説明

アノード用電気接点アウトレット

【課題】薄いフィルムポリマー電解質電池におけるリチウムフィルムアノードの横方向堆積に伴う問題を解決する。
【解決手段】電気接点アウトレットは少なくとも一つの多層電気化学セルを有する。アノードシートbの横方向端部はカソードq及び集電体eの対応端部を超えて延びており、突出領域を形成している。金属層はアノードシートbの横方向端部と電気的に接触しているが、セルの他の要素とは接触していない。この金属層は電池の外部電極をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも薄い電極フィルムの一つの多層体と巻回状または積層状のポリマー電解質とからなるリチウム電池において、アノードとして用いられる、リチウムシート上の側部電気接点についての装置及び方法に関する。本発明は、電池のプラスティック材料の近辺において薄いリチウムシート上にある接点出口を有する装置を提供するとともに、この装置を製造する方法をも提供する。本発明に係る側部接点出口装置は特に全ての固形ポリマー電解質電池に向いている。その理由は、本装置は抵抗が小さいことと、本装置はリチウム及びその合金の化学反応に適合するとともに、電池とその外部ケーシングとの間で効果的な熱交換を行うことができるからである。本装置の好ましい一実施態様においては、薄いリチウムシート上の電気接点はリチウムに直接に装着された適合可能な金属(好ましくは、銅、鉄、ニッケルまたはそれらの合金)から得られる。本装置の変形例は、リチウムシートの端部にコンパクトに堆積させたリチウムベース金属すなわち低溶融リチウム合金の中間金属層からつくられる。中間金属層と呼ばれるこの堆積層は、その他方の面において、不活性及び硬質金属との間における第二の電気的接触を可能にする。この金属はリチウムと適合し得る金属であり、リチウムまたはその合金が表面的にしか酸化しないおそれがあるにもかかわらず、電池のアノードと外部ケーシングとの間における相当量の電気的接触を維持することができる。
【0002】
銅などの金属をリチウムに直接に配設すれば、乾燥空気中における電池の使用を可能にし、さらに、電池とその外部ケーシングとの間の熱交換を促進させる。リチウムまたはその低溶融合金などの金属を用いて中間金属層を形成する変更例は、リチウムアノードにおける化学的反応の問題を解決し、自己溶接および堆積物の凝集を促進し、電池の熱および電気化学サイクルの間における接触ゾーンの歪みをもたらす。一方、低溶融点の充填金属は、電池の他方のプラスティック要素からの距離が小さい場合であっても、薄いリチウムフィルムの端部に容易に配設することができ、リチウムの支持フィルム、電解質および化合物カソードを絶縁する。本発明はいくつかの好適な実施例を含むとともに、リウチムに対して適合可能な金属層およびリチウムをベースとする中間層に対する導電性かつ結合性の金属堆積物を得るための手段をも提供する。本発明により得られた、リチウムとその合金との間における溶接の品質および硬質の適合性ある金属は、周囲の気体相によるリチウム表面の酸化からアノードの電気的接点を保護するのに十分である。本発明に係る装置の他の利点としては、電池のシートと電池の外部ケーシングとの間の熱交換を十分に行うことができるということがある。この利点は、電池自体とその外部ケーシングとの間の熱交換を促進するための液体電解質が存在しないようなポリマー電解質リチウム電池の安全のために特に重要である。
【背景技術】
【0003】
一次の充電可能なリチウム電池は、密度が濃く、軽いエネルギー源に対する要求の増大とともに、最近の数年間において、発展してきた。エネルギーの密度の濃さおよびリチウム電池の顕著な維持特性によって、リチウム電池は水性媒体中で作動する他のシステムよりも顕著な利点を有する。しかしながら、製造コストが高いこと、低温では電力が制限されることが多いこと、リチウムの使用に伴う安全性などの点から、リチウム電池の使用は依然として小型電池や特殊な用途における使用にとどまっている。
【0004】
このような制限を取り払う一つの方法は、リチウム電池に現在用いられていく液体有機電解質を、ポリエステル合成体とリチウム塩からなるポリマー電解質の薄いフィルムで置き換えることである。よく知られていることであるが、プラスティックフィルムは、自動的な工程によって、数ミクロン単位の厚さの薄いフィルム状の、大きな表面を有するフィルムが短時間のうちに形成することが可能である。これらのフィルムは安く製造でき、薄いフィルム状の電池の表面をわずかに大きくするだけで、大きなサイズで高出力の電池を製造することができる。他方、有機性液体の代わりに非溶解性の固形ポリマーを用いた固形状電池はより安全なシステムである。その理由は、例えば、突発的に空気または水に触れたような場合、化学反応物相互間の反応速度を制限することができるからである。このような固形状電池に用いることができるポリマーは米国特許第4,303,748号、同第4,578,326号及び同第4,357,401号に記載されており、このようなポリマーを用いる方法は米国特許第4,897,917号、同第4,824,746号及びフランス特許第8708539号に記載されている。
【0005】
しかしながら、ポリマー電解質を用いた場合にリチウム電池の活性表面を増大させると、アノードおよびカソードの電流集電体に対する等価表面を大きくするという問題が生じる。この問題に対する実用的な解決策は、例えば、カソードの場合にはアルミニウムを用い、アノードの場合には電流集電体としてリチウムシートそれ自体を用いることなどがある。この方法は、例えば、AA,CまたはDフォーマットのコイル状有機性液体電解質電池に用いられる。この場合には、アノードは約130ミクロンの厚さを有するフィルム状リチウムからなる。この厚さでは、リチウムは組み立て装置によって自由に処理できる程度の抵抗を有しており、アノードからの電流の収集がリチウムシートの端部を介して、あるいは、必要ある場合には、集電体内部の抵抗降下を減少させるために、一定間隔でリチウムフィルムに固定されている横方向金属トングによって確実に行われる。この解決策は、薄い組立体を用い、リチウムの厚さが40〜1ミクロンであることを必要とするポリマー電解質電池に用いられる技術に適するように置き換えることは困難である。