説明

アトルバスタチンヘミカルシウムの新規結晶形態およびその調製方法ならびにアトルバスタチンヘミカルシウム形態I、VIIIおよびIXの新規調製方法

【課題】製剤科学者がアトルバスタチンヘミカルシウムの標的放出プロファイルまたは他の望ましい特性をもった薬物の医薬製剤形態(剤形)のデザインを行うための新規な結晶多形を提供。
【解決手段】アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを、1−ブタノールとの水の混合物から回収した、9.3および9.5±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶多形およびアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形態の新規な調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチン、(〔R−(R*,R*)〕−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−〔(フェニルアミノ)カルボニル〕−1H−ピロール−1−ヘプタン酸)は、式(I)のラクトン形および式(II)のカルシウム塩三水和物で示されるものが当該技術分野でよく知られており、とりわけ特許文献1及び2、および同時係属中のUSSN60/166,153号、出願日2000年11月17日に記載されており、それらの全てが参照により本願明細書に取り込まれる。
【0003】
【化1】

【0004】
アトルバスタチンおよびそのヘミカルシウム塩の調製方法も、特許文献2〜11及び非特許文献1に開示されており、それらの全体、特にアトルバスタチンおよびアトルバスタチンヘミカルシウムの調製に関するそれらの教示について、参照により本願明細書に取り込まれる。
【0005】
アトルバスタチンは、スタチンと称される薬物のクラスのメンバーである。スタチン薬物は、心血管疾患の危険性がある患者の血流中の低密度リポタンパク質(LDL)粒子濃度を低下せしめるのに利用可能な、現在最も治療に有効な薬物である。血流中の高レベルのLDLは、血流を妨害し破裂させることがあり血栓症を促進する冠動脈の病変の形成と関連づけられている(非特許文献2)。血漿LDLレベルの低下は、心血管疾患を有する患者及び心血管疾患ではないが高コレステロール血症を有する患者における臨床徴候の危険性を低下することが示されている(非特許文献3)。
【0006】
スタチン薬物の作用機構は、ある程度詳しく解明されている。それらは、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル補酵素Aレダクターゼ酵素(「HMG−CoAレダクターゼ」)を競合的に阻害することによって、肝臓におけるコレステロール及び他のステロールの合成を妨害する。HMG−CoAレダクターゼはHMGのメバロン酸への変換を触媒し、これがコレステロールの生合成における律速段階であるので、その阻害は肝臓におけるコレステロール濃度の低下を導く。超低密度リポタンパク質(VLDL)は、肝臓から末梢細胞にコレステロール及びトリグリセリドを輸送するための生物学的担体である。VLDLは末梢細胞において異化作用を受けて脂肪酸を放出し、この脂肪酸は脂肪細胞に蓄えられるか、筋肉によって酸化され得る。VLDLは中間密度リポタンパク質(IDL)に変換され、このIDLはLDL受容体によって除去されるか、又はLDLに変換される。コレステロール産生の低下は、LDL受容体の数の増大及びIDLの代謝によるLDL粒子の産生の対応する低下を導く。
【0007】
アトルバスタチンヘミカルシウム塩三水和物は、リピトール(LIPITOR)の名のもとワーナー・ランバート社(Warner-Lambert Co.)により販売されている。アトルバスタチンは特許文献1において最初に公衆に開示され特許請求された。式(II)に示されるヘミカルシウム塩は特許文献2に開示されている。特許文献2は、ヘミカルシウム塩が、CaCl2によるナトリウム塩の転位から生じる塩溶液からの結晶化によって得られ、さらに酢酸エチルとヘキサンの5:3混合物からの再結晶化によって精製されることを教示する。
【0008】
本発明は溶媒和および水和の両状態におけるアトルバスタチンヘミカルシウムの新規結晶形態を提供する。異なる結晶形態の発生(多形)は、幾つかの分子および分子複合体の特性である。単一分子、例えば式(I)のアトルバスタチンまたは式(II)の塩複合体は、融点、X線回折パターン、赤外吸収指紋およびNMRスペクトルのような異なる物理的特性を有する種々の固体を生じ得る。多形の物理的特性における差異は、バルク固体における隣接分子(複合体)の配向および分子間相互作用から生じる。従って、多形は、同一の分子式を有しながら多形ファミリーの他の形態と比較して有利および/または不利な種々異なる物理的特性を有する別異の固体である。医薬多形の最も重要な物理的特性の1つに、水溶液中でのそれらの溶解性、特に患者の胃液中でのそれらの溶解性がある。例えば、胃腸管を介する吸収が遅い場合には、患者の胃や腸における条件に対して不安定な薬物にとって、有害な環境で蓄積しないようにゆっくりと溶解することがしばしば望ましい。他方、薬物の有効性が当該薬物のピーク血流レベルと相関しており、スタチン薬物が有し当該薬物に与えられた特性が胃腸(GI)系によって迅速に吸収されることである場合には、更に迅速に溶解する形態となることによって、比較的ゆっくりと溶解する形態の比較できる量よりも増大した有効性を示しやすくなる。
【0009】
アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形態I、II、IIIおよびIVはワーナー・ランバートに譲渡された特許文献12、13の主題であり、結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vは同一権利者の特許文献14に開示されている。特許文献12には、形態Iがアトルバスタチンヘミカルシウムの既知の非晶性形態よりも有利な濾過および乾燥特性を有するという主張がされている。特許文献12によれば、形態Iは、9.150,9.470,10.266,10.560,11.853,12.195,17.075,19.485,21.626,21.960,22.748,23.335,23.734,24.438,28.915および29.234度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。
【0010】
同一権利者の同時係属中の特許文献15は、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VII、その調製方法およびそれを含む医薬組成物を開示している。
【0011】
同一権利者の同時係属中の特許文献16は、形態VI、VIII、IX、X、XIおよびXIIのアトルバスタチンヘミカルシウム、それらの調製方法およびそれらを含む医薬組成物を開示している。
【0012】
特許文献16によれば、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIは、従来型CuKα照射を用いて、6.9,9.3,9.6,16.3,17.1,19.2,20.0,21.6,22.4,23.9,24.7,25.6および26.5±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンを生じる。追加的ピークが、4.8,5.2,5.9,7.0,8.0,9.3,9.6,10.4,11.9,16.3,17.1(幅広),17.9,18.6,19.2,20.0,20.8,21.1,21.6,22.4,22.8,23.9,24.7,25.6,26.5,29.0±0.2度2θに観測されている。
【0013】
形態VIIIについてシンクロトロンX線粉末回折分析が行われ、その結晶系および単位胞の寸法が決定された。形態VIIIは、格子定数:a=18.55〜18.7Å,b=5.52〜5.53Å,c=31.0〜31.2Åおよび97.5〜99.5°のa軸とc軸間の角度βをもった単斜晶系単位胞を有することが分かった。
