXII (ナフトール化合物)(9.4g、アセチルナフトール体XXIからの収率86.5%、オルトエステル体Iからの収率19.3%)を得た。HPLC純度は95.6%であった。
【0160】
実施例12(クロメン化合物の製造)
【0161】
【化33】

【0162】
窒素雰囲気下、実施例11で得られたナフトール体XXII( 3.0g、9.55mmol)およびプロパルギルアルコール体XVIII( 3.0g、10.8mmol)をトルエン(50ml)中に加えて攪拌し、シリカゲル(3.0g)を加えて、110℃で2時間攪拌した。水(40ml)を加えて計4回有機層を洗浄し、有機層を減圧下留去した。得られた反応残渣をシリカゲルカラム(溶媒クロロホルム)にて精製し、クロメン化合物XXIV( 2.4g、収率43.3%)を得た。HPLC純度99.2%であった。
【0163】
製造例5(カルボン酸化合物の製造)
製造例1において、オルトエステル体Iと同じモル数のオルトエステルXXVを使用した以外は、製造例1と同様の操作を行った。下記式のカルボン酸体XXVI(カルボン酸化合物)と化合物XXVIIを含むトルエン溶液(482ml)を得た。下記式の化合物XXV : 化合物XXVI = 79 : 21であった。
【0164】
【化34】

【0165】
実施例13(アセチル化合物の製造)
【0166】
【化35】

【0167】
製造例5で得られたカルボン酸体XXVIと化合物XXVIIとを含むトルエン溶液(230ml)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、アセチルナフトール体XXVIII(アセチル化合物)(収量27.9g、3工程収率23.2%)を淡黄色個体として得た。アセチルナフトール体XXVIII(アセチル化合物)の同定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl):2.39(s,3H),2.45(s,3H),2.70−2.82(m,4H),7.26−7.50(m,6H),7.79−7.83(m,1H),8.49−8.54(m,1H)、 HPLC純度98.2%,
LCMSによる分子量 303(M+1)。
【0168】
実施例14(ナフトール化合物の製造)
【0169】
【化36】

【0170】
窒素雰囲気下、アセチルナフトール体XXVIII(10.4g, 34.5mmol)をメタノール(130.0ml)に溶解し、36質量%塩酸(0.88g, 8.7mmol)を加え、還流温度で1時間攪拌した。反応終了後、25℃に冷却し、酢酸エチル(260.0ml)及び水(260.0ml)を加えて分液した。有機層を5質量%塩水で洗浄後、溶媒を留去し、ナフトール体XXIX (ナフトール化合物)(9.4g、アセチルナフトール体XVIIIからの収率86.5%、オルトエステル体XXVからの収率19.3%)を得た。HPLC純度は95.8%であった。
【0171】
実施例14(クロメン化合物の製造)
【0172】
【化37】

【0173】
窒素雰囲気下、実施例13で得られたナフトール体XXIX(3.0g、11.5 mmol)およびプロパルギルアルコール体VII( 3.3g、13.3mmol)をトルエン(50ml)中に加えて攪拌し、シリカゲル(3.0g)を加えて、110℃で2時間攪拌した。反応終了後、水(40ml)を加えて、計4回有機層を洗浄し、有機層を減圧下濃縮した。反応残渣をシリカゲルカラム(溶媒クロロホルム)にて精製し、クロメン化合物XXX( 2.1 g、収率43.8%)を得た。HPLC純度99.4%であった。
【0174】
実施例15(保存安定性の評価)
上記実施例で得られたアセチルナフトール体(アセチル化合物)とナフトール体(ナフトール化合物)の保存安定性を検討した。室温にて1週間、室温にて3ヶ月保存した化合物を、TLC(薄層クロマトグラフィー)による確認、HPLC(高速液クロマトグラフィー)の純度の確認、目視により評価した。結果を表1に示す。表1のTLCスポットの評価は、1週間、3ヶ月保存した化合物をTLCで展開させた際、該当化合物以外の化合物(分解物)のスポットが確認されたものを「有り」、確認されなかったものを「無し」と記載した。
【0175】
【表1】

【0176】
室温保存1週間後、各アセチルナフトール体(アセチル化合物)には分解は認められなかった。一方、各ナフトール体(ナフトール化合物)は、透明オイル状物質から赤褐色のオイル状物質に変化した。また、TLC上でナフトール体(ナフトール化合物)のスポットの下に分解物のスポットが確認された。
【0177】
さらに、各アセチルナフトール体(アセチル化合物)は、室温で3ヶ月間保存しても安定であったが、ナフトール体は、茶褐色のオイル状物質に変化した。
【0178】
実施例16
実施例15において3ケ月間保存したアセチルナフトール体Vを使用して、実施例2と同様の操作を行い、ナフトール体VIを得た(収率92.0%、HPLC純度96.2%)。反応収率、HPLC純度とも実施例2と同様の結果を得た。
【0179】
実施例17
実施例16において得られたナフトール体VIを使用して実施例3と同様の操作を行い、クロメン化合物VIIIを得た。(収率42.0 %、HPLC純度99.5%)。
反応収率、HPLC純度とも実施例3と同様の結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中 R、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
また、R、R、R、及びRの中から選ばれる2つの基が一緒になって脂肪族炭化水素環を形成してもよく、
、及びRは、それぞれ、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
a、及びbは、それぞれ、0〜3の整数であり、a、及びbが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であっても、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるアセチル化合物。
【請求項2】
下記式(2)
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるカルボン酸化合物を、無水酢酸、及び酢酸塩存在下にて反応させることを特徴とする請求項1に記載のアセチル化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のアセチル化合物を、酸、又は塩基により脱アセチル化することを特徴とする
下記式(3)
【化3】

(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義である。)
で示されるナフトール化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法により前記式(3)で示されるナフトール化合物を製造した後、得られたナフトール化合物と
下記式(4)
【化4】

(式中、R、及びRは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アラルコシ基、アミノ基、窒素原子をヘテロ原子として有し該窒素原子で結合する複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アラルキル基、又はアリール基であり、
c、及びdは、それぞれ、0〜3の整数であり、c、及びdが2〜3の整数であるとき、各R、及びRは、それぞれ、同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。)
で示されるプロパルギル化合物とを反応させることを特徴とする
下記式(5)
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R、a、及びbは、前記式(1)におけるものと同義であり、
、R、c、及びdは、前記式(4)におけるものと同義である。)
で示されるクロメン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−270092(P2010−270092A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125746(P2009−125746)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】