これらの厚さにおいては、リチウムフィルムは機械的に不安定であり、組み立て装置を用いて処理できるように支持しておくことが必要である(例えば、米国特許第4,824,746号および同第4,897,917号)。他方、コイル状電池の場合には、薄い金属リチウムの導電性を制限することにより、コイル端部に蓄えられた電流の集合を防止することができる。ドレインすべき長さが大きく、それによって、集電体中の大きな抵抗降下がもたらされるからである。この制限は、フィルムの薄さと、極薄フィルムに基づく技術において用いられる長さとによるものであるが、このため、収集すべき距離を小さくするためコイル状装置の横方向の堆積が必要となる。このことは、積層状かつ非連続の薄い電池によりつくられた電池の場合、あるいは、抵抗降下を減少させるためにジグザグに取り付けられた電池の場合には当てはまる。横方向の堆積を確実に行うための公知の方法は、ドレインすべき長さを小さくするために、コイル状アノードまたはカソードの一定間隔毎に横方向導電性トングを用いることである。
【0006】
しかしながら、この可能性は極めて薄いフィルムに対してはほとんど適しない(局部的な厚みとトングの機械的特性の低さ)。他の可能性としては、薄い不活性金属集電体上にリチウムのアノードを積層させ、公知の溶接方法により、不活性コクレター上に横方向堆積を可能にするものがある。しかしながら、このようにアノードに対して新たに金属集電体を加えることは重量とコストの点で極めて不利である。例えば、リチウムに適合可能であるニッケルまたは銅シートのコストは必要な厚さ(例えば、5〜10ミクロン)に対して1平方フィート当たり約1ドルである。
【0007】
横方向集電体を粉状にした金属プラスティックをコイル状フィルムの端部に有する極薄キャパシターの製造は、ポリマー電解質をベースとするリチウム電池の組立技術の装置を必要とする。この種の電池は一般に二つの同一の絶縁プラスティックフィルム(約3〜30ミクロンのポリプロピレンまたはポリエステル)からなっている。これらのフィルムは一つの金属化横方向バンド以外は一方の面が金属化され、わずかにオフセットさせて同心に巻かれており、二つの各フィルムの金属化端部上に施された金属堆積によって、他端に各フィルムを集積することができるようになっている。これらの装置において用いられる電気接点は、一般に、有機性バインダーを含む導電性ペーストか、あるいは、粉状化(亜鉛およびアルミニウムの場合には火炎スプレーまたは電気アーク)により得られる堆積物の形状をなす亜鉛、アルミニウムまたは銀をベースとしている。後者のタイプの接点は、キャパシターの業界では知られているものであるが、公開番号0073555の欧州特許出願または公開番号2,589,620のフランス特許出願に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実験から判明したことは、これらのタイプの組立体及び横方向接点は、コンパクトで、速度も早く、経済的であり、不活性金属の集電体を用いる場合、例えば、カソードに対する集電体がアルミニウムである場合にはポリマー電解質電池に採用することができるということである。現在まで、これらの方法は、薄いリチウムフィルムからなるリチウムアノードの堆積に直接に置き換えることは容易ではないと考えられる。その理由は次の通りである。
(1)キャパシターに用いられる火炎スプレーによる亜鉛の粉状化は、燃焼に伴う水の発生のため、リチウム電池に対して適当でないこと。
(2)エポキシ系の有機性バインダーをベースとする銀または亜鉛粉末の化合物は、リチウムの存在下では、特に高温の場合には、化学的に不安定であること。
【0009】
(3)リチウムの化学的反応によって、キャパシターの製造時に電気アークによって粉状化を行うために用いられる亜鉛、アルミニウム及びそれらの合金などの既知の金属を使用できないこと。実際には、実験的に判明したところでは、これらの金属はリチウムと自然に反応し、固くもろい中間金属化合物を生成する。この化合物は、抵抗が小さく、信頼性ある電気接点の生成を妨げる。
(4)ニッケル、鉄、銅、モリブデンなどのリチウムと適合可能な金属は高い溶融点を有しているため、これらの金属はリチウムフィルムやプラスティック材料の多層組立体上に蒸気化により直接に塗布することができない。例えば、出願人は市販されているプラズマ粉状化(プラズマスプレー)装置に対して、コーティング金属としてニッケルまたは銅の粉末を用いて、Medco deviceModel MBNで試験を行った。この試験結果によれば、金属が高温不活性ガスとともにコイル状電池のアノードの横方向境界部分に射出されたときに、電池のPP絶縁材料とポリマー電解質からなるプラスティックフィルムの熱降下が生じている。これらの同じ金属による電気アークを用いた粉状化の技術は、電池の他のプラスティック要素に対する熱的な衝撃を伴うことから、同様な問題を伴うものであることがわかる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、薄いフィルムポリマー電解質電池におけるリチウムフィルムアノードの横方向堆積に伴う問題を解決することを目的とする。本発明に係る装置は抵抗が小さく化学的にも安定でコンパクトな横方向接点を極めて薄いリチウムシートのアノード上に形成するものである。また、本発明に係る方法はこれらの接点を短時間で形成し、信頼性に富み、経済的な極めて薄いポリマー電解質電池の製造を促進する。本発明の他の利点は以下の記述から明らかになる。
【0011】
本発明は、薄い電気化学装置(一つのセル当たり150ミクロン以下)のアノードとして使用される薄いリチウムシート上に形成する横方向電気接点に関するものである。円筒状に巻かれた形状の、あるいは、平らな、あるいは、一つまたは二つ以上の薄い電池を積層した形状の相当な長さのフィルムが用いられる。
【0012】
本発明に係る好適な装置は、ポリマー電解質電池において集電体として用いられるアノードシートの横方向突起上に設けられた電気接点を有している。これらの接点は、一つまたは二つ以上の導電性金属層を、表面上及び/又はアノードシートのエッジの側部上に形成することにより得られ、これによって、アノード組立体の電気的堆積が促進され、さらに、電池の核と外部ケーシングとの間の熱交換が促進される。
