説明

アナライトの検出および治療用物質の管理のための装置

【課題】患者の苦痛と不便を最小にするか除去し得るグルコース測定技法を提供する。
【解決手段】サンプリング針(12)と、サンプリング針に含まれ、体液中の対象となるアナライトを検出するセンサ(14)と、センサからの信号を受け取って処理する分析手段(16)と、分析手段からの信号を受け取り注射アクチュエータに信号を送る制御装置と、注射アクチュエータに応答して対象となる薬を必要量だけ投与する注射器とを含む患者の体に直接薬を投与する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血中グルコース監視の分野に関する。詳細には、本発明は、血液をサンプリングし、それに含まれるグルコースを定量するための装置に関する。任意選択として、この装置には、患者へのインシュリン投与のための手段も組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
血液中のアナライト、特にグルコースを正確に測定する能力は、糖尿病などの疾病の管理に重要である。血中グルコースレベルは、狭い範囲(約3.5から6.5mM)の中に維持されなければならない。グルコースレベルがこの範囲を下回る場合(低血糖症)、精神的混乱、昏睡、または死亡にいたる可能性がある。高いグルコースレベル(過血糖症)は、過度の渇きと頻繁な放尿をもたらす。過血糖症の持続は、腎臓障害、神経障害、失明など、複数の糖尿病合併症に関連する。
【0003】
血中グルコースは、多くの糖尿病患者では、日常的なインシュリン注射によって維持される。体のグルコース調節系の正常な機能とは異なり、インシュリンの注射には、フィードバック機構が組み込まれていない。したがって、グルコースレベルの調節には、インシュリン注射の適正な量および頻度を決定するために、血中グルコース濃度の継続的または頻繁な測定が必要である。
【0004】
従来のグルコース測定技法では、体の一部(通常は指先)を穿刺し、指を搾って刺通部位に血液の滴を作り、測定装置(分析ストリップなど)に血液の滴を沈着させることが必要である。この指の穿刺は、1日2回から4回の通常の測定頻度で行われるが、患者にとって苦痛であり、面倒でもある。多くの患者が血中グルコース測定の推奨規定を守らず、したがって、不適切なグルコースレベルとその結果の有害な影響という危険を冒しているという点で、この苦痛と不便は、不服従という追加のより深刻な意味を有する。
【0005】
手短に言うと、従来の血中グルコース測定技法に固有の制限は、患者がこの苦痛と不便を甘んじて受けるか、グルコース監視を無視し、不適正なグルコース調節の生理学的悪影響を受けるかのいずれかであることを意味する。したがって、患者の苦痛と不便を最小にするか除去するグルコース測定技法の必要が明らかに存在する。
【0006】
患者にとってのグルコース測定の苦痛と不便を減らす方法の一つが、通常のランセットの代わりに中空の針を使用することである。針の使用は、ランセットの使用よりも苦痛が少ないことが報告されている(B. H. Ginsberg, An overview of minimally invasive technologies, Clinical Chemistry 38:1596−1600, 1992)。サンプリングの苦痛は、更なる苦痛と痛みとを伴う指を搾ることではなく針を介して血液を引き出すことによって、さらに少なくなる。最後に、針への血液の封じ込めによって、試験ストリップへの血液の滴下または塗布を必要とする従来の技法よりもはるかに汚れが少なく、便利な試験がもたらされる。
【0007】
現在知られている、針を使用するグルコース測定装置には、二種類がある。米国特許第4953552号に記載のものなどの第一の種類では、長期間、この例では数日にわたって体内に埋め込まれたままになる針が使用される。国際特許公告第94/13203号に記載のものなどの第二の種類では、先端に電気化学センサを組み込まれた針が使用される。この第二の種類は、血液または他の体液を引き出さないが、センサからの出力信号を測定するために、5秒から100秒の間患者の体組織内に置く必要がある。
【0008】
本開示では、監視のために患者から血液を引き出す中空の針が含まれるという点で、上で述べた既存の針グルコースセンサに対する長所がもたらされる。針を使用することによって、患者の苦痛と不便が最小になる。針によって血液を引き出すので、患者の体からすばやく針を引き出すことが可能になる。
【0009】
