説明

アナログ信号処理回路、及び、それを用いた距離・強度計測システム

【課題】送信波を用いたレーダシステムの信号処理回路において、反射もしくは散乱信号の複数のピークを検出し、複数のピークに関する距離情報および強度情報を高速に得るアナログ信号処理回路を得る。
【解決手段】入力信号の振幅のピークを検出したときにトリガを出力するとともに、ピーク値を出力するピーク検出保持部100と、外部入力信号が端子1に入力された時刻からトリガが出力される時刻までの経過時間を示すアナログ信号を出力するアナログ信号発生部19と、ピーク検出保持部100とアナログ信号発生部19からの複数の出力を保持するホールド部101と、ピーク検出保持部100から出力されるトリガの出力の経路の切り替えを制御する制御部18とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アナログ信号処理回路、及び、それを用いた距離・強度計測システムに関し、特に、レーダシステム等で用いられるアナログ信号処理回路、及び、それを用いた距離・強度計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来のアナログ信号処理回路の構成を示したブロック図である。図8において、51は検出器、52は増幅器、53はピーク検出器、54はコンパレータ、55は時間−振幅変換器(TAC)、47は演算装置である。当該構成において、従来、パルスレーダ等のレーダシステムで、目標物(ターゲット)までの距離計測及び強度計測を行う場合、アナログ信号処理回路は、図8に示すように、送信されたパルス信号の目標物(ターゲット)による反射信号を検出器51で検出し、パルスを送信した時刻から目標物(ターゲット)によって反射もしくは散乱されて受信される時刻までの回帰時間をTAC(Time to Amplitude Converter)55を用いて求めて距離計測を行うとともに、その受信信号の強度をピーク検出器53を用いて取得することで強度計測を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、別の従来技術として、受信信号を順次AD(Analog to Digital)変換して、時系列データをメモリに保存し、その後、ディジタルデータを信号処理することで複数のピークを検出するという技術がある。当該従来技術の構成の一例を図9に示す。図9において、44は受信系、46はAD変換器、61はメモリ、47は演算装置、54はコンパレータである。当該従来技術においては、図9に示すように、受信系44で受信した受信信号レベルをコンパレータ54によってモニタし、受信信号レベルがしきい値を超えた時刻からAD変換器46によるAD変換を開始することで、メモリ61に保存するディジタル信号の時系列データおよび演算時間を減らすことができるという技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−515116号公報
【特許文献2】米国特許第6414746号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような従来のシステムにおいては、アナログ信号処理回路で目標物(ターゲット)までの距離計測及び強度計測を行う場合、目標物(ターゲット)からの反射もしくは散乱パルスが複数ある計測条件が多々ある計測においては、受信ピークのうち一つのみに関しての距離情報及び強度情報しか得られないため、所望の目標物(ターゲット)の前に、目標物(ターゲット)より反射強度の高い媒体等で目標物(ターゲット)が遮られている場合、所望の目標物(ターゲット)に関する信号が得られないという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2の方法によって、複数のピーク値に関する検出を行う場合、計測時間内の時系列データを全てAD変換するため、複数のピークに関して距離情報及び強度情報を取得可能であるが、高精度かつ高速な計測を行う場合、高分解能で高速なADC(Analog to Digital Converter)が必要となり、コストが増加するといった問題点や、AD変換された時系列データが膨大となり、信号処理に時間がかかるといった問題点があった。
