説明

アブレイダブル皮膜及び/又はアブレイシブ皮膜並びにブラシシール構成

【課題】アブレイダブル/アブレイシブ皮膜並びにブラシシール構成を提供する。
【解決手段】蒸気/ガスタービンのロータ(11)にアブレイダブル/アブレイシブ皮膜が施工される。ブラシシールの圧力低下能力は、フェンス高さ(22)即ちロータとブラシシールのワイヤブリストル(12)を支持する裏当て板(15)の底縁との間の間隔と関連する。アブレイダブル/アブレイシブ皮膜を施工することにより、裏当て板がロータの表面(13)に対して摩擦してロータに損傷を引き起こすような危険性が低下するので、フェンス高さを減少させることが可能になり、ブラシシール組立体の圧力能力を高めることが可能になる。さらに、裏当て板とロータとの間の如何なる接触もロータを損傷させるのでなく、裏当て板が摩耗するにつれて該裏当て板を徐々に減損させるので、裏当て板はより高い温度に耐えることが可能なより高強度の材料で作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンに関し、より具体的には、タービンブラシシールと共にアブレイダブル皮膜及び/又はアブレイシブ皮膜を使用してその圧力低下能力及び温度能力を高めることに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンブラシシールは、一般的に高い可撓性のシールパックを含む接触シールであり、シールパックは、タービンロータの可動面に絶え間なく適応する何千ものワイヤブリストルから成る。一般的に、ワイヤブリストルは極微細な金属ブリストルの集合体から作られ、この極微細な金属ブリストルは、シールを形成するようなカーテンを構成し、それでもなおロータの動きに耐えるのに十分な追従性がある。一般的に、ブリストルは、低い摩耗率を有する。
【0003】
現在、ブラシシールは、単流及び対向流複合式ロータの高圧(HP)、中圧(IP)、低圧(LP)及び端部パッキン領域に用いられる。しかしながら、ブラシシールをこのような領域に使用することは、ブラシシール組立体の裏当て板曲げ応力能力及びブリストル曲げ応力能力によって制限される。
【0004】
より高い温度及びより高い圧力低下を有する用途においてブラシシールの使用を妨げる制約条件の1つは、裏当て板及びブリストル用として現在使用可能な材料である。制約条件のもう一つは、限られた曲げ応力をもつ材料で作られた裏当て板を取り扱う時に要求されるフェンス高さである。フェンス高さは、タービンロータと裏当て板の底縁との間の間隔である。より高温度に耐えるより高強度のブラシ裏当て板を使用する際の1つの問題点は、ロータとより高強度の裏当て板との間の接触の結果としてロータに生じることになる損傷である。
【特許文献1】米国特許第6,547,522号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第US2004/0126225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それにも拘わらず、ブラシシールによって得られる作動上の利点の故に、高温度及び高圧力低下が通常認められる箇所にブラシシールを使用することが望ましいと言える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蒸気タービン又はガスタービンのロータの表面にアブレイダブル皮膜及び/又はアブレイシブ皮膜を適用して従来型のブラシシールの温度能力及び圧力能力を高めるようにすることを使用する。アブレイダブル皮膜又はアブレイシブ皮膜をブラシシール組立体と組合せることにより、蒸気タービン及びガスタービンにおける厳しい状態に耐えることができるシール構成が得られる。本発明の皮膜は、高温度環境に適しており、従来型のブラシシールの圧力低下能力を高めるのに役立つ。ブラシシールの圧力能力は、フェンス高さと密接に関連する。本発明では、裏当て板がロータに対して摩擦してロータに損傷を生じるようになる危険性が、アブレイダブル皮膜又はアブレイシブ皮膜を設けることによって低下する。アブレイダブル皮膜又はアブレイシブ皮膜の適用により、フェンス高さを減少させることが可能になり、従ってそれに相応してブラシシールの圧力低下及び温度能力を高めることが可能になる。フェンス高さが減少するので、ブリストルの曲げ応力もまた低下することになり、ブラシシールにより高い圧力低下及びより高い温度に耐える能力を与えることになる。他の利点は、ロータを損傷させる危険性がない状態で、より高強度の材料を裏当て板に用いることができることである。アブレイダブル皮膜又はアブレイシブ皮膜はまた、ロータを保護する。裏当て板用のより高強度の材料もまた、ブラシがより高い圧力及びより高い温度に耐えるのを助ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、タービン(図示せず)のロータ11と係合するブラシホルダ組立体10を示す断面斜視図である。