本開示では、インシュリン注射器も記載する。血中グルコース測定は、通常はインシュリン注射の前に実行されるので、本発明を用いると、任意選択として、1回針を刺すだけで測定と注射の両方を行えるようになり、患者の苦痛がさらに少なくなる。
【発明の開示】
【0010】
本開示は、患者から体液をサンプリングするための体液サンプリング装置を提供する。この装置には、サンプリング針、液中の対象となるアナライトを検出するサンプリング針に含まれるセンサ、および、センサから信号を受け取り処理する分析手段が含まれる。
【0011】
好ましい形態では、上記の実施形態で、グルコースの検出のための、電気化学センサまたは、より好ましくは光学センサを使用する。電気化学センサを使用する時には、酵素を樹脂内に固定することができる。光学センサを使用する時には、酵素を膜内に固定でき、膜は、光ファイバコンジットなどの光学コンジットに接して配置される。
【0012】
追加の実施形態には、表示機能を含む分析手段と、分析手段から信号を受け取り、注射アクチュエータへ信号を送るための制御装置を上記の装置に含めるための「閉ループ」システムと、注射アクチュエータに応答して、対象となる薬を必要量だけ投与するための注射器とが含まれる。
【0013】
さらに、「閉ループ」実施形態の追加の特徴には、注射される薬の必要量を判定するためのユーザ入力または分析方法が制御装置に含まれることが含まれる。
【0014】
さらに、注射アクチュエータに信号を送るための制御装置と、注射アクチュエータに応答して薬を必要量だけ投与するための注射器とを含み、注射器が針を含む、患者の体に直接に薬を投与するための装置を開示する。追加および任意選択の特徴には、注射される薬の必要量を判定するためのユーザ入力または分析方法が制御装置に含まれることが含まれる。
【0015】
さらに、本発明のサンプリング装置を提供するステップと、サンプリング針を患者に刺すステップと、体液中の対象となるアナライトの存在または量を検出し、その結果を処理のために分析手段に送るため、体液とセンサを接触させるステップとを含む、患者から体液の試料をサンプリングする方法を開示する。
【0016】
さらに、本発明の「閉ループ」装置を提供するステップと、サンプリング針を患者に刺すステップと、体液中の対象となるアナライトの存在または量を検出し、その結果を処理のため分析手段に送るため、センサと体液を接触させるステップと、注射アクチュエータに信号を送るため、処理の結果を制御装置に送るステップと、注射アクチュエータに応答して、サンプリング針を介して薬を必要量だけ投与するステップとを含む、患者の体液をサンプリングし薬を投与するための方法を開示する。
【0017】
さらに、注射アクチュエータに信号を送るための制御装置と、注射アクチュエータに応答して薬を必要量だけ投与するための針を備えた注射器とを含む薬投与装置を提供するステップと、注射器を患者に刺すステップと、注射アクチュエータに応答して薬を必要量だけ投与するステップとを含む、患者の体に直接に薬を投与するための方法を開示する。
【0018】
第1図からわかるように、本発明の体液サンプリング装置には、全般的に、中空のサンプリング針12、センサ14および分析装置16を含む体液サンプリング装置10が含まれる。
【0019】
動作中(図示せず)には、サンプリング針を使用して、都合のよい位置、たとえば指か、腿、上腕などのより神経刺激の少ない位置の皮膚を貫通する。血液または他の体液は、毛管現象および/または他の流体力学的な力によって針に流れ込む。通気孔38を使用して、針への体液の流れをよくすることができ、通気孔38は、第1図に示されるように針12に組み込むか、たとえば第3図のように装置の別の場所に設けることができる。体液は、センサ14と流体接触するまで針に流れ込むことができる。好ましい実施形態では、針12は、分析装置16に取り付けられ、ユーザは、自分の指または体の別の都合のよい部分を針12に押し付けることによって、その部分を突き刺す。
【0020】
中空のサンプリング針12は、意図した用途に適する寸法であればよい。約250μmの内径を有する26ゲージ針を使用することが好ましい。このような針は、多数の商業的供給源から簡単に入手できる。
【0021】
センサ14は、血液または他の体液中の所望のアナライトの濃度を判定するように設計された、電気化学センサ、光学センサ、または他の種類の分析センサとすることができる。たとえば、第2図に、分析手段16に光学情報を運ぶ光ファイバコンジット60の端に取り付けられた、好ましい光学センサ14を示す。第3図の代替実施形態では、分析は、針12によって抽出された体液によって充たされる透明のハウジング40を通る可視、赤外または他の光の伝送によってデータを取得する分析器具(図示せず)によって実行される。第4図では、電気化学センサ14が、針12に取り付けられる。適当な電気絶縁42と電気接続44によって、電気化学検出器14が、分析装置16に情報を伝えられるようになる。
