説明

アゾ顔料の製造方法、顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルター

【課題】液晶表示装置等のカラーフィルターに用いることによりコントラスト、及び、液晶表示装置の電圧保持率がいずれも高いものとなる、アゾ顔料の製造方法、顔料分散物、着色組成物及びカラーフィルター用着色組成物、液晶表示装置等に用いることによりコントラスト及び電圧保持率がいずれも高いものとなるカラーフィルター、及び該顔料分散物、着色組成物を用いて得られる、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れるインクジェット記録用インクを提供する。
【解決手段】特定の構造のアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物の製造方法であって、SP値14以上34以下の親水溶媒を70質量%以上100質量%以下含む溶媒で加熱洗浄する工程を含むことを特徴とし、該製造方法で得られたアゾ顔料を用いて、カラーフィルター等とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアゾ顔料の製造方法、該製造方法で得られたアゾ顔料を含む顔料分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用着色組成物、及びカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。
特に、良好な色相を有し、光、湿熱及び環境中の活性ガス、中でも着色力が高く、光に対して堅牢な顔料が強く望まれている。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
アゾ顔料は色彩的特性である色相及び着色力に優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料などに広く使用されている。これらのうち、最も典型的に使用されているアゾ顔料は、イエロージアリーリド顔料、レッドナフトールアゾ顔料である。ジアリーリド顔料としては例えば、C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同17などが挙げられる。ナフトールアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・レッド208、同242などが挙げられる。しかし、これらの顔料は堅牢性、とりわけ耐光性が非常に劣るため、印字物が光に曝されることによって顔料が分解して退色してしまい、印字物の長期間の保存に適さない。
【0006】
特許文献1〜2には、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れる特定構造のヘテリルアゾ顔料、該アゾ顔料分散物及び着色組成物が開示されている。
該特許文献に記載されている該アゾ顔料、該アゾ顔料分散物及び着色組成物を液晶表示装置等のカラーフィルターに用いるとコントラストの高いものが得られるが、該液晶表示装置の電圧保持率が低下することがあるという問題があった。
【0007】
なお、特許文献3には、特定構造のビスアゾ顔料を製造する際にジメチルアセトアミド(DMAC)/水〔=1/1〕で顔料を加熱洗浄する工程を含むことが記載され、特許文献4には、特定構造のインクジェット用アゾ顔料製造する際に室温でメタノール抽出・洗浄する工程を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−47750号公報
【特許文献2】特開2010−43255号公報
【特許文献3】特開2009−235370号公報
【特許文献4】特開2004−123866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液晶表示装置等のカラーフィルターに用いることによりコントラスト、及び、液晶表示装置の電圧保持率がいずれも高いものとなる、アゾ顔料の製造方法、顔料分散物、着色組成物及びカラーフィルター用着色組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、液晶表示装置等に用いることによりコントラスト及び電圧保持率がいずれも高いものとなる、カラーフィルターを提供することにある。
更に本発明の別の目的は、上記顔料分散物、着色組成物を用いて得られる、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れるインクジェット記録用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定構造のアゾ顔料の製造に際し、SP値14以上34以下の親水溶媒を70質量%以上100質量%以下含む溶媒で加熱洗浄する工程を加えたことにより、得られた顔料分散物を用いてカラーフィルターを作成し液晶表示装置に適用した場合、該液晶表示装置の電圧保持率の低下がないことを見出し、本発明を成すに至った。
以下に具体的手段を以下に示す。
【0011】
〔1〕
下記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物の製造方法であって、SP値14以上34以下の親水溶媒を70質量%以上100質量%以下含む溶媒で加熱洗浄する工程を含むことを特徴とするアゾ顔料の製造方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、Rは、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R〜Rは各々独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRは互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R〜R、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0014】
〔2〕
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料の製造方法。
【0015】
【化2】

【0016】
(一般式(2)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基を表し、R22〜R26は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R24及びR25は互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R21〜R26、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0017】
【化3】

【0018】
(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0019】
〔3〕
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料の製造方法。
【0020】
【化4】

【0021】
(一般式(3)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R31は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R32〜R36は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R34及びR35は互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R31〜R36、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0022】
【化5】

【0023】
(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(3)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0024】
〔4〕
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料の製造方法。
【0025】
【化6】

【0026】
(一般式(4)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R41は、−C(=O)NR4445、−NR46C(=O)−R47、−C(=O)OR48又は−OR48を表す。R43は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表す。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。mは0〜5の整数を表す。mが複数の場合はR41は同一であっても異なっていても良い。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R41、R43、AまたはGを介した2〜4量体を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。R45は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基又は−N(R49)(R410)を表す。R46は水素原子又はアルキル基を表す。R47はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシ基、又は−N(R49)(R410)を表す。R48は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基又はアシル基を表す。R49は水素原子、又はアルキル基を表し、R410は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R44とR45、R49とR410は互いに結合し、5〜6員環を形成していても良い。)
【0027】
【化7】

【0028】
(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(4)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0029】
〔5〕
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料の製造方法。
【0030】
【化8】

【0031】
(一般式(5)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、R51は、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R52は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。m5は0〜7の整数を表し、m5が複数の場合、R52は同一でも異なっていても良い。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R51、R52、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0032】
〔6〕
前記親水溶媒が、水、メタノールから選択される溶媒であることを特徴とする請求項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のアゾ顔料の製造方法。
〔7〕
前記親水溶媒で1〜3回加熱洗浄することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のアゾ顔料の製造方法。
〔8〕
〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法で得られたアゾ顔料又はその互変異性体を含有することを特徴とする顔料分散物。
〔9〕
〔8〕に記載の顔料分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
〔10〕
〔9〕に記載の着色組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
〔11〕
〔9〕に記載の着色組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
〔12〕
〔11〕に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【発明の効果】
【0033】
本発明のアゾ顔料の製造方法は、高い着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐熱性等の耐久性にも優れ、液晶表示装置等のカラーフィルターに用いることによりコントラスト、及び、液晶表示装置の電圧保持率がいずれも高いものとなる、アゾ顔料、顔料分散物を製造することができる。
本発明の製造方法により製造したアゾ顔料、顔料分散物は、高い着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ耐光性、耐熱性等の耐久性にも優れ、液晶表示装置等に用いることによりコントラスト、及び、液晶表示装置の電圧保持率がいずれも高いものとなる。
また、本発明によれば種々の用途におけるカラー液晶ディスプレー及びカメラモジュールに要求される高コントラスト、優れた透明性を達成するカラーフィルターが得られる分散性、分散物経時安定性、耐熱性及び耐光性が良好なカラーフィルター用着色組成物、カラーフィルター、及びその調製方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】合成例1〜15に従って合成されたアゾ顔料D−8の赤外吸収スペクトルの図である。
【図2】合成例16に従って合成されたアゾ顔料D−1の赤外吸収スペクトルの図である。
【図3】合成例17に従って合成されたアゾ顔料D−2の赤外吸収スペクトルの図である。
【図4】合成例21〜23に従って合成されたアゾ顔料D3−1の赤外吸収スペクトルの図である。
【図5】合成例31〜33に従って合成されたアゾ顔料D4−1の赤外吸収スペクトルの図である。
【図6】合成例34に従って合成されたアゾ顔料D4−8の赤外吸収スペクトルの図である。
【図7】合成例41に従って合成されたアゾ顔料D5−1の赤外吸収スペクトルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のアゾ顔料の製造方法は、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物の製造方法であって、SP値14以上34以下の親水溶媒を70質量%以上100質量%以下含む溶媒で加熱洗浄する工程を含むことを特徴とするものである。
【0036】
【化9】