【0007】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、複数のホールド手段を備え、入力信号の複数のピークを検出して当該ホールド手段に保持することで、複数のピークの距離情報および強度情報を高速に得ることが可能なアナログ信号処理回路、及び、それを用いた距離・強度計測システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、入力信号の振幅のピークを検出し、前記ピークを検出した時刻にトリガ信号を出力するとともに、前記ピークのピーク値を保持し出力するピーク検出保持部と、外部から入力される外部入力信号が入力された時刻から前記トリガ信号が出力される時刻までの経過時間を示すアナログ信号を出力するアナログ信号発生部と、前記ピーク検出保持部と前記アナログ信号発生部それぞれからの複数の出力を保持するホールド部と、前記ピーク検出保持部から出力される前記トリガの出力の経路の切り替えを制御する制御部とを備えたアナログ信号処理回路である。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、入力信号の振幅のピークを検出し、前記ピークを検出した時刻にトリガ信号を出力するとともに、前記ピークのピーク値を保持し出力するピーク検出保持部と、外部から入力される外部入力信号が入力された時刻から前記トリガ信号が出力される時刻までの経過時間を示すアナログ信号を出力するアナログ信号発生部と、前記ピーク検出保持部と前記アナログ信号発生部それぞれからの複数の出力を保持するホールド部と、前記ピーク検出保持部から出力される前記トリガの出力の経路の切り替えを制御する制御部とを備えたアナログ信号処理回路であるので、入力信号の複数のピークを検出して当該ホールド手段に保持することで、複数のピークの距離情報および強度情報を高速に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1で示すアナログ信号処理回路のブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1で示すアナログ信号処理回路の主要な各部の信号のタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1で示すアナログ信号処理回路のブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2で示すアナログ信号処理回路のブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2で示すアナログ信号処理回路の主要な各部の信号のタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2で示す時間計測回路のブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3で示す距離・強度計測システムのブロック図である。
【図8】この発明の従来技術で示す距離・強度計測システムのブロック図である。
【図9】この発明の従来技術で示す距離・強度計測システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るアナログ信号処理回路の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態1に係るアナログ信号処理回路は、端子1、2、4、5、6、7と、ピーク検出保持部100と、制御部18と、アナログ信号発生部19と、ホールド部101とからなる。
【0012】
ここで、ピーク検出保持部100は、比較器11と、電流源12と、スイッチ13と、容量14と、リセットスイッチ15と、トリガ生成回路17とからなり、端子2から入力される入力信号の振幅のピークを検出し、検出した時刻にピークを検出したことを示すピーク検出トリガ(以下、単に、トリガとする。)を出力するとともに、当該ピーク値を保持し出力するものである。
【0013】
比較器11は、非反転入力側には端子2から信号が入力され、反転入力側には容量14から信号が入力され、非反転入力側と反転入力側に入力される、それぞれの入力電圧を比較し、非反転入力側の入力レベル(入力振幅)が反転入力側より高い場合のみ、HIGHレベル信号を出力し、後段のスイッチ13をONにする。スイッチ13がONされた場合、電流源12と容量14とが接続され、電流源12は容量14に対して電荷を供給し、容量14の電極間電圧が上昇する。比較器11は、反転入力側の入力レベルと非反転入力側の入力レベルとが等しくなるまでスイッチ13をONに維持するため、容量14の電極間電圧は端子2より入力される入力信号のピークに追従する。また、トリガ生成回路17は、比較器11の出力に基づいて、比較器11が最初にHIGHレベルを出力した時刻から端子2からの入力信号のピークを検出する時刻までの間、HIGHレベルの信号を維持し出力し、端子2からの入力信号のピークを比較器11が検出したら、その瞬間に、HIGHからLOWに立ち下がる。