【0013】
以下、図面に示した実施例を参照して本発明の特徴及び利点を明らかにする。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は電池の積層状シートの断面図である。リチウムのアノードの横方向突起部分には接点が形成される。
【図2】図2は中間層の概略図である。この中間層上には電気接点を形成する第二の金属が配設されている。
【図3】図3は、リチウムフィルム相互間においてリチウムフィルムの端部を自己溶接することによりつくられた中間層の概略図である。この中間層上には電気接点を形成する第二の金属が配設されている。
【図4】図4は、リチウムと適合可能な金属の粉状化層をアノードのリチウムシートの端部に緊密に接触させて配設した状態を示す概略図である。
【図5】図5はカソードにおける接点の概略図である。
【図6】円筒形に巻かれた形状の、本発明に係る電池の概略図である。
【図7】積層体を平らなマンドレルに巻き付けて得られた、本発明に係る電池の概略図である。
【図8】複数の層を相互に積層させ、それらの端部で集積させた平らな電池の斜視図である。
【図9】溶融リチウムを粉状化する装置の概略図である。
【図10】本発明に係る電気化学的セルのフィルムの各位置を示す実験装置の断面図である。
【図11】図10の一部を拡大した拡大図である。
【図12】図10に示した5枚のフィルムを巻いた状態の断面図である。
【図13】本発明に係るポリマー電解質電池の概略図で、使用される各フィルムの相対位置を表している。
【図14】図13の変形例である。
【図15】本発明に係る電池の概略的な断面図であり、接点装置を表している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図8には本発明の好適な装置が示されている。図1は本電池の積層状シートの断面図で、リチウムアノードの横方向突起部分には位置xにおいて接点が形成される。図1においては、yは第二の横方向接点の形成を可能にするカソードの集電体の突起部分を表している。この突起部分はコンパクトであり、不活性集電体上に直接に配設された電気キャパシター、銀の導電性ペースト、亜鉛及びアルミニウムの粉末、溶接したスズなどに関して用いられる既知の技術を用いて得られるものである。
【0016】
図2,図3,図4は不活性集電体が設けられていないリチウムのアノードシートの堆積のために用いられる横方向接点の三つの好適な実施例を表している。図示した層を構成するのに用いられる材料は以下の記述において特定され、例も示される。さらに、最適な電気的かつ熱的な接点の形成を可能にする熱的、電気的かつ機械的な方法も同様に示される。本発明の装置を形成するための好適な方法は横方向接点の金属層のうちの少なくとも一つを粉状化する過程を含んでいる。粉状化により得られる層の利点は、コンパクトに堆積を形成し、接点の嵩を減らすこと、接点領域を機械的に損傷するおそれなく基質の表面周囲に追従できること、熱交換表面を最適にすること、電池の横方向接点表面全体の表面堆積を最適にすることなどである。
【0017】
図6,7,8は本発明の装置が用いられる電池の三つの好適な実施例である。図6は中心核lを有する円筒形巻回装置を表している。この装置の上端にはアノード用の堆積装置mが設けられており、この装置mは図2,図3,図4の何れかに示した実施例からできている。装置mの下端には、例えば、図5に示したような横方向堆積用の装置nが設けられている。図5において、kはカソードの不活性集電体に接触している金属である。図7は、少なくとも一つの積層された要素(図1に示したもの)を平らなマンドレルoに巻き付けたことにより得られる平らな電池を表している。この電池の端部にも装置m,nが設けられている。図8は一つまたは二つ以上の積層された要素(図1に示したもの)のみからなる平らな電池を示している。各要素はジグザグ状に積まれ、あるいは、折り曲げられ、さらに、端部には装置m,nが設けられている。
【0018】
本発明の第一の好適な実施例は図1及び図2に示されている。この装置はリチウムまたはその合金からなる、新たに加えられた中間金属層gを備えている。この中間金属層gを備えることによって、アノードのシートbの突起部分xに低溶融点の金属を溶接することにより、電池の他のプラスティック要素に生じる熱的ショックを減少させることが可能になる。この層は電池の積層リチウムシートの横方向端部に形成され、必要がある場合には、エッジにも形成される。この中間金属層は、約1mmの比較的密度が大きく、導電性かつ凝集性の層gを形成し得るような条件の下で堆積される。この層gは相互の層の間において種々のアノードシートbを緊密に溶接し、かつ、機械的に強化し、各シートの表面の酸化による電気的接触の低下を防止する。この中間金属層を形成する好適な方法は、低い溶融点を有するリチウムまたはその合金の小滴を粉状化するなどの方法によって、不活性雰囲気の下でリチウムシートのエッジを液体状のリチウムまたはその溶融点に近い温度のリチウムに接触させる過程を含んでいる。このようにして形成された中間金属層gは、第二中間層のリチウムと適合し得るように選択された第二のより硬質な金属fの形成を容易にし、さらに、電池の核と電池の外部ケーシングとの間の電気及び熱交換を容易にする。この非限定的な例においては、電池はリチウムシートの他にポリプロピレンの絶縁フィルムを有している。この絶縁フィルムは、リチウムシートa、電池の電解質c、カソードf及び集電体eに対して接着性を有するものであってもよいし、なくてもよい。これらのフィルムは相互に対して数mmだけオフセットされている。これらのオフセットはフィルムの真の厚さ(これらは1〜40ミクロンの単位である)に対して非常に重要である。図1乃至図8では、理解を容易にするため、フィルムの厚さは拡大してある。
【0019】
リチウムまたはその低溶融点合金などの金属を、薄いアノードシートとの接点として作用する中間金属として用いることにより、次のような利点を生じる。
(1)リチウムシートに対する新たに用いる金属の化学的適合性の問題を解決する。
