説明

アデノシンA2A受容体のアゴニストであるプリン誘導体

本発明は、式(I)の新規のアデノシン受容体アゴニスト、それらの製造方法およびそれらの医薬品としての使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物、それらの調製方法、それらを含有する医薬製剤、およびそれらの治療における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、組織の損傷または微生物の侵入に対する一次応答であり、白血球の内皮への接着、漏出および組織内での活性化を特徴とする。白血球の活性化は有毒な酸素種(スーパーオキシドアニオンなど)の発生、および顆粒生成物(ペルオキシダーゼおよびプロテアーゼなど)の放出をもたらす可能性がある。循環白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球およびリンパ球が含まれる。異なる型の炎症には異なるタイプの浸潤白血球が関与し、特定のプロファイルは、組織内における接着分子、サイトカインおよび走化因子発現のプロファイルにより調節される。
【0003】
白血球の第一の機能は宿主を細菌および寄生生物などの侵入する生物から守ることである。組織が損傷または感染を受けると、循環系から冒された組織への白血球の局所的な動員を起こす一連の現象が生じる。白血球の動員は、異質細胞または死細胞の秩序だった破壊および食作用と、それに続く組織の修復および炎症性浸潤の解消が可能になるように制御される。しかしながら、慢性炎症状態においては、動員はしばしば不適切であり、解消は適切に制御されず、炎症反応が組織の破壊を引き起こす。
【0004】
in vitroおよびin vivoの両方の研究により、アデノシンA2A受容体において活性な化合物が抗炎症作用を有することを示唆する証拠が得られている。この分野については、Cronstein (Cronstein BN, (1994), J. Appl. Physiol. 76, pp 5-13)およびJacobson (Jacobson KA & Gao Z-A (2006), Nature Reviews Drug Discovery, 5, pp 247-264)による総説がある。単離された好中球を用いた研究により、スーパーオキシドの生成、脱顆粒、凝集および接着のA2受容体により仲介される阻害が示されている(Cronstein BN, Kramer SB, Weissmann G, Hirschhorn R, (1983), Trans. Assoc. Am. Physicians 96, pp 384-391; Cronstein BN, Kramer SB, Rosenstein ED, Weissmann G, Hirschhorn R, (1985), Ann N.Y. Acad. Sci. 451, pp 291-301; Burkey TH, Webster RO, (1993), Biochem. Biophys. Acta 1175, pp 312-318; Richter J, (1992), J. Leukocyte Biol. 51, pp 270-275; Skubitz KM, Wickman NW, Hammerschmidt DE, (1988), Blood 72, pp 29-33)。A2B受容体(例えば、CGS21680)に対してA2A受容体に選択的な薬物を使用した場合、阻害のプロファイルはA2A受容体サブタイプに対する活性と一致するように見える(Dianzani C, Brunelleschi S, Viano I, Fantozzi R, (1994), Eur. J. Pharmacol. 263, pp 223-226)。アデノシンアゴニストは、他のクラスの白血球をも下方制御する可能性がある(Elliot KRF, Leonard EJ, (1989), FEBS Letters 254, pp 94-98; Peachell PT, Lichtenstein LM, Schleimer RP, (1989), Biochem. Pharmacol. 38, pp 1717-1725)。動物全体を用いた研究により、メトトレキセートの抗炎症作用がアデノシンおよびA2受容体の活性化により仲介されることが示された(Asako H, Wolf RE, Granger DN, (1993), Gastroenterology 104, pp 31-37; Cronstein BN, Naime D, Ostad E, (1993), J. Clin. Invest. 92, pp 2675-2682; Cronstein BN, Naime D, Ostad E, (1994), Adv. Exp. Med. Biol. 370, pp 411-416)。選択的A2AアゴニストであるCGS-21680は、ラットにおいてアレルゲンによる攻撃により誘導された肺の炎症において抗炎症活性を示し、選択的A2A受容体アンタゴニストZM241385による前処理により遮断される(Fozard, John R.; Ellis, Karen M.; Villela Dantas, Maria F.; Tigani, Bruno; Mazzoni, Lazzaro, European Journal of Pharmacology (2002), 438(3), 183-188)。アデノシン自体、およびアデノシンの血中濃度を上げる化合物も、in vivoにおいて抗炎症作用を示す(Green PG, Basbaum AI, Helms C, Levine JD, (1991), Proc. Natl. Acad Sci. 88, pp 4162-4165; Rosengren S, Bong GW, Firestein GS, (1995), J. Immunol. 154, pp 5444-5451)。さらに、ヒトにおける血中アデノシン濃度の上昇(アデノシンデアミナーゼ欠乏の結果としての)は、免疫抑制を引き起こし(Hirschorn R, (1993), Pediatr. Res. 33, pp S35-41)、また、炎症の制限および終結においてA2A受容体が果たす決定的な役割がOhtaにより報告された(Ohta, A & Sitkovsky, M, Nature, (2001), 414, pp916-920; Sitkovsky, MV & Ohta, A, Trends in Immunology, (2005), 26, pp299-304)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、白血球の動員および活性化を阻害する、また、アデノシン2A(以後A2Aと呼ぶ)受容体の強力なアゴニストである新規化合物を見出した。そのため、前記化合物は、炎症の部位で白血球が関与している疾病において白血球に誘導される組織損傷からの保護を提供する治療効果を有する可能性がある。また、本発明の化合物は、炎症性疾患の治療において、その副作用のために使用が制限されるコルチコステロイドのより安全な代替物ともなり得る。
【0006】
さらに、本発明の化合物は、公知のA2A選択的アゴニストと比べて改善されたプロファイルを示し得る。本発明の化合物は次の特性の1つ以上を有し得る。
【0007】
(I) ヒトA3受容体よりもおよそ100倍大きいA2Aに対する選択性;
(II) ヒトA2B受容体よりもおよそ100倍大きいA2Aに対する選択性;
(III) ヒトA1受容体よりもおよそ100倍大きいA2Aに対する選択性;
(IV) ヒト血清アルブミンに対するおよそ90%以上の結合;および
(V)心血管系へのより小さい作用、特に頻脈の減少。
【0008】
A3受容体は白血球(例えば、好酸球)および他の炎症細胞(例えば、マスト細胞)にも見出されており、これらの受容体の活性化は炎症誘発作用を有し得るので、このプロファイルは利点であると考えることができる(Kohno Y, Xiao-duo J, Mawhorter SD, Koshiba M, Jacobson KA, (1996), Blood 88 pp 3569-3574; 1996; Van Schaick EA, Jacobson KA, Kim HO, Ijzerman AP, Danhof M, (1996), Eur. J. Pharmacol. 308 pp 311-314)。喘息患者におけるアデノシンの気管支収縮作用はアデノシンA3受容体により仲介され得るとさえ考えられている(Kohno Y, Xiao-duo J, Mawhorter SD, Koshiba M, Jacobson KA, (1996), Blood 88 pp 3569-3574)。A2B受容体はマスト細胞にも見出され、それにより、マスト細胞の活性化に関与している可能性がある。A1受容体は広い組織分布を有し、とりわけ、心臓、脂肪細胞、呼吸平滑筋、好中球、腎臓、海馬および皮質に見出すことができる。そのため、A1受容体の活性化は、脂肪分解の減少、利尿およびCNSの活性化を引き起こし得る(Fozard JR, McCarthy C, (2002), Current Opinion in Investigational Drugs 3 pp 69-77)。ヒト血清アルブミンに対しておよそ90%以上の結合を示す化合物では、全血中における遊離の成分の割合がより小さくなると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明により、我々は、式(I):
【化1】

【0010】
[式中、
R1は、メチルまたはエチルを表し;
R2は、下記のリスト:
【化2】

【0011】
より選択される基を表し;
R3は、下記のリスト:
【化3】

【0012】
より選択される基を表し;
そこにおいて、R4は、下記のリスト:
【化4】

【0013】
より選択される基を表し;
R5は、水素、C1-4アルキル、C1-4アルキルアリール、C1-4アルキルヘテロアリールまたはC1-4ヒドロキシアルキルを表し;
R6およびR7は独立して、水素、メチルまたはフェニルを表す]
の化合物、ならびにその塩および溶媒和物を提供する。
【0014】
本明細書において使用されるC1-4アルキルという用語は、合計で1〜4個の炭素原子を有し、場合により分枝鎖であってもよいアルキル基を意味する。C1-4アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピルおよびイソプロピル)およびブチル(n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル)が挙げられる。
【0015】
C1-4アルキルアリールという用語は、アリール基により置換された上記の通りのC1-4アルキル基を意味する。アリールという用語は、場合により置換されていてもよいフェニルまたはナフチル基を意味する。アリール基の例はフェニルである。C1-4アルキルアリール基の例としてはベンジルが挙げられる。
【0016】
C1-4アルキルヘテロアリールという用語は、ヘテロアリール基により置換された上記の通りのC1-4アルキル基を意味する。ヘテロアリールという用語は、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5または6員芳香族基を意味する。ヘテロアリール基の例としては、5員環(例えば、ピロール、フラン、チオフェン)および6員環(例えば、ピリジン、ピリミジンおよびピラジン)が挙げられる。
【0017】
C1-4ヒドロキシアルキルという用語は、1個以上の(例えば1個の)ヒドロキシル基により置換された上記の通りのC1-4アルキル基を意味する。
【0018】
一つの基としての、または基の一部としてのアルキル基は、場合により1個以上の(例えば1個の)フッ素原子により置換されていてもよい。フッ素置換アルキル基の例としては、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルが挙げられる。
【0019】
アリールおよびヘテロアリール基は、場合により、例えば、アミノ、シアノ、ハロ(例えば、フッ素または塩素)、ニトロ、チオおよびメトキシ(場合によりハロにより置換されている、例えば、トリフルオロメトキシ)から選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
【0020】
R1は、例えば、エチルを表す。
【0021】
R2は、例えば、基(i)、(ii)、(iii)または(iv)、例えば基(iv)を表す。本発明の一つの実施形態において、R2は基(ii)または(iv)を表す。本発明の別の実施形態において、R2は基(ii)を表す。本発明のさらに別の実施形態において、R2は基(iv)を表す。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、R3は基(a)を表す。本発明の第二の実施形態において、R3は基(b)を表す。
【0023】
R4は、例えば、基(i)、(ii)、(iii)、(iv)または(v)、例えば基(i)、(ii)、(iii)または(iv)、例えば基(iv)を表す。本発明の一つの実施形態において、R4は基(ii)または(iv)を表す。本発明の別の実施形態において、R4は基(ii)を表す。本発明のさらに別の実施形態において、R4は基(iv)を表す。
【0024】
R5は、例えば、水素を表す。
【0025】
R6は、例えば、フェニルを表す。
【0026】
R7は、例えば、水素を表す。
【0027】
基(vi)部分の例は、L-フェニルアラニノールから誘導される次の基:
【化5】