【0014】
比較器11とアナログ信号発生部19とは、端子1から入力される外部入力信号によって制御され、外部入力信号がHIGHのときのみ動作するものとする。なお、外部入力信号は、パルスレーダからパルスが送信されると同時にLOWからHIGHになり、あらかじめ決めた時間幅の間、HIGHが継続され、当該時間幅の分の時間が経過したら、再びLOWに切り替わる。
【0015】
アナログ信号発生部19は、端子1から入力される外部入力信号に従って、当該入力が開始された時刻からの経過時間を示すアナログ信号を出力する。
【0016】
また、制御部18は、3−a、3−b、3−cの3つの出力端子を備え、トリガ生成回路17から出力されるトリガを予め決められたパターンで端子3−aまたは端子3−bのどちらか一方から出力するように、当該トリガの出力の経路の切り替えを制御するものとする。なお、当該端子3−aまたは端子3−bとの間の切り替えの“パターン”については後述する。また、端子3−cからは、トリガ生成回路17のトリガの立下り(HIGH→LOWへ)を検出し、当該検出の瞬間にインパルストリガが出力されるものとする。
【0017】
また、ホールド部101は、複数のサンプルアンドホールド回路(以下、S/H回路とする)20,21,22,23からなり、ピーク検出保持部100とアナログ信号発生部19のそれぞれからの複数の出力を予め決めた一定時間保持するものである。S/H回路20,21,22,23は、制御部18の端子3−aおよび端子3−bから出力されるトリガがHIGHレベルの場合、端子2からの入力信号をサンプルするとともに、トリガがHIGHからLOWに立ち下がる瞬間の入力信号レベルをホールドする。なお、制御部18の端子3−aからのトリガはS/H回路20,22に入力され、制御部18の端子3−bからのトリガはS/H回路21,23に入力されるため、制御部18の端子3−aからトリガが出力されている間は、S/H回路20,22が動作し、制御部18の端子3−bからトリガが出力されている間は、S/H回路21,23が動作する。
【0018】
次に、図1に示すアナログ信号処理回路における時間計測動作について説明する。ここでは、パルスレーダの強度計測及び距離計測の信号処理回路として使用される状況を想定し、レーダから送信したパルスが、距離の異なる2つの目標物(ターゲッ)によって反射され、目標物(ターゲット)からの反射パルスが2つある場合を想定する。本アナログ信号処理回路の各信号のタイミングチャートを図2に示す。パルスレーダからパルスが送信されると同時に端子1から入力される外部入力信号がLOWからHIGHへと変化し、その後、あらかじめ決めた時間幅でHIGHを継続するものとする。なお、この時間幅が、目標物(ターゲット)の強度や距離の測定時間となる。また、アナログ信号発生部19からの出力は、端子1に外部入力信号がHIGHで入力した時刻から出力が開始され始め、当該出力は、傾きaで時間に比例して電圧が高くなるランプ電圧とする。従って、アナログ信号発生部19から出力されるある時刻の電圧値をaの値で除算することにより、端子1に外部入力信号がHIGHで入力した時刻からその時刻までの経過時間を求めることができる。
【0019】
また、制御部18は、端子1から入力される外部入力信号がHIGHとなった時刻から数えて、トリガ生成回路17が出力するパルスが奇数番目の時は、3−a端子からパルスを出力し、偶数番目のときは、3−b端子からパルスを出力するものとする。これが、上述した切り替えの“パターン”である。また、トリガ生成回路17が出力するパルス幅と、制御部18が出力するパルス幅とは、図2に示すように、同じ時間幅である。
【0020】