【0037】
(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、Rは、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルバモイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R〜Rは各々独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRは互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R〜R、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0038】
本発明のアゾ顔料の製造方法により、製造されたアゾ顔料は、液晶表示装置等のカラーフィルターに用いることによりコントラスト、及び、液晶表示装置の電圧保持率がいずれも高いものとなる。このようなアゾ顔料が得られる理由としては、明確ではないが、以下のことが推定される。
液晶の電圧保持率の低下は、カラーフィルター中の金属イオン濃度が高い場合に発生し易い。顔料製造時などにスルホン酸塩などのイオンが残っていると、分散工程、カラーフィルター製造工程あるいは液晶表示素子を形成した後で、顔料粒子からイオンが溶出してくるために電圧が低下すると思われる。
顔料の1次粒子が微細であるほど、イオン性化合物を包含しやすくなり、室温での水洗・ろ過での除去が難しくなるが、水やメタノールなどのSP値14以上34以下の親水溶媒のイオン性化合物が溶解する溶剤で加熱洗浄すると、分散工程あるいはカラーフィルター中でのイオンの溶出を効果的に抑制できるものと思われる。
【0039】
SP値14以上34以下の親水溶媒としては、具体的には、水、メタノール、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールなどが挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。顔料を洗浄した後に乾燥する場合には、乾燥しやすさの点から、水、メタノールが沸点が低い(100℃以下)点で、好ましい。
SP値とは、溶解性を示す指標であり、凝集エネルギー密度((蒸発エネルギー)/(モル体積)で求まる)の平方根で定義される値である。本発明における親水溶媒のSP値は、沖津法(接着 38巻 6号 6頁(1994年)高分子刊行会)によって算出した値であり、一般に値が大きいほど親水的で、値が小さいほど疎水的であることを表す。
沖津法により算出されるメタノールのSP値は14.35であり、水のSP値は33.5である。
【0040】
本発明の方法において、洗浄に用いられるSP値14以上34以下の親水溶媒は、その総濃度が全溶媒量に対して70〜100質量%であり、好ましくは90〜100質量%である。本発明の方法において、該親水溶媒は、上記範囲であれば、1種類単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
また、本発明の方法において、洗浄に用いられる溶媒は、SP値14以上34以下の親水溶媒を総濃度で70〜100質量%含んでいれば、SP値14未満の親水溶媒等のSP値14以上の親水溶媒以外の溶媒(以下、「他の溶媒」と称する場合がある)、を含んでいてもよい。
【0041】
以下に、各種溶媒について、SP値(沖津式で計算)とともに示す。
SP値14以上の溶媒:水(33.5)、メタノール(14.4)、エチレングリコール(14.1)、ジメチルスルホキシド(14.5)、スルホラン(15.5)
SP値14未満の好ましい溶媒:アセトン(9.5)、メチルエチルケトン(9.2)、ジメチルホルムアミド(11.7)、ジメチルアセトアミド(10.0)、N−メチルピロリドン(11.5)、アセトニトリル(11.4)、イソプロパノール(11.5)、テトラヒドロフラン(9.1)、酢酸エチル(9.0)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(9.2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(12.1)、シクロヘキサノン(10.2)、クロロホルム(9.2)
SP値14未満の溶媒として好ましい溶媒は、SP値8.0〜13.9の溶媒であり、9.4〜13.9の溶媒がより好ましい。
洗浄に用いられる溶媒の沸点は、40〜150℃であることが好ましく、50〜100℃がより好ましい。洗浄に用いられる溶媒沸点が上記の範囲であると、取り扱い易く、ろか、乾燥の面で好ましい。
【0042】
本発明の方法において、加熱洗浄する工程における加熱温度としては、用いる溶媒、洗浄する顔料の構造、粒子径、洗浄量により、適宜選択されうるものであり、一概に規定されるべきものではないが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。40〜150℃の範囲であれば、顔料表面が溶媒となじんでイオン成分が溶出していくと推定される。
また、本発明の方法における加熱洗浄工程としては、加熱温度の制御の煩雑性がないことから、加熱還流が好ましい。
加熱還流時間としては、用いる溶媒、洗浄する顔料の構造、粒子径、洗浄量により、適宜選択されうるものであり、一概に規定されるべきものではないが、30分〜24時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。
加熱洗浄を行うことにより、洗浄される顔料の粒子径が10〜100nmであると、室温洗浄によっては除去することのできないイオン性化合物を効果的に除去することができる。
【0043】
本発明の方法において、被洗浄顔料の量に対する洗浄溶媒量としては、用いる溶媒、洗浄する顔料の構造、粒子径、洗浄量により、適宜選択されうるものであり、一概に規定されるべきものではないが、容量比(顔料量:溶媒量)で1:2〜1:100が好ましく、1:10〜1:50がより好ましい。
【0044】
本発明の方法において、SP値14以上の親水溶媒を70質量%以上含む溶媒(以下、「本発明の洗浄溶媒」とも称する)を用いる加熱洗浄回数は、1回以上であれば特に限定されないが、所望の電圧保持特性と製造コストの関係から、1〜3回が好ましい。製造コストの観点からは、より好ましくは1〜2回であり、所望の電圧保持特性を得る観点からは、より好ましくは2〜3回である。本発明の洗浄溶媒を用いる加熱洗浄を複数回行う場合には、全ての回において、同一の洗浄溶媒を用いても良く、それぞれの回において異なった洗浄溶媒(洗浄溶媒が混合溶媒であって、混合する各溶媒成分の成分比が異なる場合も含む)を用いても良い。
また、本発明の方法では、洗浄工程において洗浄操作自体を複数回行うに際し、本発明の洗浄溶媒を用いる加熱洗浄の前又は後に、本発明の洗浄溶媒以外の溶媒を用いる洗浄(加熱及び非加熱のいずれも含む)や、本発明の洗浄溶媒を用いる非加熱洗浄を行ってもよい。これらの総洗浄回数は1〜4回が好ましく、製造コストの観点からは、より好ましくは2〜3回であり、所望の電圧保持特性を得る観点からは、より好ましくは3〜4回である。
また、全ての回における洗浄溶媒が、SP値14以上の親水溶媒を用いる加熱洗浄であれば、得られる顔料分散物の粘度が低く、該顔料分散物を用いてカラーフイルタを作成し液晶セルを構成した場合に電圧保持率が優れる点で好ましい。
【0045】
非加熱洗浄において用いる溶媒としては、特に限定されず、SP値14以上の親水溶媒を含むものでも、SP値14未満の溶媒を含むものでも良い。好ましくは、SP値14以上の親水溶媒を70質量%以上含む溶媒である。
より好ましくは、水、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール(DEG)、またはこれらの混合溶媒である。
【0046】
次に、本発明の方法で製造される一般式(1)で表されるアゾ顔料について説明する。
まず、本発明における脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基及び置換基について説明する。
本発明における脂肪族基において、その脂肪族部位は直鎖、分岐鎖及び環状のいずれであってもよい。また、飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等を挙げることができる。更に脂肪族基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0047】
また、アリール基は、単環であっても縮合環であってもよい。また、無置換であっても置換基を有していてもよい。また、ヘテロ環基は、そのヘテロ環部位は環内にヘテロ原子(例えば、窒素原子、イオウ原子、酸素原子)を持つものであればよく、飽和環であっても、不飽和環であってもよい。また、単環であっても縮合環であってもよく、更に無置換であっても置換基を有していてもよい。
アシル基は、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、下記置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。例えばアセチル、プロパノイル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0048】
また、本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えば脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、ジアリールオキシホスフィニル基等をあげることができる。
【0049】
本発明のアゾ顔料は溶解性の観点からイオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)を置換基として含有しない方が良い。イオン性親水性基を含有する場合は、多価金属カチオンとの塩(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)であることが好ましく、レーキ顔料であることがより好ましい。
【0050】
ここで、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について若干説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり説明したりするが、これは上記の成書で見出せる、文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。本発明の一般式(1)で表される化合物はベンゼン誘導体ではないが、置換基の電子効果を示す尺度として、置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においては今後、σp値をこのような意味で使用する。
【0051】
顔料は、色素分子間の強力な相互作用による凝集エネルギーによって、分子同士がお互いに強固に結合しあっている状態のことである。この状態を作るには、分子間のファンデルワールス力、分子間水素結合が必要であることが、例えば、日本画像学会誌、43巻、10頁(2004年)等に記載されている。
分子間のファンデルワールス力を強めるには、分子へ芳香族基、極性基及び/又はヘテロ原子の導入等が考えられる。また、分子間水素結合を形成させるには、分子へヘテロ原子に結合した水素原子を含有する置換基の導入及び/又は電子供与性の置環基の導入等が考えられる。更に分子全体の極性が高い方が好ましいと考えられる。そのためには、例えば、アルキル基等鎖状の基は短い方が好ましく、分子量/アゾ基の値は小さい方が好ましいと考えられる。
これらの観点から、顔料分子は、アミド結合、スルホンアミド結合、エーテル結合、スルホ基、オキシカルボニル基、イミド基、カルバモイルアミノ基、ヘテロ環、ベンゼン環等を含有することが好ましい。
【0052】
本発明の製造方法により製造される一般式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により色素分子の分子間相互作用を形成しやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
また、下記一般式(1)で表される特定の構造を有することにより、着色力、色相等の色彩的特性において優れた特性を示し、かつ耐光性、耐オゾン性等の耐久性にも優れた特性を示すことができる。
【0053】
【化10】

【0054】
(一般式(1)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、Rは、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R〜Rは各々独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRは互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R、R〜R、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0055】
Gで表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表される脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8の脂肪族基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0056】
Gで表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
【0057】
Gで表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましい置換基としてはハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Gで表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
【0058】
Gで表されるアシル基としては、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表されるアシル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0059】
Gで表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表される脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、(t)−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
【0060】
Gで表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、脂肪族基、アリール基、へテロ環基等が好ましい。Gで表される置換基を有してもよいカルバモイル基として、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11であり、より好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2〜5のアルキルカルバモイル基であり、例えばN−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等が挙げられる。
Gで表されるスルホニル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、中でも、脂肪族基またはアリール基が好ましい。
Gで表される脂肪族スルホニル基及びアリールスルホニル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Gで表される脂肪族スルホニル基及びアリールスルホニル基としては、好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルスルホニル基、総炭素数6〜10のアリールスルホニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキルスルホニル基であり、例えばメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0061】
Gとして好ましくは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子である。分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成しやすくなるためである。
【0062】
で表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。Rのカルバモイル基として、好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイル基であり、より好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、4−ピリジンカルバモイル等が挙げられる。また、置換基どうし結合して含窒素へテロ環を形成していてもよく、例えば、ピラゾール環、モルホリニル環が、挙げられる。
【0063】
で表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rの脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、i−プロピルオキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0064】
で表される脂肪族カルボニル基における脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基である。Rで表される脂肪族カルボニル基におけるの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であって、より好ましくは総炭素数数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、(s)−ブチル、メトキシエチル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0065】
で表されるアリールカルボニル基におけるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rのアリール基カルボニル基におけるアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であって、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、4−メチルフェニル、3−クロルフェニル等が挙げられる。
【0066】
で表されるヘテロ環カルボニル基におけるヘテロ環としては、飽和ヘテロ環であっても、不飽和ヘテロ環基であってもよく、置換基を有していてもよく、縮環していてもよい。置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、該へテロ基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rのヘテロ環カルボニル基におけるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜10のヘテロ環基であって、より好ましくは総炭素原子数2〜8の窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であり、例えば、1−ピペリジル、4−モルホリニル、2−ピリミジル、4−ピリジル等が挙げられる。
【0067】
で表されるカルバモイルアミノ基におけるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、置換基として好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられる。Rで表されるカルバモイルアミノ基における置換基を有してもよいカルバモイル基として、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数1〜10のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数2〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数6〜12のアリールカルバモイル基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環カルバモイル基であり、より好ましくは、無置換のカルバモイル基、総炭素原子数1〜8のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数2〜8のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数6〜10のアリールカルバモイル基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環カルバモイル基であり、例えばメチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−(2−ピリミジル) カルバモイル基等が挙げられる。
【0068】
で表される脂肪族オキシカルボニルアミノ基における脂肪族オキシカルボニルとしては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R1の脂肪族オキシカルボニルアミノ基における脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数2〜9のアルコキシカルボニル基であって、より好ましくは総炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、(t)−ブトキシカルボニル、メトキシエトキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0069】
で表されるアリールカルボニルアミノ基におけるアリールカルボニルとしては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。Rのアリールカルボニルアミノ基におけるアリールカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数7〜13のアリールカルボニル基であって、より好ましくは総炭素原子数7〜11のアリールカルボニル基であり、例えば、フェニルカルボニル、4−メチルフェニルカルボニル、3−クロルフェニルカルボニル等が挙げられる。
【0070】
で表されるヘテロ環カルボニルアミノ基におけるヘテロ環カルボニルとしては、飽和ヘテロ環カルボニルであっても、不飽和ヘテロ環カルボニルであってもよく、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。Rのヘテロ環カルボニル基として、好ましくは総炭素原子数3〜11のヘテロ環カルボニル基であって、より好ましくは総炭素原子数3〜9の芳香族ヘテロ環カルボニル基であり、例えば、1−ピペリジルカルボニル、2−チエニルカルボニル、2−ピリミジルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、4−ピリジルカルボニル等が挙げられる。
【0071】
で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル等が挙げられる。
【0072】
で表されるヘテロ環基としては、飽和ヘテロ環であっても、不飽和ヘテロ環基であってもよく、置換基を有していてもよく、縮環していてもよい。置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよく、好ましい置換基としては、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、該へテロ基と縮環したへテロ環、脂肪族オキシカルボニル基である。Rのヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜10のヘテロ環基であって、より好ましくは総炭素原子数2〜8の窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基であり、例えば、1−ピペリジル、4−モルホリニル、2−ピリミジル、4−ピリジル等が挙げられる。
【0073】
で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Rで表される脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、i−プロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、メトキシエトキシ、カルバモイルメトキシ等が挙げられる。
【0074】
で表されるハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0075】
〜Rで表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であればなんでもよく、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基であり、より好ましくは、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子であり、最も好ましくは、脂肪族オキシ基である。
これらの置換基が更に置換基を有する場合は、脂肪族基、ヒドロキシ基、アミド結合、エーテル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル結合等を有する置換基が好ましく、ヘテロ原子と水素原子の結合を有する置換基が、分子間水素結合等の分子間相互作用をし易くする観点でより好ましい。
【0076】
〜Rで表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rの脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、シクロヘキシル、t−ブチル等が挙げられる。
【0077】
〜Rで表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rのアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、3−メトキシフェニル、4−カルバモイルフェニル等が挙げられる。
【0078】
〜Rで表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rのヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜16のヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜12の5〜6員環のヘテロ環基であり、例えば1−ピロリジニル、4−モルホリニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。
【0079】
〜Rで表される脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rの脂肪族オキシカルボニル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシカルボニル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル、i−プロピルオキシカルボニル、カルバモイルメトキシカルボニル等が挙げられる。
【0080】
〜Rで表されるカルバモイル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。R〜Rの置換基を有していてもよいカルバモイル基として、好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイル基であり、より好ましくはカルバモイル基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイル基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイル基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、4−ピリジンカルバモイル等が挙げられる。
【0081】
〜Rで表されるアシルアミノ基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、ヘテロ環であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rのアシルアミノ基として、好ましくは総炭素原子数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜8のアシルアミノ基であり、更に好ましくは総炭素原子数2〜8のアルキルカルボニルアミノ基であって、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、2−ピリジンカルボニルアミノ、プロパノイルアミノ等が挙げられる。
【0082】
〜Rで表されるスルホンアミド基としては、置換基を有していてもよく、脂肪族であっても、芳香族であっても、ヘテロ環であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rのスルホンアミド基として、好ましくは総炭素原子数1〜12のスルホンアミド基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜8のスルホンアミド基であり、更に好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルスルホンアミド基であって、例えばメタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、2−ピリジンスルホンアミド等が挙げられる。
【0083】
〜Rで表されるカルバモイルアミノ基としては置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。R〜Rの置換基を有していてもよいカルバモイルアミノ基として、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜12のヘテロ環カルバモイルアミノ基であり、より好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2〜7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7〜11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3〜10のヘテロ環カルバモイルアミノ基であり、例えば、カルバモイルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、N,N−ジメチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、4−ピリジンカルバモイルアミノ等が挙げられる。
【0084】
〜Rで表される置換基を有していてもよいスルファモイル基として、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよく、好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等である。R〜Rの置換基を有していてもよいスルファモイル基として、好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7〜13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜12のヘテロ環スルファモイル基であり、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1〜7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3〜6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6〜11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2〜10のヘテロ環スルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、4−ピリジンスルファモイル等が挙げられる。
【0085】
〜Rで表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rの脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、例えばメトキシ、エトキシ、i−プロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ、メトキシエトキシ等が挙げられる。
【0086】
〜Rで表される脂肪族チオ基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R〜Rの脂肪族チオ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキルチオ基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜6のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ、エチルチオ、カルバモイルメチルチオ、t−ブチルチオ等が挙げられる。
【0087】
〜Rで表されるハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子が挙げられる。
本発明の効果の点で、R〜Rは、脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基である場合が好ましく、脂肪族オキシ基である場合はより好ましい。
また、R及びRは互いに連結して芳香族環を形成してもよい。R及びRが互いに連結して形成する芳香族環としては、特に限定されないが、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環である。
【0088】
Aで表される芳香族5〜6員ヘテロ環としては、縮環していてもよく、単環であってもよく、縮環は炭素環であっても、ヘテロ環であっても、芳香環であっても、非芳香環であってもよく、好ましくは、ヘテロ原子が1〜3個含有の芳香族の5〜6員環である。但し、該芳香族5〜6員ヘテロ環が2個以上の窒素原子を含む場合は、少なくとも1つの窒素原子は無置換の窒素原子である。Aで表される縮環していてもよい芳香族5〜6員ヘテロ環として、好ましくは、総炭素原子数2〜15であって、好ましくは2〜10であって、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環等及びそれらとベンゼン環誘導体、ヘテロ環誘導体との縮環ヘテロ環基である。
nは1又は2である場合が好ましい。
【0089】
一般式(1)で表されるアゾ顔料はその互変異性体もその範囲に含むものである。
一般式(1)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、一般式(1)で表される顔料には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
【0090】
【化11】