【0022】
分析手段16は、通常は、センサ14からの電気信号、光信号または他の信号を受け取り、処理することができ、ユーザのために対象となるアナライトの濃度を表示することができる、好ましくはマイクロプロセッサ制御の電子装置である。分析手段は、工場設定の較正曲線を用いてプログラムすることができ、また、較正器と、知られている濃度の対象となるアナライトを含む制御液とを用いてユーザが較正することもできる。任意選択として、好ましくは、分析手段16に、患者の体液内の対象となるアナライトの濃度を、ユーザに有用な形、たとえば血液1デシリットルあたりのmg単位のグルコースなどで表示する表示手段も含まれる。表示手段は、たとえば液晶表示装置を介する視覚的表示とすることも、音声とすることもでき、印刷された記録を含めることもできる。さらに、分析装置には、ユーザまたはユーザの担当医が、分析、応諾などのために後程結果を取り出せるように、結果を記憶するための手段を含めることができる。
【0023】
第5図の実施形態では、上で説明したサンプリング装置が、患者にインシュリンを投与するため、注射装置18に結合される。したがって、1回皮膚を貫通するだけで、患者は、体内のグルコースレベルに関する情報と、必要な場合にはインシュリンの必要量の投与の両方を受けることができる。この実施形態では、分析手段16も、対象となるアナライトの濃度を表す電気信号を制御装置20に送る。任意選択として、制御装置20は、ユーザ入力装置52または記憶された制御アルゴリズム54もしくはその両方から電気信号を受け取るように構成することもできる。制御装置の機能は、注射アクチュエータ56のための出力信号を生成することである。注射アクチュエータ56は、流体コンジット19を介してサンプリング針12に流体接続された注射装置18の動作を制御する。たとえば、センサ14は、血液または他の体液中のグルコースの濃度を検出するように設計されたセンサとすることができる。分析手段16は、このグルコース濃度を表す信号を制御装置20に送る。ユーザは、分析手段16からのグルコース濃度を読み取り、ユーザ入力52を介してインシュリンの注射を制御することができる。その代わりに、記憶された制御アルゴリズム54によって、たとえば血中グルコース濃度など、分析手段16の出力に基づいてインシュリンの必要量を自動的に計算することができる。どちらの場合でも、制御装置20は、インシュリンの必要な注射量を表す信号を注射アクチュエータ56に送る。注射アクチュエータは、たとえば、注射装置18のプランジャの動作を制御するリニアアクチュエータとすることができる。この場合、注射アクチュエータ56は、注射装置18のプランジャを、インシュリン注射の必要量に対応する量だけ移動させる。注射装置のプランジャが移動すると、サンプリング針12を介してインシュリンが注射され、サンプリング、分析および血中グルコースの制御が、1回の皮膚貫通だけでもたらされる。
【実施例1】
【0024】
グルコースの検出
本発明の実施形態を使用して、患者の血液中のグルコースの濃度を測定することができる。第2図に示されたものに類似の装置の実施形態を使用して、患者は、針12の尖った端を、自分の体の都合のよい位置に挿入する。血液は、毛管現象または他の流体力学的な力によって針12に流れ込み、グルコースセンサ14と接触する。その後、針12を引き抜くことができる。センサ14は、グルコースと検出媒体との相互作用を光学的に測定するセンサとすることができる。たとえば、センサは、膜の細孔内に固定されたグルコースオキシダーゼおよびカタラーゼからなるものとすることができる。グルコースを含む溶液の存在下では、グルコースが酸化され、それに対応する量の酸素が消耗される。酸素の消耗は、米国特許第5043286号に記載されているように、ルミネセンス性の物質の使用を介して測定できる。したがって、酸素の消耗は、患者の血液中のグルコースの濃度に対応する。好ましい実施形態では、センサ14は、光ファイバまたは他の光学コンジット60の端に置くことができる範囲まで微細化される。
【0025】
好ましい実施形態では、次のように光学グルコースセンサを構成する。
【0026】
ステップ1(シリカのアミノ化)