パルスレーダからパルスが送信されると同時に、端子1より外部入力信号がHIGHで入力され、比較器11が動作を開始するとともに、アナログ信号発生部19は時間に対し一定の傾きaで上昇する電圧信号を出力し始める。今、端子1から入力される外部入力信号がHIGHとなった時間からT時間過ぎた時刻に、目標物(ターゲット)から反射された1番目のパルスがパルスレーダに帰還し、端子2に入力されたとする。ピーク検出保持部100内の容量14は、当該パルスのその時点でのピーク値(ピーク電圧)を保持する。一方、ピーク検出保持部100内の比較器11が入力信号の比較処理を開始するとともに、トリガ生成回路17はトリガをHIGHで出力する。今、入力されたパルスは1番目(奇数番目)であるため、トリガ生成回路17からのトリガは、制御部18の端子3−aより出力される。制御部18の端子3−aより出力されたトリガは、S/H回路20,22を駆動し、S/H回路20,22は端子2からの入力信号のサンプルを行う。比較器11により、端子2からの入力信号のピークが最大値となったことが検出された瞬間に、すなわち、比較器11の反転入力側の入力レベルと非反転入力側の入力レベルとが等しくなったときに、トリガ生成回路17はHIGHからLOWに切り替えて出力するため、その瞬間に、S/H回路20は、その時刻における容量14の電極間電圧をホールドし、端子4より出力する。また、S/H回路22は、その時刻のアナログ信号発生部19の出力信号V=aTをホールドし、端子6より出力する。また、トリガ生成回路17がLOWを出力した瞬間に制御部18の端子3−cより、インパルストリガが出力され、それにより、リセットスイッチ15がONされ、容量14の電極間電圧は初期状態の電圧へとリセットされる。
【0021】
次に、端子1からの外部入力信号がHIGHとなった時刻からT時間過ぎた時刻に、目標物(ターゲット)から反射された2つ目のパルスがパルスレーダに帰還し、端子2に入力されたとする。1番目に入力されたパルスを処理した後に容量14の電極間電圧は初期状態に戻っているため、ピーク検出保持部100は、1番目のパルスと同様の動作を行い、容量14は2番目に入力されたパルスのピーク値を保持する。一方、比較器11が入力信号の比較処理を開始し始めるとともに、トリガ生成回路17はHIGHを出力する。入力されたパルスは2番目(偶数番目)であるため、制御部18からのトリガは、制御部18の端子3−bより出力される。制御部18の端子3−bより出力されたトリガは、S/H回路21,23を駆動し、S/H回路21,23は入力信号をサンプルする。入力信号のピークが最大値となった瞬間に、トリガ生成回路17はLOWを出力し、これにより、S/H回路21は、容量14の電極間電圧をホールドし、端子5より出力する。また、S/H回路23は、その時刻のアナログ信号発生部19の出力信号V=aTをホールドし、端子7より出力する。また、この瞬間に制御部18の端子3−cより、インパルストリガが出力され、これにより、リセットスイッチ15がONされ、容量14の電極間電圧は初期状態の電圧へとリセットされる。
【0022】
ここで、測定を終えたとすると、端子4及び端子5からは、測定時間内に検出された2つのパルスのピークの最大値(強度情報)が出力される。一方、端子6及び端子7からは、それぞれのピークの最大値が検出された時刻のアナログ信号発生部19の出力電圧V,V(距離情報)が出力される。
【0023】
ここで、1番目に測定されたパルスに対応する目標物(ターゲット)までの距離Lと2番目に測定されたパルスに対応する別の目標物(ターゲット)までの距離Lは、端子6と端子7のそれぞれの出力電圧V,Vを用いて、以下の式で算出することができる。
【0024】
=V・C/2a
=V・C/2a
【0025】
ここで、Cは光速である。このように本回路では、ホールド手段であるS/H回路をホールド部101内に複数個用意し、入力信号のピークが検出されるたびに、その検出値を異なるホールド手段であるS/H回路でホールドすることで、複数のピーク値を保持することが可能となる。また、入力信号のピークが検出されるたびに、ピーク検出保持部100を初期状態に戻すことで、測定時間内の複数のピーク値に対して処理することが可能となる。これらを組み合わせることで、入力信号の複数のピーク値をアナログ的に取得することが可能となる。
【0026】
以上のように、本実施の形態によれば、特許文献1に記載された従来技術では不可能であった2つのピークに対応する距離情報および強度情報の取得が可能となる。また、例えば2つの入力信号のピーク値に対しては、それぞれ距離情報と強度情報に対応する4つの出力信号のみが出力となる。これにより、高速なAD変換器は不要となり、信号処理は上記に示す式を解くだけでよいため、信号処理の負担を減らすことが可能となる。