【0028】
である。
【0029】
本発明の一つの実施形態において、R2およびR4は同一である。本発明の第二の実施形態において、R2およびR4は同一でない。
【0030】
本発明の一つの実施形態において、式(I)の化合物は、
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3R,4S,5R)-2-(2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-6-{[trans-4-({2- [(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-9H-プリン-6-イル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3R,4S,5R)-2-(2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-6-{[trans-4- ({2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
またはそれらのいずれか1つの塩または溶媒和物である。
【0031】
本発明の別の実施形態において、式(I)の化合物は、
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
またはそれらのいずれか1つの塩または溶媒和物である。
【0032】
式(I)の化合物は、テトラヒドロフラン環に関する絶対立体化学を必要とし、テトラヒドロフラン環における各立体中心に関して下記のような立体化学を有する。
【化6】

【0033】
保存された核におけるシクロヘキシル環およびR2が(v)を表す場合またはR4が(v)を表す場合の置換基に関する立体化学は相対的用語で定義される。この必要条件の範囲内で、本発明は、実質的に他の立体異性体を含まないように単離された(すなわち純粋な)個々の立体異性体として、またはそれらの混合物として、式(I)の化合物のすべての立体異性体(例えば、エナンチオマーまたはジアステレオマー)を包含する。例えば、実質的に他の立体異性体を含まないように単離された(すなわち純粋な)個々の立体異性体は、約10%未満、例えば約1%未満、または約0.1%未満の他の立体異性体が存在する形で単離される。
【0034】
本発明の化合物の塩も本発明の範囲に包含される。それらは医薬として使用される可能性があるため、式(I)の化合物の塩は好ましくは製薬上許容される塩である。好適な製薬上許容される塩には酸付加塩が含まれる。製薬上許容される酸付加塩は、式(I)の化合物と好適な無機または有機酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ギ酸、硫酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、キシナホ酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸)を、場合により有機溶媒などの好適な溶媒中で反応させることにより形成することができ、生成した塩は、例えば結晶化および濾過により単離することができる。したがって、製薬上許容される式(I)の化合物の酸付加塩は、例えば、臭化水素酸塩、塩酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩またはナフタレンスルホン酸塩であってよい。他の製薬上許容されない塩、例えば、シュウ酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は、例えば、本発明の化合物の単離に使用することができ、本発明の範囲に含まれる。本発明はすべての可能な化学量論的および非化学量論的な形の式(I)の化合物の塩をその範囲に包含する。
【0035】
また、本発明の範囲には、本発明の化合物および塩のすべての溶媒和物、例えば水和物および錯体が含まれる。
【0036】
式(I)の化合物、またはその保護された誘導体は、式(IIA)または(IIB):
【化7】

【0037】
[式中、基R1、R2およびR5は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物、またはその保護された誘導体を、式(III):
R4-NH2 (III)
[式中、R4は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
のアミン、またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0038】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。一般的に、反応は、試薬を50〜150℃、例えば100〜130℃、特に約120〜130℃の高温に加熱し、DMSOなどの不活性溶媒およびアミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下でおこなう。
【0039】
R5が水素を表す場合、好ましくは、それが結合する窒素(すなわちプリン環の9位)を、例えば、テトラヒドロピラン-2-イル誘導体として保護する。上記の反応により式(I)の化合物の保護された誘導体を形成した後、窒素を脱保護する。好適な脱保護の条件は選択した保護基に依存し、例えば、保護基がテトラヒドロピラン-2-イルである場合には、好適な脱保護条件にはメタノール/水中でのギ酸による処理が含まれる。
【0040】
式(IIA)または(IIB)の化合物、またはその保護された誘導体は、式(IV):
【化8】

【0041】
[式中、基R1およびR2は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物、またはその保護された誘導体を、式(VA)または(VB):
【化9】

【0042】
[式中、R5は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物、またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0043】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。一般的に、反応は、アミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下、アルコール(例えば、イソプロパノール)などの好適な溶媒中、高温(例えば、50℃〜70℃)で実施する。
【0044】
上記の通り、R5が水素を表す場合、好ましくは、それが結合する窒素(すなわちプリン環の9位)を、例えば、テトラヒドロピラン-2-イル誘導体として保護する。上記の反応により式(IIB)の化合物の保護された誘導体を形成した後、窒素を脱保護する。好適な脱保護の条件は選択した保護基に依存し、例えば、保護基がテトラヒドロピラン-2-イルである場合には、好適な脱保護条件にはメタノール/水中でのギ酸による処理が含まれる。
【0045】
式(IV)の化合物、またはその保護された誘導体は、式(VI):
【化10】

【0046】
[式中、R1は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物、またはその保護された誘導体を、式(VII):
R2-NH2 (VII)
[式中、R2は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
のアミン、またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0047】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。一般的に、反応は、試薬を50〜150℃、例えば100〜130℃、特に約120〜130℃の高温に加熱し、DMSOなどの不活性溶媒およびアミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下でおこなう。
【0048】
好ましくは、式(VI)の化合物のシクロヘキシル環に結合する第一アミン基を、例えばジメチルエチルオキシカルボニル(Boc)誘導体として保護する。式(IV)の化合物の保護された誘導体を得る反応の後に、アミン保護基を除去する。例えば、保護基がジメチルエチルオキシカルボニルである場合には、これは、例えばジクロロメタン中でトリフルオロ酢酸により処理することにより除去することができる。
【0049】
R2が式(v)の基を表す場合、好ましくは、R2のアミン基を、式(VI)の化合物のアミン基の保護に用いたものとは異なる保護基により保護する。例えば、前者をCbZ(後に触媒的水素化により除去することができる)により保護し、後者をBocを用いて保護する。
【0050】
式(VI)の化合物、またはその保護された誘導体は、式(VIII):
【化11】

【0051】
[式中、R1は、上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物、またはその保護された誘導体を、式(IX):
【化12】

【0052】
の化合物、またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0053】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。典型的には、反応は、アミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下、アルコール(例えば、イソプロパノール)などの好適な溶媒中、高温(例えば、50℃〜70℃)で実施する。
【0054】
典型的には、式(IX)の化合物は、一つの第一アミン基が例えばジメチルエチルオキシカルボニル誘導体として保護された形で使用する。
【0055】
Lが塩素を表し、R1がエチルを表し、ヒドロキシル基がアセチル基により保護されている式(VIII)の化合物は、WO98/28319(本文献中で中間物質7と呼ばれる)に開示されている。他の式(VIII)の化合物は、類似の方法により調製することができる。簡単に述べると、式(VIII)の化合物は、式(X):
【化13】

【0056】
[式中、R1は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物、またはその保護された誘導体を、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル)中、不活性条件下、ルイス酸(例えば、トリメチルシリルトリフレート)の存在下、場合により触媒(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)を用いて、2,6-ジクロロプリンなどの化合物と反応させることにより調製することができる。
【0057】
式(III)、(VII)、(IX)および(X)の化合物は、それ自体が公知であるか、公知の方法により調製することができる。
【0058】
式(VA)の化合物、例えば、2,4-ジクロロピリミジンは市販されているか、公知の方法により調製することができる。
【0059】
Lが塩素を表し、テトラヒドロピラン-2-イル基により保護された式(VB)の化合物(すなわち、2,6-ジクロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン)およびその合成方法は、WO2003/080604A1に記載されている(この文献中で中間物質11と呼ばれる)。他の式(VB)の化合物は同様の方法により調製することができる。
【0060】
第2の方法において、式(I)の化合物、またはその保護された誘導体は、上記の通りの式(IV):
【化14】

【0061】
の化合物、またはその保護された誘導体を、式(XIA)または(XIB):
【化15】

【0062】
[式中、基R4およびR5は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基である]
の化合物またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0063】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。一般的に、前記の反応は、試薬を50〜150℃の温度に加熱し、エタノール、プロパン-2-オールまたはDMSOなどの不活性溶媒およびアミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下でおこなう。
【0064】
R5がHを表す式(XIB)の化合物において、それが結合する窒素(すなわちプリン環の9位)を、場合により、テトラヒドロピラン-2-イル(THP)基により保護してもよい。次いで、式(IV)の化合物との反応の後にTHP基を除去する。好適な脱保護条件にはメタノール/水中でのギ酸による処理が含まれる。
【0065】
式(XIA)の化合物は、Manley PJら、(2003) Bioorganic Med. Chem. Lett., 13 pp 1673-1677に従って調製することができる。簡単に述べると、式(XII):
【化16】

【0066】
[式中、R4は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物、またはその保護された誘導体を、還流しながらPOCl3と反応させる。
【0067】
式(XII)の化合物は、2-(メチルチオ)ピリミジン-4(3H)-オン(市販されている)を、上記の通りの式(III):
R4-NH2 (III)
[式中、R4は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
のアミン、またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0068】
典型的には、反応は、ジエチレングリコールジメチルエーテル中、およそ170℃の温度でおこなう。
【0069】
R5がHを表す式(XIB)の化合物は、Wright GEら、(1987) J. Med. Chem., 30 pp 109-116に記載された方法により調製することができる。簡単に述べると、式(XIII):
【化17】

【0070】
[式中、R4は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物を、N,N-ジメチルアニリンの存在下で還流しながらPOCl3と反応させる。
【0071】
式(XIII)の化合物は、市販されている2-ブロモヒポキサンチンなどの化合物:
【化18】

【0072】
を、上記の通りの式(III):
R4-NH2 (III)
[式中、R4は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
のアミン、またはその保護された誘導体と、水と2-メトキシエタノールの混合物中で還流しながら反応させることにより調製することができる。この反応の詳細については、WO99/38877を参照されたい。
【0073】
R5がHを表さない式(XIB)の化合物は、R5がHを表す式(XIB)の化合物のアルキル化により調製することができる。アルキル化は、塩基(例えば、炭酸カリウム)および好適な溶媒(例えば、DMF)の存在下、R5-Iなどのアルキル化剤を用いておこなうことができる。例えば、Langli, Gら、(1996) Tetrahedron, 52 pp5625-5638を参照されたい。あるいは、アルキル化は、ジエチルアゾジカルボキシレートおよびトリフェニルホスフィンの存在下、THF中で、アルコールR5-OHを用いておこなってもよい(Maruyama, Tら、(2000) Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, 19 pp1193-1203を参照されたい)。
【0074】
第3の方法において、R2およびR4が同一である式(I)の化合物、またはその保護された誘導体は、式(XIVA)または(XIVB):
【化19】

【0075】
[式中、R1およびR5は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物、またはその保護された誘導体を、上記の通りの式(VII):
R2-NH2 (VII)
[式中、R2は上で式(I)の化合物について定義した通りである]
の化合物、またはその保護された誘導体と反応させることにより調製することができる。
【0076】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。一般的に、前記の反応は、試薬を50〜150℃、例えば100〜130℃、特に約120〜130℃の温度に加熱し、DMSOなどの不活性溶媒およびアミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下でおこなう。
【0077】
R5が水素を表す場合、好ましくは、それが結合する窒素(すなわちプリン環の9位)を、例えば、テトラヒドロピラン-2-イル誘導体として保護する。上記の反応により式(I)の化合物の保護された誘導体を形成した後、窒素を脱保護する。好適な脱保護の条件は選択した保護基に依存し、例えば、保護基がテトラヒドロピラン-2-イルである場合には、好適な脱保護条件にはメタノール/水中でのギ酸による処理が含まれる。
【0078】
式(XIVA)または(XIVB)の化合物、またはその保護された誘導体は、上記の通りの式(VI):
【化20】

【0079】
[式中、R1は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物、またはその保護された誘導体を、上記の通りの式(VA)または(VB):
【化21】

