説明

アナログ信号出力回路

【課題】オーディオ機器をミュート状態にした場合、クリックノイズを発生することなく緩やかに出力信号を変化させることができるアナログ信号出力回路を提供する
【解決手段】差動増幅器103、差動増幅器103の反転入力端子103aと出力端子106との間に接続されたキャパシタ102bを含む回路部110を含むアナログ信号出力回路に、キャパシタ102bに並列に接続され、差動増幅器103の出力端子106からの出力を停止させる場合、キャパシタ102bに保持された電荷を所定の時間をかけて放出させるスイッチ素子105及び抵抗素子104を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号出力回路にかかり、特に、オーディオ機器に好適なアナログ信号出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
音楽や映像に付加される音声の信号(以下オーディオ信号と記す)の多くは、半導体集積回路によって処理される。また、オーディオ信号を処理する半導体集積回路の多くは、スイッチトキャパシタ回路(以下SC回路と記す)を含んでいる。
このような半導体集積回路を使ったオーディオ機器において、オーディオ信号をスピーカやヘッドホンから音楽等として出力する場合、SC回路は、D/Aコンバータを使ってデジタル信号をアナログ化する、あるいはアナログ化された信号を低音強調する、さらにフィルタリングする。
【0003】
図8は、一般的なSC回路を示した図であって、音声信号のうち不要な高周波信号を取り除く一次のローパスフィルタを示している。図示したローパスフィルタは、3つのキャパシタC1、C2、C3と、3組のスイッチS1、S2、差動増幅器1を備えている。スイッチS1、S2は、いずれも互いにノンオーバーラップの関係で交互にオンする。このような動作により、ローパスフィルタは、入力信号Viをローパスしてアナログ出力信号Voを出力する。なお、このようなローパスフィルタは、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】楠、菊信他著、VLSIのためのアナログ技術、223ページ、共立出版株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スピーカやヘッドホンから音楽や音声の出力中、ユーザの操作によってオーディオ機器がミュート状態に設定されることがある。ミュート状態の設定により、グラウンド電圧が出力信号として出力される。
しかしながら、上記した従来技術では、SC回路において瞬時にグランド電圧を出力信号とすると、電圧段差が発生する。電圧段差は、クリックノイズと呼ばれるノイズを発生させ、このノイズがユーザに違和感を与える。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、音楽や音声の出力中にオーディオ機器をミュート状態にした場合、クリックノイズを発生することなく緩やかに出力信号を変化させることができるアナログ信号出力回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のアナログ信号出力回路は、差動増幅器(例えば図1に示した差動増幅器103)と、当該差動増幅器の入力端子(例えば図1に示した反転入力端子103a)と出力端子(例えば図1に示した出力端子106)との間に接続された第1容量素子(例えば図1に示したキャパシタ102b)と、を含む回路部と、を含むアナログ信号出力回路であって、前記第1容量素子に並列に接続され、前記差動増幅器の前記出力端子からの出力を停止させる場合、前記第1容量素子に保持された電荷を所定の時間をかけて放出させる電荷放出回路(例えば図1に示したスイッチ105及び抵抗素子104)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のアナログ信号出力回路は、請求項1において、前記電荷放出回路が、第1スイッチ素子(例えば図1に示したスイッチ105)と、当該第1スイッチ素子に直列に接続された抵抗素子(例えば図1に示した抵抗素子104)とを含み、前記第1スイッチ素子に対し、前記第1スイッチ素子を1回以上オン、オフさせるための制御信号を出力し、前記第1スイッチ素子のオン、オフに応じて前記第1容量素子に保持された電荷を段階的に放出させる信号制御手段(例えば図1に示したクロック制御回路108)を備えることを特徴とする。