【0091】
(一般式(1’)中、G’は一般式(1)のGと同義である。R〜R6、A、nは一般式(1)で定義したものと同義である。)
【0092】
上記一般式(1)で表される顔料は、下記一般式(1−3−1)または一般式(1−3−2)で表されるアゾ顔料であることが好ましく、以下、一般式(1−3−1)または一般式(1−3−2)により表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩または水和物について詳細に説明する。
【0093】
【化12】

【0094】
(一般式(1−3−1)及び一般式(1−3−2)中、R〜R及びnは一般式(1)、で定義したものと同じである。Xは炭素原子又は窒素原子を表し、Axは、X及び該炭素原子と共に芳香族5〜6員ヘテロ環基を表し、Bxは、該炭素原子と共に芳香族5〜6員ヘテロ環基を表し、それぞれ形成されるヘテロ環基は、一般式(1)のAで定義した基の中で該当するものを表す。Yxは該窒素原子及び炭素原子と共にへテロ環を形成するものを表す。R123は一般式(1)で規定したR〜R等の置換基の内、該当する置換基からカルボニル基を除いた置換基を表す。R〜R、R123、X、Bx、Yxが複数の場合は、は同一であっても異なっていても良い。)
Yxが該窒素原子及び炭素原子と共に形成するへテロ環としては、芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合が好ましい。
【0095】
上記一般式(1)、(1−3−1)及び(1−3−2)で表されるアゾ顔料において多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。少なくとも1個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが特に好ましい。
【0096】
この構造が好ましい要因としては、一般式(1−3−1)または(1−3−2)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子および酸素原子、およびアゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、あるいはアゾ顔料構造に含有するアゾ成分に置換するカルボニル基、ナフタレン置換基のヒドロキシ基の水素原子および酸素原子、およびアゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子が分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、一般式(1−3−1)または一般式(1−3−2)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及びまたは耐溶剤性が大幅に向上するため、更に好ましい例となる。
この観点からも、一般式(1)で表される顔料は、一般式(1−3−1)又は(1−3−2)で表される顔料であることが好ましく、一般式(1−3−1)で表される顔料がより好ましい。
【0097】
一般式(1)で表される顔料は、下記一般式(2)〜(4)の各式で表されることが好ましい。
【0098】
以下に、一般式(2)で表されるアゾ顔料について詳細に説明する。
【0099】
【化13】

【0100】
(一般式(2)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基を表し、R22〜R26は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R24及びR25は互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R21〜R26、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0101】
【化14】

【0102】
(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【0103】
一般式(2)においてGで表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。Gとして好ましくは水素原子である。
【0104】
一般式(2)においてR21で表されるアミノ基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。置換基として好ましくは、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられ、これらは更にハロゲン原子、アルコキシ基、カルバモイル基、又はアルキル基により置換されていてもよい。R21で表される置換基を有してもよいアミノ基として、好ましくは無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜10のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜10のジアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜12のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基であり、より好ましくは、無置換のアミノ基、総炭素原子数1〜8のアルキルアミノ基、総炭素原子数2〜8のジアルキルアミノ基、総炭素原子数6〜10のアリールアミノ基、総炭素原子数2〜12の飽和であっても、不飽和であってもよいヘテロ環アミノ基であり、例えばメチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N−フェニルアミノ、N−(2−ピリミジル)アミノ等が挙げられる。
【0105】
一般式(2)においてR21で表される脂肪族オキシ基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R21の脂肪族オキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であって、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、(t)−ブトキシ、メトキシエトキシ、カルバモイルメトキシ等が挙げられる。
【0106】
一般式(2)においてR22〜R26で表される置換基としては、一般式(1)のR〜Rで説明したものと同じである。
【0107】
一般式(2)においてAで表される一般式(A−1)〜(A−34)について説明する。
以下、一般式(A−1)〜(A−34)をヘテロ環A群と称する。
【0108】
51〜R54で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R51〜R54の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基等である。これら脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基及び脂肪族チオ基について、その好ましい範囲は前記一般式(1)のR〜Rで説明したものと同じである。
【0109】
51〜R54は水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0110】
55で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R55の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基等であり、より好ましくは脂肪族基、アリール基、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である。これら脂肪族基、アリール基及びヘテロ環基について、その好ましい範囲は前記一般式(1)のR〜Rで説明したものと同じである。
【0111】
55は脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基である場合が好ましく、脂肪族基、アリール基、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合はより好ましく、該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基である場合は更に好ましい。R55が該結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であることにより、色素分子の分子間相互作用だけでなく、分子内相互作用を強固に形成しやすくなる。それにより安定な分子配列の顔料を構成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(例えば耐光性、耐ガス性、耐熱性、耐水性等)を示す点で好ましい。
【0112】
56〜R57で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R56〜R57の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。これら脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基及び脂肪族チオ基について、その好ましい範囲は前記一般式(1)のR〜Rで説明したものと同じである。
【0113】
56〜R57は水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0114】
58で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R58として、好ましくは、ヘテロ環基、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の電子求引性基であり、σp値が0.3以上の電子求引性基であることが好ましい。上限としては1.0以下の電子求引性基である。
【0115】
σp値が0.2以上1.0以下の電子求引性基であるR58の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。これらの中で、σp値が0.2以上0.3未満の電子求引性基としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基が挙げられる。
58としては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基が好ましく、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基がより好ましく、シアノ基である場合が最も好ましい。
【0116】
一般式(2)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(21)〜(22)の各式で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0117】
【化15】

【0118】
(一般式(21)中、R21、R55、R56、nは一般式(2)で定義したものと同義である。R201は一般式(2)のR22〜R26の置換基と同義である。mは0〜5の整数を表す。mが複数の場合はR201は同一であっても異なっていても良い。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。n=2〜4の場合は、R21、R201、R55、R56又はZを介した2〜4量体を表す。一般式(21)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0119】
一般式(21)で表されるアゾ顔料において、R21で表されるアミノ基、脂肪族オキシ基としては、一般式(2)のR21で説明したものと同じである。R21として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基の場合である。
201で表される置換基として好ましくは、一般式(1)で表されるR〜R及び一般式(2)で表されるR22〜R26で説明したものと同じである。
【0120】
一般式(21)で表される顔料のR21、R55、R56、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(2)のR21、R55、R56、nの好ましい置換基、範囲と同じであり、R201の好ましい置換基は、一般式(1)のR〜R及び一般式(2)のR22〜R26の好ましい置換基と同じである。
Zは一般式(2)のR58に相当する基であって、ハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表し、好ましくはアシル基、置換基を有していても良いカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、又はアルキルスルホニル基を表す。
Zとしては、総炭素原子数1〜7の置換基を有していても良いカルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、総炭素原子数2〜7の置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル)、シアノ基、総炭素原子数1〜6の置換基を有していても良いアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル)であることがより好ましく、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基又はシアノ基がさらに好ましく、アルキルオキシカルボニル基、又はシアノ基である場合が特に好ましく、シアノ基である場合が最も好ましい。
Zがシアノ基である場合色相長波長化、高光堅牢性であり好ましい。
【0121】
一般式(21)で表される顔料は、R21が置換基を有していてもよいアミノ基、又は脂肪族オキシ基であって、mが0又は1であって、R201が脂肪族オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基のいずれかであって、R55が、窒素原子との結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基のいずれかであって、nが1又は2である場合が好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0又は1であって、R55が下記(Y−1)〜(Y−13)のいずれかであって、R56が水素原子、又は脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基のいずれかであって、nが1又は2である場合がより好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0又は1であって、R55が、下記(Y−1)〜(Y−6)のいずれかであって、R56が水素原子、又は脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基のいずれかであって、nが1又は2である場合が更に好ましく、R21が置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0又は1であって、R55が、下記(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)のいずれかであって、R56が水素原子、又は脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基のいずれかであって、nが1又は2である場合が特に好ましく、Rが置換基を有していてもよいアミノ基であって、mが0であって、R55が、下記(Y−1)、(Y−3)、(Y−4)のいずれかであって、R56が水素原子であって、Zがシアノ基であって、nが1又は2である場合が最も好ましい。
【0122】
【化16】

【0123】
一般式(Y−1)〜(Y−13)中の*は、ピラゾール環のN原子との結合部位を表す。Y〜Y11は水素原子又は置換基を表す。(Y−13)におけるG11は5〜6員ヘテロ環を構成する事ができる非金属原子群を表し、G11で表されるヘテロ環は無置換であっても、置換基を有していてもよく、ヘテロ環は単環であっても縮環していてもよい。式(Y−1)〜(Y−13)は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0124】
〜Y11で表される置換基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。Y〜Y11の置換基として、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等であり、より好ましくは脂肪族基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である。Y〜Y11中隣接する2つの置換基は5〜6員環を形成していても良い。
〜Y11は水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基等である場合が好ましく、水素原子、脂肪族基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、脂肪族オキシ基、シアノ基である場合はより好ましい。
【0125】
【化17】

【0126】
(一般式(22)中、R21、R56、R58、nは一般式(2)で定義したものと同義である。R201は一般式(2)のR22〜R26の置換基と同義である。mは0〜5の整数を表す。mが複数の場合はR201は同一であっても異なっていても良い。R56とR58は互いに結合し5〜7員環を形成しても良い。n=2〜4の場合は、R21、R201、R56及びR58を介した2〜4量体を表す。)
【0127】
一般式(22)で表されるアゾ顔料において、R21で表されるアミノ基、脂肪族オキシ基、R201で表される置換基として好ましくは、一般式(21)のR21、R201で説明したものと同じである。
【0128】
一般式(22)で表される顔料のR21、R56、R58、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(2)のR21、R56、R58、nの好ましい置換基、範囲と同じであり、R201の好ましい置換基は、一般式(1)のR〜R及び一般式(2)のR22〜R26と同じである。
【0129】
一般式(2)、一般式(21)及び一般式(22)で表される顔料は、「総炭素数/アゾ基の数」が40以下であることが好ましく、30以下である場合はより好ましい。一般式(2)、一般式(21)及び一般式(22)で表される顔料は、「分子量/アゾ基の数」が700以下であることが好ましい。一般式(2)、一般式(21)及び一般式(22)で表される顔料は、スルホ基、カルボキシル基等イオン性置換基が置換していない場合が好ましい。
【0130】
以下に前記一般式(2)、一般式(21)及び一般式(22)で表されるアゾ顔料の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0131】
【化18】