1gの燻蒸(fumed)シリカ(Sigma Chemical、セントルイス)を遠心分離チューブに加え、8.0gの無菌水を加える。2.0gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン((AP)TES)(Sigma、ミズーリ州セントルイス)をチューブに加え、シリカのすべてが解けるまでよく攪拌する。1mlの6N HCl(Anachemia、ニューヨーク州Rouses Point)を加え、攪拌する。この反応混合物を70℃水浴で1時間加熱し、溶液を攪拌する。遠心分離と上澄みの注ぎ出しを3回行い、毎回注ぎ出しの後に40mlの無菌水を加え、溶液を攪拌する。
【0027】
ステップ2(アミノ化されたシリカへのカタラーゼの固定)
4.7mgのカタラーゼ(ウシ肝臓、Sigma、ミズーリ州セントルイス)を、0.75mlのPESK 7.5(100mMのNaCl、50mMのリン酸ナトリウムと、1mMのEDTAと、0.05%のKathon CG抗菌物質(Rohm and Haas、ペンシルベニア州フィラデルフィア)溶液との、pH7.5の溶液)に加える。12.5mgの1,2,4,5−無水ベンゼンテトラカルボン酸(PMA)(Aldrich、ウィスコンシン州ミルウォーキー)を、1mlのPESK 7.5に加える。攪拌によってPMAを懸濁させる。50μLのPMA溶液を酵素溶液に加え、攪拌し、室温で1時間回転する。0.75mlのアミノ化されたシリカの溶液(25mg/mlのシリカ)を加える。遠心分離と上澄みの注ぎ出しを3回行い、毎回1mlの50mM 2[N−モルフォリノ]メタンスルホン酸(MES)(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、pH5.5を加え、攪拌する。1.5mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を加え、1時間回転する。遠心分離と上澄みの注ぎ出しを2回行い、毎回1mlの無菌水を加え、無菌水の最初の追加の後に溶液を攪拌する。
【0028】
ステップ3(アミノ化されたシリカへのグルコースオキシダーゼの固定)
25mgのグルコースオキシダーゼ(aspergillus niger, Boehringer Mannheim、インディアナ州インディアナポリス)を計量し、2.5mlのPESK 7.5に加える。2.5mgの1,2,4,5−無水ベンゼンテトラカルボン酸(PMA)(Aldrich、ウィスコンシン州ミルウォーキー)をグルコースオキシダーゼ溶液に加える。溶液を攪拌し、室温で1時間回転する。5mlのアミノ化されたシリカの溶液(25mg/mlのシリカ)を加える。遠心分離と上澄みの注ぎ出しを3回行い、毎回4mlの50mM MES、pH5.5を加え、注ぎ出しの後で溶液を攪拌する。5mgのEDCを加え、1時間回転する。遠心分離と上澄みの注ぎ出しを3回行い、注ぎ出しのそれぞれの後に4mlのPESK 7.5を加え、溶液を攪拌するが、最後の注ぎ出しの後は無菌水を追加する。
【0029】
ステップ4(樹脂の調剤)
センサ表面に固定された酵素を保持するための、F133樹脂と称する樹脂マトリクスを、下記の重量の各成分を化合させることによって作る。
Joncryl 537・・・・・・・・・・・・・65.04mg
(Johnson Wax、ウィスコンシン州 Racine)
NHOH、10%水溶液・・・・・・・・・・・・・・8.91mg
2−エトキシエタノール(Aldrich、・・・・・・20.94mg
ウィスコンシン州ミルウォーキー)
フタル酸ジブチル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.13mg
(Fluka、ニューヨーク州Rokonkoma)
Surfynol 104H(Air Products、・・・・・・・・・ 2.50mg
ペンシルベニア州Allentown)
Surfynol 695(Air Products)・・・・・・・・・・・5.0mg
Acrysol 275(Rohm and Haas、・・・・・・・・・30.6mg
ペンシルベニア州フィラデルフィア)
80mgの液体樹脂と、15mgの固定されたカタラーゼと、134mgの固定されたグルコースオキシダーゼと、0.085Mのtrehalose(Sigma、ミズーリ州セントルイス)を含む347mgの水とを化合させる。三つの成分の活性のある混合は、混汞器(WIG−L−BUG, Crescent Dental Co.、イリノイ州Lyons)を使用して3分間激しくゆすることによって行われる。この樹脂と他の適した代替物は、国際特許公告第WO95/22057号に開示されている。本明細書に記載の方法では、粒子を樹脂マトリクス(「ペイント」とも称する)に混合し、酵素活性を持続させるために水性であるという長所を有する。また、液体の、容易な分与と製造しやすさももたらされる。1μリットルのペイントを、直径0.6μmの細孔を有するポリカーボネート膜(Poretics、カリフォルニア州Livermore)に与える。滴は、膜の表面に広がって、細孔を濡らす。その後、表面をティシュペーパーで拭き、細孔内のペイントだけを残す。その後、ペイントを細孔内で乾燥させ、グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼを保持するための水に不溶性のマトリクスを形成する。