(2)緊密な電気的かつ熱的接触(リチウムは溶融及び/又は機械的圧力により容易に溶接できる)を可能にし、アノードの横方向端部を強化する。
(3)充電/放電の熱的または電気化学的サイクルにおいて接触領域の歪みを可能にする(リチウムおよびその合金のうちのいくつかは可鍛的である)。
(4)リチウムおよびその合金のいくつかの溶融点が低いため(リチウムの溶融点は摂氏180度)、電池の各種プラスティックフィルムの近辺であっても、それらを薄いリチウムシート上に配設することが容易である。
(5)リチウムは凝集性が大きく、密度の濃い堆積を形成し得るので、電池内に存在し得る不純物による酸化からシートの接触領域を防護することが可能である。
【0020】
中間金属層gを形成するためのリチウムその他の金属の配設の方法は、しかしながら、大きな問題を伴う。すなわち、リチウムを酸化させることなく、かつ、リチウムシートに隣接するプラスティック要素を溶解させることなく、リチウムまたはその合金を溶融点に近い温度まで加熱する必要があることである。この問題を解決するための好適な方法は、例えば、不活性雰囲気の下で、シートを新たに付加する金属に溶接し得る温度にある液体状または半液体状のリチウムを機械的に粉状化を行うか、あるいは、電気アークにより粉状化を行うことである。粉状化方法の変形例も可能である。例えば、中間層を低溶融点を有するリチウム合金から生成することである。リチウムベースの合金の成分はLi−Ca,Li−SrおよびLi−Na,Li−Mgなどの二成分系から選択することができる(ただし、これに限定されるものではない)。これらの二成分系はMcGraw−Hill Book Companyが出版しているEd.Max Hansenの「Constitution of Binary Alloys」に記載されているものである。あるいは、リチウムが多く含まれており、摂氏350度以下の温度においてほぼ液体であるような上記の要素を含む一層複雑な系から選択することもできる。
【0021】
図9は機械的な方法を用いて溶融リチウムを粉状化する装置を示している。この機械的な方法は高温の不活性ガスのジェットを用いて、特定状態、すなわち液体または半液体状態のリチウムの小滴を飛び出させ、それによって、リチウムシートのエッジに高品質の電気接触を生成するものである。図9において、aは溶融状態のリチウムまたはその合金mを入れてある容器、bは容器aに対する非浸透性のカバー、cは容器aおよび高温不活性ガスの入口gを加熱する加熱要素、dは内径が約0.4mmの毛細管、eは粉状化ノズル、fは高温ガスの循環のための外部管である。この装置では、パイプkから導入された加圧不活性ガスの作用でリチウムを毛細管dの内部で上昇させ、液体または半液体状の粒子のジェットを生成することにより、溶融金属のジェットlが得られる。このジェットlは粉状化ノズルeの内部を循環する高温不活性ガスにより運ばれる。防護シースhもパイプiから入ってくる冷たい不活性ガスを流し、位置jで拡散させ、酸素または乾燥空気の存在下で本装置を使用することを可能にしている。
【0022】
この機械的方法の変形例を用いて中間層を形成することもできる。例えば、アノードシートに対して液体リチウムの小滴を飛び出させる不活性ガスを用いて、二つのリチウムロッドから供給される電気アーク内の溶融リチウムを粉状化させる方法がある。この方法は亜鉛またはアルミニウムの電気アークを用いるものであるが、リチウムまたはリチウムを多く含む合金のロッドを直接用いて電気アークを発生させるものである。これらのロッドは電気アークの近辺において直接的に押し出されることが好ましい。
【0023】
中間金属層を生成する別の方法に基づく第二の好適な装置が図3に示されている。この方法は、アノードフィルムを製造するとき、および、電池を製造するときに、自由リチウムの突起部分xが好ましくは0.2〜1.0cmの範囲にあり、組立後における、アノードシートの突起部分から形成されている中間金属層iの生成を可能にしている。この中間導電性層iはフィルム端部を圧縮し、相互に溶接して形成することが好ましい。この中間層を、リチウムの表面を酸化させることなく、本来の場所に形成する一つの方法は、超音波または溶接の方法を用いて、リチウムの機械的圧縮または局部的な溶接により、フィルム端部を相互に溶接する過程を有している。
【0024】
図2及び図3に示した二つの装置においては、リチウムまたはその合金からなる中間層の製造に基づいて、硬質で、かつ、リチウムと適合可能な金属からなる第二導電性層f,hを配設することが必要である。この第二の金属層は必須のもので、中間層のリチウムに緊密に溶接して、リチウムまたはその合金の表面酸化が生じてもアノードと電池の外部ケーシングとの間の電気接触の特性を維持することが必要である。リチウムベースの中間金属層上に第二の層f,h(好ましくは、ニッケル、銅、鉄、モリブデン、チタニウムまたはそれらの合金)を配設することは、多層アノード/中間層組立体の機械的特性の増加によって、さらに、金属層g,iがこの第二の金属の挿入に起因して生じる熱的または機械的衝撃から電池のプラスティック要素を分離し、保護するという事実によって、容易に行われる。このことは、例えば、超音波処理、溶融またはスポット溶接を用いてプラズマまたは電気アークにより、あるいは、もっと容易に機械的、熱的または電気的方法により、粉状化の方法を用いて金属f,hを配設するときに起こる。これらの過程を用いて、第二の金属f,hを中間層gの金属に固定し、かつ、緊密に溶接し、電池の外部シースを通して電流及び熱の通過を可能にする完全な横方向電流集電体を生成できるようにしている。
【0025】
一般的には、リチウムと適合し得る硬質金属の第二層からリチウムシートを分離する中間金属層を設けることにより得られる利点は、リチウムシートを相互に統合することと、電池の他のプラスティック要素を熱的または機械的ショックから防護することである。この改良点により、熱降下と、外部接触の結果として生じる偶発的な短絡とを防止するのに必要な電極の横方向突出部分の幅を短くすることができる。
【0026】
