説明

アゾ化合物、顔料組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルター

【課題】様々な顔料に対し優れた分散性を付与する、シナジストとして有効なアゾ化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアゾ化合物。


(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、又はスルホニル基を表し、RからRは水素原子又は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員複素環基をし、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアゾ化合物、顔料組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する色素のうち染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
各種インク組成物中において用いられている顔料の着色力、鮮明性は顔料粒子の性状と密接な関係にある。通常、顔料粒子は一次粒子の凝集体を形成しており、一次粒子が微細であるほど顔料の着色力は高くなり、かつ鮮明性も高くなることが知られている。従って、顔料の着色力、鮮明性を向上させるには一次粒子の凝集状態をより微細な粒子状態にする必要がある。一方、顔料粒子は微細化するに従い粒子間での凝集が起こり易くなる。この為、顔料粒子を微細化した状態でビヒクル中に安定に分散させる必要がある。各種印刷インクは、固体である顔料粉末を液体であるビヒクル中に微細かつ安定に懸濁させたものである。その分散プロセスは本質的に、濡れ、微細化、安定化という三段階の過程を含むものである。しかしながら、実際の分散系では各過程が並行して起こっており、これらの過程を厳密に分けることは困難である場合が多い。
【0006】
顔料粒子と分散過程に関しては上記のことが知られているが、顔料の微細な粒子を非水性ビヒクル中に懸濁させて安定な分散体を調製することは困難であることが多い。従って、顔料の非水性ビヒクルへの分散安定性の良否は、オフセットインキ、グラビアインキなどの印刷インキや塗料などの製造過程及び製品の品質に対して重大な影響を及ぼし、場合により種々の問題を引き起こすことが知られている。
【0007】
顔料の微細粒子を含む分散物は往々にして結晶化により顔料の凝集を示し、その結果、ヘイズ値が大きくなり顔料本来の鮮やかさを失ってしまう。また、異なった化学構造の顔料を混合状態で使用する場合には、顔料粒子の凝集に起因する色分かれと呼ばれる現象や沈降を生じ、展色塗膜の表面における光沢低下やレベリング不良等の状態不良を引き起こすことがある。更に、インク及び塗料における顔料の分散安定性が低い場合には、顔料粒子の非水性ビヒクル中におけるエネルギー的不安定性により、顔料結晶の状態変化が起こることがある。すなわち、顔料結晶がその集合状態を変化させてより安定な状態へ移行することにより、色相の変化、着色力及び鮮明性の低下、凝集粒子の生成等の現象が引き起こされる為に製品の質が変化し、商品価値を著しく損なうことがある。
【0008】
以上のように、顔料を分散状態で使用する分野では分散に伴う種々の問題の発生が想定され、この為に様々な種類の添加剤が開発されている。このような添加剤としては、分散させる顔料の骨格あるいはそれに類似の化学構造を有する顔料誘導体(シナジストとも言う)の使用が効果的であることが知られている。これまでに、顔料構造と類似な骨格を持つ極性部位を持たない顔料誘導体、酸性基あるいは塩基性基等の特定の官能基を顔料骨格に導入した顔料誘導体、これらの官能基をアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等に導入した樹脂型顔料分散剤、樹脂の一部に顔料骨格を導入した樹脂型顔料誘導体などが開発されている。これらの分散剤及び添加剤は単独あるいは併用として用いられており、何れの使用法によっても効果が発現する。
【0009】
顔料としての骨格に酸性基を導入した顔料誘導体としては、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アゾ顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン顔料等に酸性基であるスルホン酸基、カルボキシル基を導入した構造の誘導体が開示されている。これらの顔料誘導体は、分散剤、結晶成長抑制剤あるいは防止剤として広く用いられている。更に、このような技術は近年においては、カラーフィルター用のインクとしても広範囲に展開されている。
【0010】
例えば、特許文献1には、有機顔料と、βナフトール基を有するアゾ顔料誘導体とを含有する顔料組成物が開示されており、この技術によれば、分散性、分散安定性、透明性及び鮮明性が優れるとされている。
また、特許文献2の段落[0019]の製造例4には、βナフトール基を有するアゾ顔料誘導体とポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホコハク酸エステルナトリウム塩とを含有する顔料分散剤が開示されており、このような顔料分散剤を使用することによって、高濃度顔料分散体の流動性と、流動性の臨界温度を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−202021号公報
【特許文献2】特開平5−117541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、様々な顔料に対して、優れた分散性、分散安定性及び耐光性を付与できる顔料誘導体が求められている。
本発明は、様々な顔料に対して、優れた分散性、分散安定性及び耐光性を付与できる顔料誘導体として有効なアゾ化合物、該アゾ化合物を用いる顔料組成物、該顔料組成物を用いるインクジェット記録用インク及びカラーフィルター用着色組成物、並びに、該着色組成物から製造されるカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の通りである。
【0014】
1.下記一般式(1)で表されるアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0015】
【化1】

【0016】
(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、又はスルホニル基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員複素環基を表し、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はRからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はRからR、A又はGを介した4量体を表す。)
【0017】
2.前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする前記1に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0018】
【化2】

【0019】
(一般式(2)中、G、RからR及びAは一般式(1)で定義したものと同じであり、R11は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又は複素環基を表し、R11、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R11、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR11、RからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR11、RからR、A又はGを介した4量体を表す。)
【0020】
3.前記一般式(2)におけるGが水素原子であり、かつ、Aが下記一般式(A−1)〜(A−32)のいずれかを表すことを特徴とする前記2に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0021】
【化3】

【0022】
(一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0023】
4.前記一般式(2)におけるAが前記一般式(A−10)〜(A−32)のいずれかを表すことを特徴とする前記3に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0024】
5.前記一般式(2)におけるAが前記一般式(A−16)であることを特徴とする前記4に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0025】
6.前記親水性基が−SO・M/n又は−COO・M/n(Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン、又はアンモニウムイオンを表し、nはMの価数(1〜3の整数)を表す)で表される置換基であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0026】
7.前記親水性基がアミノ基であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【0027】
8.(A)有機顔料と、(B)前記1〜7のいずれかに記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物とを含有することを特徴とする顔料組成物。
【0028】
9.前記有機顔料がジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料及びアゾ顔料から選択された少なくとも1種であることを特徴とする前記8に記載の顔料組成物。
【0029】
10.前記有機顔料がアゾ顔料であることを特徴とする前記9に記載の顔料組成物。
【0030】
11.前記8〜10のいずれかに記載の顔料組成物を含むことを特徴とするインクジェット記録用インク。
【0031】
12.前記8〜10のいずれかに記載の顔料組成物を用いることを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
【0032】
13.前記12に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、様々な顔料に対して、優れた分散性、分散安定性及び耐光性を付与できる顔料誘導体として有効なアゾ化合物、該アゾ化合物を用いる顔料組成物、該顔料組成物を用いるインクジェット記録用インク及びカラーフィルター用着色組成物、並びに、該着色組成物から製造されるカラーフィルターを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】合成例2に従って合成されたD−81の赤外吸収チャートを示す図である。
【図2】合成例4に従って合成されたD−83の赤外吸収チャートを示す図である。
【図3】合成例5に従って合成されたD−84の赤外吸収チャートを示す図である。
【図4】合成例6に従って合成されたD−82の赤外吸収チャートを示す図である。
【図5】合成例7に従って合成されたD−91の赤外吸収チャートを示す図である。
【図6】合成例8に従って合成されたP−1の赤外吸収チャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
まず、本発明における脂肪族基、アリール基、複素環基及び置換基について説明する。
本発明における脂肪族基において、その脂肪族部位は直鎖、分岐鎖及び環状のいずれであってもよい。また、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等を挙げることができる。更に脂肪族基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0036】
また、アリール基は、単環であっても縮合環であってもよい。また、無置換であっても置換基を有していてもよい。また、複素環基は、その複素環部位は環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであればよく、飽和環であっても、不飽和環であってもよい。また、単環であっても縮合環であってもよく、更に無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0037】
また、本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えば脂肪族基、アリール基、複素環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、複素環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、複素環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、複素環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、複素環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、複素環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、ジアリールオキシホスフィニル基等をあげることができる。
【0038】
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(1)又は(2)で表されるアゾ化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0039】
<アゾ化合物>
本発明のアゾ化合物は下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0040】
【化4】