【0080】
[式中、R5は上で式(I)の化合物について定義した通りであり、Lは脱離基を表す]
の化合物と反応させることにより調製することができる。
【0081】
上記の通り、R5が水素を表す式(VB)の化合物において、好ましくは、それが結合する窒素(すなわちプリン環の9位)を、例えば、テトラヒドロピラン-2-イル誘導体として保護する。
【0082】
Lは、好ましくは、ハロゲン、例えば臭素または塩素、特に塩素を表す。式(VA)の化合物は、例えば、2,4-ジクロロピリミジンであってよい。式(VB)の化合物は、例えば、2,6-ジクロロ-9-(テトラヒドロピラン-2-イル)プリンであってよい。一般的に、反応は、アミン塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)などの塩基の存在下、アルコール(例えば、イソプロパノール)などの好適な溶媒中、高温(例えば、50℃〜70℃)で実施する。
【0083】
上記の反応により式(XIVB)の化合物の保護された誘導体を形成した後、プリン窒素を脱保護する。好適な脱保護の条件は選択した保護基に依存し、例えば、保護基がテトラヒドロピラン-2-イルである場合には、好適な脱保護条件にはメタノール/水中でのギ酸の使用が含まれる。
【0084】
式(IIA)、(IIB)、(IV)、(VI)、(VIII)、(X)、(XIVA)および(XIVB)の化合物は、ヒドロキシル基が好適な保護基、例えばアセトニドまたはアセチル基、特にアセチル基により保護された形で使用してもよい。
【0085】
上記のように、本発明の化合物または本発明の化合物を調製するための中間物質の保護された誘導体を使用することができる。保護基の例およびそれらの除去手段は、TW Greene、「有機合成における保護基」(Protective Groups in Organic Synthesis)、(J Wiley and Sons, 1991)に記載されている。好適なヒドロキシル保護基には、加水分解により除去することができるアルキル(例えば、メチル)、アセタール(例えば、アセトニド)およびアシル(例えば、アセチルまたはベンゾイル)、ならびに触媒的水素化分解により除去することができるアリールアルキル(例えば、ベンジル)が含まれる。好適なアミン保護基には、加水分解または適切な場合には水素化分解により除去することができるスルホニル(例えば、トシル)、アシル(例えば、ベンジルオキシカルボニルまたはt-ブトキシカルボニル)およびアリールアルキル(例えば、ベンジル)が含まれる。
【0086】
上記の式(I)の化合物ならびにその塩および溶媒和物の製造方法は本発明の一つの態様を構成する。新規の中間物質、例えば、式(IIA)、(IIB)、(IV)、(XIVA)、(XIVB)およびその保護された誘導体もまた、本発明の態様を形成する。
【0087】
式(I)の化合物の白血球の機能を阻害する能力は、例えば、N-ホルミルメチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)などの走化性因子により刺激された好中球からのスーパーオキシド(O2-)生成を阻害するそれらの能力により証明することができる。したがって、式(I)の化合物は、炎症の部位で白血球が関与している疾病における白血球に誘導される組織損傷からの保護を提供するという治療効果を有する可能性がある。
【0088】
本発明の化合物が有益な抗炎症作用を有する可能性のある病状の例には、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支炎(慢性気管支炎を含む)、嚢胞性線維症、喘息(アレルゲン誘導性喘息反応を含む)、肺気腫、鼻炎および敗血性ショックなどの呼吸管の病気が含まれる。他の関連する病状には、炎症性腸疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)、ヘリコバクターピロリ菌に誘導される胃炎および放射線曝露またはアレルゲンへの曝露による炎症性腸疾患を含む炎症性腸疾患、ならびに非ステロイド抗炎症薬に誘導される胃疾患などの胃腸管の病気が含まれる。さらに、本発明の化合物は、乾癬、アレルギー性皮膚炎および超過敏反応などの皮膚病、ならびに炎症性の要素を有する中枢神経系の病気、例えばアルツハイマー病および多発性硬化症の治療に使用することができる。
【0089】
本発明の化合物が有益な作用を有する可能性がある病状の別の例には、末梢血管疾患、虚血後再灌流障害および突発性好酸球増加症候群などの心臓の状態が含まれる。
【0090】
白血球の機能を阻害する本発明の化合物は、免疫抑制剤として有用であり得るので、関節リウマチおよび糖尿病などの自己免疫疾患の治療に有用である。
【0091】
本発明の化合物は、転移を阻害するためにも有用であり得る。
【0092】
本明細書における治療という用語は、確立された状態の治療と共に予防をも含むことが当業者に理解されるであろう。
【0093】
より好ましくは、治療および/または予防は、哺乳類(例えば、ヒト)における喘息、または慢性気管支炎および肺気腫を含むCOPDに対するものである。
【0094】
上記のように、式(I)の化合物は人間医学または獣医学において、特に抗炎症薬として有用である。
【0095】
そこで、本発明の別の態様として、人間医学または獣医学において、特に、白血球に誘導される組織損傷を受けやすい炎症性の状態および/またはアレルギー状態を有する患者の治療に使用するための式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0096】
本発明の別の態様によれば、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物の、白血球に誘導される組織損傷を受けやすい炎症性の状態および/またはアレルギー状態を有する患者の治療のための医薬品の製造における使用が提供される。
【0097】
別の、または代替の態様において、白血球に誘導される組織損傷を受けやすい炎症性の状態および/またはアレルギー状態を有するヒトまたは動物の被験体の治療法であって、前記のヒトまたは動物の被験体に有効量の式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む治療法が提供される。
【0098】
医薬として使用するために、本発明の化合物は通常医薬組成物として投与される。
【0099】
したがって、本発明は、別の態様において、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物および場合により1種以上の製薬上許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0100】
前記の医薬組成物は、本明細書に記載されるいずれかの状態の治療および/または予防に使用するためのものであり得る。
【0101】
式(I)の化合物およびその塩および溶媒和物、および/またはそれらを含有する医薬組成物は、例えば、非経口(例えば、静脈内、皮下、または筋内)、吸入、鼻内、経皮または直腸投与により、または局所治療(例えば、軟膏またはゲル)として投与することができる。特に興味深い投与経路には、吸入および鼻内が含まれる。吸入投与には、例えばエアロゾルまたはドライパウダー組成物による肺への局所投与が含まれる。
【0102】
式(I)の化合物およびその塩および溶媒和物および/または医薬組成物は、WO 00/50011に記載されるような制御または持続放出製剤により投与してもよい。
【0103】
非経口組成物は、化合物または製薬上許容される塩の、無菌の水性担体または非経口投与に許容される油中の溶液または懸濁液を含む。あるいは、溶液を凍結乾燥し、凍結乾燥された非経口医薬組成物を投与の直前に好適な溶媒により再構成してもよい。
【0104】
鼻内または吸入投与のための組成物は、場合により増粘剤、pHを調節するための緩衝塩または酸またはアルカリ、等張性調節剤、抗酸化剤および/または保存剤などの薬剤を加えた水性または非水性媒体を用いて、エアロゾル、溶液、懸濁液、ドロップ、ゲルまたはドライパウダーとして製剤すると便利である。
【0105】
吸入器(インハラーまたはインサフレーター)中で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジ、または例えば積層アルミ箔のブリスターを、本発明の化合物およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤の粉末混合物を含有するように製剤することができる。
【0106】
また、成分を混合することを含む、前記の医薬製剤の調製方法も提供される。
【0107】
吸入投与に好適なおよび/または適合した組成物のためには、式(I)の化合物または塩もしくは溶媒和物は典型的には微粒化した形であり、特に、微粒化した形は、ミクロンサイズにすることにより得られる、または得ることが可能である。一般的に、微粒化した(例えば、ミクロンサイズにした)化合物または塩は、約0.5〜約10ミクロンのD50値を有すると定義することができる(例えば、レーザー回折を用いて測定する)。
【0108】
例えば、吸入投与のためのエアロゾル製剤は、活性物質の製薬上許容される水性または非水性溶媒中の溶液または微細な懸濁液を含み得る。エアロゾル製剤は、密閉容器に入った一回または多数回投与量の無菌の製剤として提供することができる。前記の容器は、噴霧装置または吸入器と共に使用するためのカートリッジまたはレフィルの形を取ることができる。あるいは、密閉容器は、一回投与量鼻内吸入器などの単位投薬装置、または容器の内容物が排出された後に廃棄されることを意図した計量バルブを備えたエアロゾルディスペンサー(定量吸入器)であってよい。
【0109】
剤形がエアロゾルディスペンサーを含む場合、好ましくは、それは、圧縮空気、二酸化炭素または有機噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)もしくはハイドロフルオロカーボン(HFC)などの加圧した好適な噴射剤を含有する。好適なCFC噴射剤には、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンおよびジクロロテトラフルオロエタンが含まれる。好適なHFC噴射剤には、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタンが含まれる。エアロゾル剤形はポンプ式噴霧器の形を取ることもできる。
【0110】
場合により、特にドライパウダー吸入用組成物の場合、吸入投与用の医薬組成物を、好適な吸入装置の内部のストリップまたはリボンに縦列に取り付けられた複数個の密閉された製剤容器(例えば、ドライパウダー組成物を含有する)中に組み入れることができる。容器は、要求に応じて破裂可能であるか、剥がして開けることができ、1回分の例えばドライパウダー組成物を、GlaxoSmithKlineから市販されているDISKUS(商標)装置などの装置を通して吸入により投与することができる。DISKUS(商標)吸入装置は、例えば、GB 2242134 Aに記載されており、この装置において、粉末の剤形の医薬組成物の少なくとも1つの容器(容器は好ましくはストリップまたはリボン中に縦列に取り付けられた複数の密閉された製剤容器である)が、互いに剥がすことができるように接着された2つの部材の間に固定されている。装置は、前記の容器を開く位置を決める手段;開く位置において部材を剥がして容器を開ける手段;および開いた容器と連絡する排出口であって、それを通して使用者が開いた容器から粉末の剤形の医薬組成物を吸入することができるような排出口を含む。あるいは、例えばWO 03/061743に記載されるように、複数の治療薬を同時に投与することができるが、別々に、例えば、別々の医薬組成物として保存する(または、3種の組合せの場合には全部もしくは一部を別々に保存する)ことができる吸入装置を用いて、製剤を所望により1種以上の他の治療薬と共に提供してもよい。
【0111】
本発明の局所用組成物における式(I)の活性化合物またはその塩もしくは溶媒和物の割合は、調製される製剤の正確なタイプに依存するが、一般的に0.001〜20重量%、例えば、0.001〜10重量%の範囲である。しかしながら、一般的にほとんどのタイプの製剤において、使用される割合は0.005〜1%、例えば、0.01〜0.5%の範囲内である。しかしながら、吸入用の粉末においては、使用される割合は、0.1〜5%の範囲内である。
【0112】
好ましくは、エアロゾル製剤は、それぞれの計量された用量またはエアロゾルの一吹きが10μg〜2000μg、例えば20μg〜2000μg、好ましくは約20μg〜500μgの式(I)の化合物を含有するように製剤する。投与は、1日1回または1日数回、例えば2、3、4または8回で、それぞれの回に1、2または3用量ずつ与える。エアロゾルによる1日あたりの総用量は、20μg〜10mg、例えば100μg〜10mg、好ましくは200μg〜2000μgの範囲内である。吸入器(インハラーまたはインサフレーター)中のカプセルおよびカートリッジにより送達される1日あたりの総用量および計量される用量は、一般的にエアロゾル製剤の2倍である。
【0113】
本発明の化合物(またはその塩および溶媒和物)および医薬製剤は、例えば、抗炎症薬、抗コリン薬(特に、M1、M2、M1/M2またはM3受容体アンタゴニスト)、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、抗感染薬(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬)または抗ヒスタミン薬から選択される1種以上の他の治療薬と組み合わせて使用してもよく、またはそれらを含んでもよい。そこで、本発明は、別の態様として、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩、溶媒和物もしくは生理機能を有する誘導体と、例えば、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイドまたはNSAID)、抗コリン薬、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、抗感染薬(例えば、抗生物質、抗ウイルス薬)または抗ヒスタミン薬から選択される1種以上の他の治療薬とを含む組合せを提供する。本発明の特定の組合せは、式(I)の化合物またはその生理的に許容される塩もしくは溶媒和物と、ステロイド、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、抗コリン薬、および/またはPDE-4阻害剤とを含む。好ましい組合せは1または2種の他の治療薬を含むものである。
【0114】
適切な場合には、他の治療成分を、その治療成分の活性および/または安定性および/または物理的特性(例えば、溶解度)を最適化するために、塩(例えば、アルカリ金属もしくはアミン塩として、または酸付加塩として)またはプロドラッグの形で、またはエステル(例えば、低級アルキルエステル)として、または溶媒和物(例えば、水和物)として使用してもよいことは当業者には明らかであろう。適切な場合には、治療成分を純粋な光学異性体の形で使用してもよいことも明らかであろう。
【0115】
そこで、本発明は、別の態様として、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物と1種以上の他の治療活性薬、例えばβ2-アドレナリン受容体アゴニスト、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬(ステロイドまたはPDE-4阻害剤を含む)、抗コリン薬または抗感染薬(例えば、抗生物質または抗ウイルス薬)とを含む組合せを提供する。
【0116】
β2-アドレナリン受容体アゴニストの例としては、サルメテロール(salmeterol)(例えば、ラセミ体またはR-エナンチオマーなどの単一のエナンチオマーとして)、サルブタモール(salbutamol)(例えば、ラセミ体またはR-エナンチオマーなどの単一のエナンチオマーとして)、ホルモテロール(formoterol)(例えば、ラセミ体またはR,R-ジアステレオマーなどの単一のジアステレオマーとして)、サルメファモール(salmefamol)、フェノテロール(fenoterol)、カルモテロール(carmoterol)、エタンテロール(etanterol)、ナミンテロール(naminterol)、クレンブテロール(clenbuterol)、ピルブテロール(pirbuterol)、フレロブテロール(flerobuterol)、レプロテロール(reproterol)、バンブテロール(bambuterol)、インダカテロール(indacaterol)またはテルブタリン(terbutaline)およびそれらの塩、例えば、サルメテロールのキシナホ酸塩(1-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボキシレート)、サルブタモールの硫酸塩もしくは遊離塩基、またはホルモテロールのフマル酸塩が挙げられる。例えば、サルメテロール(ラセミ体またはR-エナンチオマーなどの単一のエナンチオマーであってよい)、サルブタモール、ホルモテロール、サルメファモール、フェノテロールまたはテルブタリンおよびその塩、例えば、サルメテロールのキシナホ酸塩、サルブタモールの硫酸塩もしくは遊離塩基、またはホルモテロールのフマル酸塩である。長時間作用型β2-アドレナリン受容体アゴニスト、例えば12時間以上の気管支拡張を与えるものが好ましい。例としては、サルメテロールおよびホルモテロールが挙げられる。
【0117】
他の長時間作用型β2-アドレナリン受容体アゴニストには、WO02/66422A、WO02/270490、WO02/076933、WO03/024439、WO03/072539、WO03/091204、WO04/016578、WO04/022547、WO04/037807、WO04/037773、WO04/037768、WO04/039762、WO04/039766、WO01/42193およびWO03/042160に記載されるものが含まれる。
【0118】
特定の長時間作用型β2-アドレナリン受容体アゴニストは、
3-(4-{[6-({(2R)-2-ヒドロキシ-2-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド;
3-(3-{[7-({(2R)-2-ヒドロキシ-2-[4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミド;
4-{(1R)-2-[(6-{2-[(2,6-ジクロロベンジル)オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]-1-ヒドロキシエチル}-2-(ヒドロキシメチル)フェノール;
4-{(1R)-2-[(6-{4-[3-(シクロペンチルスルホニル)フェニル]ブトキシ}ヘキシル)アミノ]-1-ヒドロキシエチル}-2-(ヒドロキシメチル)フェノール;
N-[2-ヒドロキシル-5-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-[[2-4-[[(2R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル]アミノ]フェニル]エチル]アミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド、
N-2{2-[4-(3-フェニル-4-メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}-2-ヒドロキシ-2-(8-ヒドロキシ-2(1H)-キノリノン-5-イル)エチルアミン、および
5-[(R)-2-(2-{4-[4-(2-アミノ-2-メチルプロポキシ)フェニルアミノ]フェニル}エチルアミノ)-1-ヒドロキシエチル]-8-ヒドロキシ-1H-キノリン-2-オン、
およびその塩である。
【0119】
β2-アドレナリン受容体アゴニストは、硫酸、塩酸、フマル酸、ヒドロキシナフトエ酸(例えば、1-または3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、ケイ皮酸、置換ケイ皮酸、トリフェニル酢酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ナフタレンアクリル酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、2-または4-ヒドロキシ安息香酸、4-クロロ安息香酸および4-フェニル安息香酸から選択される製薬上許容される酸により形成された塩の形であってもよい。
【0120】
組合せに組み入れることができる抗炎症薬には、コルチコステロイド、特に吸入用コルチコステロイドおよびその抗炎症活性を有するプロドラッグが含まれる。コルチコステロイドの例としては、メチルプレドニソロン(methyl prednisolone)、プレドニソロン、デキサメタゾン(dexamethasone)、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone propionate)、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-(2-オキソテトラヒドロフラン-3S-イル)エステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-(1-メチルシクロプロピルカルボニル)オキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-(2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピルカルボニル)オキシアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボン酸シアノメチルエステル、ベクロメタゾンエステル(beclomethasone esters)(例えば、17-プロピオン酸エステルまたは17,21-ジプロピオン酸エステル)、ブデソニド(budesonide)、フルニソリド(flunisolide)、モメタゾンエステル(mometasone esters)(例えば、フロ酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)、ロフレポニド(rofleponide)、シクレソニド(ciclesonide)、(16α,17-[[(R)-シクロヘキシルメチレン]ビス(オキシ)]-11β,21-ジヒドロキシプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン)、プロピオン酸ブチキソコルト(butixocort propionate)、RPR-106541、およびST-126が挙げられる。好ましいコルチコステロイドには、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルおよび6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルが含まれ、より好ましくは、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルである。
【0121】
グルココルチコイド活性を有する非ステロイド化合物には、次の特許出願、WO03/082827、WO01/10143、WO98/54159、WO04/005229、WO04/009016、WO04/009017、WO04/018429、WO03/104195、WO03/082787、WO03/082280、WO03/059899、WO03/101932、WO02/02565、WO01/16128、WO00/66590、WO03/086294、WO04/026248、WO03/061651、WO03/08277に記載されるものが含まれる。
【0122】
抗炎症薬は非ステロイド抗炎症薬(NSAID)を含む。
【0123】
組み合わせて使用することが可能なNSAIDには、クロモグリセート・ナトリウム(sodium cromoglycate)、ネドクロミル・ナトリウム(nedocromil sodium)、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤またはPDE3/PDE4混合阻害剤)、ロイコトリエンアンタゴニスト、ロイコトリエン合成阻害剤(例えば、モンテルカスト(montelukast))、iNOS阻害剤、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害剤、ベータ-2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシン受容体アゴニストもしくはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト)、サイトカインアンタゴニスト(例えば、CCR3アンタゴニストなどのケモカインアンタゴニスト)もしくはサイトカイン合成阻害剤、または5-リポキシゲナーゼ阻害剤が含まれる。iNOS(誘導性一酸化窒素シンターゼ阻害剤)は、好ましくは経口投与される。他のiNOS阻害剤には、WO93/13055、WO98/30537、WO02/50021、WO95/34534およびWO99/62875に開示されるものが含まれる。好適なCCR3阻害剤には、WO02/26722に記載されるものが含まれる。
【0124】
組み合わせて使用することができるホスホジエステラーゼ4 (PDE4)阻害剤には、PDE4酵素を阻害することが知られているすべての化合物、またはPDE4阻害剤として作用することが発見されており、かつ、PDE3およびPDE5などの他のPDEファミリーのメンバーをPDE4と同様に阻害する化合物ではない、PDE4のみの阻害剤であるすべての化合物が含まれる。
【0125】
化合物には、cis-4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オンおよびcis-[4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール]が含まれる。他の興味ある化合物は、1996年9月3日発行の米国特許第5,552,438号(この特許およびそこに開示される化合物を参照により全体として本明細書に組み入れる)に記載されるcis-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸(シロミラスト(cilomilast)としても知られる)およびその塩、エステル、プロドラッグまたは物理的形態である。
【0126】
他のPDE4阻害剤には、Elbion製のAWD-12-281 (Hofgen, N.ら、15th EFMC Int Symp Med Chem (Sept 6-10, Edinburgh) 1998, Abst P.98; CAS番号247584020-9); NCS-613として登録された9-ベンジルアデニン誘導体(INSERM);Chiroscience and Schering-Plough製のD-4418;CI-1018 (PD-168787)として同定され、Pfizerに属するベンゾジアゼピンPDE4阻害剤;Kyowa HakkoによりWO99/16766において開示されたベンゾジオキソール誘導体;Kyowa Hakko製のK-34;Napp製のV-11294A (Landells, L.J.ら、Eur Resp J [Annu Cong Eur Resp Soc (Sept 19-23, Geneva) 1998] 1998, 12 (Suppl. 28): Abst P2393);ロフルミラスト(roflumilast) (CAS番号162401-32-3)およびByk-Gulden製のフタラジノン(WO99/47505、この特許出願の開示を参照により本明細書に組み入れる);Almirall-Prodesfarmaが開発中のアロフィリン(arofylline);Vernalis製のVM554/UM565;またはT-440 (Tanabe Seiyaku; Fuji, K.ら、J Pharmacol Exp Ther,1998, 284(1): 162)、およびT2585が含まれる。
【0127】
別の化合物が、公開された国際特許出願WO04/024728 (Glaxo Group Ltd)、PCT/EP2003/014867 (Glaxo Group Ltd)およびPCT/EP2004/005494 (Glaxo Group Ltd)に開示されている。
【0128】
抗コリン薬は、ムスカリン受容体においてアンタゴニストとして作用する化合物、特にM1またはM3受容体のアンタゴニスト、M1/M3またはM2/M3受容体のデュアルアンタゴニストまたはM1/M2/M3受容体のパンアンタゴニストである化合物である。吸入により投与するための化合物の例としては、イプラトロピウム(ipratropium)(例えば臭化物として、CAS 22254-24-6、アトロベント(Atrovent)の名称で市販されている)、オキシトロピウム(oxytropium)(例えば臭化物として、CAS 30286-75-0)およびチオトロピウム(tiotropium)(例えば臭化物として、CAS 136310-93-5、スピリバ(Spiriva)の名称で市販されている)が挙げられる。また、レバトロペート(revatropate)(例えば、臭化水素酸塩として、CAS 262586-79-8)およびWO01/04118に開示されているLAS-34273も興味深い。経口投与するための化合物の例としては、ピレンゼピン(pirenzepine)(例えば、CAS 28797-61-7)、ダリフェナシン(darifenacin)(例えば、CAS 133099-04-4、またはエナブレックス(Enablex)の名称で市販されている臭化水素酸塩に対してはCAS 133099-07-7)、オキシブチニン(oxybutynin)(例えば、CAS 5633-20-5、ジトロパン(Ditropan)の名称で市販されている)、テロジリン(terodiline)(例えば、CAS 15793-40-5)、トルテロジン(tolterodine)(例えば、CAS 124937-51-5、またはデトロール(Detrol)の名称で市販されている酒石酸塩に対してはCAS 124937-52-6)、オチロニウム(otilonium)(例えば、臭化物として、CAS 26095-59-0、スパスモメン(Spasmomen)の名称で市販されている)、塩化トロスピウム(trospium chloride)(例えば、CAS 10405-02-4)およびソリフェナシン(solifenacin)(例えば、CAS 242478-37-1、またはCAS 242478-38-2、またはYM-905としても知られ、ベシケア(Vesicare)の名称で市販されているコハク酸塩)が挙げられる。
【0129】
他の抗コリン薬には、米国特許出願60/487981に開示される式(XXI):
【化22】