請求項3に記載のアナログ信号出力回路は、請求項2において、前記第1スイッチ素子を1回以上オン、オフさせるための制御信号は、前記第1スイッチ素子をオン、オフさせた後、前記第1スイッチ素子をオンさせた状態で停止させる信号であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載のアナログ信号出力回路は、前記電荷放出回路が、第2スイッチ素子(例えば図3に示したスイッチ301)と、当該第2スイッチ素子と直列に接続される第3スイッチ素子(例えば図3に示したスイッチ302)と、前記第2スイッチ素子、前記第3スイッチ素子の接続点に直列に接続される第2容量素子(例えば図3に示したキャパシタ303)と、を含み、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子に対し、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子を交互に1回以上オン、オフさせるための制御信号を出力し、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子のオン、オフに応じて前記第1容量素子に保持された電荷を段階的に放出させる信号制御手段(例えば図3に示したクロック制御回路308)を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載のアナログ信号出力回路は、請求項4において、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子を交互に1回以上オン、オフさせるための制御信号は、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子をオン、オフさせた後、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子をオンさせた状態で停止させる信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載のアナログ信号出力回路は、出力の停止時に第1容量素子に保持された電荷を所定の時間をかけて緩やかに放出させることができるので、ミュート状態への移行時にクリックノイズを発生することなく緩やかに出力信号を0に近づけることができる。
請求項2に記載のアナログ信号出力回路は、比較的簡易に電荷放出回路を実現することができる。
請求項3に記載のアナログ信号出力回路は、信号入力回路のスイッチのわずかな漏れ電流のために差動増幅器の出力が不確定となることを防ぐことができる。
請求項4に記載のアナログ信号出力回路は、比較的簡易に電荷放出回路を実現することができる。
請求項5に記載のアナログ信号出力回路は、信号入力回路のスイッチのわずかな漏れ電流のために差動増幅器の出力が不確定となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1のアナログ出力回路を説明するための回路図である。
【図2】本発明の実施形態1のミュートが設定された場合のクロック制御回路の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態2のアナログ出力回路を説明するための回路図である。
【図4】本発明の実施形態2において、ミュートが設定された場合のクロック制御回路の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態1のアナログ信号出力回路の変形例を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態2のアナログ信号出力回路の変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態2のアナログ信号出力回路の変形例を説明するための図である。
【図8】本発明の従来技術に相当する回路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態1、実施形態2を説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のアナログ出力回路を説明するための回路図である。図示したように、実施形態1のアナログ出力回路は、アナログ出力回路の本体となる回路部110と、クロック制御回路108を備えている。信号入力回路100は、回路部110に信号を入力するための回路であって、スイッチ部101a、101bと、キャパシタ102aとを備えている。スイッチ部101a、101bは、各々スイッチS1、S2を備えている。そして、入力信号Viを入力し、回路部110に出力信号を入力させる。
【0013】
また、回路部110は、差動増幅器103と、差動増幅器103に並列に接続されたキャパシタ102b、102c、スイッチ部101c、抵抗素子104、スイッチ部105を備えている。