【0041】
(一般式(1)中、一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、又はスルホニル基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員複素環基を表し、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はRからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はRからR、A又はGを介した4量体を表す。)
【0042】
Gで表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8の脂肪族基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0043】
Gで表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
【0044】
Gで表される複素環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。Gで表される複素環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合した複素環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員複素環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
【0045】
Gで表されるアシル基としては、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、複素環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表されるアシル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0046】
Gで表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表される脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、(t)−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
【0047】
Gで表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、脂肪族基、アリール基、複素環基等が好ましい。Gで表される置換基を有してもよいカルバモイル基として、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11であり、より好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2〜5のアルキルカルバモイル基であり、例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等が挙げられる。
Gで表されるスルホニル基としては、脂肪族スルホニル基であっても、アリールスルホニル基であっても、複素環スルホニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表されるスルホニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルスルホニル基、総炭素数6〜10のアリールスルホニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキルスルホニル基であり、例えばメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0048】
Gとして好ましくは、水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基であり、より好ましくは水素原子である。
【0049】
からRで表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば特に限定されない。RからRで表される置換基としては、好ましくは脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子である。
【0050】
また、上記一般式(1)で表されるアゾ化合物において、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。 親水性基は、酸基、塩基等が挙げられ、特に制限されないが、例えば−NR1516、−SO・M/n、又は、−COO・M/nを表し、R15とR16はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよい複素環を表す。R15とR16とは、互いに結合して環を形成しても良く、該環は、更に、窒素、酸素又は硫黄原子を含んでもよい。ただし、上記親水性基としての−NR1516における窒素原子は、カルボニル基、スルホニル基又はチオカルボニル基には接続しないものとする。Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン、又はアンモニウムイオンを表し、nはMの価数(1〜3の整数)を表す。ここで、アンモニウムイオンにおける置換基としては、総炭素数1〜50(より好ましくは1〜20)のアルキル基であることが好ましく、また、置換基の数としては、1〜3つが好ましく、特に3つが好ましく、該アンモニウムとしては、例えば、アンモニウム基、オクタデシルアンモニウム基、ジドデシルアンモニウム基、ジメチルオクタデシルアンモニウム基、ジメチルジオクタデシルアンモニウム基、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム基が好ましい。
金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン又はアルミニウムイオンなどが挙げられる。
本発明の親水性基が酸基の場合、−SO・M/n、−COO・M/n(Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン、アンモニウムイオンを表し、nはMの価数(1〜3の整数)を表す。)で表される基であることがより好ましい。特に好ましい親水性基は−SO・M/nである。
本発明の親水性基が塩基の場合、アミノ基が好ましい。特に好ましい親水性基は三級アミノ基である。
【0051】
また、上記一般式(1)で表されるアゾ化合物において、本発明の効果の点から、親水性基の数は1〜3個が好ましく、1〜2個が更に好ましく、1個であるのが最も好ましい。
【0052】
また、上記一般式(1)で表されるアゾ化合物において、本発明の効果の点から、親水性基の置換位置は、RからR又はAであるのが好ましく、R又はAであるのが更に好ましく、Rであるのが特に好ましい。
【0053】
本発明のアゾ化合物は下記一般式(2)で表されるのが好ましい。
【0054】
【化5】

【0055】
(一般式(2)中、G、RからR及びAは一般式(1)で定義したものと同じであり、R11は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又は複素環基を表し、R11、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R11、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR11、RからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR11、RからR、A又はGを介した4量体を表す。)
【0056】
11で表されるアミノ基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、置換基として好ましくは、脂肪族基、アリール基、複素環基等が挙げられる。R11で表される置換基を有してもよいアミノ基として、好ましくは無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜10のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜10のジアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜12のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよい複素環アミノ基であり、より好ましくは、無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜8のジアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜10のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよい複素環アミノ基であり、例えばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−フェニルアミノ、N−(2−ピリミジル)アミノ等が挙げられる。
【0057】
11で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R11の脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であって、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、(t)−ブトキシ、メトキシエトキシ、カルバモイルメトキシ等が挙げられる。
【0058】
11で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R11の脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であって、より好ましくは総炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、(s)−ブチル、メトキシエチル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0059】
11で表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R11のアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であって、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、4−メチルフェニル、3−クロルフェニル等が挙げられる。
【0060】
11で表される複素環基としては、飽和複素環であっても、不飽和複素環基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R11の複素環基として、好ましくは総炭素原子数2〜10の複素環基であって、より好ましくは総炭素原子数2〜8の窒素原子で結合した飽和複素環基であり、例えば、1−ピペリジル、4−モルホリニル、2−ピリミジル、4−ピリジル等が挙げられる。
【0061】
11として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、脂肪族オキシ基、窒素原子で結合した飽和複素環基の場合であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基の場合である。
【0062】
Aで表される芳香族5〜6員複素環としては、縮環していてもよく、単環であってもよく、縮環は炭素環であってもよく、縮環は炭素環であっても、複素環であっても、芳香環であっても、非芳香環であってもよく、好ましくは、ヘテロ原子が1〜3個含有の芳香族の5〜6員環である。Aで表される縮環していてもよい芳香族5〜6員複素環として、好ましくは、総炭素原子数2〜15であって、好ましくは2〜10であって、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環等及びそれらとベンゼン環誘導体、複素環誘導体との縮環複素環基である。
nは1又は2である場合が好ましい。
【0063】
一般式(2)で表される化合物は、Gが水素原子であり、かつ、Aが下記一般式(A−1)〜(A−32)のいずれかを表すことが更に好ましい。
【0064】
【化6】

