説明

アブソリュートエンコーダ

アブソリュートエンコーダ1の回転軸2に取り付けられた回転板3に、所定の位置関係で第1の開口31、第2の開口32を形成し、回転板3の下面3aに対向するように2次元のプロファイルセンサ5を設置する。また、回転板3の開口31、32を挟んでプロファイルセンサ5の光感応領域と対向するように、光源41、42からなる光供給部4を設置する。そして、光源41、42から供給された測定光が回転板3の開口31、32を通過してプロファイルセンサ5で検出された第1検出位置P1、第2検出位置P2の相関によって、回転軸2の回転角の絶対値を算出する。これにより、回転軸の回転角の絶対値を簡単な構成で精度良く測定できるアブソリュートエンコーダが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の回転角の絶対値を測定するためのアブソリュートエンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工作機、FA機器、自動車の制御端(ステアリング)などの角度測定には、ロータリーエンコーダが用いられている。ロータリーエンコーダのうち、特に光学式のロータリーエンコーダの角度検出方式としては、インクリメンタル方式とアブソリュート方式とが広く知られている。アブソリュート方式のロータリーエンコーダ(以下、アブソリュートエンコーダという)は、一般的に高精度であり、誤差が蓄積しないといった利点を有している。
【0003】
アブソリュートエンコーダでは、一般に、スリットなどの光透過部が所定パターンで設けられた回転板を回転軸に取り付ける。そして、この回転板を挟んで光源と光検出器とを設置し、光源から供給されて回転板の光透過部を通過した光を光検出器で検出することによって回転軸の回転角の絶対値を測定する。
【0004】
従来のアブソリュートエンコーダとして、特許文献1、及び特許文献2に開示されたエンコーダが知られている。例えば、特許文献1に開示されたエンコーダでは、回転板に渦巻状のパターンからなるスリットを設け、この渦巻状スリットを通過した光を1次元のイメージセンサで検出することによって回転角を測定している。
【特許文献1】特表2000−514199号公報
【特許文献2】特開2002−39727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように渦巻状スリットを用いて回転角を測定する構成では、スリットパターンを正確に位置決めして回転板に形成するのが困難であり、したがって、回転角の測定精度を充分に向上することが難しいという問題がある。また、1次元のイメージセンサと回転板とのアライメントに高い精度が要求されるため、その構成及び製造工程が複雑化するとともにコスト高となる。
【0006】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、回転軸の回転角の絶対値を簡単な構成で精度良く測定できるアブソリュートエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明によるアブソリュートエンコーダは、(1)回転軸と、(2)回転軸に取り付けられ、第1の開口、及び第1の開口に対して所定の位置関係で形成された第2の開口を有する回転板と、(3)複数の画素が2次元配列された光感応領域を有し、回転板の一方の面に対向するように設けられるとともに、2次元配列における第1の方向及び第2の方向のそれぞれについて光強度プロファイルを得ることが可能な光検出装置と、(4)回転板の第1の開口及び第2の開口を挟んで光検出装置の光感応領域と対向するように設けられ、角度測定用の測定光を供給する光供給手段と、(5)回転板の第1の開口、及び第2の開口を通過した測定光がそれぞれ光検出装置の光感応領域で検出される第1検出位置、及び第2検出位置の相関によって回転軸の回転角の絶対値を算出する角度算出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記したアブソリュートエンコーダでは、回転板に形成された2個の開口を利用して回転角の絶対値を測定している。これら2個の開口は、その相対的な位置は回転板に対して固定であるが、絶対的な位置及び位置関係は回転軸及び回転板の回転に伴って変化する。そして、このような回転板の開口の絶対的な位置関係の変化は、回転板の回転角に対応したものとなる。したがって、これら2個の開口の位置関係の変化を測定光によって光学的に検出することにより、回転軸及び回転板の回転角の絶対値を測定することができる。
【0009】
また、2個の開口のそれぞれを通過した測定光の検出に、2次元配列における2つの方向についてのプロファイルセンサとして機能するように構成された光検出装置を用いている。これにより、上記した2個の開口の位置関係の変化を好適に精度良く検出することができる。そして、2個の開口が形成された回転板と、2次元の光検出装置とを用いることにより、回転軸の回転角の絶対値を簡単な構成で精度良く測定することが可能なアブソリュートエンコーダが実現される。
【0010】
ここで、光検出装置としては、それぞれ入射した光の強度に応じた電流を出力する複数の光感応部分を同一面内にて隣接して配設することで1画素が構成され、第1の方向に配列された複数の画素にわたって、当該各画素を構成する複数の光感応部分のうち一方の光感応部分同士が電気的に接続され、第2の方向に配列された複数の画素にわたって、当該各画素を構成する複数の光感応部分のうち他方の光感応部分同士が電気的に接続されている光検出装置を用いることが好ましい。
【0011】