回路部110のスイッチ部101cは、スイッチ部101a、101bと同様にスイッチS1、S2を備えている。スイッチ部101a、101b、101cのスイッチS1、S2は、いずれも2相のノンオーバーラップクロックで制御される。また、スイッチ部105は、スイッチS3を含んでいる。アナログ信号出力回路100は、このようなスイッチS1、S2、S3によって動作される。
【0014】
クロック制御回路108は、スイッチ部101a、101b、101c、105に対してスイッチのオン、オフを制御するクロック信号を出力する構成である。クロック制御回路108によって出力されるクロック信号は、スイッチ部101a、101b、101cに対し、スイッチS1、S2を互いに同時にオンさせることがないノンオーバーラップクロック信号を出力する。さらに、クロック信号を、スイッチS1、S2と、スイッチS3とに対して各々独立に出力することが可能である。
信号入力回路100において、入力信号Viは、スイッチ部101aのスイッチS1がオンされているタイミングでキャパシタ102aによってサンプリングされる。サンプリングされた入力信号Viの電荷は、スイッチ部101aのスイッチS2がオンされるタイミングで差動増幅器103の反転入力端子103aに転送される。
【0015】
また、回路部110において、転送された電荷は、キャパシタ102bにも送られて積分される。積分された電荷によって生成された信号は、アナログ信号出力回路の出力端子106からアナログ出力信号Voとして出力される。なお、出力端子106は、差動増幅器103の出力端子と共通の端子である。
キャパシタ102cは、アナログ信号出力回路がローパスフィルタを形成するために設けられたキャパシタである。キャパシタ102cは、一方の端子がノンオーバーラップクロック信号で制御されるスイッチS1とS2により、差動増幅器103の反転の反転入力端子103aと出力端子106とに交互に接続される。
【0016】
以上のように動作するアナログ出力回路は、オーディオ機器がミュート状態に設定されると、信号入力回路100は信号の入力を停止する。信号入力の停止は、クロック制御回路108が信号入力回路100に対するノンオーバーラップクロック信号を停止させることによって実行される。このとき、実施形態1では、キャパシタ102cの動作も停止してローパスフィルタとしての動作が停止する。差動増幅器103は、キャパシタ102bに保持された電荷に対応する直流電圧を出力する。
また、クロック制御回路108は、ミュート動作開始時に、スイッチ部105のスイッチS3に対し、スイッチS3が所定のパターンで1回以上オン、またはオフするようにクロック信号を出力する。
【0017】
図2は、実施形態1の、ミュートが設定された場合のクロック制御回路108の動作を説明するための図である。図中、上段から各々ミュートの設定タイミング、スイッチS1のオン、オフタイミング、スイッチS2のオン、オフタイミング、スイッチS3のオン、オフタイミング、アナログ出力信号Voをそれぞれ示している。
図2に示したように、実施形態1では、クロック制御回路108が、通常動作時にはスイッチS1、S2にノンオーバーラップクロック信号を出力している。そして、ミュートの設定がなされると、スイッチS1、スイッチS2に出力されていたノンオーバーラップのクロック信号を停止させると共に、スイッチS3に対してクロック信号の出力を開始する。なお、図示したクロック信号は、いずれも立ち上がりから立ち下がりの間スイッチをオンさせて、立ち下がりから次の立ち上がりまでの間スイッチをオフさせるものとする。
【0018】
スイッチS3に出力されるクロック信号は、スイッチS3がオンされる期間(以下、オン期間と記す)とオフされる期間(以下、オフ期間と記す)及びオン回数、オフ回数が予め設定されている。設定されたオン期間、オフ期間、オン回数、オフ回数を、総称してクロック信号のパターンと記す。
実施形態1では、スイッチS3に対して出力されるクロック信号のパターンを、オン期間が短く、オフ期間が長くなるように設定する。また、オン、オフを1回以上行う(オン回数、オフ回数が1回以上)ものとし、好ましくはオン回数、オフ回数を各々数回ないしは数万回とする。スイッチS3がオンしたとき、キャパシタ102bに保持されていた電荷の一部が抵抗素子104を通って放出される。また、スイッチS3がオフしたときには抵抗素子104を通る経路が遮断される。
このため、スイッチS3をオン、オフさせることにより、キャパシタ102bに保持されていた電荷が段階的に放出できるから、出力端子106から出力されるアナログ出力信号Voを、所定の時間をかけて緩やかに信号動作点電圧に収束させることができる。
【0019】
以下、実施形態1によって得られる効果について具体的な例を挙げて説目する。
アナログ出力回路において、経済等の観点から、キャパシタ102bの容量は10pF、スイッチS3と直列接続される抵抗素子104の抵抗値は100Kオーム程度と考えられる。このとき、アナログ出力信号Voの時定数は1μSとなる。このような時停数の場合、比較的大きな信号の出力時においてミュートが設定されると、アナログ出力信号Voがグランド電位となるとき有感なクリックノイズが発生する。