【0130】
[式中、
トロパン環に結合するアルキル鎖の好ましい配向はendoであり;
R31およびR32は独立して、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖低級アルキル基、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルアルキル、2-チエニル、2-ピリジル、フェニル、4個以下の炭素原子を有するアルキル基により置換されたフェニルおよび4個以下の炭素原子を有するアルコキシ基により置換されたフェニルからなる群より選択され;
X-はN原子の正の電荷と会合するアニオンを表す]
の化合物が含まれる。X-は塩素、臭素、ヨウ素、硫酸、ベンゼンスルホン酸、およびトルエンスルホン酸アニオンであってよいが、それらに限定されない。前記の化合物には、例えば、
(3-endo)-3-(2,2-ジ-2-チエニルエテニル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(3-endo)-3-(2,2-ジフェニルエテニル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(3-endo)-3-(2,2-ジフェニルエテニル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン4-メチルベンゼンスルホネート;
(3-endo)-8,8-ジメチル-3-[2-フェニル-2-(2-チエニル)エテニル]-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;および/または
(3-endo)-8,8-ジメチル-3-[2-フェニル-2-(2-ピリジニル)エテニル]-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド
が含まれる。
【0131】
別の抗コリン薬には、米国特許出願60/511009に開示される式(XXII)または(XXIII):
【化23】