【0132】
【化19】

【0133】
【化20】

【0134】
【化21】

【0135】
【化22】

【0136】
【化23】

【0137】
【化24】

【0138】
【化25】

【0139】
【化26】

【0140】
【化27】

【0141】
【化28】

【0142】
【化29】

【0143】
【化30】

【0144】
【化31】

【0145】
【化32】


【0146】
【化33】

【0147】
【化34】

【0148】
【化35】

【0149】
【化36】

【0150】
【化37】

【0151】
【化38】

【0152】
【化39】

【0153】
以下に、一般式(3)で表されるアゾ顔料について詳細に説明する。
【0154】
【化40】

【0155】
(一般式(3)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R31は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R32〜R36は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R34及びR35は互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは前記へテロ環A群を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R31〜R36、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0156】
一般式(3)においてGで表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。Gとして好ましくは水素原子である。
一般式(3)においてR31で表されるアミノ基及び脂肪族オキシ基としては、一般式(1)のGで説明したアミノ基及び脂肪族オキシ基と同じである。
【0157】
一般式(3)においてR31で表される脂肪族基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R31の脂肪族基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であって、より好ましくは総炭素数数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、(s)−ブチル、メトキシエチル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0158】
一般式(3)においてR31で表されるアリール基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R31のアリール基として、好ましくは総炭素原子数6〜12のアリール基であって、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル、4−メチルフェニル、3−クロルフェニル等が挙げられる。
【0159】
一般式(3)においてR31で表されるヘテロ環基としては、飽和ヘテロ環であっても、不飽和ヘテロ環基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R31のヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜10のヘテロ環基であって、より好ましくは総炭素原子数2〜8の芳香族ヘテロ環基であり、例えば、1−ピペリジル、2−チエニル、2−ピリミジル、2−ピリジル、4−ピリジル等が挙げられる。
【0160】
一般式(3)においてR31として好ましくは、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよいアリール基の場合であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよいアリール基の場合であり、最も好ましくは、置換基を有していてもよいアリール基の場合である。R31が置換基を有する場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基が好ましい。
【0161】
一般式(3)においてR32〜R36で表される置換基としては、一般式(1)のR〜R及び一般式(1)のR22〜R26で説明したものと同じである。
一般式(3)においてAは、一般式(2)のA(前記へテロ環A群)で説明したものと同じである。
一般式(3)においてnは、一般式(1)のnで説明したものと同じである。
【0162】
一般式(3)で表される顔料は、下記一般式(31)で表されるアゾ顔料である場合が好ましい。
【0163】
【化41】

【0164】
(一般式(31)中、G、A、nは一般式(3)と同義である。R331は脂肪族基又はアリール基を表す。R301は一般式(3)のR32〜R36の置換基と同義である。mは0〜5の整数を表す。mが複数の場合はR301は同一であっても異なっていても良い。n=2〜4の場合は、R331、R301、G、Aを介した2〜4量体を表す。一般式(21)がイオン性親水性基を有することはない。)
【0165】
一般式(31)のGで表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(3)のGで説明したものと同じである。一般式(31)のGとして好ましくは水素原子である。
331で表される脂肪族基、アリール基としては、一般式(3)のR31で説明したものと同じである。R331として好ましくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基の場合である。
301で表される置換基として好ましくは、一般式(3)で表されるR32〜R36で説明したものと同じである。
【0166】
一般式(3)及び一般式(31)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(32)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0167】
【化42】

【0168】
(一般式(32)中、R331、R301、m、nは一般式(31)と同義である。R55、R56は水素原子又は置換基を表す。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。)
【0169】
一般式(32)におけるZは、好ましい範囲を含めて、一般式(21)のZで説明したものと同じである。
一般式(32)におけるR331、R301、m、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(31)のR331、R301、m、nと同じである。
一般式(32)におけるR55、R56の好ましい置換基、範囲は、一般式(2)R55、R56と同じである。
【0170】
一般式(32)におけるR55の好ましい脂肪族基としては、アルキル基であり、総炭素原子数1〜4のアルキル基である場合はより好ましく、メチル基である場合は更に好ましい。
55として好ましい、該置換基の結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和環であっても不飽和環であっても、縮環していてもよく、好ましくは総炭素原子数2〜12の該置換基の結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜10の該置換基の結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であり、例えば、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル、2-ベンゾオキサゾリル、2−ピリジル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−イミダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、2−トリアジニル等が挙げられ、これらのヘテロ環基は置換基と共に互変異性体構造であってもよい。
【0171】
一般式(32)中、R55としては、前記(Y−1)〜(Y−13)のいずれかである場合が好ましく、前記(Y−1)〜(Y−6)、(Y−12)のいずれかである場合はより好ましく、前記(Y−1)、(Y−4)又は(Y−6)である場合は更に好ましい。
【0172】
一般式(32)で表される顔料は、R331が置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよいアリール基であって、mが0又は1であって、mが1の場合は、R301が脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基であって、R55が、該置換基の結合部位の隣接位に窒素原子を含有する芳香族5〜6員ヘテロ環基であって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基であって、nが1又は2である場合が好ましく、R331が置換基を有していてもよい脂肪族基、置換基を有していてもよいアリール基であって、mが0であって、R55が、(Y−1)〜(Y−13)のいずれかであって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2である場合がより好ましく、R331が置換基を有していてもよいアリール基であって、mが0であって、R55が、(Y−1)〜(Y−6)、(Y−12)のいずれかであって、R56が水素原子、脂肪族基であって、Zがカルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましく、R331が置換基を有していてもよいフェニル基であって、mが0であって、R55が、(Y−1)、(Y−4)又は(Y−6)であって、R56が水素原子であって、Zがシアノ基であって、nが1又は2である場合が更に好ましい。
【0173】
一般式(3)、一般式(31)及び一般式(32)で表される顔料は、「総炭素数/アゾ基の数」が40以下であることが好ましく、30以下である場合はより好ましい。一般式(3)、一般式(31)及び一般式(32)で表される顔料は、「分子量/アゾ基の数」が700以下であることが好ましい。一般式(3)、一般式(31)及び一般式(32)で表される顔料は、スルホ基、カルボキシル基等イオン性置換基が置換していない場合が好ましい。
【0174】
以下に前記一般式(3)、一般式(31)及び一般式(32)で表されるアゾ顔料の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0175】
【化43】

【0176】
【化44】

【0177】
【化45】

【0178】
【化46】

【0179】
【化47】

【0180】
【化48】

【0181】
【化49】

【0182】
【化50】

【0183】
【化51】

【0184】
【化52】

【0185】
【化53】

【0186】
【化54】

【0187】
【化55】

【0188】
以下に、一般式(4)で表されるアゾ顔料について詳細に説明する。
【0189】
【化56】

【0190】
(一般式(4)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R41は、−C(=O)NR4445、−NR46C(=O)−R47、−C(=O)OR48又は−OR48を表す。R43は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表す。Aは前記へテロ環A群を表す。mは0〜5の整数を表す。mが複数の場合はR41は同一であっても異なっていても良い。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R41、R43、AまたはGを介した2〜4量体を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。R45は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基又は−N(R49)(R410)を表す。R46は水素原子又はアルキル基を表す。R47はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシ基、又は−N(R49)(R410)を表す。R48は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基又はアシル基を表す。R49は水素原子、又はアルキル基を表し、R410は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R44とR45、R49とR410は互いに結合し、5〜6員環を形成していても良い。)
【0191】
一般式(4)においてGで表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。Gとして好ましくは水素原子である。
【0192】
一般式(4)においてR41として好ましくは、−C(=O)NR4445、−NR46C(=O)−R47、−C(=O)OR48又は−OR48であり、より好ましくは、−C(=O)NR4445、−C(=O)OR48又は−OR48であり、更に好ましくは−C(=O)NR4445である。中でも、ナフタレン環の、6位が−CONHR45、6位が−C(=O)OR48、6位が−OR48、7位が−OR48、8位が−OH、又は8位が−NHC(=O)−R47であることが好ましく、6位が−CONHR45、6位が−C(=O)OR48、8位が−OH、又は8位が−NHC(=O)−R47であることがより好ましく、6位が−CONHR45であることが更に好ましい。
【0193】
44で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R44で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0194】
45で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R45で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
45で表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R45で表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
45で表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。R45で表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
【0195】
46で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R46で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
【0196】
47はアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R47で表されるアルキル基としては、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
47で表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R47で表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
47で表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。R47で表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
47で表されるアシル基としては、脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R47で表されるアシル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
47で表されるアルコキシ基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R47で表されるアルコキシ基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルコキシ基であって、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、(t)−ブトキシ、メトキシエトキシ、カルバモイルメトキシ等が挙げられる。
【0197】
48で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R48で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
48で表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R48で表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
48で表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。R48で表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
48で表されるアシル基としては脂肪族カルボニル基であっても、アリールカルボニル基であっても、ヘテロ環カルボニル基であってもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R48で表されるアシル基として、好ましくは総炭素原子数2〜8のアシル基であり、より好ましくは総炭素原子数2〜4のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、3−ピリジンカルボニル等が挙げられる。
【0198】
49及びR410で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R49及びR410で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは総炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、ビニル、シクロヘキシル、カルバモイルメチル等が挙げられる。
410で表されるアリール基としては、縮環していてもよく、置換基を有していてもよく、置換してもよい基としては、前述の置換基の項で述べた基で、置換可能な基であれば何でもよい。R410で表されるアリール基として、好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、より好ましくは総炭素原子数6〜10のアリール基であり、例えばフェニル、4−ニトロフェニル、4−アセチルアミノフェニル、4−メタンスルホニルフェニル等が挙げられる。
410で表されるヘテロ環基としては、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよい。R410で表されるヘテロ環基として、好ましくは総炭素原子数2〜12の炭素原子で結合したヘテロ環基であり、より好ましくは炭素原子で結合した総炭素原子数2〜10の5〜6員へテロ環であり、例えば2−テトラヒドロフリル、2−ピリミジル等が挙げられる。
44とR45、R49とR410が互いに結合し形成する5〜6員環は、置換基を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、縮環していてもよく、例えばモルホリン、ピペリジン等が挙げられる。
44として好ましくは、水素原子であり、R45として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、R46として好ましくは、水素原子であり、R47として好ましくはアルキル基、R48として好ましくは水素原子、アルキル基である。R49としては水素原子、R410としては水素原子、アルキル基、アリール基である。
【0199】
一般式(4)においてR43で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよく、置換基としては、前述の置換基の項で述べた基であって、置換可能な基であればなんでもよい。R43で表されるアルキル基として、好ましくは総炭素原子数1〜8のアルキル基であって、より好ましくは総炭素数数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、(s)−ブチル、メトキシエチル、(i)プロピル、(t)ブチル等が挙げられる。
一般式(4)においてR43で表されるヘテロ環基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子としては、一般式(1)のRで説明したものと同じである。
43として好ましくは、水素原子、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子の場合であり、より好ましくは、水素原子の場合である。
【0200】
一般式(4)においてAは、一般式(2)のA(前記へテロ環A群)で説明したものと同じである。
一般式(4)においてnは、一般式(1)のnで説明したものと同じである。
一般式(4)においてmは、0〜2である場合が好ましく、0〜1である場合はより好ましく、1である場合は、更に好ましい。
【0201】
一般式(4)で表される顔料は、下記一般式(41)で表されるアゾ顔料である場合が好ましい。
【0202】
【化57】

【0203】
(一般式(41)中、R41、R43、m、nは一般式(4)と同義である。R55、R56は水素原子又は置換基を表す。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。)
【0204】
一般式(41)におけるZは、好ましい範囲を含めて、一般式(21)のZで説明したものと同じである。
一般式(41)におけるR41、R43、m、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(4)のR41、R43、m、nの好ましい置換基、範囲と同じである。
一般式(41)におけるR55、R56の好ましい置換基、範囲は、一般式(32)のR55、R56の好ましい置換基、範囲と同じである。
【0205】
一般式(4)及び一般式(41)で表される顔料は、「総炭素数/アゾ基の数」が40以下であることが好ましく、30以下である場合はより好ましい。一般式(4)及び一般式(41)で表される顔料は、「分子量/アゾ基の数」が700以下であることが好ましい。一般式(4)及び一般式(41)で表される顔料は、スルホ基、カルボキシル基等イオン性置換基が置換していない場合が好ましい。
【0206】
以下に前記一般式(4)及び一般式(41)で表されるアゾ顔料の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0207】
【化58】