【0065】
(一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0066】
Aで表される一般式(A−1)〜(A−32)について説明する。
【0067】
一般式(A−1)〜(A−32)中、隣接するR51とR52、R52とR53、R53とR54、R55とR56、R56とR57、R55とR58、R56とR58、R57とR58、R55とR59、R57とR59、R58とR59は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(1)のアゾ基との結合位置を表す。)
親水性基としては、一般式(1)の親水性基で説明したものと同じである。
【0068】
51〜R54で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R51〜R54の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基等である。
【0069】
本発明の効果の点でR51〜R54は水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0070】
55で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R55の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、複素環基等である。
【0071】
本発明の効果の点で、R55は脂肪族基、アリール基、複素環基である場合が好ましく、脂肪族基、アリール基、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基である場合はより好ましく、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基である場合は更に好ましい。
【0072】
本発明の効果の点で、R55として好ましい脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R55の脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル、メトキシエチル等が挙げられる。
本発明の効果の点で、R55として好ましい、窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基であり、飽和複素環であっても不飽和複素環であっても、縮環複素環であってもよく、好ましくは総炭素原子数2〜12のアゾ基との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜10の窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基である。例えば、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−ピリジル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−イミダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、2−トリアジニル等が挙げられ、これらの複素環基は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0073】
本発明の効果の点で、R55として好ましいアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。R55のアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
55〜R57、R59で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R55〜R57、R59の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。
【0074】
本発明の効果の点で、R55〜R57、R59は脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0075】
58で表わされる置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。本発明の効果の点で、R58として、好ましくは、複素環基、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基であり、σp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましい。上限としては1.0以下の電子求引性基である。
【0076】
σp値が0.2以上の電子求引性基であるR58の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、複素環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
また、本発明の効果の点で、R58として、下記(Y−1)〜(Y−13)である場合も好ましく、分子内水素結合構造をとり易い構造にするために6員環の下記(Y−1)〜(Y−6)のいずれかである場合はより好ましく、下記(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)、(Y−6)のいずれかである場合は更に好ましく、下記(Y−1)、又は(Y−4)である場合は特に好ましい。一般式(Y−1)〜(Y−13)中の*は、ピラゾール環のN原子との結合部位を表す。Y〜Y11は水素原子又は置換基を表す。(Y−13)におけるG11は5〜6員複素環を構成する事ができる非金属原子群を表し、G11で表される複素環は無置換であっても、置換基を有していてもよく、複素環は単環であっても縮環していてもよい。式(Y−1)〜(Y−13)は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
なお、(A−10)、(A−14)〜(A−16)、(A−25)、(A−26)においては、R55が(Y−1)〜(Y−13)である場合も好ましい。
【0077】
【化7】

【0078】
〜Y11で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Y〜Y11の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。Y〜Y11中隣接する2つの置換基は5〜6員環を形成していても良い。
本発明の効果の点でY〜Y11は水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
本発明の効果の点でAは、色相の点から5員環複素環である場合が好ましく、含窒素あるいは含硫黄5員複素環である場合がより好ましく、ヘテロ原子を2個以上含有する5員複素環である場合は更に好ましい。
【0079】
本発明の効果の点で、一般式(2)で表される化合物は、Aが(A−10)〜(A−32)のいずれかであることが好ましく、(A−16)であるのが特に好ましい。 上記一般式(2)で表されるアゾ化合物において、本発明の効果の点から、親水性基の置換位置は、R11、RからR又はAであるのが好ましく、R11又はAであるのが更に好ましく、R11であるのが特に好ましい。
なお、上記一般式(2)におけるGが水素原子であり、かつ、Aが上記一般式(A−1)〜(A−32)のいずれかを表す場合は、本発明の効果の点から、親水性基の置換位置は、R11、RからR、又はR51からR59であるのが好ましく、R11又はR55であるのが更に好ましく、R11であるのが特に好ましい。
【0080】
また、上記一般式(2)におけるAが上記一般式(A−10)〜(A−32)のいずれかを表す場合は、本発明の効果の点から、親水性基の置換位置は、R11、RからR、又はR55からR59であるのが好ましく、R11又はR55であるのが更に好ましく、R11であるのが特に好ましい。
また、上記一般式(2)におけるAが上記一般式(A−16)を表す場合は、本発明の効果の点から、親水性基の置換位置は、R11、RからR、R55、R58又はR59であるのが好ましく、R11又はR55であるのが更に好ましく、R11であるのが特に好ましい。
【0081】
また、本発明の効果の点から、親水性基は、芳香環又はアルキレン基(好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基、より好ましくは炭素数2若しくは3のアルキレン基)を経由して、上記一般式(1)で表されるアゾ化合物におけるナフトール環(ナフタレン環)に接続するのが好ましい。親水性基が芳香環を経由してナフトール環に接続する場合、親水性基又は親水性基を含む基と、ナフトール環又はナフトール環を含む基とは、上記芳香環に対して、互いにオルト位の関係で接続することが好ましい。
【0082】
一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物である場合が好ましい。
【0083】
【化8】

【0084】
一般式(3)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基を表し、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基、窒素原子で結合した複素環基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表す。Aは、前記一般式(A−1)〜(A-32)を表す。nは一般式(1)で定義したものと同義である。R21、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R21、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR21、RからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR21、RからR、A又はGを介した4量体を表す。
【0085】
で表される脂肪族基、アリール基、複素環基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。本発明の効果の点で、Gとして好ましくは水素原子である。
21で表されるアミノ基、脂肪族オキシ基、窒素原子で結合した飽和複素環基としては、一般式(2)のR11で説明したものと同じである。本発明の効果の点で、R21として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和複素環基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基の場合である。
からRで表される置換基として好ましくは、一般式(1)で表されるRからRで説明したものと同じである。
【0086】
からRで表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル等が挙げられる。
【0087】
からRで表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRのアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられる。
【0088】
からRで表される複素環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRの複素環基として、好ましくは総炭素原子数2〜16の複素環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜12の5〜6員環の複素環基であり、例えば1−ピロリジニル、4−モルホリニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0089】
からRで表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRの脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、i−プロピルオキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0090】
からRで表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、複素環基等である。RからRの置換基を有していてもよいカルバモイル基として、好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜12の複素環カルバモイル基であり、より好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜10の複素環カルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、4−ピリジンカルバモイル等が挙げられる。
【0091】
からRで表されるアシルアミノ基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、複素環であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRのアシルアミノ基として、好ましくは総炭素原子数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜8のアシルアミノ基であり、更に好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルカルボニルアミノ基であって、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、2−ピリジンカルボニルアミノ、プロパノイルアミノ等が挙げられる。
【0092】
からRで表されるスルホンアミド基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、複素環であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRのスルホンアミド基として、好ましくは総炭素原子数1〜12のスルホンアミド基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜8のスルホンアミド基であり、更に好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルスルホンアミド基であって、例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、2−ピリジンスルホンアミド等が挙げられる。
【0093】
からRで表されるカルバモイルアミノ基としては置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、複素環基等である。RからRの置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基として、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜12の複素環カルバモイルアミノ基であり、より好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10の複素環カルバモイルアミノ基であり、例えば、カルバモイルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、N,N−ジメチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、4−ピリジンカルバモイルアミノ等が挙げられる。
【0094】
からRで表される置換基を有していてもよいスルファモイル基として、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、複素環基等である。RからRの置換基を有していてもよいスルファモイル基として、好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜12の複素環スルファモイル基であり、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6〜11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜10の複素環スルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、4−ピリジンスルファモイル等が挙げられる。
【0095】
からRで表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRの脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、i−プロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、メトキシエトキシ等が挙げられる。
【0096】
からRで表される脂肪族チオ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。RからRの脂肪族チオ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルチオ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオ、カルバモイルメチルチオ、t−ブチルチオ等が挙げられる。
【0097】
からRで表されるハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子が挙げられる。
本発明の効果の点で、RからRは、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基である場合が好ましい。
【0098】
親水性基としては、一般式(1)の親水性基で説明したものと同じである。
【0099】
本発明の効果の点で、一般式(3)で表される顔料は、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和複素環基であって、RからRのうち4つ又は5つが水素原子であって、RからRのうち5つが水素原子である場合は、RからRが脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基であって、Aが、(A−10)〜(A−32)であって、nが1又は2である場合が好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和複素環基であってRからRのうち5つが水素原子であって、Aが、(A−10)〜(A−20)、(A−22)〜(A−26)であって、nが1又は2である場合がより好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、RからRのうち5つが水素原子であって、Aが、(A−10)、(A−14)〜(A−17)、(A−20)であって、nが1又は2である場合が更に好ましく、Gが水素原子であって、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、RからRのうち5つが水素原子であって、Aが(A−16)であってnが1又は2である場合が最も好ましい。
【0100】
本発明の効果の点で、一般式(1)で表されるアゾ化合物は、下記一般式(4)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0101】
以下、一般式(4)により表されるアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物について詳細に説明する。
【0102】
【化9】