【0132】
[式中、
指示されたH原子はexo位であり;
R41-はN原子の正の電荷と会合するアニオンを表し、R1-は塩素、臭素、ヨウ素、硫酸、ベンゼンスルホン酸、およびトルエンスルホン酸アニオンであってよいが、それらに限定されず;
R42およびR43は独立して、直鎖または分枝鎖低級アルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有する)、シクロアルキル基(5〜6個の炭素原子を有する)、シクロアルキルアルキル(6〜10個の炭素原子を有する)、ヘテロシクロアルキル(5〜6個の炭素原子、およびヘテロ原子としてNまたはOを有する)、ヘテロシクロアルキルアルキル(6〜10個の炭素原子、およびヘテロ原子としてNまたはOを有する)、アリール、場合により置換されたアリール、ヘテロアリール、および場合により置換されたヘテロアリールからなる群より選択され;
R44は、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C12)シクロアルキル、(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C12)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C1〜C6)アルキルアリール、(C1〜C6)アルキルヘテロアリール、-OR45、-CH2OR45、-CH2OH、-CN、-CF3、-CH2O(CO)R46、-CO2R47、-CH2NH2、-CH2N(R47)SO2R45、-SO2N(R47)(R48)、-CON(R47)(R48)、-CH2N(R48)CO(R46)、-CH2N(R48)SO2(R46)、-CH2N(R48)CO2(R45)、-CH2N(R48)CONH(R47)からなる群より選択され;
R45は、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C12)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、(C1〜C6)アルキルアリール、(C1〜C6)アルキルヘテロアリールからなる群より選択され;
R46は、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C12)シクロアルキル、(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C12)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C1〜C6)アルキルアリール、(C1〜C6)アルキルヘテロアリールからなる群より選択され;
R47およびR48は独立して、H、(C1〜C6)アルキル、(C3〜C12)シクロアルキル、(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C12)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキル(C3〜C7)ヘテロシクロアルキル、(C1〜C6)アルキルアリール、および(C1〜C6)アルキルヘテロアリールからなる群より選択される]
の化合物が含まれる。前記化合物には、例えば、
(endo)-3-(2-メトキシ-2,2-ジチオフェン-2-イルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピオニトリル;
(endo)-8-メチル-3-(2,2,2-トリフェニルエチル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピオンアミド;
3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピオン酸;
(endo)-3-(2-シアノ-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(endo)-3-(2-シアノ-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロパン-1-オール;
N-ベンジル-3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピオンアミド;
(endo)-3-(2-カルバモイル-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
1-ベンジル-3-[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]尿素;
1-エチル-3-[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]尿素;
N-[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]アセトアミド;
N-[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]ベンズアミド;
3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジチオフェン-2-イルプロピオニトリル;
(endo)-3-(2-シアノ-2,2-ジチオフェン-2-イルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
N-[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]ベンゼンスルホンアミド;
[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]尿素;
N-[3-((endo)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,2-ジフェニルプロピル]メタンスルホンアミド;および/または
(endo)-3-{2,2-ジフェニル-3-[(1-フェニルメタノイル)アミノ]プロピル}-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド
が含まれる。
【0133】
別の化合物には、
(endo)-3-(2-メトキシ-2,2-ジチオフェン-2-イルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(endo)-3-(2-シアノ-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(endo)-3-(2-シアノ-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(endo)-3-(2-カルバモイル-2,2-ジフェニルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(endo)-3-(2-シアノ-2,2-ジチオフェン-2-イルエチル)-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;および/または
(endo)-3-{2,2-ジフェニル-3-[(1-フェニルメタノイル)アミノ]プロピル}-8,8-ジメチル-8-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド
が含まれる。
【0134】
抗ヒスタミン薬(H1受容体アンタゴニストとも呼ばれる)には、H1受容体を阻害し、ヒトに使用して安全であることが知られている多くのアンタゴニストのいずれか1つ以上が含まれる。第1世代のアンタゴニストには、ジフェニルヒドラミン(diphenylhydramine)、ピリラミン(pyrilamine)、クレマスチン(clemastine)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)などのエタノールアミン、エチレンジアミン、およびアルキルアミンの誘導体が含まれる。鎮静作用を有しない第2世代のアンタゴニストには、ロラチジン(loratidine)、デスロラチジン(desloratidine)、テルフェナジン(terfenadine)、アステミゾール(astemizole)、アクリバスチン(acrivastine)、アゼラスチン(azelastine)、レボセチリジン(levocetirizine)、フェキソフェナジン(fexofenadine)、セチリジン(cetirizine)およびエフレチリジン(efletirizine)が含まれる。
【0135】
そこで、本発明は、別の態様として、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物およびPDE4阻害剤を含む組合せを提供する。
【0136】
そこで、本発明は、別の態様として、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物およびβ2-アドレナリン受容体アゴニストを含む組合せを提供する。
【0137】
そこで、本発明は、別の態様として、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物および抗コリン薬を含む組合せを提供する。
【0138】
そこで、本発明は、別の態様として、式(I)の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物および抗ヒスタミン薬を含む組合せを提供する。
【0139】
上に記載した組合せは医薬製剤の形で使用するように提供されるのが便利であり、そこで、上で定義した通りの組合せおよび製薬上許容される希釈剤または担体を含む医薬製剤は、本発明の別の態様である。
【0140】
前記の組合せの個々の化合物は、連続して、または同時に、別々のもしくは一つの医薬製剤として投与することができる。好ましくは、個々の化合物は、同時に、一つの医薬製剤として投与する。公知の治療薬の適切な用量は当業者に容易に理解されるであろう。
【0141】
上に記載した組合せは医薬組成物の形で使用するように提供されるのが便利であり、そこで、上に定義した通りの組合せと、場合により1種以上の製薬上許容される担体および/または賦形剤とを含む医薬組成物は本発明の別の態様である。
【0142】
前記の組合せの個々の化合物は、連続して、または同時に、別々のもしくは一つの医薬組成物として投与することができる。
【0143】
上に記載した組合せは医薬製剤の形で使用するように提供されるのが便利であり、そこで、上で定義した通りの組合せと製薬上許容される希釈剤または担体とを含む医薬製剤は、本発明の別の態様である。
【0144】
本発明の化合物は、類似の公知の化合物よりも、効果が大きい、選択性が高い、副作用が少ない、活性持続時間が長い、吸入により投与した場合に全身作用が小さい、または他の望ましい特性が大きい可能性がある。
【0145】
特に、本発明の化合物は、A2A受容体において非常に効力が大きい、他のアデノシン受容体サブタイプ(特にA1およびA3受容体サブタイプ)と比較してアデノシン2A受容体サブタイプに対して高い選択性を示す、ヒト血清アルブミンに高い結合を示す能力がある(約90%以上)および/または従来の化合物よりも心臓への作用が顕著でない可能性がある。
【0146】
本発明の種々の態様を下記の実施例を参照して説明する。これらの実施例は単に例証を目的とするものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0147】
合成例
一般的な実験の詳細
他に特定しない限り、すべての反応を窒素雰囲気下で実施した。すべての温度はセ氏で表す。
【0148】
生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製する場合、「フラッシュシリカ」とは0.035〜0.070mm (220〜440メッシュ)のクロマトグラフィー用シリカゲル(例えば、Flukaシリカゲル60)を指し、カラム溶離を10 p.s.i.までの窒素圧力をかけることにより加速した。薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用する場合、それは、典型的には蛍光指示薬(254nm)を含む4×10 cmのアルミホイル上のシリカゲルプレート(例えば、Fluka 60778)を用いるシリカゲルTLCを指す。バイオタージ(Biotage)とは、フラッシュ12iクロマトグラフィーモジュールを用いて操作するKP-Silを含むあらかじめ充填されたシリカゲルカートリッジを指す。固相抽出(SPE)カラムは、通常減圧下で同時精製に使用されるあらかじめ充填されたカートリッジである。これらはVarianから市販されている。SCXカートリッジは、固定相がベンゼンスルホン酸ポリマーであるイオン交換SPEカラムである。これらはアミンを単離するために使用する。
【0149】
使用した液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC/MS)システムは次の通りである。
【0150】
LCMSは、Phenomenex Luna 3ミクロンC18(2) 30×4.6mmカラムを用いて、0.1% HCO2H水溶液(溶媒A)および0.1% HCO2Hアセトニトリル溶液(溶媒B)により、次の溶離勾配:0〜0.5分5% B、0.5〜4.5分5〜95% B、4.5〜5.5分95% B、5.5〜6.0分95〜5% B、流速2mL/分を用いて実施した。質量分析は、Micromass Platform LC四重極質量分析計により、ポジティブおよびネガティブモードのエレクトロスプレー(ES+veおよびES-ve)を用いて記録した。
【0151】
実施例2、4および7の別の調製法において、LC/MSはSupelcosil LCABZ+PLUSカラム(3.3 cm×4.6 mm内径)を用いて、0.1% HCO2Hおよび0.01M酢酸アンモニウム水溶液(溶媒A)および0.05% HCO2H 5%水のアセトニトリル溶液(溶媒B)により、次の溶離勾配:0.0〜7分0% B、0.7〜4.2分100% B、4.2〜5.3分0% B、5.3〜5.5分0% B、流速3ml/分を用いて実施した。質量分析は、Fisons VG Platform質量分析計により、ポジティブおよびネガティブモードのエレクトロスプレー(ES+veおよびES-ve)を用いて記録した。
【0152】
分取HPLCの条件:
生成物を分取HPLCにより精製した場合には、これは、7ミクロン充填剤を用いた内径21mm×100mmの大きさを有するGenesis C18逆相カラムにより実施した。溶離は、緩衝剤として0.1%ギ酸を含むMeOH:水の勾配により、5% MeOHで開始して、化合物が溶離するまでMeOHを1%/分で増加することにより実施した。溶離の時点の溶離液中のMeOH濃度は20〜30%であった。流速は5mL/分で、254nmにおけるUV検出を用いた。
【0153】
NMR:
1H NMRスペクトルは、Bruker DPX 250MHzを用いて、テトラメチルシランを基準として記録した。
【0154】
ISCO Companion XL
Companion XLは、使い捨てカートリッジ(120gm〜1500gm)を利用する自動シングルユーザーフラッシュクロマトグラフィーシステムである。これは、勾配法の実施を可能にする2成分オンライン溶媒混合を提供する。流速、勾配プロファイルおよび収集条件を管理する多機能オープンアクセスソフトウェアを用いてサンプルを測定する。システムは波長可変UV検出器および2個のFoxy 200フラクションコレクターを備えており、自動ピークカッティング、収集および追跡が可能である。
【0155】
使用される略語
IPA イソプロパノール
DCM ジクロロメタン
THF テトラヒドロフラン
MeOH メタノール
DMF ジメチルホルムアミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
EtOAc 酢酸エチル
CAN アセトニトリル
CHC シクロヘキサン
DMSO ジメチルスルホキシド
DMAP 4-ジメチルアミノピリジン
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
NBS N-ブロモスクシンイミド
IMSおよびIMS-G 工業用変性アルコール
TFA トリフルオロ酢酸
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
Rt 保持時間
h 時間
min 分
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
K ケルビン
TBME tert-ブチルメチルエーテル
NMR 核磁気共鳴
フラッシュシリカゲルは、Merck ART No. 9385を指し、シリカゲルはMerck ART No. 7734を指す。
【0156】
アミン出発物質
実施例1および6のアミンは、例えばSigmaから市販されている。
【0157】
実施例2および7のアミンは遊離塩基として使用した。遊離塩基は、例えばSigmaから市販されている二塩酸塩から誘導することができる。遊離塩基の調製は、例えば下記の中間物質5に記載されている。
【0158】
実施例3および8のアミンは、例えば、J. Het. Chem., (1981), 18(4), 831-832に記載される方法により調製することができる。
【0159】
実施例4および9のアミンは、例えばApinから市販されている。
【0160】
実施例5および10のアミンは、例えばAldrichから市販されている。
【0161】
中間物質1
(2R,3R,4R,5R)-2-(2-クロロ-6-{[trans-4-({[(1,1-ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート
【化24】