このような光検出装置では、1つの画素に入射した光は画素を構成する複数の光感応部分のそれぞれにおいて検出される。そして、一方の光感応部分同士が第1の方向に配列された複数の画素にわたって電気的に接続されているので、一方の光感応部分からの電流出力は第1の方向に送られる。また、他方の光感応部分同士が第2の方向に配列された複数の画素にわたって電気的に接続されているので、他方の光感応部分からの電流出力は第2の方向に送られる。これにより、第1の方向での光強度プロファイルと、第2の方向での光強度プロファイルとをそれぞれ独立して得ることが可能な2次元のプロファイルセンサが構成される。この結果、1画素に複数の光感応部分を設けるという極めて簡単な構成によって、2個の開口のそれぞれを通過した測定光の2次元位置を高速に検出することができる。
【0012】
上記構成の光検出装置を用いた場合、エンコーダは、第1の方向に配列された複数の画素間において電気的に接続された一方の光感応部分群に対応して設けられ、一方の光感応部分群からの電流出力に所定の信号処理を行って電圧信号を出力する第1信号処理回路と、第2の方向に配列された複数の画素間において電気的に接続された他方の光感応部分群に対応して設けられ、他方の光感応部分群からの電流出力に所定の信号処理を行って電圧信号を出力する第2信号処理回路とを備え、角度算出手段は、第1信号処理回路及び第2信号処理回路から出力された電圧信号に基づいて回転軸の回転角の絶対値を算出することが好ましい。
【0013】
また、エンコーダは、角度算出手段が、第1検出位置、及び第2検出位置の相関と、回転軸の回転角の絶対値との対応関係を示す角度算出用テーブルを参照して回転軸の回転角の絶対値を算出することを特徴としても良い。このように、回転板の2個の開口の位置関係に相当する2つの検出位置の相関を、回転角の絶対値に対応付けたテーブル(ROMテーブル)をあらかじめ用意しておくことにより、光検出装置における測定光の検出結果からの回転角の算出を高速かつ精度良く行うことができる。
【0014】
また、光供給手段は、回転板の第1の開口を挟んで光検出装置の光感応領域と対向するように設けられた第1の光源と、第2の開口を挟んで光検出装置の光感応領域と対向するように設けられた第2の光源とを有することが好ましい。さらに、この場合、第1の光源及び第2の光源が、互いに異なる供給条件で測定光を供給することとすれば、第1の開口に対応する光検出装置での第1検出位置と、第2の開口に対応する第2検出位置とを容易に識別することが可能となる。あるいは、1個の光源や、光源と反射光学系との組合せなどによって光供給手段を構成しても良い。
【0015】
また、回転板の第2の開口は、回転軸から第1の開口へ向かう直線の延長上にある所定位置に形成されていることが好ましい。これにより、2個の開口の位置関係による回転角の絶対値の算出を好適に行うことができる。ただし、回転板での2個の開口の配置については、これ以外にも様々な構成を用いて良い。
【0016】
また、回転板は、第1の開口及び第2の開口に対して所定の位置関係で形成された第3の開口を有し、角度算出手段は、第1検出位置、第2検出位置、及び回転板の第3の開口を通過した測定光が光検出装置の光感応領域で検出される第3検出位置の相関によって回転軸の回転角の絶対値を算出する構成としても良い。このように3個の開口を用いることにより、回転角の絶対値の測定精度を向上することができる。この場合、回転板の第3の開口は、第1の開口及び第2の開口を結ぶ直線上を除く所定位置に形成されていることが好ましい。また、このように3個の開口を用いる構成では、光供給手段は、回転板の第1の開口を挟んで光検出装置の光感応領域と対向するように設けられた第1の光源と、第2の開口を挟んで光検出装置の光感応領域と対向するように設けられた第2の光源と、第3の開口を挟んで光検出装置の光感応領域と対向するように設けられた第3の光源とを有することが好ましい。さらに、この場合、第1〜第3の光源が、互いに異なる供給条件で測定光を供給することとすれば、第1〜第3検出位置を容易に識別することが可能となる。あるいは、1個の光源や、光源と反射光学系との組合せなどによって光供給手段を構成しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるアブソリュートエンコーダによれば、回転軸の回転角の絶対値を簡単な構成で精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
[図1]図1は、アブソリュートエンコーダの一実施形態の構成を示す斜視図である。
[図2]図2は、図1に示したエンコーダに用いられるプロファイルセンサの構成を示す模式図である。
[図3]図3は、図2に示したプロファイルセンサに含まれる光感応領域の一例を示す要部拡大平面図である。
[図4]図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
[図5]図5は、第1信号処理回路及び第2信号処理回路からなる信号処理部を示す構成図である。
[図6]図6は、信号処理部及び角度算出部の構成を示すブロック図である。
[図7]図7は、図1に示したエンコーダにおける角度測定方法を示す図である。
[図8]図8は、プロファイルセンサにおける2つの検出位置の位置関係を示す図である。
[図9]図9は、図8に示した検出位置の位置関係に対応する角度算出用テーブルを示す表である。
[図10]図10は、プロファイルセンサにおける2つの検出位置の位置関係の他の例を示す図である。
[図11]図11は、図10に示した検出位置の位置関係に対応する角度算出用テーブルを示す表である。
[図12]図12は、アブソリュートエンコーダの他の実施形態に用いられる回転板の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…アブソリュートエンコーダ、2…回転軸、3…回転板、31…第1の開口、32…第2の開口、33…第3の開口、4…光供給部、41…第1の光源、42…第2の光源、5…プロファイルセンサ(光検出装置)、50…光感応領域、51mn…画素、52mn、53mn…光感応部分、6…信号処理部、60…第1信号処理回路、61…シフトレジスタ、62…積分回路、63…CDS回路、64…バッファ回路、65…A/D変換器、66…タイミング制御回路、70…第2信号処理回路、71…シフトレジスタ、72…積分回路、73…CDS回路、74…バッファ回路、75…A/D変換器、76…タイミング制御回路、8…角度算出部、80…第1ピーク位置検出回路、81…X1座標メモリ、82…X2座標メモリ、83…差分回路、84…角度算出用テーブル、85…演算部、90…第2ピーク位置検出回路、91…Y1座標メモリ、92…Y2座標メモリ、93…差分回路。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面とともに本発明によるアブソリュートエンコーダの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0021】