【0014】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIは、以下の化学シフト位置:17.8,20.0,24.8,25.2,26.1,40.3,40.8,41.5,43.4,44.1,46.1,70.8,73.3,114.1,116.0,119.5,120.1,121.8,122.8,126.6,128.8,129.2,134.2,135.1,137.0,138.3,139.8,159.8,166.4,178.8,186.5ppmに共鳴を有する、交差分極、マジックアングルスピニング固体状態13CNMRスペクトルを生じる。形態VIIIは、最低ppm共鳴と他の共鳴との間で以下の化学シフト差:2.2,7.0,7.4,8.3,22.5,23.0,23.7,25.6,26.3,28.3,53.0,55.5,96.3,98.2,101.7,102.3,104.0,105.0,108.8,111.0,114.4,116.4,117.3,119.2,120.5,122.0,142.0,148.6,161.0および168.7を有する固体状態13C核磁気共鳴によって特徴付けられる。
【0015】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIは、重量基準で約3%までのエタノールを含有するエタノール溶媒和物として存在することができる。アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIの試料は、カール−フィッシャー分析により決定される通り7%までの水を含有することもできる。
【0016】
特許文献16は、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIが、アトルバスタチンヘミカルシウムをエタノールと水の混合物中で、上昇した温度、好ましくは78〜80℃においてスラリー化することによって得られうることを教示している。
【0017】
該出願はまた、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIが、形態VをEtOH:H2Oの混合物、好ましくは約5:1の比である混合物で、還流温度よりも低い上昇した温度、好ましくは78〜80℃において処理することによって、形態Vから出発して得られうることも教示している。当該方法のために特に好ましいEtOH:H2O混合物は、エタノール中に約4体積%の水を含有する。加熱時に、アトルバスタチン形態Vは徐々に溶解し、シード添加(seeding)の有無に関わらず、78〜80℃の温度において濁りが観測される。この時点で当該懸濁体は直ぐに室温に冷却される。
【0018】
さらにまた、特許文献16は、形態VIIIが、アトルバスタチンヘミカルシウムをEtOH中、好ましくは無水(absolute)EtOH中で、上昇した温度、好ましくはEtOHの沸点において処理することによって得られうることも教示している。これらの条件下で該アトルバスタチンは溶解し再沈殿する。MeOHを還流させながら添加してもよい。添加されるMeOHは収率に悪影響を及ぼし得るが、生成物の化学的純度を向上し得る。この方法により形態VIIIを調製するための出発物質は、アトルバスタチンヘミカルシウムの結晶性形態、好ましくは形態I、形態V、これらの混合物であってよく、又は非晶性アトルバスタチンヘミカルシウムであってもよい。EtOHの量またはEtOHの水との混合物の量は、好ましくは約10〜約100mlg-1、より好ましくは約20〜約80mlg-1の範囲にある。
【0019】
形態VIIIはまた、アトルバスタチンヘミカルシウムを、該アトルバスタチンヘミカルシウムから形態VIIIへの転化を起こさせるのに十分な時間、ある種の1−ブタノール/水混合物、エタノール/水混合物中で懸濁することによっても調製されうる。1−ブタノール/水混合物は、上昇した温度、好ましくは還流温度において、体積基準で約20%の1−ブタノールを含有するべきである。
【0020】
特許文献16によれば、アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXは、従来型CuKα照射を使用して、4.7,5.2,5.7,7.0,7.9,9.4,10.2,12.0,17.0,17.4,18.2,19.1,19.9,21.4,22.5,23.5,24.8(幅広),26.1,28.7,30.0±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。形態IXの結晶系および単位胞の寸法がシンクロトロンX線粉末回折分析を用いて決定された。形態IXは、格子定数:a=18.75〜18.85Å,b=5.525〜5.54Å,c=30.9〜31.15Åおよび96.5〜97.5°のa軸とc軸間の角度βをもった単斜晶系結晶格子を有する。
【0021】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXは、以下の化学シフト位置:18.0,20.4,24.9,26.1,40.4,46.4,71.0,73.4,114.3,116.0,119.5,120.2,121.7,122.8,126.7,128.6,129.4,134.3,135.1,136.8,138.3,139.4,159.9,166.3,178.4,186.6ppmによって特徴付けられる、交差分極、マジックアングルスピニング固体状態13CNMRスペクトルを生じる。また、形態IXは、最低ppm共鳴と他の共鳴との間で以下の化学シフト差:2.4,6.9,8.1,22.4,28.4,53.0,55.4,96.3,98.0,101.5,102.2,103.7,104.8,108.7,110.6,111.4,116.3,117.1,118.8,120.3,121.4,141.9,148.3,160.4,168.6を有する固体状態13C核磁気共鳴によって特徴付けられる。
【0022】
特許文献16は、アトルバスタチンヘミカルシウムをブタノール中でスラリー化し、そして形態IXを単離すること、例えば該ブタノールの濾過またはデカンテーション、好ましくは濾過することによって、形態IXが調製されうることを開示している。スラリー化処理のための好ましい温度範囲は78℃ないし溶媒の還流温度である。スラリーからのアトルバスタチンヘミカルシウム塩の回収率は、形態IXを単離する前に当該スラリーに貧溶媒(anti-solvent)を添加することによって向上することができる。好ましい貧溶媒としては、イソプロパノールおよびn−ヘキサンが含まれる。この方法により形態IXを調製するための出発物質は、結晶性または非晶性のアトルバスタチンヘミカルシウムであってよく、好ましくは形態I、形態V、これらの混合物である。
【0023】
特許文献16はさらに、形態IXが、形態VIIIを、形態VIIIから形態IXに転化するのに十分な時間(これは数時間ないし24時間の範囲でよく通常は約16時間必要である)、室温において、エタノール中、好ましくは無水エタノール中で懸濁させることによって調製されうることを教示している。その後、該懸濁体から形態IXが回収される。形態IXは、形態VIIIを湿り雰囲気下で維持することによっても調製されうる。
【0024】
さらにまた特許文献16は、形態IXが、アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを1−ブタノールとエタノール又は水との混合物中で、形態Vから形態IXに転化するのに十分な時間、還流温度において懸濁させ、該懸濁体から形態IXを回収することによっても調製されうることを教示している。好ましくは、該混合物は約50体積%の各成分を含有する。
【0025】