【0208】
【化59】

【0209】
【化60】

【0210】
【化61】

【0211】
【化62】

【0212】
【化63】

【0213】
【化64】

【0214】
【化65】

【0215】
【化66】

【0216】
【化67】

【0217】
【化68】

【0218】
【化69】

【0219】
【化70】

【0220】
【化71】

【0221】
【化72】

【0222】
【化73】

【0223】
また、本発明の一般式(1)で表されるアゾ顔料は、下記一般式(5)で表されるものであっても良い。
【0224】
【化74】

【0225】
(一般式(5)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、R51は、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R52は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。m5は0〜7の整数を表し、m5が複数の場合、R52は同一でも異なっていても良い。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R51、R52、AまたはGを介した2〜4量体を表す。)
【0226】
一般式(5)においてGで表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。
一般式(5)においてR51で表されるカルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子としては、一般式(1)のRで説明したものと同じである。
一般式(5)においてR52で表される置換基としては、一般式(1)のR〜R6で説明したものと同じである。
一般式(5)においてAで表される芳香族5〜6員ヘテロ環基としては、一般式(1)のAで説明したものと同じである。
一般式(5)においてm5は0〜3である場合が好ましく、0〜1である場合はより好ましく、0である場合は、更に好ましい。nは1又は2である場合が好ましい。
【0227】
一般式(5)で表される顔料は、下記一般式(51)で表されるアゾ顔料である場合が好ましい。
【0228】
【化75】

【0229】
(一般式(51)中、G51は、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R521はアミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基又はヘテロ環基を表す。A51は前記へテロ環A群を表す。R52、m5、nは一般式(5)と同義である。n=2〜4の場合は、R521、R52、A51またはG51を介した2〜4量体を表す。)
【0230】
一般式(51)においてG51で表される脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(1)のGで説明したものと同じである。G51として好ましくは水素原子である。
一般式(51)においてR521で表されるアミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基としては、一般式(3)のR31で説明したものと同じである。
【0231】
一般式(51)においてR521として好ましくは、アミノ基、脂肪族オキシ基、窒素原子で結合した飽和ヘテロ環基の場合であり、より好ましくは、アミノ基の場合である。
【0232】
一般式(51)においてR52で表される置換基として好ましくは、一般式(5)のR52で説明したものと同じである。一般式(51)においてR52は、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基である場合がより好ましい。一般式(51)においてm5は0又は1である場合が好ましく、0である場合は更に好ましい。
一般式(51)においてA51は、一般式(2)のA(前記へテロ環A群)で説明したものと同じである。
【0233】
一般式(5)及び一般式(51)で表される顔料は、下記一般式(52)で表されるアゾ顔料であることが好ましい。
【0234】
【化76】

【0235】
(一般式(52)中、G51、R521、R52、m5、nは一般式(51)と同義である。R55、R56は水素原子又は置換基を表す。Zはハメットのσp値が0.2以上の電子求引性基を表す。)
【0236】
一般式(52)におけるZは、好ましい範囲を含めて、一般式(21)のZで説明したものと同じである。
一般式(52)におけるG51、R521、R52、m5、nの好ましい置換基、範囲は、一般式(51)のG51、R521、R52、m5、nと同じである。
一般式(52)におけるR55、R56の好ましい置換基、範囲は、一般式(32)のR55、R56の好ましい置換基、範囲と同じである。
【0237】
一般式(5)、一般式(51)及び一般式(52)で表される顔料は、「総炭素数/アゾ基の数」が45以下であることが好ましく、35以下である場合はより好ましい。一般式(5)、一般式(51)及び一般式(52)で表される顔料は、「分子量/アゾ基の数」が750以下であることが好ましい。一般式(5)、一般式(51)及び一般式(52)で表される顔料は、スルホ基、カルボキシル基等のイオン性置換基が置換していない場合が好ましい。
【0238】
以下に前記一般式(5)、一般式(51)及び一般式(52)で表されるアゾ顔料具体例を以下に示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されるが、記載された構造以外の互変異性体構造であってもよいことは言うまでもない。
【0239】
【化77】

【0240】
【化78】

【0241】
【化79】

【0242】
【化80】

【0243】
【化81】

【0244】
【化82】

【0245】
【化83】

【0246】
【化84】

【0247】
本発明の一般式(1)〜(5)の各式で表される顔料は、化学構造式が一般式(1)〜(5)の各式又はその互変異性体であればよく、多形とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であってもよい。
【0248】
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なることを言う。結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各多形は、レオロジー、色、及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
【0249】
本発明の一般式(1)〜(5)の各式で表される顔料に結晶多形が存在する場合、どの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形が混入していないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM、SEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
【0250】
上述した互変異性及び/又は結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。
【0251】
また、本発明において一般式(1)〜(5)の各式で表されるアゾ顔料は、酸基のある場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
【0252】
更に、本発明で使用する顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであってもよい。
【0253】
本発明において、前記一般式(1)〜(5)の各式で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよい。
【0254】
次に上記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。例えば、下記一般式(14)で表されるヘテロ環アミンを非水系酸性であるいは水系酸性でジアゾニウム化し、下記一般式(15)で表される化合物と酸性状態でカップリング反応を行い、常法による後処理を行って本発明の一般式(16)で表されるアゾ顔料を製造することができる。一般式(14)に代えて一般式(1)のAに対応するヘテロ環アミンを用い、同様の操作を行うことにより一般式(1)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
また、一般式(4)で表されるアゾ顔料の製造方法においては、その他に、下記一般式(14)で表されるヘテロ環アミンを非水系酸性でジアゾニウム化し、下記一般式(47)で表される化合物と酸性状態でカップリング反応を行い、常法による後処理を行って、中間体一般式(48)で表されるアゾ化合物を得て、更にR41に相当する原料と適当な縮合剤で縮合反応を行い、一般式(49)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
【0255】
【化85】