【0027】
なお、実施の形態1での説明では、ホールド部101が、ホールド手段としてのS/L回路を2つ有し、2つの信号のピーク値を取得するものとしたが、その場合に限らず、ホールド手段を3つ以上設けることで、3つ以上の信号のピーク値を取得することが可能である。
【0028】
また、本回路のホールド部101には、ホールド手段としてS/H回路を用いたが、その場合に限らず、信号を保持できるものであれば他の構成で代替可能である。
【0029】
また、図3に示すように、ホールド部101の複数の出力にアナログMUX102を接続することで、アナログ信号処理回路の出力端子を端子8だけの1つにすることができ、小面積化が可能である。
【0030】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係るアナログ信号処理回路の構成を示すブロック図である。本実施の形態2においては、上述の実施の形態1で示した図1のピーク検出保持部100を2つ設け、それぞれ、ピーク検出保持部100−a,100−bとし、端子2とこれらのピーク検出保持部100−a,100−bとの間に新たにSPDTスイッチ9を設ける構成とした。ピーク検出保持部100−a,100−bは、実施の形態1におけるピーク検出保持部100と基本的に同じ構成である。なお、ピーク検出保持部100−a,100−bと実施の形態1におけるピーク検出保持部100との唯一の構成の違いは、ピーク検出保持部100−a,100−bにおいては、図1に示されるリセットスイッチ15が設けられていない点だけである。以下の説明においては、ピーク検出保持部100−a,100−bを構成する各構成要素の符号は、ピーク検出保持部100の各構成要素の符号にそれぞれ対応して同じとしているが、但し、ピーク検出保持部100−aおよび100−b間で区別できるように、それらの符号の後ろに、それぞれ、−aおよび−bを付して示している(例えば、比較器11であれば、比較器11−aおよび比較器11−bとしている)。
【0031】
ピーク検出保持部100−aの出力はS/H回路20に接続され,ピーク検出保持部100−bの出力はS/H回路21に接続される。また、ピーク検出保持部100−a内のトリガ生成回路17−aは、S/H回路20,22に接続され、ピーク検出保持部100−b内のトリガ生成回路17−bは、S/H回路21,23に接続されている。また、トリガ生成回路17−a,17−bの出力は、制御部18にも接続され、制御部18は双方のHIGHからLOWへの立下りをカウントし、最下位ビット信号を出力するものとする。SPDTスイッチ9は、制御部18の出力信号がLOWの時に端子31すなわちピーク検出保持部100−a側へ接続し、HIGHの時に端子32すなわちピーク検出保持部100−b側へ接続されるものとする。その他の構成は、図1と同一であるため、同一の構成部分については重複する説明を省略する。
【0032】
次に、図4に示すアナログ信号処理回路における時間計測動作を説明する。ここでは、実施の形態1と同様に、パルスレーダの強度計測及び距離計測の信号処理回路として使用される状況を想定し、目標物(ターゲット)からの反射が2つある場合を想定する。本アナログ信号処理回路の各信号のタイミングチャートを図5に示す。パルスレーダからパルスが送信されると同時に、端子1から入力される外部入力信号がLowからHighへ変化し、あらかじめ決めた時間幅でHighを継続するものとする。また、アナログ信号発生部19の出力は傾きaで時間に比例して電圧が高くなるランプ電圧とする。また、制御部18の初期状態での出力はLOWとする。
【0033】
パルスレーダからパルスが送信されると同時に、端子1より外部入力信号がHIGHで入力され、比較器11−a,11−bが動作を開始するとともに、アナログ信号発生部19は時間に対し一定の傾きaで上昇する電圧信号を出力する。今、外部入力信号がHIGHとなった時刻からT時間過ぎた時刻に、目標物(ターゲット)から反射された1番目(奇数番目)のパルスがパルスレーダに帰還し、端子2に入力されたとする。SPDTスイッチ9は端子31側に接続されているため、1番目のパルスはピーク検出保持部100−aにて処理される。ピーク検出保持部100−aは、実施の形態1のピーク検出保持部100と同様に動作して、S/H回路20に、ピーク検出保持部100−a内の容量14−aの電極間電圧が保持され、S/H回路22に、ピークが検出された時刻のアナログ信号発生部19の出力が保持され、それぞれ、端子4及び端子6より出力される。ピーク検出保持部100−aがピークを検出した瞬間に、制御部18は、トリガ生成回路17−a出力の立下りをカウントし、HIGHを出力するため、SPDTスイッチ9は端子31から端子32に切り替わる。