形態Iは製造特性の点で非晶性材料の欠点の幾つかを改善するものであるが、これらの特性の更なる改善ならびに流動性、蒸気不透過性および溶解性など他の特性の改善についての必要性がある。さらに、薬物の新規な結晶多形形態の発見は、製剤科学者が標的放出プロファイルまたは他の望ましい特性をもった薬物の医薬製剤形態(剤形)のデザインを行うための材料のレパートリーを拡大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第4,681,893号
【特許文献2】米国特許第5,273,995号
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0099224号
【特許文献4】米国特許第5,298,627号
【特許文献5】米国特許第5,003,080号
【特許文献6】米国特許第5,097,045号
【特許文献7】米国特許第5,124,482号
【特許文献8】米国特許第5,149,837号
【特許文献9】米国特許第5,216,174号
【特許文献10】米国特許第5,245,047号
【特許文献11】米国特許第5,280,126号
【特許文献12】米国特許第5,969,156号
【特許文献13】米国特許第6,121,461号
【特許文献14】国際公開公報第WO01/36384号(PCT出願第PCT/US00/31555号)
【特許文献15】米国特許出願第2002/0115709号
【特許文献16】米国特許出願第2002/0183378号
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Baumann, K. L. et al. Tet. Lett. 1992, 33, 2283-2284
【非特許文献2】Goodman and Gilman, The Pharmacological Basis of Therapeutics 879 (9th ed. 1996)
【非特許文献3】Scandinavian Simvastatin Survival Stady Group, 1994; Lipid Research Clinics Program, 1984a, 1984b
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明はアトルバスタチンヘミカルシウムの新規な結晶多形、ならびにその溶媒和物および水和物に関する。
【0029】
より詳しくは、本発明は、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターンが9.3および9.5±0.2度2θにピークを有することによって特徴付けられる新規な固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムを提供する。そのほか、小ピークが15.7,20.5,21.1,22.8,23.8,24.0,25.3,26.4,26.8,27.2,29.2,31.6±0.2度2θにピークが観測される。
【0030】
他の態様において、本発明は、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターンが7.6,9.8,16.5および29.4±0.2度2θにピークを有することによって特徴付けられる新規な固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム、ならびにその新規な調製方法を提供する。
【0031】
他の態様において、本発明は、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターンが16.5,21.9,29.5±0.2度2θにピークを有することによって特徴付けられる新規なアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形態、ならびにその新規な調製方法を提供する。
【0032】
他の態様において、本発明は、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターンが7.8,9.5,10.2,18.2,19.1,25.3,26.2,30.1±0.2度2θの典型的X線ピークによって特徴付けられる新規なアトルバスタチンヘミカルシウム結晶形態、ならびにその新規な調製方法を提供する。
【0033】
他の態様において、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIの新規な調製方法を提供する。
【0034】
他の態様において、本発明は、アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXの新規な調製方法を提供する。
【0035】
他の態様において、本発明は、新規固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその混合物を医薬として許容される担体と共に含んでなる組成物および投与形態(剤形)ならびに新規形態により高脂血症を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】銅陰極を用いた従来型X線発生器を使用して得られたアトルバスタチンヘミカルシウム形態IXの特性粉末X線回折パターンである。
【図2】銅陰極を用いた従来型X線発生器を使用して得られたアトルバスタチンヘミカルシウム形態IXaの特性粉末X線回折パターンである。
【図3】銅陰極を用いた従来型X線発生器を使用して得られたアトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVの特性粉末X線回折パターンである。
【図4】銅陰極を用いた従来型X線発生器を使用して得られたアトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIの特性粉末X線回折パターンである。
【図5】銅陰極を用いた従来型X線発生器を使用して得られたアトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIIの特性粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係るアトルバスタチンヘミカルシウムの結晶形態の幾つかは、溶媒和状態および水和状態で存在する。水和物はカールフィッシャー法(Karl-Fisher)および熱重量分析によって分析されている。
【0038】
従来型CuKα照射を用いた粉末X線回折(「PXRD」)分析は、固体状態検出器を備えたシンタグ(SINTAG)粉末X線回折計モデルX'TRAを使用して当該技術分野において既知の方法により行った。λ=1.5418Åの銅の照射を用いた。測定範囲:2〜40度の2θ。試料は、底部に丸いバックグラウンドゼロの水晶板を備えた丸い標準的アルミニウムサンプルホルダを使用して導入した。粉末状の試料を穏やかにすりつぶして、当該サンプルホルダの丸いキャビティの中にガラス板で押すことによって充填した。
【0039】
前述したように、同一権利者に譲渡された同時係属中の米国特許出願公開第2002/0183378号は、1−ブタノールとエタノール又は水との混合物を使用して、アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXが生成しうることを教示している。今般、混合物において一方または他方が支配的である1−ブタノールと水との混合物中でアトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを懸濁させることにより、より高純度の結晶性アトルバスタチンヘミカルシウム生成物が生じることが見出された。この生成物は形態IXaと命名された。アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXaは、本願で図1として再現される該2002/0183378号公開に記載されている形態IXと幾つかの点で類似している、そのPXRDパターン(図2)により特徴付けられる。しかしながら、これら2つのパターン間には相違がある。最も顕著な相違は約9.5度2θである。形態IXのPXRDパターンには単一の強いピークが観測されるのに対し、形態IXaのパターンには9.3および9.5度2θに2つの強いピークが観測される。加えて、形態IXaのPXRDパターンには15.7,20.5,21.1,22.8,23.8,24.0,25.3,26.4,26.8,27.2,29.2および31.6±0.2度2θに小さなピークがある。