【0162】
(2R,3R,4R,5R)-2-(2,6-ジクロロ-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(WO98/28319A1参照) (15g)をプロパン-2-オール(100ml)中で撹拌し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(7.7ml)および1,1-ジメチルエチル(trans-4-アミノシクロヘキシル)カルバメート(6.82g)を加えた。混合物を65℃で24時間攪拌した後、室温に冷却し、減圧濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ)により、酢酸メチル中の30%シクロヘキサンを用いて溶離して精製した。適切なフラクションを合わせて減圧濃縮し、ジエチルエーテルと共に粉砕して、表題の化合物を8.56gの白色の固体として得た。LC-MS: Rt 3.88分
【0163】
中間物質1の別の調製法
(2R,3R,4R,5R)-2-(2,6-ジクロロ-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(10g) (WO98/28319A1参照)をイソプロパノール(100ml)中に懸濁した。1,1-ジメチルエチル(trans-4-アミノシクロヘキシル)カルバメート(4.56g)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.6ml)を加え、混合物を窒素雰囲気下で65℃に一晩加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧蒸発させた。残渣を酢酸エチルと水により分配した。有機相を分離し、水相を酢酸エチルにより2回抽出した。有機相を合わせ、水により洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧蒸発させ、高真空で一晩乾燥して、12.49gの表題の化合物を得た。LCMS; Rt 3.38分、MH+ 649
【0164】
中間物質2
(2R,3R,4R,5R)-2-{2-クロロ-6-[(trans-4-{[2-クロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル]アミノ}シクロヘキシル)アミノ]-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート
【化25】

【0165】
(2R,3R,4R,5R)-2-(2-クロロ-6-{[trans-4-({[(1,1-ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質1) (5.2 mmol)を、1:1トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(20ml)により約2時間処理した。これを減圧濃縮し、残渣をSPE (SCX、50g)により、ジクロロメタン、メタノール、40% (メタノール中2Mアンモニア):ジクロロメタン、およびメタノール中2Mアンモニアにより順に溶離して精製した。適切なフラクションを減圧濃縮して、プロパン-2-オール(60ml)中に懸濁した。これにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(4m.eq.)および2,6-ジクロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン(WO2003080604A1に開示された方法に従って調製した)(1m.eq.)を加えて、これを60℃に一晩加熱した。室温に冷却した後、さらに2,6-ジクロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン(0.5m.eq.)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(4ml)を加えて、これを60℃にさらに約5時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン(約60ml)と水(約60ml)により分配した。有機相を水(約60ml)により洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥し、減圧濃縮して、表題の化合物を4gの白っぽい結晶性の固体として得た。LC-MS: Rt 3.67分。
【0166】
中間物質2の別の調製法
(2R,3R,4R,5R)-2-{6-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-2-クロロ-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質4) (7.9g)をイソプロパノール(200ml)に溶解し、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(10ml)を加えた後、2,6-ジクロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン(3.92g)を加えた。混合物を窒素雰囲気下、60℃で18時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、減圧蒸発させた。残渣を酢酸エチルと水により分配した。有機相を分離し、水相を酢酸エチルにより2回抽出した。有機相を合わせ、乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させて、表題の化合物(10.35g)を得た。精製をおこなわずに使用した。LCMS; Rt 3.44分、(MH)+ 785.
【0167】
中間物質3
(2R,3R,4R,5R)-2-[2-クロロ-6-({trans-4-[(2-クロロ-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート
【化26】

【0168】
(2R,3R,4R,5R)-2-(2-クロロ-6-{[trans-4-({[(1,1-ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質1) (5.4mmol)を、1:1トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン(20ml)により、室温で約1時間処理した。これを減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン(50ml)と炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)により分配した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、減圧濃縮して白色の固体を得た。これをプロパン-2-オール(100ml)に溶解した。これに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4m.eq.)および2,4-ジクロロピリミジン(1m.eq.)を加えた。反応混合物を60℃に一晩加熱した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(50ml)と水(50ml)により分配した。有機相を水(50ml)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥し、減圧濃縮した。粗生成物を、SPE (50g、シリカ)により、ジクロロメタン中のx%酢酸エチル(x = 25、50、75)を用いて溶離して精製した。目的の生成物を含有するフラクションを合わせ、減圧濃縮して、表題の化合物を1.49gの無色のガムとして得た。LC-MS: Rt 3.44分
【0169】
中間物質3の別の調製法
(2R,3R,4R,5R)-2-{6-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-2-クロロ-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質4) (3.2g)をイソプロパノール(100ml)に溶解し、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(4ml)を加えた後、2,4-ジクロロピリミジン(0.86g)を加えた。混合物を60℃に18時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧蒸発させた。残渣を酢酸エチルと水により分配した。有機相を分離し、水相を酢酸エチルにより2回抽出した。有機相を合わせて、乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させた。残渣をシリカSPEカートリッジ(100g)により、0〜100%酢酸エチル-ジクロロメタン勾配を用いて60分間かけて溶離して精製した。適切なフラクションを合わせて減圧蒸発させ、1.53gの表題の化合物を得た。LCMS; Rt 3.24分、MH+ 661.
【0170】
中間物質4
(2R,3R,4R,5R)-2-{6-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-2-クロロ-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート
【化27】

【0171】
(2R,3R,4R,5R)-2-(2-クロロ-6-{[trans-4-({[(1,1-ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質1) (12.49g)をトリフルオロ酢酸-ジクロロメタン混合物(50:50; 40ml)に溶解した。混合物を室温で1〜2時間攪拌した後、減圧蒸発させた。残渣を酢酸エチルと2N炭酸水素ナトリウム水溶液により分配し、トルフルオロ酢酸が中和されたことを確認した。有機相を分離し、食塩水により洗浄し、乾燥し(MgSO4)、減圧蒸発させて、11.2gの表題の化合物を得た。LCMS; Rt 2.3分、MH+ 549.
【0172】
中間物質5
[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミン
【化28】

【0173】
a) 7,8-ジヒドロイミダゾ[1,5-c]ピリミジン-5(6H)-オン
カルボニルジイミダゾール(970.2g)を、約22℃で、撹拌した[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミン二塩酸塩(999.9g) (例えばSigmaから市販されている)およびイミダゾール(37g)のジクロロメタン(5.3 l)中の懸濁液に加えた。得られた白色の懸濁液を、NMRにより反応の完了が確認されるまで加熱還流した(4時間)。IMS-G (8 l)を加えながら、溶媒(8 l)を大気圧で留去した。追加のIMS-G (2 l)を加え、懸濁液を約22℃に冷却し、この温度で2時間熟成させた。濾過により固体を収集し、IMS-G (2×0.5 l)により洗浄し、吸引乾燥し、約60℃で減圧乾燥して、478gの表題の化合物を得た。
NMR (d6-DMSO) 300K:
8.22δ(1H, br.s), 8.06δ(1H, s), 6.80δ(1H, s), 3.35δ(2H, m), 2.87δ(2H, m).
【0174】
b) 2-メチル-5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,5-c]ピリミジン-2-イウム4-メチルベンゼンスルホネート
【化29】