【0256】
(式中、R55、R56及びZは、前記一般式(21)で定義したものと同義である。)
【0257】
【化86】

【0258】
(式中、R〜Rは、前記一般式(1)で定義したものと同義である。)
以下に反応スキームを示す。
【0259】
【化87】

【0260】
(式中、R〜R、R55、R56、Z及びnは一般式(1)及び一般式(21)で定義したものと同義である。)
【0261】
【化88】

【0262】
(式中R41、R43、R45、R55、R56、Z、m、及びnは一般式(21)、一般式(4)及び一般式(41)で定義したものと同義である。)
【0263】
上記一般式(14)及び(A−1)〜(A−34)のアミノ体で表されるヘテロ環アミンは、市販品で入手することができるものもあるが、一般的には公知慣用の方法、例えば特許第4022271号公報、に記載の方法で製造することができる。上記一般式(15)で表されるヘテロ環カプラーは、市販品で入手することもできるが、特開2008−13472号公報に記載の方法およびそれに準じた方法で製造することができる。上記反応スキームで表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(5)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
一般式(1)のnが2以上の場合の合成方法は、一般式(14)または一般式(15)のR〜R、R55、R56、Z等において、置換可能な2価、3価あるいは4価の置換基を導入した原料を合成し、前記スキームと同様に合成することができる。
【0264】
このようにして反応させたものは、結晶が析出しているものもあるが、一般的には反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を、前述の本発明の親水溶媒を用いた加熱洗浄を行い、また必要に応じて乾燥して、一般式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
【0265】
析出した結晶を濾取する方法は特に限定されず、例えば吸引ろ過、フィルタープレス、シリンダープレス、デカンター、遠心分離器、ろ過遠心機などの公知の方法を用いることができる。
【0266】
濾取した結晶の乾燥方法としては、送風乾燥機、凍結乾燥などの方法を用いることができる。
【0267】
上記の製造方法によって、上記一般式(1)で表される顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明の顔料として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0268】
本発明の一般式(1)で表される顔料は後処理としてソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0269】
[顔料分散物]
本発明の顔料分散物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料、互変異性体、その塩又は水和物を少なくとも1種を含むことを特徴とする。これにより、色彩的特性、耐久性及び分散安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
【0270】
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。
【0271】
前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0272】
更に、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては、水に溶解する水溶解性の樹脂、水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0273】
本発明における水系顔料分散物が水性樹脂を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0274】
更に、顔料の分散及び画像の品質を向上させるため、界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0275】
本発明における水系顔料分散物が界面活性剤を含有する場合、その含有率は特に制限はない。例えば、顔料に対して0〜100質量%とすることができる。
【0276】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0277】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0278】
本発明の非水系顔料分散物は、前記一般式(1)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0279】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0280】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、少なくとも一種の本発明のアゾ顔料を含有する着色組成物を意味する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明のアゾ顔料を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0281】
〔インクジェット記録用インク〕
次に、本発明のインクジェット記録用インクについて説明する。
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0282】
本発明のインク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0283】
本発明のインク100質量部中に、本発明の顔料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0284】
本発明のインクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0285】
更に、本発明におけるインクは、上記本発明におけるアゾ顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、C.I.P.Y.74、C.I.P.Y.128、C.I.P.Y.155、C.I.P.Y.213が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.19、C.I.P.R.122が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、C.I.P.B.15:3、C.I.P.B.15:4が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0286】
本発明のインクジェット記録用インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0287】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0288】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0289】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0290】
本発明のインクジェット記録用インクの好ましい物性は以下の通りである。
インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0291】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s−1として行った。
【0292】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0293】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0294】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0295】
[カラーフィルター用着色組成物]
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料を含む。本発明のカラーフィルター用着色組成物(以下単に着色組成物と称する場合がある)は、少なくとも一種の一般式(1)で表されるアゾ顔料を含有する着色組成物を意味する。
本発明の着色組成物は、更に重合性化合物及び溶剤を含むことが好ましい。
また、本発明の着色組成物を製造する際、上記のようにして得られたアゾ顔料はそのまま配合しても、溶剤中に分散した顔料分散物を配合してもよい。アゾ顔料は顔料分散物とすることで、色彩的特性、耐久性及び分散安定性、耐光性や耐候性が優れたものとなり好ましい。
【0296】
本発明の着色組成物における一般式(1)で表されるアゾ顔料(他の顔料を併用している場合には用いた顔料の合計量)の使用量は、重合性化合物1質量部に対し、0.01〜2質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのが特に好ましい。
【0297】
〔重合性化合物〕
重合性化合物は、カラーフィルターの製造プロセスを考慮して適宜選択すれば良く、重合性化合物としては、感光性化合物及び/又は熱硬化性化合物などが挙げられるが、感光性化合物が特に好ましい。
【0298】
感光性化合物としては、光重合性樹脂、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーの少なくとも1種以上から選ばれ、エチレン性不飽和結合を有するものであることが好ましい。カラーフィルター用着色組成物には硬化した状態で樹脂となるものを含めば良く、未硬化の状態では樹脂化していない成分のみが含まれる場合を含む。
光重合性化合物、光重合性モノマー及び光重合性オリゴマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。また、アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、マレイン酸(共)重合体等のビニル樹脂や、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル等の側鎖にエチレン性二重結合を有する樹脂類も挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。重合性化合物の配合量は20〜90質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲がよい。
【0299】
重合性化合物の配合率は、カラーフィルター用組成物中の全固形分中40〜95質量%であることが好ましく、更には50〜90質量%であることが好ましい。組成物中には、必要に応じて他の樹脂類等を配合することができるが、この場合には、他の樹脂類を合わせた合計量が上記範囲に入ることが望ましい。なお、全固形分とは乾燥、硬化後に固形分として残る成分をいい、溶剤を含まず、単量体を含む。
〔光重合開始剤〕
重合性化合物として感光性化合物を用いる場合には、感光性化合物の単量体及び/又はオリゴマーと共に光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選択される1種以上が挙げられる。これらの光重合開始剤とともに、更に公知の光増感剤を使用してもよい。
【0300】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
【0301】
なお、本明細書及び請求の範囲において、「感光性樹脂」、及び「熱硬化性樹脂」は、各々硬化後の樹脂のみではなく、重合性の単量体又はオリゴマーも含むものとする。
【0302】
上記の感光性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とともに、他の重合性化合物として、酸性基を有するバインダー樹脂、及び、アクリル樹脂、ウレタン樹脂など一般的にインクに使用される樹脂を使用してもよい。
【0303】
〔溶剤〕
顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、そのカラーフィルターの製造方法によって異なり、例えばフォトリソグラフィー法では、非水系が好ましく、インクジェット法では、どちらでもかまわない。
本発明の着色組成物に用いる溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの脂肪酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオールなどのグリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジアルキルエーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3―ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの含窒素極性有機溶媒;水などが挙げられる。
【0304】
これらの溶剤のうち水溶性であるものは、水と混合して水性媒体として用いてもよい。また、水を除く上記の溶剤から選ばれる二種以上を混合して油性媒体として用いてもよい。
【0305】
顔料分散物とされたアゾ顔料は、顔料分散物とされていないアゾ顔料と比較して、耐光性や耐候性が優れたものとなる。
【0306】
本発明の着色組成物は、一般式(1)で表されるアゾ顔料を二種以上含むものでもよい。
【0307】
また、本発明の目的を妨げない範囲において、一般式(1)で表されるアゾ顔料とともに、他種の顔料、例えば、アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料などから選択される1種以上の顔料又はその誘導体を使用してもよい。
【0308】
本発明で用いられる併用してもよい顔料は特に限定されない。具体的には、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254等のレッド系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等のグリーン系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット23:19などが挙げられる。
【0309】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において顔料は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0310】
一般式(1)で表されるアゾ顔料以外の他の顔料を併用する場合、その含有量は、着色組成物中の顔料の総質量中、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0311】
なお、以下、本明細書において、「一般式(1)で表されるアゾ顔料」なる語は、一種の一般式(1)で表されるアゾ顔料のみならず、二種以上の一般式(1)で表されるアゾ化合物の組み合わせ、及び一般式(1)で表されるアゾ顔料と他の顔料の組み合わせを含む意味で用いられる。
【0312】
[顔料分散物(2)]
顔料分散物は、上記のアゾ顔料及び水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得ることが好ましい。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0313】
本発明において、顔料の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0314】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは30nm以上230nm以下である。顔料分散物中の粒子の数平均粒子径が20nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0315】
本発明の顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。上記範囲であれば表面張力、粘度等の分散物の物性値を調整しやすく好ましい。
【0316】
本発明のアゾ顔料は、その用途に適した耐溶剤性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明のアゾ顔料は、用いられる系に応じて乳化分散状態、更には固体分散状態でも使用することが出来る。
【0317】
また、成分を短時間で良好に分散させるために分散剤を組成物に含めてもよい。
本発明におけるカラーフィルター用着色組成物には、更に、界面活性剤、シリコーン系添加剤、顔料系の添加剤、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤から選択される1種以上の分散剤を含むことが好ましい。これらの分散剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0318】
以下に前記の分散剤の具体例について説明する。
界面活性剤は界面活性作用を有するものであれば特に限定されないが、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、又は両性などの界面活性剤を挙げることができ、その具体例としては、アルカンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルりん酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルりん酸塩、及び脂肪族モノカルボン酸塩などの陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、及び四級アミン塩などの陽イオン性界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルベタインなどの両性界面活性剤;陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性のいずれであってもよい高分子系界面活性剤などが挙げられる。
【0319】
シリコーン系添加剤の具体例としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリオルガノシロキサンポリエーテルコポリマー、ポリフルオロシロキサン、オルガノシランなどが挙げられる。これらのシリコーン系添加剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0320】
顔料系の添加剤とは、顔料骨格に塩基性基、酸性基、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、ポリオキシエチレン基などの置換基を導入した顔料誘導体である。好ましい顔料骨格としては、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料などが挙げられる。
【0321】
これらの顔料系の添加剤の中でも、アゾ系顔料の骨格に、上記置換基を導入したものが、一般式(1)で表されるアゾ化合物との親和性がよく好ましい。
【0322】
シラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピリトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、及びn−オクタデシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0323】
チタン系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、及びジブトキシビストリエタノールアミンチタネートなどが挙げられる。
【0324】
上記の分散剤の使用量は、使用する分散剤の種類にもよるが、一般式(1)で表されるアゾ化合物100質量部に対して、0.1〜100質量部用いるのが好ましく、0.5〜80質量部用いるのが特に好ましい。
【0325】
分散剤の使用方法は特に制限されず、公知のフォトリソグラフィー法用の着色組成物の調製方法に従えばよい。
本発明はカラーフィルター用着色組成物の調製方法にも関する。本発明のカラーフィルター用着色組成物の調製方法は界面活性剤、シリコーン系添加剤、顔料系の添加剤、シラン系カップリング剤及びチタン系カップリング剤から選択される1種以上の分散剤及び、一般式(1)で表されるアゾ化合物を、溶剤の一部に分散して顔料分散体を得る工程、及び、該顔料分散体を重合性化合物及び残余の溶剤と混合する工程を含む。
カラーフィルター用着色組成物の調製方法としては本発明の方法を用いることが好ましい。
【0326】
本発明はまた、上記のカラーフィルター用着色組成物を用いて形成される、カラーフィルターを提供する。該カラーフィルターは、高いコントラスト及び良好な光透過性を示す。具体的には、650nmの波長において、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の光透過性を示す。
【0327】
本発明のカラーフィルターを製造するには、公知のいずれの方法を用いてもよく、好適にはフォトリソグラフィー法及びインクジェット法が挙げられる。以下、フォトリソグラフィー法及びインクジェット法について、詳細に説明する。
【0328】
1)フォトリソグラフィー法
フォトリソグラフィー法によりカラーフィルターを形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物として、感光性樹脂を用いる。感光性樹脂は、単量体及び/又はオリゴマーとして光重合開始剤と共に着色組成物中に配合され、光照射により硬化し透明基板上に被膜を形成する。
【0329】
感光性樹脂としては、前述の分子中に一つ以上のエチレン性二重結合を有する重合性単量体の重合体又は共重合体が好適に用いられる。
【0330】
これらの感光性樹脂(重合性単量体)としては、特にアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが好ましく、具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。
【0331】
フォトリソグラフィー法を用いる場合、本発明の着色組成物に、前述の感光性樹脂に加え、酸性基を有するバインダー樹脂を用いる。酸性基を有するバインダー樹脂としては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基などを有する樹脂が挙げられ、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するバインダー樹脂が好ましい。
【0332】
上記の酸性基を有するバインダー樹脂としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン及びアクリルアミドなどから選ばれるエチレン性二重結合を有する単量体と、アクリル酸、メタクリル酸、p−スチレンカルボン酸、p−スチレンスルホン酸、p−ヒドロキシスチレン及び無水マレイン酸などから選択される、酸性基を有するエチレン性二重結合を有する単量体との共重合体が好ましく使用される。
【0333】
酸性基を有するバインダー樹脂は、感光性樹脂(重合性単量体)1質量部に対して、0.5〜4質量部用いるのが好ましく、1〜3質量部用いるのが特に好ましい。
【0334】
フォトリソグラフィー法用の着色組成物に用いる溶剤としては、脂肪酸エステル類、ケトン類、芳香族類、アルコール類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、エーテル類、及び含窒素極性有機溶媒から選択される1種以上の油性媒体が挙げられる。
【0335】
これらの溶剤の使用量は、着色組成物中の溶剤以外の成分の総質量に対して3〜30倍質量であるのが好ましく、4〜15倍質量であるのが特に好ましい。
【0336】
また、本発明におけるフォトリソグラフィー法用の着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0337】
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、一般式(1)で表されるアゾ化合物、重合性化合物、溶剤、及びその他各種添加剤を、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、二本ロールミル、三本ロールミル、ホモジナイザー、ニーダー、振とう分散機などの機器を用い、均一に混合、分散させる工程、及び前記溶剤等を用いて粘度調整する工程を含む方法により調製することが出来る。
【0338】
本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いてカラーフィルターを基板上に形成させる方法は、公知のフォトリソグラフィー法を用いれば良い。例えば、本発明の着色組成物を印刷法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法などの公知の方法によりディスプレー基板上に均一に塗布する工程、加熱によりインク中の溶剤を除去する工程、ディスプレー基板上のカラーフィルターパターンを高圧水銀ランプなどを用い露光する工程、アルカリ現像工程、洗浄工程、及び、ベーキング工程を含む方法によりカラーフィルターが得られる。
上記本発明のカラーフィルターの製造方法に用いる現像液としては、本発明の組成物を溶解し、一方、放射線照射部を溶解しない組成物であればいかなるものも用いることができる。具体的には種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
有機溶剤としては、本発明の組成物を調整する際に使用される前述の溶剤が挙げられる。
アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−〔5.4.0〕−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に、現像後、水で洗浄する。
【0339】
2)インクジェット法
カラーフィルターをインクジェット法を用いて形成する場合には、本発明のカラーフィルター用着色組成物の重合性化合物としては、インクジェット方式用インクに従来用いられているものであれば特に限定されず、いずれを用いてもよい。感光性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂の単量体が好適に用いられる。
【0340】
これらの感光性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂及びエポキシ樹脂などが挙げられ、アクリル樹脂、及びメタクリル樹脂が好適に使用される。アクリル樹脂及びメタクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アルキルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、アミノアルキルメタクリレートなどから選ばれる光重合性の単量体と、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、及びトリアジン誘導体などの化合物から選ばれる光重合開始剤を組み合わせて用いたものが好ましい。また、上記の光重合性単量体の他に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどの親水性基を有する光重合性単量体を加えてもよい。
【0341】
熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
【0342】
インクジェット法を用いる場合、着色組成物に用いる溶剤は、油性媒体でも水性媒体でもよいが、水性媒体がより好適に使用される。水性媒体は水又は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が用いられるが、水及び水溶性有機溶媒の混合溶媒が好ましい。また、脱イオン処理されたものを使用することが望ましい。
【0343】
上記の着色組成物において使用する油性媒体は特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィー法に用いる着色組成物用の溶剤として挙げたものなどを使用することが出来る。
【0344】
水性媒体中に使用する溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコール類、グリセリン、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、アルキレングリコールジアルキルエーテル類、アルカノールアミン類、及び含窒素極性有機溶媒などから選択され、水溶性を有するものが挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0345】
これらの溶剤の使用量は特に限定されないが、着色組成物の粘度が室温にて20mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以下となるように使用量を適宜調節するのがよい。
【0346】
本発明のインクジェット用の着色組成物は、フォトリソグラフィー法用の着色組成物と同様に成分を分散、混合させる工程を含む方法により調製することが出来る。分散時には必要に応じ、フォトリソグラフィー法の場合と同様に分散剤を配合してもよい。
【0347】
また、本発明におけるインクジェット用の着色組成物に、前述の成分の他に必要に応じて、湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤などの公知の種々の添加剤を含めてもよい。
【0348】
上記のように得られた着色組成物を用いたカラーフィルターの形成方法は、公知のインクジェット方式によるカラーフィルターの形成方法であれば特に限定されない。例えば、基板上に液滴状で所定のカラーフィルターパターンを形成させる工程、これを乾燥させる工程、及び熱処理あるいは光照射あるいはこれらの双方を行って基板上のカラーフィルターパターンを硬化、皮膜化させる工程を含む方法によりカラーフィルターを形成することができる。
【0349】
以上、フォトリソグラフィー法とインクジェット法について説明したが、本発明のカラーフィルターは他の方法によって得られたものでもよい。
【0350】
上記以外のカラーフィルター形成方法(例えばオフセット印刷法などの種々の印刷法)を用いる場合であっても、着色組成物が前述の重合性化合物及び溶剤を含み、一般式(1)で表されるアゾ顔料を着色剤に使用するものであれば、カラーフィルター用着色組成物、得られたカラーフィルターの何れも本発明の範囲に含まれる。
【0351】
例えば、重合性化合物、溶剤、添加剤などの成分、及びカラーフィルター形成時の処方については、慣用例に従って選択すればよく、上述のフォトリソグラフィー法及びインクジェット法の説明に挙げたものに限定されない。
【0352】
以上のようにして得られる、本発明のカラーフィルターは、公知の方法によりG(緑)、B(青)のカラーフィルターパターンとともに画素を形成する。かかるフィルターは、透明性が非常に高く、分光特性にすぐれ、消偏光作用の小さい、鮮明な画像を表示可能な液晶ディスプレーを与えることができる。また、このカラーフィルタが形成されたデバイスを使用すると、良好な分光特性を有するカメラモジュールを与える事が出来る。
本発明のカラーフィルターは、液晶表示素子やCCD、CMOS等の固体撮像素子に用いることができ、100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS素子等にも好適である。
【実施例】
【0353】
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」及び「部」は、「質量%」及び「質量部」を表す。
【0354】
〔合成例1〕
アゾ顔料D−8の合成(1)
<合成工程>
15gの式(7)で表される化合物を120mlのリン酸に加えて室温下完溶させ、この溶液を氷冷して5℃に保ち、ニトロシル硫酸(40%硫酸溶液)24.9gを滴下して、その後、45分攪拌した。この反応液に尿素0.5gを加えて、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、式(8)で表される化合物20gをN−メチルピロリドン(NMP)(196ml)と1−メトキシ−2−プロパノール(196ml)の混合溶媒に溶かして、その後硫酸(3.6g)を滴下した溶液に、15〜18℃に保ちながら40分間かけて滴下した。得られた溶液を20〜25℃に保ちながら2時間攪拌し、その後、メタノールを750ml追加して、20〜25℃に保ちながら3時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをして顔料ペーストを得た。
【0355】
<洗浄工程>
ペーストにメタノール750ml加えて、2時間加熱還流し、その後、20〜25℃に保ちながら攪拌したのちに結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをした結晶を濾別し、室温にて24時間、50℃の減圧デシケータで10時間乾燥させ、鮮やかな赤色の粉末のアゾ顔料D−8aを32.4g得た。収率95%。
【0356】
【化89】