【0103】
(一般式(4)中、R21、RからR、nは一般式(3)で、R55,R56は一般式(2)で定義したものと同じである。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。)
【0104】
Zで表されるハメットのσp値が0.2以上の置換基としては前述の一般式(2)のR58の説明で述べた基が挙げられる。
【0105】
一般式(4)で表される化合物のR21、RからR、R55、R56、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(2)又は(3)と同じである。
本発明の効果の点で、Zとしては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基が好ましく、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基がより好ましく、シアノ基である場合が最も好ましい。
【0106】
本発明の効果の点で、R55として好ましい、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基としては、置換基を有していてもよく、飽和環であっても不飽和環であっても、縮環していてもよく、好ましくは総炭素原子数2〜12の該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜10の該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基であり、例えば、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−ピリジル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−イミダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、2−トリアジニル等が挙げられ、これらの複素環基は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0107】
一般式(4)中、R55としては、前記(Y−1)〜(Y−13)である場合が好ましく、下記(Y−1)〜(Y−6)である場合はより好ましく、前記(Y−1)、(Y−4)、(Y−6)である場合は更に好ましい。
【0108】
本発明の効果の点で、一般式(4)で表される化合物は、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和複素環基であって、R55が、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員複素環基であって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基であって、nが1又は2である場合が好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、窒素原子で結合した飽和複素環基であって、RからRのうち5つが水素原子であって、R55が、(Y−1)〜(Y−13)であって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2である場合がより好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、RからRのうち5つが水素原子であって、R55が、(Y−1)〜(Y−6)であって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、RからRのうち5つが水素原子であって、R55が、(Y−1)、(Y−4)、(Y−6)であって、R56が水素原子であって、Zがシアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましい。
【0109】
本発明の効果の点で、一般式(1)〜(4)で表される化合物は、「総炭素数/アゾ基の数」が40以下であることが好ましく、30以下である場合はより好ましい。本発明の効果の点で、一般式(1)〜(4)で表される化合物は、「分子量/アゾ基の数」が700以下であることが好ましい。
【0110】
本発明は、一般式(1)〜(4)で表されるアゾ化合物の互変異性体もその範囲に含むものである。
一般式(1)〜(4)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、一般式(1)で表されるアゾ化合物には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ化合物の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0111】
【化10】

【0112】
一般式(1’)中、RからR、A、nは一般式(1)で定義したものと同じである。一般式(1’)中、G’は一般式(1)で定義したGに対応する基である。
【0113】
本発明において、特に好ましいアゾ化合物の一般式の例としては、下記一般式(5−1)又は一般式(5−2)で表されるアゾ化合物を挙げることができる。上記一般式(1)で表される顔料は、下記一般式一般式(5−1)又は一般式(5−2)で表されるアゾ化合物であることが好ましい。
【0114】
以下、一般式(5−1)又は一般式(5−2)により表されるアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物について詳細に説明する。
【0115】
【化11】

【0116】
(一般式(5−1)及び一般式(5−2)中、R11、RからR、及びnは一般式(2)で定義したものと同じである。Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Axは、X及び該炭素原子と共に芳香族5〜6員複素環基を表し、Bxは、該炭素原子と共に芳香族5〜6員複素環基を表し、それぞれ形成される複素環基は、一般式(2)のAで定義した基の中で該当するものを表す。Yxは該窒素原子及び炭素原子と共に一般式(2)のR55で定義した複素環基のうち該当するものを表す。R23は一般式(2)で規定したR51、R54、R58等の置換基の内、該当する置換基からカルボニル基を除いた置換基を表す。)
【0117】
上記各一般式で表されるアゾ化合物において多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ化合物は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。少なくとも1個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが特に好ましい。
【0118】
この構造が好ましい要因としては、一般式(5−1)又は一般式(5−2)で示すようにアゾ化合物構造に含有する複素環基を構成する窒素原子、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、あるいはアゾ化合物構造に含有するアゾ成分に置換するカルボニル基、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子及び酸素原子、及びアゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子が分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、顔料の母体骨格と相互作用しやすくなり、分散性、分散安定性及び耐光性等が向上することが期待できる。
【0119】
以下に前記一般式(1)〜(4)、(5−1)〜(5−2)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ化合物は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。なお、以下の化学式において、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはn−ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0120】
【化12】

【0121】
【化13】

【0122】
【化14】

【0123】
【化15】

【0124】
【化16】

【0125】
【化17】

【0126】
【化18】

【0127】
【化19】

【0128】
本発明の一般式(1)〜(4)、(5−1)〜(5−2)で表されるアゾ化合物は、化学構造式が一般式(1)〜(4)、(5−1)〜(5−2)又はその互変異性体であればよい。
【0129】
本発明において、前記一般式(1)〜(4)、(5−1)〜(5−2)で表されるアゾ化合物は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよい。
【0130】
次に本発明のアゾ化合物の製造方法の一例について説明する。例えば、上記一般式(2)で表されるアゾ化合物を製造する場合、下記一般式(6)で表される複素環アミンを酸性でジアゾニウム化し、下記一般式(7)で表される化合物と酸性状態でカップリング反応を行い、常法による後処理を行って本発明の一般式(8)で表されるアゾ化合物を製造することができる。一般式(6)に代えて一般式(2)のAに対応する複素環アミンを用い、同様の操作を行うことにより一般式(2)で表されるアゾ化合物を製造することができる。
【0131】
【化20】