電気化学電池のリチウムアノード上の横方向接点装置の第三の好適な実施例が図4に示されている。この装置はポリマー電解質電池に対して特に適合する。この装置は、リチウムと適合可能な金属(より詳細には、銅、ニッケル、鉄またはそれらの合金)の粉状化層jをリチウムシートの端部またはアノードに接触させた状態で直接に生成させることにより得られる。この装置の利点は、特に、金属がアルミニウムシートに直接に接触し、金属が銅ベースである場合に、横方向導電性層ゾーンの導電性および伝熱性の双方を最適にすることである。本出願人はこれらの装置は電気アークの下で粉状化を行うことにより得ることができることを証明し、さらに、粉状化した金属は摂氏1000度以上の極めて高い溶融点を有するという事実にもかかわらず、プラスティック要素に対して熱的損失を与えることなく、薄いリチウムシート上に高品質の電気接点を生成し得ることを実験により確立した。リチウムに対して接着性を有する導電性金属層の製造は、1.6mm直径の二つの銅ワイヤー(この二つの銅ワイヤーは電気アークと同じ高さにおいて供給される圧縮空気のジェットによって連続的に供給される)の間において電気アークを行い、粉状化させることによりなされる。電気アークに用いられる電力は1〜3kwである。選択された装置を用いた実験条件下では電池には何らの熱的損失または短絡も生じなかった。従って、リチウムと適合可能なこれらの金属を電気アークの下で粉状化する方法は、図4に示した不活性集電体フィルムを用いることなく、短時間に、安全に、かつ、経済的にリチウムのアノードの接点装置を生成させることができる。特に、電気アークの下でリチウム上に銅を粉状化させることは不活性雰囲気の下でと同様に乾燥空気の下でも実行することができ、加えて、反応性リチウムの塵を生じない。さらに、金属接点として銅を用いれば電池とその外部ケーシングとの間における最適な熱交換容量を確保することができる。
【0027】
図10,図11,図12は、リチウムシート上に生成した横方向電気接点の品質を示すために用いた実験装置である。図12に概略的に示した対称形の巻回構造は直径1.3cmのプラスティック核の回りに次のフィルムを組み合わせたものを同心に巻きつけてなる。
a:厚さ28ミクロン、幅12.1cmの2倍に伸長させた三つのポリエチレンフィルム。
b:厚さ20ミクロン、幅11.4cmのアルミニウムのフィルム。
c:厚さ35ミクロン、幅12.7cmのリチウムのフィルム。
【0028】
これら5個のフィルムの各位置は図10に示されている。リチウムフィルムは同じ高さに配置されている三つのプロピレンフィルムよりも3.2mmだけ長く、一方、アルミニウムフィルムは三つのプロピレンフィルムよりも3.2mmだけ短い。図10は各フィルムとそれらの位置を示すものであるが、フィルムの突起部分の幅とフィルムの厚さとの間の比率を示すことはできないものである。フィルムの厚さについては、厚さを約100倍に拡大した拡大図(図11)で示し、各フィルムの区別がつくようにしてある。円形拡大図の図11においては、前記比率は10まで小さくしてあるが、リチウムフィルムの突出部分がアルミニウムフィルムとの短絡を生じることなく粉状化金属と接触することができる理由は十分に理解できるはずである。アルミニウムフィルムは長さeだけ短くなっており、さらに、アルミニウムフィルム自体の幅に対応する幅を有する開口dを介してのみ接近可能である。図12の装置は、1.5mmのプラスティックマンドレルf上に、図10に示した5個のフィルムからつくった4mの多層体を巻き付けたものである。図12は概略的なもので、いくつかの接点出口の横方向巻きg,g′を図示するにすぎない。以下の例において各種接点装置が示される。リチウムと横方向集電体との間の接触抵抗の測定は4点方法を用いて行われる。10アンペアの電流をポイントP1とP4との間で循環させ、中間ポイントP2,P3は局部接触抵抗を測定するためのプローブとして用いられる。アルミニウムフィルムbはhにおいて電気的に接近可能であり、本発明によりつくられた各種横方向接点の配設の結果として生じる短絡の可能性を検出する。同心に巻いたフィルム組立体の相対的な厚さは、フィルムと、以下の例に述べるような電池の横方向突出部分との間のすきまに近い値になるように設定される。
【0029】
図13乃至図15はポリマー電解質電池の詳細を表している。この電池は、図2乃至図5に示したアノードの自由アルミニウムシートに対する接点装置の何れかを用いて各種要素を巻くことによりつくられたものである。用いられたフィルムの相対位置は図13に示されている。図14はこの実施例の変形例を概略的に示しており、この変形例においては、金属集電体を加えていないリチウムが接着性ポリプロピレンのフィルム上に支持され、ある取り付けモードを容易にしている。電池をつくるために用いられたフィルム及びアノードの横方向堆積のために必要な横方向突出部分を得るための方法は図13乃至図15に示されている。同図の各符号が表す部材は以下の通りである。
a:厚さ20ミクロンのポリプロピレンの絶縁フィルム
b:厚さ35ミクロンの遊離リチウムのシート。このシートは上端において横方向に突出しており、カソード及びそのアルミニウムシートよりも約6.3m長い。
【0030】
c:厚さ30ミクロンのポリマー電解質。上端においてカソードの集電体を通り越して横方向に突出し、2.2mm長くなっており、電池の他端においてはリチウムシートよりも長くなっている。
d:バナジウム酸化物をベースとする厚さ45ミクロンのカソードフィルム。アルミニウム集電体よりも横方向において短い。
e:カソードに対する厚さ18ミクロンのアルミニウム集電体。下端において横方向に突出しており、リチウムシートよりも約6.3mm長くなっている。
f:高溶融点を有する第二の硬質金属。化学的にリチウムと適合可能であり、優れた導電性及び伝熱性を有するため電池外部に対して熱交換を行うことが可能である。
【0031】
g:電池のプラスティック核または内部マンドレル。内径は約1.3cmである。
h:アルミニウム集電体の突出部分に配設されたカソードの横方向接点装置。
j:リチウムをベースとする中間金属相。リチウムシート及び第二金属fと緊密に接触している。
【0032】