【0030】
ステップ5(酸素センサの構成)
100mgの白金テトラペンタフルオロフェニルポルフィン(Pt(TFPP))(Porphyrin Products、ユタ州Logan)を25mlのシリコーンポリマー貯蔵液に溶かすことによって、酸素に敏感な色素の溶液を用意する。シリコーンポリマー貯蔵液は、100mlのテトラヒドロフランに10gのジメチルシロキサン−ビスフェノールA−ポリカーボネートブロック共重合体(GE、ニューヨーク州Waterford)を溶かすことによって作られる。1μlの色素溶液を、直径0.4μmの細孔を有するポリカーボネート膜104(Poretics、カリフォルニア州Livermore)に与える。溶液を乾かす。第6図からわかるように、酸素に敏感な色素102を含む膜104は、250μm光ファイバケーブル60の端に巻き付けられる。膜104は、小さいOリング106によってケーブルに固定される。ペイントマトリクス内に酵素を含む第二の膜108が、酸素に敏感な色素を含む膜104の上に配置される。膜108も、小さいOリング(図示せず)によって固定される。
【0031】
酸素センサは、次のように動作する。Pt(TFPP)色素は、570nm未満の光を吸収し、650nmを中心とするリン光発光を有する。酸素はこの発光を消光させるので、発光の寿命は、存在する酸素の量に依存する。したがって、発光の寿命は、酸素濃度の関数になる。発光の寿命は、短時間(約0μ秒から約20μ秒)に発光された光の量と長時間(約0μ秒から約270μ秒)に発光された光の量を比較することによって測定される。二つの信号の比(長時間/短時間)が、測定出力であり、この比は、酸素レベルの低下に伴って増加する。酸素濃度は、グルコースオキシダーゼおよびカタラーゼが存在するので、グルコースの濃度によって左右される。
【0032】
上で述べたように、光ファイバ束の隣の酸素に敏感な色素膜と色素膜の上の酵素を含む膜を用いてプローブを作る。このプローブは、37℃でpH7.5のリン酸緩衝塩中のさまざまなレベルのグルコースを含む溶液に浸される。グルコースのさまざまなレベルに対するセンサの応答を2分間記録し、その結果を第7図に示す。比とグルコース濃度の傾き0.000353、Y切片1.004のグラフに関して、0.993というよい相関係数が得られた。この結果は、250μm光ファイバ束上のセンサが、グルコース濃度の測定に有用であり、本発明の実施形態に有用であることを示す。
【実施例2】
【0033】
グルコースの光学検出
第3図に示された実施形態に類似する、本発明の追加の実施形態では、針12が、患者の体の都合のよい部分に挿入される。血液または他の体液が、毛管現象および/または他の流体力学的な力によって針12に流れ込み、光学的に透明なハウジング40によって囲まれた室を充たす。その後、針12を患者の体から引き抜くことができ、針とハウジングアセンブリを、光学分析器具(図示せず)の中またはこれに隣接して配置することができる。このような器具は、血液または他の体液によって充たされた透明のハウジング40を通るように可視、赤外または他の光のビームを向けることによって、グルコースまたは対象となる別のアナライトの濃度を測定する。本実施形態と共に使用できる分析技法の説明は、米国特許第5209231号(偏光測定を介するグルコース濃度の測定)、米国特許第5383452号(固有ルミネセンス偏光の検出を介するグルコース濃度の測定)および米国特許第4882492号(反射または伝播された近赤外光の減法相関分光学を介するグルコース濃度の測定)に記載されている。追加の分析手段は、当業者には明白であり、また、本開示を読むことから明白になる。
【実施例3】
【0034】
グルコースの電気化学検出
本発明のもう一つの実施形態では、第4図に示されたものに類似の装置を使用する。この実施形態では、センサ14が、血液中のグルコースの濃度を検出する針の内部に取り付けられた電気化学センサである。このようなセンサの一例が、本明細書と同一の日付に出願された同時係属の米国特許出願(代理人整理番号5843.US.01)に記載されている。