【0040】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXaは、特に結晶性、濾過可能で、形態IXと類似の内部構造を有する純粋物質であると考えられ、それ故に形態IXaと命名されている。形態IXaは、アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを1−ブタノールと水との混合物中で懸濁させることによって調製することができ、ここで1−ブタノールまたは水は該混合物の約85%〜約95%、より好ましくは約90%を構成する。この懸濁体を加熱することにより、形態Vから形態IXaへの転化を促進することができる。約85℃において16時間で一般に十分である。これらの条件下で、95%もの収率を得ることができ、該物質の不純物レベルを大きく低下させることができる。出発アトルバスタチンヘミカルシウムの不純物含有量を約50%以上低減することができる。例えば、約1.3%の化学純度の形態Vから出発する場合に形態IXを約0.7%の化学純度で得ることができる。化学的純度は高性能液体クロマトグラフィ(「HPLC」)により測定することができる、HPLCは以下の勾配溶出:溶媒A:1NのKOHでpH5に調整された0.05MKH3PO4:アセトニトリル:メタノール:THF(62:26:8:4);溶媒B:メタノールを用いて、Spherisorb(登録商標)S5, C8カラム, 250×4.6mmで行われた。このHPLCシステムは、Waters(登録商標)ポンプと254nmにセットされたUV検出器とを備えている。
【0041】
使用することができる特定の手順のうち、以下のものが言及され得る。形態Vを90%の1−ブタノールと10%の水の混合物(v/v)中で懸濁させる。この混合物は形態Vのグラム当たり約20ミリリットルの量で使用される。この懸濁体は90℃で16時間還流され、その後、形態Vが形態IXに変換され、これが次に該懸濁体から従来型の手段、例えば濾過、により回収される。
【0042】
他の特定の手順によれば、形態Vを10%の1−ブタノールと90%の水の混合物(v/v)中で懸濁させる。この混合物は形態Vのグラム当たり約20ミリリットルの量で使用される。この懸濁体は約16時間還流され、その後、形態Vが形態IXに変換され、これが次に従来型の手段により回収される。
【0043】
本発明はさらに、形態XIVと命名されたアトルバスタチンヘミカルシウムの新規の多形を提供する。アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVは、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターン(図3)が、7.6,9.8,16.5,18.1,20.0,20.4,21.9,22.4,23.6,29.4±0.2度2θにピークを有することによって特徴付けられる。最も特徴的なピークは7.6,9.8,16.5,29.4±0.2度2θである。
【0044】
一般項において、形態XIVは、水中のアトルバスタチンヘミカルシウムの懸濁体から得ることができる。米国特許第5,969,156号によれば、水中のアトルバスタチンナトリウムの溶液への酢酸カルシウムの添加時にアトルバスタチンヘミカルシウム形態Iが沈殿する。また、水中で非晶性アトルバスタチンヘミカルシウムを懸濁させることによって形態Iを調製することができると言われている。提示された具体的な例である例1では、酢酸カルシウム溶液の添加後すぐに、水中のアトルバスタチンナトリウムおよびカルシウムから形成された混合物を、形態Iでシード添加すると、その後に形態Iが得られている。
【0045】
本発明者は、アトルバスタチンヘミカルシウムを水から沈殿させること又は水中で懸濁させることが必ずしも、該5,969,156号特許の検討後に予期され得るような形態Iの生成を導かないことを見出した。それどころか、他方で、水中でのアトルバスタチンヘミカルシウムの懸濁体は、本発明者が形態XIVと命名した従前知られていなかった多形を生じる。形態XIVは、(水からの沈殿によっても得られるが形態Iでシード添加することを条件とする)形態Iとは、7.6,16.5,20.0および19.4度2θにおけるピークによって容易に識別可能であり、これらのピークは形態IのPXRDパターンでは存在しない。
【0046】
下の例3では、懸濁体が形態Iの結晶を用いて攪拌またはシード添加されていないことを留意すべきである。アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVは、アトルバスタチンヘミカルシウムを水中で微細懸濁体(finesuspension)が形成されるまで懸濁させ、次に該懸濁体を微細結晶が実質的に白色フレークに変換されるまで静置することによって調製することができる。このフレークは、従来型の手段、例えばデカンテーションまたは濾過(吸引を伴うか又は伴わず、それらはフィルターを目詰りさせない)、及び結晶の洗浄によって、懸濁体から分離することができる。微細懸濁体の結晶は非常に小さく、その懸濁体にエマルジョンのような外観を与える。微細懸濁体からフレークへの転換は懸濁体の目視により容易に明らかである。好ましいプロセスパラメータは次の通りである。好ましい出発物質はアトルバスタチンヘミカルシウム形態Vである。微細懸濁体は典型的には、約2〜約10時間、平均して約5時間にわたって形成される。この微細懸濁体は、約1〜約5日にわたって白色フレークに転換するが、より完全な転化と容易に濾過可能な生成物のためには、より長い時間が好ましい。形態XIVの生成に導く他の条件も発見し得るが、現在知られている最良の方法は、アトルバスタチンヘミカルシウムの異なる多形でシード添加されていない、攪拌されていない水中でアトルバスタチンヘミカルシウムを懸濁させることによる。本発明者の研究室では如何なる種類のシード添加を行うことなく、形態XIVが得られている。
【0047】
形態XIV結晶は、溶媒と接触することなく、他の結晶形態に転換することができる。この新たな形態は形態XVIと命名された。形態XVIは、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターン(図4)が、7.7,9.9,16.5,17.7,18.3,20.0,21.9,29.5±0.2度2θにピークを有することによって特徴付けられる。最も特徴的なピークは16.5,21.9,29.5±0.2度2θである。
【0048】
形態XVIは、形態XIVを約20℃〜約50℃、好ましくは約22℃または室温において、かつ、好ましくは空気に曝して、維持することによって調製することができる。好ましくは、形態XVIはこれらの条件下で約3時間維持される。形態XVIが形成される他の条件は経験的に決定し得る。これまでこれを生成するために適していることが見出されてきた方法を与えることが可能なだけである。
【0049】
本発明はさらに、形態XVIIと命名されたアトルバスタチンヘミカルシウムの水和形態を提供する。形態XVIIは、湿ったエタノールからの沈殿により得られる直接生成物として単離されている。米国特許出願公開第2992/0183378号(あるいはPCT出願番号PCT/US00/31555号の国際公開第WO01/36384号を参照)により教示されているように、約70℃の温度における96%エタノール/水混合物中での形態Vの分散体から、形態VIIIを調製しうる。この手順を少なくとも1リットル以上のスケールで使用することによって、沈殿した物質は、乾燥される前に、形態XVIIとして得られる。