【0034】
次に、端子1に入力される外部入力信号がHIGHとなった時刻からT時間過ぎた時刻に、目標物(ターゲット)から反射された2番目のパルスがパルスレーダに帰還し、端子2に入力されたとする。SPDTスイッチ9は端子32に接続されているため、2番目(偶数番目)のパルスはピーク検出保持部100−bに入力され処理される。ピーク検出保持部100−bは、実施の形態1のピーク検出保持部100と同様に動作して、S/H回路21に、ピーク検出保持部100−b内の容量14−bの電極間電圧が保持され、S/H回路23に、ピークが検出された時刻のアナログ信号発生部19の出力が保持され、それぞれ、端子5及び端子7より出力される。制御部18はトリガ生成回路17−bの立下りをカウントし、LOWを出力するため、SPDTスイッチ9の接続先は、端子32から端子31に切り替わる。
【0035】
ここで、測定を終えたとすると、端子4及び端子5からは、測定時間内に検出された2つのパルスのピーク値が出力される。また、端子6及び端子7からは、それぞれのピークが検出された時刻のアナログ信号発生部19の出力電圧が出力される。ここで、1番目に測定されたパルスに対応する目標物(ターゲット)までの距離Lと2番目に測定されたパルスに対応する目標物(ターゲット)までの距離Lは、端子6と端子7の出力電圧を用いて、実施の形態1で示した式で算出することができる。
【0036】
このように、本実施の形態では、ピーク検出保持部100を2つ設け、入力信号のピークが検出された瞬間にSPDTスイッチ9を、制御部18によって、端子31側から端子32側へと切り替えることにより、2つのパルスのピークに対応する強度情報および距離情報を得ることができる。本実施の形態によれば、実施の形態1において必要であったピークが検出される時に行うピーク検出保持部100を初期状態へ戻す動作が不要となる。ピーク検出保持部100を初期状態に戻すには容量の放電が必要となる。現実の容量において、容量に蓄えられた電荷を放電するにはある時間幅が必要となり、その時間は本信号処理回路において、デッドタイム(測定できない時間)となる。そのため、本実施の形態では、ピーク検出保持部100を複数設け、交互に切り替えるようにした。この場合、SPDTスイッチ9の切り替え時間のみがデッドタイムとなるため、その時間は、一般的なICのトランジスタスイッチを使用する場合、寄生容量と充電経路の寄生抵抗で決まる時定数となる。一方、容量14−a,14−bを放電する時間は、容量値と放電パスの寄生抵抗によってきまる時定数で決まり、容量は一般的に寄生容量と比較して十分に大きい容量値を使用するため、SPDTスイッチ9の切り替え時間は、容量14−a,14−bの放電時間と比較し、短いデッドタイムとすることが可能となり、入力信号の複数のピークを高速に検出することが可能となる。
【0037】
ここでは、ホールド部101のホールド手段であるS/H回路は2つの信号のピーク値を取得するものとしたが、ピーク検出保持部100を3つ以上、または、S/H手段を3つ以上設けることで、3つ以上の信号のピークを得ることが可能である。
【0038】
また、ここではピーク検出保持部100を2つ設けた例を説明したが、図6に示すように、ピーク検出保持部100内の容量14を、容量14−a,14−bの複数個に分けて設け、端子2より入力される信号を容量14−a,14−b間で切り替え、処理するようにしてもよく、その場合においても、図4と同様の効果を得ることが可能である。この場合、制御部18は、実施の形態1で述べた動作が必要となる。図6に示す構成の場合、比較器11およびトリガ生成回路17が1つずつで済むため、図4と比較して、小面積化と低消費電力化が可能である。
【0039】
なお、図6の構成は、基本的に、図1の構成と同じであり、ピーク検出保持部100内の容量14を、容量14−a,14−bの複数個に分けて設けた点が異なる。また、当該構成に伴い、リセットスイッチ15も、容量14−a,14−bのそれぞれに対して、リセットスイッチ15a,15bというように1つずつ設けられている。他の構成については、図1と同じであるため、同一符号を付して示し、ここでは説明を省略する。
【0040】
実施の形態3.