【0175】
7,8-ジヒドロイミダゾ[1,5-c]ピリミジン-5(6H)-オン(699.7g)のDMF (2.45 l)中の懸濁液を撹拌しながら約60℃に加熱した。4-メチルベンゼンスルホン酸メチル(1058.2g.)のDMF (0.7 l)溶液を、約60℃で100分間かけて加え、さらにDMF (0.35 l)により洗い入れた。白色の懸濁液を約60℃で200分間撹拌した後、NMRにより反応の完了が確認された。反応混合物を約40℃に冷却し、TBME (5.25 l)を加えた。生成物を約22℃に冷却し、この温度で17時間熟成させ、濾過した。固まりをTBME-DMF (3:1, 1.4 l)、次いでTBME (2×1.4 l)により洗浄し、固まりを吸引乾燥し、生成物を約50℃で減圧乾燥して、1583.5gの表題の化合物を得た。
NMR (d6-DMSO) 300K:
9.83δ(1H, s), 9.04δ(1H, br. s), 7.59δ(1H, s), 7.48δ(2H, d), 7.11δ(2H, d), 3.89δ(3H, s), 3.46δ(2H, m), 3.00δ(2H, t), 2.29δ(3H, s).
【0176】
c) [2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミンビス(4-メチルベンゼンスルホネート)
【化30】

【0177】
2-メチル-5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,5-c]ピリミジン-2-イウム4-メチルベンゼンスルホネート(625.1g)、4-メチルベンゼンスルホン酸水和物(406.6g)、1,4-ジオキサン(9.38 l)および水(625ml)の混合物を約2.5時間加熱還流した後(約90℃)、NMRにより反応の完了が確認された。反応混合物を大気圧で蒸留することにより濃縮し、7.03 lを収集した。濃縮物を約77℃に冷却して、IMS-G (1.56 l)を加えた。得られた明色の溶液を冷却し、約54℃で[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミンビス(4-メチルベンゼンスルホネート) (0.625g)の種を入れた。懸濁液を約22℃に冷却し、40分間熟成させた。固体を濾過し、1,4-ジオキサン-IMS (3:1, 1.25 l)、次いで1,4-ジオキサン(2×1.25 l)により順次洗浄し、吸引乾燥し、約50℃で減圧乾燥して、866.3gの表題の化合物を得た。NMR (d6-DMSO) 300K:
8.80δ(1H, s), 7.69δ(4H, d), 7.45δ(1H, s), 7.25δ(4H, d), 3.87δ(3H, s), 3.26δ(2H, t), 3.09δ(2H, t), 2.36δ(6H, s).
【0178】
d) [2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミン
[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミンビス(4-メチルベンゼンスルホネート) (50g)をIMS (200ml)/水(200ml)に溶解した。これをDOWEX550Aカラム(600g)に通し、IMS (約4 l)により溶離した。適切なフラクションを合わせて減圧濃縮し、13.4gの表題の化合物を得た。
NMR (CDCl3) 298K:
7.34δ(1H, s), 6.66δ(1H, s), 3.63δ(3H, s), 2.97δ(2H, t), 2.69δ(2H, t).
【0179】
実施例1
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール、三ギ酸塩
【化31】

【0180】
(2R,3R,4R,5R)-2-{2-クロロ-6-[(trans-4-{[2-クロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル]アミノ}シクロヘキシル)アミノ]-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質2) (0.19mmol)、アミン(ヒスタミン)(20m.eq.)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(20m.eq.)のジメチルスルホキシド(1ml)中の混合物を125℃に一晩加熱した。反応混合物を冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(2×約10ml)により洗浄し、メタノール(2ml)/水(4ml)/ギ酸(0.5ml)に溶解し、ヒートガンにより加熱した。これを分取HPLCにより精製して表題の化合物を58mgの白っぽい固体として得た。LC-MS: Rt 4.41分、MH+ =767.
【0181】
実施例2、3、4および5は実施例1と同様の方法により合成した。
【表1】

【0182】
* 実施例2において、アミンは市販されている二塩酸塩から誘導することができる遊離塩基として使用した。
【0183】
実施例6
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール、四ギ酸塩
【化32】

【0184】
(2R,3R,4R,5R)-2-[2-クロロ-6-({trans-4-[(2-クロロ-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質3) (0.23mmol)、アミン(ヒスタミン)(20m.eq.)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(20m.eq.)のジメチルスルホキシド(1ml)中の混合物を、125℃に一晩加熱した。反応溶液を冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(2×約10ml)により洗浄し、残渣をメタノール(2ml)/水(4ml)/ギ酸(0.5ml)に溶解し、分取HPLCにより精製した。適切なフラクションを合わせて減圧濃縮し、凍結乾燥して、93mgの表題の化合物を得た。LC-MS: Rt 4.72分、MH+ =727
【0185】
実施例7、8、9および10は実施例6と同様の方法により合成した。
【表2】

【0186】
* 実施例7において、アミンは市販されている二塩酸塩から誘導することができる遊離塩基として使用した。
【0187】
実施例2の別の調製法
ギ酸 - (2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール(2:1)
【化33】

【0188】
(2R,3R,4R,5R)-2-{2-クロロ-6-[(trans-4-{[2-クロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル]アミノ}シクロヘキシル)アミノ]-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質2) (2.85g)を、[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミン(8.2g)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(11.8ml)のジメチルスルホキシド(15ml)溶液に加えて、窒素雰囲気下、125℃に20時間加熱した。混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(2×50ml)により洗浄した。混合物を水(200ml)に注ぎ、30分間撹拌した。形成された粘着性の固体を濾過し、水により洗浄し、メタノールに溶解して減圧蒸発させた。これをメタノール(30ml)に溶解して、2N HCl (10ml)を加えた。混合物を窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌した。メタノールを減圧除去して、残渣を水(15ml)により希釈した。溶液に2N炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて塩基性にして、沈殿した固体を濾過し、水により洗浄し、減圧乾燥して遊離塩基(2.19g)を得た。固体の一部(1g)を0.1%ギ酸水溶液に溶解して、C18 SPEカートリッジ(50g)に載せ、0.1%ギ酸水溶液により洗浄した。生成物を10%アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液により溶離した。適切なフラクションを合わせて、溶媒を減圧除去した。次に、残渣を水から凍結乾燥して、0.76gの表題の化合物を得た。LCMS; Rt 1.98分、(MH)+ 795.
NMR (D6-DMSO + D2O, 392K):
7.81δ(1H, s), 7.60δ(1H, s), 7.45δ(2H, br. s), 6.84,6.82δ(2H, 2 X s), 6.00δ(1H, d), 5.18δ(1H, d), 4.80δ(2H, m), 4.65δ(2H, q), 4.15δ(2H, m), 3.55δ(4H, t), 2.75δ(4H, 2 X t), 2.10δ(4H, br. d), 1.60-1.40δ(7H, m + t).
【0189】
実施例4の別の調製法
ギ酸 - (2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール(3:1)
【化34】

【0190】
(2R,3R,4R,5R)-2-{2-クロロ-6-[(trans-4-{[2-クロロ-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-9H-プリン-6-イル]アミノ}シクロヘキシル)アミノ]-9H-プリン-9-イル}-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質2) (3.0g)、[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミン(10.84g)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(13.45ml)にジメチルスルホキシド(20ml)を加えて、窒素雰囲気下、125℃で20時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(2×100ml)により洗浄した。混合物を水(200ml)に注ぎ、25分間撹拌し、沈殿した固体を濾過し、水により洗浄し、減圧乾燥した。固体をメタノール(30ml)に溶解し、2N HCl(30ml)を加えた。混合物を60℃に1〜2時間加熱した。溶媒を減圧除去し、残渣をジクロロメタンと2N炭酸水素ナトリウム水溶液により分配した。生成物は水層に移行した。水層を減圧蒸発させ、残渣にメタノールを加えて粉砕した。固体を濾過し、濾液を蒸発させて残渣(5g)を得た。これを逆相クロマトグラフィーにより精製した。固体(〜4g)を水/ギ酸溶液(20ml / 0.5ml)に溶解し、C18 SPEカートリッジ(70g)に載せ、0〜20%アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液の段階勾配(それぞれ、〜200ml)により溶離した。適切なフラクションを合わせて、アセトニトリルを減圧除去した。次に溶液を凍結乾燥して、表題の化合物(0.769g)を得た。LCMS; Rt 1.98分、(MH)+ 829.
NMR (D6-DMSO + D2O, 392K):
7.85δ(1H, s), 7.58δ(1H, s), 5.98δ(1H, d), 5.15δ(1H, d), 4.80δ(1H, t), 4.70-4.60δ(3H, m), 4.10δ(2H, br. m), 3.30δ(4H, 2 X t, 一部水により隠れている), 3.0δ(8H, m), 2.95δ(4H, m), 2.05δ(4H, br. d), 1.85δ(8H, m), 1.75-1.30δ(15H, m + t).
【0191】
実施例7の別の調製法
ギ酸 - (2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール(3:1)
【化35】