【0050】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIIは、従来型CuKα照射を使用して得られる粉末X線回折パターンが19.1,20.6,21.4および23.6±0.2度2θの典型的ピークを有することによって特徴付けられる。追加的ピークが7.8,9.5,10.2,18.2,19.1,25.3,26.2,30.1±0.2度2θに観測される。形態XVIIはまた、図5の典型的X線粉末回折パターンによっても特徴付けられる。形態XVIIは、形態VIII(96%エタノール/4%水からの沈殿により得られた物質の完全乾燥により得られる物質)とは、9〜10,18〜25度2θの範囲のピークパターンによって識別可能である。特に、形態VIIIは19.2および20.0±0.2度2θに2つの強いピークを示すのに対し、形態XVIIは19.1±0.2度2θに1つの強いピークを有するが20±0.2度2θには比肩し得る強いピークを示さない。
【0051】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIIは、アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを96%のエタノールと4%の水の混合物(v/v)中で懸濁させ、約78〜80℃に加熱した後に、冷却することによって生成しうる。形態XVIIは、該物質が混合物中で還流温度において沈殿し始めた直後に、或いは該物質が全て沈殿した後、該物質が室温に冷却された後、又は固体が全て母液から単離された後に(例えば濾過によって)単離することができる。形態XVIIを得るために他の方法が存在しうるが、現在知られている最も良好な方法はアトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを少なくとも500ミリリットルのエタノール約96%と水約4%(v/v)の混合物中で懸濁させ、該懸濁体を還流させた後に、冷却することである。次に、濾過またはデカンテーション等のような従来型の手段により、固体が形態XVIIとして回収される。付随的な実験詳細は例6に示されている。反応器の容積は少なくとも約1リットルであるべきである。
【0052】
本発明はまた、アトルバスタチンヘミカルシウムの既知の形態を調製するための新規な方法も提供する。
【0053】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態Iは、形態XIVを約50℃以上、好ましくは約65℃で加熱することによって生成しうる。好ましくは、形態XIVを上昇した温度で約15時間維持する。
【0054】
前述の開示から、形態XVIIの従来型の乾燥を行うことによって形態XVIIが形態VIIIに転換されることが理解されるだろう。従来型の乾燥とは、製薬産業の当業者により日常的に用いられている乾燥方法を意味する。製薬産業で従来から用いられている設備のいずれの乾燥タイプもこの目的に適している。(温度段または1つの温度のみにおける)約40〜70℃の範囲の乾燥温度が好ましい。形態XVIIを形態VIIIに転化するのに要する時間の量は使用される物質の量に依存する。乾燥により形態XVIIを形態VIIIに転化するために真空(vacuum)を用いることが好ましい場合もある。形態VIIIの調製は、形態XVIIを、低くても室温までの40℃より低い温度で乾燥させることによっても達成し得る。
【0055】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXが、形態Vを、50%の1−ブタノールと、50%のアセトン、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1−プロパノールおよびメチルt−ブチルエーテル等のような他の有機溶媒との混合物中で懸濁させることによって調製できることが見出された。この混合物は形態Vのグラム当たり約20ミリリットルの量で使用される。懸濁体は還流温度に約16時間加熱され、その後に形態Vが形態IXに転換され、これが次に懸濁体から従来型の手段により回収される。
【0056】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXa、形態XIV、形態XVIおよび形態XVIIは、高コレステロール血症を罹患している又は罹患しやすい患者の血漿低密度リポタンパク質レベルを低下させるのに有用である。この目的のために、約0.5mg〜約100mgの単位用量でヒト患者に投与されるのが典型的であろう。大部分の患者にとって、約2.5〜約80mg/日、より好ましくは約2.5〜約20mg/日の用量が、ヒト患者における血漿低密度リポタンパク質レベルの低下を生じさせる。このような低下が十分であるかどうか又は用量または投与頻度を増加させるべきかどうかは、適切に訓練された医療従事者の技術レベルの範囲内の決定事項である。
【0057】
本発明の更に他の態様は、アトルバスタチンヘミカルシウムの新規形態を含有する医薬組成物および投与形態(剤形)である。
【0058】
本発明の組成物には、アトルバスタチンヘミカルシウムの新規な形態IXa、形態XIV、形態XVIおよび形態XVIIを含んでなる粉、顆粒、凝集塊(aggregates)その他の固体が含まれる。そのほか、本発明により企図される形態IXa、形態XIV、形態XVIおよび形態XVIIの固体組成物には更に、粉状セルロース、微結晶性セルロース、ミクロファイン・セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩その他の置換された又は未置換のセルロース等のセルロース誘導型物質のような希釈剤;澱粉;前ゼラチン化(pregelatinized)澱粉;無機希釈剤、例えば炭酸カルシウム、二リン酸カルシウムその他の製薬産業に既知の希釈剤が含まれ得る。更に他の適した希釈剤には、ワックス、糖、糖アルコール、例えばマンニトールおよびソルビトール、アクリレートポリマーおよびコポリマー、ならびにペクチン、デキストリンおよびゼラチンが含まれる。
【0059】
本発明の企図の範囲内の賦形剤には、結合剤、例えばアカシア・ガム、前ゼラチン化澱粉、アルギン酸ナトリウム、グルコースその他の湿式および乾式造粒および直接圧縮製錠プロセスに用いられる結合剤が含まれる。形態IXa、形態XIV、形態XVIおよび形態XVIIのアトルバスタチンヘミカルシウムの固体組成物中に存在し得る賦形剤には更に、澱粉グリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、低置換型ヒドロキシプロピルセルロース等のような崩壊剤が含まれる。そのほか、賦形剤には、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムのような滑沢剤;着香料;甘味料;保存料;医薬として許容される色素、および滑剤(glidant)、例えば二酸化ケイ素が含まれ得る。
【0060】
製剤には、経口、舌下、直腸、非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)、吸入および眼による投与に適した製剤が含まれる。いずれかのケースにおける最も適した経路は、処置される状態の性質および重症度に依存することになるが、本発明の最も好ましい経路は経口である。これら製剤は、単位剤形で便宜に提供されうるし、製薬分野で周知のいずれの方法によっても調製されうる。
【0061】
投与形態には、錠剤、粉剤、カプセル剤、坐剤、サシェ剤、トローチ剤、ローゼンゲ剤等のような固形の剤形のみならず、液状の懸濁剤およびエリキシル剤も含まれる。本説明が限定的であることは意図されないが、本発明はまた、それによりアトルバスタチンヘミカルシウムの固体形態を識別させる性質が失われるアトルバスタチンヘミカルシウムの真の溶液に関することも意図されない。しかしながら、このような溶液を調製するため(例えば、アトルバスタチンに加えて、溶媒和物とある一定の比で前記溶液に対する溶媒和物を送達するようにするため)の新規形態の使用は、本発明の意図の範囲内であると考えられる。
【0062】