【0020】
しかし、実施形態1は、スイッチS3のオン状態のデューティ比を1/10000とすると、抵抗素子の抵抗値が仮想的に1Gオーム相当となる。このような抵抗と10pFのキャパシタとによれば、時定数を10mSと上記した例よりも十分長くすることができる。このため、実施形態1は、有感なクリックノイズの発生を防ぎ、オーディオ機器においてユーザに違和感を与えることなくミュートに移行できるアナログ出力回路を提供することができる。
【0021】
また、図2に示したように、実施形態1は、スイッチS3を所定のパターンでオン、オフさせた後、スイッチS3をオン状態にして停止させる。スイッチS3の停止により、差動増幅器から異なるパスの信号が出力される、あるいはアナログ出力回路の動作状態に変更は生じないので、クリックノイズは発生しない。また、スイッチS3がオン状態である場合、図1に示した抵抗素子104を介して差動増幅器が安定なボルテージフォロア回路を構成する。
【0022】
このため、実施形態1は、スイッチS3をオン状態に維持することにより、信号入力回路のスイッチのわずかな漏れ電流のために差動増幅器の出力が不確定となることはない。以上のように、実施形態1のアナログ信号出力回路によれば、通常の信号出力状態からミュート状態になった場合、緩やかに出力信号が変化し、クリックノイズの発生を抑えることができる。そして、最終的にはゼロ信号の信号動作点電圧を継続的に出力できる。
また、スイッチS3のオン期間とオフ期間との比を変更することにより、より緩やかな出力電圧変化を実現することができるようにもなる。具体的には、例えばミュート開始直後はオン期間とオフ期間とのデューティ比を小さく、徐々に大きくすることが考えられる。
【0023】
なお図2では動作の様子が理解しやすいように簡略化して表現している。すなわち、スイッチS1とスイッチS2が交互にオン、オフを繰り返す区間ではアナログ信号出力は実際には階段状の波形となるが、本図2では図中に示されるスイッチS1とスイッチS2の周期よりはるかに早い周期でオン、オフを繰り返すことにより細かな階段状波形となり、アナログ出力波形が滑らかな変化として見える様子を示している。同様にスイッチS3がオン、オフを繰り返す区間ではアナログ信号出力は実際には階段状の波形となるが、本図2では図中に示されるスイッチS3の周期よりはるかに早い周期でオン、オフを繰り返すことにより細かな階段状波形となり、アナログ出力波形が滑らかな変化として見える様子を示している。
【0024】
また、実施形態1では、アナログ信号出力回路をSC回路を例にして説明したが、実施形態1は、当然のことながらこのような構成に限定されるものではない。すなわち、信号入力回路等の回路本体に付加される回路はスイッチと抵抗素子によるスイッチトレジスタ回路であっても良いし、抵抗素子やキャパシタ素子による時間連続な動作をする回路であっても良い。さらに、SC回路と他の回路とを混合した回路であっても良い。
【0025】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2のアナログ出力回路を説明するための回路図である。なお、実施形態2の回路は、図1に示した実施形態1の回路と同様の構成を含んでいる。このため、同様の符号については同様の符号を付し、説明を一部略すものとする。
実施形態2のアナログ出力回路は、実施形態1と同様に、信号入力回路100を備えている。信号入力回路100は、実施形態1と同様に、2相のノンオーバーラップクロック信号で制御されるスイッチS1とS2とによって動作される。入力信号Viは、スイッチ部101aのスイッチS1がオンしている間にキャパシタ102aによってサンプリングされる。スイッチ部101bのスイッチS2のオンによってサンプリングされた電荷は差動増幅器の反転入力端子103aに転送される。
【0026】
また、実施形態2は、回路部310を備えている。回路部310は、スイッチ部101c、差動増幅器103、キャパシタ102bを備えている。さらに、回路部310は、2つのスイッチ部301、302を備え、スイッチ部301はスイッチS3、スイッチ部302はスイッチS4をそれぞれ含んでいる。スイッチS3、スイッチS4の間にはキャパシタ303が設けられている。
【0027】
転送された電荷は、キャパシタ102bにも転送され、キャパシタ102bにおいて積分される。積分された電荷に対応するアナログ出力信号Voが、出力端子106から出力される。
また、実施形態2においても、回路部310にはキャパシタ102cが設けられていて、アナログ信号出力回路がローパスフィルタを形成する。キャパシタ102cは、その片端子がスイッチS1とS2とによって出力端子106と差動増幅器の反転入力端子103aに交互に接続される。