詳細に述べると、図15の電池に示されているアノードの接点装置は、図9の粉状化装置により得られた図2の装置である。ただし、要素f,jは図3及び図4の装置でつくられた接点装置をも表すものである。後者の場合、要素fは除かれ、要素jはリチウムと適合可能であり、かつ、硬質の金属のみからなる。この金属はアーク粉状化により得たものであることが好ましい。
【0033】
カソードの横方向突出部分および横方向接点を得る方法を非限定的な例で示す。この電極に対しては多くの他の技術的解決策を施すことが可能である。例えば、アルミニウム集電体のシートの溶接、銀をベースとする導電性ペーストの配設、亜鉛またはアルミニウムの粉状化などである。
【0034】
以下に示す例1乃至3は本発明に係る接点装置とそれらをつくる方法とを示すものである。これらの例は、図10〜図12に示した対称形巻き装置の二つの端部のリチウムシートの突出部分上において行われたものである。これらの装置の利点は、リチウムシートとその横方向堆積装置との間の接触抵抗を測定することができる点にある。使用されるロールの寸法は以下の通りである。幅13.6cm、内部プラスティック核gの直径1.3cm、巻きの外径3.0cm。用いたフィルムの長さは4mであった。局部的抵抗値は、局部的接触抵抗を測定し得る図12に示した4点測定装置を用いて得られる。このようにして、リチウムシートと横方向接点装置との間の電気接触抵抗が測定された。接点の品質を評価し、かつ、比較するため3種の異なる試験を行った。
【0035】
1)横方向集電体を取り付けた後における接触抵抗の測定
2−摂氏60度の温度において数日間にわたって時間の関数として上記抵抗の修正。すなわち、ショック及び熱のサイクルの結果としての集電体の安定性。
3)摂氏60度においてリチウム及びその合金を気体相により酸化した後における抵抗の測定。この試験は図10〜図12の巻き装置を、約500mlの空気を含む密閉容器内に入れた状態で行われる。この結果、ガス相に接触し得るリチウムの表面に酸化を生じさせることができる。リチウムのアノードの横方向集電体はリチウムと適合可能な、かつ、非酸化性で非反応性の界面リチウムすなわちリチウム合金/金属を含んでいることが必要である。さらに、それらの間の溶接は表面の酸化に対して十分に抵抗となり得るものであることが必要である。
【0036】
例4〜7は電池上に取り付けた接点装置を示し、それらの全体的な性能の分析を介して接点の品質を確認するものである。これらの例は数種類の接点装置および電池を示すものである。
【0037】
〔例1〕
第1の例は、図2の接点装置から図12の対称形巻き装置を形成する方法を示している。
【0038】
図2の装置をつくるため、図9に示したような溶融リチウムの粉状化装置を用いる。この粉状化装置を用いる際の条件は次の通りである。溶融リチウム槽の温度は摂氏250度、ヘリウムジェットの温度及び流量は各々摂氏250度及び150リットル/分、溶融リチウム槽上の圧力は30ポンド/平方インチ。溶融リチウムのジェットは、35ミクロンのリチウムフィルムの突出部を有する図12の巻き装置の端部に向かって射出される。図2の中間導電槽gに対応する堆積は約5秒間の3回の通過の間に形成され、1mmの均一な厚さを有する。この中間槽の外側表面上にはニッケルシートと、図2に示したリチウムと適合可能な第二硬質金属fとが配設される。第二硬質金属fはニッケルと接触させた状態でリチウムの局部溶融により結合される。二つの堆積槽g,fの結合に対応する接触抵抗は極めて良好で、堆積させるシートのスライス表面の0.02ミリオーム以下である。これらの接触抵抗は、外部集電体と横方向集電体g,g′(図12)との間の抵抗(例えば、接点が単なる機械的接点であるような場合)よりも小さい。摂氏60度の温度で7日間放置した後、かつ、摂氏60度の温度で7日間ガス相と接触していたリチウム表面の酸化の後であっても大きな変化はなかった。さらに、図12のアルミニウムhと、このようにしてつくられた横方向集電体との間において短絡は認められなかった。除去した後、粉状化リチウムの堆積物の機械的特性の試験を行い、中間金属層の凝集性及びリチウムシートに対する接着性を確認した。フィルムを巻き解くことにより、突出したリチウムとの結合領域の外側でリチウムシートの引張が生じた。他方、フィルムの除去後における試験では、溶融リチウムが突出しているリチウムの付近においてプロピレンフィルムの顕著な変質はなかった。ただし、空気汚染の試験の後においては、中間領域のリチウムはグレーとなり、表面が酸化していた。この試験において観察された抵抗の低さは、シート、中間領域の粒子及び第二導電層の金属の間の結合が十分に混合し、リチウムまたはその合金の表面酸化に対する抵抗となっていることを示すものである。
【0039】
図9の装置において、リチウムとカルシウム10%の合金を用いて平衡試験を行い、等価抵抗の状態にさせ、図9のリチウムmの槽の温度を下げ、さらに、電池の短絡または熱的ショックのおそれを軽減させることができた。
【0040】
さらに、二つの他の試験を行った。一方では高純度の銀をベースとするエポキシを、他方では亜鉛を、電気アークにより、中間表面のリチウム上に射出させ、堆積させるリチウムシートの横方向スライス表面(すなわち、1.4平方cm=35ミクロン×400cm)に対して0.08ミリオームの小さい初期抵抗を与えた。この初期抵抗は、数日にわたる高温下での放置の後、かつ、空気汚染の試験の後に3ミリオームに増大した。これらの試験が示すことは、電気キャパシターに対してこれまで用いられてきた解決策は電池のリチウムアノードの横方向堆積に対しては適用できないということである。
【0041】
〔例2〕
この例は、図3の装置と、図12の巻き装置で図3の装置を形成する方法とに関するものである。
【0042】
この種の横方向堆積装置においては、図3のリチウムの中間導電領域iは、リチウムのエッジを3mmの幅に圧縮し、それらを超音波プローブで接合させることにより、巻き装置を組み立てた後で得られる。このようにして得られた中間層の厚さは約1mmである。その後、銅シートをその中間層に配設し、不活性雰囲気の下で加熱プレートを用いてリチウムの局部溶融によって中間層に接合させる。これによって、図3の第二導電層hが形成される。
【0043】
これらの堆積装置の接触抵抗は良好で、堆積シートの横方向表面の面積1.4平方cm当たり約0.1ミリオームである。また、これらの装置は摂氏60度においてガス相による汚染試験の下でも良好な抵抗を有している。