当然のことながら、カプセル製剤は、ゼラチンまたは他の従来型のカプセル化材料より調製され得るカプセル内に固体組成物を含有することになる。錠剤および粉剤はコートされてよい。錠剤および粉剤は腸溶性コーティングでコートされてよい。腸溶性コートされた粉形態は、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレート、ポリビニルアルコールフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンとマレイン酸の共重合体、メタクリル酸とメタクリル酸メチルの共重合体、および類似の材料を含んでなるコーティングを有してよく、望ましければ、適した可塑剤および/または増量剤と共に使用してもよい。コートされた錠剤は、その錠剤の表面にコーティングを有してよく、又は腸溶性コーティングと共に粉または顆粒を含んでなる錠剤であってもよい。
【0063】
本発明の医薬組成物の好ましい単位製剤は、典型的には、0.5〜100mgの新規アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXa、形態XIV、形態XVI、形態XVIIあるいはこれらの相互間の又はアトルバスタチンヘミカルシウムの他の形態との混合物を含有する。より通常の場合、単位製剤のアトルバスタチンヘミカルシウム形態の合計重量は2.5mg〜80mgである。
【0064】
以上本発明の様々な態様を説明してきたが、以下の実施例は本発明の特定の実施態様を例示するために示される。それらの実施例が限定的であることは何ら意図されない。
【実施例】
【0065】
(アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXaの調製)
例1
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(90ml)と水(10ml)の混合物中で還流温度(85℃)において16時間懸濁させた。この混合物次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。この生成物を濾過により単離し、真空オーブン(vacuum oven)内で65℃において24時間乾燥させて、4.73g(95%)のアトルバスタチンヘミカルシウム結晶形態IXaを得た。
【0066】
例2
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(10ml)と水(90ml)の混合物中で還流温度において16時間懸濁させた。この混合物を次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。この生成物を濾過により単離し、真空オーブン内で65℃において24時間乾燥させて、アトルバスタチンヘミカルシウム結晶形態IXaを得た。
【0067】
(アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVの調製)
例3
アトルバスタチンヘミカルシウム形態V(1g)を500mlビーカーに導入した。水(240ml)を加えた。この懸濁体を5時間混合した。微細懸濁体が現れた。これを3日間静置した。3日後、該懸濁体中に白色フレークが形成された。次に、この懸濁体を濾過し、そのままXRDにより分析した。得られた形態は新規アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVである。
【0068】
(アトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIの調製)
例4
小分量の形態XIVを室温において3時間空気に曝し、次にXRDにより分析した。得られた形態は形態XVIである。
【0069】
(アトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIIの調製)
例5
湿ったアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(53g)をエタノール(約485ml)の熱溶液(約70℃)に加えた。得られたエタノール中の水の量は約4%であるべきである。この混合物を約2時間還流させた。この混合物を15〜20度に冷却した。固体を濾過し、エタノール96%で洗浄した。この物質を次に粉末X線回折により分析し、形態XVIIを含むことが分かった。従来型の乾燥(40〜70℃)により、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIを生じた。
【0070】
例6
約20kgのアトルバスタチンヘミカルシウム形態Vをエタノール(約600リットル)の熱溶液(約70℃)に加えた。得られたエタノール中の水の量は約4%であるべきであり、これは形態Vの初期水分レベルにより調整されるべきである。この混合物を約2時間還流させた。この混合物を15〜20℃に冷却し、この温度で少なくとも3時間攪拌した。固体を濾過し、96%エタノールで洗浄した。この物質を次に粉末X線回折により分析し、形態XVIIを含むことが分かった。40〜70℃での従来型の乾燥により、アトルバスタチンヘミカルシウム形態VIIIを生じた。
【0071】
(アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXの調製)
例7
1−BuOH(10ml)とEtOH(10ml)中のアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(1g)を加熱して1時間還流させた。この混合物を次に室温に冷却し、この温度で更に16時間攪拌した。濾過および65℃での24時間の乾燥により、0.98g(98%)のアトルバスタチンヘミカルシウム形態IXを得た。
【0072】
例8
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(50ml)とアセトン(50ml)の混合物中で還流温度(71℃)において17時間懸濁させた。この混合物を次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。この生成物を濾過により単離し、真空オーブン内で65℃において24時間乾燥させて、4.6g(93%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態IXを得た。
【0073】
例9
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(50ml)とIPA(50ml)の混合物中で還流温度(91.5℃)において15時間懸濁させた。この混合物を次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。生成物を濾過により単離し、真空オーブン内で65℃において24時間乾燥させて、4.7g(94%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態IXを得た。
【0074】
例10
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(50ml)とTHF(50ml)の混合物中で還流温度(80℃)において15時間懸濁させた。この混合物を次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。生成物を濾過により単離し、真空オーブン内で65℃において24時間乾燥させて、2.4g(48%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態IXを得た。
【0075】
例11
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(50ml)と1−プロパノール(50ml)の混合物中で還流温度(95℃)において16時間懸濁させた。この混合物を次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。生成物を濾過により単離し、真空オーブン内で65℃において24時間乾燥させて、4.8g(96%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態IXを得た。