図1は、本発明によるアブソリュートエンコーダの一実施形態の構成を示す斜視図である。図1を参照すると、本実施形態のアブソリュートエンコーダ1は、回転軸2、回転板3、光供給部4、及びプロファイルセンサ5を備えている。回転軸2は、回転角を検出する対象物に取り付けられており、図示しないアブソリュートエンコーダ1の筐体に支持されている。回転板3は、例えば金属や樹脂等から形成された円板状の部材であり、その中心が回転軸2に取り付けられて固定されている。
【0022】
回転板3には、第1の開口31と、第1の開口31に対して所定の位置関係を有する第2の開口32とが形成されている。これらの2個の開口31、32は、後述するように、本エンコーダ1において、回転軸2及び回転板3の回転角の絶対値を測定するために用いられるものである。また、本実施形態においては、これらの開口31、32は、図1中に一点鎖線によって示すように、第2の開口32が回転軸2から第1の開口31へ向かう直線の延長上にある所定位置となるように回転板3に形成されている。
【0023】
この回転板3に対して、その一方の面(図1における下面3a)に対向するようにプロファイルセンサ5が設けられている。プロファイルセンサ5は、それぞれ入射した光の強度に応じた電流を出力する複数の画素が2次元配列された光感応領域を有する2次元の光検出装置であり、その光感応領域の中心がほぼ回転軸2の中心軸上となるように配置されている。
【0024】
回転板3の他方の面(上面3b)側には光供給部4が設置されている。光供給部4は、角度測定用の測定光を供給する光供給手段であり、回転板3の開口31、32を挟んでプロファイルセンサ5の光感応領域と対向するように配置されている。本実施形態においては、この光供給部4は、第1の光源41及び第2の光源42の2個の光源を有して構成されている。第1の光源41は、回転板3の第1の開口31を挟んでプロファイルセンサ5と対向するように設けられている。また、第2の光源42は、第2の開口32を挟んでプロファイルセンサ5と対向するように設けられている。光源41、42としては、例えばLEDなどを用いることができる。
【0025】
以上の構成において、光供給部4の第1の光源41から測定光が回転板3に向けて照射されると、その一部が第1の開口31を通過し、プロファイルセンサ5の光感応領域において第1検出位置P1で検出される。また、第2の光源42から測定光が回転板3に向けて照射されると、その一部が第2の開口32を通過し、プロファイルセンサ5の光感応領域において第2検出位置P2で検出される。
【0026】
本エンコーダ1においては、測定光を検出したプロファイルセンサ5から出力される検出信号に対して、信号処理部6及び角度算出部8が設けられている。信号処理部6は、プロファイルセンサ5の各画素からの検出信号である電流出力に対して所定の信号処理を行って電圧信号を出力する。また、信号処理部6からの電圧信号は、角度算出部8へと入力される。角度算出部8は、プロファイルセンサ5における測定光の検出結果を示す信号処理部6からの電圧信号によって、第1の開口31を通過した測定光に対応する第1検出位置P1、及び第2の開口32を通過した測定光に対応する第2検出位置P2を求める。そして、それらの検出位置P1、P2の相関に基づいて、回転軸2及び回転板3の回転角の絶対値を算出する。
【0027】
次に、図1に示したエンコーダ1に用いられるプロファイルセンサ5について具体的に説明する。図2は、プロファイルセンサ5の構成を示す模式図である。ここで、以下においては、パラメータM及びNそれぞれを2以上の整数とする。また、特に明示しない限りは、パラメータmを1以上M以下の任意の整数とし、パラメータnを1以上N以下の任意の整数とする。
【0028】
本実施形態のエンコーダ1におけるプロファイルセンサ5は、光感応領域50と、第1信号処理回路60と、第2信号処理回路70とを有している。これらのうち、第1信号処理回路60、及び第2信号処理回路70は、図1に示したエンコーダ1での信号処理部6を構成するものである。
【0029】
光感応領域50は、画素51mnがM行N列に2次元配列されている。1画素は、それぞれに入射した光の強度に応じた電流を出力する光感応部分52mn(第1光感応部分)及び光感応部分53mn(第2光感応部分)を同一面内にて隣接して配設することで構成されている。これにより、光感応領域50において、光感応部分52mnと光感応部分53mnとは2次元的に混在した状態で同一面内にて配列されることとなる。
【0030】
これらのM×N個の画素からなる光感応領域50において、2次元配列における第1の方向(図2中のY軸方向)に配列された複数(N個)の画素5111〜511N、5121〜512N、・・・、51M1〜51MNにわたって、当該各画素51mnを構成する複数の光感応部分52mn、53mnのうち一方の光感応部分52mn同士(例えば、一方の光感応部分5211〜521N)が互いに電気的に接続されている。また、2次元配列における第2の方向(X軸方向)に配列された複数(M個)の画素5111〜51M1、5112〜51M2、・・・、521N〜51にわたって、当該各画素51mnを構成する複数の光感応部分52mn、53mnのうち他方の光感応部分53mn同士(例えば、他方の光感応部分5311〜53M1)が互いに電気的に接続されている。
【0031】