【0132】
(式中、R55、R56、Zは、前記で定義したものと同義である。)
【0133】
【化21】

【0134】
(式中、R11、RからRは、前記一般式(2)で定義したものと同義である。)
以下に反応スキームを示す。
【0135】
【化22】

【0136】
(式中、R11、RからR、R55、R56、Z及びnは前記で定義したものと同義である。)
【0137】
上記一般式(6)及び(A−1)〜(A−32)のアミノ体に対応する複素環アミンは、市販品で入手することができるものもあるが、一般的には公知慣用の方法、例えば特許第4022271号公報、に記載の方法で製造することができる。上記一般式(7)で表される複素環カプラ−は、市販品で入手することもできるが、特開2008−13472号公報に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。上記反応スキームで表される複素環アミンのジアゾニウム化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(7)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
一般式(1)〜(4)、(5−1)〜(5−2)のnが2以上の場合の合成方法は、一般式(6)又は一般式(7)のR11、RからR、R55、R56等において、置換可能な2価、3価あるいは4価の置換基を導入した原料を合成し、前記スキームと同様に合成することができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出しているものもあるが、一般的には反応液にアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、本発明のアゾ化合物を得ることができる。
【0138】
[顔料組成物]
本発明の顔料組成物は、(A)有機顔料と、顔料誘導体としての(B)上記本発明のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物とを含有することを特徴とする。本発明のアゾ化合物は、様々な顔料に対し優れた分散性、分散安定性及び耐光性を付与することができる。
【0139】
(A)の有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられ、好ましくはジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ顔料等を挙げることができる。
【0140】
具体的には、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。 C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド246、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272等のレッド系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等のグリーン系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット23:19などが挙げられる。
【0141】
有機顔料としては、特に好ましくは、アゾ顔料(例えば、C.I.ピグメントレッド7、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、146、177、178、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、272、好ましくは、C.I.ピグメントレッド7、14、41、146、178、184、185、187、200、208、210、246)であり、特に好ましくはヘテリル基とナフトール基とがアゾ基を介して結合した顔料であり、最も好ましくは、顔料誘導体として使用される上記一般式(1)〜(4)で表されるアゾ化合物の親水性基を水素原子又は上述の置換基の項で述べた基で置き換えたアゾ顔料である。よって、このようなアゾ顔料の具体例としては、前掲の本発明のアゾ化合物の具体例における親水性基を水素原子又は上述の置換基の項で述べた基(より好ましくは水素原子)で置き換えた化合物を挙げることができる。また、このようなアゾ顔料は、本発明のアゾ化合物の上記した合成方法において、アゾ化合物の親水性基に対応する親水性基を有する原料の代わりに、当該親水性基が水素原子又は上述の置換基の項で述べた基で置き換えられた原料を使用することにより合成することができる。
【0142】
(A)有機顔料に対する、(B)本発明のアゾ化合物の割合は、例えば0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%である。この範囲によれば、本発明における効果が更に高まる。
【0143】
ところで、シナジストは、親水性基(例えば、酸性基や塩基性基などのイオン性基)を有するとともに、(A)有機顔料に対してπ―π相互作用で強固に吸着できることが好ましい。これにより、シナジストが吸着された有機顔料は、その表面が親水性基を有することになり、静電効果により分散性が向上する。また、シナジストが吸着された有機顔料の親水性基(特にイオン性基)は、分散剤の親水性基(特にイオン性基)とより相互作用を起こす。これにより、分散剤の効果をより発現することができる。
【0144】
以上の観点から、シナジストと(A)有機顔料とを強固に吸着させるためには、(A)有機顔料間のπ―π相互作用を強くする母体骨格を有するシナジストを用いることが重要である。本発明のシナジストとしてのアゾ化合物は、分子内水素結合により平面構造を有しており、かつ電子豊富なナフトール骨格と、電子不足な芳香族5〜6員複素環骨格(例えば、ピラゾール環骨格、及び、ピリミジン環骨格)という電子状態の全く異なるπ平面を有するため、様々な電子状態の(A)有機顔料と、分子間で、強く相互作用すると推測される。
【0145】
このように、本発明のシナジストとしてのアゾ化合物は、ナフトール骨格と、芳香族5〜6員複素環骨格とを有することにより、様々な顔料に対して強く吸着できるので、シナジストが強固に吸着された有機顔料がより広範に得られる。このようにして得られた有機顔料は、上述したように、表面の親水性基が、他の有機顔料の表面上の親水性基と静電反発を起こす。あるいは、このような有機顔料は、分散剤の親水性基(特にイオン性基)とより確実に相互作用を起こす。これらの作用によって、有機顔料同士が凝集することを抑制できるので、顔料に優れた分散性が付与されるものと考えられる。
また、上記と同様の作用によって、時間が経過しても凝集が抑制された状態が維持されるため、顔料に優れた分散安定性が付与されるものと考えらえる。
更に、顔料は光を受けることによって、分散状態の顔料が結晶化(凝集化)しやすく、これに伴い、色相が所望の色から変化するが、上記のように、本発明のアゾ化合物を使用することによって、様々な顔料に対して凝集を抑制することができるので、様々な顔料に対して、優れた耐光性を付与することができる。
【0146】
本発明の顔料組成物としては、水系あるいは非水系の顔料分散物を挙げることができるが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の顔料組成物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
【0147】
前記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0148】
更に、本発明の顔料組成物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂、水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0149】
本発明における水系顔料分散物が水性樹脂を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0150】
更に、顔料の分散及び画像の品質を向上させるため、界面活性剤(分散剤)を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0151】
本発明における顔料組成物が界面活性剤を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0152】
アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0153】
ノニオン界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0154】
本発明の非水系顔料組成物は、前記有機顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0155】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0156】
本発明において、(A)有機顔料の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0157】
より好ましい(A)有機顔料の体積平均粒子径は、10nm以上250nm以下であり、更に好ましくは20nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が10nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0158】
本発明の顔料組成物に含まれる(A)有機顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%に満たないと、インクとして顔料分散物を単独で用いるときに十分な画像濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0159】
本発明の顔料組成物は、上記の(A)有機顔料、(B)本発明のアゾ化合物及び水系又は非水系の媒体を、分散装置を用いて分散することで得られる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0160】
本発明のアゾ顔料の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
【0161】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【0162】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、上記した本発明の顔料組成物を含有する着色組成物を意味する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明の顔料組成物を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0163】
[インクジェット記録用インク]
次に、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した顔料組成物を含む。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料組成物をそのまま用いてもよい。
【0164】
本発明のインク中の顔料組成物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0165】
本発明のインク100質量部中に、本発明の顔料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0166】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0167】
更に、本発明におけるインクは、有機顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.19、が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0168】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0169】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0170】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0171】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0172】
本発明のインクジェット記録用インクの好ましい物性は以下の通りである。
インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0173】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s−1として行った。
【0174】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0175】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0176】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0177】
[カラーフィルター用着色組成物]
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、上記した本発明の顔料組成物を含有するが、更に重合性化合物及び溶剤を含むことが好ましい。
また、本発明のカラーフィルター用着色組成物を製造する際、上記のようにして得られたアゾ顔料はそのまま配合しても、溶剤中に分散した顔料分散物を配合してもよい。アゾ顔料は顔料分散物とすることで、色彩的特性、耐久性及び分散安定性、耐光性や耐候性が優れたものとなり
好ましい。
【0178】
本発明のカラーフィルター用着色組成物における有機顔料の使用量は、重合性化合物1質量部に対し、0.01〜2質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのが特に好ましい。
【0179】
〔重合性化合物〕
重合性化合物は、カラーフィルターの製造プロセスを考慮して適宜選択すれば良く、重合性化合物としては、感光性化合物及び/又は熱硬化性化合物などが挙げられるが、感光性化合物が特に好ましい。
【0180】
感光性化合物としては、光重合性樹脂、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーの少なくとも1種以上から選ばれ、エチレン性不飽和結合を有するものであることが好ましい。カラーフィルター用着色組成物には硬化した状態で樹脂となるものを含めば良く、未硬化の状態では樹脂化していない成分のみが含まれる場合を含む。
光重合性化合物、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。また、アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体等のビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル等の側鎖にエチレン性二重結合を有する樹脂類も挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。重合性化合物の配合量はカラーフィルター用組成物中の全固形分中20〜95質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲がよい。
【0181】
重合性化合物の配合率は、カラーフィルター用組成物中の全固形分中40〜95質量%であることが好ましく、更には50〜90質量%であることが好ましい。組成物中には、必要に応じて他の樹脂類等を配合することができるが、この場合には、他の樹脂類を合わせた合計量が上記範囲に入ることが望ましい。なお、全固形分とは乾燥、硬化後に固形分として残る成分をいい、溶剤を含まず、単量体を含む。