【0028】
実施形態2のクロック制御回路308は、スイッチ部101a、101b、101cのスイッチS1及びS2と、スイッチ部301のスイッチS3と、スイッチ部302のスイッチS4と、に各々独立してクロック信号を出力する。クロック信号は、スイッチS1、スイッチS2が互いに同時にオンすることがないノンオーバーラップクロック信号である。また、スイッチS3、スイッチS4が互いに同時にオンすることがないノンオーバーラップクロック信号である。
【0029】
図4は、実施形態2において、ミュートが設定された場合のクロック制御回路の動作を説明するための図である。図中、上段から各々ミュートの設定タイミング、スイッチS1のオン、オフタイミング、スイッチS2のオン、オフタイミング、スイッチS3のオン、オフタイミング、スイッチS4のオン、オフタイミング、アナログ出力信号Voをそれぞれ示している。
【0030】
クロック制御回路308がスイッチは、ミュートが設定されたことにより、スイッチS1、スイッチS2へのクロック信号の出力を停止する。これにより、キャパシタ102cによるローパスフィルタとしての機能も停止する。差動増幅器103は、キャパシタ102bに保持された電荷に応じた直流電圧信号出力する。
また、図4に示したように、クロック制御回路308は、ミュートの開始時、スイッチ部301のスイッチS3とスイッチ部302のスイッチS4との対し、所定のパターンを有し、かつスイッチS3、スイッチS4が同時にオンにならないノンオーバーラップの同期信号を出力する。同期信号にしたがってオン、オフすることにより、スイッチS3、スイッチS4が、1回以上交互にオン、オフされる。
【0031】
スイッチS3とスイッチS4とが交互にオン、オフされることによって、スイッチS3、スイッチS4間に接続されているキャパシタ102bに保持されていた電荷の一部がキャパシタ303によって放出される。スイッチS3、S4が交互にオン、オフする周期を所定の期間よりも長く取ることにより、出力端子106から出力されるアナログ出力信号Voを、ゼロ信号を意味する信号動作点電圧へ所定の時間をかけて緩やかに収束させることができる。
【0032】
また、実施形態2においても、図4に示したように、スイッチS3、S4を所定のパターンでオン、オフさせた後、スイッチS3、S4をオン状態にして停止させる。スイッチS3の停止により、差動増幅器から異なるパスの信号が出力される、あるいはアナログ出力回路の動作状態に変更は生じないので、クリックノイズは発生しない。また、スイッチS3、S4がオン状態である場合、差動増幅器が安定なボルテージフォロア回路を構成する。
【0033】
このため、実施形態2は、スイッチS3、S4をオン状態に維持することにより、信号入力回路のスイッチのわずかな漏れ電流のために差動増幅器の出力が不確定となることはない。以上のように、実施形態2のアナログ信号出力回路によれば、通常の信号出力状態からミュート状態になった場合、緩やかに出力信号が変化し、クリックノイズの発生を抑えることができる。そして、最終的にはゼロ信号の信号動作点電圧を継続的に出力できる。
【0034】
なお図4では動作の様子が理解しやすいように簡略化して表現している。すなわち、スイッチS1とスイッチS2が交互にオン、オフを繰り返す区間ではアナログ信号出力は実際には階段状の波形となるが、本図2では図中に示されるスイッチS1とスイッチS2の周期よりはるかに早い周期でオン、オフを繰り返すことにより細かな階段状波形となり、アナログ出力波形が滑らかな変化として見える様子を示している。同様にスイッチS3とスイッチS4が交互にオン、オフを繰り返す区間ではアナログ信号出力は実際には階段状の波形となるが、本図4では図中に示されるスイッチS3とスイッチS4の周期よりはるかに早い周期でオン、オフを繰り返すことにより細かな階段状波形となり、アナログ出力波形が滑らかな変化として見える様子を示している。
【0035】
また、本発明の実施形態2は、以上述べた構成に限定されるものではない。すなわち、実施形態2では、ローパスフィルタを構成するスイッチS1、S2とキャパシタ102cと、ミュート開始に動作するスイッチS3、S4とキャパシタ303は異なるものとして説明した。しかし、スイッチS1、S2、キャパシタ102cとスイッチS3、S4、キャパシタ303を共通の構成とし、クロック制御回路から出力されるクロック信号によって実施形態2と同様に動作させることも可能である。
【0036】
また、キャパシタ303は意図的に形成されたキャパシタで良いし、スイッチの端子容量や配線に寄生する容量であってもよい。