ここで、図3及び図4に基づいて、光感応領域50の構成について説明する。図3は、図2に示したプロファイルセンサに含まれる光感応領域の一例を示す要部拡大平面図である。また、図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。なお、図3においては、保護層508の図示を省略している。
【0032】
光感応領域50は、P型(第1導電型)の半導体からなる半導体基板500と、当該半導体基板500の表層に形成されたN型(第2導電型)の半導体領域501、502とを含んでいる。これにより、各光感応部分52mn、53mnでは、半導体基板500の部分と一組の第2導電型半導体領域501、502とを含んで、フォトダイオードが構成されることとなる。半導体領域501、502は、図3に示すように、光入射方向からみて略三角形状を呈しており、1画素において2つの領域501、502が、互いに一辺が隣接するように形成されている。また、半導体基板500は接地電位とされている。
【0033】
なお、光感応領域50は、N型の半導体からなる半導体基板と、当該半導体基板の表層に形成されたP型の半導体領域とを含んで構成されていても良い。光感応部分52mnに対応する領域501と、光感応部分53mnに対応する領域502とは、図3から分かるように、第1の方向及び第2の方向において交互に配列されている。また、領域501と領域502とは、第1の方向と第2の方向とに交差する(例えば、45°にて交差する)第3の方向及び第4の方向において交互に配列されている。
【0034】
半導体基板500と領域501、502の上には第1絶縁層503が形成されている。そして、この第1絶縁層503に形成されたスルーホールを介して第1配線504が一方の領域501に電気的に接続されている。また、第1絶縁層503に形成されたスルーホールを介して電極505が他方の領域502に電気的に接続されている。さらに、この第1絶縁層503の上には第2絶縁層506が形成されている。そして、この第2絶縁層506に形成されたスルーホールを介して第2配線507が電極505に電気的に接続されている。これにより、他方の領域502は、電極505を介して第2配線507に電気的に接続されることとなる。
【0035】
第2絶縁層506の上には保護層508が形成されている。第1絶縁層503、第2絶縁層506、及び保護層508は、SiOまたはSiN等からなる。第1配線504、電極505、及び第2配線507は、Al等の金属からなる。
【0036】
第1配線504は、各画素51mnにおける一方の領域501をY軸方向にわたって電気的に接続するものであって、画素51mn間をY軸方向に延びて設けられている。このように、各画素51mnにおける一方の領域501を第1配線504で接続することにより、2次元配列における第1の方向に配列された複数の画素5111〜511N、5121〜512N、・・・、51M1〜51MNにわたって一方の光感応部分52mn同士(例えば、光感応部分5211〜521N)が電気的に接続されて、光感応領域50においてY軸方向に長く延びる光感応部が構成される。
【0037】
これらのY軸方向に延びる光感応部は、X軸方向に並んでM列形成されることとなる。したがって、これらのM列の光感応部は、Y軸方向に長く延びる光感応部がX軸に沿って配列された1次元のプロファイルセンサとして機能する。このプロファイルセンサからの電流出力により、光感応領域50の2次元配列におけるX軸方向(第2の方向)について光強度プロファイルが得られる。また、これらのM列の光感応部からの電流出力は、図2に示すように、それぞれ第1信号処理回路60へと入力されている。
【0038】
第2配線507は、各画素51mnにおける他方の領域502をX軸方向にわたって電気的に接続するものであって、画素51mn間をX軸方向に延びて設けられている。このように、各画素51mnにおける他方の領域502を第2配線507で接続することにより、2次元配列における第2の方向に配列された複数の画素5111〜51M1、5112〜51M2、・・・、511N〜51MNにわたって他方の光感応部分53mn同士(例えば、光感応部分5311〜53M1)が電気的に接続されて、光感応領域50においてX軸方向に長く延びる光感応部が構成される。
【0039】
これらのX軸方向に延びる光感応部は、Y軸方向に並んでN行形成されることとなる。したがって、これらのN行の光感応部は、X軸方向に長く延びる光感応部がY軸に沿って配列された1次元のプロファイルセンサとして機能する。このプロファイルセンサからの電流出力により、光感応領域50の2次元配列におけるY軸方向(第1の方向)について光強度プロファイルが得られる。また、これらのN行の光感応部からの電流出力は、図2に示すように、それぞれ第2信号処理回路70へと入力されている。
【0040】
また、以上の構成により、プロファイルセンサ5の光感応領域50においては、上述したY軸方向(第1の方向)に長く延びるM列の光感応部と、X軸方向(第2の方向)に長く延びるN行の光感応部とが同一面上に形成された構成となっている。
【0041】
次に、図1に示したエンコーダ1における信号処理部6及び角度算出部8について具体的に説明する。図5は、第1信号処理回路60及び第2信号処理回路70(図2参照)からなる信号処理部6を概略的に示す構成図である。
【0042】
第1信号処理回路60は、Y軸方向に配列された複数の画素5111〜511N、5121〜512N、・・・、51M1〜51MN間において電気的に接続された光感応部分52mn群(Y軸方向に延びるM列の光感応部)に対応して設けられ、これらの光感応部分群からの電流出力に所定の信号処理を行って電圧信号を出力するものである。この第1信号処理回路60は、シフトレジスタ61を含みM列の光感応部のそれぞれから電流出力を読み出す読み出し回路と、光感応部からの電流出力に対して設けられた積分回路62とを有する。
【0043】