図7は、この発明に係る距離・移動速度計測システムの構成を示したブロック図である。この発明に係る距離・移動速度計測システムは、上記の実施の形態1または2で説明したアナログ信号処理回路を含んでいる。図7において、41は制御回路、42はタイミング回路、43は送信系、44は受信系、45はアナログ信号処理回路、46はAD変換器、47は演算装置である。この発明に係る距離・移動速度計測システムでは、図7に示すように、システム全体の制御を行う制御回路41には、タイミング回路42と、送信系43と、実施の形態1または2で示したアナログ信号処理回路45とが接続されている。タイミング回路42は、パルスの送信周期で、送信系43を駆動する。タイミング回路42は、同じタイミングでアナログ信号処理回路45内のTACも駆動する。
【0041】
送信系43は、光または電磁波からなる送信波(パルス)を目標物(ターゲット)に向けて空中に放射する。送信系43から出力された送信波(パルス)は、目標物(ターゲット)によって反射され、受信系44によって受信されて電気信号に変換され、アナログ信号処理回路45に入力される。アナログ信号処理回路45での動作は、実施の形態1または2で説明したものと同じである。すなわち、アナログ信号処理回路45は、ピーク検出保持部100で検出された入力信号の振幅のピーク値と、アナログ信号発生部19で得られた当該ピークが検出された時刻の容量14の電極間電圧とを出力する。アナログ信号処理回路45からのこれらの出力は、AD変換器46でディジタルデータに変換され、演算装置47に入力される。演算装置47では、AD変換器46の出力に基づいて演算処理を行い、距離情報・強度情報を得る。実施の形態1および2で説明したように、アナログ信号処理回路45内で、複数のパルスのピークに対応する出力を保持しているため、AD変換器46は、パルスの送信周期程度の速度で、アナログ信号処理回路45の出力をAD変換すればよいため、低速なAD変換器で処理することが可能となる。また、強度情報および距離情報は、アナログ信号処理回路45から出力されるため、複雑な演算処理が不要となる。
【0042】
このように、本システムでは、実施の形態1もしくは2記載のアナログ信号処理回路45を用いることにより、複数のピークに対応した出力を高速に得ることが可能となる。また、AD変換器46は、比較的低速のもので構成可能であり、メモリ等の記憶装置が不要となるため、コスト削減が可能となる。
【0043】
実施の形態3の説明では、パルスレーダに組み込んで利用する場合を例にとって本発明の距離計測・速度計測回路を説明した。しかしながら、本発明の時間測定回路は、パルスレーダに限らず他の測定装置などの任意の電子装置内に組み込んで利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,2,3,4,5,6,7,8 端子、9 SPDTスイッチ、11,11−a,11−b 比較器、12 電流源、13 スイッチ、14 容量、15 リセットスイッチ、17,17−a,17−b トリガ生成回路、18 制御部、19 アナログ信号発生部、20,21,22,23 S/H回路、31,32 端子、41 制御回路、42 タイミング回路、43 送信系、44 受信系、45 アナログ信号処理回路、46 AD変換器、47 演算装置、51 検出器、52 増幅器、53 ピーク検出回路、54 コンパレータ、55 時間−振幅変換器(TAC)、61 メモリ、100 ピーク検出保持部、101 ホールド部、102 アナログMUX。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の振幅のピークを検出し、前記ピークを検出した時刻にトリガ信号を出力するとともに、前記ピークのピーク値を保持し出力するピーク検出保持部と、
外部から入力される外部入力信号が入力された時刻から前記トリガ信号が出力される時刻までの経過時間を示すアナログ信号を出力するアナログ信号発生部と、
前記ピーク検出保持部と前記アナログ信号発生部それぞれからの複数の出力を保持するホールド部と、
前記ピーク検出保持部から出力される前記トリガの出力の経路の切り替えを制御する制御部と
を備えたことを特徴とするアナログ信号処理回路。
【請求項2】
前記ピーク検出保持部を2つ以上備えたことを特徴とする請求項1記載のアナログ信号処理回路。
【請求項3】
ターゲットに向けて送信波を送信する送信手段と、
前記ターゲットによって反射されて戻ってきた前記送信波を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された前記送信波の処理を行う請求項1または2に記載のアナログ信号処理回路と、
前記アナログ信号処理回路の出力に基づいて前記ターゲットまでの距離計測および強度計測を行う演算部と
を備えたことを特徴とする距離・強度計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−122840(P2011−122840A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278437(P2009−278437)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】