【0357】
〔合成例2〜合成例11、比較例1〜2〕
洗浄を表1記載の条件に変更した以外は、合成例1と同様にアゾ顔料D−8b〜k、およびD−8A、D−8Bを合成した。
【0358】
〔合成例12〕
アゾ顔料D−8の合成(2)
<合成工程>
15gの式(7)で表される化合物を120mlのリン酸に加えて室温下完溶させ、この溶液を氷冷して5℃に保ち、ニトロシル硫酸(40%硫酸溶液)24.9gを滴下して、その後、45分攪拌した。この反応液に尿素0.5gを加えて、ジアゾニウム塩溶液を得た。このジアゾニウム塩溶液を、式(8)で表される化合物18gと式(3c)で表される化合物2gをDMSO(196ml)と1−メトキシ−2−プロパノール(196ml)の混合溶媒に溶かして、その後燐酸(15.5g)を滴下した溶液に、15〜18℃に保ちながら40分間かけて滴下した。得られた溶液を20〜25℃に保ちながら2時間攪拌し、その後、メタノールを750ml追加し、20〜25℃に保ちながら3時間攪拌した。析出した結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをして顔料ペーストを得た。
<洗浄工程>
ペーストにメタノール750ml加えて、2時間加熱還流し、その後、20〜25℃に保ちながら攪拌したのちに結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをした結晶を濾別し、室温にて24時間、50℃の減圧デシケータで10時間乾燥させ、鮮やかな赤色の粉末のアゾ顔料D−8lを32.4g得た。収率95%。
【0359】
【化90】

【0360】
〔合成例13〜15〕
洗浄を表1記載の条件に変更した以外は、合成例12と同様にアゾ顔料D−8m〜pを合成した。
〔合成例16〜17〕
合成例1の合成工程と同様に、D−1、D−2の構造のアゾ顔料を含有する顔料ペーストを得た以外は、合成例1と同様の洗浄工程を行い、アゾ顔料D−1a、D−2aを合成した。
【0361】
〔カラーフィルタの評価〕
(顔料分散組成物Pの調製)
下記組成からなる混合液を、ビーズミルにより2時間混合・分散して赤色顔料分散組成物Pを調製した。
【0362】
−組成−
・合成例にて合成した各顔料 9.07部
・下記顔料誘導体1(アゾ顔料誘導体) 1.31部
・下記分散剤2(重量平均分子量35000) 6.59部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 80.29部
【0363】
【化91】

【0364】
<分散安定性評価>
赤色顔料分散組成物についてE型粘度計(東機産業(株)社製、RE−85L)を用いて、分散直後の粘度η1(単位mPa・s)、および分散後、室温(25℃。以下同じ。)にて1週間放置した後の粘度η2(単位mPa・s)を室温にて測定し、増粘量〔η2−η1〕を算出した。更に、算出された増粘量に基づき、下記評価基準に従って分散安定性を評価した。評価結果を表1に示す。
増粘量が少ない程、分散安定性が良好であることを示す。
【0365】
−評価基準−
○:増粘量が6mPa・s以下
×:増粘量が6mPa・sより大きい
【0366】
〔感光性樹脂組成物(塗布液)の調製〕
前記分散処理した顔料分散液を用いて下記組成比となるよう攪拌混合し、感光性樹脂組成物の塗布液を調製した。
【0367】
・前記顔料分散液 60部
・光重合開始剤(2,2’-ビス(2−クロロフェニル) -4,4’,5,5’
−テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール) 2.5部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 5部
・アルカリ可溶性樹脂(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸
/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、
mol比:80/10/10、Mw:10000) 0.5部
・溶剤:PGMEA 90部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 0.1部
・増感剤(下記化学式αで表される化合物) 1.5部
・共増感剤(2−メルカプトベンゾイミダゾール) 1.5部
【0368】
【化92】

【0369】
〔カラーフィルタの作製〕
上記顔料を含有する感光性樹脂組成物を、ガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、10分間そのままの状態で待機させ、真空乾燥と加熱処理(100℃、80秒)を施して感光性樹脂組成物塗膜を形成した。その後、100mJ/cmにて上記感光性組成物塗膜を全面露光し、塗布膜の全面を有機系現像液(商品名:CD、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の10%水溶液で被い、60秒間静止した。純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、かかる露光(光硬化)処理及び現像処理を施した塗布膜を220℃のオーブンにて1時間加熱した。これにより、ガラス基板上に感光性樹脂層(着色層)を形成してなるカラーフィルタを得た。
【0370】
(スリット塗布条件)
・塗布ヘッド先端の開口部の間隙: 50μm
・塗布速度: 100mm/秒
・基板と塗布ヘッドとのクリヤランス: 150μm
・乾燥膜厚: 1.75μm
・塗布温度: 23℃
【0371】
〔性能評価〕
得られた各顔料分散液、感光性樹脂組成物、及びカラーフィルタの性能を下記の方法に従って測定した。その結果を表1に記す。
(1.粘度)
各実施例及び比較例における顔料分散液の25℃における粘度をE型粘度計(商品名RE−810、東機産業(株)社製)により測定し、表1に記載した。
【0372】
(2.コントラスト)
ガラス基板上に形成したカラーフィルタを偏光板で挟み込み、偏光板が平行時の輝度と直行時の輝度とを(BM−5、トプコン社製)にて測定し、コントラスト(=平行時の輝度/直行時の輝度)を求めた。
【0373】
(3.電圧保持率)
このガラス基板のカラーフィルタ上に、5μmのスペーサーを散布した後、対抗側にも10mm角のITO電極を形成した基板を貼り合わせて評価用のセルを形成した。このセルにメルク社製液晶MJ971189を注入し、70℃で48時間エージング後に、東陽テクニカ製液晶電圧保持率測定システムVHR−1A型(商品名)により電圧保持率を測定した。電圧保持率の測定条件は、印加電圧:5V、測定時間16.7msecとした。
【0374】
−評価基準−
◎:電圧保持率96%以上
○:電圧保持率94%以上95%以下
△:電圧保持率91%以上93%以下
×:電圧保持率90%以下
【0375】
【表1】

【0376】
・DMSO:ジメチルスルホキシド、EG:エチレングリコール、DMAC:ジメチルアセトアミド
・混合溶媒の混合比は容量比である。
・表1において、粒子径は、得られたアゾ顔料を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察し、その1次粒子の長軸方向の長さを測定したものである。
【0377】
〔合成例21〕
アゾ顔料D3−1の合成
<合成工程>
1.0gの下記化合物(1)を10mlのリン酸(和光純薬工業株式会社;試薬特級、純度85%)に加えて溶かした。この溶液を氷冷して−5〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に下記化合物(0)1.1gにジメチルアセトアミド(DMAc)20mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を13℃以下で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に1時間攪拌した。反応液にメタノール50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別し、メタノール50mlでかけ洗いをして顔料ペーストを得た。
<洗浄工程>
ペーストにメタノール750ml加えて、2時間加熱還流し、その後、20〜25℃に保ちながら攪拌したのちに結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをした結晶を濾別し、室温にて24時間、50℃の減圧デシケータで10時間乾燥させ、鮮やかな赤色の粉末のアゾ顔料D3−1aを2.0g得た。収率93%。
【0378】
【化93】

【0379】
〔合成例22〜23、比較例3〕
洗浄を表2記載の条件に変更した以外は、合成例21と同様にアゾ顔料D3−1b〜c、D3−1Aを合成した。
〔合成例24〕
合成例21の合成工程と同様に、D3−31の構造のアゾ顔料を含有する顔料ペーストを得た以外は、合成例21と同様の洗浄工程を行い、アゾ顔料D3−31aを合成した。
【0380】
合成例21〜24、比較例3で得られた、アゾ顔料D3−1a〜c、D3−31a、D3−1Aについて、前記合成例1〜15で得られたアゾ顔料D−8a〜pと同様に、顔料分散物の分散安定性、粘度、カラーフィルタとした場合の諸性能を評価した。結果を下記表2に示す。
【0381】
【表2】

【0382】
〔合成例31〕
アゾ顔料D4−1の合成
<合成工程>
中間体(42)の合成
3.0gの下記化合物(41)を20mlのリン酸に加えて溶かした。この溶液を氷冷して−5〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム1.2gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(40)3.1gに2−メトキシエタノール50mlを添加し攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を8℃以下で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に2時間攪拌した。反応液に水50mlを添加し、30分間攪拌し、析出している結晶を濾別した。結晶を乾燥せずにメタノール30mlを加え、室温で30分間攪拌し、濾過、メタノール20mlでかけ洗いをし、化合物(42)を5.1g得た。収率82.3%。
D4−1の合成
中間体(42)を1.0g、ジメチルアセトアミド(DMAc)50ml、ジシクロヘキシルアミン0.7g、アニリン0.5gを60℃で15分間攪拌した。その後25℃で30分間攪拌し、析出した結晶をろ過し、DMAc20mlでかけ洗いをした。
<洗浄工程>
ペーストにメタノール750ml加えて、2時間加熱還流し、その後、20〜25℃に保ちながら攪拌したのちに結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをした結晶を濾別し、室温にて24時間、50℃の減圧デシケータで10時間乾燥させ、鮮やかな赤色の粉末のアゾ顔料D4−1aを2.2g得た。収率90%。
【0383】
【化94】

【0384】
〔合成例32〜33、比較例4〕
洗浄を表3記載の条件に変更した以外は、合成例31と同様にアゾ顔料D4−1b〜c、D4−1Aを合成した。
〔合成例34〜35〕
合成例31の合成工程と同様に、D4−8、D4−9の構造のアゾ顔料を含有する顔料ペーストを得た以外は、合成例31と同様の洗浄工程を行い、アゾ顔料D4−8a、D4−9aを合成した。
【0385】
合成例31〜35、比較例4で得られた、アゾ顔料D4−1a〜c、D4−8a、D4−9a、D4−1Aについて、前記合成例1〜15で得られたアゾ顔料D−8a〜pと同様に、顔料分散物の分散安定性、粘度、カラーフィルタとした場合の諸性能を評価した。結果を下記表3に示す。
【0386】
【表3】