【0076】
例12
アトルバスタチンヘミカルシウム塩形態V(5g)を1−ブタノール(50ml)とMTBE(50ml)の混合物中で還流温度(73℃)において16時間懸濁させた。この混合物を次に室温に冷却し、そして次に氷浴を用いて0℃に冷却した。生成物を濾過により単離し、真空オーブン内で65℃において24時間乾燥させて、4.8g(97%)のアトルバスタチンヘミカルシウム塩形態IXを得た。
【0077】
以上本発明を特に好ましい実施態様に関して説明し本発明を実施例と共に例示してきたが、上記説明および例示される本発明に対する、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲および精神から逸脱しない変形が、当業者には認識されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
9.3および9.5±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項2】
前記粉末X線回折パターン中の15.7,20.5,21.1,22.8,23.8,24.0,25.3,26.4,26.8,27.2,29.2,31. 6度2θのピークによって更に特徴付けられる、請求項1に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項3】
従来型CuKα照射を使用して実質的に図2に描かれるように生じる粉末X線回折パターンによって更に特徴付けられる、請求項1に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項4】
形態IXaの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシウムの調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを、約85%〜約95%の1−ブタノールと約5%〜約15%の水の混合物および約5%〜約15%の1−ブタノー ルと約85%〜約95%の水の混合物からなる群より選択される混合物中で、形態Vを形態IXaの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシ ウムに転化するのに十分な時間、懸濁させるステップ;および
b)該懸濁体から形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムを回収するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項5】
前記混合物が体積基準で約90%の1−ブタノールと約10%の水である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が体積基準で約10%の1−ブタノールと約90%の水である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物がアトルバスタチンヘミカルシウム形態Vのグラム当たり少なくとも約20ミリリットルの量で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁体から形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムを回収する前に、該懸濁体が上昇した温度に加熱される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記上昇した温度が前記混合物のほぼ還流温度である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記還流温度が約85℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記形態Vを形態IXaの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシウムに転化するのに十分な時間が約16時間以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記形態Vが不純物を含み、前記形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムが前記形態Vよりも約50%以上純粋である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを、約85%〜約95%の1−ブタノールと約5%〜約15%の水の混合物および約5%〜約15%の1−ブタノー ルと約85%〜約95%の水の混合物からなる群より選択される混合物中で、形態Vを形態IXaの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシ ウムに転化するのに十分な時間、懸濁させるステップ;および
b)該懸濁体から形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムを回収するステップ、
を含んでなる方法により調製された、形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項14】
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを、体積基準で90%の1−ブタノールと10%の水の混合物中で、形態Vを形態IXaの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシウムに転化するのに十分な時間、懸濁させるステップ;および
b)該懸濁体から、形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムを、高性能液体クロマトグラフィによる分離および254ナノメートルでのUV吸収による定量により定められる99.3%以上の化学純度で、回収するステップ、
を含んでなる方法により調製された、形態IXaの少なくとも1つの特徴を有する高純度の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項15】
7.6,9.8,16.5,29.4±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項16】
その粉末X線回折パターン中の18.1,20.0,20.4,21.9,22.4および23.6±0.2度2θのピークによって更に特徴付けられる、請求項15に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項17】
従来型CuKα照射を使用して実質的に図3に描かれるように生じる粉末X線回折パターンによって更に特徴付けられる、請求項15に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項18】
形態XIVの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物の調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウムを水中で懸濁させるステップ;および
b)該懸濁体からフレークを回収するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項19】
懸濁されるアトルバスタチンヘミカルシウムが形態Vである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
転化が約5日にわたって起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