第1信号処理回路60における読み出し回路は、積分回路62及び読み出し回路を電気的に接続する配線61aと、M列の光感応部(光感応部分群)のそれぞれに対して設けられて光感応部及び配線61aを電気的に接続する配線61bと、各光感応部からの電荷の読み出しを制御するシフトレジスタ61とを有する。また、光感応部からの配線61bには、それぞれ光感応部及び配線61aの間の接続を切り換えるスイッチ61cが設けられており、シフトレジスタ61は、これらのスイッチ61cの開閉を制御することによって電荷の読み出しを制御している。以上の構成を有する読み出し回路により、光感応領域50のM列の光感応部のそれぞれから所定の順で電流出力が読み出され、積分回路62へと入力される。
【0044】
積分回路62は、M列の光感応部のそれぞれから読み出された電流出力(電荷)を積分するとともに電圧信号に変換する。積分回路62から出力されたアナログ電圧信号は、CDS回路63、及びバッファ回路64を介してA/D変換器65へと入力されて、A/D変換器65においてデジタル信号に変換される。ここで、バッファ回路64からの出力がM列の光感応部からなるプロファイルセンサに対応する第1アナログ出力A1、A/D変換器65からの出力が第1デジタル出力D1となる。また、A/D変換器65としては、例えば、10bit−ADCを用いることができる。
【0045】
また、このような構成の第1信号処理回路60に対して、タイミング制御回路66が設けられている。制御回路66は、積分回路62に対して積分のRESET動作を指示するRESET指示信号を送出し、また、シフトレジスタ61に対して電荷読み出し動作のタイミング及び順序等を指示する読み出し指示信号を送出する。また、制御回路66は、CDS回路63、A/D変換器65等に対しても必要な指示信号を送出する。
【0046】
第2信号処理回路70は、X軸方向に配列された複数の画素5111〜51M1、5112〜51M2、・・・、511N〜51MN間において電気的に接続された光感応部分53mn群(X軸方向に延びるN行の光感応部)に対応して設けられ、これらの光感応部分群からの電流出力に所定の信号処理を行って電圧信号を出力するものである。この第2信号処理回路70は、シフトレジスタ71を含みN行の光感応部のそれぞれから電流出力を読み出す読み出し回路と、光感応部からの電流出力に対して設けられた積分回路72とを有する。
【0047】
第2信号処理回路70における読み出し回路は、積分回路72及び読み出し回路を電気的に接続する配線71aと、N行の光感応部(光感応部分群)のそれぞれに対して設けられて光感応部及び配線71aを電気的に接続する配線71bと、各光感応部からの電荷の読み出しを制御するシフトレジスタ71とを有する。また、光感応部からの配線71bには、それぞれ光感応部及び配線71aの間の接続を切り換えるスイッチ71cが設けられており、シフトレジスタ71は、これらのスイッチ71cの開閉を制御することによって電荷の読み出しを制御している。以上の構成を有する読み出し回路により、光感応領域50のN行の光感応部のそれぞれから所定の順で電流出力が読み出され、積分回路72へと入力される。
【0048】
積分回路72は、N行の光感応部のそれぞれから読み出された電流出力(電荷)を積分するとともに電圧信号に変換する。積分回路72から出力されたアナログ電圧信号は、CDS回路73、及びバッファ回路74を介してA/D変換器75へと入力されて、A/D変換器75においてデジタル信号に変換される。ここで、バッファ回路74からの出力がN行の光感応部からなるプロファイルセンサに対応する第2アナログ出力A2、A/D変換器75からの出力が第2デジタル出力D2となる。また、A/D変換器75としては、例えば、10bit−ADCを用いることができる。
【0049】
また、このような構成の第2信号処理回路70に対して、タイミング制御回路76が設けられている。制御回路76は、積分回路72に対して積分のRESET動作を指示するRESET指示信号を送出し、また、シフトレジスタ71に対して電荷読み出し動作のタイミング及び順序等を指示する読み出し指示信号を送出する。また、制御回路76は、CDS回路73、A/D変換器75等に対しても必要な指示信号を送出する。
【0050】
図6は、図1に示したエンコーダ1における信号処理部6及び角度算出部8の構成を概略的に示すブロック図である。また、図7は、図1に示したエンコーダ1における角度測定方法を示す図である。
【0051】
信号処理部6の第1信号処理回路60から出力された電圧信号は、角度算出部8の第1ピーク位置検出回路80に入力される。第1ピーク位置検出回路80は、図7に示すように、信号処理回路60からの電圧信号によるX軸方向についての光強度プロファイルFXから2つのピーク(重なっている場合には1つのピーク)を検出する。そして、それらのピーク位置から第1検出位置P1、第2検出位置P2に対応するX座標X1、X2を特定し、それぞれX1座標メモリ81、X2座標メモリ82に格納する。さらに、第1差分回路83においてX1、X2の差分によってX座標間隔ΔXが求められる。
【0052】
信号処理部6の第2信号処理回路70から出力された電圧信号は、角度算出部8の第2ピーク位置検出回路90に入力される。第2ピーク位置検出回路90は、図7に示すように、信号処理回路70からの電圧信号によるY軸方向についての光強度プロファイルFYから2つのピーク(重なっている場合には1つのピーク)を検出する。そして、それらのピーク位置から第1検出位置P1、第2検出位置P2に対応するY座標Y1、Y2を特定し、それぞれY1座標メモリ91、Y2座標メモリ92に格納する。さらに、第2差分回路93においてY1、Y2の差分によってY座標間隔ΔYが求められる。
【0053】
差分回路83、93において求められた座標間隔ΔX、ΔYは、それぞれ演算部85に入力される。また、X座標X1、X2、Y座標Y1、Y2についても必要に応じて演算部85に入力される。また、本実施形態においては、この演算部85に対して、第1検出位置P1、及び第2検出位置P2の相関と、回転軸2の回転角θの絶対値との対応関係を示す角度算出用テーブル84があらかじめ用意されている。演算部85は、入力された座標間隔ΔX、ΔYなどの測定光の検出位置に関する情報と、ROMテーブル84に格納されている情報とを参照し、回転角θを算出して出力する。