【0387】
〔合成例41〕
アゾ顔料D5−1の合成
<合成工程>
1.0gの化合物(51)を7.5mlのリン酸(和光純薬工業株式会社;試薬特級、純度85%)に加えて溶かした。この溶液を氷冷して−2〜0℃に保ち、亜硝酸ナトリウム0.38gを加えて1時間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(50)1.50gにN−メチルピロリドン25mlを添加し溶解攪拌下に、前述のジアゾニウム塩溶液を5〜12℃で加えた。添加終了と同時に氷浴をはずし、更に2時間攪拌した。反応液にメタノール100mlを添加し、30分間攪拌し、析出した結晶を濾過して顔料ペーストを得た。
<洗浄工程>
ペーストにメタノール750ml加えて、2時間加熱還流し、その後、20〜25℃に保ちながら攪拌したのちに結晶を濾別し、メタノール500mlでかけ洗いをした結晶を濾別し、室温にて24時間、50℃の減圧デシケータで10時間乾燥させ、鮮やかな赤色の粉末のアゾ顔料D5−1aを2.8g得た。収率96%。
【0388】
【化95】

【0389】
〔合成例42〜43、比較例5〕
洗浄を表4記載の条件に変更した以外は、合成例41と同様にアゾ顔料D5−1b〜c、D5−1Aを合成した。
〔合成例44〕
合成例41の合成工程と同様に、D5−5の構造のアゾ顔料を含有する顔料ペーストを得た以外は、合成例41と同様の洗浄工程を行い、アゾ顔料D5−5aを合成した。
【0390】
合成例41〜44、比較例5で得られた、アゾ顔料D5−1a〜c、D5−5a、D5−1Aについて、前記合成例1〜15で得られたアゾ顔料D−8a〜pと同様に、顔料分散物の分散安定性、粘度、カラーフィルタとした場合の諸性能を評価した。結果を下記表4に示す。
【0391】
【表4】

【0392】
〔インクジェットインクの評価〕
〔実施例101〕
国際公開番号WO06/064193号パンフレットの22ページに記載されているDispersant 10で表される高分子分散剤を水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた分散剤水溶液75質量部(固形分濃度20%)の中に、前記合成で製造されたアゾ顔料(D−8a)30質量部及びイオン交換水95質量部を加えて、ディスパー攪拌翼にて混合・粗分散する。混合・粗分散した液にジルコニア・ビーズを600質量部を入れて、これを分散機(サンドグラインダミル)で4時間分散した後、ビーズと分散液に分離した。得られた混合物を攪拌しながら、25℃でポリエチレングリコールジグリシジルエ−テル2質量部をゆっくり加え、50℃で6時間攪拌した。更に、分画分子数300Kの限外濾過膜を使って不純物を除去し、これをポアサイズ5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)社製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより固形分濃度10%の顔料分散物101(粒径80nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0393】
[実施例102]
実施例101で用いた顔料(D−8a)に変えてD−1aを用いた以外は実施例101と同様にして顔料分散物102を得た。
[実施例103]
実施例101で用いた顔料(D−8a)に変えてD3−1aを用いた以外は実施例101と同様にして顔料分散物103を得た。
[実施例104]
実施例101で用いた顔料(D−8a)に変えてD4−1aを用いた以外は実施例101と同様にして顔料分散物104を得た。
[比較例101]
実施例101において用いたアゾ顔料(D−8a)の代わりに、レッド顔料(C.I.ピグメント・レッド254(チバスペシャル社製BT−CF)を用いた以外は実施例101と同様にして比較顔料分散物101を得た。
【0394】
〔実施例105〕
実施例101で得られた顔料分散物101を固形分で5質量%、グリセリン10質量%、2−ピロリドン5質量%、1,2―ヘキサンジオール2質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル2質量%、プロピレングリコール0.5質量%、イオン交換水75.5質量%になる様に各成分を加えて、得られた混合液をポアサイズ1μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)社製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより下記表5に示す本発明の顔料インク液5を得た。
[実施例106]
実施例101で得られた顔料分散物101の代わりに、実施例102で得られた顔料分散物102を用いた以外は実施例105と同様にして顔料インク液6を得た。
[実施例107]
実施例101で得られた顔料分散物101の代わりに、実施例103で得られた顔料分散物103を用いた以外は実施例105と同様にして顔料インク液7を得た。
[実施例108]
実施例101で得られた顔料分散物101の代わりに、実施例104で得られた顔料分散物104を用いた以外は実施例105と同様にして顔料インク液8を得た。
【0395】
[比較例102]
実施例101で得られた顔料分散物101の代わりに、比較例101で得られた比較顔料分散物101を用いた以外は実施例105と同様にして比較顔料インク液5を得た。
【0396】
なお、下記表5において、「吐出安定性」、「光堅牢性」、「熱堅牢性」、「オゾン堅牢性」、「金属光沢」、「インク液安定性」は、各インクをセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のマゼンタインク液のカートリッジに装填し、その他の色のインクはPX−V630の顔料インク液を用い、受像シートはセイコーエプソン(株)社製写真用紙<光沢>、及びセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>に推奨モードきれいで階段状に濃度が変化した単色画像パターン並びにグリーン、レッド、グレーの画像パターンを印画させ、画像品質(金属光沢)並びにインクの吐出性と画像堅牢性の評価を行った。金属光沢以外の評価は単色で行った。
【0397】
上記実施例105〜8(顔料インク液5〜8)及び比較例102(比較顔料インク液5)のインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を下記表5に示した。
【0398】
(評価実験)
1)吐出安定性については、カートリッジをプリンターにセットし全ノズルからのインクの突出を確認した後、A4 20枚出力し、以下の基準で評価した。
A:印刷開始から終了まで印字の乱れ無し
B:印字の乱れのある出力が発生する
C:印刷開始から終了まで印字の乱れあり
【0399】
2)画像保存性については、印画サンプルを用いて、以下の評価を行った。
[1] 光堅牢性は印画直後の画像濃度CiをX−rite310にて測定した後、アトラス社製ウェザーメーターを用い画像にキセノン光(10万ルックス)を14日照射した後、再び画像濃度Cfを測定し画像残存率Cf/Ci×100を求め評価を行った。画像残像率について反射濃度が1、1.5、2の3点にて評価し、いずれの濃度でも画像残存率が80%以上の場合をA、2点が80%未満の場合をB、全ての濃度で80%未満の場合をCとした。
【0400】
[2] 熱堅牢性については、80℃60%RHの条件下に7日間、印字サンプルを保存する前後での濃度を、X−rite310にて測定し、画像残存率を求め評価した。画像残像率について反射濃度が1、1.5及び2の3点にて評価し、いずれの濃度でも画像残存率が95%以上の場合をA、2点が95%未満の場合をB、全ての濃度で95%未満の場合をCとした。
【0401】
[3] 耐オゾン性(オゾン堅牢性)については、オゾンガス濃度が5ppm(25℃;50%)に設定されたボックス内に14日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製PhotographicDensitometer310)を用いて測定し、画像残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも画像残存率が80%以上の場合をA、1又は2点が80%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
【0402】
3)金属光沢の発生有無:イエロー及びグリーン、レッドのベタ印画部を反射光により目視観察し評価した。
金属光沢の見えないものを「○」、金属光沢の見えるものを「×」として評価した。
【0403】
4)インク液安定性:実施例及び比較例の顔料インク液を60℃で10日間経時した後、顔料インク液中の粒径変化なしを「○」、粒径変化ありを「×」として評価した。下記表5に示した。
【0404】
【表5】

【0405】
上記表5の結果から、本発明の顔料を使用した顔料インク液は吐出性、耐侯性に優れ、金属光沢の発生が押さえられ、顔料インク液安定性に優れることがわかった。
上記表5の結果から明らかなように、本発明のインク液を使用した系ではすべての性能に優れていることがわかる。特に比較例に対して、光堅牢性及びインク液安定性が優れている。
【0406】
〔実施例109〕
実施例105〜108で作製した顔料インク液を、エプソン(株)社製のPX−V630にて画像を富士フイルム(株)社製インクジェットペーパーフォト光沢紙「画彩」にプリントし、実施例105と同様な評価を行ったところ、同様な結果が得られた。
表5の結果から明らかなように、本発明の顔料を用いた顔料分散物及び顔料インク液は色調に優れ、高い着色力及び耐光性を示す。
従って、本発明の顔料を用いた顔料分散物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク等に好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0407】
本発明のアゾ顔料の製造方法では、液晶表示装置等のカラーフィルターに用いることによりコントラスト、及び、液晶表示装置の電圧保持率がいずれも高いものとなる、アゾ顔料を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ顔料、その互変異性体、それらの塩又は水和物の製造方法であって、SP値14以上34以下の親水溶媒を70質量%以上100質量%以下含む溶媒で加熱洗浄する工程を含むことを特徴とするアゾ顔料の製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、Rは、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R〜Rは各々独立に水素原子又は置換基を表し、R及びRは互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R〜R、A又はGを介した2〜4量体を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載のアゾ顔料の製造方法。
【化2】

(一般式(2)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R21は、アミノ基、脂肪族オキシ基を表し、R22〜R26は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R24及びR25は互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R21〜R26、A又はGを介した2〜4量体を表す。)
【化3】

(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(2)のアゾ基との結合位置を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1記載のアゾ顔料の製造方法。
【化4】

(一般式(3)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R31は、アミノ基、脂肪族オキシ基、脂肪族基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R32〜R36は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R34及びR35は互いに連結して芳香族環を形成してもよい。Aは下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R31〜R36、A又はGを介した2〜4量体を表す。)
【化5】

(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(3)のアゾ基との結合位置を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1記載のアゾ顔料の製造方法。
【化6】

(一般式(4)中、Gは、水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基を表し、R41は、−C(=O)NR4445、−NR46C(=O)−R47、−C(=O)OR48又は−OR48を表す。R43は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表す。Aは、下記一般式(A−1)〜(A−34)を表す。mは0〜5の整数を表す。mが複数の場合はR41は同一であっても異なっていても良い。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R41、R43、A又はGを介した2〜4量体を表す。R44は、水素原子又はアルキル基を表す。R45は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基又は−N(R49)(R410)を表す。R46は水素原子又はアルキル基を表す。R47はアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシ基、又は−N(R49)(R410)を表す。R48は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基又はアシル基を表す。R49は水素原子、又はアルキル基を表し、R410は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R44とR45、R49とR410は互いに結合し、5〜6員環を形成していても良い。)
【化7】

(一般式(A−1)〜(A−34)中、R51〜R58は水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合し、5〜6員環を形成していてもよい。*は一般式(4)のアゾ基との結合位置を表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるアゾ顔料が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1記載のアゾ顔料の製造方法。
【化8】

(一般式(5)中、Gは水素原子、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、カルバモイル基又はスルホニル基を表し、R51は、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、カルバモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、ヘテロ環カルボニルアミノ基、水素原子、脂肪族基、ヘテロ環基、脂肪族オキシ基、又はハロゲン原子を表し、R52は置換基を表し、Aは芳香族5〜6員ヘテロ環基を表す。m5は0〜7の整数を表し、m5が複数の場合、R52は同一でも異なっていても良い。nは1〜4の整数を表す。n=2〜4の場合は、R51、R52、A又はGを介した2〜4量体を表す。)
【請求項6】
前記親水溶媒が、水、メタノールから選択される溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項7】
前記親水溶媒で1〜3回加熱洗浄することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で得られたアゾ顔料又はその互変異性体を含有することを特徴とする顔料分散物。
【請求項9】
請求項8に記載の顔料分散物を含有することを特徴とする着色組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の着色組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項11】
請求項9に記載の着色組成物を含有することを特徴とするカラーフィルター用着色組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−7043(P2012−7043A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142918(P2010−142918)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】