さらに、実施形態2においても、スイッチS3、S4のオン期間とオフ期間との比を変更することにより、より緩やかな出力電圧変化を実現することができるようにもなる。具体的には、例えばミュート開始直後はオン期間とオフ期間との周期を短く、徐々に長くすることが考えられる。
【0037】
(変形例)
次に、以上説明した実施形態1、実施形態2のアナログ信号出力回路の変形例を説明する。
図5は、本発明の実施形態1のアナログ信号出力回路の変形例を説明するための図であって、実施形態1のアナログ信号出力回路を、全差動回路で実現した場合の回路を示している。また、図6、図7は、いずれも実施形態2のアナログ信号出力回路を、全差動回路で実現した場合の回路を示している。図5〜7において、図1、図3で説明した構成と同様の構成については同様の符号を付して示す。
なお、実施形態1、実施形態2及び変形例のいずれであっても、アナログ信号出力回路は、半導体集積回路上の回路として形成されることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上述べた本発明は、出力信号を停止する場合、出力信号を緩やかに変化させることが望まれる回路であればどのような構成にも適用することができる。特に、オーディオ機器に適用すれば、機器をミュート状態にした場合のクリックノイズの発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0039】
100 信号入力回路
101a、101b、101c、105、301、302 スイッチ部
102a、102b、102c、303 キャパシタ
103 差動増幅器
103a 反転入力端子
104 抵抗素子
106 出力端子
108、308 クロック制御回路
110、310 回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動増幅器と、当該差動増幅器の入力端子と出力端子との間に接続された第1容量素子と、を含む回路部を含むアナログ信号出力回路であって、
前記第1容量素子に並列に接続され、前記差動増幅器の前記出力端子からの出力を停止させる場合、前記第1容量素子に保持された電荷を所定の時間をかけて放出させる電荷放出回路と、
を備えることを特徴とするアナログ信号出力回路。
【請求項2】
前記電荷放出回路は、
第1スイッチ素子と、当該第1スイッチ素子に直列に接続された抵抗素子とを含み、
前記第1スイッチ素子に対し、前記第1スイッチ素子を1回以上オン、オフさせるための制御信号を出力し、前記第1スイッチ素子のオン、オフに応じて前記第1容量素子に保持された電荷を段階的に放出させる信号制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のアナログ信号出力回路。
【請求項3】
前記第1スイッチ素子を1回以上オン、オフさせるための制御信号は、前記第1スイッチ素子をオン、オフさせた後、前記第1スイッチ素子をオンさせた状態で停止させる信号であることを特徴とする請求項2に記載のアナログ信号出力回路。
【請求項4】
前記電荷放出回路は、
第2スイッチ素子と、当該第2スイッチ素子と直列に接続される第3スイッチ素子と、前記第2スイッチ素子、前記第3スイッチ素子の接続点に直列に接続される第2容量素子と、を含み、
前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子に対し、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子を交互に1回以上オン、オフさせるための制御信号を出力し、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子のオン、オフに応じて前記第1容量素子に保持された電荷を段階的に放出させる信号制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のアナログ信号出力回路。
【請求項5】
前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子を交互に1回以上オン、オフさせるための制御信号は、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子をオン、オフさせた後、前記第2スイッチ素子及び前記第3スイッチ素子をオンさせた状態で停止させる信号であることを特徴とする請求項4に記載のアナログ信号出力回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−233101(P2010−233101A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80339(P2009−80339)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】