【0182】
〔光重合開始剤〕
重合性化合物として感光性化合物を用いる場合には、感光性化合物の単量体及び/又はオリゴマーと共に光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選択される1種以上が挙げられる。これらの光重合開始剤とともに、更に公知の光増感剤を使用してもよい。
【0183】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
なお、本明細書及び請求の範囲において、「感光性樹脂」、及び「熱硬化性樹脂」は、各々硬化後の樹脂のみではなく、重合性の単量体及び/又はオリゴマーも含むものとする。
【0184】
上記の感光性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とともに、他の重合性化合物として、酸性基を有するバインダー樹脂、及び、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など一般的にインクに使用される樹脂を使用してもよい。
【0185】
〔溶剤〕
顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、そのカラーフィルターの製造方法によって異なり、例えばフォトリソグラフィー法では、非水系が好ましく、インクジェット法では、どちらでもかまわない。
本発明の着色組成物に用いる溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの脂肪酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオールなどのグリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3―ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの含窒素極性有機溶媒;水などが挙げられる。
【0186】
これらの溶剤のうち水溶性であるものは、水と混合して水性媒体として用いてもよい。また、水を除く上記の溶剤から選ばれる二種以上を混合して油性媒体として用いてもよい。
【0187】
本発明におけるカラーフィルター用着色組成物には、更に、界面活性剤、シリコーン系添加剤、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤から選択される1種以上の分散剤を含むことが好ましい。これらの分散剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0188】
以下に前記の分散剤の具体例について説明する。
界面活性剤は界面活性作用を有するものであれば特に限定されないが、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、又は両性などの界面活性剤を挙げることができ、その具体例としては、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、及び脂肪族モノカルボン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、及び四級アミン塩などの陽イオン性界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルベタインなどの両性界面活性剤;陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性のいずれであってもよい高分子系界面活性剤などが挙げられる。
【0189】
シリコーン系添加剤の具体例としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリオルガノシロキサンポリエーテルコポリマー、ポリフルオロシロキサン、オルガノシランなどが挙げられる。これらのシリコーン系添加剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0190】
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、及びn−オクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0191】
チタン系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、及びジブトキシビストリエタノールアミンチタネートなどが挙げられる。
【0192】
上記の分散剤の使用量は、使用する分散剤の種類にもよるが、有機顔料100質量部に対して、0.1〜100質量部用いるのが好ましく、0.5〜80質量部用いるのが特に好ましい。
【0193】
分散剤の使用方法は特に制限されず、公知のフォトリソグラフィー法用の着色組成物の調製方法に従えばよい。
【0194】
本発明はまた、上記のカラーフィルター用着色組成物を用いて得られる、カラーフィルターを提供する。該カラーフィルターは、高いコントラスト及び良好な光透過性を示す。具体的には、650nmの波長において、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の光透過性を示す。
【0195】
本発明のカラーフィルターを製造するには、公知のいずれの方法を用いてもよく、好適にはフォトリソグラフィー法及びインクジェット法が挙げられる。以下、フォトリソグラフィー法及びインクジェット法について、詳細に説明する。
【0196】
1)フォトリソグラフィー法
フォトリソグラフィー法によりカラーフィルターを形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物として、感光性樹脂を用いる。感光性樹脂は、単量体及び/又はオリゴマーとして光重合開始剤と共に着色組成物中に配合され、光照射により硬化し透明基板上に被膜を形成する。
【0197】
感光性樹脂としては、前述の分子中に一つ以上のエチレン性二重結合を有する重合性単量体の重合体又は共重合体が好適に用いられる。
【0198】
これらの感光性樹脂(重合性単量体)としては、特にアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが好ましく、具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。
【0199】
フォトリソグラフィー法を用いる場合、本発明のカラーフィルター用着色組成物に、前述の感光性樹脂に加え、酸性基を有するバインダー樹脂を用いる。酸性基を有するバインダー樹脂としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などを有する樹脂が挙げられ、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するバインダー樹脂が好ましい。
【0200】
上記の酸性基を有するバインダー樹脂としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン及びアクリルアミドなどから選ばれるエチレン性二重結合を有する単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、p−スチレンカルボン酸、p−スチレンスルホン酸、p−ヒドロキシスチレン及び無水マレイン酸などから選択される、酸性基を有するエチレン性二重結合を有する単量体との共重合体が好ましく使用される。
【0201】
酸性基を有するバインダー樹脂は、感光性樹脂(重合性単量体)1質量部に対して、0.5〜4質量部用いるのが好ましく、1〜3質量部用いるのが特に好ましい。
【0202】
フォトリソグラフィー法用の着色組成物に用いる溶剤としては、脂肪酸エステル類、ケトン類、芳香族類、アルコール類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、エーテル類、及び含窒素極性有機溶媒から選択される1種以上の油性媒体が挙げられる。
【0203】
これらの溶剤の使用量は、着色組成物中の溶剤以外の成分の総質量に対して3〜30倍質量であるのが好ましく、4〜15倍質量であるのが特に好ましい。
【0204】
また、本発明におけるフォトリソグラフィー法用の着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0205】
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、上記した本発明の顔料組成物、重合性化合物、溶剤、及びその他各種添加剤を、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、二本ロールミル、三本ロールミル、ホモジナイザー、ニーダー、振とう分散機などの機器を用い、均一に混合、分散させる工程、及び前記溶剤等を用いて粘度調整する工程を含む方法により調製することが出来る。
【0206】
本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いてカラーフィルターをディスプレー基板上に形成させる方法は、公知のフォトリソグラフィー法を用いれば良い。例えば、本発明の着色組成物を印刷法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法などの公知の方法によりディスプレー基板上に均一に塗布する工程、加熱によりインク中の溶剤を除去する工程、ディスプレー基板上のカラーフィルターパターンを高圧水銀ランプなどを用い露光する工程、アルカリ現像工程、洗浄工程、及び、ベーキング工程を含む方法によりカラーフィルターが得られる。
【0207】
2)インクジェット法
カラーフィルターをインクジェット法を用いて形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物としては、インクジェット方式用インクに従来用いられているものであれば特に限定されず、いずれを用いてもよい。感光性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂の単量体が好適に用いられる。
【0208】
これらの感光性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられ、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂が好適に使用される。アクリル樹脂及びメタクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、アミノアルキルメタクリレートなどから選ばれる光重合性の単量体と、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選ばれる光重合開始剤を組み合わせて用いたものが好ましい。また、上記の光重合性単量体の他に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどの親水性基を有する光重合性単量体を加えてもよい。
【0209】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
【0210】
インクジェット法を用いる場合、着色組成物に用いる溶剤は、油性媒体でも水性媒体でもよいが、水性媒体がより好適に使用される。水性媒体は水又は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が用いられるが、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。また、脱イオン処理されたものを使用することが望ましい。
【0211】
上記の着色組成物において使用する油性媒体は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法に用いる着色組成物用の溶剤として挙げたものなどを使用することが出来る。
【0212】
水性媒体中に使用する溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルカノールアミン類、及び含窒素極性有機溶媒などから選択され、水溶性を有するものが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0213】
これらの溶剤の使用量は特に限定されないが、着色組成物の粘度が室温にて20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下となるように使用量を適宜調節するのがよい。
【0214】
本発明の着色組成物は、フォトリソグラフィー法用の着色組成物と同様に成分を分散、混合させる工程を含む方法により調製することが出来る。分散時には必要に応じ、フォトリソグラフィー法の場合と同様に分散剤を配合してもよい。
【0215】
また、本発明における着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤などの公知の種々の添加剤を含めてもよい。
【0216】
上記のように得られた着色組成物を用いたカラーフィルターの形成方法は、公知のインクジェット方式によるカラーフィルターの形成方法であれば特に限定されない。例えば、ディスプレー基板上に液滴状で所定のカラーフィルターパターンを形成させる工程、これを乾燥させる工程、及び熱処理あるいは光照射あるいはこれらの双方を行って基板上のカラーフィルターパターンを硬化、皮膜化させる工程を含む方法によりカラーフィルターを形成することができる。
【0217】
以上、フォトリソグラフィー法とインクジェット法について説明したが、本発明のカラーフィルターは他の方法によっ・BR>ト得られたものでもよい。
【0218】
上記以外のカラーフィルター形成方法(例えばオフセット印刷法などの種々の印刷法)を用いる場合であっても、着色組成物が前述の重合性化合物及び溶剤を含み、一般式(1)で表されるアゾ化合物を着色剤に使用するものであれば、カラーフィルター用着色組成物、得られたカラーフィルターの何れも本発明の範囲に含まれる。
例えば、重合性化合物、溶剤、添加剤などの成分、及びカラーフィルター形成時の処方については、慣用例に従って選択すればよく、上述のフォトリソグラフィー法及びインクジェット法の説明に挙げたものに限定されない。
【0219】
以上のようにして得られる、本発明のカラーフィルターは、公知の方法によりG(緑)、B(青)のカラーフィルターパターンとともに画素を形成する。かかるフィルターは、透明性が非常に高く、分光特性にすぐれ、消偏光作用の小さい、鮮明な画像を表示可能な液晶ディスプレーを与えることができる。
【0220】
また、カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の顔料組成物をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号や特開平6−35182号に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、本発明の顔料組成物及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げる事ができる。又、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルターを得ることができる。カラーフィルターの場合も本発明の顔料組成物における有機顔料の使用量の制限はないが0.1〜50質量%が好ましい。
【0221】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【実施例】
【0222】
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、部とあるのは質量部を意味する。
【0223】
〔合成例1〕
具体的化合物例D−1の合成
具体的化合物例D−1の合成は、以下のルートで合成した。
【0224】
【化23】