【0044】
この試験の変形例では、最初に銅シートhを低溶融点で接着性のリチウム−カルシウム合金(カルシウム10%)にコーティングし、銅シートの中間層iに対する溶融及び局部接合を容易にする。機械的な接合により、このようにしてつくられる接点装置の質が向上させることができる。
【0045】
プラズマ粉状化装置内部で銅またはニッケルの粉末を用いて第二金属層h(図3)を形成する前述の試験と等価である試験によっても、等しく、時間的に安定な抵抗を得ることができる。
【0046】
リチウムと適合可能な不活性金属を中間導電層iに接合しない前述の試験と等価な試験を行った。スティールまたはニッケルなどの金属を層iに機械的に配設し、内部金属層と電池の外部ケーシングとの間の直接的な機械接点をシミュレートした。この接点の抵抗は最初は低く、約0.05〜0.10オームであった。ただし、この値は、接点が摂氏60度に加熱されるか、あるいは、汚染テストが行われると、すぐに上昇した。この試験は、不活性でリチウムと適合可能な硬質金属でアノードシートの天然堆積装置を仕上げることによって、ケーシングのない電池の外部電極における接点の安定性を確保する必要があることを示している。
【0047】
各方法において第二導電金属層hを配設したときに短絡が生じなかったということは、リチウムまたはその合金をベースとする第二中間導電層の利点、すなわち、図12の巻きの端部を機械的に凝集させるとともに、第二不活性金属hを配設することに起因する熱的ショックからプラスティック要素を保護することを表している。
【0048】
〔例3〕
この例は、図4の装置と、図12の巻き装置で図4の装置を形成する方法とに関するものである。
【0049】
単一層を含むこの装置は、約0.5mmの厚さの銅の層g(図1乃至8)を電気アークの下でリチウムシート(このシートは約3mm突出している)の端部に対して直接に粉状化することにより得られる。この種の簡単な装置の問題点は、摂氏約1080度で溶融する金属を摂氏180度で溶融する薄い金属の上に緊密に溶接することと、その際に薄い金属の付近(3mm)に位置している図10の他のプラスティックフィルムaに損傷を与えないことである。この金属層を得るための条件は図10〜12の説明にある通りであり、巻き装置の仕様の条件ともなる。特に、突出部分e(図10〜12)の幅と間隔d(この間隔dによりフィルムが隔てられる。また、この間隔dは引っ込んで配置されたフィルムの厚さとして生じるものである)との比率の条件になる。電気アークの下での、例えば、銅の粉状化の間につくられた小滴の粒度分布も導電層を形成する際に重要な役割を果たす。フィルムの厚さとほぼ等しい大きさの粒子の大部分の存在および電気アークの中に噴射される圧縮空気のジェットの形状を調節することにより得られるカソードの存在によって、このようにして形成された接点の信頼性が増す。すなわち、図11に示すように導電性フィルムの一つが引っ込められている領域の内部における過剰な細かい粉末の蓄積の結果として生じる偶発的な短絡のおそれを減らすことができる。上述した条件によりつくられた装置の接点の抵抗は極めて低い接触抵抗であり、摂氏60度において、あるいは、汚染試験の間に優れた性質を示す。得られた値のうちの典型的な値は集電体の横方向表面の面積1平方cm当たり0.01〜0.02ミリオームである。
【0050】
除去の後、あるいは、空気中における汚染の試験の後であっても、銅層の良好な結合性、および、リチウムと銅層(この銅層は粉状化により固められたものである)との間の強い接着性が確認された。
【0051】
この単一層装置の利点は、その簡単さと、例えば銅などの使用材料の性質とによって、伝熱性(伝熱性は電池の作動時の発熱及びその安全性のために必要とされるものである)のみならず堆積層の導電性をも最大限にまで最適化することである。他方、電気アークの下で得られる急速溶融と、リチウムに対して粒子を放出する冷却ガスのジェットとを組み合わせることにより、図4の装置をつくるときにこの方法は特に有利になる。
【0052】
空気中で導電性堆積層jを形成するための材料として銅の代わりに鉄を用いた試験では、結合性が小さく、抵抗が大きい堆積物をつくった。ただし、不活性ガスを用いることにより、この方法および本方法によりつくられた接点の外観も改良された。等価な試験においてニッケルを用いると、電気アークの下で溶融金属を射出させるために空気を用いる場合でも、結合性および粘着性の大きい接点が得られた。
【0053】
〔例4〕
この例は、図2及び図3に概略的に示すように、アノードの接点アウトレット装置を、図15に示したようなポリマー電解質電池にどのようにして用いるかを示すものである。
【0054】
円筒巻き形状の電池の寸法は以下の通りである。プラスティック核の内径は1.3cm、電池の外径は3.3cm、巻きの幅は13.6cm、使用したフィルムの長さは4mである。この例において用いた基本セルは図13に示したものである。それは、高温で各種フィルムを連続的に移送/積層させることにより連続的に巻き付け、組み立てたものである。この最適化していない電池に与えられた容量は10.9Whであり、これは同じ材料を用いた実験室セル4平方cmの性能の推定をベースとした値である。
【0055】
アノードの接点は、図13のリチウムシートbのエッジ3mm幅を接触させ、超音波で接合させ、約1mmの厚さの中間層iを形成することにより、図3のようにつくられる。次いで、この中間層は、リチウム層iを表面的に溶融させることによって、銅シートを配設することに起因して生じる熱的及び機械的ショックから電池の他のフィルムを防護する。
【0056】
この例で用いられるカソードの横方向堆積装置は約0.5mmの亜鉛の薄い層を備えている。この層はカソードのアルミニウム集電体の突出部分上に直接に配設することにより得られる。図5はこの種の接点を示しており、同図でkは粉状化亜鉛からなる。
【0057】