【0054】
上記した実施形態によるアブソリュートエンコーダの効果について説明する。
【0055】
図1に示したアブソリュートエンコーダ1では、回転軸2に取り付けられた回転板3に形成された2個の開口31、32を利用して回転角θの絶対値を測定している。これらの開口31、32は、その相対的な位置は回転板3に対して固定であるが、絶対的な位置及び位置関係は回転軸2及び回転板3の回転に伴って変化する。そして、このような回転板3の開口31、32の絶対的な位置関係の変化は、回転板3の回転角θに対応したものとなる。したがって、これら2個の開口31、32の位置関係の変化を、光供給部4から供給される測定光によって光学的に検出することにより、回転軸2及び回転板3の回転角θの絶対値を測定することができる。
【0056】
また、開口31、32のそれぞれを通過した測定光を、画素51mnの2次元配列におけるX軸方向、Y軸方向のそれぞれについてのプロファイルセンサとして機能するように構成された光検出装置であるプロファイルセンサ5によって検出し、これによって開口31、32に対応する検出位置P1、P2を取得している。これにより、上記した2個の開口31、32の位置関係の変化を好適に精度良く検出することができる。そして、2個の開口31、32が形成された回転板3と、2次元のプロファイルセンサ5とを用いることにより、回転軸2の回転角θの絶対値を精度良く測定することが可能なアブソリュートエンコーダ1が実現される。
【0057】
このような構成のエンコーダ1は、渦巻状スリットなどを用いて回転角を測定する構成(特許文献1参照)に比べて、回転板の作製や回転板と光検出装置とのアライメントなどが容易であり、したがって、エンコーダの構成及びその製造工程が簡単化される。また、その製造コストも低減される。また、回転軸2に依存せずに、開口31、32の位置関係(検出位置P1、P2の位置関係)や三角関数などを用いて回転角θを算出するので、偏心などによる回転角θの精度の低下は充分に小さく抑えられる。
【0058】
また、光学式エンコーダにおいては、光検出装置の画素上に埃が付着した場合の角度測定誤差が問題となる。このような角度測定誤差について、埃が付着した場合を考慮した補正手段を設けることが特許文献2に記載されている。しかしながら、このように補正手段を設ける構成では、その補正のためのハード規模の増加、角度測定の演算時間の増加、コストの増加などの問題がある。これに対して、上記構成のアブソリュートエンコーダ1では、プロファイルセンサ5の画素上に埃が付着した場合であっても、開口31、32を通過した光が光感応領域50に入射する範囲の全体が埃で覆われない限り、充分な精度で回転角θを求めることが可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、光検出装置として、図2〜図4に示した構成のプロファイルセンサ5を用いている。このようなプロファイルセンサ5では、1つの画素51mnに入射した光は、画素51mnを構成する複数の光感応部分52mn、53mnのそれぞれにおいて検出される。そして、一方の光感応部分52mn同士がY軸方向に配列された複数の画素にわたって電気的に接続され、その電流出力はY軸方向に送られる。また、一方の光感応部分53mn同士がX軸方向に配列された複数の画素にわたって電気的に接続され、その電流出力はX軸方向に送られる。
【0060】
これにより、X軸方向での光強度プロファイルと、Y軸方向での光強度プロファイルとをそれぞれ独立して得ることが可能な2次元のプロファイルセンサ5が構成される。この結果、1画素51mnに複数の光感応部分52mn、53mnを設けるという極めて簡単な構成によって、2個の開口31、32のそれぞれを通過した測定光の2次元位置P1、P2を高速に検出することができる。また、このように測定光の2次元位置P1、P2を高速に検出することにより、回転角θの測定のリアルタイム性が向上する。
【0061】
さらに、このような構成のプロファイルセンサ5の光感応領域50に対して、図5に例示したような第1信号処理回路60、第2信号処理回路70を設けることにより、上記した2次元位置P1、P2の高速での検出を確実に実行することができる。このような信号処理回路は、光感応領域50と同一チップ上に設けて全体としてプロファイルセンサ5とする構成としても良い。また、角度算出部8については、同一チップ上、またはチップ外に設けることができる。
【0062】
ここで、回転板3に設けられる開口31、32としては、例えば回転板3を貫通する円形状のスリットを用いることができるが、一般には、所定形状の光透過部であれば良い。例えば、光供給部4から供給される測定光を透過させる材料によって形成された開口状の光透過部を用いることができる。このような光透過部は、ガラスなどの測定光を透過させる材料による板状部材を用い、開口以外の部分に不透過印刷を施すことによって形成することができる。
【0063】
また、回転板3の開口31、32に対して測定光を供給する光供給部4としては、図1に示したように、開口31、32にそれぞれ対応する光源41、42を設ける構成を用いることができる。さらに、このような構成では、開口31に対する第1の光源41、及び開口32に対する第2の光源42が、互いに異なる供給条件で測定光を供給することとしても良い。この場合、第1の開口31に対応するプロファイルセンサ5での第1検出位置P1と、第2の開口32に対応する第2検出位置P2とを容易に識別することが可能となる。このような測定光の供給方法としては、例えば、光源41、42で測定光の供給タイミングを変える方法や、測定光の光強度を変える方法などがある。また、光供給部4側ではなく、回転板3側で開口31、32の開口面積を変える構成としても良い。
【0064】