【0225】
D−1の合成
1.0gの化合物(1)を10mlのリン酸に加えて溶かした。この溶液を氷冷して5〜10℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(0)1.30gにジメチルアセトアミド25mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を5〜10℃で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に3時間攪拌した。反応液にアセトニトリル50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別し、メタノール30mlでかけ洗いをした。結晶にアセトンを50ml加え、50℃過熱攪拌を30分間行った。室温で30分間攪拌し、析出している結晶をろ過し、アセトン30mlでかけ洗いをした。その後、乾燥せずに水100mlに加え、1N塩酸水溶液を30ml加え、析出している結晶を濾過し、水20ml及びメタノール20mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−1を1.4g得た(収率57%、λmax:505nm、ε:1.91×10(CHCl))。
【0226】
〔合成例2〕
具体的化合物例D−81の合成
具体的化合物例D−81の合成は、以下のルートで合成した。
【0227】
【化24】

【0228】
D−81の合成
1.0gの化合物(2)を10mlのリン酸に加えて溶かした。この溶液を氷冷して5〜10℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(3)1.30gにジメチルアセトアミド25mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を5〜10℃で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に3時間攪拌した。反応液にアセトニトリル50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別し、メタノール30mlでかけ洗いをした。結晶にアセトンを50ml加え、50℃過熱攪拌を30分間行った。室温で30分間攪拌し、析出している結晶をろ過し、アセトン30mlでかけ洗いをした。その後、乾燥せずに水100mlに加え、1N塩酸水溶液を30ml加え、析出している結晶を濾過し、水20ml及びメタノール20mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−81を1.2g得た(収率59%、λmax:506nm、ε:1.91×10(CHCl))。図1に化合物D−81の赤外吸収チャートを示す。
【0229】
〔合成例3〕
具体的化合物例D−85の合成
具体的化合物例D−85の合成は、以下のルートで合成した。
【0230】
【化25】

【0231】
D−85の合成
1.0gの化合物(4)を10mlのリン酸に加えて30℃に加温し溶かした。この溶液を氷冷して0〜5℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1.5時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、化合物(5)1.4gをジメチルアセトアミド5mlに溶かした溶液に5〜10℃に保ちながら滴下し、その後5〜10℃に保ちながら1時間攪拌した。その後、氷浴をはずし、更に0.5時間攪拌した。反応液にメタノール50mlを加え、析出した結晶を濾別した。結晶にメタノール100mlを加え、80℃で3時間攪拌し、析出している結晶を濾過し、メタノール50mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−85を2.04g得た(収率71%、λmax:506nm、ε:1.78×10(CHCl))。
【0232】
〔合成例4〕
具体的化合物例D−83の合成
具体的化合物例D−83の合成は、以下のルートで合成した。
【0233】
【化26】

【0234】
D−83の合成
1.0gの化合物(6)を10mlのリン酸に加えて30℃に加温し溶かした。この溶液を氷冷して0〜5℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1.5時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、化合物(7)1.4gをジメチルアセトアミド5mlに溶かした溶液に5〜10℃に保ちながら滴下し、その後5〜10℃に保ちながら1時間攪拌した。その後、氷浴をはずし、更に0.5時間攪拌した。反応液にメタノール50mlを加え、室温で40分間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに200ml、飽和炭酸水素ナトリウムを0.1ml加えて中和した。結晶にジメチルアセトアミド100mlを加え、80℃で3時間、室温で1時間攪拌し、析出している結晶を濾過し、アセトニトリル50mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−83を1.89g得た(収率82%、λmax:501nm、ε:1.67×10(CHCl))。図2に化合物D−83の赤外吸収チャートを示す。
【0235】
〔合成例5〕
具体的化合物例D−84の合成
具体的化合物例D−84の合成は、以下のルートで合成した。
【0236】
【化27】

【0237】
D−84の合成
1.0gの化合物(8)を10mlのリン酸に加えて30℃に加温し溶かした。この溶液を氷冷して0〜5℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1.5時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、化合物(9)1.4gをジメチルアセトアミド5mlに溶かした溶液に5〜10℃に保ちながら滴下し、その後5〜10℃に保ちながら1時間攪拌した。その後、氷浴をはずし、更に0.5時間攪拌した。反応液にメタノール50mlを加え、室温で40分間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに200ml、飽和炭酸水素ナトリウムを0.1ml加えて中和した。結晶にジメチルアセトアミド100mlを加え、80℃で3時間、室温で1時間攪拌し、析出している結晶を濾過し、アセトニトリル50mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、本発明の化合物D−84を1.77g得た(収率81%、λmax:500nm、ε:1.89×10(CHCl))。図3に化合物D−84の赤外吸収チャートを示す。
【0238】
〔合成例6〕
具体的化合物例D−1と同様にして、D−82を合成した。合成した化合物の赤外吸収チャートを図4に示す。
【0239】
〔合成例7〕
具体的化合物例D−1と同様にして、D−91を合成した。合成した化合物の赤外吸収チャートを図5に示す。
【0240】
〔合成例8〕
具体的化合物例P−1の合成
具体的化合物例P−1の合成は、以下のルートで合成した。
【0241】
【化28】