アノード上の接点の質を正確に評価することは、摂氏60度の温度で作動するこのサイズの電池では非常に困難である。評価は放電中の電流の遮断を測定することにより行われる。10〜1時間の間に変化する放電に対応する0.4〜4アンペアの電流が用いられる。このような電流は電気自動車のバッテリーに適用するときに必要となる電流である。観察された抵抗全体の減少は約25ミリオームである。これらの値は、摂氏60度の温度で実験室でつくられたこの種のインピーダンス(約80オーム/平方cm)の測定から予測できる値(測定装置全体の他の接触抵抗は当然に差し引いてある)にほぼ対応するものである。これらの結果からわかることは、横方向に堆積させるリチウムシート(35ミクロン、4m)の1.4平方cmの部分に対して0.01ミリオームと測定された例2におけるアノードの横方向接点装置の抵抗は、10Whの巻き全体の活性表面を考慮に入れた電気化学システムの抵抗と比較して無視できるということである。
【0058】
アノードの接点装置の質をさらに評価するため種々の割合で電池を完全放電させた。観察された活性材料の使用頻度は測定の精度の範囲内で予想された値に対応するものであり、このことはアノードの全表面が横方向集電体により十分にドレインされていることを示すものである。放電電流が0.4〜4アンペアの範囲内における電池の使用頻度の変化は、さらに、バッテリーの電気化学特性から予想できる値に対応しており、このことは横方向接点の作動が良好であることを表すものである。抵抗低下の特性及び誘導抵抗体の使用の頻度の特性は、電池を一時的に摂氏60度の温度で48時間空気(500ml)に晒す試験の後のサイクルにおいて影響を受けなかった。このことは、アノードシートの横方向接点において用いられる接合の品質の高さを表すものである。
【0059】
〔例5〕
この例5は、例1と同様の方法でつくられた図2のアノードの接点アウトレット装置の中間領域を除いて、前述の例と同様である。電池の特性は例4と同じである。
【0060】
この例とこの例を図示した図15とは、この種の横方向接点アウトレットからできた大きな堆積表面がいかに熱交換を促進するものであるかを示している。横方向接点の性質、小さな厚さ及びその表面は、電池の核とその外部ケーシングとの間の熱伝達に大いに貢献している。特に、円筒形巻きがケーシング、すなわち、ケーシングの底部及び上部カバー(図示せず)に対して直接に配置されている場合である。
【0061】
〔例6〕
この例は図4の接点アウトレット装置を用いる。この装置においては、銅が図15の巻き(図13の積層からつくられている)のリチウムシートのエッジに対して電気アークの下で直接に粉状化されている。ただし、この装置では、銅堆積は図15の堆積jに対応し、シートfは取り除かれている。電池の特質は例4及び例5のそれと等しく、空気の下で約0.5mmの銅を堆積させるときの電池の僅かな発熱は、リチウムの薄いシートの横方向堆積装置をつくるときの本方法の利点を表すものである。
【0062】
〔例7〕
この例は、図14に示したフィルムを用いて図15の巻き装置をつくる点を除いて前述の例と同様である。この例では、巻き装置をつくるために用いられた積層体は支持されたリチウムを有し、さらに、アノードの突出部分に達するまでプラスティックフィルムに接着している。堆積された銅の機械的及び電気的性質は、電気アークの下で粉状化を行う方法は、電池がプラスティック支持体と直接に接触している場合でも、電池のリチウム上に高溶融点(摂氏1000度)の金属を堆積させるために用いることができることを示している。
【符号の説明】
【0063】
a リチウムシート
b アノードシート
c 電解質
f カソード
e 集電体
g 中間金属層
h 第二導電性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状とされたリチウムアノードと、
シート状とされたカソードと、
前記リチウムアノードと前記カソードとの間に挟まれた、シート状とされたポリマー電解質と、
前記リチウムアノードとは反対側の面で前記カソードと貼り合わされ、全体として長方形のシート状とされたカソード集電体と、
前記リチウムアノード側の面又は前記カソード集電体側の面の少なくとも一方に設けられたシート状の絶縁フィルムと、を構成要素とする平面状の電気化学セルを含み、
前記電気化学セルの前記リチウムアノードと前記カソード集電体は、第1の側方部において前記リチウムアノードの突出部が形成され、前記第1の側方部とは反対側の第2の側方部において前記カソード集電体の突出部が形成されるように、互いにずらして貼り合わせてあり、
平面状の前記電気化学セルは、巻回又は積層により、前記第1の側方部において複数のリチウムアノードの突出部が形成されているとともに、前記第2の側方部において複数のカソード集電体の突出部が形成されており、
前記複数のリチウムアノードの突出部を機械的に固める中間金属層を有する、ことを特徴とするポリマー電解質リチウム電池。
【請求項2】
前記中間金属層は、ニッケル、銅、鉄、又はこれらの合金のいずれかからなる金属を溶融した液体又は半液体の液滴を射出して前記第1の側方部において複数のリチウムアノードの突出部に付着させて形成したものである、請求項1に記載のポリマー電解質リチウム電池。
【請求項3】
前記複数のリチウムアノードの突出部から離間して設けられた第2金属とをさらに含み、
前記中間金属層が、前記複数のリチウムアノードの突出部と第2金属とを電気的に接続する、請求項1に記載のポリマー電解質リチウム電池。
【請求項4】
さらに、カソード集電体と側方集電のための構造体との間に、金属が設けられた、請求項1又は2に記載のポリマー電解質リチウム電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−135340(P2010−135340A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25148(P2010−25148)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願2006−303161(P2006−303161)の分割
【原出願日】平成5年5月7日(1993.5.7)
【出願人】(309005766)バシウム・カナダ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】