【0192】
(2R,3R,4R,5R)-2-[2-クロロ-6-({trans-4-[(2-クロロ-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロフラン-3,4-ジイルジアセテート(中間物質3) (1.53g)、[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミン(5.7g)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(8ml)にジメチルスルホキシド(10ml)を加えて窒素雰囲気下、125℃で18時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(2×100ml)により洗浄した。混合物を水により希釈して、沈殿した粘着性の固体を粉砕し、水をデカントした。粘着性の固体/ガムをメタノールに溶解し、減圧蒸発させた。残渣を2つのバッチに分け、Companion XLを用いて逆相クロマトグラフィーにより精製した。それぞれの固体を水/アセトニトリル/ギ酸溶液(2.5ml / 0.5ml / 0.3 ml)に溶解し、逆相カートリッジ(330g)に載せ、カラム体積の8倍以上の5〜50%アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液の勾配により溶離した。両方のカラムからの適切なフラクションを合わせて減圧蒸発させた。残渣を水に取り、凍結乾燥して表題の化合物(1.08g)を得た。LCMS; Rt 1.99分、([M+2H]/2)2+ 378.
NMR (D6-DMSO + D2O, 392K):
7.80δ(1H, s), 7.58δ(1H, d), 7.40δ(1H, s), 6.78δ(2H, 2 X s), 5.95δ(1H, d), 5.80δ(1H, d), 5.15δ(1H, d), 4.78δ(2H, m), 4.60δ(2H, q), 4.05δ(1H, m), 3.70δ(1H, m), 3.50δ(6H, s), 3.45δ(4H, 2 X t), 2.70δ(4H, 2 X t), 2.0δ(4H, m), 1.45δ(3H, t), 1.40δ(4H, m).
【0193】
生物学的実施例
化合物の生物活性は下記のアッセイまたは類似のアッセイを用いて評価することができる。
【0194】
生物学的実施例1
ヒトアデノシンA1、A2A、およびA2B受容体に対するin vitroアゴニスト活性
化合物のヒトアデノシン受容体に対するアゴニストとしての効力および選択性を、関連する受容体の遺伝子をトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて測定する。これらの細胞を使用して化合物の刺激に応答したcAMPの生産を測定する。
【0195】
DiscoveRxアッセイは、β-ガラクトシダーゼの2つの断片、酵素受容体(EA)および酵素供与体(ED)が関与するCHO細胞に基づく酵素相補性アッセイである。cAMPの生産の後、EAがEDに結合し、活性酵素が生産され、基質を加えた後に蛍光性産物が形成される。両方の方法において、試験化合物の効果は、cAMPの基礎レベルに対する(A2AおよびA2B)、またはフォルスコリンにより増大するcAMPに対する(A1)それらの効果により決定される。
【0196】
すべてのin vitroアッセイにおいて、試験化合物の活性は、非選択的アデノシン受容体アゴニストであるN-エチルカルボキシアミドアデノシン(NECA)の活性に対する比として表される。
【0197】
本発明のある実施形態においては、A2A受容体においてNECAの少なくとも2倍の活性を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例1〜9の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0198】
本発明の別の実施形態においては、A2A受容体に対してA1受容体に対するよりも100倍以上の選択性を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例1〜9の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0199】
本発明の別の実施形態においては、A2A受容体に対してA2B受容体に対するよりも100倍以上の選択性を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例4および6〜9の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0200】
実施例2、4および7では、DiscoveRxにおいて、化合物のヒトアデノシン受容体に対するアゴニストとしての効力および選択性を、関連する受容体の遺伝子をトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて測定する別のアッセイ系も使用した。これらの細胞は化合物の刺激に応答したcAMPの生産を測定するために使用した。
【0201】
cAMPトレーサーは、ビオチン-cAMPとユーロピウム-W8044キレートにより標識されたストレプタビジンの間の相互作用により形成される。次に、このトレーサーが、色素Alexa Fluor 647により標識されたcAMP特異的抗体との結合に関して細胞のcAMPと競合する。
【0202】
340nmの光パルスがcAMPトレーサーのユーロピウムキレート分子を励起し、トレーサーが抗体に結合している場合には、Euキレートにより放出されたエネルギーが抗体上のAlexa Fluor分子に転移する。この結果、Alexa分子から665nmの光の放出が起こり、これを測定する。
【0203】
したがって、受容体の刺激により生産された細胞のcAMPレベルが高いほど、抗体に結合できるcAMPトレーサーが少なくなり、観察されるエネルギー転移が少なく、そのため蛍光シグナルが減少する。
【0204】
アデノシンA2aおよびA2b受容体などのGs結合受容体においては、アゴニストによる刺激はcAMPレベルの増大をもたらし、そのため665nmの蛍光の減少をもたらす。アンタゴニストを加えると逆の効果が得られる。
【0205】
アデノシンA1受容体などのGI結合受容体においては、アゴニストを添加するとフォルスコリンに誘導されるcAMPの生産が阻害され、そのため665nmの蛍光の増大をもたらす。アンタゴニストを加えると、アゴニストの効果を阻害し、そのため細胞の cAMPが増加し、蛍光シグナルが減少する。
【0206】
本発明のある実施形態においては、A2A受容体においてNECAの少なくとも2倍の活性を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例2、4および7の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0207】
本発明の別の実施形態においては、A2A受容体に対してA1受容体に対するよりも100倍以上の選択性を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例2、4および7の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0208】
本発明の別の実施形態においては、A2A受容体に対してA2B受容体に対するよりも100倍以上の選択性を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例2、4および7の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0209】
生物学的実施例2
ヒト血清アルブミン(HSA)結合
装置:本実施例を通してAgilent HP1100 HPLC装置を使用した。
【0210】
HPLCカラム:Chromtech Immobilised HSA HPLCカラム50 x 3 mmはChromtech (Cheshire, UK)より購入した。
【0211】
移動相および検出:移動相Aは50 mM pH 7.4酢酸アンモニウム溶液であり、移動相Bは2-プロパノール(HPLC等級、Runcorn, UK)であった。移動相の流速は1.8 ml/分であった。カラム温度は30℃に維持した。勾配プロファイルおよび実行時間は各カラムで同一であり、0〜30%の2-プロパノールの線形勾配を0〜3分に適用した。3〜5分には移動相の組成は30% 2-プロパノールおよび70% 50mM酢酸アンモニウムで一定であった。5分から5.2分で移動相の組成を100%酢酸アンモニウム緩衝液のみに変え、実行の終了までそのまま維持した。それぞれの分離は6分後に終了した。カラム温度は30℃に維持した。
【0212】
検出:クロマトグラムは、室温で、ダイオードアレイUV吸収検出器により230および254 nmで記録した。
【0213】
タンパク質カラムの較正:すべての96ウェルプレートの分析の前にカラム性能チェックおよび較正をおこなった。カラムの較正に使用する化合物を、50% 2-プロパノールと50% pH7.4酢酸アンモニウム溶液の混合物中に、0.5 mg/mlの濃度で別々に溶解した。較正に用いた化合物のセット、それらの文献上の血漿タンパク質結合%、およびその直線変換値(logK lit)、ならびに典型的な保持時間、それらの対数値、較正曲線から得られたlogKおよび%結合データを表1に記載する。
【表3】

【0214】
% PPB(血漿中で結合)の文献値を、下記の等式を用いて、直線自由エネルギー関係logK値(見かけの親和定数の対数)に変換した。
【数1】

【0215】
本発明の一つの実施形態において、90%以上のHSA結合を示す化合物が好ましい。試験の結果、実施例1〜10の化合物がこの基準を満たすことが見出された。
【0216】
生物学的実施例3
好中球増加の阻害
ラットを軽く麻酔し(酸素中のイソフルオラン)、担体または試験物質を、口を通して挿入したカニューレを用いて気管内投与する(200μl)。気管内投与の後、ラットをケージに戻し、餌および水を自由に摂らせる。30分後、ラットをパースペックスの箱に入れ、エアロゾル化したリポ多糖(LPS) (0.15 mg/ml、血清型0127:B8)に、15 ml/分の流速で15分間曝露する(Devilbiss噴霧器)。4時間後、動物をペントバルビタール(250 mg/kg、腹腔内投与)により殺す。3アリコート(5 mL)のヘパリン(10ユニット/ml)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(Sigmaカタログ番号P3813、pH 7.4)を用いて肺を洗浄し、回収した細胞をプールし(回収した液体のプールした体積を記録する)、遠心分離する(1300 rpm、7分間)。上清を吸引により除去し、細胞ペレットを1 mlのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁する。総細胞数を計数する(Sysmex Microcell Counter F-500, TOA Medical Electronics Ltd., 日本)。回収した液体を希釈することにより(およそ106細胞/mlに)塗沫標本を作り、アリコート(100μl)を遠心分離する(Cytospin, Shandon, UK)。塗沫標本を空気乾燥し、メタノールの溶液を用いて10秒間固定し、好酸球、好中球、マクロファージおよびリンパ球を識別するために緩衝化したエオシン(10秒)およびメチレンブルー/アズール(Azur)1 (5秒) (Speedy-Diff, ClinTech Ltd, Essex, UK)により染色する。塗沫標本あたり合計300個の細胞を、油浸下で光学顕微鏡検査により計数する(×1000)。
【0217】
本発明の一つの実施形態において、>50%の好中球増加の阻害を示す化合物が好ましい。100ug/kgの濃度で試験した結果、実施例1、2、3、4、6および7の化合物がこの基準を満たすことが見出された。実施例5、8、9および10の化合物は試験しなかった。
【0218】
実施例2、4および7を、上記のものと同様の方法を用いて30ug/kgで再試験した。これらの3種の化合物の中で、実施例4のみが>50%の阻害を示した。
【0219】
生物学的実施例4
ヒトアデノシンA3受容体に対するin vitroのアゴニスト活性
化合物のアデノシンA3アゴニストとしての効力を、ヒトアデノシンA3受容体およびcAMP応答エレメントSPAP(分泌胎盤アルカリホスファターゼ)を安定発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞を用いて測定する。これらの細胞におけるcAMP濃度が増大すると、SPAPレポーター遺伝子の転写の増大が起こり、それを、色素物質を加えて着色生成物を測定することにより定量することができる。アデノシンA3受容体はGiに連鎖しているので、これらの細胞において、cAMP濃度はフォルスコリンにより増加しなければならない。アデノシンA3受容体の活性化は、着色生成物の減少として測定されるフォルスコリンにより増加したcAMPの減少により測定される。試験化合物のアデノシンA3活性は、非選択的アデノシン受容体アゴニストであるN-エチルカルボキシアミドアデノシン(NECA)の活性に対する比として表される。
【0220】
実施例2、8、9、および10は、アッセイのすべての濃度範囲において機能的に不活性であった。実施例1、3、6および7は、選択性がA2Aの100倍以上高かった。実施例4および5は、選択性がA2Aの10倍以上高かった。
【0221】
本明細書において引用した、特許および特許出願を含むがこれらに限定されないすべての文献を、個々の文献について特定的かつ個別に参照によりその記載の全体を本明細書に組み入れることを指示したものと同様に、参照により本明細書に組み入れる。
【0222】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む」という用語は、記載された整数または段階または整数の群を含むことを意味するが、他の整数または段階または整数もしくは段階の群を除外しないものと理解される。
【0223】
本明細書および特許請求の範囲によりなされる出願は、あらゆる後願に関して優先権の根拠として使用することができる。前記の後願の特許請求の範囲は、本明細書に記載されるいかなる特徴または特徴の組合せに関するものであってもよい。それらは製品、組成物、方法または使用の請求項の形を取ることができ、例えば、これらに限定されないが、本出願の特許請求の範囲を含んでもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
R1は、メチルまたはエチルを表し;
R2は、下記のリスト:
【化2】

より選択される基を表し;
R3は、下記のリスト:
【化3】

より選択される基を表し;
そこにおいて、R4は、下記のリスト:
【化4】

より選択される基を表し;
R5は、水素、C1-4アルキル、C1-4アルキルアリール、C1-4アルキルヘテロアリールまたはC1-4ヒドロキシアルキルを表し;
R6およびR7は独立して、水素、メチルまたはフェニルを表す]
の化合物、ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項2】
R1がエチルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が基(i)、(ii)、(iii)または(iv)を表す、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R2が基(ii)を表す、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R2が基(iv)を表す、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
R3が基(a)を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R3が基(b)を表す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R5がHを表す、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R4が基(i)、(ii)、(iii)、(iv)または(v)を表す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
R4が基(ii)を表す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R4が基(iv)を表す、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3R,4S,5R)-2-(2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-6-{[trans-4-({2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-9H-プリン-6-イル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3R,4S,5R)-2-(2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-6-{[trans-4-({2-[(trans-4-アミノシクロヘキシル)アミノ]-4-ピリミジニル}アミノ)シクロヘキシル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
またはそれらのいずれか1つの塩もしくは溶媒和物である式(I)の化合物。
【請求項13】
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[4-(1-ピロリジニル)ブチル]アミノ}-1H-プリン-6-イル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
(2R,3S,4R,5R)-2-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)-5-[2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-6-({trans-4-[(2-{[2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)エチル]アミノ}-4-ピリミジニル)アミノ]シクロヘキシル}アミノ)-9H-プリン-9-イル]テトラヒドロ-3,4-フランジオール;
またはそれらのいずれか1つの塩もしくは溶媒和物である式(I)の化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を含み、さらに1種以上の製薬上許容される希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬品として使用するための請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
炎症性疾患の治療のための医薬品の製造における請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
患者に有効量の請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む炎症性疾患の治療または予防の方法。

【公表番号】特表2009−501746(P2009−501746A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521876(P2008−521876)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007078
【国際公開番号】WO2007/009757
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】