【0242】
P−1の合成
1.0gの化合物(10)を10mlのリン酸に加えて30℃に加温し溶かした。この溶液を氷冷して0〜5℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1.5時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、化合物(11)1.4gをジメチルアセトアミド5mlに溶かした溶液に5〜10℃に保ちながら滴下し、その後5〜10℃に保ちながら1時間攪拌した。その後、氷浴をはずし、更に0.5時間攪拌した。反応液にメタノール50mlを加え、室温で40分間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール50mlでかけ洗いをした。結晶を乾燥せずに200ml、飽和炭酸水素ナトリウムを0.1ml加えて中和した。結晶にジメチルアセトアミド100mlを加え、80度で3時間、室温で1時間攪拌し、析出している結晶を濾過し、アセトニトリル50mlでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥し、化合物P−1を1.99g得た(収率83%、λmax:504nm、ε:1.59×10(CHCl))。図6に化合物P−1の赤外吸収チャートを示す。
【0243】
〔比較化合物1〕
特開2008−202021号公報に記載の酸基導入色素A(ジアゾ成分:2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸、カップラー成分:2−ヒドロキシ−3−フェニルカルボモイルナフタレン)(以下の化学式で表される色素)を比較化合物1とした。
【0244】
【化29】

【0245】
〔比較化合物2〕
特開平5−117541に記載の製造例4の顔料誘導体(以下の化学式で表される顔料誘導体)を比較化合物2とした。
【0246】
【化30】

【0247】
〔実施例1〕
Pigment Red 254(A)を2.5部、合成例1で合成した顔料誘導体D−1(B)を0.25部、臭化セチルトリメチルアンモニウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、実施例1の赤色の顔料分散物を得た。
【0248】
〔実施例2〜8、13〜20、比較例1〜8〕
実施例1において、顔料分散物の調製に使用した(A)有機顔料、(B)顔料誘導体を下記表1に示すようにそれぞれ代えたこと以外、実施例1と同様にして、実施例2〜8、13〜20、及び、比較例1〜8の顔料分散物を調製した。表1に記載の顔料誘導体に関し、上記合成例に記載の無いものについても、上記合成例に準じて合成した。また、表1において、P.R.254は、Pigment Red 254(ジケトピロロピロール系赤色顔料)を示し、P.R.177は、Pigment Red 177(アントラキノン系顔料)を示し、P.R.122は、Pigment Red 122(キナクリドン系顔料)を示す。
【0249】
〔実施例9〕
Pigment Red 254(A)を2.5部、顔料誘導体D−49(B)を0.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、実施例9の赤色の顔料分散物を得た。D−49は上記合成例に準じて合成した。
【0250】
〔実施例10〜12、比較例9〜12〕
実施例9において、顔料分散物の調製に使用した(A)有機顔料、(B)顔料誘導体を下記表1に示すようにそれぞれ代えたこと以外、実施例9と同様にして、実施例10〜12、及び、比較例9〜12の顔料分散物を調製した。
【0251】
【表1】

【0252】
(評価)
<分散性(平均粒子径)>
上記で得られた各顔料分散物を動的光散乱粒径測定装置(日機装(株)マイクロトラックUPA150)を用いて、常法により体積平均粒子径を測定した。顔料分散物を作製して室温で2時間後に測定した体積平均粒子径が、50nm以下のものを○、50nmより大きく100nm以下のものを△、100nmより大きいものを×とした。
【0253】
<分散安定性>
上記で得られた各顔料分散物の70℃で2日間保存後の体積平均粒子径を室温で2時間後の体積平均粒子径で割った値が1.5以下のものを○、1.5より大きく5以下のものを△、5より大きいものを×とした。
【0254】
<耐光性>
上記で得られた各顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてセイコーエプソン(株)社製フォトマット紙<顔料専用>に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、「着色力(OD:OpticalDensity)」が1.0の塗布物を、フェードメーターを用いてキセノン光(170000lux.;325nm以下カットフィルター存在下)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を、反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]として評価した。
色素残存率が80%より大きいとき、○
色素残存率が60%より大きく80%以下のとき、△
色素残存率が60以下のとき、×
とした。
【0255】
評価結果を表2に示す。
【0256】
【表2】

【0257】
表2に示すように、顔料誘導体として本発明のアゾ化合物が用いられた実施例1〜20の顔料分散物は、分散性が優れており、また、分散安定性及び耐光性が高かった。すなわち、本発明のアゾ化合物を使用することによって、様々な顔料に対して、優れた分散性、分散安定性及び耐光性を付与できることが確認された。
一方、本発明の顔料誘導体を用いなかった比較例1〜12の顔料分散物は、粒子の大きさも充分に小さくなく、また、分散安定性も低かった。このように、比較例1〜12の顔料分散物では、様々な顔料に対して、優れた分散性、分散安定性及び耐光性を付与できないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【化1】

(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、複素環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、又はスルホニル基を表し、RからRはそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員複素環基を表し、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はRからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はRからR、A又はGを介した4量体を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアゾ化合物が、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【化2】

(一般式(2)中、G、RからR及びAは一般式(1)で定義したものと同じであり、R11は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又は複素環基を表し、R11、RからR及びAの少なくとも1つは親水性基を含む。nは1〜4の整数を表す。n=2の場合は、R11、RからR、A又はGを介した2量体を表す。n=3の場合はR11、RからR、A又はGを介した3量体を表す。n=4の場合はR11、RからR、A又はGを介した4量体を表す。)
【請求項3】
前記一般式(2)におけるGが水素原子であり、かつ、Aが下記一般式(A−1)〜(A−32)のいずれかを表すことを特徴とする請求項2に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【化3】

(一般式(A−1)〜(A−32)中、R51〜R59は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【請求項4】
前記一般式(2)におけるAが前記一般式(A−10)〜(A−32)のいずれかを表すことを特徴とする請求項3に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【請求項5】
前記一般式(2)におけるAが前記一般式(A−16)であることを特徴とする請求項4に記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【請求項6】
前記親水性基が−SO・M/n、−COO・M/n(Mは水素イオン、1〜3価の金属イオン、又はアンモニウムイオンを表し、nはMの価数(1〜3の整数)を表す)で表される置換基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【請求項7】
前記親水性基がアミノ基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物。
【請求項8】
(A)有機顔料と、(B)請求項1〜7のいずれかに記載のアゾ化合物、その互変異性体、それらの塩又は水和物とを含有することを特徴とする顔料組成物。
【請求項9】
前記有機顔料がジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料及びアゾ顔料から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の顔料組成物。
【請求項10】
前記有機顔料がアゾ顔料であることを特徴とする請求項9に記載の顔料組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の顔料組成物を含むことを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の顔料組成物を含むことを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
【請求項13】
請求項12に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−99060(P2011−99060A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255443(P2009−255443)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】