ただし、光供給部4からの測定光の供給については、開口31、32に対して同一条件で測定光を供給しても良い。このような場合でも、回転板3での開口31、32の位置関係により、プロファイルセンサ5においても検出位置P1、P2の位置関係には一定の制約がある。したがって、第1検出位置P1と第2検出位置P2とを識別することが可能である。また、光供給部4の構成については、開口31、32に対して1個の光源を設ける構成や、光源及び反射光学系を組み合わせて配置する構成などを用いることができる。あるいは、光供給部4と回転板3との間、回転板3とプロファイルセンサ5との間には、必要に応じて縮小/拡大光学系を設けても良い。
【0065】
また、角度算出部8における回転角θの算出については、座標間隔ΔX、ΔYから三角関数を用いてθ=tan−1(ΔX/ΔY)などの演算を行って、回転角θを算出しても良い。あるいは、図6に示したように、角度算出用テーブル84を用意しておき、このテーブル84を参照して回転角θの絶対値を算出しても良い。このように、回転板3の2個の開口31、32の位置関係に相当する2つの検出位置P1、P2の相関を、回転角θの絶対値に対応付けたROMテーブルをあらかじめ用意しておくことにより、プロファイルセンサ5における測定光の検出結果からの回転角θの算出を高速かつ精度良く行うことができる。
【0066】
ここで、図8は、プロファイルセンサにおける2つの検出位置の位置関係を示す図である。また、図9は、図8に示した検出位置の位置関係に対応する角度算出用テーブルを示す表である。図8においては、一方の検出位置を基準位置Sとし、他方の検出位置を相対位置A、B、C、Dとして変化させた例を示している。これらの検出位置の位置関係に対して、図9に示すように、各検出位置のX座標、Y座標から、X軸方向の座標間隔ΔX、Y軸方向の座標間隔ΔY、及び回転角θ(図8に示す角度θ参照)を求めることができる。また、この図9に示した対応関係の表をROMテーブルとしてあらかじめ用意しておけば、上記したように、回転角θの算出を高速かつ精度良く行うことができる。このようなテーブルについては、回転板での開口の配置や、回転角の測定に必要とされる精度などに応じたデータ点数を用意しておけば良い。
【0067】
図10は、プロファイルセンサにおける2つの検出位置の位置関係の他の例を示す図である。また、図11は、図10に示した検出位置の位置関係に対応する角度算出用テーブルを示す表である。図10においては、回転軸を中心として、内側の第1検出位置をA、B、C、Dとし、外側の第2検出位置をA、B、C、Dとした4つの検出位置の組の例を示している。これらの検出位置の位置関係に対して、図11に示すように、各検出位置のX座標、Y座標から、X軸方向の座標間隔ΔX、Y軸方向の座標間隔ΔY、及び回転角θ(図10に示す角度θ参照)を求めることができる。また、この図11に示した対応関係の表をROMテーブルとしてあらかじめ用意しておけば、上記したように、回転角θの算出を高速かつ精度良く行うことができる。
【0068】
本発明によるアブソリュートエンコーダは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、回転板3に設けられる開口31、32の配置については、上記した構成例では、図1に示すように、第2の開口32を、回転軸2から第1の開口31へ向かう直線の延長上に設けている。これにより、2個の開口31、32の位置関係による回転角θの絶対値の算出を好適に行うことができる。ただし、これらの開口31、32の配置については、回転角θの測定が可能な配置であれば、これ以外にも様々な構成を用いて良い。
【0069】
また、エンコーダ1に用いられる光検出装置についても、上記したプロファイルセンサ5に限らず、様々なものを用いて良い。例えば、図2、図3に示したプロファイルセンサ5では、それぞれ光感応部分となる領域501、502を略三角形状としているが、長方形状、または櫛形形状等としても良い。
【0070】
また、回転板3に設けられる開口については、上記実施形態では2個の開口31、32を設ける構成としているが、さらに、第3の開口を設ける構成を用いることも可能である。
【0071】
図12は、アブソリュートエンコーダの他の実施形態に用いられる回転板の構成を示す平面図である。本実施形態において、回転板3に設けられた第1の開口31、第2の開口32は、図1に示した実施形態と同様に、第2の開口32が回転軸2から第1の開口31へ向かう直線の延長上に位置する構成となっている。また、この回転板3では、これらの2個の開口31、32に対して、さらに第3の開口33が、開口31、32に対して所定の位置関係で形成されている。このように3個の開口31〜33を用いることにより、回転角の絶対値の測定精度を向上することができる。
【0072】
また、この場合、角度算出部8(図1参照)は、プロファイルセンサ5における測定光の検出結果を示す信号処理部6からの電圧信号によって、第1の開口31を通過した測定光に対応する第1検出位置、第2の開口32を通過した測定光に対応する第2検出位置、及び第3の開口33を通過した測定光に対応する第3検出位置を求める。そして、それらの3つの検出位置の相関に基づいて、回転軸2及び回転板3の回転角の絶対値を算出する。
【0073】
特に、図12に示した構成では、回転板3の第3の開口33は、第1の開口31及び第2の開口32を結ぶ直線上を除く所定位置に形成されている。具体的には、第3の開口33は、図12に示すように、第1の開口31及び第3の開口33を結ぶ直線が、第1の開口31及び第2の開口32を結ぶ直線に対して0でない角度で交わるように配置されている。図12に示す例では、第1の開口31及び第3の開口33を結ぶ直線が、第1の開口31及び第2の開口32を結ぶ直線に対して60°で交わり、3個の開口31〜33が正三角形をなすように配置されている。
【0074】
このように、回転板3に形成された3個の開口31〜33を用いて回転角を測定することにより、回転角の絶対値の測定精度を向上することができる。この場合、必要があれば、4個以上の開口を回転板3に設けても良い。
【0075】