ブラシホルダ組立体10は、ロータ11の表面13と係合する複数のワイヤブリストル12を含む。ブリストル12は、前板14とブリストル12に対して支持を与える裏当て板15との間に配置される。ブラシホルダ組立体10を構成するブリストル12、前板14及び裏当て板15は、それらの上部で互いに溶接される。ブリストル12、前板14及び裏当て板15は、パッキンリング16の内部に取付けられ、止めねじ17によってリング16内に保持され、止めねじ17は、前板14のショルダ部18を該ショルダ部を受け入れるように設計されたパッキンリング16内の陥凹部19に対して付勢する。パッキンリング16は次に、タービン内に取付けられたパッキンホルダ20によって支持される。
【0008】
ブラシホルダ組立体10は、該組立体10に対してロータ11の方向に前向きの力を加えるばね組立体(図示せず)によってロータ11の表面13に対して付勢される。ロータ11の表面13と裏当て板15の底縁21との間の間隔が、ブラシホルダ組立体10の「フェンス高さ」22である。時が経つと、フェンス高さ22は、運転中にロータ11が回転すると、ワイヤブリストル12がロータ11の表面13に対して摩擦しかつ摩滅する結果として縮小することになる。最終的には、裏当て板15の底面21は、ワイヤブリストル12が摩滅する結果としてロータ11の表面13と接触することになる。この接触部位では、裏当て板15の底縁21が表面13に対して摩擦するので、底縁21はロータ11の表面13を損傷させる可能性がある。
【0009】
ロータ11の作動中には、蒸気又は空気(タービンが蒸気タービン又はガスタービンのどちらであるかにより決まる)は、図1に示すようにブラシ組立体10の左側から右側に移動する。ブラシ組立体10によって圧力低下を示すこの蒸気又は空気の動きは、図1に示す矢印23で表している。
【0010】
ロータ11の表面13に対して裏当て板15が摩擦することにより生じるロータ11への損傷の危険性を低下させるために、本発明は、ロータ11の表面13に設けられたアブレイダブル皮膜(磨耗可能な研磨皮膜)又はアブレイシブ皮膜(研磨皮膜)を使用する。これら皮膜の何れかを表面13に施工することは、裏当て板15が表面13に対して摩擦した場合に表面13を保護してロータに対する損傷を防止するのに役立つ。アブレイシブ皮膜又はアブレイダブル皮膜をロータ11の表面13に設けることにより、フェンス高さ22を減少させることが可能になる。さらに、裏当て板15とロータ11の表面13との間の接触はロータ11を損傷させるのでなく、裏当て板15が摩耗するにつれて該裏当て板15を徐々に減損させるので、より高い温度(例えば950°Fよりも高い温度)に耐えるより高強度のブラシ裏当て板15を使用することができる。
【0011】
フェンス高さ22を減少させることは、次に裏当て板15とロータ11との間の間隔が減少した結果としてより長い長さを有することになる裏当て板15によってより大きな割合のワイヤブリストルを効果的に支持することを可能にする。裏当て板15用として使用するより高強度の材料は、ワイヤブリストル12に対してさらに支持を与える。裏当て板は、ワイヤブリストルの長さのおよそ75パーセントに対して支持を与えるのが好ましい。その結果、より強力な材料で作られたより長い裏当て板15によってブリストル12に対してより大きな支持が与えられるので、圧力低下能力及びより高温度の環境における適合性を高めるのに耐えるワイヤブラシ組立体10の能力が得られる。
【0012】
裏当て板用の材料は、当業者にはよく知られている。例示的な材料は、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、高分子材料及びそれらの組合せから成る。好ましいステンレス鋼材料の1つの実施例は、409SSであると言える。
【0013】
ロータ11の表面13にアブレイシブ(abrasive)皮膜を施工した場合には、裏当て板15とロータ11の表面13との間の接触により、ロータ11の表面13が損傷されるのではなく裏当て板15が摩耗することになる。ロータ11の表面13にアブレイダブル(abradable)皮膜を施工した場合には、裏当て板15とロータ11の表面13との間の接触により、ロータ11の表面13が損傷されるのではなくアブレイダブル皮膜が摩耗することになる。
【0014】
アブレイダブル皮膜は、使用する材料の種類に応じてロータ11の表面13上にプラズマ溶射(プラズマスプレー)又はフレーム溶射(フレームスプレー)することができる。熱処理もまた、ここでも使用する特定のアブレイダブル材料に応じて、材料を施工するのに適切なものとすることができる。アブレイダブル皮膜用の材料は、米国特許第6,547,522号及び米国特許出願公開第US2004/0126225号に記載された材料のように当業者にはよく知られており、上記の特許の内容は参考文献として本明細書に組み入れる。そのような皮膜は、好ましい実施形態としての例示的な材料であると考えられる。