【実施例4】
【0035】
グルコースサンプリングとインシュリン注入
本発明のもう一つの任意選択の実施形態は、血中グルコース濃度を測定し、インシュリンまたは他の治療用物質を必要量だけ自動的に注射するのに使用される。第2図または第4図に示されたものに類似の装置の実施形態を使用して、患者は、針12を自分の体の都合のよい部分に挿入する。血液は、毛管現象および/または他の流体力学的な力によって針12に流れ込み、センサ14に達する。この実施形態では、針12は、体に挿入されたままになる。センサ14は、針の内部に取り付けられた電気化学センサまたは光学センサであり、第5図に示されるように、血中のグルコースの濃度を検出し、この濃度を表す信号を、分析手段16を介して制御装置20に送る。制御装置20は、ユーザ制御52または記憶されたアルゴリズム54もしくはその両方を介して患者によって指示された通りに動作するが、インシュリンの必要量を示す信号を注射アクチュエータ56に送る。アクチュエータ56は、注射装置18に、サンプリング針12を介してインシュリンを必要量だけ注射させる。注射の間、バルブ(図示せず)によって通気孔38を閉じて、インシュリンが確実に患者に注入されるようにすることができる。
【0036】
本明細書に記載の参考資料は、すべて参照によって組み込まれる。本発明を、好ましい実施形態および/または代替実施形態を参照して説明した。当業者であれば、本発明の真の範囲および趣旨から逸脱せずに、これらの実施形態に対する変更、代替または修正を行うことができることを容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】図2は、本発明の代替実施形態を示す図である。
【図3】図3は、本発明の代替実施形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の代替実施形態を示す図である。
【図5】図5は、注射システムを含む本発明の代替実施形態を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に有用な酸素センサを示す図である。
【図7】図7は、第6図に示された酸素センサを使用して得られた結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)サンプリング針と、
(b)体液中の対象となるアナライトを検出する、サンプリング針に含まれるセンサと、
(c)センサからの信号を受け取って、処理する分析手段と、分析手段から信号を受け取り、注射アクチュエータに信号を送るための制御装置と、
注射アクチュエータに応答して対象となる薬を必要量だけ投与するための注射器と
を含む患者の体に直接に薬を投与するための装置。
【請求項2】
制御装置が、注射される薬の必要量を決定するためのユーザ入力を含む請求の範囲第1項に記載の装置。
【請求項3】
制御装置が、注射される薬の必要量を決定するための分析方法を含む請求の範囲第1項に記載の装置。
【請求項4】
分析方法が、アルゴリズムである請求の範囲第3項に記載の装置。
【請求項5】
(a)注射アクチュエータに信号を送るための制御装置と、
(b)針を含み、注射アクチュエータに応答して薬を必要量だけ投与するための注射器と
を含む患者の体に直接に薬を投与するための装置。
【請求項6】
制御装置が、注射される薬の必要量を決定するためのユーザ入力を含む請求の範囲第5項に記載の装置。
【請求項7】
制御装置が、注射される薬の必要量を決定するための分析方法を含む請求の範囲第5項に記載の装置。
【請求項8】
(a)注射アクチュエータに信号を送るための制御装置と、注射アクチュエータに応答して薬を必要量だけ投与するための針を備えた注射器とを含む薬投与装置を提供するステップと、
(b)注射器を患者に刺すステップと、
(c)注射アクチュエータに応答して薬を必要量だけ投与するステップと
を含む患者の体に直接に薬を投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−122689(P2006−122689A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324355(P2005−324355)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【分割の表示】特願平9−522809の分割
【原出願日】平成8年11月26日(1996.11.26)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】