アトルバスタチンヘミカルシウムが水中に懸濁された後約2〜約10時間で微細懸濁固体が形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記微細懸濁固体が約1〜約5日にわたってフレークに転化する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記微細懸濁固体のフレークへの転化が約5日にわたって起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
16.5,21.9,29.5±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項25】
前記粉末X線回折パターン中の7.7,9.9,16.5,17.7,18.3,20.0,21.9,29.5±0.2度2θの追加的ピークによって更に特徴付けられる、請求項24に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項26】
従来型CuKα照射を使用して実質的に図4に描かれるように生じる粉末X線回折パターンによって更に特徴付けられる、請求項24に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項27】
形態XVIの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物の調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVの結晶を約20℃〜約50℃で維持するステップ;および
b)該結晶を形態XVIの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムとして回収するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項28】
前記アトルバスタチンヘミカルシウムが約22℃に維持される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アトルバスタチンヘミカルシウムが維持される間に空気に曝される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
19.1,20.6,21.4および23.6±0.2度2θにピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項31】
前記粉末X線回折パターン中の7.8,9.5,10.2,18.2,19.1,25.3,26.2,30.1±0.2度2θの追加的ピークによって更に特徴付けられる、請求項30に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項32】
従来型CuKα照射を使用して実質的に図5に描かれるように生じる粉末X線回折パターンによって更に特徴付けられる、請求項30に記載の固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物。
【請求項33】
形態XVIIの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物の調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vを約96%のエタノールと約4%の水の混合物中で懸濁させるステップ、
b)該懸濁体を加熱するステップ、
c)該懸濁体を冷却するステップ、および
d)該懸濁体から形態XVIIの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムを回収するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項34】
前記混合物が少なくとも500mlの量で使用される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記懸濁体が約78〜80℃に加熱される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
形態IXa、形態XIV、形態XVI、形態XVII又はこれらの混合物からなる群より選択されるアトルバスタチンヘミカルシウムと医薬として許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項37】
医薬投与形態を調製するためのアトルバスタチンヘミカルシウム形態IXa、形態XIV、形態XVI、形態XVII又はこれらの混合物の使用。
【請求項38】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態IXa、形態XIV、形態XVI、形態XVII又はこれらの混合物を含んでなる医薬投与形態。
【請求項39】
請求項38に記載の医薬投与形態を患者に投与することにより、高コレステロール血症を罹患している又は罹患しやすい患者の血漿低密度リポタンパク質レベルを低下させる方法。
【請求項40】
形態Iの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウム又はその溶媒和物の調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVの結晶を約50℃以上に加熱するステップ、および
b)該結晶を形態Iの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムとして回収するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項41】
アトルバスタチンヘミカルシウム形態XIVが約65℃に加熱される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
形態VIIIの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムの調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態XVIIを供給するステップ、
b)該形態XVIIを乾燥させることにより、該形態XVIIを形態VIIIの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシウムに転換するステップ、および
c)形態VIIIの少なくとも1つの特徴を有する該アトルバスタチンを回収するステップ、を含んでなる方法。
【請求項43】
乾燥が該形態XVIIを上昇した温度に加熱することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記上昇した温度が約40℃〜約70℃である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
形態IXの少なくとも1つの特徴を有する固体結晶アトルバスタチンヘミカルシウムの調製方法であって、
a)アトルバスタチンヘミカルシウム形態Vをおよそ50%の1−ブタノールと50%の他の有機希釈剤との混合物中で懸濁させるステップと、
b)該懸濁体から形態IXの少なくとも1つの特徴を有するアトルバスタチンヘミカルシウムを回収するステップ、
を含んでなる方法。
【請求項46】
前記有機希釈剤がアセトン、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1−プロパノールおよびメチルt−ブチルエーテルからなる群より選択される、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−235083(P2009−235083A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137400(P2009−137400)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【分割の表示】特願2003−569609(P2003−569609)の分割
【原出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】