【0015】
アブレイシブ皮膜は、使用する材料の種類に応じてロータ11の表面13上にプラズマ溶射又はフレーム溶射することができる。熱処理もまた、ここでも使用する特定のアブレイシブ皮膜に応じて材料を施工するのに適切なものとすることができる。例示的なアブレイシブ皮膜80には、アルミナ、炭化クロム及びサテライトが含まれる。
【0016】
現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は開示した実施形態に限定されるものではなく、反対に特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内に含まれる様々な変更及び均等な構成を保護しようとするものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】タービン内部でタービンのロータと係合しかつパッキンリング及びパッキンホルダすなわちケーシング内に取付けられたブラシホルダ組立体を示す断面斜視図。
【符号の説明】
【0018】
10 ブラシホルダ組立体
11 ロータ
12 ワイヤブリストル
13 表面
14 前板
15 裏当て板
16 パッキンリング
17 止めねじ
18 ショルダ部
19 陥凹部
21 底縁
22 フェンス高さ
23 矢印
80 アブレイシブ皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンのロータ(11)と係合するブラシホルダ組立体(10)を備えたタービン用のブラシシール装置であって、前記ブラシホルダ組立体(10)が、
前記ロータ(11)の表面(13)と係合する複数のワイヤブリストル(12)と、
前記ワイヤブリストル(12)のほぼ全長を支持するように前記ワイヤブリストル(12)の第1の側面側に配置された裏当て板(15)と、
前記裏当て板(15)との間に前記ワイヤブリストル(12)を位置させるように、前記ワイヤブリストル(12)の第2の側面側に配置された前板(14)と、
前記ロータ(11)の表面(13)に設けられたアブレイダブル皮膜及びアブレイシブ皮膜の少なくとも1つと、を含み、
前記裏当て板(15)が前記ロータ(11)に対して摩擦した場合に、前記設けられた皮膜が前記ロータの表面(13)が損傷するのを防止して、フェンス高さ(22)の低減を可能とした、
ブラシシール装置。
【請求項2】
前記アブレイシブ皮膜又はアブレイダブル皮膜を設けることにより、510℃よりも高い温度に耐えるより高強度の材料で前記裏当て板(15)を製作できる、請求項1記載のブラシシール装置。
【請求項3】
前記ロータ(11)の表面(13)にアブレイダブル皮膜が設けられたことにより、前記裏当て板(15)と前記ロータ(11)の表面(13)との間の接触で、前記ロータ(11)の表面(13)に損傷が生じるのではなく前記アブレイダブル皮膜が摩耗する、請求項1又は2に記載のブラシシール装置。
【請求項4】
前記ロータ(11)の表面(13)にアブレイシブ皮膜が設けられたことにより、前記裏当て板(15)と前記ロータ(11)の表面(13)との間の接触で、前記ロータ(11)の表面(13)に損傷が生じるのではなく前記アブレイダブル皮膜が摩耗する、請求項1又は2に記載のブラシシール装置。
【請求項5】
前記裏当て板(15)が、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、高分子材料及び前記材料の組合せから成る群から選択された材料で作られている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のブラシシール装置。
【請求項6】
前記アブレイシブ皮膜が溶射されている、請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載のブラシシール装置。
【請求項7】
前記アブレイシブ皮膜が、アルミナ、炭化クロム及びサテライトから成る群から選択された材料で作られている、請求項1、2、4乃至6のいずれか1項に記載のブラシシール装置。
【請求項8】
前記アブレイダブル皮膜が溶射されている、請求項1乃至3又は5のいずれか1項に記載のブラシシール装置。
【請求項9】
前記アブレイシブ皮膜が金属材料で作られている、請求項1、2、4乃至6のいずれか1項に記載のブラシシール装置。
【請求項10】
前記アブレイダブル皮膜が金属材料で作られている、請求項1乃至3、5、又は8のいずれか1項に記載のブラシシール装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−312937(P2006−312937A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−127321(P2006−127321)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】