また、上記構成では、第1の開口31及び第2の開口32を結ぶ直線から外れた位置に第3の開口33を配置している。このような構成では、例えば、プロファイルセンサ5で取得されるX軸方向またはY軸方向についての光強度プロファイルにおいて開口31、32の第1検出位置及び第2検出位置が重なる場合においても、開口31、32を結ぶ直線から外れた位置にある開口33に対する第3検出位置が同時に重なることはない。したがって、上記した場合においても、開口31〜33の検出位置の相関に基づいて、回転軸2及び回転板3の回転角の絶対値を精度良く算出することができる。
【0076】
また、このように3個の開口31〜33を用いる構成では、光供給部4は、上記した第1の光源41及び第2の光源42に加えて、第3の開口33を挟んでプロファイルセンサ5の光感応領域と対向するように設けられた第3の光源を有することが好ましい。さらに、この場合、第1〜第3の光源が、互いに異なる供給条件で測定光を供給することとすれば、開口31〜33に対応する検出位置を容易に識別することが可能となる。ただし、光供給部4については、上記以外の構成を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、回転軸の回転角の絶対値を簡単な構成で精度良く測定できるアブソリュートエンコーダとして利用可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ、第1の開口、及び前記第1の開口に対して所定の位置関係で形成された第2の開口を有する回転板と、
複数の画素が2次元配列された光感応領域を有し、前記回転板の一方の面に対向するように設けられるとともに、前記2次元配列における第1の方向及び第2の方向のそれぞれについて光強度プロファイルを得ることが可能な光検出装置と、
前記回転板の前記第1の開口及び前記第2の開口を挟んで前記光検出装置の前記光感応領域と対向するように設けられ、角度測定用の測定光を供給する光供給手段と、
前記回転板の前記第1の開口、及び前記第2の開口を通過した前記測定光がそれぞれ前記光検出装置の前記光感応領域で検出される第1検出位置、及び第2検出位置の相関によって前記回転軸の回転角の絶対値を算出する角度算出手段と
を備えることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記光検出装置は、それぞれ入射した光の強度に応じた電流を出力する複数の光感応部分を同一面内にて隣接して配設することで1画素が構成され、
前記第1の方向に配列された複数の画素にわたって、当該各画素を構成する複数の光感応部分のうち一方の光感応部分同士が電気的に接続され、
前記第2の方向に配列された複数の画素にわたって、当該各画素を構成する複数の光感応部分のうち他方の光感応部分同士が電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記第1の方向に配列された前記複数の画素間において電気的に接続された一方の光感応部分群に対応して設けられ、前記一方の光感応部分群からの電流出力に所定の信号処理を行って電圧信号を出力する第1信号処理回路と、
前記第2の方向に配列された前記複数の画素間において電気的に接続された他方の光感応部分群に対応して設けられ、前記他方の光感応部分群からの電流出力に所定の信号処理を行って電圧信号を出力する第2信号処理回路とを備え、
前記角度算出手段は、前記第1信号処理回路及び前記第2信号処理回路から出力された前記電圧信号に基づいて前記回転軸の回転角の絶対値を算出することを特徴とする請求項2記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
前記角度算出手段は、前記第1検出位置、及び前記第2検出位置の相関と、前記回転軸の回転角の絶対値との対応関係を示す角度算出用テーブルを参照して前記回転軸の回転角の絶対値を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記光供給手段は、前記回転板の前記第1の開口を挟んで前記光検出装置の前記光感応領域と対向するように設けられた第1の光源と、前記第2の開口を挟んで前記光検出装置の前記光感応領域と対向するように設けられた第2の光源とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
前記第1の光源及び前記第2の光源は、互いに異なる供給条件で前記測定光を供給することを特徴とする請求項5記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項7】
前記回転板の前記第2の開口は、前記回転軸から前記第1の開口へ向かう直線の延長上にある所定位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項8】
前記回転板は、前記第1の開口及び前記第2の開口に対して所定の位置関係で形成された第3の開口を有し、
前記角度算出手段は、前記第1検出位置、前記第2検出位置、及び前記回転板の前記第3の開口を通過した前記測定光が前記光検出装置の前記光感応領域で検出される第3検出位置の相関によって前記回転軸の回転角の絶対値を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項9】
前記回転板の前記第3の開口は、前記第1の開口及び前記第2の開口を結ぶ直線上を除く所定位置に形成されていることを特徴とする請求項8記載のアブソリュートエンコーダ。

【国際公開番号】WO2005/015132
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512935(P2005−512935)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011155
【国際出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】